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第9章 近江の企業と産業の現状

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Academic year: 2021

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づ ? ? 第

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章 ?

近江の企業と産業の現状

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滋賀県工業の現状

(1) 工業配置分析の方法と課題 第1主主で指摘されているように,工業従業者l人当たりの工 業付加価値額に おいて滋賀県は全国第

l

位を記録するまでになっている。滋賀県の人口は

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万 人で全国のわずか

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.

98%

にすぎないものの,工業付加価値額では全国の

2.18%

を占めている。滋賀県の隣に位置する京都府の人口は, 滋賀県の2倍以上に当 たる

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万人であるが,工業付加価値額では,全国の

2.08%

であり, 滋賀県の水 準を下回る。 阪神,中京工業地帯の中間地帯,関西,東海,北陸地方を結ぶ交通の結節点, そして日本のほぽ中央に位置する滋賀県は,その立地条件の有利性を活かして

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年代以降急速に工業集積度を高めてきた。経済成長の初期段階における臨海 コンビナートを核にした工業化とは異なる,内陸型工業の地域集積という意味 においても現代的関心を集めている代表的地域である。 世界史上もっとも急速な工業化を経験した日本の工業化を上回る速度で工業 集積を進めてきた滋賀県においては,中小企業においても激しい自己変革を要 求されたのであり,中小企業の研究対象地域としてもきわめて興味深い地域で あることはあらためていうまでもない。 本研究会が滋賀県の中小企業を対象に実施したアンケート調査に回答をいた だいた企業をみても,製造業企業が

6

7

.2%

を占めている。滋賀県中小企業の研

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究においては,まず第一に製造業企業を取り上げる必要性があることを示して いる。 ただ,回答を得た製造業企業の常用従業者数の単純平均値は, 91.74人と比 較的規模が大きい。中小 企業と一口にいっても, 従業員数4人未満の零細企業 と従業員 が1

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人を超える中堅企業とでは,企業の性格が著しく異なるため,平 均値を使用して議論することの意義は乏しい。企業規模を細分化したデータを もとに分析していく必要があるが,サンプル企業が

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企業と限られているため, 細分化されたデータから得られた結論を一般化することにも限界がある。 また,滋賀県の急速な工業化と中小企業の構造改革との関連という歴史的視 点をとるとすれば,過去のデータとの比較が重要になる。そこでここでは, 通 産省の工業統計表,工場立地動向調査を用いて,滋賀県工業の全国的地位の歴 史的変遷,滋賀県工業の特色を明らかにし,そのうえで工場の従業員規模別テ ータを参考にしてアンケート調査の分析を進めていくこととしたい。 分析を進めるにあたって,工業事業所を調査対象にした工業統 計表の意義と 限界1)について明らかにしておかねばならない。 まず,工業統計表でいう事 業所とは,

I

工場, 製作所,製造所あるいは加工所 などと呼ばれているような,一区画を占めて主として製造又は加工.を行ってい るもの2)

J

を指している。製造業企業には,工場(あるいは製作所,製造所,加工 所)以外に,工場とは別の地点に事務所(本社,支j苫,営業所)や倉庫,物流セ ンター,研究所を有している場合が多いが,工業統計表ではいわゆる工場以外 の事業所は含まれていない。企業規模が大きくなるほど,工場と事務部門の地 理的分離が進んでおり, 一工場しかもっていない中小企業の場合は,事務部門 と製造部門が一体になっている場合が多い。 事務・研究部門と製造部門の地理 的分離があま り進んでいなかった

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年代は, 本社工場という形で両者一体とな っている企 業が多かったのであるが,近年,本社,研究所,工場はそれぞれ最 適立地を求めて,地理的に離れて配置されるようになっている。 工業統計表の事業所には工場のみの事業所と本社工場のような形で管理部門 を含んだ事 業所とが混在していることになる。とくに,歴史的に分析を進める

