地震による道路区間閉塞を考慮した避難経路に関する基礎的研究 地震による道路区間閉塞を考慮した避難経路に関する基礎的研究 地震による道路区間閉塞を考慮した避難経路に関する基礎的研究 地震による道路区間閉塞を考慮した避難経路に関する基礎的研究*
−須崎市を事例として−
−須崎市を事例として− −須崎市を事例として−
−須崎市を事例として−
A fundamental study about the emergency route considered the blockade of road section by the earthquake * -A Case Study in Susaki-
*竹内光生**・近藤光男
***By Teruo TAKEUCHI **・Akio KONDO ***
1.はじめに
1946年の昭和の南海道地震時には,振動災害とそ の後に襲ってきた津波のために多くの人命を失っている。
今世紀前半には,南海道地震が発生すると予測されてお り,効果的な対策が求められている。
筆者等は地震津波を想定した避難施設場所の選定に関
する研究
1),2)を進めている。これらの研究においては,
須崎市を事例として,「高台に逃げろ」とする過去の地 震津波の教訓を,GISを活用して,津波到達の時空間 的な経緯を踏まえて,避難施設場所配置計画問題に適用 する考え方を示した。また,単純なモデルを用いて,道 路リンクの閉塞率を与件とした到達率最大の経路を探索 する方法や混合整数計画法(
MIP)を用いた到達率最大化を指標とする避難施設場所配置解析方法
3)を示した。
しかし,下記に示すように,地震津波を想定した避難 計画においては,想定される地震津波に備えて,①の高 台の選定問題の後,②の浸水域及び境界域から高台に向 かう避難経路の選択(指定)に関する問題,すなわち効 果的な避難路の整備問題が存在すると思われる。追加避 難施設場所配置計画問題は,その後の③の問題と考える。
① 高台の選定問題
② 高台に向かう避難経路の選択に関する問題
③ 高台に向かう途中の避難施設場所配置計画問題 本研究は,避難経路を探索する解析手法を用いて,閉 塞する危険性のある「その他道路」で構成される道路網 に,閉塞する危険性のない「避難路」を道路網の何処に 配置すれば,一次緊急避難時の移動距離や到達率が効果 的に改善されるのかを検討したものである。
道路区間閉塞を考慮した道路網構成の評価に関する過 去の研究として,堀井
4)は,自然災害時の迂回度を用い
*キーワーズ:
地震,高台,避難経路,閉塞率,総移動距離
**正員,工修,高知工業高等専門学校
(高知県南国市物部乙200番1,
TEL088-864-5587,FAX088-864-5581)
***正員,工博,徳島大学大学院工学研究科
(徳島県徳島市南常三島町2−1,
TEL088-656-7339,FAX088-656-7341)
て道路網の代替性の評価をおこなっている。李等
5)は,
到達不能率と整備コストによる弾力性係数を用いて街路 網構成の評価をおこなっている。
本研究では,避難路整備計画問題における道路網構成 の評価のために,道路網の各ノードから高台までの到達 率と到達時の総移動距離を用いた。総移動距離は,施設 配置計画の指標として用いられる。
道路網の避難経路を探索する解析方法は,乱数による 方法と到達率最大の経路を探索する方法の2つを用いた。
乱数により道路網リンクの閉塞を判定し,閉塞していな い道路網経路の最短距離経路を選択する方法は,代替路 の効果を考慮することができるが,経路の地震事後評価 の方法であると考える。このときの「避難経路」は,
「到達率最大の経路」および「代替路」である。一方,
到達率最大の経路を探索する方法は,「代替路」の効果 を考慮できないが,経路の地震事前評価の方法であると 考える。このときの「避難経路」は,「到達率最大の経 路」である。
以下,本文では,2.閉塞率と到達率,3.格子モデ ルによる避難経路の分析,4.須崎市を事例とする避難 経路の分析,5.最大到達率の経路,6.まとめ とし ている。3章と4章では,乱数を用いて代替路の効果を 考慮している。5章では,到達率最大の経路を探索した。
2.閉塞率と到達率
道路網の2つのノード間リンクの閉塞率を,「避難 路」と「その他道路」の2ランクの与件としている。道 路区間は,「避難路」と「その他道路」の混合である。
道路網のノード間リンクの閉塞率が与えられれば,閉塞 率piの道路リンクn個の直列あるいは並列の道路区間の 到達率は以下のようにして求められる。
(1)直列
2つのノード間リンクの閉塞率をpiとすると,複数の リンクを直列に接続した経路の到達率(通過率)
Psは,式
(2.1)のように積の式になる。Ps
=Π(1−
pi) ・・・(2.1)また,この道路区間の閉塞率Pbは,次のようになる。
Pb=1−Ps=1−Π(1−pi) ・・・(2.2)
(2)並列
また,並列しているn個の閉塞率piの経路のいずれも 閉塞している閉塞率
Pbは,各経路の閉塞率piの積であるとして,次のようになる。
Pb=Πpi ・・・(2. 3)
従って,この道路区間のいずれかの経路を通過出来る
到達率
Psは,次のようになる。Ps=1−Pb=1−Πpi ・・・(2.4)
以下,3章と4章では,乱数による方法により代替路 の効果を考慮している。上記の式(2.1)~ 式
(2.4)は,計算 結果の検算に用いた。5章では,積の式
(2.1)を常用対数の絶対値として和の式に変換する。積の式で示される経 路を探索する方法は見あたらない。事前評価として,最 短距離経路に代わる到達率最大の経路を探索している。
3.格子モデルによる避難経路の分析
