統合型リーディング指導法の年間適用効果:
アクションリサーチを通して
The Effectiveness of Year-Long Integrated Reading Instruction:
Through an Action Research Study
津 波 聡
Satoshi Tsuha
Abstract
The purpose of this action research study is twofold: (1) to analyze the efficacy of a teaching method (hereafter referred to “Integrated Reading Instruction”), developed by the author and implemented in a Japanese college reading class for English majors for two semesters, and (2) to propose ways to implement it for instruction over a longer period of time. Integrated Reading Instruction, which literally means integration of intensive reading and extensive reading as well as four language skills, has been found to be effective in improving listening and reading skills when implemented for one semester (Tsuha, 2013). In this study, the same method was applied for two semesters, in an attempt to achieve better results. Unfortunately, however, based on the findings, it has become apparent that Intergraded Reading Instruction needs to be modified for long-term instruction.
Specifically, more explicit training in fostering reading strategies should be provided at the beginning of the course to reorient their approach from bottom-up to top-down. The paper first describes the background of the development of Integrated Reading Instruction. It then shows the quantitative and qualitative analyses of three proficiency tests and a questionnaire. Finally, it discusses how to improve the method for long-term instruction.
1 はじめに
筆者は、沖縄国際大学英米言語文化学科1年次を対象にしたリーディングクラス(English
Reading II)に4領域(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)を網羅し
ながら精読と多読を有機的に融合する指導法(本稿では便宜上「統合型リーディング指導法」
とする)を取り入れた(津波、2013)。実践後の検証では、ポストテストにおいてリスニン グと筆記両面で平均値の上昇が確認される等、ある程度の成果が確認された。この結果を受 け、平成25年度には、統合型リーディング指導法を前・後期のリーディングクラス(English
Reading I・II)に通年指導として取り入れた。
半年の実践で効果のあった指導法を一年間取り入れた場合、更なる効果が期待できるであ ろうか。本稿では、統合型リーディング指導法開発の背景や指導内容を紹介すると共に、本 実践の成果・課題を質的・量的分析を基に明確にしていく。更に、長期間の導入に向けての 修正案を提案する。
2 精読・多読指導
現在最も定着しているリーディング観は先行知識(スキーマ)を駆使しながら書かれてい る内容を積極的に予測・検証しながら読み進むtop-down processと語彙や文構造などの細部 に意識を置くbottom-up processの2つのプロセスを状況に応じて使い分けながら理解に至ると
いうinteraction approachである。従って、リーディングクラスにおいては両プロセスを活性
化する指導が求められている(Coady, 1993)。具体的には(特に、日本のような教室外で英 語使用の機会がほとんど無いEFLの環境では)、精読と多読の要素を有機的に融合するとと
もに4つのスキルを網羅させることが望まれる。
Nuttal(1982)は、精読と多読は相互補完的な関係にあり、リーディング指導にはどちら
