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日本におけるDSMの経済性評価

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日本におけるDSMの経済性評価

著者

木船 久雄

雑誌名

名古屋学院大学論集 社会科学篇

30

1

ページ

81-99

発行年

1993-07-31

URL

http://doi.org/10.15012/00000784

Copyright (c) 1993 木船久雄

(2)

名古屋学院大学論集 社会科学編 第30巻 第1号 ('93.7) 81

日本 における

DSMの

経済性評価

*

目 次 は じめ に

1.米

国型

DSMの

導 入障壁

2.リ

ベ ー トと省電力量

3.サ

イ ク リング運転 の経済性 お わ りに

は じ め に

現在

,わ

が国では夏季 における需給逼迫や地球規模の環境 問題か ら

,電

力 需要の負荷平準化や効率的な電力使用が求め られている。季時別料金制度の 導入

,蓄

熱機器の開発

,エ

ネル ギー転換

,省

エネルギー (省電力

)政

策や啓 蒙活動の充実

,そ

して本稿 で検討す る

DSM(Demand‐

Side Management)

な どがその需要対策の処方箋 にあげ られている。 既 に米国では

,DSMを

1990年代の有力な電力供給オプ シ ョンの一つ とし て位置づ け

,規

制 当局は後押 ししている。従来の負荷管理 と異な り

,DSMが

持つ新 しさは

,環

境問題 も視野にいれて社会全体の費用 を最小化 しようとい う意図が包合 され る点である。 °本稿は名古屋学院大学経済学部研究奨励金(1992年)の助成による研究成果の一部 とし て公表する。

(3)

名古屋学院大学論集 これ まで 日本では

,負

荷管理 を目的 として料金制度 を活用 したプ ログラム はかな り導入 されて きた。 この主たる契約対象 は大 国産業需要家である。し か し

,米

国の

DSMの

ように省電力その もの を目的 としたプ ログラムや民生 需要家 を対象 とした直接負荷制御 といったプ ログラムは存在 しない◇ 現在の地球環境 問題や夏場の電力需給逼迫の状況 を考慮すれば

,早

急 に有 効 な省電力や負荷制御の方策検討 を行わな くてはな らない。 日本の電力市場 への

DSM導

入の検討は,そのための提案である。もちろん

,米

国型の

DSM

がその まま日本 に適用で きるわけではない。 本稿では 日本型の

DSMを

模索す るために次の ような考察 を行 う。まず,① 米 国型の

DSM制

度が なぜ 日本 では適用 され ないのか とい う理 由を整理 す る。そこでは

,DSM:導

入に否定的な見解 として「 日本 における小 さな潜在的 省電力量」が理由の一つ として指摘 され るが

,②

その実際はどうなのかを検 証す る。 また

,有

力な負荷管理の方法 としてサイク リング運転があるが

,③

これ を日本市場で適用 した際の費用効果 を検討す る。

1.米

国型

DSMの

導入障壁

1.l DSMの

メニュウ

DSMは

「省電力 と負荷管理

:C&LM(Conservation&Load Manage―

ment)」 のために行 う電力会社の行為である①(図 1参照)。 しか し

,1980年

代後半か ら急拡大 して きた米国での

DSMの

主流 は

,フ

°ログラムの種類や投 資額のウェイ トか らみて も電力会社が実施主体 となる省電カプ ラグラムにあ るとい うのが実態である。

DSMが

従来の負荷管理 と異な り,新鮮である理由 は以下である。 第一 に,電力会社 自らが

DSMで

行われ る省電力を利益源泉 と認識 し,その コンサルテ ィングや資金援助 を積極的に行っていることである。

DSMの

実 施が利益 に結び付 くような誘導策 を規制当局が用意 している(2)。 (1) EE1/EPRI(1984)P.5

(4)

日本 における

DSMの

経済性評価 83 ――情報 の提供 一 省 エネル ギ 省エ ネ・ コンサル テ ィング ・ エ ネル ギー診断

,技

術授 助

DSM一

電力の奨励金制度 一 負荷管理 ・ リベー ト, クーポ ン

,低

利 融資 一 「 ■)直接 制御―T―サ イク リング運転

ヒ 緊急負荷調整 L(2)間 接制御―一季時別料金 (料金制度 に よる) 図

l DSMの

メニ ュウ 第二 には

,従

来の料金制度 を用いた間接的な負荷管理のみな らず

,電

力会 社が情報機器 を用いて直接 負荷 を制御 してい るこ とで あ る (料金割 引 はあ る)。 エアコン等のサイク リング運転がこの代表である。 第二 には