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第日章 近江の企業と産業の現状 127 場合,管理部門を含んでいる工場が比較的多かった段階から,管理部門は工場 と地理的に切り離されるネットワーク型組織配置への変化が背後にあることを 常に念頭に置いておくことが重要で、ある。 また,仮に従業員規模で 100人の企業があったとしても,地理的に離れた従業 員20人の工場を 5つ所有している場合もあれば,従業員 100人の工場を 1つ所有 している場合もある。滋賀県の中小企業といっても,滋賀県以外にも工場を立 地している場合も考えられる。工業統計表の事業所は,あくまでも製造活働を 行っている事業所ーを対象としたものであり,企業単位ではないこと,工場であ ったとしても,滋賀県以外の地域への企業組織の広がりを捉えることもできな いということに留意しておく必要がある。工業生産の指標として使用されるこ との多い工業出荷額,工業付加価値額にも指標特有のクセがあるのだが,この 点については,実際の統計値を紹介する過程で指摘していきたい。 (2) 滋賀県工業の推移 滋賀県の工業集積度が絶対的にも,あるいは全国との比較でみた相対的にも 表 9-1 滋賀県工業の推移 1960 1970 1980 1990 工場数 1,534 3,874 4,503 4,641 シェア(%) 0.38 0.95 l. 04 l. 06 工業従業者数 64.597 126.820 134,540 163.822 シェア(%) 0.85 l.14 l. 31 l. 47 J}t金給与総額 12,364 87,661 337,886 665,371 シェア(%) 0.73 l. 03 l. 29 l. 56 工業出荷額 106,453 667,110 2,917,504 6,000,379 シェア(%) 0.70 0.97 l. 38 l. 86 工業付加価値額 36,371 239.162 1.047.425 2.537.286 シェア(%) 0.75 0.99 l. 50 2.13 (通産省 『工業統計表J) (注) 現金給与総額,工業出荷額,工業付加価値観の単位は百万円。 従業貝4人以上の事業所を対象。シェアは対全国比。

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急速に上昇したのは, 1960年代のことである。 1960年に滋賀県で操業していた 工場数にこでは工業統計表の事業所を工場と呼ぶことにする)は,従業員

4

人以 上の工場でいえば, 1,534工場であり,全国の工場総数の0.38%にすぎなかっ た。それが1970年には, 3,847工場へと 1960年と比べて 2,313工場増加し,対全 国比でも0.95%まで上昇した。 1970年から 1980年にかけての増加数は 656工場, 1980年から 1990年においてはわずか 138工場の増加であった。 しかしながら, 1980年代の特徴は,工場数の増加ではなく,工業従業者,工 業出荷額,工業付加価値額の対全国比シェアの上昇である。すでにみてきたよ うに, 80年代は 138工場しか増加していない。しかし,工業従業者では29,282人 の増加である。工場立地動向についてはあとで述べるが, 80年代の特色は,工 場増加数は少ないものの,大規模工場の立地や工場の積極的規模拡大が行われ たことにあるといえよう。 工業従業者1人当たりの現金給与総額が全国平均を超えるのも,やはり 80年 代に入ってからのことである。 1980年時点では,工業従業者の対全国比の方が 現金給与総額のシェアよりも高いが, 1990年には逆転している。このことは, うえで指摘した既存工場の規模拡大,大規模工場の進出と深く関わっていると 思われる。 工業出荷額,工業付加価値額の対全国比も80年代に急上昇している。これも, 工場規模の拡大,大規模工場の立地と関連しているはずで、あるが,工業従業者 シェア以上に工業出荷額シェアが上昇している一因として,滋賀県において最 終組み立て工場が増加していることをあげることができょう。 工業出荷額は,原材料費を控除した工業付加価値額と異なり,前工程の工業 出荷額としてすでに一度記録された原材料費を含んでいる。いわば二重計算さ れた指標である。したがって,部品生産工程よりも最終組み立て工程に近づく ほど,工業出荷額は高く現れることになる。滋賀県の工業出荷額シェア上昇に も,ここで説明したような部品生産工程から最終組み立て工程へという構造変 化が影響を与えていると考えられる。 工 業付加価値額のシェア上昇速度は,工業従業者シェア,工業出荷額シェア

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第日章 近江の企業と産業の現状 129 の上昇速度よりも速い。滋賀県の工業従業者1人当たりの工業付加価値額は全 国