の要素も必要であると述べている。精読のねらいは、テキストの細部まで深く読み取ること であるため、何が書かれているだけでなく、意味を構成するメカニズムまでも理解すること が要求される。従って、精読指導における教師の重要な役割は、適切な課題や支援を与えな がら、リーディングストラテジーの育成に務めることである。同様に、Richard(1990)も 教師はどのレベルの学習者にも対応できる指導を実現しなければならないと主張し、読解 に必要なリーディングストラテジー育成訓練を取り入れることを奨励している。Paris et.al
(1991)は、リーディングストラテジーの訓練により、学習者の理解力が上がり、retention(テ キストの内容を長く記憶に留めること)も改善したと報告している。
では、リーディングストラテジーとリーディングスキルの違いは何か。Anderson(2003)
は読解に至るための意識的な作業をリーディングストラテジーとし、それが自動化され無意 識に読解に活用されるものをリーディングスキルとしている。Grabe and Stoller(2002)は、
上級者に共通して見られるリーディングストラテジーとして以下を挙げている。
・様々なジャンルの構成を把握している
・トピックセンテンスと具体例を関連づけられる ・スキミング、スキャニングができる
・ディスコースマーカーや代名詞等、首尾一貫した文章を構成する表現を利用できる ・文脈や様々な情報を活用して内容や語句の意味を予測できる
・行間が読める
・批判的な読みができる(事実と意見の違いを理解する)
Farrell(2009)は、リーディングストラテジー育成の方法として文章構成を明示的に指導
することを奨励している。例えば、物語はsetting, event, complication, resolutionの順で話が展 開されていくことを意識させることによって、predictionやhypothesis testを促進し速読と理解 度を改善することが出来るとしている。読みの速さと理解度は密接に関わっており、英語母 語話者は毎分200~300語のペースで読解が出来ると言われている。
Anderson(2003)は1分 間 に200語 を 読 み7割 以 上 理 解 で き る 英 語 学 習 者 を“fluent reader”
(p.70)と定義し、速さと正確さを兼ね備えた“fluent reader”を養成することがリーディングク ラスの使命であると述べている。しかし、正確さを重視するあまり流暢さを育成する指導が 十分取り入れられていないのが現状であるとも述べている。Farrell(2009)は、“fluent reader” の条件として複数の作業(word recognition, comprehension)を同時に進行できる能力として いる。更に、それは授業の中で十分育成可能であると主張し、“Directed Reading Teaching
Activity”(p.40)等のリーディングストラテジー育成のための様々な具体例を提案している。
Aebersold and Field (1997)はパッセージの新出単語はpre-readingの段階で明示的に指導され
るべきだと主張している。新出単語については、学習者の負担加重を考慮し1回につき5~ 7語が適切とされている(Hunt and Beglar, 2002)。Nuttal(1982)は、語彙指導は単純に意味 と発音を確認するだけでなく、学習者が理解を妨げている原因に気づくものでなければなら ないと主張している。必然的に、新出語彙だけでなくイディオムや比喩表現、複数の意味を 有する語彙、代名詞等も取り上げなければならない。このような表現は単語が容易な分、混 乱の原因になっていることに気づかないことが多々あるが、それを取り上げる教師も同様に 少ないのが現状である。
一方、多読のねらいはリーディングに必要な技能をリーディングによって習得するという ことである(Day, 1993)。Palmerは多読・精読という表現を初めて使用し、本来の読書に近 い活動で教育的効果を狙う多読の重要性を主張したとされている(Bamford and Day, 1999)。
Krashen(1989)は、インプット仮説の中で文字情報も重要なインプットになりうるとし、
理解可能な本を大量に読むことにより自然に読解力と語彙力を育成できると主張している。
実際に、多読は様々な指導環境での成果が報告され(Ascough, 2007; Jacob, Lituanas and Renandya; 1999, Krashen and Mason; 1997, Pilgreen, 2000; Takase, 2000; 山崎, 2009)、読解力だ けでなく、語彙力・文法力等、言語力全般の向上に加え、読書習慣の改善に繋がる有効なリー ディング指導法の一つとして注目されている。日本においても、酒井(2002)らを中心に多 読指導の入門書や概説書が充実してきたこともあり、多読の実効性や有効性について認知度 が高まっている。しかし、多読は自主的に大量に読むことが要求されるため、授業導入に当 たっては教材の確保や授業外読書推進等の課題がある。
3 背景
(1) H23年度前期~H24年度前期
平成23年度のEnglish Reading I・IIでは90分授業の前半45分を速読・精読、後半の45分を 多読に充てた(津波、2013)。授業外での自主読書量の促進については、授業中の多読後 に記録するリーディングログに加え、授業外の読書記録も奨励した。速読・精読では、様々 なトピックや文章構成を経験させるために約20種類のパッセージ(英字新聞や、インター ネット、英検準2級・2級長文等)を150~300語程度に加工し、毎時間1パッセージを短時