,こ

れ らメニュウは どちらか といえば民生需要家 をターゲ ッ トと している点である(3)。 需要の価格弾力性が高い産業需要家 には従来か ら料金 政策 を通 じて多 くのメニュウが提示 されて きた。 ところが

,価

格弾力性 の小 さな家庭や業務 といった民生用需要家向けには異質な対策が必要 ということ であろ う。 さらに,公共政策 という観点か らすれば

,DSMは

消費者が同 じ効用 を獲得 す るのに社会全体 として何が最 も安い方法でそれ を提供 で きるか

,を

考 える ことである。 これは

,供

給対策 と需要対策のそれぞれのメニュウを絆 にかけ て安い順か ら選択すべ きだ とい う

LCP(Least Cost Planning)の

考 え方で

あ り

,DSMの

勧めはここに端 を発 している。

1.2

日本の既存制度

従来 日本の

DSMの

中心 は

,あ

くまで も料金制度 を用 いた負荷管 理 で あ (2)Chamberln,J.and M.Reid,(1991)参 照

(5)

る(4)。 米国の ように電力会社主導 による リベー トや割引券 といった金融上 の 動機付 け (奨励金

)を

伴 った省電カプ ログラムは採用 されていない。省エネ ルギーのための優遇制度 は

,省

エネル ギー法 (1979年

)に

基づ いて政府主導 で行なわれ る。そこか ら

,省

エネル ギーのための投資には法人税の一部控除 や加速度償却

,

日本開発銀行等の低利融資が されている(5)。 負荷管理 を中心 とした 日本 の

DSMの

メニ ュウは以下 の ように分類 で き る。それ らは①料金制度の活用

,②

蓄熱事業である。① は従来 よ り導入 され て きてお り

,②

は最近登場 して きた。負荷管理の中に分類 され るサイク リン グ運転 による直接制御 は

,米

国ではなされているが

,

日本では導入に至 って いない。 既 に,米 国型

DSMの

日本への紹介はひ とあた り済 んでお り,またこの制度 が持つ一般的な問題点 も明 らかにされている

Rそ

れ らは,① 市場の効率性 か らみた問題,②

DSMが

持つ所得再配分機能,③ デモグラフ ィックな差別問題 な どである。

1.3

米国型

DSM導

入の障害 米国型の

DSMを

日本へ導入す るこ との障害 も幾つか指摘 されている(7)。 それ らを整理すれば次の ようになる。 第一 に,日本では費用効果的な潜在的省エネ量が小 さい と見込 まれ ること。 第二 には

,電

力販売量の減少 は電力会社の収入減少 をもた らすため

,現

行制 度では電力会社が

DSMを

進め るインセ ンテ ィブが無 いこ と。第二 には

,

リ ベー トという商習慣が 日本では馴染みが薄いことや

DSMに

関わ る費用 を現 在の供給原価主義の料金制度 にどの ように矛盾無 く反映 させ ることが可能か とい う問題 があること。第四には

,電

力投資が持つ公共投資的役割

(DSM投

(4) スく1合 (1993, a) pp. 417-424 (5)日本の省エネル ギー政策の体系 につ いては,通商産業調査会 (1992)などを参11鷲。 (6)木船 (1991)などを参照。 (7)前掲,木船 (1993, a),pp.424-428

(6)

日本 における

DSMの

だLi斉性評イ面 85 資 はカサが小 さいのでマクロ経済への影響が小 さい)。 さらに第五 に

,既

存の 省エネル ギー制度の活用論

,な

どである。 第二か ら第五 に関す る詳細 は別稿 に譲 るが

,第

一の議論 は本稿後半の分析 とも関連す るので

,多

少の解説 を加えてお く。 日本では

,効

率機器導入に奨励金 を出 して も

,大

きな省電力効果 は期待で きない とい う暗黙の了解がある(8)。 っ まり ,コス トの割 には省エネ量が小 さい とい う意見である。確 かに米国に比べて 日本では家電製品の買い換 え期間が 短 く

,

しか も製品は高い効率値 を示 している。 エアコンのサ イク リング運転 に関 して も

,米

国のエアコンがセ ン トラル・ タイプで容量

(kW)が

大 きい。そのため ピークカ ッ トの効果 は期待で きる。 しか し, 日本では個別冷房で一台当た り容量が小 さいために手間の割 には費 用効果 は無 いだろ うとされ る。 この ような状況か ら