図3.1は,縦60m×2,横100m×2の格子状 道路網ネットワークの各ノードから,左上隅の高台に向 かって避難する格子モデルである。ノード数9,リンク 数12である。ノードにはノード番号n1〜n9,リン クにはリンク番号L1〜L12を付けている。各ノード から高台までの平時の最短経路距離は異なっている。
n1 n2 n3
n4 n5 n6
n7 n8 n9
L1 L2
L3 L4
L5 L6
L7 L8 L9
L10 L11 L12
高台
図3.1 格子モデル
(1)最短距離経路探索
避難経路は,閉塞していない道路網リンクのうち最短 距離経路とした。閉塞した場合は往復通行不可とし,閉 塞していない場合は往復通行可とした。最短距離経路探 索にダイクストラ法を用いた。
(2)シミュレーション分析
「その他道路」のリンクの閉塞率は0.1から0.8 まで0.1刻みとした。リンクの閉塞率0.8はかなり 大きい閉塞率と思われる。また,反復回数は各1万回と した。一様乱数の1万回の度数分布はほぼ一様な分布と なっている。また,各リンクの閉塞割合(閉塞回数/1 万回)は,与件の閉塞率とほぼ同じ値となっている。
(a)到達確率
図3.2として,横軸を閉塞率,縦軸を高台への到達
確率(%)として示す。この到達確率は,高台に到達で きるノード数を,高台を除くノード総数で割った値であ る。閉塞率ごとに,反復回数1万回の平均値として示し ている。到達確率は,閉塞率0の100%から閉塞率0.
8の約8%まで急減することになる。
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 到
達 確 率 (%)
図3.2 到達確率
(b)最大移動経路
図3.3に,閉塞率0.4として,1万回計算時のノ ードごとの最大移動距離から推定した最大移動経路を示 す。閉塞していない道路網の最短距離経路となる。
図3.3 最大移動経路
(c)迂回度
図3.4として,閉塞率0.4のときの各ノードから 高台へ到達時の迂回度(被災時/平時)を示す。縦軸を 迂回度(被災時/平時)とし,横軸を各ノードから高台 までの平時の最短経路距離としている。高台に近いノー ドほど迂回度が大きくなる傾向が示されている。
1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9
0 100 200 300 400
平時距離 被
災 時
/ 平 時
閉塞率0.4
図3.4 迂回度(閉塞率0.4被災時/平時)
(d)総移動距離
図3.5に,横軸を閉塞率,縦軸は総移動距離の被災 時と平時の比として,各ノードから高台へ到達時の総移 動距離を示す。避難不可能な場合は移動距離の総和から 除いている。総移動距離は,閉塞率の増加とともに増大 し,閉塞率0.4を越える付近から減少する放物線の形 状となっている。閉塞率0から0.4付近までの総移動 距離の増加は,迂回しながら避難する傾向を示している。
また,閉塞率0.4付近以後の総移動距離の減少は,閉 塞率の増加によって,大きく迂回して避難することが困 難となる状況を示している。この総移動距離の増減は,
代替路の効果の増減を示している。
1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 1.3
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 被
災 時
/ 平 時
図3.5 総移動距離(被災時/平時)
図3.6に,閉塞率0.8の場合の迂回度を示す。閉 塞率0.4の場合の迂回度と比較して,高台近辺のノー ドの迂回度も大きく減少している。
1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9
0 100 200 300 400
平時距離 被
災 時
/ 平 時
閉塞率0.8
図3.6 迂回度(閉塞率0.8被災時/平時)
(3)避難路の設定
n1 n2 n3
n4 n5 n6
n7 n8 n9
L1 L2
L3 L4
L5 L6
L7 L8 L9
L10 L11 L12
高台
n1 n2 n3
n4 n5 n6
n7 n8 n9
L1 L2
L3 L4
L5 L6
L7 L8 L9
L10 L11 L12
高台
n1 n2 n3
n4 n5 n6
n7 n8 n9
L1 L2
L3 L4
L5 L6
L7 L8 L9
L10 L11 L12
高台
避難路 避難路 避難路
Case1(避難路左) Case2(避難路中央) Case3(避難路右)
図3.7 避難路の設定
図3.7に示すように,
Case1〜3の避難路の配置位置が異なる3通りを設定し,到達確率や総移動距離への改 善効果を比較検討する。その比較を明確にするために,
避難路の閉塞率は0,長さはいずれも同じとする。異な る点は,Case1は高台に直接接続している。Case2と
Case3は高台に直接接続していない。Case2はノードの中央位 置であり,
Case3は高台から最も離れた位置である。(a)到達確率
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 到
達 確 率
一定 case1 case2 case3
図3.8 到達率
図3.8に,横軸を閉塞率,縦軸を高台への到達確率
(%)として,避難路を設けていない「一定」と閉塞率 0の避難路を設けた「
Case1〜3」の3通りの合計4通りの到達確率を示す。「
Case1〜3」のいずれも高台への到達確率は改善される。Case1>Case2>Case3の順に到達確 率は高くなっており,避難路を高台近くに設定するほど,
閉塞率0の避難路を利用できる件数が多くなる。
(b)総移動距離
1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 1.3
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 被