間(1~3分)で読ませ、それに付随する質問に対する答えを確認した。
ところが、学期ごとの検証ではリスニングのみに向上が見られ、肝心の語彙・文法・読 解には改善が見られなかった。そこで、平成24年度のEnglish Reading I(前期)では、授 業内容や授業形態は変えずに、速読・精読で使用するリーディング教材の内容を、出来る だけ学生の興味・関心に沿ったものになるよう精選した。残念ながら、それにも関わらず 学期終了後のポストテストでは改善が見られなかった。データ分析の結果、要因の一つと して考えられたのが、速読・精読時間の短さであった。速読・精読は45分という時間の制 約のため、表面的な理解の確認に終始してしまった。結果的に、各パッセージの理解は浅 くなり、リーディング力の改善には繋がらなかったと推測された。
(2) H24年度後期
過去1年半の実践結果を踏まえ、平成24年度のEnglish Reading II(後期)では、パッセー ジをより深く理解させるために、速読・精読の時間を60分に拡大し、多読の時間を30分に 短縮した。速読・精読では、時間を拡大した分、pre、while、postのスリーステップを活 用したより細かな指導が可能となった。更に、音声教材、発問、ペアワークの有効利用に よりリーディング活動に留まらず、リスニング、スピーキング、ライティングを網羅する 統合的なリーディング活動となった。
学期末に実施したポストテストではリスニング・筆記のいずれの平均値も前年度より上 昇した。4ヶ月間の指導の成果を糧に、H25年度は、前期及び後期のリーディングクラス
(English Reading I・II)に統合的なリーディング指導法を取り入れた。
4 H25年度統合型リーディング指導法の実践
前述のように、平成24年度後期の実践結果を受け、平成25年度は統合型リーディング指導 法を通年科目に導入した。以下に、指導内容を詳述する。
(1) English Reading I(英語科専門選択)
① 対象:英語科1年次
② 指導期間(時数・単位):平成25年4月9日~8月2日(週2回、計31回、4単位)
③ 登録人数:48人
④ 授業の流れ:速読・精読(60分)、多読(30分)
⑤ 履修上の注意事項
ア 指定された席に座る(月に1回席替え)
イ 講義は基本的に英語(学生も積極的な英語使用が望まれる)
ウ 授業内活動は速読・多読中を除いてすべてペアで行う
エ 速読・精読で使用するワークシートはすべてファイルし、学期末に提出する
(すべて記入されていることが条件)
オ 多読用の本は各自持参する(図書館から借りる)
カ 毎回リーディングログを英語で記録する
キ 多読は4万語以上読むことが条件(読破した本の語数のみをカウントする)
(2) English Reading II(英語科専門選択)
① 対象:英語科1年次
② 指導期間(時数・単位):平成25年10月1日~平成26年1月30日(週2回、計31回、4単位)
③ 登録人数:46人
④ 授業の流れ:速読・精読(60分)、多読(30分)
⑤ 履修上の注意事項(同前期)
(3) 授業の流れ・指導内容
① 速読・精読(60分):
・pre-reading(oral introduction、vocabulary check、listening) ・in(while)-reading
・post-reading(check of answers、summary、discussion)
② 多読(30分):Graded Readers Level 1~6
・本を持参し(図書館から借りる)、スタートの合図で15分間読む
・ストップの合図で、パートナーと英語で情報交換(内容要約、感想等)
・Reading Logを英語で記入する(3分)
・パートナーの読書情報をReading Logに英語で記録する(3分)
(4) 速読・精読教材
① English Reading I
Ann of Green Gables(Penguin Active Reading Level 2)(11回)*音声教材使用 Steve Jobs’ Speech at Stanford University(8回)*音声教材使用
その他(英字新聞等を加工)*音声教材なし
② English Reading II
英検2級~準1級、TOEFLの長文を利用*音声教材なし
5 検証結果 (1) 方法
本実践研究の検証は、4月、8月、1月に実施したプレ・ミッド・ポストテストのスコア の推移をSPSS統計ソフトで分析して行った。更に、アンケート結果、読書量、自主学習 量等の質的分析も有効性検証のために用いた。
プレ・ミッド・ポストテストは株式会社チエルが開発したComputer-based Placement Test を使用した。本テストは、語彙(30問)、文法(6問)、英作文(5問)、読解(16問)、リス ニング(20問)から成り、レベルと問題数を固定し、毎回問題を変更することが出来る。
配点は筆記(語彙・文法・英作文・長文)が900点、リスニングが300点、合計1200点満点 となっている。表1に示す通り、得点によってA~Fの診断がなされ、それぞれの文字が 相当する英検レベルを表している。
各学期末に実施したアンケートは、率直な意見を引き出すために、あえて項目ごとにコ メントや意見を記入する記述式にした。質問は、精読活動に関する項目(ワークシート、
ペアワーク、時間配分、英語使用について)と多読活動に関する項目(図書の種類、読書 時間、読書時間、ペア情報交換、読書記録時間、英語使用について)。語彙数については、
