講演会から これからの人材育成と大学教育の協働
著者
小島 貴子
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
36
ページ
9-13
発行年
2014
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007604/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.jaこれからの人材育成と大学教育の協働
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小島貴子*
セルフ・プロデユースカとマネジメン2
トカとは 2. はじめに 産学官連携において共通認識として捉えておきたい 人材育成とし、う課題を今回は二つの視点から考察し 1 . 企業側としては、4つの変化視点から常に新しい変化に 対応し、能力を高める意欲のある人材を求めるようにな たものである。そのうえで人材育成と大学教育の協 働の可能性と意義について提案をしたい。 ってきた。日本型雇用は、メンバーシップ型雇用※1
で あり入社してから職業を割り当て、能力開発を現場で行 一つは、社会変化のスピードが早く激しい時代にお いて、企業においてどのような視点が人材育成で有 うというやり方であった、しかし、欧米ではジョブ型雇 用であり、職にあった能力雇用としていた。今後は、個々 効 で あ る か ? 人が様々な環境の下で適応しながら、能力を開発し発揮 二つ目は、大学教育が社会と協働した人材育成の教 することが求められてくる。そのためには、単に職業能 育は、どのようなところを共有すれば可能であるか。 力だけでなく、自身に対するマネジメント力や、自身を という視点である。 コントロールし、プロデ、ユースする力が必要となってく ることは、欧米型雇用をみていると自明である。そこで2.
社会変化と人材育成のポイントとは 変化の4
つの視点 今後は、日本の人材育成の観点、も会社に入るから、職に1
2.
就くということが更に重視されることが予測される。 人材育成における企業と個人3
2. 近年の変化を4
つの視点からまとめると下記のよう 1.環境の変化として= 高齢化、終身雇用 ・年功序列の崩壊、世界経済、世 グローパル化、少子化、 なことが見えてくる。 割 践 役 実 発 思自
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共遺能力の認識 F 使命の発~・
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価値観
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スタンス
専門性
スキル
"...・・・・・・・E・・....,2.
会社の変化として= 構造改革/選択と集中、 クツレープ経営、高齢化対応(技術伝承)、マネジメン ト力強化、企業の雇用能力の強化、組織ミッション 個の価値観の変化(多様 性)、キャリア自己責任の増大、会社に選ばれる魅力 界情勢 3. 個人の変化として= 的な能力の強化 二社会環境の変化と個人 の関係性として予測が必要なもの=企業の変化、業4.
変化への予測として 界動向、人脈から得る情報、 M&A、アメーパー経営 個人においては、働く者、自らが仕事・Lifeの質の向 等の経営手段 「育 と 上を考えキャリアの意味を理解し、 「自己成長」 そして、これらの変化に必要な能力として、セルフ ・ 成支援」が出来ることが必要である。 企業と管理職においては、社員の成長と成果を紐付け、 プロデ、ユース力とマネジメン卜力が必要といわれて いる。 -9一 *東洋大学グローパノレキャリアセンタ一 理工学部生体医工学科これからの人材育成と大学教育の協働 Collaboration of University Education andHumanResource Development in the Future 小島貴子 社員が更なる成長に向けて行動がとれる支援が具体的 に必要であり、また、管理職においては多様な価値観の 理解と尊重が出来る企業価値を高める意欲とビジョン を持つことの有意性の理解能力開発を理解し支援出来 る能力が求められる社員の意識変化の速度に対応して いると言えている企業はどのくらいあるのだろうか? 技術革新や企業変化に一番対応しなければならない、人 材育成がそのスピードと変化についていけていないと いう。今年度日本の人事部
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社人事実態大調査」 企業に行ったアンケートの中で、人材育成に係る費用で 興味深い結果が出ている。下記のアンケートによれば、 若手・中堅・管理職へ階層別の教育研修は行っているの である。しかし、実際には人材育成への不安も述べてい る。これに対しての具体的な提案に関しては、後述5に おいて企業における人材育成の課題で明示するが、ここ での企業は人材育成の必要性は強く感じ、行っていると いうことがわかる。 ・実施時期:2013 年 9 月 12 日 ~10 月 2 日 園調査方法:Web、郵送による回答 ・対象:~日本の人事部』人事会員 ・回答者数:1
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人(
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社)3.6%従業員数
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人15.8%
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人14.3%
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人36.1%
従業員数
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人
5001-10000
人
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総 計
デ ー タ の 個 数9