,機

器交換 による潜在的省電力量 は米 国ほど大 きくな い

,

というのが一般的な判断である。ただ し

,こ

れ を詳細 に検討 した調査や 研究がなされているわけではない。 以上 い くつかの

DSM制

度導入の障害 を整理 して きた。つ ぎに,大きな問題 となる省電力の可能性やサ イク リング運転の費用効果 に関 して実際 どの よう のポジシ ョンにあるのか とい う点について検討 しよう。

2.リ

ベ ー トと省電 力量

こ こで は

,現

在 の利 用可能機 器 が 旧型 の機 器 を リプ レー スす るこ とに よI) どれ程 の潜在 的省 電力量が あ るのか

,ま

た その普 及 を促進 す る リベ ー ト・ プ ログ ラムが有効 で あ るか否 か とい う問題 を検 討す る。扱 う機 器 は

,家

庭 用 電 力消 費 に大 きな位置 を占め る冷蔵庫 とテ レビ

,そ

して冷暖 兼用 のエア コンで あ る。 (8)藤原 (1992)など

(7)

2.1

計測の方法 ① 計算 フロー 潜在的な省電力の大 きさを測 るためには

,既

に普及 している家電機器が ど の ような効率で

,

どの ように保有 され, また使用 されているかを知 る必要が ある。そのために, まず販売 された年式別の効率値や年式別の残存ス トック 台数 を算出す る必要がある(9)。 この想定では, まず各年の機器販売台数 をワイブル曲線 に外挿 し

,年

式別 の残存台数 を求め る。次 いで,公 式統計の普及台数や普及率 をコン トロール・ トータルス として値 を調整す る。 現在保有 されている年式別のス トック台数 と年式別の機器効率が判明すれ ば

,現

在のス トック平均の効率値 も年式別の残存ス トック台数の加重によっ て求め られ る。 また

,こ

の年式別の効率 と現在 (1992年 型

)利

用可能な機器 の効率 とを比較 し

,機

器の稼働時間 を乗ず ることで代替 による省電力量が測 定で きる。 さらに

,現

在販売 されている高効率機種への買 い替 え費用 (販売価格

)に

資本係数 を乗 じ

,そ

れを省電力量で除す ることによって

,省

電力単価 (省エ コス ト)が求め られ る(1°)。 以上の ような一連の計算 フローは図2に示 され る。 ② データお よび前提 個別機器の平均耐用年数は

,冷

蔵庫8.5年

,テ

レビ

7年 ,エ

アコン12年と した。 コン トロール・ トータルス とす る全国ベースのス トック台数は

,普

及 率 に世帯数 を乗 じた値である。 旧式の機器効率 に関 したデータは『省エネルギー便覧』

,各

工業会お よび販 売 カタログか ら集計 し

,新

機種のそれはカタログ値 を用いた。新機種 の販売 価格 はメーカー小売 り希望価格の7割とした。 これは家電量販店の実勢 を反 映 させ ている。 (9)こうした算定の仕方は,例えば 日本電力調査委員会 (1989)を参照。 (10 省電力費用の算定方法 は,Meier,A.et al(1983),pp.19-20

(8)

年式別販売台数 年式別効率値 ワイブル曲線の外挿 (耐用年数など) 既存 データとの調整 年式別ス トック台数 加重 された効率 新機種の効率 新機種の費用 省電力原単位 機器 の使 い方 省電力の潜在量 (年式別の想定) 資本係数

CRF

(害」;IΣ終) 省電カ コス ト 日本 における

DSMの

経済性評価 87 図

2

省電 力供給 曲線の算定 フロー 年 式 別 の販売 台数 は

,通

産省 『機 械統計 』や 各工業会 な どの デー タ を用 い た。 コン トロール・ トー タル ス として扱 う普 及率や普及 台数 は

,経

済企 画庁 『消費行動調査』や通産省 の 『電力需給 の概 要』 を用 いた。 また

,年

間一 台 あた りの稼働時 間 は

,前

掲 『電 力需給 の概 要』 か ら推計 し

,年

式 別 に差 異 は 無 い と仮 定 して い る。 資本係 数 を求 め るにあた り

,割

引率 は

5%,回

収 年数 は機 器 の平均 耐 用年 数 (前述

)と

した。

(9)

