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寒冷地におけるイネの安定的多収メカニズムに関する作物学的研究

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,201927

寒冷地におけるイネの安定的多収メカニズムに関する作物学的研究

生物資源科学専攻 作物生産生物講座 作物学 若林

1.緒言

近年世界規模で進行する温暖化の影響により,低緯度地域でのイネの生産性の低下が予想されて いる。一方,中・高緯度地域では温暖化によりイネの生産性が増加することが予想されており,特 に高緯度寒冷地域における稲作は,将来的に食糧安全保障の一端を担うものと考えられる。本研究 では,寒冷地のイネの安定的多収メカニズムを解明するために,近年育成された多収品種を供試し て,2 カ年(4 環境条件)の圃場試験を行った。そして,登熟期におけるシンク充填において,安 定的に多収を達成するうえで求められる要因について解析を行った。

2.材料と方法

2016年度は,上川農業試験場において標準移植区(標準区)を設けて2反復の圃場試験を行った。

2017年度は,北海道大学の試験圃場にて早植区,標準区および晩植区の計3水準,各3反復を設け た。試験区は全て乱塊法とした。多収品種である「そらゆき」および「そらゆたか」に加えて,対 照品種として「きらら397」を供試した。出穂日,登熟中期および成熟日に, 草丈, 葉面積および 地上部の器官別乾物重について調査した。また,茎から穂への非構造性炭水化物(NSC;

Non-Structural Carbohydrates)の再転流,個葉の光合成能力,受光態勢および葉の老化といった ソース特性に関わる要因について網羅的に解析を行った。

3.結果と考察

登熟期のシンク充填では,前期と後期で各々メカニズムが異なることを明らかにした。登熟前期 では,光合成による同化産物の生産量よりも,同化産物をいかに効率的に穂へ分配するかが収量性 を決定する要因であった。対照品種では,出穂後も茎へ同化産物が優先的に分配されており,その 結果,穂への分配が減少していた。茎へ分配された同化産物は,NSCとして蓄積されると同時に,

節間伸長にも利用されていた。このことから,出穂後における茎の積極的な同化産物の蓄積を抑制 することは,結果として穂への同化産物の分配を向上させると推察した。また,生育期間の気象要 因が生育に不利であるほど,穂への効率的な同化産物の分配は,収量安定性において重要な特性で あることが示唆された。一方,登熟後期では同化産物の生産量がシンク充填に寄与していた。登熟 後期の同化産物の生産は,葉面積や受光態勢ではなく,個葉の光合成能力との間に正の相関関係が 認められた。多収品種は,特に下位葉の光合成能力が高く,これは登熟期における下位葉の老化が 対照品種よりも遅いことに起因していた。このように上位葉だけではなく,下位葉を含む個体群落 全体で,登熟後半まで高い光合成能力を維持することは,葉面積が少ない寒冷地の早生品種にとっ て,特に重要な特性であると考えられた。

4.結論

寒冷地の早生品種において,シンク充填を高めるうえで登熟の前期と後期で求められる特性が異 なることが明らかになった。すなわち,前期では穂と茎との間で生じる同化産物競合の緩和が,後 期では下位葉のStay-green形質の獲得が各々重要となることが示唆された。

参照

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