授業内記録(Reading Log)と授業外記録(Out-Of-Class Reading Record)を使用し、月ご とに読破冊数とその語数を記録させ、学期末にその総計を報告させた。
表1 Computer-based Placement Test
(2) 被験者
本実践研究の被験者は平成25年度English Reading IとIIを受講した沖縄国際大学英米言語 文化学科1年次のうち、3回のテストを全て受験した40名である。4月に実施したプレテス トのスコアを表1のスケールに照らし合わせると2級レベル(C判定)が29名(72%)、準2 級上(D判定)が11名(28%)であった。
(3) 結果
表2~6はプレ・ミッド・ポストテストにおける総合ポイント、筆記ポイント(語彙・文法・
英作文・長文)、項目別ポイント(語彙、長文、リスニング)を示している。表2~6の平 均値の推移はグラフ1に示されているが、リスニングを除く全ての項目でポストテストが プレテストを下回っている。
表2~5が示すように、総合、筆記(語彙、文法、英作文、長文)、語彙の平均値はどちらも、
ミッドテストで急落し、ポストテストで回復するが、プレテストを上回る程は伸びていな い。総合、筆記(語彙、文法、英作文、長文)、語彙の各テスト間の平均値の違いのうち、特にプ レ・ミッド間の落ち込みには有意差もあり(表7~9)、憂慮される状況であると捉えられる。
表2~6はプレ・ミッド・ポストテストにおける総合ポイント、筆記ポイント(語彙・文法・
英作文・長文)、項目別ポイント(語彙、長文、リスニング)を示している。表2~6の平 均値の推移はグラフ1にまとめて示されているが、リスニングを除く全ての項目でポスト テストがプレテストを下回っている。
総合、筆記(語彙、文法、英作文、長文)、語彙の平均値は共通してミッドテストで急 落しポストテストで回復するも、プレテストを上回る程の伸びはないという傾向を示して いる(表2~5、グラフ1)。表7~9が示すように、総合、筆記(語彙、文法、英作文、長 文)、語彙部門の3テスト間の平均値の差異の内、特にプレ・ミッド間には有意差があり、
平均値の差が顕著であることを物語っている。本実践のハイライトとなる長文に関しては、
表5が示すように、テストごとに平均値が下落し(63.2%, 57.9%, 54.1%)、プリ・ミッド間 及びプリ・ポスト間には有意差も認められる(表10)。対象項目の内、唯一毎回伸びを示 したのが、リスニングである(表6、グラフ1)。しかし、それぞれの伸びは微増に留まり、
有意差は認められなかった(F=1.487, p=.231)。
得点の範囲 英検レベル 診断
1199点以上 1級 A
1100点以上1199点未満 準1級 B
800点以上1100点未満 2級 C
600点以上800点未満 準2級上 D
430点以上600点未満 準2級下 E
180点以上430点未満 3級上 F
180点以下 3級下 G
表2 プレ・ミッド・ポストテスト(総合)平均値推
表3 プレ・ミッド・ポストテスト(筆記)平均値推移
表4 プレ・ミッド・ポストテスト(語彙)平均値推移
表5 プレ・ミッド・ポストテスト(長文)平均値推移
表6 プレ・ミッド・ポストテスト(リスニング)平均値推移
グラフ1 プレ・ミッド・ポストテスト領域別平均値推移
N Mean (%) SDV
Pre 40 860.0 (71.7) 80.6
Mid 40 793.8 (66.1) 98.6
Post 40 815.5 (68.0) 107.0
N Mean (%) SDV
Pre 40 618.8 (68.8) 71.3
Mid 40 548.8 (61.0) 90.6
Post 40 567.5 (63.1) 97.1
N Mean (%) SDV
Pre 38 208.0 (69.3) 39.0
Mid 38 169.0 (56.3) 34.4
Post 38 192.8 (64.3) 30.5
N Mean (%) SDV
Pre 38 252.8 (63.2) 56.0
Mid 38 231.5 (57.9) 66.3
Post 38 216.4 (54.1) 64.8
N Mean (%) SDV
Pre 38 241.3 (80.4) 23.8
Mid 38 245.0 (81.7) 25.0
Post 38 248.0 (82.7) 31.0
表7 総合スコア多重分析
表8 筆記スコア多重分析
表9 語彙スコア多重分析
表10 長文スコア多重分析
表11 プレ・ミッド間上昇者数
Test 平均値の差 有意確率
Pre Mid 66.3** .008
Post 44.5 .121
Mid Pre -66.3** .008
Post -21.8 .939
Post Pre -44.5 .121
Mid 21.8 .939
Test 平均値の差 有意確率
Pre Mid 70.0** .001
Post 51.3* .029
Mid Pre -70.0** .001
Post -18.6 1.00
Post Pre -51.3* .029
Mid 18.6 1.00
Test 平均値の差 有意確率
Pre Mid 39.0** .000
Post 15.3 .157
Mid Pre -39.0** .000
Post -23.8** .008
Post Pre -15.3 .157
Mid 23.8** .008
Test 平均値の差 有意確率
Pre Mid 21.3 .389
