メキシコの仮面 : 芸能による分類の試み
著者 黒田 悦子
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 12
号 1
ページ 129‑174
発行年 1987‑09‑05
URL http://doi.org/10.15021/00004354
黒田 メ キ シ コの 仮 面
メ キ シ コ の 仮 面 芸 能 に よ る分 類 の 試 み
黒 田 悦 子 *
Mexican Masks at the National Museum of Ethnology, Japan
Etsuko KURODA
This paper attempts to classify, according to genres of danzas, the collection of Mexican masks at the National Museum of Ethnology, which now includes part of the former Cordry Collection. The classification schema is as follows: 1) animistic masks including devil, caiman, and tiger masks; 2) masks related to pre-Hispanic gods; 3) those for the Moros y Cristianos; 4) masks for morality plays; 5) carnival masks; 6) masks for Holy Week celebrations; 7) those for All Saints' Day rituals; 8) death masks;
9) payaso masks; 10) masks which function as musical instruments;
11) masks for the danzas related to occupations; 12) unknown masks; and 13) decorative masks (mentioned in the concluding remarks). Each of these indices are subdivided, and the major iconographic characteristics of the masks are commented on, emphasizing the visual imagination of folk society.
1. は じめ に 2.芸 能 によ る分 類
1) 生 き物 や 自然 の力 に関 わ る仮 面 2) 先 スペ イ ン期 の神 々 に 由来 す る仮 面 3) モ ロ と ク リス テ ィ ア ノス の仮 面 4) 寓 意・ 劇 , 縁起 物 用 仮 面 5) カー ニ バ ル仮 面 6) 復 活祭 用 の仮 面
7) 万 霊 節 用 の仮 面 一 チ ャ ン トロー 8) 死 の 仮 面
9)道 化 仮 面
1 0) フ ィエ ス タ に附 随 す る仮 面 11 ) 風 俗 ,職 業 に関 わ る芸能 の 仮 面 12) 芸 能 名 が不 明な 仮 面
3.結 び に かえ て 一 仮 面 の将 来 に つ い て一
* 国立民族学博物 館第 4研究部
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国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号
1. は じ め に
メ キ シ コの仮 面 は種 類 が 極 めて 多 い 。 そ の 理 由 の一 端 は歴 史 的 に説 明 が つ くだ ろ う。
先 ス ペ イ ン期 に, 既 に仮 面 は作 られ て お り, 死 者 の 顔 を 覆 うた め の仮 面 が あ った こ と は 考古 学資 料 か ら明 らか で あ る し, 色 々な儀 礼 に仮 面 が 使 わ れ た こ とは , コデ ィセ と よ ば れ る古 文 書 に載 せ られ た絵 や土 器 に描 か れた 絵 か ら明 らか で あ る。 この よ う に仮 面 を 作 る習慣 の あ った社 会 に ス ペ イ ン人 が 侵入 し, カ ト リックの 布 教 の た め の 芸 能 や 宗 教 劇 の 上 演 に 仮 面 を 使 った ので ,仮 面 の製 作 意 欲 は 大 い に助 長 され た と推 測 さ れ る。
しか し, この 頃 , ス ペ イ ン人 が, ど の よ うな仮 面 を持 って きた か に つ いて は資 料 が な い の で , 土 着 とス ペ イ ンの伝 統 が, ど の よ うに接 触 した か を , 具体 的 には論 じえ な い。
二 文 明 の 接触 か ら時 間 が経 ち ,征 服 者 に よ る支 配 と彼等 の も た ら した カ トリ ックが メ キ シ コに定 着 す るの が ,16 世 紀 か ら1 9世 紀 初 頭 まで の 植 民 地 時代 で , この 期 に各 地 域 や 各 民 族 集 団 に お け る 民俗 カ ト リック の有 り様 が 決 ま り, そ れ に つ れ, 芸 能 と仮 面 の 地 域 差 が 大 体 にお い て 形成 さ れた , と推 測 され る。
こ れ に続 く1 9世 紀 は , 独 立 と改 革 の世 紀 で , 社 会 動 乱 が 続 き, 芸 能 に も変 化 が 起 こ った 例 が 多 い の で , 仮 面 に も何 が しか の変 化 が あ った だ ろ う とは思 うが , こ れ につ いて も資 料 が な く, 概 括 しに くい 。 そ れ に して も, 3世 紀 に及 ぶ植 民 地 時 代 に定 着 し た民 俗 カ トリ ックの 芸 能 を 支 え て きた仮 面 が1 9世 紀 に少 々変 化 を こ うむ りなが ら も,
今 世 紀 に まで 伝 達 され た わ け で , お蔭 で ,現 在 , 私 達 は数 々の メキ シ コの 仮 面 を 見 る こ とが で き るの で あ る。
メ キ シ コの 仮 面 の 歴 史 を語 ろ うと して も, 推 測 の域 を越 え な い発 言 しか で きな いが , 次 の二 つ の事 実 は明 らか で あ る。第 一 に は, ア ニ ミズ ムを 許容 した民 俗 カ ト リックが メ キ シコの 仮 面 を 保 護 し,豊 か に した こ とで あ る。 第二 には ,色 々 な民 族 集 団 が 存 在 して い た た め , 仮 面 の バ リエ ー シ ョ ンが極 めて 豊 か にな った とい う こ とで あ る。 この 認 識 を 得 た 後 , 実 際 に私達 が で きる こ と とい え ば, 現在 の 「民俗 社 会 」 に見 出 さ れ る 仮 面 に接 し, 一 点 一 点 を 見 分 け, そ こか ら得 られ る知 見 を 大 切 にす る こ とで あ ろ う。
現 在 の メ キ シ コで 仮 面 を 持 つ 「民俗 社 会 」 と は, 仮 面 が 収 集 され て い る地 名 か ら判 断 して ,私 は 次 の よ うな 社 会 の種 類 を 想 定 して い る。 第 一 は, 現在 の イ ンデ ィヘ ナ
(イ ンデ ィオ ) 社 会 で あ り, 植 民 地 時代 の芸 能 を 濃厚 に残 して い る社 会で あ る。 この 範疇 に は色 々 な社 会 が あ る。 ミへ ( 族 ) の よ うに植 民 地 時 代 の 文 化 を 形 どお りに受 容 した社 会 もあ ろ う し, ッ ォ ッ ィル ( 族 ) の よ うに ,外 来 の文 化 を 自分 流 に再 解 釈 しえ た社 会 もあ ろ う。 第 二 は , 或 る時 点 まで は イ ンデ ィヘ ナ社 会 とい え る社会 で あ った が ,
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黒 田 メ キ シ コの 仮 面