88

名古屋学院大学論集

2.2推

計 結 果

3つの家電機 器 か ら測 った潜 在 的省 電力量 は

,図

3の省 電 力供 給 曲線 に示 され る。大 きなポテ ンシャル を持 つ もの は冷蔵 庫 で あ る。 これ は

,効

率 の悪 い旧式冷蔵 庫が市場 に滞留 してい るこ と

,

しか も冷蔵庫 は年 間 を通 じた稼働 時 間が 長 く消費電力量が大 きいこ とに由来 す る。 テ レビは現在 の標準的 な新機種 に代替 して も

,経

済 的 な省 電カ ポテ ンシャ ル はそれ ほ ど大 き くない。 この理 由は

,現

在 の販売機種 が大型化 し必要 電力 量 が大 き くなって い るこ と

,買

い替 えサ イクル も相対 的 に短 い こ とか ら

,効

率 の悪 い機 器 は多 く滞留 して いない こ とに よる。 ただ し

,小

型機 へ の代替 を 進 め るこ とに よって経済 的 な省 電力量 は拡大す る。 冷 暖 房 兼用エ ア コンに関 して は

,新

機 種 の効 率 は

COPが

3.4を超 えて い る。効率値 を見 る限 り10年前 の それ とは大 きな相違 が見 られ る。 しか し

,年

間のエ ア コ ン稼働 時 間が冷蔵 庫 の ように大 き くないため

,潜

在 的 な省 電力量 は冷蔵 庫 ほ どには達 しない。 これ ら

,三

者 で標準的 な新 製品 に代替す るこ とに よって もた らされ る経済 的 な (つ ま り家庭 用平均 電力単価 以下 の省 電 カ コス トの

)省

電 力量 は10億

kWhほ

どにな る。 これ は

,1990年

度 の家庭 用 電 力(従量 電灯 甲乙)の

0.7%

の値 で あ る。 また

,

リプ レー ス機 器 を標準 的 な ものでな く消費電 力の少 ない 小 型 の ものへ

,と

い う前提 をお けば

,省

電 力潜在量 は

2倍

強 の24億

kWhと

な る。 ② リベー トの効果 さらに

,

リベー トを用いて代替機器の値段 を割 り引いた際の経済的省電力 量 を検討 してみ よう。 リベー ト率 を2割 とし

,消

費者 は上記で用いた機器買 い替 え費用が

8割

で済む というケースを考 えてみ る。 これによる経済的な省電力量 は

,標

準機器への買 い替 えで15億

kWh,小

型機への買い替 えでは28億

kWhと

なった。

(10)

250 200 150 100 日本 における

DSMの

経済性評価 89 省電カ ロス ト(円/kWh) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 5000 累積省電力量 (百万

kWh)

(注)図表 中の番号お よび記号 は以下を示す。 標準機種への代替 に関 しては

,1:冷

蔵庫 の72∼74年型

,2:冷

蔵庫75年 型, 3:エアコン73年型, 4:冷蔵庫76年型

,5:エ

ア コン74年型

,6:

冷 蔵 庫77年型

, 7:冷

蔵 庫78年型

,8:冷

蔵 庫79年型

,9:エ

ア コ ン 75∼77年型

,10:冷

蔵庫80年型,11:エア コン78∼80年型,12:エア コン 81年型,13:エア コン82年型,14:冷蔵庫81年型,15:エア コン83年型, 16:エア コン84年型 小型機種への代替 に関 しては

, al冷

蔵庫72∼74年型

, b:冷

蔵庫75年 型

,C:冷

蔵庫76年型

,d:冷

蔵庫77年型

,ei冷

蔵庫78年型, f:冷蔵 庫79年型

, gi冷

蔵庫80年型

, h:冷

蔵庫81年型

, i:冷

蔵庫82年型, j:テレビ86∼90年型 0 標準機種に代替 標準機種+リベ ー ト ‐小型機種 に代替 十 リ ベ ー ト 23 家庭用 の平均電力単 価 C 図

3

家庭の省電 力供給 曲線

(11)

90

名古屋学院大学論集 ③ 評価 と留意事項 本想定で得 られた結論 は

,新

機種への代替 を促進 して も潜在的な省電力量 はそれほ ど大 きな ものではない ということになる。 これは

,前

述 したように 日本 は米国に比べて家電製品の耐用年数が短 いこと

,つ

ま り効率機器の浸透 が早 いことに由来 しよう。 しか し

,以

上の検討 は

,現

在利用可能で標準的な新 しい家電製品への代替 による省電力の可能性 である。 ここで用いた「新 しい家電製品」は意識的に 高効率な ものを採用 している訳ではな く

