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都市圏の女性の就業率 Women’s Employment-Population ratio in urban areas

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研究ノート

都市圏の女性の就業率

Women’s Employment-Population ratio in urban areas

日米比較の視点から

Comparison between Japan and the United States

青木 知一郎 1 AOKI Tomoichiro

キーワード: 女性、就業率

1 はじめに

女性の就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合)引き上げが、提言として取り上げられることが 増えている。主要と思われるものを幾つか取り上げてみよう。最近では「選択する未来」委員会が、30 代から40代の女性の就業率を5%程度引き上げることを提言している 2。安倍内閣の「日本再興戦略」に も、女性の就業率引き上げに関する同種の記述がある 3

日本の場合、女性の労働力率の年齢階級別の推移を取るとM字型を描くことが知られているが、女性 の就業率も同様にM字型を描く。女性の年齢階級別就業率について最近の状況を大雑把に言えば、20代 後半の就業率が高く、M字の左肩部分となっている。30代前半以降一旦低下したのち再び上昇し、40代 後半がM字の右肩となっている。上述したような女性の就業率引き上げに関わる言及は、M字型のへこ みの部分に当たる年齢層の就業率を引き上げよう、という趣旨となっている。

本稿では、女性の年齢階級別就業率を、都市圏と地方圏に分けて分析した。まず、三大都市圏を含む 南関東、近畿、東海の各地域を「都市圏」として括り、三大都市圏を含んでいない北海道、東北、北陸、

北関東・甲信、中国、四国、九州・沖縄の各地域を「地方圏」として括った 4。その上で都市圏と地方 圏の違いを指摘した 5。次に、日本を都市圏と地方圏に分けた場合の両者の違いの一つである一人当た り個人所得の差に着目し、米国の各州(含むワシントンDC)から、高所得の州のグループと低所得の 州のグループを選んで両者を比較した 6

2 都市圏と地方圏を比較した日本

2-1 年齢階級別就業率のM字型が目立たなくなってきた地方圏

地方圏における女性の年齢階級別就業率のいわゆるM字型は、2000年の状況と比較すればかなり改善 している(図1)。2013年段階でも25歳から29歳の年齢層(M字の左肩の部分)と30歳から34歳の年齢層 の間で就業率は落ち込んでいるが、その差は約6%ポイントであり、後述する都市圏と比べるとかなり

国際地域研究論集(JISRD)第6号(№6)2015

(2)

50.0 55.0 60.0 65.0 70.0 75.0 80.0

20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59

2000年 2009年 2013年

(%)

(歳)

50.0 55.0 60.0 65.0 70.0 75.0 80.0

20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59

2000 2009 2013

(歳)

(%)

年齢層に比べて大きかったことなどが加わり、目立たなくなってきているようだ。

図1㻌 日本の女性の年齢階級別就業率の推移・地方圏

(注)出典:労働力調査

図 㻌 日本の女性の年齢階級別就業率の推移・都市圏

(注)出典:労働力調査

(3)

2-2 年齢階級別就業率のM字型が依然として目立つ都市圏

次に、都市圏の年齢階級別就業率の推移をみておこう(図2)。こちらも地方圏同様、2000年段階で はM字型の底だった30歳から34歳の年齢層の就業率の上昇が周辺の年齢層と比べて大きいため、かな り改善している。とはいえ、就業率の上昇が遅れた35歳から39歳の年齢層が新たにM字型の底になっ ており、M字型の左肩となる25歳から29歳の年齢層の就業率との差は約11%ポイントだ。地方圏と比 べれば、M字型のへこみ方がそもそも大きかったこともあり、依然としてM字型が残っている。M字 型解消には都市圏での改善が不可欠なことがわかる。

年齢階級別就業率の水準を都市圏と地方圏で比較すると、都市圏の就業率のほうが総じて低くなっ ている。但し、M字の左肩にあたる25歳から29歳の年齢層の就業率は都市圏も地方圏も75%と同水準 で、且つ都市圏のほうが地方圏より先に75%の水準に達している。

3 高所得の州と低所得の州を比較した米国

3-1 分析の視点

日本の都市圏に含まれる都道府県は、一人当たり県民所得の水準が総じて高い。例えば南関東は、

一人当たり県民所得が突出して高い東京に加えて、上位グループの常連である神奈川を含んでいる。

東海だと愛知や静岡、近畿だと大阪や滋賀が上位グループの常連だ 7

そこで米国でも同様に、一人当たり個人所得を用い、日本の都市圏に対応する高所得の州(含む DC)と地方圏に対応する低所得の州を選んだ。高所得の州としては、2000年以降2013年に至る各年で、

