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― ― 市民の政治参加

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(1)

市民の政治参加

―グラフィカルモデリングによる新たな視座―

三  船   毅

Political Participation by Residents:

New Perspectives from Graphical Modeling

Tsuyoshi M

IFUNE

 Milbrath(1965)and Verba(1971)elucidated a structure of political participation by residents 50 years ago.

 In Japan, Kabashima(1988)and Miyake(1981)presented a structure of Japanese political participation in the 1980s.

 Nevertheless, no study has elucidated details of the structure of political participation by residents to date because earlier studies used factor analysis to compose the relation between variables. Alternatively, they adopted an incorrect hypothesis.

 This article presents an explanation of the structure of political participation using graphical modeling.

 The structure of political participation is complex. Moreover, the variables representing political participation are mutually convolved.

 This analysis of graphical modeling is designed to clarify residentsʼ political participation.

1  は じ め に

 民主主義体制を堅持するために市民による政治参加が不可欠であることは,現代の民主主義 理論では必然であるが,政治参加の形態は多様である.政治参加が 1 つの国家・地域でどのよ うに行われ,社会的機能を有しているのかは,アーモンドとヴァーバ(Almond and Verba, 1963)の政治文化研究や,政治参加におけるモードの概念を提唱したヴァーバら(Verba, 1971)が嚆矢である.その後,ヴァーバを中心としたグループ(Verba, et al., 1978, 95, 01)に よる研究や,ダルトン(Dalton, 2006, 14)による市民文化を強く意識した一連の研究が展開さ れてきた.日本ではヴァーバら(Verba, et al., 1978)の『政治参加と平等』に影響を受け,三

(2)

宅(1981),蒲島(1988)により日本人の政治参加が理論的かつ実証的に研究されてきた.彼 らの研究では,日本における各政治参加形態の状況,社会経済的地位との関連性が分析され,

市民文化としての政治参加モードが析出されてきた.モードとは,市民を対象とした社会調査 で得られた各政治参加形態の参加頻度を因子分析から析出した潜在変数である.ヴァーバによ ればモードとは「個人と政府を結びつける方法に関し,相互にシステマティックに異なる複数 の活動のセット」であり,モードを無視することにより「参加のシステムの重要な特性を理解 し損ねかねない」と,その重要性を論じている(Verba, et al., 1978=81, 62頁).かつてレーン

(Lane, 1959)やミルブレイス(Milbrath, 1965)が各政治参加形態を政治関心や参加コストな どのスペクトラムに沿って配置した政治参加の一次元単純構造と比較すると,モードは市民に よる政治活動の特徴を描写する政治文化の多次元的構造を表すものである.

 だが,モードの概念及び因子分析から析出された潜在変数としてのモードは,個々の参加形 態がどのような関連性を持つのかを明らかにしていない.このような意味で,政治参加の構造 は未だ明らかになっていないのである.このことは,分析手法としての因子分析の限界を露呈 しており,その基礎が相関係数のスペクトル分解であることに起因する(宮川,1997,6 頁). 主成分分析も基本は同じであり,潜在変数の内部構造の関連性を明らかにすることは限界があ る.本稿は,グラフィカルモデリングを用いて,その限界を超えて,確率変数間の構造を明ら かにすることを目的とする.

 この目的は,方法論的関心からだけではない.近年の日本政治の変動は,市民の政治活動も 変化させつつあると考えられる.震災・原発事故,沖縄基地問題は地域住民による政治活動の 隆盛をもたらしている.だが,この状況に反して,2014年総選挙は戦後最低の投票率を記録し ている.これまでの政治参加研究の方法では,これらの政治参加形態の変動がどのような関連 性を有しているのかを解明することは困難である.このような変動の状況は,21世紀に入り急 激に出現したとは考え難い.長期的にみれば市民の政治性の変容がその基底にあるが,その経 時変化を全て分析することは困難である.よって,日本における政治参加研究の 1 つの基点と して蒲島(1988)で用いられた1983年衆議院選挙調査データのJES データ1)を用いて,市民に よる各政治参加形態の関連性をグラフィカルモデリングから検証し,政治参加の構造を創り出 す論理の一端を解明する.

2  グラフィカルモデリング

2.1 政治参加を分析する視座

 政治参加を総体的に捉えるときに便利な分析概念がモードである.モードは,ある 1 つの国・

地域の市民に観られる各政治参加形態(の頻度)を観測変数としたときに,その背後にある潜 在変数である.よって,ある潜在変数を構成する観測変数の組み合わせによりモードの意味は

中央大学社会科学研究所年報

(3)

異なり多様性をもつ.この多様性が政治文化を象徴するのである.ヴァーバらにより提唱され たモードは,後の研究に影響を及ぼしてきた.しかし,いくつかの問題も生じた.このモード を用いた分析方法が 1 つの標準となることにより,新しい政治参加の形態についての分析が遅 れてきたこともある.

 だが,より重要な問題は各政治参加形態をモードに集約することにより,各政治参加形態の 関連性が不明瞭のままであったことであろう.それは観測値=確率変数間の相関係数によるス ペクトル分解が分析方法の基底にあるからである.相関係数は 2 つの確率変数間の関係を示す ものである.結果として,3 つ以上の確率変数間の関係をスペクトル分解から引き出すことは 困難である.各政治参加形態の関連性(=政治参加の構造)が解らないことは,政治社会の変 動を理解していく上でも大きな問題を提起する.イングルハート(Inglehart, 1977)の論じる 20世紀後半からの物質主義的価値観から脱物質主義的価値観への転換は,オールドポリティク スからニューポリティクスへの転換をもたらしたとされる.それは市民の政治行動としては,

一方で代議制民主主義を構成する根幹としての選挙に対して市民は懐疑的になり投票率が低下 するということである.もう一方で,市民は直接民主主義を志向するようになり,市民・住民 運動などが隆盛することである.