社 会 ・経 済 ・文 化 上 , 脱 イ ン デ ィ ヘ ナ 化 し た 社 会 で あ り, 典 型 例 に は , ジ ョー ジ M . フ ォ ス タ ー の 調 査 し た ツ ィ ン ッ ン ツ ァ ン が 挙 げ ら れ る。 ツ ィ ン ツ ン ッ ァ ンは 元 々 は タ ラ ス カ ( 族 ) の 村 で あ った が , フ ォ ス タ ー を し て 「農 民 社 会 」 と よ ば し め た 局 面 の 多 い 社 会 で , 成 熟 し た 民 俗 カ ト リ ッ ク が 見 ら れ る。 第 三 は , い わ ゆ る メ ス テ ィ ー ソ社 会 で あ り, 町 で あ れ , 都 市 で あ れ , た と え メ キ シ コ ・ シ テ ィ 内 で あ れ , 民 俗 文 化 を 潜 在 的 に 有 して い る 社 会 で あ る。 上 記 の 三 社 会 は い ず れ も 仮 面 を 持 っ て い る が , 実 際 に 私 が 目 に した 仮 面 資 料 の ほ と ん ど は 第 一 と第 二 の 社 会 か ら 由 来 して い る 。
私 が 実 際 に 手 に 取 っ て 見 た 仮 面 は 国 立 民 族 学 博 物 館 所 蔵 の 409点 で あ る 。 当 館 の メ キ シ コの 仮 面 資 料 は ドナ ル ド ・コ ー ド リー 氏 の 著 名 な コ レ ク シ ョ ン の 部 分 的 購 入 に 始 ま り, ニ ュ ー ヨ ー ク の コ レ ク タ ー か ら の 数 回 に 渡 る 購 入 で 増 加 し, 1985年 に は 第 4研 究 部 の 八 杉 佳 穂 氏 に よ る収 集 品 が 加 わ り ,現 有 の 点 数 は 409点 に の ぼ っ て い る ( 1986年 12月 末 調 べ )。
現 物 の 仮 面 に も 資 料 が つ い て い る が , 一 つ 一 つ の 仮 面 の 判 定 に 役 立 つ 文 献 資 料 は 意 外 と 少 な く, 主 と して 図 録 か ら な る 数 点 [ FO NAD AN 1975; INs TI TuTE DE LA ARTEsANi A CHI APANEGA n. d.;JAcoBs oN and FRI Tz l 985;M oNTENEGRo n. d.;
O GAzoN I981; SEp亡LvEDA H ERRERA 1982; SocI EDAD DE ARTE M oDERNo 1945] と若 干 の 論 文 [Es s ER 1978,1983;G I LLMoRE I983;LuTEs 1983] を 越 え ず ・ 仮 面 を 全 面 的 に 扱 っ た 単 行 本 は CoRDRY [1980] と M oya R ubi o [1978]の 二 点 に 過 ぎ な い 。 し か し ・ K urat h [1967], M art i [1961], M om prad6 y Gut i 6rrez
[1976],Sal m er6n y H orcasi t as [1974] に 載 せ られ た フ ィ エ ス タ の 場 で 使 わ れ て い る 仮 面 の 写 真 図 , 説 明 が 私 の 理 解 を 大 い に 助 け て く れ た 。
2. 芸 能 に よ る 分 類
仮 面 は形 , 材 質 , 色 , 被 り方 , 地 域 , 等 々 , 色 々の指 標 によ り分 類 が可 能 で あ る。 しか し,
芸 能 に よ る民 俗 仮 面 の 分 類 は仮 面 の 全 体 像 を 知 るた め の第 一 歩 で あ る。 何 故 な ら, 現 在 の民 俗 社 会 で 使 われ る ほ とん どの 仮 面 は カ ト リッ クの フ ィエ ス タを に ぎわ せ る芸 能 に使 わ れ て い る か らで あ る。 そ れ に,そ もそ も,メ キ シ コの仮 面 へ の私 の 興 味 は ミへ の 村 々で フ ィール ドワ ー ク 中 に フ ィエ ス タの 最 中 に現 わ れ た仮 面 に驚 きを 覚 え た こ とか
ら始 ま った の で, 仮 面 を芸 能 の脈 絡 で 理 解 した い と私 は前 々か ら思 って い た の で あ る。
村 で仮 面 が 実 際 に使 用 さ れ る様 子 を 見 て い る と,興 味 深 いの は ,踊 り手 が 仮 面 をつ け て動 き始 め るや い な や, 仮 面 が生 き た表 情 にな る こ とで あ った。 この 瞬 間 の 驚 きを
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国立民族学博物館研究報告 i 2巻 1号 仮 面 の分 類 に生 かす こ とが 必 要 で ,収 蔵 庫 で死 んだ よ う に並 ん で い る仮 面 に芸 能 とい う息 吹 きを ふ きか け て生 か して み よ う。 一 つ一 つ の仮 面 が どの 芸 能 に どの配 役 で 現 わ れ るの か を 考 え る と, 仮 面 が 脈 絡 と役 割 を 得 て ,動 きは じめ るの で あ る。
自 ら仮 面 を収 集 し,概 括 を試 み た の は Cor dr y [ 1 980 ] と M oya Rubi o [ 1 97 8]の 二 氏 で あ るが ,二 人 の 内 M o ya Rubi o だ け が仮 面 を芸 能 に 引 きつ けて 考 察 して い る。
彼 はダ ンス 用 と祝 祭 用 に二 大 別 して い るが , 芸能 の ジ ャ ンル を頭 に入 れ て 考 え て み る と, この 区別 は有 効 と は思 え ない 。 二 者 は 現 実 に は重 複 して い るか らで あ る。 ま た,
彼 の 区 別 に よ る仮 面 の配 列 と説 明 も整 理 され て お らず ,読 者 に混 乱 を招 く。 そ こで , 芸 能 を指標 と して , よ り系 統 的 に, 簡 便 に仮 面 を見 分 け る案 内 にな る よ う に, 分 類 の 一 つ の 試 み を 以 下 に記 して み る。
な お, 本 稿 で 使 うダ ンス は ス ペ イ ン語 の danz a の 訳 で あ り, 民族 誌 の脈 絡 か らい うと, ダ ンス もあ れ ば 民俗 劇 もあ る。 一 つ一 つ の 記 述 に 区別 を も うけ ず, ダ ンス とだ け記 した の は , 各 地 で の演 じ方 につ い て詳 しい 資 料 が な い限 り, 厳 密 に は区別 しに く いか らで あ る。
白黒 で あ るが写 真 が つ け て あ るの で , 写 真 を 参 照 しな が ら,本 文 を読 ん で ほ しい。
写 真 の キ ャプ シ ョ ンには 仮 面 の 名称 だ けつ けて , 仮 面 とい う字 は省 略す るの を原 則 と した。 例 え ば ,牛 悪 魔 と書 い て い れ ば ,牛 悪 魔 の 仮 面 と考 え て ほ しい。 仮 面 の使 用 地
( 製 作 地 しか わか らな い もの に は製 作 地 を記 した ) を 示 す 地 名 に 町 とか村 と か書 か な か った の は , その 区 別 は厳 密 に考 え る と不 可 能 だ か らで あ る。 民族 名 は必 要 な 時, 例 え ば ,地 名不 明の 折 にの み 記 した。 [ ]内 の 数字 は本 館 の 標 本 資 料 番 号 で あ る。 資 料 を楽 しむ た め には , 一 点一 点 につ き紹 介 が 要 るが , 本 稿 の テ ー マ と紙 幅 の 関係 上 , 別 の機 会 に譲 る。
1) 生 き物 や 自然 の 力 に 関 わ る仮 面
この 種 の仮 面 は カ トリ ック教 以 前 の ア ニ ミス テ ィ ックな 世 界 観 に支 え られ た 土着 性 の 強 い 仮 面で , メ キ シ コ全 般 に広 く根 ざ した感 性 を表 現 した もの とい え よ う。 一 見 . カ ト リ ックの 芸能 と無 縁 に見 え るが , 実 は祭 日に踊 られ る もの が 多 い 。 そ して , (3)
の 悪 魔仮 面 な どは分 類 の 3) 以 降 の 芸 能 に賛 助 出演 す る機 会 が 多 く,仮 面 か らみ て も , アニ ミズ ムの 世界 は カ ト リック の フ ィ エス タ に組 み入 れ られ て い る とい え よ う。 本来 ア ニ ミス テ ィ ックな世 界 は分 類 を拒 否 す る性質 の も⑳で あ ろ うが , 1 )の種 類 の仮 面 を \ .
