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安定性の高い経路を構築する車車間ルーティングプロトコルGVGridの性能評価

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Academic year: 2021

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(1)社団法人 情報処理学会 研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 2005−MBL−35(16) 2005−ITS −23(16)   2005/11/17. 安定性の高い経路を構築する車車間ルーティングプロトコル GVGrid の性能評価 孫 為華 山口 弘純 楠本 真二 大阪大学 大学院情報科学研究科 コンピュータサイエンス専攻. 我々の研究グループでは,車車間通信を利用した位置情報ルーティングプロトコル GVGrid を提案している.GVGrid は移動しない送信ノードからある地理領域に存在する車両群へのデータ送信を行うための経路を構築する.電子 地図情報を用い,なるべく車両流に沿った経路を構築することで,ノード移動による切断の可能性を低減させる. また,経路上の各ノードは,発見した経路の地理的形状を記憶することで,経路が切断した場合もその経路に近い 形状の経路を少ないメッセージ数で再構築する.本稿では GVGrid の詳細設計を行うとともに,既存手法 GPCR と比較した性能評価を行った結果の考察を行う.. GVGrid: A Geographic Routing Protocol for Constructing Stable Route using Inter-Vehicle Communication Weihua Sun   Hirozumi Yamaguchi   Shinji Kusumoto Graduate School of Information Science and Technology of Osaka University We have proposed a position-based routing protocol called GVGrid on mobile ad hoc networks constructed among vehicles with short range commucation devices. GVGrid constructs a unicast route on-demand, which is used to transmit data continuously from a sender to vehicles that exist in a specified region. When the route is broken by movement of vehicles, GVGrid tries to fix the route using the location information of the original route. By simulation experiments, we have compared the performance of GVGrid with an existing position-based routing called GPCR to see the efficiency of GVGrid.. 1. まえがき. 近年,高度交通システムの普及を目指し,DSRC や VICS な どの狭域通信器が徐々に路側や店舗などに設置されつつある.し かし,これらインフラの完全な整備と展開には膨大なコストと 年月がかかる.さらに,技術の進歩や革新に対し,維持整備の観 点から機器の更新は安易にできないといった問題点もある.こ れに対し,固定インフラを用いない車車間マルチホップ通信技 術を利用し,固定インフラが発する情報の配信範囲を拡大する 補完的な役割を持たせたり,また極めて局所的な情報伝達に用 いたりすることが考えられている. 我々は,車車間マルチホップ通信により,例えば DSRC 路 側機のような近距離無線基地局や,あるいは事故現場などに停 止した緊急車両から,指定された地理領域内に存在する車両群 へデータを送信するための経路をオンデマンドで構築すること により,そのような基地局がカバーしない任意の地点に対して 最新の駐車場情報,交通誘導情報,事故情報,店舗情報など局 所的かつリアルタイムな情報を送信するアプリケーションを実 現するためのプロトコル GVGrid を提案している [4].GVGrid は,各車両がカーナビなどの電子地図を利用して道路形状を識 別し,道路に沿って同一方向に移動する車両群からなる経路を 構築することで,経路の耐切断性を向上させ,少ない経路維持 コストでの通信を目指したモバイルアドホックネットワーク上. の位置情報ルーティングプロトコルである.さらに,それによ り得られた経路の地理的形状を記憶し,経路切断時には記憶し た経路になるべく近い経路を少ない経路再探索メッセージで発 見する.GVGrid のアプリケーション例として,事故情報を現 場に流入する道路上の車両に配信して迂回を促す,付近の交差 点で信号待ちをしている車両に広告を配信する,などが考えら れる (図 1). 本稿では,GVGrid の詳細設計について述べる.特に,文献 [5] で提案されているブラックバースト方式を改良して利用し, ノード密度が高い市街地における Hello メッセージ交換にかか るオーバヘッドを削減するようにしている.また,深さ優先探 索を行うことで知られる位置情報ルーティング GPSR [1] の車 両版である GPCR [2] をシミュレータ上に実装し,大阪府吹田 市の市街地マップ (図 11) を用いたシミュレーションによる比較 実験を行った.その結果,GVGrid において構築された経路が より安定していること,また経路再探索にかかるメッセージ数 が極めて少ないことを示した.. 2. 関連研究. マルチホップ車車間通信による情報伝達やコミュニケーショ ンを扱った研究はこれまでに多く存在する.. −113−.