,代

表的な商品への代替 を仮定 して いる。 この点 に関 して

,商

品化 されている最 も省電力的な製品によって代替 され る

,

という仮定 をおいて精査すれば

,潜

在的省電力量 はさらに高 まるも の と考 えられ る。 また

,

リプ レース機器 を小型機器 にすれば省電カポテ ンシャル は明 らかに 大 きい。 しか し

,現

在の機器選択の傾向は

,①

多機 能化 と大型化

,②

単身向 けやパ ーソナルユース用の小型化, といった二極分化の方向にある。 この よ うな傾向 を考慮すれば,エネルギー効率や シンプルな経済性の優位 さだけで, 小型機器 に消費者選択 を方向付けることは難 しいであろ う。 今回の想定では

,冷

蔵庫

,テ

レビ

,エ

アコンといった二つの機器 に関 して, 経済的な省電カポテンシャル を計測 した。米国の

DSMで

なされ るように,レ トロフ ィッ トのメニ ュウである断熱材や低水流 シャワーヘ ッ ドなど多岐 に渡 る商品 (技術

)群

の検討 も

,

日本の潜在的省電力量 を測 るためには重要であ る。

3.サ

イク リング運転の経済性

米 国では広 く普及 しているが

,

日本でなされていない

DSMメ

ニュウの一 つ に直接負荷制御の「サイク リング運転」がある。 これは

,電

力需要の ピー クカ ッ トを目的 として

,家

庭や業務用需要家の特定機器の使用 を電力会社が 制御す る方法 である。具体的 には

,

ピーク時のエアコンや温水器 を対象 とし て電力会社 は遠隔操作で直接 オ ン・ オフを行 う。 その代 わ りに料金の割引を

(12)

日本 における

DSMの

経済性評価 91 行な う。 日本では

,こ

うした契約 は実施 されていないが

,NEDO(新

エネル ギー・ 産業技術総合開発機構

)が

九州電力に委託 してエアコンと電気温水器 を用い た直接負荷制御の実証試験がある。実証試験 によれば

,温

水器制御で5∼

7%

のボ トムア ップ効果 を,エアコン制御では4.4∼

5.1%(住

宅十業務用)のピー クカ ッ ト効果が確認 されている(H)。 ここでは

,夏

期 における家庭用のエアコンをサイク リング運転 した場合の 費用効果 を検討す る。経済性計算の前提 な ど不確定要素は多いが

,公

表資料 か ら得 られ る範囲で諸元 は設定 している。

3.1

計算 の前提 ① 制 度 。前提 諸元 想 定 す るサ イ ク リング運転 は, 7月 ∼ 9月 の3カ月間 に限 り

,家

庭 用 の エ ア コ ンにつ いて電 力会 社 が遠 隔操 作 す る とい う もの で あ る。 サ イ クル の数 は 2お よび

4(ヶ

― ス1お よび ケー ス

2)で

,需

要 家群 を2つない し4つに分 類 して

,各

々の グル ープ を順次 オ ン・オ フす る。この時

,契

約 者 の 中 にフ リー ライ ダーが存在 し, これ を約6割あ るいは2割 (ケース1お よび ケー ス3) と仮 定 した。 さ らに

,サ

イ クル契約 に よる料金割 引 は月額1,000円 と した。米 国で は, サ イ ク リング契 約 の対 象機 器 や 運 用 の状 況

,会

社 に よって 月額 割 引額 は異 な って い るが

,お

よそ6ドル ∼9ドル といった ところで あ る。 こ う した前提条件 でな され る需要削減 の ための費用 と

,供

給 力で対処 した 場合 の各種 電源 の発 電 コス トとの比較 で

,費

用効果 を検 討 す る。 電 力会 社 の 実 際 の電源 運 用 か らい えば

,サ

イ ク リング運転 と比較対象 とな る電源 は場 水 発 電 。一般水 力・石 油 火 力 とい うこ とにな ろ う。 しか し, ピー ク用 で年 間稼 (■

)新

エネルギー・産業技術総合開発機構/エネルギー総合工学研究所 (1993),「第 8章 負荷制御に関する開発状況」pp.120-137。 また九州電力の実証試験では 3分 オフ 12分 オンのインターバルが適当という結果が出ている。

(13)