 市民の政治参加の変化をマクロレベルで捉えるならば,選挙における投票率の低下と市民・

住民運動やアドヴォカシー化したNPOの隆盛であろう.これらのことは,21世紀の日本で現実 に起こっている.しかし,これらの市民の政治行動をミクロレベルで捉え直したときに,相反 する市民の政治参加形態の関係はどうなっているのであろうか.これが本稿の基本的な問題関 心である.この問題に答えるためには従来の分析方法では難しく,本稿はグラフィカルモデリ ングにより,この問題に 1 つの答えを与える.

2.2 グラフィカルモデリングの考え方

 グラフィカルモデリングとは,多次元の量的・質的データから得られる相関係数,偏相関係 数から確率変数間の関係をグラフでモデル化して,モデルの妥当性を諸種の統計量から判断し て,確率変数間の関連性を解釈する統計的手法である.グラフとは,グラフ理論における無向・

有向・連鎖の独立グラフである.用いられるデータは量的データの連続変数でも,質的データ のカテゴリカル変数でもよい2)

 多変量解析において複数の確率変数間の関係を捉える方法は,クロス表や相関係数が最も単 純な方法であるが,基本的には 2 変数間の関連しか示すことができない.3 変数以上の関連を 示す方法としては主成分分析などがある.しかし,主成分分析は相関行列のスペクトル分解で あるが故に,相関行列が有している以上の情報を得ることは無理である(宮川,1997,6 頁). 主成分分析では,各主成分間の関係を明示的に把握することはできるが,各主成分を構成する

市民の政治参加(三船)

(4)

変数間の関係,3 つ以上の変数間の絡みを明示してはくれない.その関係を把握するためには,

相関関係に遡って考察する必要がある.このような 3 つ以上の変数の関連の絡みに関する情報 も相関行列に含まれる.しかし,その絡みに関する情報を引き出すのはスペクトル分解ではな く,逆行列により引き出される偏相関係数なのである(宮川,1997,7 頁).グラフィカルモ デリングは,多変量確率変数の相関行列から偏相関行列を作成し,共分散選択(Dempster, 1972)の手法により偏相関係数の値の小さいものを順次 0 として行くことにより,確率変数間 の関係を減らし,AICなどの適合度が最も良い偏相関行列をグラフで表現して解釈する.この 方法は工学分野での適用事例は多いが,政治学分野で適用した研究は管見の限りない.日本に おけるグラフィカルモデリングの理論的研究と解説は宮川(1997),日本品質管理学会他[編]

(1999)が嚆矢である.以下,本節の各項におけるグラフィカルモデリングの理論的説明は宮 川(1997,25−94頁)に依拠し,必要に応じて確率論,グラフ理論を分かりやすいように記述 する.では,グラフィカルモデリングを理解する上で必要最小限の確率とグラフ理論の概念を 次項以下で説明する.

2.3 グラフィカルモデリングの基礎―確率変数の条件付き独立

 グラフィカルモデリングは,多次元確率変数による偏相関係数の関係を有向・無向・連鎖の 独立グラフで表し,確率変数間の関係を解釈する.このときに必要となる概念は,確率変数の 条件付き独立である.まず,事象の条件付き独立を理解し,確率変数の条件付き独立の性質を 確認する.3 つの事象をABCとしたときに,事象Aが生起する確率をPA)とする.同様 にBが生起した確率をPB)とする.事象Bが生起したという条件の下でAが生起する確率が 条件付き確率であり,(1)式で定義される.

      (ただしPB)> 0 である)  (1)

ABが独立とは,

           (2)

が成り立つことである3)

 事象ABが独立であることをABと表す4)

  3 つの事象ABCがあり,事象Cが生起したという条件の下で,ABが条件付き独立で ある条件は,

          (3)

であり,これをAB|Cと表す.

PA|B= PABPB

PAB=PAPB

PAB|C=PA|CPB|C中央大学社会科学研究所年報

(5)

 次に,事象を確率変数に拡張して条件付き独立を定義する.ここで,表記に関して注意して おく.一般に確率変数Xが値xをとる確率PXx)はxの関数であり,その関数を(f x)と記 す(松原,2003,13頁).

  2 つの離散確立変数をXYとして,Xxであり同時にYyである確率PXx, Yy)を(X, Y)の同時確率分布という.(f x, y5)を同時確率関数6)といい,0 侑(f x, y)侑 1かつ  (f x, y

= 1 を満たす.

  2 つの連続確率変数をXYとして同時分布を考えると,(f x, y)は同時確率密度関数であり,

0 侑(f x, y)侑 1 かつ        を満たす.このときXY が区間a0Xa1b0Yb1の値をとる確率は,        で表される.以下,特に断らない限り確率変数は 連続的確率変数として扱い,グラフィカルモデリングを説明する.同時確率分布からXYの 個別の分布が求められ,それらを周辺確率分布という.

Xの周辺確率分布とは,Yの値にかかわらずにXの確率分布を表したものであり,yについて 積分した形で表され,         となる7).同様にYの周辺分布は,xについて積分し た形で表され,         となる.

