線形シグマモデル
パイオンと核子を含んでいるカイラル対称な有効理論である線形シグマモデルを見ますが、ほとんどがカイラル 変換の計算をしているだけです。パイオンが出てくるので、PCACとの関係も見ます。
モデルに意味を与えるために具体的な粒子名を使うので、ある程度の素粒子の粒子構成の知識があることを前提 にしています。粒子の意味が分からなければラグランジアンの構成だけを見てください。
ここでは
SU (2)
を使っていきますが、SU(2)
の単位行列は省いてかいています。知りたいのは核子
(フェルミオン)
とパイオン(ボソン)
なので、ラグランジアンの基本的な形はL
0= 1
2 (∂
µπ
a)
2+ 1
2 (∂
µσ)
2+ iψγ
µ∂
µψ
とします。カイラル対称性を持つようにしたいので質量項は抜き、πaのカイラル対称な相方として
σ
を導入して います。σはスカラー場で、πaはπ
a= π = (π
1, π
2, π
3)
は擬スカラー場で(アイソスピンは 1)、ψ
はフェルミオ ン場で2
重項になっており(アイソスピンは 1/2)
ψ = (
ψ
1ψ
2)
とします。これらは
π
aはパイオン、ψは核子の2
重項でψ
1が陽子でψ
2が中性子に対応するようにしています。σ
はπ
aのカイラル対称性の相方となる最も軽いスカラーメソンなんですが実在が確認されていないものです。こ のように軽いクォーク2
つ(u, d
クォーク)から構成されるメソンと対応させるなら、σとπ
aはフェルミオンに よるSU(2)
に所属するスカラー、擬スカラーとして扱うべきなので、ψψとiψγ
5τ
aψ
と等しいとします(核子の
二重項ψ
と同じ記号で書きましたが、核子によるものではないです)。なので、σとπ
aのSU (2)
の変換はψψ
とiψγ
5τ
aψ
と同じになります。そうすると、L0はSU
V(2)
とSU
A(2)
の変換SU
V(2) : ψ ⇒ exp[ i 2 τ
aφ
a]ψ SU
A(2) : ψ ⇒ exp[ i
2 γ
5τ
aφ
a]ψ
に対して不変です
(「南部・Jona-Lasinio
モデル」参照)。τaはパウリ行列で、ローマ文字は1, 2, 3
を表し、同じ 文字の場合は和を取るとします。これだけだとスカラー場とフェルミオン場のラグランジアンを合わせただけなので、相互作用項を入れます。相 互作用項は核子とパイオンの相互作用によるものとして湯川型の
gψ(iγ
5τ
aπ
a)ψ
というのを入れたいですが
(g
はパイオンと核子での結合定数)、これは SU
A(2)
変換に対して不変になっていま せん。なので(ψψ)
2+ (ψiγ
5ψ)
2これが
SU
V,A(2)
変換に対して不変になっていることからψσψ
をくっつけ(σ
はψψ、π
aはψγ
5τ
aψ
と同じ変換を するため)L
int= gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ
とします
(これは南部・Jona-Lasinio
モデルをボソン化したものに対応)。さらにスカラー場の自発的対称性の破れを踏まえて、σと
π
aによるポテンシャルとしてL
pote= µ
22 (σ
2+ π
2) − λ
4 (σ
2+ π
2)
2(µ
2> 0)
第一項は質量項の符号を反転させたもので、第二項は
ϕ
4理論のスカラー場が2
つある場合の相互作用項です。こ れもちゃんとSU
V,A(2)
変換に対して不変になっています。というわけで、全体のラグランジアンは
L = 1
2 (∂
µπ
a)
2+ 1
2 (∂
µσ)
2+ iψγ
µ∂