災 時
/ 平 時
一定 case1 case2 case3
図3.9 総移動距離
図3.9に,横軸を閉塞率,縦軸は総移動距離の被災 時と平時の比として,同様に「一定」と「
Case1〜3」の4通りの総移動距離の変化を示す。避難路を設けていな い「一定」と比較して,避難路を設ける「
Case1〜3」は,総移動距離が減少する場合と増加する場合およびその中 間の現象が見られる。しかし,「一定」の放物線のピー ク点の閉塞率約0.4は,「Case1〜
3」の放物線のピーク点の閉塞率約0.5まで移動し,改善されている。放 物線の高さは,Case1は低くなり,逆に
Case3は高くなり,Case2はその中間である。Case1は,高台に向かって避難
可能となる件数が増加し,総移動距離は減少している。
Case2は,高台向きと迂回の両方向において避難可能と
なる件数が増加し,総移動距離の変化は少ない。
Case3は高台と反対側の迂回において避難可能となる件数が増 加し,総移動距離は増加している。
4.須崎市を事例とする避難経路の分析
(1) 高台と道路網
図4.1 高台と道路網
図4.1に須崎市の高台と道路網を示す。高台は,城
山と糺鴨神社の2つとした。各道路ノードから到達可能
な近い高台に移動するものとする。なお,閉塞率は,リ ンク長を考慮していない。データは,数値地図2500
(空間データ基盤)である。解析の対象とする道路網は,
道路幅員3m以上,道路ノード数
249,道路リンク数358である。各リンクは閉塞していない場合往復通行可として,
最大リンク
ID数716である。(2)避難路の設定
図4.2に示すように,閉塞率0の避難路の設定は6 通りとした。まず,(a)は須崎市の主要道路である国道と 県道を避難路とし,次いで,
(b)はその主要道路から高台までの接続路(アクセス)を追加した。以下,(b)に追加 する海岸に延びる直線の経路(海岸線1から海岸線
3)を避難路として,
(c)から(f)の4通りを設定した。(a)国・県道 (b)国・県道・アクセス路
(c)及び海岸線1 (d)及び海岸線2
(e)及び海岸線3 (f)及び海岸線1~3
図4.2 避難路の設定
(3)到達確率
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 到
達 確 率
一定 (a)国・県道 (b)国・県道・アクセス路 (c)及び海岸線1 (d)及び海岸線2 (e)及び海岸線3 (f)及び海岸線1~3
図4.3 到達確率
図4.3に,一定(避難路を設けていない。)の場合 と,閉塞率0の避難路を6通りに設定した場合の合計7 通りの到達確率を示す。以下,7通りの区別は「一定」
および図4.2の
(a)から(f)の記号を用いる。図4.3では,「一定」の場合と比較して,(a)の到達確率は大きく 増加しており,主要道利活用の効果の大きいことを示し ている。しかし,閉塞率の大きい領域では,到達確率は 厳しい値を示している。(b)の場合,閉塞率が大きい領域 も含めて,到達確率は大きく改善されることを示してい る。 (c)から(f)の到達確率は,(e) <(d) ≒(c) <(f)である。
(4) 総移動距離
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
閉塞率 被
災 時
/ 平 時
一定 (a)国・県道 (b)国・県道・アクセス路 (c)及び海岸線1 (d)及び海岸線2 (e)及び海岸線3 (f)及び海岸線1~3
図4.4 総移動距離
図4.4に,総移動距離を示す。図4.4では,「一 定」の場合の総移動距離が,閉塞率0.6を越えると,
平時のときよりも減少している。1万回の計算過程で到 達件数0のノードが増加することによる。「一定」の場 合と比較して,
(a)の場合の総移動距離の放物線は,図3.9のCase2と似た傾向を示し,高台向きと迂回の両方向 において避難可能となる件数が増加していると言えよう。
閉塞率が大きくなると,やや図3.9の
Case3の迂回傾向を示している。(b)の場合,図3.9のCase1の傾向を 示し,高台に向かって避難可能となる件数が増加してい ると言えよう。
(c)から(f)の場合,迂回しても避難困難となる総移動距離の放物線のピーク点に対応する閉塞率の 高さは, (e) <(c)< (d)< (f)である。特に,(f)は,(e) ,(c),
(d)と比較して,図3.9のCase1の傾向を示している。(5)代替路の効果
表4.1 移動距離と到達率(閉塞率0.1)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離平均到達率 最小到達率
一定(避難路なし)
144727 2863 581 0.95 0.62(a)国・県道 141130 2716 567 0.97 0.68
(b)国・県道・アクセス路 131651 1989 529 0.97 0.68
(c)及び海岸線1 131255 1893 527 0.97 0.68
(d)及び海岸線2 131246 1989 527 0.97 0.68
(e)及び海岸線3 130523 1989 524 0.97 0.68
(f)及び海岸線1~3 129761 1893 521 0.97 0.68
表4.1に,閉塞率0.1として計算した移動距離と 到達率を,「一定」および(a)〜(f)に対応して示している。
「避難経路」は,「到達率最大の経路」および「代替
路」であり,次章の須崎市を事例とする「到達率最大の
経路」の解析結果との比較のために,「代替路」の効果 として示す。平均到達率0.95以上である。なお,表 4.1に示す解析結果は,次章の須崎市の事例と同様に,