 このことは,3 変数XYZでも成立する.(f x, y, z)を同時確率密度関数として,XYの 区間に加えてZが     となる確率は      で表される.このときz を一定とした 2 次元周辺確率分布は       となる.yzを一定とした 1 次元周辺確率分布は        となる.

 同時確率密度関数から得られる周辺確率分布から,条件付き確率密度関数は(f x, y, z)にお いていずれかの確率変数について周辺を積分したものであることが理解できる.たとえば,z について周辺を積分すれば,条件付き 2 次元周辺密度関数となる.それは,zをある値に固定 したときの(f x, y, z)であるから,条件付き確率と同様に考えることができる.条件付き 2 次 元周辺密度関数は(f x, y|z)=(f x, y, z)/f(z)と表される.同様に,条件付き 1 次元周辺密度関数 は,(f x|z)=(f x, z)/(f z),(f y|z)=(f y, z)/(f z)と表される.

 確率変数の独立性は,(2)式と同様にすべての変数XYに対して(f x, y)=(f x)(f y)が成り 立つことである.このときXYは独立であり,XYと表す.確率変数の独立性の定義か ら次の 4 つの定理が成り立つ.

 【定義 1 】 確率変数の独立性の定義   すべてのxyzの値に対して,

      (f x, y|z)=(f x|z)(f y|z)    (4)

が成り立つとき,XYZを与えたもとでの条件付き独立といい,XY|Zと表す.

 この定義は(3)式      を確率密度関数で表したものである8).(4)式と

y x

−∞

−∞f x, y=

a1 a0

b1

b0f x, ydxdy

gx=

−∞f x, ydy hy=

−∞f x, ydx

c0Zc1 a1

a0 b1

b0 c1

c0f x, y,zdxdydz kx, y=

−∞f x, y,zdz

l x=

−∞

−∞f x, y,zdydz

PAB|C=PA|CPB|C

市民の政治参加(三船)

(6)

条件付き密度関数の定義から

      (f x, y, z)=(f x, z)(f y, z)/f(z)    (5)

が導き出される.(5)式の意味は,条件付き独立が成り立つための必要十分条件であるが,実 際の分析と解釈で重要となるのは確率変数の独立性から因数分解基準を中心として導かれる定 理【1.1】〜【1.4】である9)

 【定理1.1】 因数分解基準

XY|Zの必要十分条件は,同時確率密度関数 (f x, y, z)に対して

      (f x, y, z)=gx, zhy, z)    (6)

を満たす関数ghが存在することである.

 【定理1.2】 XY|ZかつXZ|Yならば,X (Y, Z).である.

 【定理1.3】  4 つの確率変数XYZ1Z2においてXY|Z1, Z2)かつXZ1(| Y, Z2)ならば,

X (YZ1)|Z2である.

 【定理1.4】  4 つの確率変数XYZ1Z2においてX (Y1, Y2)|ZならばXY1|Zである.

 これらの確率変数の条件付き独立は確率変数間の関係を規定し,グラフを解釈するときの基 礎となる.だが,さらに確率変数間の関係を考察する上で重要な役割を果たすのはマルコフ連 鎖の確率過程である.確率過程とは確率変数の時間的変化である.マルコフ連鎖は,確率変数 Xn+1がある値をとる確率がXnの結果のみに依存している確率過程であり(7)式で表される.

      (f xn+1|x1, x2, ..., xn−1, xn)=(f xn+1 |xn)    (7)

 (7)式は次のように証明できる.3 つの事象ABCにおいて,AB|Cのとき,(8)式が成 り立つ.

      PA|B, C)=PA|C)    (8)

 これは(1)式の条件付き確率の定義より,

   

である.また,AB|Cは(3)式より,      であるから,これを上式の右 辺に代入すれば(8)式となる.これらのことから,(7)式は(4)式をもとにして(9)式として表わ すことができる.

       (f x1, … , xn−1, xn+1 |xn)= f(xn+1|xn)(f x1, … , xn−1|xn)     (9)

PA|B,C= PABC

PBC= PABC

PCPB|C= PAB|CPC

PCPB|C= PAB|CPB|CPAB|C=PA|CPB|C

中央大学社会科学研究所年報

(7)

 マルコフ連鎖はxn+1の分布が「直前」のxnにのみ依存することを意味する.(9)式はxnを所与

とするとxn+1x1,...,xn−1は,条件付き独立であることを意味している.この「直前」を「隣接」

に解釈することで,グラフにおいてマルコフ性を成り立たせることができる.これらの定理は,

確率変数を確率ベクトルと置き換えても成立する.

2.4 グラフィカルモデリングの基礎―多変量正規分布での条件付き独立

 確率変数X1, ・・・ , Xpのそれぞれが正規分布をするとき,それらは全体としてp次元正規分布 と考えることができる.この分布をp次元多変量正規分布といい,(10)式の確率密度関数で表

される.μ=(μ1, ・・・ , μp)′はXの平均ベクトル,Σ=(σij)はXの分散共分散行列である.

        (10)10)

 グラフィカルモデリングを行う上で,多変量正規分布の重要な性質は次の[1]〜[6]である(宮 川,1997,31−35頁).

 [1] 任意の 1 侑ipについて,Xiは平均μi,分散σiiの正規分布に従う.μiμの第i要素 であり,σiiはΣ の第i対角要素である.分散共分散行列における分散はσi

2と一般には表記さ れるが,本稿では宮川(1997,31頁)にならい分散をσiiと表記する.