µψ + gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ + µ
22 (σ
2+ π
2) − λ
4 (σ
2+ π
2)
2(1)
これはGell-Mann
とLevy
によって与えられた形で、線形シグマモデル(linear sigma model)
と呼ばれます(σ
モ デルと書かれたりもします)。線形シグマモデルのよく使われる変形として
Σ = σ + iτ
aπ
a, Σ
†= σ − iτ
aπ
aという
2 × 2
行列を導入した形があります(パウリ行列は τ
a= τ
a†)。明確に書きませんが、σ
の項には2 × 2
の単 位行列I
がかかっています。そうするとΣΣ
†= (σ
2+ π
2) (τ
aπ
aτ
bπ
b= (τ · π)
2= π
2)
∂
µΣ∂
µΣ
†= (∂
µσ + iτ
a∂
µπ
a)(∂
µσ − iτ
a∂
µπ
a) = (∂
µσ)
2+ (∂
µπ
a)
2これらによって
L = 1
4 tr∂
µΣ∂
µΣ
†+ iψγ
µ∂
µψ + gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ + µ
24 trΣΣ
†− λ
16 tr(ΣΣ
†)
2 トレースはSU (2)
の成分に対してです。さらにフェルミオン場を右手系ψ
R、左手系ψ
Lψ
R= 1
2 (1 + γ
5)ψ , ψ
L= 1
2 (1 − γ
5)ψ ψ
R= 1
2 (ψ
†+ ψ
†γ
5)γ
0= 1
2 ψ(1 − γ
5) , ψ
L= 1
2 (ψ
†− ψ
†γ
5)γ
0= 1
2 ψ(1 + γ
5)
に分けるとiψγ
µ∂
µψ + gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ
= i(ψ
R+ ψ
L)γ
µ∂
µ(ψ
R+ ψ
L) + g(ψ
R+ ψ
L)(σ + iγ
5τ
aπ
a)(ψ
R+ ψ
L)
= iψ
Rγ
µ∂
µψ
R+ iψ
Lγ
µ∂
µψ
L+ g(ψ
R+ ψ
L)σ(ψ
R+ ψ
L) + g(ψ
R+ ψ
L)iγ
5τ
aπ
a(ψ
R+ ψ
L)
途中で
ψ
Rγ
µ∂
µψ
L= 1
2 ψ(1 − γ
5)γ
µ1
2 (1 − γ
5)∂
µψ = 1
4 ψγ
µ(1 + γ
5)(1 − γ
5)∂
µψ = 0
となることを使っています。第四項はψ
Rγ
5ψ
R+ ψ
Rγ
5ψ
L+ ψ
Lγ
5ψ
R+ ψ
Lγ
5ψ
L= ψ
Rψ
R− ψ
Rψ
L+ ψ
Lψ
R− ψ
Lψ
L= − ψ
Rψ
L+ ψ
Lψ
R(γ
5ψ
R= 1
2 (γ
5+ 1)ψ = ψ
R, γ
5ψ
L= 1
2 (γ
5− 1)ψ = − ψ
L)
となっているので第三項と合わせると(ψ
R+ψ
L)σ(ψ
R+ ψ
L) + (ψ
R+ ψ
L)iγ
5τ
aπ
a(ψ
R+ ψ
L)
= ψ
R(σ − iτ
aπ
a)ψ
L+ ψ
L(σ + iτ
aπ
a)ψ
R= ψ
RΣ
†ψ
L+ ψ
LΣψ
Rよって、ラグランジアンは
L = 1
4 tr∂
µΣ∂
µΣ
†+ iψ
Rγ
µ∂
µψ
R+ iψ
Lγ
µ∂
µψ
L+ g(ψ
LΣψ
R+ ψ
RΣ
†ψ
L) + µ
24 trΣΣ
†− λ
16 tr(ΣΣ
†)
2(2)
という形になります。元のラグランジアンがSU
V,A(2)
変換に対して不変になっているので、左手系、右手系で書 かれたこれはSU
L(2) × SU
R(2)
変換で不変になっています(SU
V,A(2)
とSU
L(2) × SU
R(2)