Post 36.4* .034
Mid Pre -21.3 .389
Post 15.1 .846
Post Pre -36.4* .034
Mid -15.1 .846
総合 筆記 語彙 長文 リスニング
9 (23) 7 (18) 3 (8) 14 (35) 16 (40)
表12 達成度一覧
L: Listening, V: Vocabulary, R: Reading
学生 総合 筆記 L V R 語数 授業外
1 × × × × × 74060
2 × × × ○ × 83540 5
3 × × × ○ × 294000 22
4 × × ○ × × 41560 8
5 × × × ○ × 121000 1
6 ○ ○ ○ ○ × 127693 3
7 × × × × × 43500
8 × × ○ × × 76625 1
9 × × × ○ × 88500
10 × × ○ × × 69500 1
11 × × × × ○ 93000 3
12 × × × ○ × 92250
13 ○ ○ × ○ × 113530 6
14 ○ ○ × × ○ 92406 11
15 × × × × × 87845 2
16 ○ × ○ × ○ 75000
17 × × × × ○ 76000 1
18 × × ○ × × 63000 5
19 × × × × × 92770 3
20 ○ ○ × × ○ 78500 38
21 × × ○ × × 72500 3
22 × ○ × ○ × 65191 11
23 × × ○ ○ × 114500 4
24 ○ × ○ × × 86901
25 × × ○ × × 103000 4
26 × × × × × 45010 8
27 ○ ○ ○ × ○ 116500 1
28 × × ○ × × 92660 2
29 ○ ○ ○ ○ ○ 87435 7
30 × × × × ○ 66500 9
31 × × × × × 85500 5
32 × × × × × 96916 4
33 ○ × ○ × × 101253 4
34 × ○ × × × 100540 3
35 × × × ○ × 49000 4
36 × × × × × 84000
37 ○ × ○ ○ × 89545 3
38 ○ × ○ ○ × 60000 5
39 × × ○ × × 155000 10
40 × × ○ ○ × 72035 3
合計 11 8 18 14 8
(4) 考察
① 精読
リスニングを除く全ての項目で、ミッドテストの平均点が落ち込み、それがすべてプレ テストとの間に有意差を示している。では、その原因はどこにあるのであろうか。読書量
(語彙数)と長文のスコアの相関は本研究においては確認できなかった(t=1.113, p=.280,
F=1.240, p=.280)ため、個々のスコアと学期末に実施した記述式のアンケートの回答を参
照しながら原因追及を試みた。
表11が示すように、ミッドテストでスコアが上昇した学生の項目別の上昇比率は、リス ニングが最も高い(40%)が、意外にも長文が2番目の上昇率となっている。最も上昇率 が低いのは語彙(8%)で、続いて筆記(18%)となっている。つまり、リーディング力 の改善には、単に大量のパッセージを与えるだけでなく、語彙、文法、英作文への対応も 要求されるということが予測される。これを裏付けるような以下のようなコメントが学期 末に実施したアンケートの回答に見られた。
・説明が速すぎた。
・訳がないので不安だった。
・語彙力がつくように、クイズをすべきだ。
前期のオリエンテーションでは、素早くパッセージの内容を読み取り、それを相手に伝 えることが重要であることを強調した。そのために、リーディング教材を活用したコミュ ニケーション活動の時間を確保するために、テストやクイズは実施せずに、語彙について は自主学習としていた。また、教師の説明は本文の訳を提示するのではなく、段落の構成 に言及したり、ヒントを与えて極力学生の気づきを促したつもりであった。しかし、テス ト結果やアンケートの回答から、訳読式や受動的な学習に慣れてきた1年生が学習スタイ ルを急に変えることは容易ではないことは明らかである。Nuttal(1982)の以下のような 主張のように、指導者は受動的な学習者を時間をかけながら変容させていく必要があるが、
その配慮に実践となったと言わざるを得ない。
Or perhaps you were expecting too much too soon: students who are accustomed to a passive role must be gently eased into active participation, required only gradually to take responsibility for their reading, and given specific training in those skills that can be trained. (p. 148)
同様にFarrell(2009)も、英語学習者は初期の段階では目標言語の暗示的文法知識に欠け
るため、文や文章構成を理解する基礎作りはリーディング指導の必要条件となる、と主張 しているように、入学間もない前期の指導では、より細かな指導が不可欠であったと言え よう。シラバス上は、精読となっているが、実際はリーディングストラテジーを育成する
細かな指導が欠如しており、本来の精読活動にはなり得ていなかったということであろう。
