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(1)

放電下の解凍プロセス

著者

加藤 正平, 大熊 廣一, 菊地 謙次, 大川 令

著者別名

KATO Shohei, OKUMA Hirokazu, KIKUCHI Kenji,

OKAWA Tsukasa

雑誌名

工業技術

38

ページ

15-18

発行年

2016

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00009532/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

ホホ*プロジヱクト研究報告*市本

=工業技術研究所プロ ~z クト研究報告=

放電下の解凍プロセス

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1

.はじめに

世界各地で捕獲された魚類は日本に運ぶために冷凍 され、圏内で解凍、冷蔵、調理される。これまでの解 凍には自然解凍、マイクロ波加熱解凍、流水解凍など がある。冷凍品に電流を流してジュール熱で加熱する 方法は加熱調理の予熱のために利用されるが、解凍そ のものを目的として使用することは少ない。 本研究では、様々な形状の魚肉に対応可能で、緩や かで一様な解凍を実現するジュール熱解凍をコロナ放 電電流で行う方法を検討する。

2

.解 凍 法

2. 1

ジュール熱解凍法 解凍法には自然解凍のように伝熱を利用するもの や、マイクロ波加熱やジュール熱加熱のような発熱を 利用するものがある。伝熱タイプには流体を使用する 流水解凍があるが、環境問題や解凍品質の問題があ る。発熱タイプは解凍品の内部からの加温が可能であ り、解凍品質が高くなることが期待される。しかし、 氷を解凍する場合には電磁波加熱は解凍ムラが発生し やすい問題点がある。ジュール熱加熱(1・4)は、 調理ま で行えるため、近年、注目される解凍法の1つであ る。 ジュール熱加熱法の基本は解凍品の抵抗に流れる電 流による発熱を熱源とする。解凍品は工業製品のよう な均一な材質や形状とすることは困難である。従っ て、解凍品の部分に応じた電流密度の選択や、電極を 通して流入する電流密度を一定にするために電極と解 凍品の密着が必要とされる。 このため解凍調理への応 用では練り製品のようにほぼ材質や形状が一定な対象 物に限定されることが多い。この問題に対して、印加 電圧の制御や、解凍品との密着を確保するために電極 を複数に分割して、電流密度を制御する方法(5)が検討 (a) ジュール熱解凍 (b)電極の黍離 (c)放電電流の流入 図1放電ジュール加熱法

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されている。

2

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2

放 電 ジ ュ ー ル 熱 解 漉 法 本解凍法では不定形な魚に電極を接触した場合不均 一な過熱が生じるので、電極を対象から離し、高電圧 放電による荷電粒子流を電極の代わりに使用する。図 1(a)に示す電極と均一な解凍試料が密着していれば、 電流密度が均一になり一様な加温が期待できる。とこ ろが図 1(b)のように電極と解凍試料が離れると、 試

(3)

放電下の解凍プロセス Study of Thawing Processunder ElectricDischarge 加 藤 正 平 大 熊 庚 一 菊 地 謙 次 大 川 令 料と電極聞にアーク放電のような高電流密度が流れる 部位が発生し、 焼け焦げや解凍が不均一になることが 多い。そこで図l(c)のように電極を離し、電流として 電極の放電電流を解凍試料に印加する。放電電流は空 間電荷を形成するが、電、流が小さな場合、ほぼ静電界 の電気力線に沿って流れる。このため、図のように、 電流が集中することなく空間に広がり、対向電極に流 入する。解凍対象には、魚のように尖った部分がある のが一般的であり、電気力線の集中が発生し、発熱が 局所的になる。しかし、電流がアーク放電ほど大きく なく、材料内の熱伝導によって熱拡散が期待できる程 度の発熱量であれば、場所による温度変化を抑制する ことが可能になる。逆に、本方式では急速な加熱を行 うことはできず、そのような要求に対しては、ほかの 解凍法の採用や併用を考えなければならない。

3.