は等価)。
この形から不変性を確かめようとすると、
SU
L(2) × SU
R(2)
のすぐには分からない変換規則を使うので、SU
L(2) × SU
R(2)
に対してこのラグランジアンが不変であることを利用して、それを出します(下の補足も参照)。SU
L(2) × SU
R(2)
の変換はψ
L,R⇒ exp[ − i
2 τ
aθ
a] = U ψ
L,Rψ
L⇒ exp[ i
2 τ
aα
a]ψ
L= exp[ − i
2 τ
aω
a]ψ
L= U
Lψ
Lψ
R⇒ exp[ i
2 τ
aβ
a]ψ
R= exp[ i
2 τ
aω
a]ψ
R= U
Rψ
R一番上がベクトル変換で、下二つが左手系、右手系に対する変換です
(「南部・Jona-Lasinio
モデル」参照)。こ れらの変換に対してψ
L,Rの微分項は不変なのでこれらの項は無視しますまず、ベクトル変換の場合を見ます。Σは
SU (2)
の2 × 2
行列なので、両側からU, U
†をつけたΣ ⇒ UΣU
†という変換だとすれば、trΣΣ†はトレースの性質から
tr(ΣΣ
†) ⇒ tr(U ΣU
†U Σ
†U
†) = tr(U ΣΣ
†U
†) = tr(U
†U ΣΣ
†) = tr(ΣΣ
†)
とできるので、変換に対して不変になります。大局的変換なので微分が作用しても同様ですし、2乗がついていて も同じです。なので、ラグランジアン
(2)
の第一項と第六項も不変です。残っている第四項はψ
LΣψ
R⇒ ψ
LU
†U ΣU
†U ψ
R= ψ
LΣψ
Rとなるので不変になります。というわけで、2
× 2
行列Σ
はΣ ⇒ U ΣU
†と変換されます。次に
U
L,Rに対してどうなっているのか見ます。(2)の第四項を見てみると、ΣがΣ ⇒ U
LΣU
R†と変換されれば、第四項は
ψ
LΣψ
R⇒ ψ
LU
L†U
LΣU
R†U
Rψ
R= ψ
LΣψ
Rと不変になることが分かります。そして、trΣΣ†も
tr(ΣΣ
†) ⇒ tr(U
LΣU
R†U
L†Σ
†U
R) = tr(U
LΣU
R†U
RΣ
†U
L†) = tr(ΣΣ
†)
となるので、不変になっています。微分がかかっているものと
2
乗の場合も同様です。よって、軸性変換に対してΣ ⇒ U
LΣU
R† と変換されます。群論とは無関係に天下り的に導きましたが、これがSU
L(2) × SU
R(2)
に対する 変換性です。変換を見てきたので、次は保存カレントを導きます。今は場しか変換していないので、保存カレントは
J = ∑
i
∂ L
∂(∂
µϕ
i) δϕ
i= ∂ L
∂(∂
µψ) δψ + ∂ L
∂(∂
µσ) δσ + ∂ L
∂(∂
µπ
a) δπ
aで求められます。ラグランジアンの形は
(1)
を使うことにします。σはψψ
と同じ変換なのでSU
V(2)
変換での無 限小変換による変化分はδ
Vσ = 0
です。πaはψτ
aγ
5ψ ⇒ ψ
†(1 − iτ
bφ
b2 )γ
0τ
aγ
5(1 + iτ
cφ
c2 )ψ
= ψ
†γ
0γ
5(1 − iτ
bφ
b2 )τ
a(1 + iτ
cφ
c2 )ψ
= ψγ
5(τ
a− i τ
bτ
a2 + i τ
aτ
b2 )φ
bψ
= ψγ
5(τ
a+ i
2 [τ
a, τ
b])φ
bψ
= ψγ
5(τ
a− ϵ
abcτ
c)φ
bψ
= ψγ
5τ
aψ − ϵ
abcφ
bψγ
5τ
cψ
= ψγ
5τ
aψ − (φ × ψγ
5τ ψ)
aπ
a= iψγ
5τ
aψ
とすればπ
a⇒ π
a− (φ × π)
aなので変化分は
δ
Vπ
a= − (φ × π)
