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地域冷暖房システムにおける効率的な熱融通制御に関する研究 [ PDF

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43-1

地域冷暖房システムにおける効率的な熱融通制御に関する研究

小野 信秀 1. はじめに ライフサイクルにおける CO2排出量の削減のため、空気調 和設備の省エネルギーは重要である。その手法として地中熱 や河川水等の未利用エネルギーの活用、面的エネルギー利用 が挙げられる。本研究では、河川水を活用した隣接する 2 つ の地域冷暖房施設の間で行う熱融通について制御法を開発 し、その省エネルギー性能を明らかにすることを目的とする。 2. プロジェクト概要 本研究の対象施設は、東地区熱供給施設(以下、東地区)、 西地区熱供給施設(以下、西地区)に分かれており、幅員約 18m の道路を挟んで位置している。東地区は 2012 年に竣工 し、事務所や商業施設、劇場の熱源として利用されている。 西地区は、同様の用途に宿泊施設を加えた建物の熱源とし て、2017 年春に竣工予定である。本プロジェクトでは、河 川水や高効率定速ターボ冷凍機等を利用しシステムを高効 率化するとともに、これら2建物間における冷温水の熱融通 を計画している。東地区のシミュレーションについて既報 1)~3)において報告しており、本研究では現在建設中の西地区 の挙動をシミュレートする計算モデルを構築して既存の東 地区モデルと組み合わせ、両地区の適切な運用方法と熱融 通の効率的な制御法について検討していく。 3. 対象熱源システムの概要 対象とする熱源システムは、河川水を冷却水・熱源水とし て利用し、冷水・温水の温度成層型蓄熱槽を備えている。表 1 に東地区、表 2 に西地区の熱源システム機器仕様、図 1 に 両地区の熱源システムフローを示す。 3.1 熱源機器 東地区ではR-01~R-04 を蓄熱系熱源機器、R-05 と R-06 を直送系熱源機器とする。R-01 と R-02 は河川水利用型水熱 源ヒートポンプ、R-03 は熱回収型ヒートポンプ、R-04 は河 川水利用型インバータターボ冷凍機であり、これら4 台の熱 源機器が蓄熱槽への蓄熱を行う。R-05、R-06 は冷水専用の 河川水利用型ターボ冷凍機であり、直接2 次側の負荷を処理 する。西地区では、蓄熱系熱源機器として河川水利用型水熱 源ヒートポンプ (R-A01、R-A02)と熱回収ヒートポンプ(R-A03、R-A04)、直送系熱源機器としてターボ冷凍機(R-A05) が設置される。 3.2 蓄熱槽 東地区はCT-1~3 の 3 槽で構成されている。夏期(5 月~ 10 月)はすべて冷水槽、中間期(3、4、11 月)は 1、2 が冷水槽で 3 のみ温水槽、冬期(1、1、2、11、2 月)は CT-1 のみ冷水槽で CT-2、CT-3 が温水槽となる。西地区も東地 区と同様に、CT-A1~A3 の 3 槽で構成されており、CT-A1 は常に冷水対応、CT-A2、CT-A3 は季節に応じて冷水と温水 の切り替えを行う。 3.3 熱交換器 東地区は 4 台の熱交換器(HEX-1~HEX-4)が設置されて いる。一方、西地区は主に5 台の熱交換器(HEX-A1~HEX-A5)を用い、これらとは別に河川水熱交換器(RHEX-A1)も使 用する。採熱用熱交換器(HEX-A6)は、冷温水槽(CT-A2、CT-A3)における温水から冷水への切り替えを早め、冬期の河川 水温度が低い時に冷温水槽の一時的な温熱製造のために使 用する。なお、熱交換器(HEX-A3~HEX-A5)は、季節に応じ て冷水と温水を切り替える。 表 1 東地区熱源システム機器 表 2 東地区熱源システム機器 No 機器名 COP[-] 台数 冷凍能力 1,760kW 4.97 加熱能力 2,000kW 4.75 冷凍能力 340kW 3.30 加熱能力 450kW 4.37 R-04 インバータターボ冷凍機 冷凍能力 1,410kW 5.22 1 R-05,R-06 ターボ冷凍機 冷凍能力 3,200kW 5.71 2 HEX-1 熱交換器(冷水のみ) 交換熱量 1,600kW - 1 交換熱量(冷房時) 1,600kW 交換熱量(暖房時) 1,600kW 交換熱量(冷房時) 3,200kW 交換熱量(暖房時) 3,200kW 容量 684m3 蓄熱量 6,363kWh 容量 1020m3 蓄熱量 9,488kWh 容量 696m3 蓄熱量 6,474kWh 仕様 R-01,R-02 ヒートポンプ 2 R-03 熱回収ヒートポンプ 1 HEX-2 熱交換器(冷水・温水) - 1 1 2 CT-1 冷水槽 1 CT-2 冷温水槽 1 CT-3 冷温水槽 HEX-3,HEX-4 熱交換器(冷水・温水) -No 機器名 COP[-] 台数 冷凍能力 2,750kW 5.00 加熱能力 2,800kW 5.09 冷凍能力 850kW 3.27 加熱能力 1,100kW 4.23 R-A05 ターボ冷凍機 冷凍能力 3,200kW 5.82 1 RHEX-A1 河川水熱交換器 交換熱量 1,256kW - 1 HEX-A1 熱交換器(冷水のみ) 交換熱量 1,600kW - 1 HEX-A2 熱交換器(温水のみ) 交換熱量 1,600kW - 1 交換熱量(冷房時) 3,200kW 交換熱量(暖房時) 3,200kW HEX-A6 採熱用熱交換器 交換熱量 1,700kW - 1 容量 1,050m3 蓄熱量 10,378kWh 容量 650m3 蓄熱量 6,424kWh 容量 2,000m3 蓄熱量 19,767kWh CT-A3 冷温水槽 1 CT-A1 冷水槽 1 CT-A2 冷温水槽 1 -2 R-A03,R-A04 熱回収ヒートポンプ 2 HEX-A3,HEX-A4,HEX-A5 熱交換器(冷水・温水) - 3 仕様 R-A01,R-A02 ヒートポンプ