解涼実験

3. 1 放電ジュール熱解濠

解凍実験に使用した試料は紫烏賊の重量約

3

旬、

6

5

x

40x20mm

の直方体形状切り身である。以 下のすべての実験で同じ試料を使用した。ただし、 測定後は廃棄し、常に新しい冷凍試料を使用した。 試験環境は、人工環境試験装置を用意できなかった ため、室温

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で行い、スチロールの断 熱材の箱の中に電極を置いて、周囲からの風の影響 図

2

棒一平板電極系

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を受けないようにしている。 温度測定は、試料表面を放射温度計で行う。試料の 表面と内部では温度が異なることが考えられるが、高 電圧を使用することから、離れた位置で温度を測定で きる方法として放射温度計を使用した。ファイパ一方 式の温度計を使用すれば内部温度も測定できるであろ フ。 不定形な魚に電極を接触した場合不均一な過熱が生 じるので、放電のための棒電極を対象から離し、高電 圧放電による荷電粒子流を電極の代わりに使用する。 図2に使用した電極系を示す。大地に水平な直径

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の円板電極と、これに垂直な直径

5

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の 棒電極で試料と棒電極でギャップ長5

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の不平等電界 とする。平板電極上の厚さ

12mm

のポリスチロールで

-Okv

-13kv ---A--15kv

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ーすーlBkv

-21kv ー+--24kv ー2 -4 -6 -8 -10 一12 -14 -16 -18 -20 22 50 100 150 200 250 時間(分) (a)長時間特性 8 8 4 2 0 2 4 6 8 0 2 4 6 8 0 2 3 L 制 帽 -寸 寸 4 4 4 4 4

-Okv

-

-18kv 一会ー21kv ←守一24kv 20 40 60 80 100 時間(分) (b)初期特性 図3放電電極使用時の解凍特性

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(4)

-放電下の解凍プロセス Study ofThawing Process under Electric Discharge 加 藤 正 平 大 熊 庚一 菊 地 謙 次 大 川 令 電極からの熱伝導を防ぎ、その上に試料を置いた。さ らに棒電極のコロナ放電による荷電粒子が試料に集ま るように、棒電極の直下に試料を置いている。 印加電圧をパラメータにして試料の温度変化を図3 に示す。各測定は電極の同じ位置に試料を置き、初め に電圧を印加した測定をおこない、その後、別試料で 電圧を加えないで温度を測定した。電圧印加によっ て、約 5~8 度の温度上昇が生じている。棒電極から コロナ放電が発生しているが試料表面からの放電は認 められなかった。図3(a)は解凍後の室温に上昇するま でを示している -40Cから・ 20C間で温度上昇が緩やかに なるが氷から水に変化する融解熱のためである。図 3(b)は初期の変化を示し、放電の効果が表れている。 解凍目標温度として-40C(調理のため軟らかさが確保 できるといわれる温度)を考えれば、自然解凍では約 40分を要するに対して、 18kVを印加することで約 10分の時間で解凍できることがわかる。 図 4に、解凍開始から 30分後の温度と印加電圧 の関係を表す。約 15kV以下では電圧印加の効果は少 ないがこの電圧以上では温度が高く、すなわち解凍が 促進されることがわかる。これは 18kVでコロナ放電 が発生するためである。しかし20kV以上にしても温 度の上昇は限られる。 図 3の結果は初期に温度上昇が大きく、 40C付近 で緩やかな温度上昇になっている。これは固相から液 相に水が変化するため、融解熱を使うためであり、 OOC以上で温度上昇が再び大きくなるのは氷が水に変 4 4 官 ω ﹄ 叫 m w z m w h g 冨﹄ ω 内 野 田 ω L F 6 10 20 30 Applied voltage (kV) 図

4

温度と電圧の関係

Fig.4 Relation between temperature and voltage

3.0 2.5 Distance from the center axis

-

-0cm 一寸ト 2 一合-4 ー守一6 2.0 ( ω 、 、 E 1.5 ) 〉、 判

..Q 1.0 ω 〉 0.5

-5 0 10 15 20 25 30 35 40 Voltage(kV) 図

5

イオン風速と電圧の関係

Fig.5 Relation between ion wind velocity and voltage 化したためである。

3

.