aです。δψは単純にδ
Vψ = iτ
aφ
aψ/2
です。よってベクトルカレントJ
Vµ をJ = − φ · J
Vµと定義すれば
− φ · J
Vµ= − ψγ
µτ
a2 φ
aψ − ∂π
a(φ × π)
aJ
Vµ= ψγ
µτ
2 ψ + π × ∂
µπ (A · (B × C) = B · (C × A)) (3)
となります。
同様に
SU
A(2)
では、σはσ = ψψ
とみなしてψψ ⇒ ψ
†(1 − iτ
bφ
b2 γ
5)γ
0(1 + iτ
cφ
c2 γ
5)ψ
= ψ
†γ
0(1 + iτ
bφ
b2 γ
5)(1 + iτ
cφ
c2 γ
5)ψ
= ψ
†γ
0(1 + iτ
aφ
aγ
5)ψ
= ψψ + ψ(iτ
aφ
aγ
5)ψ
これから変化分は
δ
Aσ = φ
aπ
aです。πaではψτ
aγ
5ψ ⇒ ψ
†(1 − iτ
bφ
b2 γ
5)γ
0τ
aγ
5(1 + iτ
cφ
c2 γ
5)ψ
= ψ
†γ
0(γ
5+ iτ
bφ
b2 )τ
a(1 + iτ
cφ
c2 γ
5)ψ
= ψ
†γ
0(τ
aγ
5+ iτ
bτ
aφ
b2 + iτ
aτ
bφ
b2 )ψ
= ψτ
aγ
5ψ + ψ( iτ
bτ
a2 + iτ
aτ
b2 )φ
bψ
= ψτ
aγ
5ψ + iψδ
abφ
bψ (τ
iτ
j+ τ
jτ
i= 2δ
ij)
= ψτ
aγ
5ψ + iφ
aψψ
ψψ
をσ
とすれば、変化分はδ
Aπ
a= − φ
aσ
です。δAψ
はδ
Aψ = iτ
aφ
aγ
5ψ/2
です。よって軸性ベクトルカレン トは− φ · J
Aµ= − ψγ
µτ
a2 φ
aγ
5ψ + (∂
µσ)φ
aπ
a− (∂
µπ
a)φ
aσ J
Aµ= ψγ
µτ
2 γ
5ψ − π∂
µσ + σ∂
µπ (4)
ベクトルカレントと軸性カレントの発散はラグランジアンが不変になっているので
∂
µJ
Vµ= 0 , ∂
µJ
Aµ= 0
となっています。また、フェルミオンの質量項があるときでは軸性変換に対して不変にならないので、保存カレン トの発散はラグランジアンの変化分
δ L
と等しいことから(「ネーターの定理」参照)、mψψ
の軸性変換の変化分 より∂
µJ
Aµ= imψτ γ
5ψ
となります。
左手系、右手系の変換を使っても同じ結果を導けます。ベクトル変換に対して
Σ
はΣ ⇒ (1 + i
2 τ
bθ
b)Σ(1 − i
2 τ
cθ
c) = Σ + i
2 (τ
bθ
bΣ − Στ
cθ
c)
= Σ + i
2 (τ
bθ
b(σ + iτ
aπ
a) − (σ + iτ
aπ
a)τ
cθ
c)
= Σ − 1
2 (τ
bθ
bτ
aπ
a− τ
aπ
aτ
bθ
b)
= Σ + 1
2 [τ
a, τ
b]π
aθ
b= Σ + iϵ
abcπ
aθ
bτ
c= σ + iτ
aπ
a+ i(π × θ) · τ
= σ + iτ
a(π
a− (θ × π)
a)
なので、σの変化分は
0
で、πaの変化分はδ
Vπ
a= − (θ × π)
aとなり、同じ結果になります。
U
Lに対してはΣ ⇒ U
LΣ = (1 + i 2 τ
bα
b)Σ
= σ + iτ
aπ
a+ i
2 τ
bα
b(σ + iτ
aπ
a)
= σ + iτ
aπ
a+ i
2 τ
bα
bσ − 1
2 τ
bα
bτ
aπ
a= σ + iτ
aπ
a+ i
2 τ
aα
aσ − 1
2 (α · π + iτ · (α × π))
= σ + iτ
aπ
a− 1
2 (π · α) + i
2 (τ · α)σ + i