(2) ゲーションシステムの装備率増加を受け,電子地図の参照が可 能であるという仮定のもとで,指定領域内の道路に沿い,かつ 車両がなるべく同一方向に移動していると想定される経路を幅 優先探索で探索することで,高い耐切断性を持つ経路を発見す る.また,それにより発見した初期経路が十分な耐切断性を持 ち合わせているとの仮定のもとで,経路切断時にはその初期経 路に近い経路のみを再探索することで経路探索メッセージ数を 大幅に削減する.その意味で GVGrid は,車両の移動特性や, 経路の特性を用いてメッセージ数を減らす工夫をするなどの独 自性を維持しながら比較的シンプルなプロトコルで要求機能を 実現している.. 図 1: 事故現場への流入地点となる交差点付近へ事故情報 を送信する例. 3. ブロードキャストベースの情報散布プロトコルとして,文献 [7][8][3] などが提案されている.なかでも,UMB[7] は各車両 が道路に沿ってなるべく遠方にある車両にメッセージを送信し, 経路のホップ数の減少を図るプロトコルである.UMB では道路 の各交差点にあらかじめリピータが設置してあると仮定してい るため,実用性に乏しいといった欠点がある.RBM [8] はノー ド密度の低い高速道路での情報伝達を目的として,メッセージ を受信したノードは通信範囲に他ノードが入ってくるまで送信 を待機するプロトコルである.また,MDDV プロトコル [3] は 電子地図と GPS 情報を利用して,予め設計された経路を構築 し,継続的に情報を送信する手法である.この手法は事前に経 路を設計するため,経路の安定性などの点で優れている.しか し,交通量変化の大きい地域では,環境変化への適応性に乏し い面がある.. GVGrid では,地理領域はあらかじめ正方形の領域群(グリッ ド)に分割されているとし,各グリッドは一意な ID を持ってい るとする.各車両(以降はノードと呼ぶ)は近距離無線デバイ ス(IEEE802.11 など)を装備し,一意な ID を持っているとす る.また,各ノードは GPS 経由で自身の位置情報を取得できる とし,全車両の無線範囲は同じであるとする. GVGrid は移動しない発信源(以下 SRC ノードとよぶ)か ら,指定領域(以下 DEST 領域)内を通過する車両へのユニ キャスト通信経路をオンデマンドに構築し,維持する位置情報 ルーティングプロトコルである.GVGrid は以下の特長を持つ. 1. 同じ道路を走行する車両は比較的近い速度で移動するため, 相対的な距離関係はそれほど大きく変化しないと考えられ る.この特性を考慮し,なるべくリンク切断の少ない経路 を発見するため,GVGrid は互いに接続された道路上の車 両から構成される経路を経路候補として探索する.. ブロードキャスト型のプロトコルに対し,エンド間で経路を 構築するルーティングプロトコルも幾つか提案されている.こ れらは基本的に経路探索メッセージを用いたオンデマンド経路 発見手法を用いており,経路発見や維持にかかるメッセージオー バヘッドの減少などが重要な課題である. グリッドを用いて経路探索メッセージ数を低減させる位置情 報ルーティングプロトコルとして CarNet [9] が提案されてい る.しかし,CarNet は高速にランダムな移動をするノードを 対象としており,車両の移動特性や道路の地理特性などについ ては考慮していない.GPCR [2] は,各ノードが基本的には無 線範囲内にある最も宛先領域に近いノードをグリーディに選択 することで経路を構築し,かつ障害物を迂回した経路も発見可 能な位置情報ルーティング GPSR[1] を車車間通信に応用した プロトコルである.GPCR は,路側の建築物などを電波の障壁 と考え,電波の届く範囲で最も宛先領域に近い車両を経路探索 メッセージとして選択し,交差点のない道路では道路に沿って 経路を構築する.交差点では無線範囲内の車両の密度分布を用 いて交差点を識別し,最も宛先領域に近い車両に経路探索メッ セージを転送する.しかし,GPCR では現実に建造物間の隙間 や,電波の障壁がないような地域において,複数の道路を跨る 経路を構成する可能性がある.また,深さ優先で探索を行うた め,道路の形状により,ノード間の距離が非常に長くなる可能 性もある.このため,GPCR で構築した経路は車両の移動によ るリンク断の影響を受けやすいと想定され,経路の維持にかか るオーバヘッドが大きいと想定される. 我々の提案する GVGrid では,近年の車両におけるカーナビ. GVGrid プロトコル. 2. 1. の探索により得られた候補からあるメトリックに基づ き決定された経路(これを初期経路とよぶ)は,比較的広 範囲を探索して得られる経路であるため,そのメトリック において比較的高品質な経路であると考えられる.この考 えに基づき,初期経路発見時にその経路上の各ノードは初 期経路の地理的形状をグリッド列番号により記憶しておき, 経路が切断した場合はそのグリッド列上で代替ノードを発 見する.これにより初期経路と同様の地理的形状を備えた 経路を再構築する. GVGrid は,車両密度の高い都市部に適している.車両密度 の高い都市部でフラッディング手法を使うと,各ノードが一斉 にブロードキャストし,ブロードキャストストーム現象が起こ り,通信効率が極端に低下することは文献 [10] などですでに指 摘されている.我々はこの問題を想定し,経路の構築と維持の プロセスでメッセージ数を削減するとともに,品質のよい経路 を構築することを目的とする.. 3.1. 地図情報とグリッドの設定. GVGrid では,各ノードは道路情報を共有しているものとす る.ここでの道路情報とは一意な ID 付きの道路を辺とした無 向グラフである. また,GVGrid は地理領域を複数の矩形領域(グリッド)に 分割する.分割の仕方は下記の通りである.. −114−.