2

イオン風

2

のような電極系ではイオン風が発生し、電極温 度の低下を生じることがよく知られている。このため 種々の機器やデ‘パイスの冷却への応用が試みられてい る。 この現象は電極の周囲媒体(大気や水など)によっ て電極の熱が、放電によって発生するイオン風によっ て熱交換が生じることから冷却される。周囲媒体の温 度が高ければ逆に電極の温度が上昇することが生じ る。 本報告の解凍では、解凍物の周囲大気の温度が高 く、この熱を解凍物に伝えることで解凍が促進される ことが考えられる。そこで平板電極上の風速分布を測 定した。測定には熱線式風速計を使用した。 図

5

に対称軸からの距離をパラメータにして、印加 電圧と風速の関係を示す。電圧が 15kV以上になる と風速が1m/s以上になる。電圧が高いほど風速は大 になる傾向がみられる。図 6に電圧をパラメータにし て、対称軸からの距離と風速の関係を示す。軸付近よ り周辺部で風速が大になっている。これは、棒電極の 対称軸付近の放電より端部の高電界部からの放電が優 勢なためである。棒電極ではなく針電極を使用する場 合には電極直下の空間の風速は増大するであろう。し

(5)

放電下の解凍プロセス

Study of Thawing Processunder Electric Discharge

加藤正平 大 熊 庚 一 菊池謙次 大 川 令 Applied voltage(kV)

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… -10 2.5 m E 2.0 〉、 令d g 1.5

〉 ~ 1.0 ま 0.5 0.0 一会一 15 ー守一 20 -+-25 ー- 30

-

-35

-

7

1 2 3 4 5 Distancefromthe center axix 図6 電極位置におけるイオン風速の変化

Fig.6 Relation between ion wind velocity and

たって、イオン風を効果的に解凍に利用するためには 電極と解凍物の位置関係を考慮する必要がある。 イオン風は交流、直流電圧で異なり(6)、また電極 の極性でも異なることから、解凍への影響も電圧の種 類に依存する可能性がある。 図

7

に放電電流による加温とイオン風の関係を示 す。イオン風がなければ荷電粒子による電流が解凍対 象内で、ジューノレ熱を生じる。イオン風が適度な速度で あれば(b)のように、環境の熱を伝え、加温すること ができる。しかし、風速が大きくなれば、解凍対象物 の表面からの蒸発や昇華が発生するため、温度低下を 招いてしまう。適切な放電量が必要となる。 高温物体の冷却や高速流体のエネルギー損失を抑制 するために荷電粒子の固相、気体の境界層の剥離の利 用があるが、本解凍法でもこの現象による熱伝導率の 向上を期待できるであろう。 放電電流が小さいため、消費電力は数ワットである が、環境からの熱の流入を大きくすることができれ ば、ヒートパイプのように省エネルギーで、自然解凍 より速く、高品質な解凍が実現できるであろう。

4.

まとめ

冷凍魚の解凍に高電圧印加ジュール熱を使用する方 法を検討した。魚類の形状に合わせた電極に替え、放 電によって発生する荷電粒子を解凍対象に加える方法 を検討した。電界を加えない場合に比して、数℃以上 の表面温度差を維持して解凍を行うことが可能な結果 が得られた。 参考文献 1) 2) 3) 4) 6)

-

1

8

-渋川、辰口 「小規模解凍におけるジュール加熱の利用」横 浜国立大学教育紀要 37,79-87,1997-11-28(1997) 小林:[ジュール熱加熱の食品への応用J,冷凍食品技術研 究, Vo1.97, NO.12 pp目1-9(2012年) 秋山:[ジュール加熱技術の食品利用への近況J,ジャパンフ ードサイエンス, Vo.147, NO.IO pp.26-30(2008) 加川、長縄、小松「ジュール加熱食品加工における温度推定 法J,計測自動制御学会東北支部第 266回研究集会 266-11 pp.I-6 (2011) 長縄、伊藤、秋山、山田:[ジュール加熱法における電極板 面積の影響について,J 日本食品化工学会誌, Vo1.9, NO.I pp.43-50(2008)) 足立、山下、中林、正回・ [5種類のイオン風の特性比較J, 山口大学工学部研究報告, Vo1.27, NO.Ipp.105-112 (1976) (a)イオン風がない場合 (b)イオン風による加温 (c) イ オ ン 風 に よ る 冷 却 図7 イ オ ン 風 の 効 果 Fig.7Effect of ion wind

参照

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