食品関連未利用資源の乳酸発酵をベースとした技術による高度利用
おから,焼酎粕特異的乳酸菌のスクリーニング
樋口智子*1
Advanced Use of Food Related Undebeloped Resource by the Lactic Acid Fermentation Technology
Okara Shochu Kasu Screening of Specific Lactic Acid Bacteria for and/or
Tomoko Higuchi
当所で保有する福岡県内食品関連工場周辺
57
カ所から採取した61
サンプルより分離した,酸産生嫌気性細菌 株を用いて,おからや焼酎粕培地による乳酸発酵能を検討した。おからは水抽出液を用い,焼酎粕は遠心上清457
を用いて各
200
倍希釈液に金属塩およびTween80
を添加したものを検定培地とした。検定菌457
株の内,検定培地 で生育が見られたものは93
株で,その内訳は桿菌が27
株,短桿菌が9
株,長桿菌が1
株,二連球菌が27
株,および
Pedio
型球菌が29
株であった。このうち少なくとも70
株が乳酸菌であると考えられた。1 はじめに
おから及び焼酎粕の利用については,多くの研究が なされているものの,現在までインパクトのある利用 方法は見いだされていない。これら食品関連未利用資 源はいずれも腐敗しやすく処理・利用が困難である。
乳酸菌,酵母等による処理は腐敗の問題を解決できる 上,機能性物質を生産でき,高付加価値資源利用が可 能となる。ところが,世界的な乳酸発酵技術は乳資化 性乳酸菌による研究が主であり,おから及び焼酎粕等 の植物性資源の発酵利用には不向きである。我が国は 植物資化性乳酸菌発酵技術の先駆であるが,漬物以外 の利用例は未だほとんど無く,歴史の長い技術であり ながら研究領域としては未踏の分野である。
本研究ではこれら植物性未利用資源の乳酸発酵に利 用できる乳酸菌の取得を目的とし,食品製造現場や自 然界から分離した酸産生嫌気性細菌457株を用いて,
おからや焼酎粕の発酵に適した特異的乳酸菌のスクリ ーニングを行った。
2 実験方法 2−1 使用菌株
当所で保有する福岡県内食品関連工場周辺
57
カ所から採取した
61
サンプルより分離した酸産性嫌気性 細菌457
株を試験に供した。2−2 培地 2−2−1 おから
おからはオーケー食品工業株式会社より入手した。
の生おからに の蒸留水を添加,かくは
500g 1,500ml
ん後ろ過し,ろ液を
1,350ml
を得た。これをおから液 原液とした。2−2−2 焼酎廃液
焼酎廃液は西吉田酒造株式会社より入手した。
焼 酎 廃 液 は 遠 心 上 清 を そ の ま ま 焼 酎 廃 液原液 と し た。
2−2−3 培地調整
MRS bros
菌 株 の 継 代 培 養 お よ び 前 培 養 に は( 社)を使用した。
Lactobacilli Difco
200 200
検定用培地はおから液 倍希釈液,焼酎廃液 倍希釈液,おから液
200
倍希釈液と焼酎廃液200
倍希Tween80 50mg/l MgSO 7H O
釈液混合液にそれぞれ : , 4・ 2:
40mg/l
,MnSO 4H O
4・ 2 :2mg/l
,FeSO 7H O
4・ 2 :2mg/l
,: を添加し, に調整したものを使用
NaCl 2mg/l pH7.0
した。
2−3 培養および評価
MRS 5
検定菌を 培地で1昼夜培養し その培養液を,
%接種した後,
37
℃で24
時間培養後,その生育の有 無を目視で評価した。*1生物食品研究所
表 お か ら お よ び 焼 酎 廃 液 生 育 試 験 結 果
お か ら 液 お か ら 液
菌 株 名 細 胞 形 お か ら 液 + 焼 酎 焼 酎 菌 株 名 細 胞 形 お か ら 液 + 焼 酎 焼 酎
廃 液 廃 液 廃 液 廃 液
+ + + +
8 7 - 1 長 桿 菌 1 0 9 - 1 二 連 球 菌
+ + + + + +
8 8 - 2 二 連 球 菌 1 1 0 - 1 二 連 球 菌
+ + +
8 8 - 7 桿 菌 1 2 2 - 1 二 連 球 菌
+ + +
8 8 - 8 桿 菌 1 2 4 - 1 二 連 球 菌
+ + + +
8 9 - 1 短 桿 菌 1 2 5 - 8 桿 菌
+ + + +
8 9 - 2 短 桿 菌 1 2 6 - 4 桿 菌
+ + + +