一人当たり個人所得の上位グループ(1位から10位)に常にとどまっている7州を選んだ(CT、DC、

MD、MA、NH、NJ、NY)。結果として、ニューヨークやボストン或いはワシントンDCなど東部の主 要都市を抱える地域となった。一方で日本の地方圏に対応する低所得の州として、同じ基準で下位グ ループ(40位から51位)に常にとどまっている9州(AL、AR、ID、KY、MS、NM、SC、UT、WV)

を選んだ 8

3-2 高所得の州の年齢階級別就業率はM字型を描く年も

米国においては、女性の年齢階級別就業率がM字型を描いたのは過去の話、と言われている 9。とこ ろが高所得の州の女性の年齢階級別就業率の1999年以降の推移を見ると、35歳から44歳の年齢層のそ れが25歳から34歳のそれと比べて、僅かとはいえへこむ形でのM字型となっている年が散見される

(表1)。横ばいも含めて連続している時期を挙げると、2006年から2008年、2012年と2013年だ。リー マンショック前後の景気がそれなりに拡大していた時期と大雑把に重なっているので、年齢階級別就 業率の形状の変化と景気動向との関連が考えられる 10

一方で低所得の州の女性の年齢階級別就業率の1999年以降の推移を見ると、ピークは常に35歳から 44歳の年齢層だ。いわゆる逆U字型となっており、高所得の州とは形状が異なる。

国際地域研究論集(JISRD)第6号(№6)2015

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25 - 34 35 - 44歳 45 - 54歳 25 - 34 35 - 44歳 45 - 54歳

1999 72.9 74.4 76.1 72.0 74.3 69.8

2000 73.3 74.6 75.2 72.8 75.7 70.7

2001 71.7 73.8 75.3 70.9 74.1 69.9

2002 71.7 71.7 75.2 68.1 72.3 70.4

2003 70.8 72.6 74.7 67.5 71.4 70.9

2004 70.6 71.6 74.5 68.6 71.3 70.1

2005 70.6 71.9 74.5 68.5 71.6 70.6

2006 72.9 71.9 74.9 68.4 71.8 69.4

2007 72.4 71.7 74.7 69.8 72.4 68.8

2008 74.0 73.2 74.2 67.8 70.5 68.5

2009 71.1 71.5 73.9 64.4 68.2 66.4

2010 69.7 71.3 73.4 65.1 67.7 65.3

2011 69.3 70.6 72.5 63.2 67.6 66.0

2012 70.5 69.3 72.7 64.4 68.3 66.6

2013 70.8 70.8 72.2 64.3 67.4 66.3

単位:%

高所得の州 低所得の州

(年)

表1㻌 米国の年齢階級別就業率の推移

(注)出典:

3-3㻌 女性就業者が減りにくい高所得の州

女性の就業者の推移を高所得の州と低所得の州に分けてみることで、こうした年齢階級別就業率の違いの 背景にあるものを探ってみよう(図 )。本稿は年齢階層別就業率の 字型の議論をしているため、それに関 係する年齢層として 歳から 歳の年齢層の女性就業者数に絞って分析する。

ベビーブーム世代の高齢化やリーマンショックなどに伴う不況の後遺症から、 歳から 歳の年齢層の女 性就業者は、この期間で見ると全体として減少傾向にあるため、高所得の州のそれも低所得の州のそれも同 様に減少傾向にあるが、高所得の州のほうが総じて減り方が小さい。リーマンショック以降の回復過程となる 年及び 年では、高所得の州の女性就業者数が横ばいやや増加、低所得の州のそれは減少してい る。日本の女性就業者数の推移を都市圏と地方圏で分けてみると、都市圏は増加傾向である一方で地方圏 は減少傾向となっており、特に足元の 年と 年では、都市圏の就業者数の伸びが目立っている。日 本の都市圏や米国の高所得の州は、女性の雇用創出という点では、日本の地方圏或いは米国の低所得の 州より勝っているようだ。

米国の女性就業者数の推移を年齢層別に見ると、 歳から 歳の年齢層の就業者数は高所得の州も低 所得の州も緩やかな低下傾向を描いている。一方で、 歳から 歳の年齢層の就業者数は、どちらも上下し ながらおおむね横ばいに推移する中で、高所得の州のそれは年齢階級別就業率が 字型を描いている 年から 年にかけてと 年以降で増加している。高所得の州の年齢階級別就業率が 字型を 描くことに関して、 歳から 歳の年齢層の動きのほうがより重要な役割を演じている様子を感じさせる 。