2ランクの閉塞率に影響を与えない範囲で,最大1/1 000のオーダーでリンク長を閉塞率に加算している。
また,アクセス路1カ所のリンク長260.584mを 50mに短縮している。
5.到達率最大の経路
上記の3,4章では,乱数を用いて代替路の効果を考 慮した。本章では,各ノ―ドから高台までの到達率最大 の経路を探索する。到達率最大の経路は,前節までのシ ミュレーション計算において,発生頻度の最も高い,各 ノードから高台までの経路である。従って,到達率最大 の経路は,到達率が低い場合も含めて,各ノードから高 台に向かう複数の経路の中で,最も重要な経路である。
(1)探索法
閉塞率piの道路リンクn個の道路区間を通過する到達 率Psは,すでに述べたように,各リンクの到達率(1−
pi)の積として次のようになる。
Ps=Π(1−pi) ・・・(2.1)
この式(2.1) は,常用対数を用いて,次のように和の式
(5.1)のようになる。logPs=Σlog(1−pi) ・・・(5.1)
到達率Psの範囲は,0<Ps≦1であるとして,例えば,
到達率Psが1,0.9,0.6,0.2の場合の,到達 率の常用対数値は次のようになる。
Ps=1のとき,log1=0
Ps=0.9のとき,log0.9=−0.04576 Ps=0.6のとき,log0.6=−0.22185 Ps=0.2のとき,log0.2=−0.69897
到達率Psの高い経路ほど,到達率
Psの常用対数の絶対値は小さいことがわかる。
従って,次の式(5.2)のように,道路リンクの到達率(1
−pi)を,常用対数の絶対値と置き換えることによって,
到達率Psの積の式
(2.1)は,次の和の式(5.3)ようになり,
最短距離経路を求めるためのダイクストラ法の使用が可 能である。
Li=|log(1−pi)| ・・・(5.2) Ls=ΣLi ・・・(5.3)
なお,積の式(2.1)の到達率Psと和の式
(5.3)のLsの関係は,次の式
(5.4)のようになる。Ps=10^(−Ls)
・・・(5.4)
(2)格子モデルにおける避難経路
図3.1と図3.7の格子モデルを対象として,到達
率最大の経路を避難経路として,その解析結果を示す。
(a)計算諸量
表5.1に,図3.1の解析モデルの避難路を設けな い「一定」と図3.7の避難路を設定する「Case1〜
3」に対応して,各ノードから高台までの避難経路上の計算 諸量として,式
(5.3)のLs(=Σ|log(1−pi)|)および式(5.4)のPs(=10^(−Ls)
)を示している。なお,「避難
路」の閉塞率
piを0,「その他道路」の閉塞率piを事例として0.4とした。表5.1より,次のことがわかる。
① 「一定」および「Case1〜3」の経路距離は,最短経 路距離に等しい。これは,解析モデルのノード数と リンク数が少ないことによる。
② 「一定」および「Case1〜
3」の到達率Psの計は,異なっている。その大小関係はCase1>Case2>Case3>
「一定」である。この大小関係は「代替路」を考慮 した場合と同じである。
③ 「避難路」の閉塞率
piを0,「その他の道路」の閉塞率
piを0.1から0.8まで0.1刻みで変化させた場合も,上記の①,②,③の関係は同じ結果と なる。
表5.1 避難経路の計算諸量 一定(避難路なし)
ノード番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 Σ|log(1-pi)| 0 0.2218 0.4437 0.2218 0.4437 0.6655 0.4437 0.6655 0.8874 - 到達率Ps 1 0.6000 0.3600 0.6000 0.3600 0.2160 0.3600 0.2160 0.1296 3.8416 経路距離 0 100 200 60 160 260 120 220 320 1440
Case1(避難路左)
ノード番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 Σ|log(1-pi)| 0 0.2218 0.4437 0.0000 0.2219 0.4437 0.0000 0.2218 0.4437 - 到達率Ps 1 0.6000 0.3600 1.0000 0.6000 0.3600 1.0000 0.6000 0.3600 5.8800 経路距離 0 100 200 60 160 260 120 220 320 1440
Case2(避難路中央)
ノード番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 Σ|log(1-pi)| 0 0.2218 0.4437 0.2218 0.2218 0.4437 0.4437 0.2218 0.4437 - 到達率Ps 1 0.6000 0.3600 0.6000 0.6000 0.3600 0.3600 0.6000 0.3600 4.8400
経路距離 0 100 200 60 160 260 120 220 320 1440
Case3(避難路右)
ノード番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 Σ|log(1-pi)| 0 0.2218 0.4437 0.2218 0.4437 0.4437 0.4437 0.6655 0.4437 - 到達率Ps 1 0.6000 0.3600 0.6000 0.3600 0.3600 0.3600 0.2160 0.3600 4.2160
経路距離 0 100 200 60 160 260 120 220 320 1440
(「避難路」の
pi=0,「その他道路」のpi=0.4)(b)避難経路とリンク通行量
図5.1として,各ノードから高台に向う避難経路を リンク通行量として示す。各ノード人口は1としている。