2 τ · (π × α)
これから変化分はδ
Lσ = − 1 2 (π · α) δ
Lπ = 1
2 ασ + 1
2 (π × α) U
RではΣ ⇒ ΣU
R†= Σ(1 − i 2 τ
cβ
c)
= σ + iτ
aπ
a− i
2 (σ + iτ
aπ
a)τ
cβ
c= σ + iτ
aπ
a− i
2 (τ · β)σ + 1
2 (π · β + iτ · (π × β))
= σ + iτ
aπ
a+ 1
2 (π · β) − i
2 (τ · β)σ + i
2 τ · (π × β)
なので、変化分は
δ
Rσ = 1 2 (π · β) δ
Rπ = − 1
2 βσ + 1
2 (π × β)
フェルミオンに対してはψ
L⇒ U
Lψ
L= ψ
L+ i
2 (τ · α)ψ
Lψ
R⇒ U
Rψ
R= ψ
R+ i
2 (τ · β)ψ
Rと変換されるので
δ
Lψ
L= i
2 (τ · α)ψ
L, δ
Rψ
R= i
2 (τ · β)ψ
Rそうすると、左手系の変換に対するカレントは
− α · J
Lµ= − ψ
Lγ
µ(τ · α) 2 ψ
L− 1
2 (π · α)∂
µσ + 1
2 σ(α · ∂
µπ) + 1
2 ∂
µπ · (π × α) J
Lµ= ψ
Lγ
µτ
2 ψ
L+ 1
2 π∂
µσ − 1
2 σ(∂
µπ) + 1
2 (π × ∂
µπ)
右手系では− β · J
Rµ= − ψ
Rγ
µ(τ · β) 2 ψ
R+ 1
2 (π · β)∂
µσ − 1
2 σ(β · ∂
µπ) − 1
2 ∂
µπ · (π × β) J
Rµ= ψ
Rγ
µτ
2 ψ
R− 1
2 π∂
µσ + 1
2 σ(∂
µπ) + 1
2 (π × ∂
µπ)
となります。これらとJ
V,Aµ の式(3), (4)
を比較してみるとJ
Vµ= J
Rµ+ J
LµJ
Aµ= J
Rµ− J
Lµこのようになっていることが分かります。軸性カレントと一致することは
ψ
Rγ
µτ
2 ψ
R= 1
2 ψ(1 − γ
5)γ
µτ 2
1
2 (1 + γ
5)ψ = 1 4 ψ τ
2 γ
µ(1 + γ
5)(1 + γ
5)ψ = 1 2 ψ τ
2 γ
µ(1 + γ
5)ψ ψ
Lγ
µτ
2 ψ
L= 1
2 ψ(1 + γ
5)γ
µτ 2 1
2 (1 − γ
5)ψ = 1 4 ψ τ
2 γ
µ(1 − γ
5)(1 − γ
5)ψ = 1 2 ψ τ
2 γ
µ(1 − γ
5)ψ
から分かります。
対称性関係の話は終わりにしてラグランジアンを見ていきます。ラグランジアンでのポテンシャル部分
V = − µ
22 (σ
2+ π
2) + λ
4 (σ
2+ π
2)
2 の最小値を求めてみます。σとπ
による微分は∂V
∂σ = − µ
2σ + λσ(σ
2+ π
2) = σ( − µ
2+ λ(σ
2+ π
2))
∂V
∂π = − µ
2π + λπ(σ
2+ π
2) = π( − µ
2+ λ(σ
2+ π
2))
これらが0
になればいいので、最小値の地点はσ
2+ π
2= µ
2λ (µ
2> 0)
σ = 0, π = 0
が最小値になっていないので、対称性は自発的に破れています。これはラグランジアンの形からすでに 分かっていたことです。パイオンをゴールドストーンボソンだとすれば、質量は0
となり真空期待値は< π
a>= 0
となります。σは真空期待値を持たせてv =< σ >
となり、質量を得ます。この話はスカラー場の自発的対称性の 破れの話そのままで、具体的な粒子を使ったというだけです。ちなみに、ラグランジアン上にいるσ