敢 え て 6つ に 分 け て み た 。
( 1) コ ー ラ , ウ ィ チ ョル , ヤ キ , マ ヨ (族 ) の 仮 面
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黒 田 メキ シ コの仮 面
〆
︑
写 真 1 鹿 ナ ヤ リー ト州 コー ラ ( 族 ) [ 標 本資 料 番 号 1 31 806]
写 真 2 パ ス コ ー ラ ソ ノ ラ 州 ヤ キ ( 族 ) [1 3257 6]
具 体 的 に は , コ ー ラの 復 活 祭 用 の 動 物 仮 面 ( 写 真 1), ウ ィ チ ョル の 収 穫 祭 用 の タ テ ・ナ カ ウ ェ ー ( Tat e N akaw 6) 仮 面 , ヤ キ や マ ヨの パ ス コ ー ラ ・ダ ン ス 用 の パ ス コ ー ラ仮 面 (写 真 2) で あ る。 パ ス コ ー ラ は 森 の 動 物 か ら 得 た 知 恵 を 持 つ 道 化 で あ り [CoRDRY l980:56;LuTEs l983], 鹿 ( 仮 面 は な く, 踊 り手 は 頭 上 に 鹿 の 頭 を つ け て い る ) と一 緒 に 踊 り, 道 化 る 。 い ず れ も , 狩 猟 民 的 シ ン ボ リズ ム を 濃 厚 に 持 っ て い る 社 会 の 仮 面 で , 芸 能 と い う よ り は 宗 教 儀 礼 の た め に 使 わ れ る と い っ た 方 が 現 実 に 近 い だ ろ う。
( 2) 動 物 , 虫 , 魚 , 等 の 仮 面
ゲ レ ロ州 の 仮 面 に は 動 物 , 虫 , 魚 , 等 の 生 き 物 を 形 ど っ た も の が 多 く, ナ ワ 由来 の シ ン ボ リズ ム が こ の 地 方 に 受 け 継 が れ て い る と い う Cordry の 判 断 [1980:Chapt ers 8,9] に 同 意 す る こ と に な ろ う。 現 在 , 当 館 に 所 蔵 さ れ て い る コ ー ド リー ・ コ レ ク シ
ョ ンの 内 , 仮 面 師 Jos6 R odri guez の 作 品 に は , こ の 種 の シ ン ボ リズ ム の 過 剰 に して ダ イ ナ ミ ッ ク な 表 現 が み られ る 。 彼 は 教 会 付 き の 彫 刻 師 の 子 孫 と 推 定 さ れ , 道 具 や 材 料 に 恵 ま れ て い た プ ロ の 彫 り師 の 技 術 を 踏 襲 し て お り [ coRDRY 1980: Fi g.206],
こ の 技 術 を 駆 使 し て 生 き 物 の 躍 動 す る 世 界 を 表 現 し た 。
動 物 の ダ ン ス に 使 用 さ れ た セ ッ トに な っ た 仮 面 (写 真 3) は 動 物 の 主 に 率 い られ
て 踊 っ た ら し い が , 現 存 す る ダ ン ス で は な い 。 他 に , 死 を 表 わ し た 彙 仮 面 は 臭 の ダ ン
ス に 使 わ れ た との こ とで あ る が , トウ モ ロ コ シを 表 わ した 仮 面 は 使 用 さ れ た ダ ン ス 名
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写 真 3 ( 左 か ら ) 犬 , ロ バ , ラ バ , 動 物 の 主 (2) , 臭 , 犬 , 兎 ゲ レ ロ 州 【 681 55−681 62]
が 不 明 で あ る 。 図 像 か ら み て , こ れ らの 二 点 と 後 述 す る 悪 魔 仮 面 の 類 似 は 大 き い が , こ れ ら二 点 に は 悪 魔 仮 面 と い う表 記 は さ れ て い な い 。
一 群 の 生 き物 を 表 わ す 仮 面 を つ け た 人 が 踊 る 例 は 収 穫 を 祝 う踊 り に も み られ る 。 こ の ダ ン ス に は さ そ り, 蛙 , キ リ ギ リス , 土 ぐ も , ア ル マ ジ ロ, 犬 , バ ッ タ , か に (写 真 4)の 仮 面 が 出 場 し て ,10月 の 収 穫 の 終 わ っ た 畑 で 踊 っ た と さ れ て い る 。 こ の 一 群 の 仮 面 は 1900年 頃 Bahena 家 族 の 手 で 彫 ら れ た と さ れ て い る [CoRDRY l980:Fi gs ・ 252−256]。 一 つ 一 つ の 生 き 物 の 中 央 に 人 面 が つ け て あ る 仮 面 で , 写 実 性 が 強 い 。 動 物 や 虫 類 の 仮 面 が 群 れ に な っ て 踊 る ダ ン ス が 他 に も あ る こ と は ニ ュ ー ヨ ー ク の コ
レ ク タ ー の 持 ち こ む 資 料 か ら も わ か る (添 付 資 料 が 少 な い の で 購 入 して い な い )。 しか し , 上 記 の 動 物 の ダ ン ス や 収 穫 の ダ ン ス の 仮 面 は 今 は 作 ら れ て お らず , 一 般 的 傾 向 と
写 真 4 か に ゲ レ ロ州 [ 681 40]
して , こ の 種 の セ ッ トに な っ た 仮 面 は 現 在 は 少 な い , と私 は 判 断 し て い る 。 ( 3) 悪 魔 仮 面
悪 魔 は カ ト リ ッ ク が 持 ち こん だ 概 念 で あ り , 恐 ろ し き 存 在 と し て 教 会 人 が 人 々 に 教 え こ み ,そ の 魔 力 の 故 に , ( 2)
の 土 着 の 動 物 や 生 き 物 の 図 像 と 習 合 し た , と一 般 に 考 え られ て い る 。 しか し,
ヨ ー ロ ッパ の 悪 魔 を ス テ レ オ タ イ プ 化
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黒 田 メ キ シ コの 仮 面
す る わ け に も い か な い 。 教 会 の 公 式 の 教 え で は 悪 魔 は 恐 ろ し き悪 し き 存 在 で あ っ た が , ヨ ー ロ ッパ で も 民 俗 社 会 で は 親 し み 易 い 悪 魔 が あ っ た よ うで あ る。 Jef f rey Burt on R us se1の 悪 魔 論 [1984] に よ る と , 悪 魔 と は キ リス ト と 善 な る も の 以 外 の す べ て を 包 含 す る ブ ラ ッ ク ・ボ ッ ク ス で あ り , ヨ ー ロ ッパ の 民 俗 社 会 の 悪 魔 像 に は 柔 軟 な バ リ
エ ー シ ョ ンが あ っ た 。 そ の よ う な わ け で , 一 極 に ヨ ー ロ ッパ の 悪 魔 , 他 極 に メ キ シ コ 土 着 の ア ニ ミ ス テ ィ ッ ク な 象 徴 を 置 い て , 二 つ の 間 の 振 幅 内 に 各 々 の 悪 魔 仮 面 を 配 列 す る の は む つ か し い 。
そ こで , 必 ず し も シ ン ク レ テ ィ ズ ム に こ だ わ らず , 芸 能 を 主 軸 に し て 悪 魔 仮 面 を 分 類 し て み よ う 。 す る と , 悪 魔 仮 面 の 一 部 は 後 述 す る 宣 教 の た め の 勧 善 懲 悪 劇 で あ る
写 真 5 悪 魔 ミチ ョァ カ ン州 [1 08409] 写 真 7 牛 悪魔 グ ァ ナ ファ ト州 セ ラォ [1 08474]
写 真 6 牛 悪 魔 グア ナ フア ト州 [ 11 7828] 写 真 8 悪 魔 ゲ レロ州 シ トラ ラ製 作 [ 1 31696]
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写 真 9 悪 魔 ゲ レロ州 トラバ [ 681 47 ] 写 真 1 0 大 悪魔 ゲ レ ロ州 ク ァ ドリ リー タ ・デ ・サ ンタ ・ア ニ タ [ 681 63]
「 牧 人 の ダ ンス」 と 「 三 つ の魂 の力 の ダ ンス 」 に使 わ れ , ま た 特定 の悪 魔 仮 面 は雨 乞 いの ダ ンス に使 わ れ るが ,大 多 数 は数 々の芸 能 に 出場 して , 道 化 役 を つ とめ て い る こ とが わ か る。