1

イ立になっているのである。 工 業従業者1人当たり工 業付加価値額の水準の高きは, 一般にいわれている ように,付加価値の高い高度な生産工程が集積している証拠でもある。ただ, 滋賀県の場合,統計上滋賀県の工場で生みだされとして処理されている工業付 加価値の内,滋賀県外に立地している本社,支届,研究所に転送される比率が 高いことに特徴がある。東京,大阪に本社を置く大企業の大規模工場が立地し ているため,名目上の工業付加価値は高いのであるが,工業付加価値額のなか で滋賀県に配分される割合は,かなり低い。 工業付加価値額には,工業従業者に支払われる現金給与のほかに,本社,研 究所で働く職員の給与,本社オフィスの賃貸料,金融機関への利払い,株主へ の配当金,そして利益を含んでいる。工場のある地域に確実に落ちる工業付加 価値部分は,工場で働く工業従業者に支払われた現金給与総額である。 全国平均でいえば,工業付加価値額に占める現金給与総額の比率は, 1990年 で35.8%である。これに対して,滋賀県の場合, 26.2%にとどまっている。工 業付加価値額で滋賀県を下回っている京都府では,この比率はほぼ全国平均並 の35.9%である。現金給与総額の対全国比でも,京都府は2.09%と滋賀県のl.56 %を逆に上回っている。 これまでみてきたように,滋賀県に立地した大企業の大規模工場は,高付加 値の最終製品を生産している工場が多いのであるが,地域経済に直接与える影 響は意外に小さい。 (3) 工 場 立 地 動向 80年代に入り工場増加数が著しく減少していることについてはすでに指摘し た。ただ,工場数の増減は,純新規工場立地件数と純工場閉鎖件数との関係に よって決まるのであり,工場増加数の減少は必ずしも新規立地件数の減少によ るものとはいえない。そこで,滋賀県における工場立地動向を見てみたい。 ここでいう純新規工場立地件数とは,工場の移転による再立地を除いた新規

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工場立地である。単に工場を移転させただけでは,工場数は変化しないからで ある。純工場閉鎖件数とは,工場移転のために閉鎖された工場数を除外した数 値である。滋賀県といっ地域レベルで考える場合,滋賀県外への工場移転は, 工場閉鎖と同じ意味を持つ。同様に,滋賀県外の工場が滋賀県に移転してきた 場合, 日本全体の工場数は変化しないが,滋賀県の工場数は増加することにな る。 工場立地については,通産省立地公害局が毎年工場立地動向調査を実施して いる。工場立地動向調査の対象になるのは,製造業,電気供給業(水力発電所, 地熱発電所を除く)のために工場または事業場を建設する目的をもって取得され たl,OOOm'以上の用地で、ある。そのため,まず第1に, l,OOOm'未満の中小工 場 の立地動向を把握できないという問題がある。第

2

に,工場移転による再立地 のための用地取得や工場増設のための用地取得なども含まれている。このよう な用地取得は,すでに述べたように,工場数の増加には必ずしも結びつかない ものである。工場増設のための用地取得は,年によって変動はあるが,約2割 程度ある。 工場用地を取得することと工場建設の聞には,タイム・ラグが存在する。工 場完成と工場稼働,フル操業までの聞にもまたタイム・ラグが存在する。工場 用地取得が工場建設に結び、つかないこともありうる。工場建設時期の延期,土 地利用の変更(例えば,倉庫や,資材置場,駐車場など),さらには,取得した用 地をそのまま転売することもあろう。工場用地取得と現実の工場立地の聞には 若干の相違があることを念頭に置いたうえで,滋賀県における工場立地の動向 を表9-2で確認しておきたい。 工場用地取得数は

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年代に入って大きく減少しているわけではない。にも かかわらず,増加した工場数が大きく減少しているということは,閉鎖される 工場数も増加していることを示している。滋賀県の場合,

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年と

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年を比 較すると,従業員 1~ 3人, 4 ~ 9人といった零細工場の減少率が全国平均よ りも高くなっている。工業集積が高まりつつあるなかで, 零細な中小企業の存 立基盤は反対に厳しくなっていることがわかる。従業員1~ 3人の工場数は,

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第9章 近 江 の 企 業 と 産 業 の 現 状 131 表9-2 滋賀県における工場立地の動向 (通産省 『工業立地動向調査J) 1980年の3,649から1990年の3,221工場へと 428工場減少している。全国の減少率 は,その間4.1%であるが,滋賀県の場合,11.7%に達している。 それに対して,従業員10人以上の工場は増加しているo とくに従業員300人以 上の工場は, 53工場から 79工場へと約1.5倍に増加し,全国の増加l率を大きく上 回っている。 工場立地シェアは1987年から1991年にかけて1.28%にまで低下した。阪神, 中京工業地帯の中間地帯として,これまで順調に工場集積が進んできた滋賀県 も地価の高騰,工場労働力不足の影響を受けて,工場立地にやや陰りが見え始 めているように思われる。 l人当たり県民所得でみると,滋賀県は1989年で東京都,大阪府,神奈川県, 愛知県に次ぐ第5位を占めている。しかしながら,対前年度伸び率からみると, 47都道府県中, 富山県, 山形県とならんで第42位にまで低下している。このま まのペースが続けば, 1990年代前半には第6位の静岡県,第7位の埼玉県,第 8位の千葉県,第9位の栃木県に抜かれ第10位程度までに後退する可能性もあ りうる。大企業の大規模工場立地に依存した 1人当たり県民所得の上昇は,限 界に達しつつあるように思われる。これからは外来型工場誘致ではなく,滋賀 県の中小,中堅企業の育成,技術力強化という地道な地域産業政策が求められ ることになろう。