名古屋学院大学論集 働時間が少ない新規電源の設置 とい うことであれば

,kWあ

た り資本費単価 が高い水力発電は不向 きとなる。 それゆえ

,新

規の増分費用 とい う観点か ら比較検討 を行 う本想定では

,供

給サイ ドの比較対照電源 としては石油,石炭,原子力

,LNGを

扱 う。ただ し, 原子力 も資本費単価が高 く

,通

常はベース電源 として位置づ け られている。 ② 市場 お よび ケースの設定 現在 のエ ア コンの保有 台数 は 日本全国で4,435万台 と した。 エア コンー 台 あ た りの平均 容量 は

844 kWで

あ る。これ は

,199o年

度 の ほぼ 実状 を反映 し て い る値 で あ る。サ イク リング運転 の契約 数 は この全量 とす る。 また

,

ピー ク時 間帯 に稼働 して い るエア コンは契約 台数 の

40%と

す る (ケー ス1)。 保有 台数 の全量 が サ イク リング契約 を行 い

,実

際 に効果 を期 待 で きるの は

4割

とい うこ とで あ るか ら

,こ

の時の フ リー ライダー比率 は

6割

で あ る(12)。 これ に送 電損失率

10%を

加味す る と,サイ ク リングが成 され ない場合 には家 庭 用 エア コンの ため に必要 とす る送 電端電 力量 は1,664万

kWで

あ る。これ は全国の ピー ク需要 の約1割に相 当す る。 ケ ース

1で

はサ イ クル 数 を2とす る前提 か ら

,サ

イ ク リング運 転 に よる ピー クカ ッ ト分 の効果 は832万

kWで

あ る。 また

,サ

イ ク リング運転 の条件 に変化 をつ けたケース を2つほ ど用意 してい る。 ケース2はサ イ クル 数 を4 と した。 さ らにケース3はサ イクル数 はケース 1と 同様 の

2だ

,フ

リー ラ イ ダー比率 を

2割

と設定 してい る。 ③ 費 用 内 訳 一方

,サ

イクリング運転に関わる費用は

,送

信機器や コン トロール機器 と (12)フ リーライダー とは「ただ乗 り」のこと。例えば, もともとピーク時間帯に誰 も在宅 していない家庭がサイク リング契約をした場合には,電 力会社にとって需要削減効果は ゼロであるのに月額料金を減額せ ざるを得ない。当該需要家は割引額をただ取 りするこ とになる。

(14)

日本 における

DSMの

経済性評価 93 いった設備への投資がある。 また

,月

額 1,000円 (3ケ月で 3,000円

)と

い う料金割引額 は費用 として計上す る。 この想定では

,資

本費お よび管理費は一 日当た りの単価 として計算 した。 本来

,資

本費は口数に比例す るものではないが

,現

状 でのデータ利用可能性 か ら前 述 の 方法 を採 用 した。単価 を設 定 す るため の基 礎 データ は

SCE

(Southern California Edison)の

DSM年

鑑 を参考 に した(13)。

以上の各費用単価 (円/台)に契約 回数 を乗 じて

,初

年度費用3,172億円が 求め られ る(ケース

1,断

らない限 り以下同 じ)。 前述の ように

,こ

れにはフ リーライダーに支払 う (減額す る

)無

駄 な資金 も加味 されている。完全 にフ リーライダーを排除で きれば

,初

年度費用 は当初想定 された3,172億円が, その

40%の

1,269億円 となる。 しか し

,フ

リーライダーを排除で きる可能性 は不確定なために

,ケ

ース

1で

は潜在的フ リーライダー を最大限に見込んだ 値 を用いている。 割引料金お よび管理費は毎年の継続支出

,資

本費は原価償却す るもの とす る。 一方

,比

較対象 となる供給力の費用は①資本費

,②

管理費

,③

運転費等 を 考慮す る。 これは

,通

産省や科学技術庁などでなされ る従来の発電 コス ト試 算の方法 を踏襲 している(“)。 サ イク リング運転

,供

給力の発電 コス トともに現在価値換算 し

,耐

用年の 均等化費用での比較 を行 う。

3.2

結果 と留意事項 ① 結

果 以上の諸元に対 して

,耐

用年 を 15年

,割

引率を

5%と

して均等化すると, サイクリング運転の一年当た りの費用は 1,983億 円/年となる。また

,100万

kWあ

た りのコス トは 238億 円/年と計算 される。 (13) SCE(199o)pp.1-5. (10 例 えば,高橋 (1991)など。

(15)