リーディング教材については、前期のアンケートの中に以下のような気になるコメント があった。
・赤毛のアンのレベルが低すぎて退屈だった。
・スティーブ・ジョブスのスピーチが難しすぎた。
・同じ話を長期的にやるのでパターンが同じで飽きた。
「赤毛のアン」は11回、「スティーブ・ジョブス」は9回連続で実施したが、前者は難易 度が低すぎ、後者は高すぎたようである。レベルが適切であった学生にとってはどちらの 作品も十分楽しめたようであるが、そうでない学生にとっては長期にわたることが仇に なってしまうようである。クラスサイズが大きく、学習者のレベルに差がある場合は、適 切な難易度の教材を提供することが極めて困難であるため、同一のトピック(作品)を長 期間継続することはリスクを伴うことを肝に銘じなければならない。また、後期に使用し た教材については、以下のようなコメントがあった。
・いろいろな分野の内容でおもしろそうだけど、難しすぎて理解できなかった。
・難しくてつらかった。
・準1級レベルはやっぱり難しかった。
長文(リーディング)部門のミッド・ポスト間の落ち込みの要因としては、後期に使用 したリーディング教材の難易度が挙げられる。指導目標に英検レベルを掲げたこともあり、
2級から準1級レベルの長文の問題をトピックを精選しながら提供したつもりであるが、準 1級レベルのパッセージは難易度が高すぎ意欲低下につながったことが予想される。
このような結果から、精読活動では本来語彙、文法、文章構造、ディスコースマーカー 等を取り上げながらリーディングストラテジーを促進する必要性があるにも関わらず、入 学当初からtop-down processに重きを置いた速読活動に終始してしまい、学習者のニーズ に合わない指導内容となっていたということが言えよう。また、教材については、単に学 生にとって興味のあるトピックを考慮するだけでなく、大規模クラスに学生のレベルに 合った難易度を追求することが重要である。全てのレベルに対応することは極めて困難な ため、様々なトピックを短いスパンで提供していくことがこの状況下で最善策ではないか と思われる。
② 多読
多読に関してもほぼ全ての学生が肯定的に捉え、楽しく授業に臨めたと答えている。但 し、本実践の多読指導に関する最大の欠点は、授業外の多読活動が見えてこないというこ
とである。表11の1~40は参加者を示しており、プレテストの総合得点の順位(1053~ 728点)となっている。レベル別の各領域達成度(プレ・ポスト間に得点の上昇がある)
を見るためにプレテストの総合得点900点以上を上位、800~900点未満を注意、800点未 満を下位群とした。すると、各領域の達成率が最も高いのは中位群で、特に長文においては、
まさに中間の11~30位の学生のみが伸びているという結果になっている。しかし、前述 のように、読書量と読解力の相関は確認できない(t=1.113, p=.280, F=1.240, p=.280)ため、
読書量と英語力全般の伸びの因果関係は推測できない。このような結果に至った一つの要 因として予測できることは、申請された語彙数及び授業外読書回数の信頼性の低さである。
本実践では、ア)読破した本の語彙数のみを自主申告することになっていたため、カウント 方法にばらつきがあった、イ)授業外読書が必須課題ではなかったため授業外読書記録の 不履行が目立った、という点で信頼性に欠けるデータになったことは否めない。多読と読解 力の相関を検証するための信頼性の高いデータ収集法は来年度以降の課題として残った。
但し、達成者の学習記録を見ると多読と英語力の向上の因果関係について無視できない 傾向も確認できる。例えば表11の14、20、27、29の学生については、プレテストの時点で は総合スコアで中位群に位置していたがポストテストでは全員が上位群のレベルに達して いる。長文においても全員が40ポイント以上上昇しており、14の学生に至っては長文にお いて147ポイントも上昇し、総合ポイントでは1019ポイントとなり、クラスで3番目に高い スコアとなっている。この4人の学生は共通して授業参加率が極めて良く、リーディング ログの記録も毎回枠からはみ出るほどの量を書き、更に出来るだけ違う表現を使用する等、
積極的な態度で臨んでいた。彼らは授業外読書にも積極的に取り組み、大量の英文を読ん だことが推測できる。27の学生については、授業外読書回数が1回となっているが、本人 に確認を取ったところ記録用紙を紛失し、ほとんど記録していなかったと説明している。
このように個々の読書記録を分析すると授業内外で大量に読書に取り組み、読んだ内容 を口頭や文字で積極的に伝える活動を継続することによって英語力の向上が図られること が伺える。
③ 成果・課題
今回の実践の成果は、まずリーディング指導であるにも関わらずリスニング力が強化さ れたことである。統合型リーディング指導法では、授業が全て英語で実施される点と、精 読用の教材を音声も活用しながら導入する点に起因しているのではないかと思われる。ま た、文字のインプットがリスニング力向上に繋がる要素になりうることを示唆していると いう解釈も可能であるが、この点については今後の研究課題としたい。いずれにしても、
リスニング力の向上は前回に引き続き今回も確認されたことから、統合型リーディング指 導法がリスニング力向上にも効果がることを示唆していると捉えたい。更に、授業内・外 の課題に積極的に取り組んだ参加者の中にリーディング力が大幅に改善していることも本 実践の成果と捉えたい。長期間にわたる実践であるため、マンネリ化を解消し学生の意欲