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43-2 4. シミュレーション概要 図2にシミュレーションフローを示す。モデルはFortranを 用いて作成された1分ステップの計算を行うものである。 各地区それぞれのサブモデル(図1(b))では、前ステップの運 転状況に基づいてはじめに制御状態をすべて計算し、バル ブ開度や機器のON/OFF情報を基に,流量、直送系温度状 態、蓄熱・熱交換器系統温度状態、二次側温度状態、河川 水排水温度の順に計算する。この過程において、各熱源機 やポンプの運転状態が決定され、それに基づいて各機器の エネルギー消費量が算出される。両地区を統合した全体の モデル(図1(a))では、負荷や河川水温度などのデータを読込 み、予め設定した熱融通の条件に合致するかどうかを判断 する。合致する場合には熱融通を行うものとして、融通す る熱量を計算する。なお、連係設備は融通できる流量に上 限がある。二次側設計温度差10℃が確保できるものと想定 して最大融通熱量を定め、最大融通熱量の範囲内で熱融通 が行えるものとしている。その後、両地区のサブモデルで それぞれ運転状態を計算し、最後に出力を行うフローとな っている。 5. 入力負荷の作成 前年度に開発したシミュレーションモデルでは、西地区 の冷暖房負荷として設計想定負荷を用いたが、今回はより実 際の挙動に近づけるため、東地区の実測値と両地区の設計想 定負荷をもとに新たに負荷データを作成し、これを入力値と した。東地区の冷暖房負荷および河川水温度は、2015 年度の 実測値を使用する。それぞれの入力値について、年間の変動 を 時刻繰り返し START END 直送系 入力データの読込み (河川水温度・負荷) 両地区間での 熱融通負荷の決定 熱源機器・運転モードの決定 ポンプ運転台数の決定 PID制御値の計算 河川水排水温度の計算 集計・出力 初期値の読込み (フラグ・設定値等) 流量 熱交換 器系 負荷系 河川水 系 入力 制御 END START 計算ブロック 東地区システムの 計算サブルーチン(b) 西地区システムの 計算サブルーチン(b) 蓄熱系熱源の計算 熱交換器の計算 蓄熱槽の計算 負荷側の計算 直送系熱源の計算 各系統流量の計算 ポンプエネルギーの計算 (a) 全体シミュレーションフロー (b) 東地区・西地区システム計算サブルーチン 図 2 シミュレーションフロー 図 1 熱源システムフロー