 [2] 任意の 1侑ijpについて,2 つの確率変数(Xi, Xj)は平均ベクトル(μi, μj)′,分 散共分散行列Σ の 2 次元正規分布に従う.このとき,2 変数の相関係数は(11)式で表される.

σij= 0 のときに無相関であり,XiXjは独立である.

        (11)

 [3] 任意のijについて,Xjxjを与えたときのXiの条件付き確率密度関数の分布は,(12)

式の正規分布となる.

         (12)

 [4]p次元確率ベクトルX=(X1, ・・・ , Xp)′を 2 つに分割し,

       ,とする.

μとΣも次のように分割行列にする.

      

         (13)

(x)f = 1

(2π)p|Σ | exp −1

2(xμ)´Σ−1xμ

ρi j= σi j

√σii √σj j

平均:μi+ σi j

σj j xjμj 分散:σii−σi j2

σj j

=σii 1 −ρi j 2

X= X(1)

X(2)X(1)= X1, · · · , XqX(2)= Xq +1 , · · · , Xp

⎛⎜

⎞⎜

´ ´

μ= μ(1)

μ(2)

Σ= Σ11 Σ12

Σ21 Σ22

市民の政治参加(三船)

(8)

 このとき,X(1)は,Nμ(1), Σ11)にX(2)は,Nμ(2), Σ22)に,それぞれ従う.Σ12= 0 のとき,

X(1)X(2)の任意の要素が独立である.

 [5] X(2)x(2)を与えたもとでのX(1)の条件付き分布は,

平均ベクトル:      ,

 分散共分散行列:       のq次元正規分布に従う.なぜならば,X(1)q次元だから である.

 ここまでの[1]〜[5]の性質をもとにして,条件付き独立の必要十分条件が導出できる.Σ=

(σij)の逆行列をΣ−1=(σij)と記す.Σ=(σij)は分散共分散行列の逆行列の要素である.

(13)式と同じ次数でΣ−1=(σij)を分割して,

        とすると,逆行列の性質から

        (14)

となり,これは[5]の分散共分散行列と一致する11)

 ここから,仮に(13)式での分割で,q= 2 とすると,Σ−1の分割行列Σ11は,

         であり,

         

は,X3,・・・ , Xpを与えたときのX1X2の条件付き確率分布の分散共分散行列 

となる.ここから(Σ11−1の非対角要素が 0(σ12= 0 =σ21)ならば,X3, ・・・ , Xpを与えたと きに,X1X2は条件付き独立となるのである.

 この条件付き確率分布における相関係数が偏相関係数(ρij・rest)である.q= 2 のときは(15)

式となる.

      (rest=3, 4, ・・・ , pである.)    (15)

 これは任意の 1侑ijpにおいても成り立つ.p変量からなる多変量正規分布の相関行列を Π=(ρij),その逆行列をΠ−1=(ρij)とすると,XiXjの偏相関係数は(16)式となる.

      (rest={1, 2, ・・・ , p}\{i, j}である.)    (16)

 よって,ここか.ら多変量正規分布の性質[6]として「条件付き独立の必要十分条件」が導出 μ(1)+Σ1222−1x(2)μ(2)

Σ11−Σ12Σ22−1Σ21

Σ−1= Σ11 Σ12 Σ21 Σ22

(Σ11−1=Σ11−Σ12Σ−122Σ21

Σ = σ11 σ12 σ21 σ22

(Σ ) =

σ σ −σ σ

σ22 −σ12

−σ21 σ11

Σ −Σ ΣΣ

ρ12·rest= −σ12

√σ11 √σ22

ρi j·rest= −σi j

√σii √σjj

中央大学社会科学研究所年報

(9)

される.

 [6] XiXjが,その他のすべての確率変数を与えたときに,条件付き独立   

     となる必要十分条件は,Σ−1の要素(ij)がσij= 0 となること,つまり偏相関係数 ρijrest= 0 となることである.

2.5 無向独立グラフとマルコフ性

 2.5.1 グラフィカルモデリングにおける無向独立グラフ

 グラフィカルモデリングは,最終的に確率変数間の関係を条件付き独立という形で表して解 釈する.このときに,確率変数間の関係において因果関係が明確に想定できる場合とできない 場合がある.明確に因果関係が想定できる場合のグラフは有向独立グラフ,連鎖独立グラフ,

想定できない場合が無向独立グラフとなる.

 本稿で用いる確率変数は,市民による政治参加の頻度である.したがって,確率変数間の時 間関係などを特定化することはできず,因果関係を仮定することはできない.たとえば,「選 挙での投票」と「デモへの参加」という 2 つの確率変数の関係を考えてみる.このとき「選挙 での投票」が「デモへの参加」を誘発するのか,それとも逆になるのかは分からない.仮に,

政治参加の諸形態が何らかの 1 つの軸に沿って,スペクトラムとして存在するのが確実である のならば,因果関係を仮定することも可能であるかもしれない.たとえば,軸がコストである とする.日本で「選挙での投票」のコストは,投票所までの距離,天気などの他に情報コスト がある.しかし,「デモへの参加」は時間や天気の他に,その内容によっては参加者はある種 のリスクを負い,参加者がスティグマを背負うことにもなる.よって,コストという観点から は,「投票」<「デモ」となり,デモに参加する人は,投票もすると考えられる.しかし,「デ モへの参加」は間接民主制の機能不全を考えるが故に行うという考え方も成立する.この場合,

そのように考える人は「投票」せず,2 つの参加は独立となる.よって,政治参加の諸形態を 変数群としてみたときに,それぞれに因果関係を設定することは難しい.本稿では,一貫して 無向独立グラフを用いて分析する.