ピーク時間帯の

kWh当

た り単価 は

,稼

働時間 をピーク時 として問題 とな る年間20数時間 を前提 とすれば

,サ

イク リング運転 は 1,192円

/kWhで

あ る。これに対 して,従来型の発電設備では石油火力が最 も安 く,1,508円

/kWh

である。これは

,サ

イク リング運転 よりも3割弱ほ ど高い(表

1,図

4参

照)。 サ イク リング運転では初期投資 に絡む資本費その ものは小 さいが

,経

常的 な支出 となる料金割引が各年 に発生す る。 これが

,均

等化費用でみたコス ト の約

98%を

占め る。このため

,料

金割引の設定いかんが供給 コス トとの相対 関係 を大 きく変化 させ る。月額の割引額 を 1,000円 でな く1割 り小 さな900 円に設定すれば,上記の

kWh単

価 はほぼ1割小 さな値 になる し,逆 は逆であ る。 また

,同

様 にサ イクル数や フラーライダー比率の大 きさも

,結

果 を大 きく 左右す る。 この二つの変数について検討 したヴ ァ リエーシ ョンの結果 は次の とお りである。 ② ケース展開 上記結果のケース1に対 して

,サ

イクルの数 を 4と したのがケース

2,フ

リーライダー比率 を2割 としたのがケース

3で

ある。 サ イクル数の増大 は

,各

サイクル における

kWや kWhの

削減効果 を低下 させ る方向に働 く。ケース2のようにサ イクル数 を 4と すれば

,期

待 され る 表

1

ピー ク供給力の経済性比較 (単位:円

/kWh)

年 間 稼 働時 間(利用率

%)

サ イク リング運転 供給 力(電源) ケー ス1 ケース2 ケース3 石 油 石 炭 原子 力 20(0.23) 60(0.69) 100(1.14) 200(2.28) 300(3.43) 1,192 397 238 119 80 2,384 795 477 238 159 596 199 119 60 40 1 508 506 306 156 106 1 963 656 395 199 134 2,460 828 495 249 167 (注

)ケ

ース1はサイクル2でフ リーライーダー比率6割。ケース2はサ イ クル数4。 ケース3はサイクル数2だがフ リーライダー比率2割。

(16)

日本における

DSMの

経済性評価

95

削減 容量 は416万

kWで

あ る。総費用 はケース 1と 同 じと仮 定 され るか ら,

kWh当

た りの単価 はケース1に比べ て

, 2倍

にな る。 また

,ケ

ー ス3の よ うにフ リー ライ ダーの排 除が可能で あれば

,毎

,毎

年 の費用計上 してい る料金割 引額 は少 な くて済 む。 その ため総 費用 を減少 さ せ 単価 も安 くな る。 フ リー ラー ダー比率

2割

の ケース

3で

,kWh単

価 は ケー ス1で算 出 され た値 の半分 とな る (表

1,図

5参

照)。 費用 (円/kWh) 5000 120 220 稼働時間

DSM

石油

石炭

LNG

原子力 ヽ ` ■ 、 ・・・・・ 1.. 図

4

サ イ ク リング運転の経済性 320

(17)

③ 評価 と留意事項 以上の計算 には

,一

部 は上 で も検討 して きたが

,次

の ような不確定要素が 含 まれている。

0

月額 の割引額 (イ

)参

加者 とフ リーライダーの大 きさ (勁 サイクルの回数

0

初期投資額 費用 (円/kWh) 10000 5000 2000 1000 500 200 100 50 20 110 年間稼働 (実施

)時

間 (注)ケ ース1はサ イクル数2でフ リーライダー比率6割 ケース2はサ イクル数4でフ リーライダー比率6割 ケース3はサ イクル数2でフ リーライダー比率2割 310 ヶ ― スl ヶ ― ス2 ケ ー ス 3 ` ■――__ ︱ I F I ■ ヽ ヽ , ︲ ヽ 図

5

ケ ース別の経済性比較

(18)

日本 における

DSMの

経済性評価 97

0

インバーター・ エア コンによる始動時の出力変動

0

エア コンの送風機分の電力容量

0か

ら(ウ)に関 しては

,既

に上 で検討 した。 (工)本想定での初期投資額の設定は

,米

国のデータを参考 として契約 口あた りで求めた。 これは

,デ

ータ入手可能性の制約か らである。本来

,資

本費は 固定的であ り

,参

加者の増大 につれて契約 口当た りの単価 は逓減 してゆ くも のであろ う。そのため本想定での資本費設定に関 しては改善余地 はあるが, 最大値 を折 り込んだ と判断 している。 また