とπ
aを真空 期待値に置き換えると− gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ ⇒ − gvψψ
とできるので、フェルミオンの質量項が現れます
(g > 0)。なので、フェルミオンは質量
m
f= gv
を獲得します。これはフェルミオンが力学的質量を獲得することを表しています。
ここでカイラル対称性をラグランジアン上であからさまに破るために、cを定数として
L
sb= − cσ
という項を加え
L = 1
2 (∂
µπ
a)
2+ 1
2 (∂
µσ)
2+ iψγ
µ∂
µψ + gψ(σ + iγ
5τ
aπ
a)ψ − V
ef fV
ef f= − µ
22 (σ
2+ π
2) + λ
4 (σ
2+ π
2)
2+ cσ
とします。Vef f を微分した最小値の式は∂V
∂σ = − µ
2σ + λσ(σ
2+ π
2) + c = σ( − µ
2+ λ(σ
2+ π
2)) + c = 0
∂V
∂π = − µ
2π + λπ(σ
2+ π
2) = π( − µ
2+ λ(σ
2+ π
2)) = 0
σ
の微分の式をみるとc ̸ = 0
のとき− µ
2+ λ(σ
2+ π
2) = 0
とすることができません。なので、πの微分の式からπ = 0
になっている必要があります。よって最小値の位置はπ = 0
とλσ
3− µ
2σ + c = 0
によって与えられます。
L
sbによってカイラル対称性は壊れているので軸性カレントは保存しなくなっています。軸性変換によるラグ ランジアンの変化δ L
はL
sbの変化分だけなので、σ= ψψ
の変換から∂
µJ
Aµ= δ L = δ L
sb= − cπ (5)
となって実際に
0
になっていないことが分かり、パイオン場に比例しています。「自発的対称性の破れ」と同じように、真空期待値からずらして質量を求めてみます。σを真空期待値
v
によってσ(x) ⇒ v + σ(x) , π(x) ⇒ π(x)
とすると、ポテンシャル部分は
V
ef f= − µ
22 (σ
2+ π
2) + λ
4 (σ
2+ π
2)
2+ cσ
= − µ
22 (σ
2+ v
2+ π
2+ 2vσ) + λ
4 (σ
2+ v
2+ π
2− 2vσ)
2+ cσ + cv
= − µ
22 (σ
2+ v
2+ π
2) + λ
4 (2v
2σ
2+ 2v
2π
2+ 4v
2σ
2) + · · ·
= − 1
2 (µ
2− 3λv
2)σ
2− 1
2 (µ
2− λv
2)π
2+ · · ·
= 1
2 (2µ
2− 3c
v )σ
2− 1 2 c
v π
2+ · · · (c = v(µ
2− λv
2))
「· · ·」は
σ
とπ
が2
次になっていない項です。c= v(µ
2− λv
2)
はσ
をv + σ
に置き換えて、v側の式を取り出し ただけです。これの第一項がσ
の質量項、第二項がπ
の質量項になるので、質量m
σとm
πは(V
ef f はラグラン ジアンで− V
ef f としているので符号が反転)
m
2σ= 2µ
2− 3c
v , m
2π= − c v
となり、パイオンも質量を得ます。vは
σ
の真空期待値なのでv > 0
とすれば、c <0
のときに各質量は正の値に なります。また、パイオン質量は全部同じなので、アイソスピンの対称性は壊さないです(c = 0
では質量0
でのパイオン)。またここでも、σ
⇒ σ + v
の置き換えによって、フェルミオンの質量項としてgvψψ
が出てくるの で、フェルミオンの質量m
fはm
f= gv
となります。