8 9 - 3 短 桿 菌 1 2 6 - 9 桿 菌
+ + + +
8 9 - 4 短 桿 菌 1 2 7 - 1 桿 菌
+ + + +
8 9 - 5 二 連 球 菌 1 2 7 - 2 二 連 球 菌
+ + + +
8 9 - 6 二 連 球 菌 1 2 7 - 3 短 桿 菌
+ +
8 9 - 1 0 二 連 球 菌 1 2 7 - 4 二 連 球 菌
+ + + +
8 9 - 1 1 桿 菌 1 2 7 - 5 二 連 球 菌
+ + + + +
9 0 - 3 二 連 球 菌 1 2 7 - 6 短 桿 菌
+ + + + +
9 0 - 8 二 連 球 菌 1 2 7 - 8 短 桿 菌
+ + + +
9 0 - 1 0 P e d i o 型 球 菌 1 2 7 - 9 桿 菌
+ + + +
9 0 - 1 1 P e d i o 型 球 菌 1 2 8 - 3 桿 菌
+ + +
9 5 - 6 P e d i o 型 球 菌 1 2 8 - 4 桿 菌
+ + +
9 5 - 7 P e d i o 型 球 菌 1 2 8 - 6 桿 菌
+ + + + +
9 5 - 8 二 連 球 菌 1 2 8 - 7 桿 菌
+ + +
9 6 - 1 P e d i o 型 球 菌 1 2 8 - 8 桿 菌
+ + +
9 6 - 2 二 連 球 菌 1 2 8 - 9 桿 菌
+ + +
9 6 - 5 二 連 球 菌 1 2 9 - 1 P e d i o 型 球 菌
+ + +
9 6 - 6 二 連 球 菌 1 2 9 - 2 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
9 7 - 1 二 連 球 菌 1 2 9 - 3 桿 菌
+ + + + +
9 7 - 3 P e d i o 型 球 菌 1 2 9 - 4 桿 菌
+ + + +
9 7 - 7 二 連 球 菌 1 2 9 - 5 桿 菌
+ + + + +
9 8 - 1 二 連 球 菌 1 2 9 - 6 桿 菌
+ + + +
9 8 - 2 二 連 球 菌 1 2 9 - 7 桿 菌
+ + + +
1 0 4 - 8 P e d i o 型 球菌 1 2 9 - 1 0 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 9 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 6 桿 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 0 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 7 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 1 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 8 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 2 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 9 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 3 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 1 0 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 4 P e d i o 型 球 菌 1 3 0 - 1 1 P e d i o 型 球 菌
+ + + + +
1 0 4 - 1 5 P e d i o 型 球 菌 1 3 1 - 4 P e d i o 型 球 菌
+ + +
1 0 4 - 1 6 P e d i o 型 球 菌 1 3 1 - 5 桿 菌
+ + +
1 0 4 - 1 7 P e d i o 型 球 菌 1 3 1 - 6 桿 菌
+ + + +
1 0 6 - 7 二 連 球 菌 1 3 2 - 1 桿 菌
+ + + +
1 0 6 - 8 P e d i o 型 球 菌 1 3 5 - 5 二 連 球 菌
+ + + +
1 0 6 - 9 二 連 球 菌 1 3 6 - 4 桿 菌