CT-A1 CT-A2 CT-A3

HEX-A3 HEX-A2 HEX-A1 R-A03 R-A02 R-A05 R-A01 供給先へ 直送系熱源 R-A04 RHEX-A1 蓄熱系熱源 CT-1 CT-2 CT-3 R-04 HEX-3 HEX-2 HEX-1 HEX-4 R-03 R-02 R-05 R-06 R-01 供給先へ 河川水(取水) 直送系熱源 蓄熱系熱源 東地区 (既存) 西地区 (建設中) プラント連係配管 バタフライ弁 電動弁・自動弁 (凡例) 冷水 電動制御弁 温水 河川水 冷温水 ポンプ 河川水(放流) HEX-A6 HEX-A5 HEX-A4

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43-3 を図 3~図 5 に示す。また、本モデルは 1 分ステップの計算 を行い、5~10 月を夏期、11・3・4 月を中間期、12~2 月を 冬期として扱う。 6. ケーススタディと融通テーブルの作成 本研究では業務の効率化を狙い、実運用時にビル管理者が ある時間において融通、非融通を容易に判断できるようにす るため、シミュレーション結果を基にした融通テーブルを作 成することを目指している。今回の検討では、実運用時に週 に1 回程度の設定変更を想定し、中間期、夏期、冬期の蓄熱 時間帯、放熱時間帯別に週積算の冷水負荷から最適な融通設 定を見つける。そのため、様々なケースを想定して計算を行 い、季節別・時間帯別に各負荷帯における最適ケースを見つ ける。検討ケースを表 3 に示す。各機器の効率の比較から、 夏期はターボ冷凍機、中間期・冬期に関してはインバータタ ーボ冷凍機(以下 R-04)、熱回収ヒートポンプ(以下 R-03(東 地区)、R-A03(西地区))、冷房専用熱回収ヒートポンプ(以下 R-A04)の稼働割合の拡大が全体の効率改善につながる。ケー ススタディによって決定した夏期の融通テーブルを表 4、表 5 に示す。夏期の蓄熱時間帯では全てのケースにおいて case4 が最も SCOP が高い値を示していた。放熱時間帯においては case3_1000 で SCOP が高いケースが多くみられた。両地区の 負荷が最大の負荷帯においては各々の地区の負荷を処理す ることで手一杯になり、負荷を処理しきれなくなるため、か えって SCOP が下がることから融通をしないほうが良いと いう結果となった。 6.1 融通テーブルを使用した年間計算 融通テーブルを基に5 章で述べた入力値を使用し、年間で の省エネルギー効果の試算を行った。図6 に各地区の季節 別・年間 SCOP を、図 7 に各地区の中間期・冬期の R-A03、 R-03 での処理熱量を、図 8 に中間期・冬期の R-A01、R-A02 の処理熱量を示す。年間の SCOP は case0 が 1.47 に対し、融 通テーブルを使用したケースでは 1.54 となり、5%上昇する 結果となった。中間期、冬期は冷水負荷の融通により、SCOP は 0.1 向上している。夏期は 0.04 の向上に留まっている。中 間期・冬期では非融通時と比べて高効率な R-A03、R-03 での 処理熱量は増加しており、中間期で15%、冬期で 17%増加 している。一方、同じく高効率な R-A04、R-04 での処理熱量 は中間期で25%、冬期で 12%減少した。それでも SCOP が 向上した理由は R-A03 による処理熱量増加により、ヒートポ ンプ(以下 R-A01(西地区)、R-A02(西地区))の稼働が中 間期で57GJ、冬期で 276GJ 減少したからである。R-A01、 R-A02 は COP が 5.5 程度に対し、R-A03 は 7.6 程度と高く、 機器仕様の差が SCOP に影響している。次に夏期での計算結 果について述べる。図9 に各地区 R-A05、R-05、図 10 に各 地区R-A04、R-04 処理熱量を、図 11 に西地区熱源機器別 COP を示す。夏期ではターボ冷凍機(以下R-05(東地区)、 R-06(東地区)、R-A05(西地区))の COP が高いことか ら、これらの機器の処理熱量を増やすことが省エネルギ ーにつながる。しかし、今回のケースではこれらの機器の 図 3 河川水温度推移 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 [℃] [月] 河川水温度 図 5 西地区冷暖房負荷入力値 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 [kW] [月] 冷房負荷 暖房負荷 図 4 東地区冷暖房負荷入力値 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 [kW] [月] 冷房負荷 暖房負荷 表 3 ケース検討一覧 ケース名 ケース条件 case0 融通しない case1 蓄熱時間帯のみ西地区の負荷のうち最大融通可能量を常に東地区に移行 case2_A 東地区の負荷がA[kW]未満ならば西地区に移行 (A=500,1000,1500,2000,2500) case3_B 東地区の負荷がBkW]を常に西地区に移行 (B=500,1000,1500,2000,2500) ※B[kW]未満の場合は、全ての負荷を西地区に移行 case4 東地区の負荷のうち最大融通可能量を常に西地区に移行 表 4 融通テーブル(夏期_蓄熱時間帯) ~20 20~30 30~40 40~50 50~ ~20 case4 case4 case4 case4 case4 20~30 case4 case4 case4 case4 case4 30~40 case4 case4 case4 case4 case4 40~50 case4 case4 case4 case4 case4 50~ case4 case4 case4 case4 case4 東地区