を継続させることができれば、統合的リーディング指導法が4領域をバランス良く改善さ せる可能性があることの裏付けであると捉えたい。
課題としては、全体的には(テスト結果を見た限りにおいては)期待した成果が得られ なかったことである。その大きな要因の一つとして目標設定の甘さが挙げられる。本実践 には、一年間の指導であるにも関わらず短期及び中期目標がなく、最終到達目標(「英検2 級~準1級レベルのパッセージを理解し、その内容を伝えることが出来る」)のみが設定さ れていた。その結果、段階的な指導を考慮せず、同一の指導を学期開始当初から単純に長 期間繰り返すだけの指導に陥ってしまい、指導内容と学習者ニーズ及びレディネスにミス マッチを生じてしまっていたと考えられる。このミスマッチは特に入学間もない前期にお いて顕著で、結果的に中間地点(前期終了時)のミッドテスト全項目(リスニングを除く)
における落ち込みに繋がったのではないかと推測される。
その他の要因として、授業外読書を含めた自主学習力を育成するための手立てが不十分 であったということも否めない。大量の読書量が前提条件となる多読を取り入れている指 導であるにも関わらず、本年度の実践においては授業外読書を促進する手立てや客観性・
信頼性の高いデータ確保が不十分であったという点がそれを裏付けている。
6 修正案
分析結果を総括すると、統合的リーディング指導の通年活用に向けては中期目標と長期目 標を軸にした年間指導計画の作成が喫緊の課題であることは論を俟たない。そこで、本項で は今後の導入に向けて修正案を提案する。目標設定に関しては、中期目標(前期指導目標)
を「語彙力の強化及びリーディングストラテジーの育成」と「授業外読書の定着」とし、長 期目標(後期指導目標)はH24年度後期の指導目標(「英検2級~準1級レベルの総合的英語 力の育成」)を踏襲する。更に、前期指導目標達成のための強化項目として以下が挙げる。
・語彙力・文法力の強化 ・様々な文章構成の把握 ・授業外読書の推進 ・授業外読書記録の充実
・語数カウント(報告)の信頼性の向上
語彙力・文法力強化に関しては、復習を兼ねてパッセージ4回に1回の割合でクイズを実 施する。最終的(後期終了後)にはNation (1990)の主張する大学レベル語彙2800語(2,000 high frequency words、800 academic words )の獲得を目指す。様々な文章校正の把握に関しては、
4つのジャンル(narrative、descriptive、expository、argumentative)を計画的に経験させながら、
前述したGrabe and Stoller(2002)の掲げるリーディングストラテジーの強化を図る。授業
外読書の推進に関しては、前期終了後に4万語以上を読むことが明確になるような「授業外
読書計画」を立てさせる。学期末に提出させていた「授業外読書記録」は、月ごとに提出さ せ、その都度計画の見直しを行わせる。
入学当初の学生のニーズに答え学習スタイルのスムーズな移行を促すためにも前期は精読 に時間をかけ、ゆとりをもって学習スタイルの変容を促す。特に、bottom-up processからtop-
down process中心の授業へのスムーズな移行を促すために前期最初の授業(10回)では以下
のように精読のみを実施する。
English Reading I
精読(90分)・・・・・・・・・・・・10回 精読(60分)、多読(30分)・・・・・21回
精読教材に関しては、前期に使用した連続教材(Ann of Green Gables、Steve Jobs’ Speech
at Stanford University)を取りやめ1回1パッセージを基本として上記4種類のジャンルを扱う
(オリジナル教材を作成)。Steve Jobs’ Speech at Stanford Universityは前期に扱ったが、アンケー ト回答ではやや難易度が高かったことが伺えるため今後は後期に取り入れる。
7 おわりに
本実践研究は、効果的な指導法を単純に長期間導入してもその分の効果が期待できるもの ではなく、逆に弊害をもたらす危険性があるということを示唆した。それは、いかなる指導 法においても、マニュアル通りの活用には限界があり、状況に応じた指導者の創意工夫が不 可欠であるということの裏付けであるとも言えよう。同時に、統合型リーディング指導法の 長期導入に際しては、中・長期的計画の作成と学習者レディネスに応じた段階的指導の必要 性が明確になった。それに伴い、年間計画の作成、リーディングストラテジーの育成、学習 スタイルのスムーズな移行(bottom-up process orientedからtop-down process orientedリーダー へ)、事前計画と読書記録の工夫による授業外読書の促進等、対応策の具体化が図られた。
次期実践研究として、①統合型リーディング指導法の再構築、②通年科目への再適用、③ 有効性の再検証、を考えている。検証方法については、プレ・ミッド・ポストテストの結果 だけでなく、読書量と英語力の相関も視野に入れながらより信頼性の高い方法を検討したい。
このような地道な取り組みがリーディング指導の向上に繋がることを願い実践の継続に務め たい。
参考文献
Anderson, N. (2003). Reading. In D. Nuan (Ed.), Practical English Language Teaching (pp. 67-86).