+ + + +
1 0 6 - 1 0 P e d i o 型 球 菌 1 3 7 - 7 短 桿 菌
+ + + + +
1 0 6 - 1 1 二 連 球 菌 1 4 0 - 1 短 桿 菌
+ + + + +
1 0 6 - 1 2 P e d i o 型 球 菌 1 4 0 - 2 桿 菌
+ + + + +
1 0 6 - 1 4 P e d i o 型 球 菌 1 4 0 - 3 桿 菌
+ + + + +
1 0 6 - 1 5 二 連 球 菌 1 4 0 - 6 桿 菌
+ +
1 0 6 - 1 6 二 連 球 菌
+は生育陽性を示す
3 結果と考察
検定菌
457
株のうち検定培地で生育が見られたもの を表に示した。検定菌全
457
株のうち93
株で生育がみられ,その 内訳は桿菌が27
株,短桿菌が9
株,長桿菌が1
株,二連球菌が
27
株,およびPedio
型球菌が29
株であっ た。また,これら93
株のうち少なくとも70
株がグラ ム陽性,カタラーゼ陰性,非運動性であり、乳酸菌で あると考えられた。93 25 26
おからおよび焼酎粕資化性株 株は カ所,
サンプルより高頻度で得られており,伝統的に植物性 乳酸菌を利用してきた我が国の風土を反映していると 考えられる。
Bacillus
ま た , こ の93
株 の う ち2
株 の 培 養 液 はに 対す る抗菌 作用を示しており、なんら かの
subtilis
。 , 抗菌物質を生産していることが明らかとなった また この
2
株についてGABA
の生産を確認したため,今 後の詳細な検討が必要である。おからの有効利用や焼酎粕の有効利用については多 くの研究がなされてきているものの現在までインパク トのある利用方法は見いだされていない。これらの食 品関連未利用資源を組み合わせ、さらに乳酸発酵を行 うことで保存性を高め、機能性物質の生産を行う技術 の開発が急務である。しかしながらこれらの食品関連 未利用資源は植物系資源であるため栄養要求性が複雑 な乳資化性乳酸菌で乳酸発酵を行うことは非効率的で おからや焼酎粕の発酵に適した特異 ある。そのため,
をおから、焼酎粕産出現場や広く自然界から 的乳酸菌
スクリーニングし、それら乳酸菌の高血圧予防機能の あるγ-ア ミノ酪 酸(GABA 、 バクテリオシン等の抗) 菌物質、その他抗酸化性物質等,機能性物質生産能を 効率的な乳酸発酵および機能性物質生 詳細に評価し、
することが重要となる。
産に対する発酵技術を開発
4 まとめ
おからおよび焼酎粕培地において,検定菌全
457
株, ,
のうち
93
株で生育がみられ その内訳は桿菌が27
株 短桿菌が9
株,長桿菌が1
株,二連球菌が27
株,および
Pedio
型球菌が29
株であり,そのうち少なくとも
70
株が乳酸菌であった。このうち2
株について,MRS GABA
なんらかの抗菌物質を生産し, 培地より を生産していることを確認した。
本試験研究は平成
14
年度の(財)福岡県産業・科 学技術振興財団マッチングコーディネート事業実用化 可能性試験における受託研究の成果である。◇チェックリスト◇
分 類 著者 課長 内 容
提出物 ○ 原稿(複写1部)
1 共著者全員が原稿に目を通している
総 2 他著書から転載の場合、原著者、著作権者の許可を得ている
3 ○ 原稿はA4,4頁以内である 「学協会誌投稿論文の概要」は2頁以内である。
4 ○ フォーマットは適正である(マージン、文字数、表題部など)
5 ○ テーマ名・機関名・著者名・英文表題の誤字,抜け字はない
6 ○ 見出しは 1,1−1,1−1−1等とする。参考文献にも見出しがついている
合 7 ○ 文章は当用漢字,現代かなづかい(付録の用語資料参照),「である」体
8 ○ 数字はアラビア数字,単位・量記号はSI単位(付録の国際単位表参照)
脚 1 脚注,文献は本文中で必ず引用している 注
等 2 脚注,文献に通し番号がついている
1 ○ 図表は本文中に引用している 図
2 図表に通し番号がついている
3 ○ 図表に日本語の説明文がついている
4 ○ 説明文だけで図表を理解できる,A4に縮小しても読める
5 ○ 図表中の記号の説明がある 表
6 図の縦・横軸の説明は「物理量/単位」の形式である
7 大きさを示す図には基準寸法が入っている
8 写真の写りは良い。別紙添付の場合トリミングや番号・著者名を記入している
コ 担当課長コメント メ
ン
ト 研究所長コメント