パイオンが質量を得ているので、PCACと関連付けられます。軸性カレントを
σ + v
で置き換えて⟨ 0 |
と| π
a⟩
で挟むと⟨ 0 | J
Aµa| π
b⟩ = ⟨ 0 | (ψγ
µτ
a2 γ
5ψ − π
a∂
µσ + σ∂
µπ
a+ v∂
µπ
a) | π
b⟩
右辺の括弧内の第一項は核子、第二項と第三項はスカラーメソンの状態を生成、消滅させる演算子を持っている ので、終状態
⟨ 0 |、始状態 | π
b⟩
に挟まれた中では寄与しません。なので、第四項だけが寄与することになって⟨ 0 | J
Aµa| π
b⟩ = v ⟨ 0 | ∂
µπ
a| π
b⟩
ここで
v
がパイオンの崩壊定数f
πだと思うと、「カイラル対称性とPCAC」で出てきた PCAC
J
Aµa= f
π∂
µπ
aとなります。もしくは先に
PCAC
を仮定して⟨ 0 | ∂
µJ
Aµa| π
b⟩ = − f
πm
2πδ
abを持ち出すと、(5)による
( ⟨ 0 | π
a| π
b⟩ = δ
abと規格化して)⟨ 0 | ∂
µJ
Aµa| π
b⟩ = − c ⟨ 0 | π
a| π
b⟩ = − cδ
abと比較することで
c = − f
πm
2πこれを使うと
σ
の真空期待値v
はv = f
πとなって、パイオンの崩壊定数となります。
ラグランジアンにいるフェルミオンの質量項は
− mψψ
であり、これはカイラル対称性を壊します。ここではカ イラル対称性を壊す項としてL
sb= − cσ
というのを入れました。この対応と、σはψψ
と同じように扱ってきた ことを考えると、古典的な量としてはこの二つは等しいとできるのではないかと予想できます。つまり、真空期待 値において⟨ 0 | cσ | 0 ⟩ = m ⟨ 0 | ψψ | 0 ⟩
が成立していると考えられます。右辺の
ψ
は核子でなくクォークによるもので、u, d
クォークだとします。c = − f
πm
2π と⟨ 0 | σ | 0 ⟩ = v = f
πを使うことでf
π2m
2π= − m
u+ m
d2 ⟨ 0 | (uu + dd) | 0 ⟩
となります
(右辺は m
u≃ m
dとして平均を取ったものをm
に対応させています)。これをGell-Mann・Oakes・
Renner
の関係と言います。これはパイオンの崩壊定数、パイオンの質量とクォークのカレント質量を関係づけているために物理量の計算に利用されます。例えば、クォークの質量を
0
としていない時の南部・Jona-Lasinioモデ ルでのスケールを決めるのに使われます(0
としているときはクォークに適用したゴールドバーガー・トライマン の関係を利用します)。・補足
Σ
がなんでU ΣU
†と変換されるのかの簡単な説明をしておきます。SU(2)
の変換自体は2
成分のψ
をψ ⇒ exp[ i
2 τ
aθ
a]ψ = U ψ
と変換させます。この変換に対して
3
成分ベクトルがどう変換されるのかをみます。3成分ベクトルはψ
とパウ リ行列によってV
a= ψ
†τ
aψ
このように作ります。そうすると
SU(2)
の変換によってV
a⇒ V
′a= ψ
†U
†τ
aU ψ
となります。U†
τ
aU
をθ
の2
次まで展開してみるとU
†τ
aU = e
−iτ·θ/2τ
ae
iτ·θ/2= (1 + ( − i
2 τ · θ) + 1 2 ( − i
2 τ · θ)
2+ · · · )τ
a(1 + ( i
2 τ · θ) + 1 2 ( i
2 τ · θ)
2+ · · · )
= τ
a+ ( − i
2 τ · θ)τ
a+ τ
a( i
2 τ · θ) + ( − i