「 牧 人 の ダ ンス」 用 の悪 魔 仮 面 は人 面 に角 の つ い た もの ( 写 真 5),そ の人 面 に生 き 物 の 図 像 の つ けて あ る もの , さそ りを顔 面 につ けた 牛 悪 魔 ( 写 真 6), 牙 や歯 を む き
出 した 人 面 悪 魔 ( 写 真 7) の 三 種 類 が み られ る。
「三 つ の魂 の力 の ダ ン ス」 用 の 悪魔 仮 面 ( 写 真 8) は例 数 が少 な いの で , 概 括 しえ な い。
雨 乞 い の た め の 悪魔 仮 面 は 当館 の所 蔵 品 で は Jo s 6 Rodr i gue z の作 品が 多 く, 蛇 , とか げ, 竜 な ど水 に 関わ る図 像 を つ け た一 連 の人 面 仮 面 ( 写 真 9) と 「大 悪 魔 の ダ ン ス 」 用 の一 連 の仮 面 ( 写 真 10 )な どが あ る。 い ず れ も,水 に縁 の深 い図 像 が 人 面 につ け られ て お り,角 はな い 。悪 魔 と名 づ け られ て い る が,本来 は ( 2) の 分類 の動 物 や 虫 や生 き物 の仮 面 の方 に近 い存 在 だ った , と私 は 推測 して い る。
用 途 に つ い て情 報 の な い悪 魔 仮 面 は上 記 の バ リエ ー シ ョ ンの ど れ か に入 る。 中 で 目 立 つ もの と して , 白人 の 人 面 に角 の つ い た 典 型 的 な ヨ ー ロ ッパ 型 の悪 魔 ( 写 真 11 )と 復 活祭 や カ ー ニ バ ル に使 われ る角 だ けつ いて い るが 恐 ろ しさ の な い人 面 仮 面 ( 写 真12 ) が あ る。
この 恐 ろ しさの な い仮 面 と は M oya Rubi o の 指 摘 して い る 「微 笑 す る 悪 魔 」
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黒 田 メキ シ コ の仮 面
写 真 11 悪 魔 ゲ レ ロ 州 [ 108376] 写 真 1 2 悪 魔 ベ ラ ク ル ス 州 [ 1 08444]
[M oyA RuBl o 1978:Fi gs.98,99],「善 い 悪 魔 」 [ Fi g・ 103], 「悲 し そ う な 悪 魔 」 [ Fi g.104]
に 通 じ る も の で あ ろ う 。 当 館 に も 「楽 し そ う な 」 とか 「考 え 深 そ う な 」 と 表 現 し て よ い 悪 魔 仮 面 が あ り (写 真 13), メ キ シ コ の 民 俗 社 会 は カ ト
リ ッ ク の 教 条 的 定 形 を 柔 軟 に変 形 し て い る と い え よ う 。
( 4) 雨 乞 い の た めの 仮 面
前 述 の ( 3)の 悪 魔 仮 面 の 内 で 水 に 縁 の 深 い 図 写 真 1 3 悪 魔 ゲ レロ州 [1 317 07 ] 像 を つ け た 仮 面 が 雨 乞 い に 使 わ れ て い る 。 他 に , ア ル マ ジ ロ 仮 面 や こ う も り仮 面 が 雨 乞 い に 使 わ れ て い た こ と は 仮 面 に 添 付 さ れ た 資 料 か ら判 断 で き る。
加 え て , 現 在 で は 入 手 で き な い 特 異 な 仮 面 が 三 種 あ る 。 い ず れ も コ ー ド リ ー ・コ レ ク シ ョ ン に あ っ た も の で あ る 。 第 一 は セ ッ トに な っ た 銀 製 の 仮 面 で (写 真 14), 1890
−−1910年 の 間 の 作 品 と さ れ [CoRDRY l980:Fi g.21], 額 か ら 口 に は う 蛇 が 水 を 呼 ぶ 象 徴 と な っ て い る。 ゲ レ ロ州 の 鉱 山 地 帯 で 作 ら れ , 12個 の 仮 面 で セ ッ トに な って い た が , こ の 製 作 年 代 以 降 , こ の 種 の 作 品 は 途 絶 え て い る 。
第 二 は Bahena 家 族 の 作 品 で , 小 人 仮 面 と称 さ れ (写 真 15), 子 供 が 被 り , 雨 期 の 開 始 前 に 洞 穴 で 踊 っ て 雨 を 呼 ん だ と さ れ て い る 。 こ の 仮 面 も 1910年 頃 か ら姿 を 消 した
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写 真 14 雨 乞 い用 仮面 ゲ レロ州 カ ン ポ ・モ ラー ド [ 68142]
写 真 15 小 人 仮 面 ゲ レ ロ州 カ ンポ ・ モ ラー ド [ 681 29]
[ CoRDRY l 980:188]。
第 三 は 大 型 の 蛇 の 仮 面 で , 胴 体 に 人 が 入 り, 頭 に も別 の 蛇 の 仮 面 を つ け る
( 写 真 16)。
上 記 の 三 種 は い ず れ も20世 紀 の 初 め に 製 作 が 終 っ て お り , 高 級 な 手 の こ ん だ 雨 乞 い 仮 面 は 姿 を 消 し た と い え よ う。
写 真 1 6 蛇 ゲ レロ州 [ 681 30] (5) 魚 の ダ ン ス , わ に の ダ ン ス の 仮 面
ゲ レ ロ 州 バ ル サ ス 河 附 近 の 村 々 や ミチ ョ ア カ ン, チ ア パ ス 州 か らの 資 料 が あ り , 踊 り方 に 差 が 大 き くあ り そ うで あ る が , 豊 漁 を 願 う 芸 能 用 の 仮 面 で あ る点 で 一 致 し て い る 。 木 彫 の 魚 の ア ク セ サ リ ー を 腰 や 肩 に つ け た 漁 師 が 大 勢 網 を 持 っ て 出 場 し, 魚 を 支 配 して い る わ に や 精 霊 を な だ め て 魚 を 取 る と い う 筋 で あ る 。
出 場 す る 仮 面 は わ に ( 写 真 17), 河 の 霊 [ CoRDRY l980:Fi g.296], 漁 師 (黒 く 塗 っ た 顔 に 斜 め の 赤 や 黄 の 線 が 走 り , タ バ コ を 口 に くわ え て い る ) (写 真 18), 人 魚 (写 真 19) が あ る。 わ に 仮 面 に は 子 供 が 胴 に 付 け る も の も あ る [M OMPRADE y G uTI ERREz 1976:1331。人 魚 は ヨ ー ロ ッパ 由 来 と は 限 らず , 先 ス ペ イ ン期 に 存 在 し
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黒 田 メ キ シ コの 仮 面
編
写 真 1 7 カ イ マ ン (ア メ リカ ・ ワニ) ゲ レロ州 チ ャ パ にて 製 作 [ 131 71 4]
写 真 1 8 漁 師 ゲ レ ロ州 [1 08377]
写 真 1 9 人 魚 ゲ レロ州 ア ル タ ミラー ノ [ 681 39]
た と い う説 も あ る が [ CoRDRY l980:203], 人 魚 仮 面 の 出 番 に つ い て は 資 料 が な い 。
( 6) 虎 ダ ン ス の 仮 面 :虎 , 屠 殺 者 , 農 民 , テ ホ ロ ン
魚 や わ に の ダ ン ス が 水 の 幸 を 祈 願 す る も の な ら, 大 地 や 山 の 幸 を 願 っ て 踊 ら れ る 芸 能 は 虎 ダ ン ス で あ る。 バ リ エ ー シ ョ ンが 多 く, そ れ に つ れ て 仮 面 の 種 類 も 変 わ る 。 虎 ダ ン ス の ジ ャ ン ル に 入 る芸 能 と して 主 な も の は 虎 ダ ン ス , テ ク ア ン, テ ク ア ニ , テ ホ ロ ネ ス , トラ コ ロ レ ロ (農 民 ) が あ り , ダ ン ス 名 と地 域 に よ り 差 が あ る が