(3) n6 d. n7. w. n15 n3. n8 n13 図 2: 無線距離 d とグリッドサイズ w の関係. あるグリッドに隣接する周囲 8 グリッドをそのグリッドの隣 接グリッドと呼ぶ.グリッドにある各ノードが隣接グリッド内 のノードと通信できるように,グリッドサイズ w と無線範囲 d √ の関係を w = 2d/4 と定義する(図 2).経緯度(0,0)始点 として,各グリッドの ID をその左下頂点の経度緯度のグリッ ドサイズに対する倍数で定義する.NMEA 基準の GPS 情報は aaabb.cccccc のフォーマットとなる.aaa は度(0∼180),bb は分(0∼60),cccccc は分の小数表現(精度は 10−6 まで)を 表す.グリッドサイズ w が各ノードにおいて既知の場合,経度 x 緯度 y に位置するノード v の存在するグリッド ID G(v) を下 記のように定義することで,各ノードは共通のグリッド領域を 持つことができる.ここで,1855.3285 は GRS80 系赤道長の 1 分ごとの長さを表す.. Gx (v) = (x - (x div 100 * 40)) * 1855.3285 div w Gy (v) = (y - (y div 100 * 40)) * 1855.3285 div w G(v) = Gx (v) * 106 + Gy (v). プロトコル記述. GVGrid は経路構築プロセスと経路維持プロセスからなる. 経路構築プロセスでは,LAR[6] のメッセージ削減手法に基づ き,メッセージを転送する際,SRC と DEST を含む転送領域 を予め設定し,この領域内のみでメッセージを転送する.. ブラックバースト. 既存手法の多くはビーコン(Hello Message)を定期的に交 換することで,周辺ノードのリストを生成し,経路探索メッセー ジの転送ノードを選定するが,市街地など狭い地域に大量の車 両が存在している環境における頻繁なビーコン交換は,深刻な パケット衝突問題を引き起こす.しかし,ビーコンの交換頻度 を下げれば,ノードの把握した隣接ノード情報(位置情報)の 誤差が大きくなり,プロトコルの精度を下げる可能性がある. そこで,都市部などノード密度が高い状況での利用を前提と している GVGrid は,文献 [5] で提案されているブラックバー スト手法と呼ばれる方式を改良して用い,経路構築プロセスに おいて最適な転送ノードをオンデマンドに選定する方法を採用 する.ブラックバーストは,位置情報ルーティングにおいて,無 線範囲内の送信ノードのうち,最も自身との距離が長いノード. SRC. n5. n4 n10. n12. n11. 図 3: 経路探索の例. を識別するために用いられる.送信ノードは自身の位置情報を 含めたブラックバースト要求パケットをブロードキャストし,こ れを受信した隣接ノードは,自身と送信ノードの距離を計算し, 最大通信距離に比例する時間長の雑音を発信する.たとえば,最 大通信距離が 200m で,ブラックバースト要求パケットを受信 したノード A とノード B があり,それぞれ送信ノードとの距 離が 50m と 100m とすれば,A は 1/4 タイムスロット長,B は 1/2 タイムスロット長をバーストする.バースト完了直後に 雑音を聞かないノードのみが送信ノードに返信することで,最 も距離の長いノードを選定できる.. GVGrid ではブラックバーストを以下の通りに改良し,以降 で述べる経路構築プロセスで用いる.送信ノードは,ノードを 選定したいグリッド ID および道路 ID とそのグリッド内での位 置を指定した経路探索メッセージをブロードキャストする.受 信したノードはまず自身の位置するグリッド ID と道路 ID を 判断し,指定されたものと異なればそのメッセージを破棄する. 一致したノードは自身の位置とパケットで指定された位置との 距離を計算し,近いほど長いタイムスロット長で送信すること で,なるべく指定された位置に近いノードを選定する.. 3.2.2 3.2.1. n9. DEST. n14. 3.2. n2 n1. 経路構築プロセス. 経路構築プロセスは,SRC ノードから,DEST 領域として 指定されたグリッド内の車両群への経路を探索する.. SRC ノードは DEST 領域までの経路情報を持ち合わせない 場合,経路構築プロセスを開始する.SRC ノードは自身のグリッ ドに隣接する各グリッドごと,ノードが一つ以上存在すればそ のうちの一つ(例えばグリッドの中央に近いノード)を選択し, 経路探索メッセージ(Route REQuest,以下 RREQ)を上述 の改良ブラックバーストを用いて送信する.選択した隣接ノー ドに RREQ を送信した後,SRC ノードはタイマを設定し,経 路確定メッセージ(Route REPly,以下 RREP)待ち状態に入 る.タイマが終了するまでに RREP を受信できなければ,SRC ノードは再度経路構築プロセスを実行する. SRC ノードから RREQ を受信した各ノードは,同様に自身 のグリッドに隣接する各グリッドごとそのグリッド ID と,自身. −115−.