 2.5.2 グラフ理論

 無向独立グラフで用いるグラフ理論の基礎概念を整理しておく12).グラフとは,いくつかの 頂点(vertex)とそれらを結ぶ辺(edge)からなる 1 つの構造であり,グラフの構造から社会 における人間や企業などの行為主体の特性を分析するための図であり,グラフ理論として数学 的に体系化されている.

 一般に頂点の集合をV,辺の集合をEとして,G=(V, E)としてグラフを表す.2 つの頂点α, βにおいて,これら 2 つの頂点の対(α, β)と(β, α)を区別しないときに,それを表す辺

Xi Xj| X1, X2, ..., Xp\ Xi, Xj

市民の政治参加(三船)

(10)

には方向を示す矢印は付けないこととする.これを線(line)という.辺すべてに向きがつか ないグラフを無向グラフという.辺に向きがあるグラフを有向グラフ(directed graph)という.

さらに,1 つの頂点で(α, α)を結ぶ辺が存在するとき,その辺を輪(roop)という.輪が 無く任意の 2 つの頂点を結ぶ辺が 1 つしかないグラフを単純グラフといい,辺が 2 つ以上,輪 を含むグラフを多重グラフという(宮川,1997,46頁).本稿では単純無向グラフをもとに,

頂点間に条件付き独立関係を組み込んだ無向独立グラフにより各政治参加形態の関係を表す.

 【定義 2 】無向独立グラフの定義

p個の確率変数で無向グラフを考える.このとき存在する変数対の組み合わせは,p( 1 −p) /2 通りである.これらの(Xi, Xj)( 1侑i, jp)のそれぞれについて,XiXjが残りのp− 2 個の 確率変数を与えたものと条件付き独立か否かを判断する.つまり,前項の偏相関係数ρij・rest= 0 か否かを判断するのである.そして,ρij≠ 0 のときにXiXjを表す頂点を辺で結び,○Xi 

―○Xj と表す.ρij= 0 のときには,XiXjを表す頂点を辺で結ばない.これは変数の分散共分 散行列Σ=(σij)としたときに,その逆行列Σ−1=(σij)のある成分がσij= 0 となることは,「XiXjが,その他のすべての変数を与えたときに,条件付き独立になることを意味する」のであ る(宮川,1997,45−46頁).

p= 4 とすると,具体的にはΣ−1は次のようになる.

      (*≠ 0 であり,Σ−1は対称行列である)

 このとき条件付き独立を無向独立グラフで表すと,次の図 1 のようになり,このとき      と        が成り立っている13)

Σ−1=

X1 X2 X2 X2 X1

X2 * *

X3 * * *

X4 0 0 * *

⎛⎜

⎜⎜

⎞⎜

⎜⎜

X1 X4|

X2, X3X2 X4| X1, X3

X2

X1

X3 X4

図‑1 条件付き独立の無向独立グラフ(宮川,1997,45頁)

 では,分析していく上で必要となるグラフ理論の用語を,ウィルソン(Wilson, 1996=01, 11−

34頁),宮川(1997,46−47頁)から定義しておく.

 ① 隣接(adjacent):頂点αとβに辺αβがあるとき,αとβは隣接しているといい,α

〜βで表す.

 ② 完全(complete):グラフGのすべての頂点が互いに隣接しているときそのグラフは完 全であるという.n個の頂点を持つグラフは,    の辺がある.n(n−1)

2 中央大学社会科学研究所年報

(11)

 ③ 部分グラフ(adjacent):グラフGVG)とEG)の部分集合からなるグラフをG′とする とき,G′はGの部分グラフである.

 ④ クリーク(clique):cVにおいて,cが生成する部分グラフが完全グラフとなる極大頂 点集合である.

 ⑤ 道(path):異なる頂点列α0, α1, ・・・, αnが,(αj−1, αj)∈ E, j=1, ・・・, nのとき長さn の道という.道ではある 1 つの頂点は 1 度しか現れない.

 ⑥ 連結(connected):頂点αとβを含む道があるとき,αとβは連結しているという.

 ⑦ 境界(boundary):α∈Vに対して,αと隣接している頂点集合をαの境界といい,bd(α)

と表す.

 ⑧ 閉包(closure):α∈Vに対して,境界と{α}の和であり,cl(α)と表す.

 ⑨ 分離(separate):頂点α,βを結ぶ任意の道が頂点集合sのある要素を含むとき,sはα とβを分離しているという.

 ⑩ 閉路(cycle):長さnの道α0, α1, ・・・, αnで,α0=αnとなることを認めたものを長さn の閉路という.閉路ではある 1 つの頂点が 2 度現れる.

 ⑪ 弦(chord):閉路において連続していない頂点を結ぶ辺を弦という.長さnの閉路α0, α1, ・・・, αn=α0ならば,α1α3などの辺である.

 ⑫ 三角化(triangulated):長さ 4 以上の弦のない閉路が存在しないグラフを三角化してい るとする.

 2.5.3 マルコフ連鎖と因数分解性

 図 1 の無向独立グラフでは,        かつ        が成り立っている.

よって,定理1.3より        となる.すると,この式が成立するための必要十分条 件は,因数分解条件(定理1.1)より,4 つの変数X1, X2, X3, X4の同時分布は,

f x1, x2, x3, x4)=(f x1, x2|x3)(f x4|x3)(f x3)       =gx1, x2, x3hx3, x4

 と因数分解されることである.図 1 のグラフには 2 つのクリークc1={X1, X2, X3},c2={X3, X4}が存在しており,これらはghに対応している.つまり,確率変数の因数分解とクリーク を形成する頂点(確率変数)は一致し,これは後述する定理2.5として一般に成立する.