[ M oMPRADE y GuTI ERREz 1976:ll7−124], 一 般 に 虎 , 屠 殺 者 (も し く は 銃 を 持 つ 老 夫 婦 ), 農 民 , 獣 医 , 鹿 , 犬 の 持 ち 主 , 犬 , は げ た か , 等 が 出 場 す る。 所 に よ り 配 役 は複 雑 に な り, ア シ エ ンダ の 持 主 や 管 理 人 も 出 る 。
虎 ダ ン ス の 詳 し い 上 演 例 と して は 連 邦 州 の サ ソ ・フ ラ ン シス コ ・ク ワ ウ ソ ス コ ( San Franci sco Cuauzos co)村 の テ ク ア ン ( T ecuan) ダ ン ス が あ る [ FO NA DA N l975]。
テ ク ア ン と は ナ ワ語 で 「食 い つ ぶ す 」 とい う 意 味 で , 虎 (ジ ャ ガ ー ) の 破 壊 力 と 豊 饒 性 を 表 わ して い る 。 ア シ エ ン ダ で 鹿 な ど を い じ め た り (も っ と も鹿 も若 木 や 作 物 を 食 べ て 農 民 に 迷 惑 を か け て い る の だ が ), 作 物 を 荒 らす 虎 を 犬 で 追 い 立 て , 鉄 砲 で 打 ち と め る 筋 で , 中 途 で 傷 つ い た 小 動 物 が 医 者 の 手 当 て を う け る 。 配 役 の 内 , ア シ エ ンダ の 所 有 主 ドン ・サ ル バ ド ー ル , 秘 書 , 管 理 人 , 医 者 と 看 護 役 , 鉄 砲 の 打 ち 手 (一 屠 殺 者 ),ア シ エ ン ダ の 農 民 が 仮 面 を 被 って い る。 虎 と 鹿 と 犬 は 布 で 張 った ヘ ル メ ッ ト仮 面 を つ け て い る 。 犬 の 持 ち主 ド ン ・ク レ ー トは 素 顔 で , ア シ エ ン ダ 所 有 者 の 助 手 の パ イ ェ ソ も 口 ひ げ と 眼 鏡 だ け 付 け , 素 顔 で あ る 。 は げ た か 役 の 子 供 は 布 張 り の は げ た か
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国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号 風 の 帽 子 を 被 り, 顔 は素 顔 で あ る。 全 員 で 2 8〜32 人 の配 役 に な り, 木 製 仮 面 , 布 の 仮 面 ,布 の 帽子 , 口 ひ げ や眼 鏡 をつ け た顔 , 素 顔 とい う差 が あ る。
ク ワ ウ ソス コ村 は近 くに ア シエ ンダ が 存 在 して いた 所で ,台 詞 つ きで 上演 さ れ る虎 ダ ンス に村 の歴 史 が反 映 さ れて お り,村 の社 会 史 を示 す フ ォ ー ク ロ ア にな って い る。
一 方 ,永 田収 氏 が撮 影 され , 当館 が 研 究 用 フ ィル ム と して 購 入 した ゲ レロ州 の ア ムス ゴ ( 族 )の シ ョチ ス トラワ カ村 ( Xoc hi xt l ahuac a)の虎 ダ ンス に は別 の 演 出が み られ る。
虎 が農 作 物 や鹿 を いた め つ けて 農民 が 困 り,鉄 砲 を持 って い る老 夫 婦 を 説 得 して , 虎 を打 ち と らせ る 筋 で あ るが , 老 女 ( 男 が 女 装 して い る) と虎 の パ フ ォ ーマ ンスが 人 を 楽 しませ る。 一 群 の農 民 , 老 人 , 老 女 , 虎 ,犬 だ け が仮 面 をつ け, 鹿 は毛 皮 を 頭 に被 った 男 が 演 じ る。 配 役 は ク ワ ウ ソ ス コの 例 よ り簡 略 で , ア シエ ンダ の 存 在 を思 わ せ る の は仮 面 をつ け た一 群 の農 民 だ けで , 虎 に 向 か って犬 と老 人 が 立 ち向 か い, 老 女 が 性 的冗 談 の対 象 に な って い る。
た っ た二 つ の村 で も 出場 す る仮 面 に これ だ けの 差 が あ るの だ か ら, 虎 ダ ンス 用 の仮 面 につ いて 概 括 す るの は む つ か しい が ,老 人 ,老 女 , 鹿 , 犬 , 医者 の 仮 面 は 資 料 に そ の よ う記 入 さ れて お れば , そ れ以 上 に分 類 上 の複 雑 性 はな い 。 種 類 が 多 くて , 区別 に とま ど うの は虎 , 屠 殺者 ,農 民 , テ ホ ロ ン ( 言 葉 の 意 味 は不 明 で あ るが , 虎 を退 治 す る人 々 と して 出場 す る) の仮 面 で あ る。
虎 仮 面 につ い て は一 つ 一 つ の村 に一 つ の タ イ プ の虎 が あ る, と しか言 い よ うが な い 程 に個 性 的 な虎 が 多 い。虎 ダ ンスの ジ ャン ル
の 小 区分 に従 って 虎 仮 面 を分 類 す るの は不 可 能 と思 うの で ( ゲ レロ州 の コス タ ・チ カ や オ アバ カ州 の ハ ミル テペ ッ ク地 方 に み られ るテ ホ ロ ンの よ う に明 確 に区 別 の つ く もの は別 に して) , 形 や 図 像 か ら区分 して み よ う。
先 に言 って お くべ きで あ った が , 「 虎 」 と は ジ ャガ ーの こ とで あ る。 ス ペ イ ン語 で「虎 」 と記 さ れ語 彙 と して定 着 して しま った が ,実 際 に は ジ ャガ ー と大 山 猫 ( oc el ot )を 含 んで い る ら しい。 虎 仮 面 の なか に は, 幅 広 の 黄色 の 顔 で 丸 い黒 い斑 点 の つ い た ジ ャガ ー の特 徴 を そ なえ た 仮 面 ( 写 真 2 0) と幅 狭 の顔 で , と が っ た 口か ら牙 を む き出 して い る山 猫 風 の 仮
写 真 20 虎 ゲ レ ロ州 テ ナ ギ ー リ ョ ・ デ ・ラ ス ・カ ー ニ ャ ス [ 68122]
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黒 田 メ キ シ コの 仮 面
写 真21 虎 ゲ レ ロ州 タ ス コ [ 681 20] 写 真 22 虎 ゲ レロ州 ラ ・クル ス ・グ ラ ンデ [ 68091 ]
写 真 23 虎 ゲ レ ロ 州 ア カ トラ ン ・デ ル ・ リ ォ [ 681 24]
写 真 24 虎 ゲ レ ロ州 オ リナ ラ ー [ 681 09]
面 ( 写 真 21 ) の二 大 別 が 目につ く。 両 方 の 特 徴 が ま ざ って , ジ ャガ ーか大 山 猫 か 区 別 の つ きか ね る仮 面 も多 い 。黒 い虎 仮 面 もあ って , 作 者 は黒 ジ ャガ ーの 存在 を 知 って いた ら しい。 平 凡 社 の 百 科 辞 典 に よ る と [ 今 泉 1 985 ], 赤 褐 色 の ジ ャガ ー も居 る と い う こ とで あ るが , コー ド リー氏 の虎 コ レク シ ョ ンの 一 点 に赤褐 色 と黒 の斑 点 の 目立 つ ジ ャガ ーが あ る ( 写 真 2 2) 。 また , 同辞 典 に よ る と, 肩 , 背 , 脇 に か け て梅 の花 状 の 斑 紋 の つ い た ジ ャガ ーが い る そ うだが , 梅 の 花 模 様 を 額 と顎 に つ け た虎 仮 面 が一 点 あ り ( 写 真 2 3),作 者 の観 察 の 確 か さを うか が わ せ て くれ る。
虎 仮 面 に は動 物 の 描 写 に正 確 な もの だ け で は な く, 様 式 化 の 進 ん だ もの もあ る。 オ リナ ラー の 独 得 の 隈 取 りの 仮面 ( 写 真 2 4)や シ トラ ラの皮 製 の ヘル メ ッ ト仮 面 ( 写 真
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サ
国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号