通行量の区分は,0以下,1以下,2以下,3以下,4 以上の5段階とし,線の幅の大きいほど通行量が大きい ことを示している。図5.1より,次のことがわかる。
① 格子モデルの各ノードから左上隅の高台に向かう到 達率最大の経路が選択されている。「一定」の場合 は,複数の避難経路の1つが選択されている。
② いずれの場合も,高台に向かってTree(木)状に集
合していくようすが示されている。
③ 「Case1〜
3」の場合は,「その他道路」のリンクが少なくなるように,避難経路が選択されていること がわかる。
一定(避難路なし)
Case1(避難路左)Case2(避難路中央) Case3(避難路右)
図5.1 避難経路とリンク通行量
(3)須崎市を事例とする避難経路
本節では,図4.1に示す高台と道路網を対象として,
到達率最大の経路の探索結果より,図4.2の
(a)〜(f)の6通りの避難路の設定効果を比較検討する。2つのノー ド間リンクの閉塞率は,「避難路」と「その他道路」の 2ランクとして,それぞれ0と0.1とした。「その他 道路」の閉塞率を0.1以外の値を用いた場合も避難経 路の解析結果は,到達率の値を除いて同じである。また,
同じ到達率の代替経路がある場合,距離の短い経路を選 択するものとして,2ランクの閉塞率に影響を与えない 範囲で,最大1/1000のオーダーでリンク長を閉塞 率に加算した。なお,避難路設定の違いによる解析結果 の検討は,道路網の各ノードから城山と糺鴨神社の2カ 所の高台に向かう最短距離経路とその2カ所の高台の分 担域を参考とした。
(a)最短距離経路
まず,図5.2として,最短距離経路により,各ノー ドから2カ所の高台に向かうリンク通行量(ノード数)
を示す。通行量の区分は,0以下,1〜5,6〜25,
26〜50,51以上の5段階とし,線の幅の大きいほ ど通行量が多いことを示す。なお,図5.2の「津波の 進入」方向は,昭和の南海道地震記録
6)である。また,
図5.2において,数値地図2500(空間データ基 盤)データの1カ所のリンク長260.584mを50 mに短縮し,「50mに短縮」と矢印で示している。短 縮した理由は次の通りである。
① 城山(高台)に向かうこのリンクの始点ノードか ら50m以内に法生寺があり,昭和の南海道地震 時に多くの人が避難している。
② このリンクの始点と終点ノードの標高は,約8m と約27mであり,比較的勾配が緩く,整備され,
城山に向かうアクセス路としての重要度が高い。
③ このリンク長を短縮しない場合,このリンクに接 続する経路上のノードは糺鴨神社の分担域となる。
短縮することによって,図5.2のような城山と 糺鴨神社の分担域が示される。
図5.2 最短距離経路の解析結果
(昭和の南海道地震記録:津波の進入方向)
図5.2の右側の高台は城山,左側の高台は糺鴨神社 である。図5.2は,以下のことを示している。
① 2つの高台に向かって,Tree状に集合する避難経路 の状況が示されている。道路上に歩行の障害となる ものが無く,短時間に最も早く避難しようとする場 合の方向が示されている。
② 城山の分担域のノードが示されている。城山の分担 域は,ほぼ昭和の南海道地震時の浸水領域である。
③ 糺鴨神社の分担域のノードが示されている。糺鴨神 社の分担域は,昭和の南海道地震時の浸水領域では ない。従って,糺鴨神社の分担域から城山の分担域 への移動は,より危険側への避難行動と想定する。
なお,糺鴨神社の分担域のノードの標高は,ほぼ6 m以下であり,安政の南海道地震規模の津波では避 難すべき対象地域であると思われる。
④ 以下,図5.2の分担域を参考に,道路網の各ノー ドを城山の分担域のノードと糺鴨神社の分担域のノ ードとして区別する。
最短距離経路時の移動距離を,表5.1として示す。
表5.1の計に示す移動距離の最大と平均は,それぞれ 1566mと495mである。
表5.1 最短距離経路の解析結果
総移動距離最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率 分担ノード数
城山
51427 1566 519 - - 99神社
71716 1129 478 - - 150計
123143 1566 495 - - 249(b)避難経路(閉塞率一定)
図5.3と表5.2に,閉塞率一定として避難路を設 定しない場合の避難経路の解析結果を示す。図5.3は,
以下のことを示している。
① 2つの高台に向かって
Tree状に集合する避難経路の状況は,最短距離経路時の避難経路と類似している。
② 「その他道路」のノード数によって経路の到達率の 値が決まるために,ノード数の少ない経路を避難経 路として探索している。
③ 最短距離経路時の分担域はほぼ満足されている。し かし,糺鴨神社の分担域にある一部のノードから,
城山に向かう避難経路が伸びている。
表5.2は以下のことを示している。
① 最短距離経路時の表5.1と比較して,総移動距離 や最大移動距離や平均移動距離の計は増加している。
② 避難経路の平均到達率の計は0.39,最小到達率 の計は0.13である。2つのノード間リンクの閉 塞率を0.1とした場合でも厳しい値を示している。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は大きく減少している。最大と 平均の移動距離も減少している。この場合,「到達 率最大の経路」は,比較的に迂回程度の小さい経路 であると思われる。
図5.3 避難経路の解析結果(閉塞率一定)
表5.2 移動距離と到達率の解析結果(閉塞率一定)
総移動距離
最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率 分担ノード数城山