3-3 女性就業者が減りにくい高所得の州

女性の就業者の推移を高所得の州と低所得の州に分けてみることで、こうした年齢階級別就業率の 違いの背景にあるものを探ってみよう(図3)。本稿は年齢階層別就業率のM字型の議論をしているた め、それに関係する年齢層として25歳から54歳の年齢層の女性就業者数に絞って分析する。

ベビーブーム世代の高齢化やリーマンショックなどに伴う不況の後遺症から、25歳から54歳の年齢 層の女性就業者は、この期間で見ると全体として減少傾向にあるため、高所得の州のそれも低所得の 州のそれも同様に減少傾向にあるが、高所得の州のほうが総じて減り方が小さい。リーマンショック 以降の回復過程となる2012年及び2013年では、高所得の州の女性就業者数が横ばいやや増加、低所得 の州のそれは減少している。日本の女性就業者数の推移を都市圏と地方圏で分けてみると、都市圏は 増加傾向である一方で地方圏は減少傾向となっており、特に足元の2012年と2013年では、都市圏の就 業者数の伸びが目立っている。日本の都市圏や米国の高所得の州は、女性の雇用創出という点では、

日本の地方圏或いは米国の低所得の州より勝っているようだ。

米国の女性就業者数の推移を年齢層別に見ると、35歳から44歳の年齢層の就業者数は高所得の州も 低所得の州も緩やかな低下傾向を描いている。一方で、25歳から34歳の年齢層の就業者数は、どちら も上下しながらおおむね横ばいに推移する中で、高所得の州のそれは年齢階級別就業率がM字型を描 いている2006年から2008年にかけてと2011年以降で増加している。高所得の州の年齢階級別就業率が M字型を描くことに関して、25歳から34歳の年齢層の動きのほうがより重要な役割を演じている様子 を感じさせる 11

(5)

90.0 92.0 94.0 96.0 98.0 100.0 102.0

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012

高所得の州 低所得の州

2000年=100

(年)

米国の女性就業者数( 歳から 歳)の推移

(注)出典:

㻌 むすびにかえて

本稿では、年齢階級別で見た女性の就業率の日米における動向を比較した。日本の女性の年齢階級別 就業率の 字型は、地方圏ではかなり解消してきたが、都市圏では解消の方向に向かいつつも依然として地 方圏よりは目立っている。日本が 字型を解消するには、都市圏での一層の改善努力が不可欠である。

米国の高所得の州の年齢階級別就業率をみると、僅かとはいえ 字型を描く時期がある。そして、米国の 高所得の州は、日本の都市圏と共通点が多い。

女性の就業環境としては日本より体制が整っていると考えられている米国においても、その一部の地域で は年齢階級別就業率の 字型が生じる時期があることをふまえれば、日本の女性の年齢階級別就業率の 字型解消のためになすべきことは、就業環境の整備以外にも多々あるように思われる。

参考文献

[日本語文献]

石田好江( )「女性の 字型就業脱却までもう一息、鍵を握るサービス業の質的向上」『クォータリー生活福祉研究』通 、明治安田生活福祉研究所。

大賀智子( )㻌「女性労働力率 字カーブの上昇要因㻌-年齢階級で異なる労働選択の背景-」『

、社団法人日本経済研究センター。

長田充弘・柴田雄行・長野哲平( )「米国の労働市場のスラックについて㻌-労働参加率を中心に-」『日銀レビュー』

、日本銀行。

4 むすびにかえて

本稿では、年齢階級別で見た女性の就業率の日米における動向を比較した。日本の女性の年齢階級 別就業率のM字型は、地方圏ではかなり解消してきたが、都市圏では解消の方向に向かいつつも依然 として地方圏よりは目立っている。日本がM字型を解消するには、都市圏での一層の改善努力が不可 欠である。

米国の高所得の州の年齢階級別就業率をみると、僅かとはいえM字型を描く時期がある。そして、

米国の高所得の州は、日本の都市圏と共通点が多い。

女性の就業環境としては日本より体制が整っていると考えられている米国においても、その一部の 地域では年齢階級別就業率のM字型が生じる時期があることをふまえれば、日本の女性の年齢階級別 就業率のM字型解消のためになすべきことは、就業環境の整備以外にも多々あるように思われる。