写 真 25 虎 ゲ レ ロ 州 シ トラ ラ [ 68686] 写 真 26 ラス トレロ ( 屠殺 者 ) ゲ レロ州 ア ル タ ミ ラー ノ [1 0847 0]
写 真27 トラ コ ロ レ ロ ( 農 民 ) ゲ レ ロ 州
[ 13170 4]
写 真 28 トラコ ロ レロ ( 農 民 ) ゲ レ ロ州 ア メ ヤ ルテ ペ ッ クにて 製 作 [1 317 00 ]
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黒 田 メキ シ コの 仮 面
写 真 29 虎 を 狩 る人 オ アバ カ 州 ミシュ テカ 海 岸 部 [ 1 08413]
写 真 30 テ ホ ロネ ス の ダ ンス に 出 る女 性 オ アバ カ 州 ミシュ テ カ海 岸部 [1 31 868]
25) は 独 得 で あ る 。
ア ム ス ゴ の 村 の 例 で は , 老 人 が 虎 を し と め る が , 大 方 の 例 で は 屠 殺 者 (rast rero)
が い て 虎 を 打 つ 。 雄 猛 な 虎 を 打 つ 役 の せ い か , 目 の き つ い 野 性 的 な 顔 に ひ げ の つ い た 仮 面 で , 口 が ひ ん 曲 っ て い る の が 特 徴 で あ る ( 写 真 26) ( 典 型 例 は [ CoRDRY l980:
Fi gs.212,300] を 参 照 )。
農 民 ( t l acol ol ero) の 仮 面 は 殆 ど が トラ コ ロ レ ロ ス の ダ ン ス に 使 わ れ る が , 仮 面 に 添 付 さ れ た 資 料 か ら判 断 す る に , ト ウ モ ロ コ シ の 収 穫 祭 や カ ー ニ バ ル に も 出 る。 い か に も 土 く さ い , た くま し い 顔 が 基 調 で ( 写 真 27), 近 年 の 作 晶 に は 顔 の 左 右 を 二 色 に 塗 り分 け た も の が あ る (写 真 28)。 Cordry も の べ て い る よ う に [1980:Fi g。216],
こ れ は 新 しい 物 を 求 め る遊 び 心 で あ ろ う。
テ ホ ロ ン (t e jor6n)の 仮 面 は 虎 ダ ン ス の 一 種 で あ る テ ホ ロ ネ ス の ダ ン ス で 使 わ れ ,
ゲ レ ロ州 の コ ス タ ・チ カ 方 面 と オ ア バ カ 州 の ハ ミル テ ペ ッ ク 方 面 に 限 ら れ て い る 。 虎
を 捕 ま え る 男 子 の 仮 面 の 典 型 例 が あ る が (写 真 29), こ の 顔 の 周 囲 に 山 猫 や 兎 の 毛 を
つ け た も の も あ る。 男 子 の 仮 面 に 混 じ っ て 虎 の 捕 獲 の 場 に 居 合 せ , モ レ料 理 (お そ ら
く虎 の 肉 で 作 る) を 作 るふ り を す る 女 性 の 仮 面 ( 写 真 30)は 目 が 大 き く, 頬 と 口 に紅
の 目 立 つ も の で あ る 。 メ キ シ コの 仮 面 の な か で は 女 性 仮 面 は 少 な く , 特 別 の 役 柄 (例
え ば マ リ ン チ ェ) で な い 限 り, 上 記 の 特 徴 が 一 般 的 で , ス ペ イ ン系 の 女 性 を 表 わ した
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国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号
写 真 31 (左 )虎 を 狩 る人 , ( 右 ) 女性 オ ァバ カ 州 ピノ 写 真 32 テパ ・ナ シオ ナル [1 0847 5,1 08354]
も の と 思 え る 。
テ ホ ロ ネ ス の ダ ン ス の 仮 面 の 旧 い 型 で は な い か と 思 え る男 女 の 仮 面 が あ る (写 真 31)。
一 方 , 新 し い 仮 面 に は 人 面 の 顎 に 小 さ な 顔 を つ け た も の も あ り ( 写 真 32), 新 旧 の 作 品 の 違 い が 大 き い 。
虎 ダ ン ス は メ キ シ コ に 広 く分 布 し, 地 方 色 が 極 め て 強 い 。 チ ア パ ス 高 地 で は ツ ォ ツ ィ ル
(族 ) の 間 で ジ ャ ガ ー を め ぐ っ て ゲ レ ロ州 や
虎 を 狩 る人 オァ バ カ 州 ミシ ュテ カ海 岸 部 ドン
・ル イ ス [ 1 31939]
写 真 33 虎 チ ァパ ス州 ス チ ァパ [ 6811 8]
オ ア バ カ 州 と 異 な る フ ォ ー ク ロ ア が あ る (例 え ば シ ナ カ ン タ ン村 で は 性 的 豊 饒 性 を そ な え た ジ ャ ガ ー , チ ャ ム ラ で は そ れ に 加 え て 神 の 保 護 者 と し て の ジ ャ ガ ー , チ ェ ナ ロ ー で は ジ ャ ガ ー は 「背 の 十 文 字 男 」 と 同 一 で あ る と い う フ ォ ー ク ロ ア が あ る [ブ リ ッ カ ー 1986:103,ll3,168,180−181, 207−208]。 そ し て , チ ア パ ス で 踊 られ る 虎 の 出 場 す る カ ラ ラ ー (K al al a 鹿 ) の ダ ン ス の 旧 い 型 に は 虎 が 出 場 しな い 。 元 々 , こ の ダ ンス は 山 の 神 の 幸 を 表 わ す 鹿 の ダ ン ス で あ っ た 様 子 で あ り , い つ の 頃 か らか 虎
(写 真 33) が 加 え ら れ た [M oMPRADE y GuTI ERREz l976:123−124]。 こ れ は 一 体 何 の 変 化 を 表 わ して い る の か , 等 々 , マ ヤ 圏 の ジ ャ ガ ー と虎 仮 面 に つ い て は , さ ら に 多 くの 情 報 と仮 面 資 料 が 必 要 で あ る。
2) 先 ス ペ イ ン期 の 神 々に 由来 す る仮 面
前 述 の 虎 仮 面 の 虎 はア ス テ カ の神 テ ス カ ト リポ カの変 身 だ と され て い る し,動 物 や
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黒 田 メキ シ コの 仮 面
虫 や 生 き 物 の 仮 面 や 悪 魔 仮 面 に 土 着 の 神 々 が 残 っ て い る が , こ こ に 別 項 目 を も う け た の は , 土 着 の 神 の 名 前 が 仮 面 に 残 っ て い る 例 が あ る か らで あ る 。 当 館 の 収 蔵 品 に は 欠 落 して い る 種 類 の 仮 面 で あ り , な か な か 手 に 入 ら な い と 思 う が , 分 類 上 無 視 で き な い の で 取 扱 う こ と に し た 。
第 一 に , チ ア パ ス 高 地 の シ ナ カ ン タ ン村 の サ ク ・ホ ル ( Sak− H ol)仮 面 が あ る。 同 村 の サ ン ・セ バ ス テ ィ ア ン祭 で 「白 い 頭 」 と い わ れ る配 役 が つ け る 仮 面 で , 下 地 は 皮 で 上 に 銀 紙 が は っ て あ る。 Cordry [1980:91 −92] は 先 ス ペ イ ン期 に 使 わ れ た サ イ ズ が 半 分 の 仮 面 の な ご り で あ る と 考 え , Bri cker [1981:139−140]は ア ス テ カの 雨 の 神 ト ラ ロ ッ ク に つ な が る 仮 面 と 考 え , テ オ テ ィ ワ カ ン や ト ゥ ー ラ の 遺 跡 に み ら れ る 「先 が 三 つ に 分 か れ た 図 像 」 (爾 雨 , 水 , 血 に 関 係 が あ る) か ら 由 来 した 形 で は な い か , と 推 測 して い る 。