 図 1 の条件付き独立の関係        と        は,X3を条件として与えれ ば,2 つの条件付き独立        が成立することを示している.図 1 のグラフは,X1X4X3で分離されている.さらに,X2X4X3で分離されている.このことは,2 つの 確率変数(頂点)がグラフのなかで隣接していないときには,それら 2 つの確率変数を分離す

X1 X4| X2, X3X2 X4| X1, X3

X1, X2) X4|X3

X1 X4| X2, X3X2 X4| X1, X3

X1, X2X4|X3

市民の政治参加(三船)

(12)

る変数だけを与えれば,条件付き独立が成立することを意味する.これらのことは定理2.1〜2.3 で定理で一般化され,そこから定理2.4の「 3 つのマルコフ性」と定理2.5の「因数分解とマル コフ性の関係」が導出される.以下,宮川(1997,48−50頁)に依拠して,定理を示す.

 【定理2.1】連結していない変数間の独立性

 頂点集合Vが背反な部分集合abに分割されているとする.このとき無向独立グラフで,

    と   が連結していないならば,   である14).  【定理2.2】連結していない変数間の任意の条件付き独立性

 頂点集合Vが背反な部分集合abに分割されているとする.またuVで,u{α,β}である とする.このとき無向独立グラフで,    と   が連結していないならば,     であ る15)

 【定理2.3】分離定理

 無向独立グラフにおいて,2 つの頂点αとβが頂点集合sにより分離されているならば,

     が成立する16)

 無向独立グラフの定義から,2 つの頂点αとβが隣接していないならば,        

という性質が成立する.これを「対ごとのマルコフ性」といい(P)で表す.

 また,定理3.3の    を「大域的マルコフ性」といい(G)で表す.

 定理2.3は「(P)ならば(G)」であることを意味する.

 さらに,この中間に位置する「局所マルコフ性」がある.bd(α)をαを頂点とする集合とし,

cl(α)=bd(α)+αとするときに,  について,      が成り立つ.これを「局 所マルコフ性」として(L)と表す.このとき,次の定理2.4が成り立つ.

 【定理2.4】 3 つのマルコフ性の同値性

 任意の無向グラフにおいて,(G)→(L)→(P)が成り立つ17)

 さらにここから定理3.3と定理3.4から(G)→(L)→(P)→(G)が成り立つことがわかる.そし て,この 3 つのマルコフ性と同じ性質が「グラフGに従う因数分解性」であり,(F)と表す.(F)

V={X1,..., Xp}の無向グラフGにおいて,X1,..., Xpの同時密度関数がクリーク集合cに従って

f x1,..., xp)=Πgj xcj)と因数分解されていることである.

ここから,定理2.5が成り立つ.

 【定理2.5】因数分解とマルコフ性の関係

 任意の無向独立グラフにおいて(F)→(G)が成り立つ.

 以上,これらの定理が本稿の分析結果のグラフ解釈で必要となる18)

α∈a β∈b α β

α∈a β∈b α β|u

α β| s

α β|V \{α,β}

α β|s

α α V \ cl(α)|bd(α)

cj∈c

中央大学社会科学研究所年報

(13)

2.6 共分散選択によるモデル探索  2.6.1 共分散選択

 共分散選択はグラフィカルモデリングにおけるモデル作成の本質的部分である.確率変数の 条件付き独立における偏相関係数の意味は,確率変数XiXjの偏相関係数がρij・rest= 0 のとき,

       である.これをグラフで表すと図 2 のようになる.つまり,XiXjXkを与えたときに独立となることを示している.

Xi Xj| X1, X2, ···, Xp\ i, j

図‑2 グラフ,偏相関係数からみた条件付き独立 Xk

Xj

Xiρij·rest=0

 共分散選択は多変量正規分布にある確率変数間の構造を単純化するための手法であり,その 原理はデンプスター(Dempster, 1972)により考案された.p次元多変量正規分布では,pp− 1 )/2 個のパラメータがある.だが,観測値(データ)による標本共分散行列を説明するた めには,pp− 1 )/2 個より少数のパラメータで十分な可能性もある.統計解析の目的は,自 然・社会現象をより少数のパラメータによる単純な統計モデルで説明することである19).この パラメータを減らす 1 つの方法が共分散選択であり,Σ=(σij)の非対角要素のいくつかをゼ ロにするのではなく,Σ−1=(σij)でいくつかの非対角要素をゼロにする.Σ が正則行列なら ばΣ−1は一意に定まる.σijをゼロにすることは確率変数間に条件付き独立を付与することに なり,変数間の関係を解読し易くするのである.共分散選択を定式化する上で基礎となるのは,

Σの要素である.添え字(i, j)の集合をΩとして,1侑ijpとする.なぜならば,(i, j)は Σ の要素の添え字であり,下三角行列であるから,ijだけを考えればよい.Ωを 2 つの背反 な部分集合IJに分割し,(i, j)∈Iではσij= 0,(i, j)∈ Jではσijは任意とするモデルを考 える(宮川,1997,77頁).