(4) の位置する道路と同じ道路かその道路に接続している道路の道 路 ID を指定した改良ブラックバーストによりノードを選択し, 自らが存在するグリッドの ID を RREQ に記録した上で送信し, その後 RREP 待ち状態に入る.それを受信した各隣接ノードも 同じ操作を繰り返すことで,DEST 領域に RREQ が到達する. SRC. 一度 RREQ を転送したノードは,メッセージ数抑制の観点 から,同じ経路探索における別経路からの RREQ であることを 判断した場合,自動的に最長タイムスロットでのバーストを行 い,他ノードの RREQ 受信を妨害することで,重複する経路の 探索を抑制することも可能である.一般的には最小ホップ数で のメッセージが最初に到着すると予想されるため,ホップ数が 経路品質を表す場合はこの方法はメッセージ数削減において有 効である.しかし,これにより対象とする経路数を制限するこ とになるため,複数の RREQ を転送することによるメッセージ 数の増加と発見された経路候補数やその品質との間のトレード オフを今後追求する予定である.. 42. n5. 21. 31. 00 図 4: 経路探索により構築された経路例. DEST y. x. u v. w. SRC. SRC ノードが RREP メッセージを受信すれば経路が確定さ れる.SRC ノードをはじめ,経路上にあるすべてのノードは, この経路が存在するグリッドの ID 列を初期経路の形状として 記憶する.. DEST 代表ノードは RREQ に記録された経由ノード ID 列 の情報を利用して,経路確定メッセージ(Route REPly,以下 RREP)を SRC に向けて送信する.図 3 では,DEST 代表ノー ドに複数 RREQ メッセージ(複数の経路候補)が到達したため, DEST 代表ノードはこの場合最小ホップの経路を選んで RREP. 11. DEST. RREQ が DEST 領域の隣接グリッドのあるノードに到達し た場合,そのノードは次ホップが経路の終点であることがわか るため,DEST 領域に対し,ID の大きさに反比例するように指 定したバースト要求をブロードキャストする.これにより,ノー ド ID の最も小さいノードを識別し,このノードに RREQ を 転送する.このノードを DEST 領域の代表ノードと呼ぶ.代表 ノードは到達した複数の RREQ から一つを選んで経路を確定 し,RREP メッセージを SRC ノードに向けて送信する.複数 の経路候補から選択する基準として,ホップ数,右左折数,道 路幅などが挙げられるため,これらの要素を総合的に考察する ことを予定している.. 図 3 は経路探索プロセスの実行例である.SRC ノードは自 身と DEST 領域を含むメッセージ転送領域を決め,各隣接グ リッドごとに 1 ノードずつ選択し,RREQ メッセージを送信す る(この例ではこの領域が転送領域であるとする).図 3 で選 択されたノードは n1,n2,n3,n4,n5 である.これらのノー ドは,自身の各隣接グリッドから自身と同じ道路上に存在する かその道路と接続している道路に存在するノードからそれぞれ 1 ノードを選択し,RREQ メッセージを転送する.この例では, n2 から n15 へ,n5 から n9 および n10 へ RREQ が転送され る.n1,n3,n4 は隣接グリッド内に接続している道路がない か,すでに n2 と n5 により RREQ が送信されたため,これ以 上 RREQ を送信しない状況を表している.これらのグリッドで はバースト要求に対し,すでに RREQ を転送したノードが最長 バーストを行うことで RREQ を棄却する.例えば n1 の RREQ は n2 および n3 により, n2 の RREQ は n15,n3 および n1 に より,n4 の RREQ は n3,n5 および n10 により棄却されてい る.RREQ メッセージを受信した n13 は DEST 領域の隣接グ リッドであるため,DEST 領域内でノード ID が最小であるノー ド(DEST 代表ノード)に対し,RREQ メッセージを送信する. 同様に n14 も DEST 代表ノードへ RREQ を送信する.. n9. n13. 