66371 1694 609 0.41 0.16 109神社
68857 1140 492 0.38 0.13 140計
135228 1694 543 0.39 0.13 249(c)避難経路(避難路:国道・県道)
図5.4と表5.3として,国道・県道を避難路と設 定した場合の避難経路の解析結果を示す。図5.4は,
以下のことを示している。
① 2つの高台に向かって,Tree状に集合する避難経路 の状況が示されている。
② ノードから国道・県道上を迂回し,高台に向かう避 難経路の状況が示されている。
③ 経路の到達率の値は,「その他道路」のノード数に よって決まるために,「その他道路」のノード数の 少ない経路を避難経路として探索している。
④ 国道・県道から2つの高台に向かう経路は,「その 他道路」のノード数の最も少ない城山に向かうアク セス路の1つが選択されている。
⑤ 最短距離経路時の分担域は満足されていない。
表5.3は以下のことを示している。
① 最短距離経路時の表5.1と比較して,総移動距離
や最大移動距離や平均移動距離の計は,大きく増加 している。
② 避難経路の平均到達率の計は0.58,最小到達率 の計は0.31である。避難路を設定しない閉塞率 一定時の表5.2と比較して,避難路を設定するこ とによる効果が示されている。
③ しかし,分担ノード数は,城山に大きく偏っている。
④ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
図5.4 避難経路の解析結果(避難路:国道・県道)
表5.3 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離平均到達率 最小到達率分担ノード数
城山
280805 2216 1243 0.56 0.31 226神社
4917 610 214 0.75 0.59 23計
285722 2216 1147 0.58 0.31 249(d)避難経路(避難路:国道・県道・アクセス路)
図5.5と表5.4として,国道・県道・アクセス路 を避難路と設定した場合の避難経路の解析結果を示す。
図5.5は,以下のことを示している。
① 2つの高台に向かって,Tree状に集合する避難経路 の状況が示されている。
② ノードから国道・県道上を迂回し,高台に向かう避 難経路の状況が示されている。
③ 経路の到達率の値は,「その他道路」のノード数に よって決まるために,「その他道路」のノード数の 少ない経路を避難経路として探索している。
④ 国道・県道・アクセス路の閉塞率のランクが0であ るために,国道・県道・アクセス路上の経路は,最 短距離経路を探索している。
⑤ 最短距離経路時の分担域はほぼ満足されている。し かし,糺鴨神社の分担域にある一部のノードから,
城山に向かう避難経路が伸びている。
表5.4は以下のことを示している。
① 最短距離経路時の表5.1と比較して,総移動距離
や最大移動距離や平均移動距離の計は,増加してい
る。しかし,閉塞率一定時の表5.2と比較して,
最大移動距離の計は,改善されている。
② 避難経路の平均到達率の計は0.78,最小到達率 の計は0.42である。国道・県道を避難路と設定 する表5.3と比較して,アクセス路を避難路とし て追加設定することによる効果が示されている。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
図5.5 避難経路の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路)
表5.4 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率分担ノード数
城山
64983 1610 585 0.81 0.42 111神社
87024 1255 631 0.75 0.42 138計
152007 1610 610 0.78 0.42 249以下,図4.2の(d)〜(f)に示した南側の海岸から南 北に伸びる海岸線の3通りを避難路として設定し,その 効果を比較検討する。
(e)避難経路(避難路:海岸線1を追加)
図5.6 避難経路の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線1)
表5.5 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線1)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率 分担ノード数
城山
67211 1726 606 0.86 0.47 111神社
87024 1255 631 0.75 0.42 138計
154235 1726 619 0.80 0.42 249図5.6と表5.5として,国道・県道・アクセス路 に海岸線1を避難路として追加設定した場合の避難経路
の解析結果を示す。海岸線1を追加設定した図5.6は,
追加設定する前の図5.5と比較して,以下のことを示 している。
① 南側の海岸に近いノードから,海岸線1の避難路に 向かって,Tree状に集合する避難経路の状況が示さ れる。
② 糺鴨神社の分担域にある一部のノードから,城山に 向かう避難経路が長く伸びている。
海岸線1を追加設定する前の表5.4と比較して,表 5.5は以下のことを示している。
① 城山に向かう移動距離は増加している。糺鴨神社に 向かう移動距離は同じである。
② 避難経路の平均到達率の計は0.80,最小到達率 の計は0.42である。平均到達率の計は増加して おり,海岸線1を避難路として追加設定することに よる効果が示されている。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