 共分散選択はp次元正規分布において,それぞれp次元変量の観測値x1, ・・・, xnがあるとき,

標本分数共分散行列を

と定義する.

p次元正規分布の確率密度関数は(10)式であり,その対数をとると

            (17)

 観測値x1, ・・・ , xnの対数尤度は S =si j=

n

k=1

xnx)¯(xnx)¯ n

log(x)f =plog(2π)

2 −log|Σ|

2 −(x−μ)Σ−1x−μ)

2      市民の政治参加(三船)

(14)

          (18)

となる.

 ここから,次の定理が成り立つ(宮川,1997,79−81頁).  【定理3.1】パラメータに制約のないμとΣの最尤推定値  μとΣの最尤推定値μ˜とΣ˜は,

      μ˜=x¯    Σ˜=S    (19)

となる.

 問題は(i, j)∈Iで,σij= 0 とした制約下での最尤推定値である.(18)式の右辺第 3 項は,

      (20)

と分解され,μは(20)式の右辺第 2 項だけで尤度に寄与することから,μ^=x¯となる.

 このΣの推定値Σ^は,(20)式の第 2 項をゼロとして対数尤度から求められる.このときΣ−1

=(σij)の最尤推定値Σˆ−1

=(σˆij)は,      と       の解とし て求められ,デンプスターはΣに次の定理を与えた.

 【定理3.2】共分散選択の基本定理

 (i, j)∈Iではσij= 0 として,(i, j)∈Jではσijの値を任意とするモデルにおけるΣ の最尤 推定値は次の 2 つの条件を満たす正定値行列である.

 (1) (i, j)∈Iでは,σˆij= 0

 (2) (i, j)∈Jでは,σˆijsijsijは任意の値)20)

 なお,この計算のアルゴリズムは宮川(1997,83−86頁)では,Wermuth and Scheidt(1977)

の方法をもとに紹介している.本稿における共分散選択のアルゴリズムは,これを発展させた Rのパッケージggm(Ver 2.3)のアルゴリズムである.

 2.6.2 適合度指標

 共分散選択により定まったSの最尤推定値Σˆを評価するために,適合度指標が必要になる.

グラフィカルモデリングではAICと逸脱度の 2 つを併用するのが標準的と考えられる21).AIC は,これまでに多くの統計モデルで用いられてきた.ここでは逸脱度の概要を示しておく.(18)

式と(19)式から,何の制約もないモデルをフルモデルとしてFMと表す.FMの対数尤度は         である.

 (i, j)∈Iでいくつかのσijをσij= 0 と制約を課すモデルを縮小モデルとし,RMで表す.以下,

制約の数によりRM1,RM2,… とする.RMの最大対数尤度は       logLμ ,Σ)=nplog(2π)

2 −nlog|Σ| 2 −

n

k=1(x−μ)Σ−1x−μ)

2     

n

k=1

x

kμ˜)Σ−1x

kμ=

n

k=1

x

kx¯)Σ−1x

kx¯+ nx − μ¯ )Σ−1x¯μ)   

(xL ,−1

ii =n 2

ii

| −1|nsii

2 =0 σ

Σ Σ−1

Σ

(xL , −1

ij = n

−1 i j

| −1|−nsi j=0 σ

Σ Σ Σ

logL(FM)=nplog(2π)

2 nlog|S|

2 np 2

logLRM= nplog(2π)

2 nlog| ˆΣ| 2 中央大学社会科学研究所年報

(15)

となり,これらFMとRMの最大対数尤度の差の 2 倍がRMとFMに対する逸脱度(deviance)と して,dev(RM)と表す.逸脱度は次の式で表される.

     

 RMが真のときdev(RM)は漸近的にχ2分布に従う.このとき自由度は制約したパラメータ 数である.縮小モデルRM1 ( 1 つのパラメータを制約)とRM2 (さらにもう 1 つのパラメー タを制約,合計 2 つのパラメータを制約)にはRM1 ⊃RM2 の包含関係にあり,dev(RM2 )侒 dev(RM1 )となる.この関係からパラメータを減少させることにより逸脱度は増加する.そこ で,dev(RM2 )−dev(RM1 )からRM1 からRM2 へとパラメータを縮小したモデルにしたとき に,ゼロとしたパラメータの有意性をχ2検定から検証できる(宮川,1997,83頁)22).  共分散選択は,分析に用いる確率変数から構成されるグラフが完全であるところから出発す る.まず,偏相関係数を導出し,値がゼロに近い,つまり絶対値最小ものから順次偏相関係数 をゼロとする制約を課して,再度偏相関係数を導出する手順を繰り返し,モデルの適合度AIC やdev(RM)が最適となるモデルを最終的なモデルとして選択するプロセスである.

 では,政治参加に関する確率変数を,次節の分析よりも変数を少なくして統計解析ソフトR のパッケージggmによる具体的分析手順を説明する.

 共分散選択は,分析モデルを構成する確率変数から構成される完全グラフから出発し,以下 の<1>〜<6>の手順で行う.

 <1> 分析に用いる観測された確率変数から標本相関行列R=(rij)を作成する.これをフ ルモデル(FM)の標本相関行列とする.また,p0=(rijrest)を標本偏相関行列とする.この ときAIC0= 0,dev(RM0)= 0 である.

 <2> p0のなかで絶対値最小である要素をrijrest= 0 とする.このp0から母偏相関係数rijrest

= 0 としたモデルのもとで共分散選択アルゴリズムにより,Σ^ を推定する.

 <3> この,Σ^ からRM1の相関行列R1および偏相関行列p1を作成する.このときの適合度 をAIC1,逸脱度をdev(RM1 )その逸脱度のp値をp1とする.