,前

述のごとく耐用年均等化計算 でみれば費用構成の圧倒的部分 は月額の割引料金額であるため

,検

討の要所 はそちらに向けられ るべ きであろう。

0イ

ンバーター・ エアコンは通常

,起

動時 に大 きな出力で急速冷房 し

,そ

れ以降時間に従 って出力が低下 してゆ く。一定時間の

kWhで

みれば,省電力 型であるものの

,起

動時 に限れば定格容量以上の出力 となる場合 さえある。 それゆえ

,こ

こで前提 とした1台あた り

844 kW程

度では収 まらない可能性 が高い。 しか し

,現

在の制御が温度 を主体 としてなされているためにこうし た事態 となるが

,将

来の技術開発の方向 としてインバーターの周波数制御 と い う形 をとれば

,こ

の問題 は解決 され る。 また

,将

来の直接負荷制御の方向 として

,オ

ン・オフ制御の他 にこの周波 数の制御や温度制御 も指摘 され る。 ②米国ではエア コンのサイク リング運転 を行 う際, コンプ レッサーがオフ

の状態でも

,送

風機

(フ

ァン

)は

材昴させている。それゆえ

,こ

のファンの

容量 は上 記 の削減 効果 か ら削 除す る必要 が あ る。 以上 の計算 はあ くまで もピー ク時 の新 設 限界費用 とい う観 点 か ら比較 を し て い る。結果 は

,電

源 の供 給 コス トに比べ てサ イ クル運転 は安 くな る可能性 が あ るこ とを示 した。不確 定要 素 はあ るが

,フ

リー ライ ダーの排 除や料 金割 引の低 下 を進 めてゆけば更 に低 コス トで ピー ク対応が可能 とな る可能性 を示 して い る。

(19)

98

名古屋学院大学論集 ④ 課

題 この結果 は

,サ

イク リング運転の費用効果 を計測す る上 での一次試算 に過 ぎない。計算結果の信頼性 を向上 させ るためには

,各

々の計算諸元 に関 して 更 に精度 をあげる必要がある。 また

,サ

イク リング運転の費用効果 との比較 に電源の発電 コス トを用いた が

,別

の方法 も考 えられ る。それは

,供

給設備全体の運用 を含めた最適電力 供給モデルの利 用 といった方法 である。そ うしたモデル を用いることによっ て

,

ピーク需要の増大が供給の費用 をい くら押 し上 げるか

,つ

まり限界費用 が どれほどあるか を想定す る方法 である(15)。

お わ り に

本稿では日本における

DSM導

入の壁や省電力の可能性の一部

,さ

らには サイクリング運転の経済性などを検討 してきた。 得 られた結論は

,①

潜在省電力の大 きさは本計測ではあまり大 きくないこ と

,②

しか し

,そ

れは家電機器や省電力技術の一部で しかないこと

,③

ピー ク需要への対処には新規供給力の電源に求めるより

,サ

イクリング運転をし た方が安いこと

,そ

れには④米国の実際 と同様 にフ リーライダーの排除や料 金割引額の設定いかんが鍵 を握 ること

,な

どである。 参考文献

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g

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(20)

(5)

(6)

(7)

日本 における

DSMの

経済性評価 99

SCE(SOuthern CalifOrnia Edison Co.),Sο πι力ι″π Cα′こわ′πη Eググsο″Cο,%ραηyも (υ θθθ―E)Fグ ′グ%gο/1989/199θ D′παπグーSググο Zακαg′″′π′(DSiイ)4π π%α′Rοクο″ グπ cο″夕′」απειω′″″Dιεttηπハ√ο.87-12-θδδ O/グ′ππg 2α%αg%α夕″29,lMar"1990 新エネルギー・産業技術総合研究機構/エネルギー総合工学研究所 『電力需要対策推進 可能性調査』(平成 4年 度調査報告書,NEDO―NP-9212)1993年3月 高橋勝「各種電源の発電コス ト比較」『エネルギー経済』日本エネルギー経済研究所 第 17巻 第 1号 1991年 1月 通商産業調査会 『1992年 版 省エネルギー総覧』1992年5月 日本電力調査委員会『主要家電機器容量の将来予測に関する調査について』(昭和 63年 度需要研究会報告)1989年4月 藤原万喜大「日本の DSM」 『電気新聞』1992年7月 22日∼8月 1日 木船久雄「デマ ン ド・サイ ド・マネージメント

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参照

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