(f)避難経路(避難路:海岸線2を追加)
図5.7 避難経路の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線2)
表5.6 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線2)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率 分担ノード数
城山
75467 1610 629 0.85 0.52 120神社
80932 1255 627 0.77 0.42 129計
156399 1610 628 0.81 0.42 249図5.7と表5.6として,国道・県道・アクセス路 に海岸線2を避難路として追加設定した場合の避難経路 の解析結果を示す。海岸線1を追加設定した図5.6と 比較して,海岸線2を追加設定した図5.7は,以下の ことを示している。
① 南側の海岸に近いノードから,海岸線2の避難路に 向かって,Tree状に集合する避難経路の状況が示さ れている。
② 糺鴨神社の分担域にある一部のノードから,城山に 向かう避難経路がやや長く伸びている。
海岸線1を追加設定した表5.5と比較して,海岸線
2を追加設定した表5.6は以下のことを示している。
① 総移動距離の計は増加しているが,最大移動距離の 計は減少している。
② 避難経路の平均到達率の計は0.81,最小到達率 の計は0.42である。平均到達率の計は増加して おり,海岸線2を追加設定することによる効果が示 されている。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
(g)避難経路(避難路:海岸線3を追加)
図5.8 避難経路の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線3)
表5.7 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線3)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離平均到達率 最小到達率 分担ノード数
城山
52727 1610 549 0.85 0.52 96神社
94589 1231 618 0.77 0.42 153計
147316 1610 592 0.80 0.42 249図5.8と表5.7として,国道・県道・アクセス路 に海岸線3を避難路として追加設定した場合の避難経路 の解析結果を示す。
① 南側の海岸に近いノードから,海岸線3の避難路に 向かって,Tree状に集合する避難経路の状況が示さ れる。
② 城山の分担域にある一部のノードから,糺鴨神社に 向かう避難経路がやや長く伸びている。
海岸線1あるいは海岸線2を追加設定した表5.5や 表5.6と比較して,表5.7は以下のことを示してい る。
① 総移動距離の計は,海岸線3を追加設定した場合が 最小である。
② 避難経路の平均到達率の計は0.80,最小到達率 の計は0.42である。平均到達率の計は,海岸線 2を追加設定した場合が最大である。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して
おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
(h)避難経路(避難路:海岸線1〜3を追加)
図5.9 避難経路の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線1〜3)
表5.8 移動距離と到達率の解析結果
(避難路:国道・県道・アクセス路及び海岸線1〜3)
総移動距離最大移動距離 平均移動距離 平均到達率 最小到達率 分担ノード数
城山
54870 1610 543 0.87 0.52 101神社
90882 1231 614 0.77 0.42 148計
145752 1250 585 0.81 0.42 249最後に,図5.9と表5.8として,国道・県道・ア クセス路に海岸線1〜3を避難路として追加設定した場 合の避難経路の解析結果を示す。
① 南側の海岸に近いノードから,海岸線1〜3の避難 路に向かって,Tree状に集合する避難経路の状況が 示されている。
② 海岸から高台に延びる避難路の本数が多いほど,避 難経路は単純化される状況を示している。
③ 最短距離経路時の分担域はほぼ満足されている。
表5.7は以下のことを示している。
① 海岸から高台に延びる避難路の本数が多いほど,総 移動距離の計は縮小される。
② 避難経路の平均到達率の計は0.81,最小到達率 の計は0.42である。海岸から高台に延びる避難 路の本数が多いほど,平均到達率の計は大きくなる。
③ 「代替路」の効果を含む表4.1と比較して,計の 平均と最小の到達率は減少している。最大移動距離 も減少している。しかし,平均移動距離は増加して おり,この「到達率最大の経路」は,比較的に迂回 傾向の避難路を利用する経路であると思われる。
6.まとめ
本研究では,道路網の各ノードから高台へ避難移動す る状況を想定し,地震による道路区間閉塞を考慮した避 難路の設定および避難経路の分析をおこなった。
本研究により得られた結果はつぎのようである。
① シミュレーションにより,閉塞していないリンクの
うち最短距離経路を探索し,被災時の迂回度(被災
時/平時)が,高台に近い道路網ノードほど大きく なる傾向を示した。高台から大きく遠ざかる迂回は,
不安が大きいと考える。
② 施設配置計画の指標として用いられる総移動距離を 求め,総移動距離は,道路リンクの閉塞率に対応し て放物線になることを示した。