New York: McGraw-Hill.
Ascough, T. (2007). “Extensive reading: helping students become autonomous readers.” Kokusaikeiei/
Bunkakenkyu, 12(1), 109-117.
Bamford, J., & Day, R. (1998). Extensive Reading in the Second Language Classroom. NY:
Cambridge University Press.
Corder, S. T. (1981). Error Analysis in Interlanguage, Oxford: Oxford University Press.
Coady, J. (1993). Research on ESL/EFL vocabulary acquisition: Putting it in context. In T. Huckin, M.
Haynes, & J. Coady. (Eds.). Second Language Reading and Vocabulary Learning (pp. 3-23). New Jersey: Ablex Publishing Corporation.
Day, R. (1993). New Ways in Teaching Reading. Virginia: TESOL Inc.
Farrell, T. S. (2009). Teaching Reading to English Language Learners. London UK: Corwin Press.
Grabe, W., & Stoller. F. L. (2002). Teaching Researching Reading. New York: Longman
Hunt, A., & Begler, D. (2002). Current research and practice in teaching vocabulary. In J. Richards &
W. Renandya (Eds.), Methodology and Language Teaching. An Anthology of Current Practice (pp.
258-266). New York: Cambridge University Press.
Jacobs, G. M., Lituanas, P. M., & Rendandya, W. A. (1999). “A study of extensive reading with remedial reading students.” In Y. M. Cheah & S. M. Ng (Eds.). Language Instructional Issues in Asian Classrooms (89-104). Newark, DE : International Reading Association
Krashen, S, and Mason, B. (1997). “Extensive reading in English as a foreign language.” System, 25(1), 91-102.
Krashen, S. (1989). “We acquire vocabulary and spelling by reading: additional evidence for the Input Hypothesis. The Modern Language Journal, 73(4), 440-463.
Nuttall, C. (1982). Teaching Reading Skills in a Foreign Language. Oxford, UK: Heinemann Publishers Ltd.
Paris, S. G., Wasik, B. A., & Turner, J. C. (1991). The development of strategic readers. In R. Barr, M. L.
Kamil, P. B. Mosenthal, & P. D. Pearson (Eds.), Handbook of Reading Research (Vol. II) (pp. 609- 640). New York: Longman
Pilgreen, J. (2000). The SSR Handbook. Portsmouth, NH: Boynton/Cook Publishers.
Richards, J. C. (1990). The Language Teaching Matrix. Cambridge, UK: University Press.
Takae, A. (2007). “Japanese high school students’ motivation for extensive L2 reading.” Reading in a Foreign Language. 19, 1-17.
津波聡(2013)「4技能の促進を図る統合型リーディン指導」『沖縄国際大学外国語研究』第 17巻第1号pp.25-34
松浦伸和(2010)「習得・活用を目指す英語授業の考え方とその設計」『日本教材文化研究財 団研究紀要』第40巻第1号pp.27-41
酒井邦秀(2002)『快読100万語ペーパーバックへの未知』 ちくま学芸文庫
山崎朝子(2009)「多読の効果 – 大学における多読授業実践 - 」『武蔵工業大学環境情報学部 紀要』10, 84-91