 <4> <1><2>と同様に,p1の絶対値最小である要素をrijrest= 0 として,そのp1から共 分散選択アルゴリズムによりΣ^1を推定する.

 <5> このΣ^1から,R2p2を作成する.このときの適合度をAIC2,逸脱度をdev(RM2 ), そのp値をp2とする.このときAIC1>AIC2およびp1p2となれば,ここで推定を終了し,最 適モデルはRM1 とする.AIC1<AIC2ならば<6>に進む.

 <6> 以下,<1>〜<5>で行ったFMとRMの推定と逸脱度の計算を,RM2 とRM3,… で 行い,その都度AICとdev(RM)の変化をみて,最適モデルを判断する.

dev(RM)= 2 logL(FM)−logL(RM)= nlog

nlogΣˆ 2 市民の政治参加(三船)

(16)

表‑1 変数名と政治参加の形態 変数 政治参加形態

X1 83年衆議院選挙で投票 X2 政治集会に参加 X3 国会議員に接触 X4 市民・住民運動に参加 X5 自治会・町内会に参加  2.6.3 データを用いた具体的分析手順

 本稿で分析する「政治参加」とは,これまで分析対象とされてきた広範な政治参加形態を対 象としており,全部で13項目になる.グラフィカルモデリングの手法で13項目の変数をすべて 用いて分析結果を表示すると冗長になり,グラフ自体も煩雑なものとなる.

 本節では,分析過程全体を把握するために,政治参加を表す確率変数の数を 5 つとして手順 を確認する.用いる確率変数は表 1 に示す.

 分析は統計解析ソフトRでグラフィカルモデリングを実行するためのggmというパッケージ を用いた23).表 2 はフルモデル,つまり 5 つの確率変数間の標本相関係数と標本偏相関係数 である.確率変数はX1は 0 と 1 のダミー変数であり,あとは 3 〜 4 段階尺度の変数であるから,

ポリコリック相関係数とポリシリアル相関係数である24).表 2 の偏相関係数で絶対値最小は X1X4の係数で−.013である.よって,ρ14.rest= 0 という制約を課して,さらに分析を進める.

 結果は表 3 に示す.AIC1=−1.809,dev(RM1 )=0.191である.この逸脱度の分布をχ2分布 で近似すると,p=0.662である.つまり,RM1 が正しいときにdev(RM1 )=0.191以上になる 確率が0.662ということである.表 3 で最も小さい偏相関係数はX1X5の−.033であるから

ρ15.rest= 0 という制約を課して分析を進める.結果は表 4 に示す.AIC2=−2.431,dev(RM2 )

=1.569でAICは小さくなっており,dev(RM2 )−dev(RM1 )=1.569−0.191=1.378(df=1 ),ρ=

0.240で当てはまりはよい.表 4 で最も小さな相関係数はX1X3の.081であるからρ13.rest= 0 という制約を課して分析を進める.結果は表 5 に示す.AIC3=3.777であり,AIC3>AIC2と 当てはまりは悪くなっている.dev(RM3 )−dev(RM2 )=9.738,p=0.002と逸脱度のp値はか なり小さい.よって,ρ13.rest= 0 という制約はしない方がよいと判断できる.これまでの結果 を総合的に判断すると,表 4 の偏相関係数からグラフを構築するのが最適であり,グラフは 図 2 となる.

中央大学社会科学研究所年報

(17)

表‑2 FMの相関係数と偏相関係数

相関係数 X1 X2 X3 X4 X5 偏相関係数 X1 X2 X3 X4 X5

X1 1.000 X1 ――

X2 .324 1.000 X2  .291 ――

X3 .161 .259 1.000 X3  .091 .117 ――

X4 .101 .331 .252 1.000 X4 −.013 .213 .103 ――

X5 .089 .305 .323 .404 1.000 X5 −.029 .160 .221 .304 ――

AIC0= 0 devFM)= 0 df= 0

表‑3 RM1 の相関係数と偏相関係数

相関係数 X1 X2 X3 X4 X5 偏相関係数 X1 X2 X3 X4 X5

X1 1.000 X1 ――

X2 .323 1.000 X2  .289 ――

X3 .161 .259 1.000 X3  .090 .117 ――

X4 .112 .331 .252 1.000 X4  .000 .210 .102 ――

X5 .088 .305 0.323 .404 1.000 X5 −.033 .161 .222 .305 ――

AIC1=−1.809 dev(RM1 )=.191 df= 1

表‑4 RM2 の相関係数と偏相関係数

相関係数 X1 X2 X3 X4 X5 偏相関係数 X1 X2 X3 X4 X5

X1 1.000 X1 ――

X2 .323 1.000 X2 .282 ――

X3 .161 .259 1.000 X3 .081 .121 ――

X4 .121 .331 .252 1.000 X4 .000 .210 .102 ――

X5 .119 .305 .323 .404 1.000 X5 .000 .151 .219 .305 ――

AIC2=−2.431 dev(RM2 )=1.569 df= 2

表‑5 RM3 の相関係数と偏相関係数

相関係数 X1 X2 X3 X4 X5 偏相関係数 X1 X2 X3 X4 X5

X1 1.000 X1 ――

X2 .324 1.000 X2 .299 ――

X3 .084 .259 1.000 X3 .00000 .143 ――

X4 .107 .331 0.252 1.000 X4 .00000 .209 .103 ――

X5 .099 .305 0.323 0.404 1.000 X5 .00000 .151 .220 .305 ――

AIC3=3.777 devRM3 )=9.777 df= 3 市民の政治参加(三船)

参照

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