2 τ · θ)τ
a( i
2 τ · θ) + 1 2 ( − i
2 τ · θ)
2τ
a+ 1 2 τ
a( i
2 τ · θ)
2+ · · ·
= τ
a+ i( − 1
2 τ · θ)τ
a+ iτ
a( 1
2 τ · θ) − 1 2 ( − 2( 1
2 τ · θ)τ
a( 1
2 τ · θ) + ( 1
2 τ · θ)
2τ
a+ τ
a( 1
2 τ · θ)
2) + · · ·
= τ
a− i[ 1
2 τ · θ, τ
a] − 1 2 [ 1
2 τ · θ, [ 1
2 τ · θ, τ
a]] + · · ·
真面目に展開しましたが、ハウスドルフの公式e
iABe
−iA= B + i[A, B] + i
22! [A, [A, B]] + · · ·
において、A
⇒ − A
に置き換えたのを使えばいいだけです。交換関係を計算すると[ 1
2 τ · θ, τ
a] = 1
2 θ
b[τ
b, τ
a] = iθ
bϵ
bacτ
c([τ
a, τ
b] = 2iϵ
abcτ
c) (6) ϵ
abcはレヴィ・チビタ記号です。ここで、ベクトルに対する3
次元回転の変換exp[iI
aΛ
a]
の生成子I
1=
0
0
0 0
0
− i 0
i
0
, I
2=
0 0 i 0 0 0
− i 0 0
, I
3=
0
− i
0 i
0
0 0
0
0
を持ち出します。これらの
0
でない行列成分の位置とそれらが反対称になっていることから、レヴィ・チビタ記 号と(I
a)
bc= − iϵ
abcという関係になっています
((I
a)
bcはI
aの行列成分bc
という意味です。行列成分の添え字は下に書くことにしま す)。これを使うと交換関係(6)
は[ 1
2 τ · θ, τ
a] = iθ
bϵ
bacτ
c= − θ
b(I
b)
acτ
c= τ
c(I · θ)
ca 同じように[ 1
2 τ · θ, [ 1
2 τ · θ, τ
a]] = − 1
2 [τ
bθ
b, τ
c](I · θ)
ac= − iϵ
bcdτ
dθ
b(I · θ)
ac= (I
b)
cdτ
dθ
b(I · θ)
ac= (I · θ)
ac(I · θ)
cdτ
d= (I · θ)
2acτ
c= τ
c(I · θ)
2caよって
U
†τ
aU = τ
a+ i(I · θ)
acτ
c− 1
2 (I · θ)
2acτ
c= (δ
ac+ i(I · θ)
ac− 1
2 (I · θ)
2ac)τ
c= (1 + i(I · θ) − 1
2 (I · θ)
2)
acτ
c= exp[i(I · θ)]
acτ
cこれをベクトルの変換に入れると
V
a⇒ V
′a= ψ
†e
iIac·θτ
cψ = e
iIac·θψ
†τ
cψ = e
iIac·θV
cとなって、よく見るベクトルの回転変換になります。つまり
SU (2)
の変換は、ベクトルの3
次元回転変換、よう はSO(3)
の変換になっていることが分かります。この結果から、Π =
τ
aϕ
aみたいになっているのはΠ = τ
aϕ
a⇒ Π
′= τ
ae
iIac·θϕ
cと変換され、これは
U τ
aU
†= τ
a+ i[ 1
2 τ · θ, τ
a] − 1 2 [ 1
2 τ · θ, [ 1
2 τ · θ, τ
a]]
= τ
a+ iτ
c(I · θ)
ca− 1
2 τ
c(I · θ)
2ca= τ
cexp[i(I · θ)]
caであることから
Π
′= τ
ae
iIac·θϕ
c= U τ
cU
†ϕ
c= U τ
cϕ
cU
†= U ΠU
†となります。