参考文献

[日本語文献]

石田 好江(2011)「女性のM字型就業脱却までもう一息、鍵を握るサービス業の質的向上」『クォータリー生活福祉 研究』通巻76号 Vol.19 No.4、明治安田生活福祉研究所。

大賀 智子(2007) 「女性労働力率M字カーブの上昇要因 -年齢階級で異なる労働選択の背景-」『JCER REVIEW』Vol.62、社団法人日本経済研究センター。

長田 充弘・柴田雄行・長野哲平(2014)「米国の労働市場のスラックについて -労働参加率を中心に-」『日銀レ ビュー』2014-J-2、日本銀行。

国際地域研究論集(JISRD)第6号(№6)2015

(6)

厚生労働省(2013)『平成25年版 労働経済の分析』。

柵山 順子(2014)「M字カーブは2020年には解消?! ~参加することに意義のある時代のその先に~」『Economic Trends』、第一生命経済研究所。

首相官邸(2013)『日本再興戦略 -JAPAN is BACK-』。

竹内 一雅(2014)「地方圏・東京圏における若年層の人口移動」『不動産投資レポート』、ニッセイ基礎研究所。

[英語文献]

Bullard, James (2014)「The Rise and Fall of Labor Force Participation in the United States」『Federal Reserve  Bank of St.

Louis REVIEW』 First Quarter 2014、Federal Reserve Bank of St. Louis。

Felix, Alison (2014)「Effect of Aging on Labor Force Participation Rates in the Mountain States」『The Rocky  Mountain ECONOMIST』 First Quarter 2014、Federal Reserve Bank of Kansas City。

1 新潟県立大学国際地域学部([email protected]

2 「選択する未来」委員会は内閣府の重要政策会議として位置づけられる経済財政諮問会議の下に置かれた専 門委員会。2014年11月に最終報告をとりまとめた。報告となる『未来への選択』の7ページに「例えば、女 性の活躍促進として、管理職割合を3割とするとともに、事務職や販売業への職種、業種の偏りを改善しな がら、いわゆるM字カーブを解消する取り組みを進め、30代~40代の女性の就業率を5%程度引き上げるこ と(約95万人増)・・・(途中省略)・・・などが当面の目標となる」とある。

3 「日本再興戦略」は、いわゆるアベノミクスの三本目の矢となる成長戦略にあたる部分で、2013年6月14日 に閣議決定された。『日本再興戦略 -JAPAN is BACK-』の16ページには「2020年に女性の就業率(25歳か ら44歳)を73%(現状68%)にする」とある。

4 それぞれの地域に含まれる県は、労働力調査の分類を使った。北海道は北海道、東北は青森県、岩手県、

宮城県、秋田県、山形県、福島県の各県、南関東は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の各県、北関東・

甲信は茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県の各県、北陸は新潟県、富山県、石川県、福井県の各県、

東海は岐阜県、静岡県、愛知県、三重県の各県、近畿は滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌 山県の各県、中国は鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県の各県、四国は徳島県、香川県、愛媛県、

高知県の各県、九州・沖縄は福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の各 県である。

5 2011年については、地震の影響で東北地方の数値が発表されていないため、同地方の2010年と2012年の数

値を平均したものを2011年の数値として仮置きして算出した。

6 個人所得として日本は内閣府の一人当たり県民所得(要素費用表示)を参照した。米国はBureau of Economic Analysis のper capita personal incomeを使用した。

7 2010年の一人当たり県民所得で比較すると、都市圏のほうが地方圏よりも約21%高い。

8 2013年の一人当たり個人所得で比較すると、高所得の州のほうが低所得の州よりも約55%高い。

9 石田(2011、 p2)によれば、脱却時期を1980年代前半とし、「市場原理を重視する自由主義的福祉国家で あるアメリカは、女性の就業支援も家族政策も最低限度のものに留まっている反面、民間の多様な保育サー ビスが充実していることや女性に対し均等な雇用機会が保障されていたことが早い時期のM字型脱却に寄 与した」とする。

10 2008年は不況期に突入しているが、本格的に悪化したのは20089月のリーマンショック前後からであるた

め「大雑把に」とした。

11 米国の25歳から34歳の年齢層は、それ以降の年齢層と比較すると5年移動率が高いなど様々な特徴がある。

こうした世代の特徴などもふまえて、色々な角度からその背景を検討してみる必要があるだろう。

参照

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