第 二 は 旅 , 商 人 , 商 売 と 関 係 の 深 い ア ス テ カ の 神 ヤ カ テ ク ト リ ( Yacat ecuht l i ) で あ る [CoRDRY l980:Fi g・268]。 こ の 多 彩 色 の 鼻 の 強 調 さ れ た 仮 面 は 文 献 に 一 点 し か 例 が な い の で , 例 外 的 存 在 な の か ど う か , 私 に は 判 断 が つ か な い 。
第 三 に , 先 ス ペ イ ン期 の 火 の 神 が ウ ェ ウ ェ (H uehue)仮 面 に 継 承 さ れ て い る と一 般 に 考 え ら れ て い る 。 こ の 仮 面 に つ い て は 道 化 の 仮 面 の 項 目 で の べ る 。
3) モ ロ と ク リス テ ィ ア ノ ス の 仮 面
「モ ロ と ク リス テ ィ ア ノ ス 」 と は 国 土 回 復 運 動 期 の ス ペ イ ン に 起 源 の あ る芸 能 で ,異 教 徒 モ ロ (ム ー ア 人 ) が ク リス テ ィ ア ノ ス (キ リス ト教 徒 ) に 敗 北 す る筋 が 演 じ ら れ
る 。 この 芸 能 は , 新 大 陸 発 見 後 す ぐ に 植 民 地 に 持 ち こ ま れ , 征 服 と宣 教 を 誇 示 す る 芸 能 と し て 広 め ら れ た 。 そ の 結 果 , 現 在 で は , こ の ジ ャ ン ル に 入 る芸 能 の バ リ エ ー シ ョ
ンが 多 く, 地 方 に よ る 差 も 大 き い が [ M oMPRADE y G uTI ERREz l976: 124−194;
W ARMAN 1972],す べ て の バ リエ ー シ ョ ン が 仮 面 を 伴 う と は 限 ら な い 。
当 館 に あ る 仮 面 に は 「モ ロ 」 「モ ロ と ク リス テ ィ ア ノ ス 」 と書 い て あ り , そ れ 以 上 に は 情 報 の な い も の が 多 い 。 こ の 場 合 , 仮 面 が 「モ ロ と ク リス テ ィ ア ノ ス 」 の ど の バ リ エ ー シ ョ ン に 使 用 さ れ て い た の か は 不 明 で あ る 。 そ こ で , 以 下 に 試 み た 分 類 で は , 仮 面 が 使 わ れ る 芸 能 名 が 判 明 し て い る例 だ け を 取 り上 げ , モ ロ 仮 面 に加 え て 出 場 す る 他 の 仮 面 に 言 及 し よ う 。
( 1 ) ア ス テ カ の ダ ンスの 仮 面 , コ ンキス タ ( 征 服 )の ダ ンス の 仮 面
ア ス テ カの 没 落 を 物 語 るダ ン ス には 多 くの配 役 ,つ ま り多 くの 仮 面 が 出て く るはず で あ るが , 詳 細 は不 明で あ る。 コ デ ィセ ( 古 文 書 ) に 出 て くる よ うな 鼻 が 誇 張 され た
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国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号
写真 34 アス テ カ の戦 士 ? ベ ラクル ス 州 サ コア ルパ ン [1 08434]
写 真 35 ア ス テ カ の戦 士 ゲ レロ州 ト ラル ココ テ ィ トラ [ 108392]
人 物 仮 面 (写 真 34), 鷲 を 頭 に 頂 い た チ チ メ カ の 戦 士 の 仮 面 [CORDRY 1980:Fi g.
131], ジ ャ ガ ー を 頭 に つ け た ジ ャ ガ ー の 戦 士 の 仮 面 [ CoRDRY l980:Fi g. 191 ], マ リ ン チ ェ の 悪 魔 仮 面 (角 が 魔 性 を 表 わ し て い る) [ CoRDRY l980:Fi g.21 5] 等 が 出 場 す る 様 子 で あ る 。
ア ス テ カ と 名 づ け ら れ た 仮 面 で コ ン キ ス タ (征 服 ) の ダ ン ス に使 用 さ れ る こ とが 表 示 さ れ て い る 場 合 も あ り , 例 と し て ア ス テ カ の 戦 士 ( 写 真 35) が あ る。
( 2) テ ノ チ ト リの ダ ン ス の 仮 面
テ ノ チ テ ィ トラ ン の 陥 落 を テ ー マ に し た ダ ン ス で , ゲ レ ロ州 ア カ ト ラ ン ( A cat l an)
村 の 例 が 最 も よ く 知 ら れ て い る 。 こ の 村 で 出 場 す る仮 面 は コ ル テ ス , マ リ ン チ ェ , マ リ ン チ ェ の 母 テ レ サ , ア ス テ カ の 兵 士 , 道 化 の ウ ィ キ ス ト レ ( H ui qui st l e 後 述 す る 道 化 H ui xquit l i s の こ と で あ ろ う) の 仮 面 で あ る 。 村 に よ って は , ク ワ ウ テ モ ッ ク , パ ス ク ワ ル ・バ イ ロ ン ( Pas cual Bai l 6n 今 の と こ ろ 詳 細 は 不 明 ), 黒 人 の 仮 面 も 出 場 す る そ うで あ る [ CoRDRY l980:Fi g・10]。 こ の ダ ン ス に つ い て の 情 報 は 少 な く,
詳 細 は 捉 え が た い 。
当 館 に は 用 途 が テ ノ チ ト リの ダ ン ス と記 入 さ れ た 仮 面 は な い が , 配 役 が 同 名 の 仮 面 は 収 蔵 さ れ て お り , 各 々 該 当 す る分 類 項 目 の 箇 所 で 説 明 し よ う 。
( 3) コル テ ス の ダ ン ス の 仮 面 , マ リ ン チ ェ の ダ ン ス の 仮 面
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黒 田 メキ シ コの 仮 面
これ ら二 つ のダ ンス に具 体 的 に どの 種 の 仮 面 が 出場 す るか につ い て資 料 が な い。 コル テス とマ リンチ ェの仮 面 の み が 目立 つ 。
コル テ スの 仮 面 は概 して 幅 広 の思 慮 あ りげ な表 情 を と って い る ( 写真 36) 。 逆 に ,マ リ ンチ ェ仮 面 は どん な平 凡 な 作 品 で も精 力 的 な 強 い 表 情 を して い る。
非 凡 な 作 品 は なか な か 入 手 で き ず ,
写 真 36 侯 爵 (コ ル テ ス ) ゲ レ ロ 州 [1 08380]
Cordry の 本 [1980] に 例 を 見 る だ け で あ る。 これ らか ら判 断 す る に , マ リ ン チ ェ仮 面 は ア ス テ カ , テ ノ チ ト リ, マ リ ン チ ェ, 牧 人 ( 後 述 す る Past or el a) の ダ ン ス に 出 場 す る 。 仮 面 の 特 徴 は 欲 望 や 放 縦 を 表 わ した 赤 や ピ ン ク の 顔 , 赤 い 髪 , 魔 性 を 表 わ す 角 や と か げ の 図 像 (額 や 鼻 に つ け て あ る )で あ る 。 華 々 し き は 先 ス ペ イ ン期 の 「戦 士 の 魂 」を 象 徴 し た 蝶 の 図 像 を 顔 の 周 囲 に つ け た マ リ ン チ ェ仮 面 も あ る [ C ORDRY 1980:
Fi gs.44,215,259,276−278]。
上 記 の コ ル テ ス と マ リ ン チ ェ の 仮 面 に 見 られ る コ ン トラ ス トは民 俗 社 会 が こ の 一 対 の 男 女 に 付 与 した イ メ ー ジ を 幾 分 明 ら か に して くれ る 。 征 服 者 コ ル テ ス は 意 外 に も 人 々 の 想 像 力 を か き た て て い な い 。 一 方 , マ リ ン チ ェ は 征 服 者 に 与 した た め , そ の 内 な
写 真 37 モ ロ (ム ー ア人 ) ゲ レ ロ 州 [1 08364]
写 真 38 モ ロ (ム ー ア人 ) ミチ ョ ア カ ン 州 [ 1 26917]