2

滋賀県中小工業の特質

最後に滋賀県の工場規模別分布の特徴を1990年の工業統計表をもとに明らか

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にしておきたい。表9-3は,滋賀県工業の特徴をよく示している。第1に,従 業員 300人以上の工場の占める割合が高いという点である。ちなみに全国値は, 工場数で0.53%,工業従業者数で26.1%,現金給与総額で37.2%,工業出荷額 で47.7%,工業付加価値額で 43.7%である。滋賀県は 5指標とも全国値を上回 っている。 表9-3 工場規模別分布 1 - 3人 4 -29人 30-99人 100-299人 300人以上 工場数 3,221 3,753 573 236 79 シェア(%) 41.0 47.4 7.3 3.0 1.0 工業従業者数 6,454 38,791 31,414 36,909 56,708 シェア(%) 3.8 22.8 18.5 21.7 33.3 現金給与総額 4,288 105,086 112,077 145,226 291,033 シェア(%) 0.6 15.7 16.7 23.5 43.5 工業出荷額 33,179 592,311 846,867 1,455,607 3,105,593 シェア(%) 0.6 9.8 14.0 24.1 51.5 工業付加価値額 18,546 260,526 352,315 568,556 1,355,888 シェア(%) 0.7 10.2 13.8 22.31 53.1 」 一一 (通産省 『工業統計表J) (注) 現金給与総額,工業出荷級,工業付加価値額の単位は100万円。従業只1-3人の工 場の数値は推計値。シェアは対全国比ではなく,滋賀県内におけるシェアである。 第 2に,従業員 l人から 29人規模の工場と従業員 30人以上の工場との賃金格 差が大きい点である。滋賀県全体では,工業従業者l人当たりの現金給与総 額 は,全国平均を上回っている。全国平均を 100とした場合,滋賀県は 107の水準 となる。 これを規模別にみていくと,従業員 30-99人, 100-299人の工場は,それぞ れの規模別の全国平均を超えているが, 1 - 3人, 4 -29人規模の工場は,同 規模の全国平均を下回っている。 興味深い点は, 従業員 300人以上の工場の賃金水準もわずかではあるが,同規 模の全国平均に届いていないということである。これにはいくつかの理由が考 えられる。まず,滋賀県で操業している従業員 300人以上の工場の平均従業者数 は718人と,全国平均の 802人よりもやや少ないことがあげられる。

(9)

第 日 章 近江の企業と産業の現状 133 つぎに,滋賀県に立地した大規模工場は京浜,中京,阪神地区の大規模工場 よりも歴史が浅く,工業従業者の平均年齢が低いと考えられる。工場の規模と 工業従業者の年齢を調整すれば,全国平均をやや上回る賃金水準になるはずで、 ある。 賃金水準の動向からみる限り,滋賀県に立地した大企業の大規模工場が中小 工場に及ぽした影響は,従業員30人未満の小工場(とくに従業員 9人以下の零細工 場)と従 業員30人から 99人の中規模工場とでは異なるように思われる。大企業の 大規模な技術先端型工場の進出を契機として,進出企業に精度の高い部品を供 給できるよう技術水準を高めたり,新しい分野に進出し,積極的に多角化を推 し進めることのできた中小企業とその流れに乗りきれなかった零細企業との聞 で格差が生じたものと考えられる。 滋賀県に立地した大規模工場の悩みの lつは,滋賀県内で部品を調達するこ とができないことにある。急速な工業化の過程で中小企業の対応がやや遅れぎ みになっていることは,否めない事実である。滋賀県の立地条件の良きは,逆 にいえは、,中京,阪神工業地帯はもとより,京浜地区や北陸から部品を調達す ることの容易さにもつながっている。このことが,九州、│や東北で行われている ような大企業主導で地場産業を下請け企業化する動きを妨げている原因になっ ている。 すでに論じたように,滋賀県における大企業の大規模工場立地はピークを迎 えた観がある。滋賀県の経済水準の維持にあたっては,従業員30人未満の中小 企業の合理化・近代化あるいは業種転換をどのように進めていくのかというこ とが重要になるであろう。滋賀県の中小企業が滋賀県の立地条件の良さに負け てしまうのか,それとも滋賀県の立地条件の良さを積極的に活用していくのか, そのどちらに向かうかは,行政の支援策と同時に,滋賀県の中小企業の企業家 精神いかんにかかっているといっても過言ではない。 九州や東北地方でみられるょっな大企業王導による下請け企業への再編成が あまり行われていないといつこと,京阪神や名古屋都市圏に近いため,九州、