西地区

表 5 融通テーブル(夏期_放熱時間帯)

~100 100~200 200~300 300~400 400~ ~100 case3_1000 case3_1000 case3_1000 case4 case4 100~200 case3_1000 case3_1000 case3_1000 case3_2000 case3_1000 200~300 case3_500 case3_1000 case3_1000 case3_2000 case3_1000 300~400 case3_500 case3_1000 case3_1000 case2_2500 case0 400~ case2_500 case2_500 case3_1000 case0 case0 東地区

(4)

43-4 運転時間を十分に増やすことができなかった。また、融通 によって西地区の負荷が増加し、西地区の追いかけ運転 が増加しており、R-A04 の運転時間が増えた。R-A04 は 河川水温度が高いときにはCOP が大きく低下する傾向が あり、夏期 COP は 4.9 と蓄熱系熱源機器のなかで最も低 い。そのため夏期の西地区の追いかけ運転が増加すれば するほど COP が低い機器を稼働させることになる。結果 として東地区から西地区へと融通し、R- A05 の稼働は増 加したが追いかけ運転により R-A04 での処理熱量も増加 したため、SCOP があまり向上しなかったと考えられる。 7. まとめ 本研究では未利用エネルギーを利用した地域冷暖房施設に おいて季節別、負荷帯別による最適な機器制御の検討を行っ た。非融通時で年間 SCOP が 1.47 に対し、融通テーブルを使 用した場合は 1.54 となり、5%上昇する結果となった。融通 効果が小さかった西地区はターボ冷凍機の追いかけ運転時 の効率が低いため、西地区から東地区へ負荷を融通すること によって夏期の SCOP の向上が期待できると考えられる。ま た、中間期、冬期においては冷水負荷のみではなく温水負荷 も考慮した融通制御の検討を行う必要がある。 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 西地区 東地区 総合 西地区 東地区 総合 西地区 東地区 総合 西地区 東地区 総合 中間期 夏期 冬期 年間 SC OP[ -] case0 融通テーブル結果 図 6 各地区季節別・年間 SCOP 図 10 各地区 R-A04、R-04 処理熱量(夏期) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 R-A04 R-04 合計 夏期 処理熱量 [GJ] case0 融通テーブル結果 図 9 各地区 R-A05、R-05、R-06 処理熱量(夏期) 0 2000 4000 6000 8000 R-A05 R-05,R-06 合計 夏期 処理熱量 [G J] case0 融通テーブル結果 図 11 西地区熱源機器別 COP(夏期) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0

R-A01 R-A02 R-A04 R-A05

C OP[ -] 図 7 R-A03、R-03 処理熱量(中間期・冬期) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 R-A03 R-03 合計 R-A03 R-03 合計 中間期 冬期 処理熱量 [GJ ] case0 融通テーブル結果 図 8 R-A01、R-A02 処理熱量(中間期・冬期) 0 2000 4000 6000 8000

R-A01 R-A02 合計 R-A01 R-A02 合計

中間期 冬期

処理熱量

[GJ]

表 5  融通テーブル(夏期_放熱時間帯)

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