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国立民族学博物館研究報 告 1 2巻 1号 る異 人 と して の存 在 が 仮 面 製 作者 の 創作 欲 を か き立 てた ら し く, 土 着 社 会 で 特 別 の 意 味 の あ る 色 や象 徴 を駆 使 して , この 女 性 の 力 と魔 性 を表 現 して い る。
( 4) モ ロ の 仮 面
モ ロ (ム ー ア 人 ) の 仮 面 に は 使 用 さ れ る ダ ン ス 名 が 記 入 さ れ た 資 料 が 少 な く , 「モ ロ と ク リス テ ィ ア ノ ス 」 の ジ ャ ンル に 入 る 色 々 な バ リエ ー シ ョ ンの 芸 能 に 使 わ れ る 可 能 性 も考 え ら れ る の で , モ ロ の 仮 面 を 芸 能 と の 関 係 で 分 類 す るの は 難 しい 。 そ こ で , 図 像 上 の 特 徴 を 主 に し て タ イ プ を 見 て い こ う。
写 真 39 モ ロ ・チ ノ ゲ レ ロ州 ( 左 ) カ レ ラ ス ( 右 ) チ ル パ ン シ ン ゴ [1 08369,1 39354]
写 真 40 モ ロ ・パ シ ォ ン ゲ レ ロ 州 [1 31 698,13169g]
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黒 田 メキ シ コの 仮 面
モ ロの 仮 面 の 一 般 的 特 徴 は 赤 ら顔 , き つ い 目 , 大 き い 口 ひ げ と顎 ひ げ , 大 き あ に 開 い た 口 で あ る (写 真 37)。 例 外 も 多 く, 赤 と 黒 の 混 じ っ た 顔 , ピ ン ク , ヴ ェ ー ジ ュ , 白 の 顔 も あ る 。 イ ス ラ ム を 表 わ す 三 日月 形 の 冠 を 被 っ た 仮 面 も あ る し , 花 模 様 を あ し ら っ た ブ リ キ の 冠 を つ け た 華 や い だ モ ロ の 仮 面 も あ る (写 真 38)。
上 記 の 例 か ら派 生 した も の に モ ロ ・チ ノ (M oro Chi no ち ぢ れ 毛 の ム ー ア 人 の 意 か ?) と モ ロ ・パ シ オ ン (M oro Pasi 6n 受 難 の ム ー ア 人 ) の 仮 面 が あ る 。 前 者 は モ ロの 仮 面 の 特 徴 の 一 つ で あ る眉 の 線 と 顎 か ら 口 に 流 れ る 線 の 強 調 と い う 点 を さ ら に 押 しす す め た も の で あ る ( 写 真 39)。 モ ロ ・パ シ オ ン は 受 難 の ム ー ア 人 と 訳 さ れ よ う が ,
「苦 しみ 」 を 表 わ す の は 鼻 の 強 調 に あ る。 鼻 が ぐ る ぐ る 巻 か れ て い る も の と , 鼻 が 長 長 と突 出 した も の (写 真 40) の 二 種 あ る 。 ぐ る ぐ る 巻 き の 鼻 に つ い て , Cor dr y は , 蝶 の シ ン ボ ル で 花 と美 の 神 を 表 現 し て い た , と判 断 し て い る が [ CORDRY 1980:
Fi g.285],詳 細 は 不 明 で あ る 。 既 に の べ た ヤ カ テ ク ト リ ( Yacat ecuht l i ) や ア ス テ カ の ダ ン ス の 仮 面 (写 真 34), そ れ か ら後 に の べ る マ タ チ ネ ス の ダ ン ス に 登 場 す る人 物 仮 面 (配 役 を 判 定 で き な い ) に 鼻 の 突 出 も し く は 強 調 が あ り , こ の 特 徴 が 何 を 表 わ し て い る の か 不 明 で あ る 。 モ ロ ・チ ノ に も モ ロ ・パ シ オ ン に も 眉 と 顎 骨 に 当 た る部 分 に 金 色 の 帯 が 浮 出 さ れ て い る が , こ れ は モ ロ ・チ ノ 仮 面 の 特 徴 が 様 式 化 さ れ た も の , と 判 断 で き よ う 。
以 上 , モ ロ の 仮 面 の 色 々 の 種 類 を み た が , メ キ シ コの 人 々 が 実 際 に 見 る こ と も少 な く, ス ペ イ ン人 と違 っ て 文 化 的 に も縁 の 少 な い ム ー ア 人 を 作 品 に す る に 当 た っ て , 仮
写 真 41 サ ンテ ィ ア ゴ プ エ ブ ラ州 ク エ ツ ァ ラ ン [ 1 0841 6]
写 真 42 御 主 ミチ ョア カ ン州 トク ア ロ にて製 作 [ 131 850]
写 真 43 ピ ラ ト ベ ラ ク ル ス 州 ナ オ リ ン コ [ 108476]
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国立民族学博物館研究報告 1 2巻 1号 面 製 作 者 達 は 恐 ろ し き イ メ ー ジ , 華 や か な イ メ ー ジ , 様 式 化 した モ ロ ・チ ノ と モ ロ ・ パ シ オ ン と い っ た 風 に , 各 種 の 造 形 を 楽 しん だ と い え る。
( 5) サ ン テ ィ ア ゴ の ダ ン ス の 仮 面 , セ ニ ョ ー ル (御 主 ) の ダ ン ス の 仮 面
異 教 徒 に 対 し て サ ン テ ィ ア ゴ 聖 人 や キ リ ス トが 勝 利 を 納 め る 筋 を 演 じ る ダ ン ス で , サ ン テ ィ ァ ゴ の 仮 面 ( 写 真 41), 御 主 の 仮 面 (写 真 42) に 加 え て , 村 に よ っ て 異 な る 色 々 の 配 役 の 仮 面 が 出 る [ M oMPRA唖 y GuTI ERREz l976: 138−140; M oYA RUBI o l978:70]。 この 芸 能 の バ リエ ー シ ョ ン は 多 く , ど ん な 脇 役 の 仮 面 が あ る か を 知 る の は む つ か し い 。
サ ン テ ィ ア ゴ の ダ ン ス に ピ ラ ト (キ リス トが 処 刑 さ れ た 頃 ユ ダ ヤ を 支 配 した ロ ー マ の 総 督 ) の 仮 面 が 出 る こ と が 多 い ら し い が , 当 館 の 資 料 で は サ ン ・マ テ オ の ダ ンス に 出 る ピ ラ トの 仮 面 が 多 い ( 写 真 43)。
( 6) ア ル チ ャ レ オ の ダ ン ス の 仮 面
射 手 ( ar cher) か ら 由 来 し た ダ ン ス の 名 で , サ ン テ ィ ァ ゴ 聖 人 に 対 して 異 教 徒 の 射 手 が 敗 北 す る物 語 が 演 じ られ , 仮 面 は サ ン テ ィ ア ゴ , カ ピ タ ン ・サ バ リオ (ア ル チ ャ
レ オ の リー ダ ー ) を 加 え た 三 種 で あ る [ M oYA RuBI o l978: 58−61 ]。 た だ し , Cordr y に よ る と [1980:Fi gs・286,287],ア ル チ ャ レオ を 助 け る ピ ラ ト と モ ロ の 仮 面 も 出 場 す る よ う で あ る 。 ア ル チ ャ レ オ の 仮 面 は 憂 い を 含 ん だ 表 情 で , 口 を 少 し ゆ が め
鑓諺簸霧灘難
写 真 44 チ ャ レオ ゲ レロ州 グ ア ムス テ ィ トラ ン [ 1 08471 ]
て い る の が 特 徴 で ( 写 真 44), 敗 者 の 表 情 と い え よ う 。
現 在 入 手 で き る 仮 面 で は わ か ら な い が , 古 い 仮 面 を み る と , ア ル チ ャ レ オ が 土 着 社 会 の 戦 士 を 表 現 して い た よ う で あ る 。 M oya R ubi o [1978:Fi g.55] に み る 一 点 は , ア ル
チ ャ レ オ の 仮 面 の 頭 飾 り に 青 い す ず め が 乗 っ て い る と 説 明 さ れ て い る 。 一 方 , Cordr y
[1980:Fi g・287] は M oya R ubi o の 指 摘 し て い る仮 面 に 酷 似 した ア ル チ ャ レオ の 仮 面 の