③ 総移動距離の放物線のピークを境に,低い閉塞率の 領域は,迂回することによりなんとか高台への避難 を可能とする状況を示し,高い閉塞率の領域は,迂 回することも困難となる状況であると言えよう。本 研究でのモデルと須崎市の事例では,全ての道路リ ンクの閉塞率を一様とした場合,総移動距離の放物 線のピークは,閉塞率0.4付近となる。
④ 安全な(本研究では閉塞率0)避難路を,高台に直 接接続する位置に設定した場合,総移動距離の放物 線は比較的に平時に近づき(低くなり),高台と切 り離して設定した場合,総移動距離の放物線は比較 的に平時から離れる(高くなる)。
⑤ 「避難経路」を「到達率最大の経路」と「代替路」
としたとき,「代替路」の効果は閉塞率が小さい場 合に大きい。閉塞率が大きい場合は「代替路」の効 果は小さい。
⑥ 「到達率最大の経路」は,各ノードから高台までの 避難経路として,最も重要な経路である。避難路設 定の効果を比較検討した。また,GISを用いて,
須崎市を事例とした避難経路を視覚的に示した。
⑦ 「避難路」を整備することにより,高台に向かう避 難経路網が,単純化される状況を示した。
なお,本報告書の作成に当たっては,建設省国土地理 院長の承諾を得て,同院の測量成果を使用したものであ る。
参考文献
1)竹内光生,近藤光男:地震津波発生時の避難場所の 選定に関する基礎的研究−須崎市を事例として−,第2 4回土木計画学研究発表会講演集,2001,講演番号412 2)竹内光生,近藤光男:地震津波発生時の避難場所の 選定に関する研究−須崎市を事例として−,土木計画学 研究・論文集,
No.19,no.2,pp.297-304,20023)Teruo Takeuchi,
Akio Kondo:Allocation analysis for `earthquake tsunami refuge facilitie` by maximizing success ful passage,The 8th International Conference on Computers in Urban Planning and Urban Management,2003(投稿中)
4)堀井雅史:迂回度を用いた自然災害時における道路 網の代替機能に関する評価方法,第31回日本都市計画 学会学術研究論文集,pp.769-774,
19965)李燕,塚口博司:街路網の防災性指標および街路網 構成に関する研究,土木計画学研究・論文集,
No.14,p p.361-370,19976)村上仁士,他:海からの警告,須崎市,1995
地震による道路区間閉塞を考慮した避難経路に関する基礎的研究*−須崎市を事例として−
竹内光生**・近藤光男
***今世紀前半には,南海道地震が発生すると予測されており,効果的な対策が求められている。本研究は,避難経路を 探索する解析手法を用いて,閉塞する危険性のある「その他道路」で構成される道路網に,閉塞する危険性のない「避 難路」を道路網の何処に配置すれば,道路網の各ノードから高台までの移動距離や到達率が効果的に改善されるのかを 検討したものである。得られた結果は次のようになる。①高台に近いほど、迂回度は大きい。②総移動距離は、閉塞率 に対応して放物線となる。③避難路は高台に直接接続することが望ましい。④代替路は、閉塞率が小さい場合に有効で ある。⑤避難路を整備するほど避難経路網は単純化される。⑥GISデータの防災計画への適用可能性を示した。
A fundamental study about the emergency route considered the blockade of road section by the earthquake *-A Case Study in Susaki-
*By Teruo TAKEUCHI**・Akio KONDO***
It is predicted that the Nankaido earthquake will occur not later than the first half of this century, and the effective measures are requested. In this study, we examined where to place the "refuge route" which has no risk of blockade on the road network consisted of
"the another route" which has risk of blockade by the calculation of the effect on the improvement of migration distance and passage rate which people can reach the height from each node of road network by using analysis methods to search the emergency route. The obtained results are as follows:① The nearer the height is, the more degree of the detour is, ② Total migration distance becomes a parabola corresponding to the blockade rate of a road link, ③ It is desirable that the refuge route is directly connected to the height, ④ The more the effect of substitute routes is, the smaller the blockade rate of road links is,