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アジアでも中産階級崩壊中?

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*本コラムは、東アジア総合研究所ホームページの「コラム」面に掲載されたもので、コラム内容は執筆者の個人的見解です。(編集部)

アジアでも中産階級崩壊中?

(2010年4月) ・・lumn 1

北陸大学東アジア総合研究所所長

叶 秋男

 最近韓国の〈中央日報〉紙は、同国の統計庁の資料を引き合いに出して、1997年アジア通貨危機以 降、韓国で「中産階級が崩壊中」と衝撃的な見出しでミドルクラスの減少ぶりを報じた(2010年3月19日 付け)。同紙によれば、韓国のミドルクラスは近6年間で3.4%減、過去16年間ではll.9%の減少を示し ており、通貨危機の影響によって事務職、経営・管理職で大きな落ち込みがあったという。  同紙はまた、中産階級崩壊現象は同国ばかりでなく、日本でも顕著な現象であり、そのペースは韓 国をはるかに上回るものであると指摘している。確かに、1990年代初頭のバブル崩壊後の日本では経 済の低迷とともに格差の広がりが進み、「一億総中流意識」はすっかり過去のものとなった。よく知ら れているように、この現象を大前研一氏は著書『ロウアー・ミドルの衝撃』(2006年)の中で「M字型社 会」への移行として分析した。  こうした現象は、一般的には、アメリカを先頭とする先進国の成長鈍化の中で起こる趨勢であり、 その意味では、成長著しい国・地域には逆の傾向があると理解されている。それゆえ、高度成長期に ある中国ではミドルクラスが増加中とみられている。果たして中央日報は、中国社会学者の見解を紹 介し、中国でも中間階級が労働人口の12.1%、都市では254%を占めるまでになっていると増加傾向 を伝えている。  しかしながら、当の中国では今年に入って〈中国新聞周刊〉誌が「『消滅する』中産階層」の見出しで特 集記事を載せ、現在のミドルクラスの80%が低落危機にあると報じている。なぜそんな事態になって いるかというと、国内外からの不動産投機が原因で住宅価格が高騰し、ミドルクラスに相応しい住宅 の取得が困難になっていることが大きな理由だという。確かに、昨年の中国での不動産投資額は世界 の不動産投資総額の42%を占めるまでになっており、そのため北京や上海などでは都心部周辺でも1 ㎡当たり2万元を優に超えている。これでは住宅面積が100㎡を超えるのが当たり前のミドルクラスは 年収の何十倍もの物件を購入しなければならない。果たして前掲誌は、安全圏とされる住宅ローンの 支出が家計収入の3割を超える家庭が6割以上に上り、約2割の家庭では5割を超えている実態を紹介し ている。多くのミドルクラスは今後も不動産価格が上昇を続けると踏んでローンを組んでの購入に踏 み切っているが、景気の悪化や不動産部門への異常な投機が引いたならどうなるかは言うまでもない。 今後中国でミドルクラスが増加しないということはないだろうが、いずれにしろ、現代社会では「階 級」は社会的な役割による分類で、身分的保証はなく、時の経済状況に左右されながら、その構成員 自体は流動化する。資本のグローバルな自由化がそれを一層加速させており、中国もその例に漏れな いようだ。こうした社会では、その運動に適合し、差別的優位性を持つ者のみが上位または中位に止 まれる。このため社会が豊かになればなるほど皮肉にも流動性は高まり、両極化法則が働く。当然社 会全体が利害対立に敏感になり、社会的安定性も失われかねない。こうした現象が経済の発展段階に 関係なく起こっているところにグローバル時代の特徴がありそうだ。

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