l

や 東北の中小企業のように賃金水準を低く押さえることができないこと,そして,

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近くに技術力の高い阪神,中京,京浜地区の中小企業群が存在しているという ことは,滋賀県の中小企業にとって厳しい環境条件である。だが,逆にいえば, 地理的有利性を活かして,大企業の下請 け と し て で は な し 滋 賀 県 内 は も とよ り京阪神,中京,京浜,北陸地方の企業との技術提携,取り引きネットワーク を構築することで,技術力が高くかっ独立性の強い中堅企業への発展も十分可 能だということでもある。

3

アンケート調査の分析

調査結果から何点か取り上げると,滋賀県外に工場を所有する企業が

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企業 中29企業もある。溢賀県の中堅企業は複数工場を所有し, しかも県外に工場を 配置するようになっている。 販売先では,県内が47.7%ともっとも高いのは当然として,京阪神地区の27.7 %に次いで関東地方が14.6%と多いのが特徴である。滋賀県は関西地方のなか で関東地方にもっとも近い地区である。また,成長している中小企業はやはり, 滋賀県内にとどまらず, 三大都市圏の多様な企業と取り引きを行っていること を示唆しているといえよう。 それを反映してか,東京への営業所・支庖の新設,本社機能の一部移転を考 えている (8.7%),今は考えていないが将来は検討課題となる(16.5%) と答え た企業が多い。滋賀県の中小企業政策も工場の合理化,近代化だけに焦点を絞 るのではなく,研究所や本社機能の定着についても政策課題とすべき段階にき ているのである。研究開発については,まず国立大学の理工系大学または学部 の新設が大前提となるであろうし,オフィス環境については,県庁移転を含め て大胆な都市再開発が必要となるであろう3)。 工場の立地決定に際してもっとも重要視される立地要因は,労働力の確保 (36.9%),交通の利便性 (35.9%) が圧倒的に多く,以下地価 (8.7%),取り引 き先企業との近接性 (8.7%),関連業種の集積 (6.8%) となっている。労働力の 確保は,京阪神地区への通勤の利便性が高ま り,労働者のサービス産業指向が

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第日章 近江の企業と産業の現状 135 強まることによ って,中小企 業, 特に 賃 金 水 準 の 低 い 従 業員30人未満の工場に と っ て は 今 後 ま す ま す 厳 し い も の と なろっ。繰 り 返 し 指 摘 し て き た よ う に,滋 賀 県 の 小 規 模 工 場 の 賃 金 水 準 は , 全 国 平 均 よ り も 低 い。小 規 模 工場 の 技術 力 向 上,機械化・ 自動 化 だ けでなく ,滋 賀 県 で 最 近 人 口 が 急 増 し ている新興住宅地 近 郊 へ サ テ ラ イ ト 型 工 場 を 配 置 し , 京 阪 神 地 区 ま で 通 勤 す る こ と の 困 難 な 主 婦 層 や 高 齢 者 の 活 用 を 図 ら な け れ ば な ら な い。これは単なる中小 企業 政 策 で は な く,福祉政策や地 域 政策 の 意味ももっている4)。 住 宅 の み を 配 置し 都心のオフ ィ ス に 通 勤 す る こ と を 前 提 と し た ベ ッ ト タ ウ ン で は な く , 住 宅 の 近 く に 多 様 な 職 場 を 配 置 し た 新 し い ニュータウンが求められているのであるo そして,ニュ ー タ ウ ン 周 辺 に 技術 力の 高 い 多 様 な中 小企 業 群 が 立地することによって,優 秀 な人材に多様な職 場を提供することができるのである。 (注) 1) 山iII奇朗 『ネッ トワーク型配置と分散政策j大明堂,1992年,第2掌。 2) 通商産業大臣官房調査統計音1¥

r

平成 2年工業統計速報

J

通商産業調査会, 1991年 5頁。 3) 阿部和俊・山崎朗 f日本の地域付i造と地域政策jユニテ出版, 1993年の第 3 章。 4) 安東誠一『地域経済改革の視点1.1"コ央経済社, 1991年を参照。

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