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次の質問として貴社の人材育成(教育研修)において、 最も重要視している階層をお選びくださし、[単一回 答]回答項目
デ ー タ の 個 数 内 定 者1
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新 入 社 員1
7
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若 手 社 員2
0
5
中 堅 社 員2
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管理職
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9
経営者・経営幹部2
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特 に な い1
1
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総 計
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8
内定者 -新入社員 若手社員 圏中堅社員 国管理職3
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育成と成長要素の展開として また、別の質問で、貴社において 「人・組織」の課 題は何ですか?としづ質問に対する回答は、下記の ようになっている。この回答を読み取れば企業は、 次世代への継承と新しいキャリアへの危慎等を感じ ていることが鮮明であると言えるのではないだろう か ? n u。
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管理職・リーダーシップ 次世代経営者・後継者 キャリア開発 組 織 開 発OJT
チームビソレデ、イング コーチングo
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(
集合研修) ビジネスマナー3. 1
人材育成の具体的な要素 -質問1
・質問2
学生時代に未知の労働の志向性を明確にするためには 3つの要素について理解する必要がある。1・価値観
2 ・興味・関心
3 ・能力
この 3つの理解が俗に就職活動で行われている「自己理 解」である。しかし、この 3つの志向性の理解が出来て も、それがどのように就業につながり、また労働意欲や 職業能力の開発へ発展するのかは、なかなか具体的に学 生へは伝わることが出来ていないのが現状である。それ は、なぜか?ひとつは日本における職業教育と高等教育 の接続がなされていないことも一因であると言わざる を得ない。 そこで、これからはより労働志向と今後の職業能力の開 発を理解し、就業の動機付けへと移行する教育が必要で あり、その一環がキャリア教育である。4.
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世紀の必要な能力(2009
年12月)
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教育局指標分析課長アンドレア・シ
ュライヒャーによる この O E C Dの提言を項目別に述べていく。 既に2009
年ヨーロッパの子どもの数よりも、中国の 賢い子どもの数の方が多く、2
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世紀の教育は児童生徒 が次のことに対応できるようにする必要があるという 事実と、社会変化の速さと激しさについて2
点を強調 している。 ①ますます速くなる変化に対応すること。 ②まだ存在しない職につけるようにすること。 と述べ、労働に関しては、アメリカで最も需要の多い10
の職は2004
年時点では存在していなかった。 こうした新たな職が生まれる潮流は今後も続くと思わ れる。そのためには、 2つのことから、 2つの教育的視点 が必要と述べている。 ③まだ開発されていない技術を使うこと。 ④まだ起こるとわかっていない問題に対処すること。 このことを踏まえた大学教育、さらに人材育成が急務で あると考えられる。4. 2
グローバル人材の移動について さらに O E C Dでは、国境を超える人材:モノだけでな く人も地球規模で動くのが頭脳循環。頭脳労働者の流れ は地球規模であると述べている。 ①距離は意味を持たなくなっている・ヨーロッパで、はす でに10
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万人もの人がeワーキングにより、勤務時 間や勤務地のフレックス制の恩恵を受けている。2
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年には3000
万人もの人がこのような働き方をして いる。 ②頭脳力の探求:多くの先進国は外国で養成された医師 や看護師に依存している。ニュージーランドの医師の41%
は外国生まれである事実から今後を更に分析し 提言している。4. 3
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世紀に必要な能力 その1
このグローパル化の進む社会では、どのようなキーコン ピテンシィーが必要であるかについては、まずオーケス トラのような共同作業に長けていることと述べられて いる。 ①グローパル化した世界が複雑化するにつれ、個人や 企業は様々な形態の調整や管理が必要になる。 -11一これからの人材育成と大学教育の協働 Collaboration of University Education andHumanResource Development in the Future 小島貴子 *総合化する力があること ①従来は、問題解決にあたっては、対応可能な固まり に細かく分けて解決を図ってきた。現在では、わかれて いる固まりを総合化して、そこに付加価値を付けている。 *説明能力があること ①検索したりアクセスするコンテンツが増えるにつ れ、フィルターしたり説明することが重要になると述べ ている。