図 5: 経路維持 - 初期経路. を送信している.RREP メッセージを受信した各ノードはメッ セージ内の経路情報を初期経路として保存し,RREP メッセー ジを SRC ノードへと転送する.例えば図 4 では,選ばれた経 路は SRC-n5-n9-n13-DEST であるため,保存される初期経路 のグリッド ID 列は 42-31-21-11-00 となる.RREP メッセージ が SRC ノードに到達すると,経路構築プロセスが完了し,SRC ノードと DEST 代表ノード間の通信が可能となる.DEST 代表 ノードは SRC から受信したデータを DEST 領域内に送信する ことで DEST 領域内の全ノードに伝播する.. 3.2.3. 経路維持プロセス. 経路維持プロセスは,経路が切断した場合,初期経路を表す グリッド上に存在しないノードを経路から切り離し,切断した 箇所から代替ノードを探し,初期経路に沿った形で経路を復元 させる.. SRC ノードから DEST 代表ノードまで経路を構築した後, 中間ノードの移動や,DEST 代表ノードの DEST 領域からの 離脱などにより,経路の切断が発生する.経路上の各ノードは, 自身の前後ノードと切断した場合,自身が現在存在しているグ リッドが初期経路グリッドの列に含まれないと判明すれば,自 身と接続しているノードとのリンクを強制切断し,初期状態に 戻る.これにより新たなリンク切断が発生し,初期経路グリッ ド上にないノードはこれと同じ動作を繰り返す.その結果,前. −116−.

(5) DEST. DEST. y y’ x. x’. v u v’. w. u’. SRC. w. SRC. 図 6: 経路維持 - 変形した経路. y. 図 8: 経路維持 - 経路復元. DEST. v. X. x. u. SRC. X. X. DEST. y’ x’. w. v’ u’. w. SRC. 図 7: 経路維持 - 連鎖離脱 図 9: 経路維持 - DEST ノードの離脱 方或いは後方ノードと切断状態で,かつ自身も経路から離脱し たノードはすべて経路から外されることになる. 前方ノード(経路上での DEST 側のノード)とのリンクが 切断されたが初期経路グリッド列上にあるノードは,以下に述 べる経路維持プロセスを開始する.各ノードは記憶した初期経 路グリッド ID 列における自身のグリッドの前方グリッドから 代替ノードを探し,自身の記憶した初期経路情報を含む経路維 持メッセージ(Route RePaiR,以降 RRPR)を送信すること で初期経路の情報を共有させる.前方グリッドから代替ノード を選択する際,切断した経路の残存ノードが存在すれば,その ノードを優先的に選択する(改良ブラックバーストを用い,経 路をキャッシュしている残存ノードに最長バーストをさせること で実現できる).これにより,初期経路グリッド列上にある残存 経路を最大限に利用でき,リンク切断が発生した場合も局所的 再接続により経路を再構築できる.再構築が不可能な場合,そ のノードは経路エラーメッセージ(Route ERRor メッセージ, 以下 RERR)を SRC ノードに送信する.この場合,SRC ノー ドは経路探索プロセスを実行し,新たな経路を探索する. 図 5 ー図 10 を用いて経路維持プロセスを説明する.図 5 ー 図 10 の灰色グリッドは,初期経路グリッドを表す.経路上の各 ノードはこのグリッド ID 列を記憶している.この図にある経 路は,SRC-u-v-w-x-y-DEST である.ノードは移動により,初 期経路グリッドから離れることもあるが,各ノード間で通信が 可能な間はそのまま経路を維持する(図 6).ここで,図 7 のよ うに,一部のノード(v ,y )が経路上の隣接ノードとの距離が. 大きくなり,リンク切断が発生したとする.前後に経路が切断 したノード u および x は,自身が初期経路グリッドから外れて いるため,リンク u-SRC,x-w を強制的に切断し,経路から離 脱する. この後,図 8 のように,SRC ノードが前方グリッドから新 たなノード u0 を,w は前方グリッドから新たなノード x0 をそ れぞれ発見し,RRPR を送信して接続する.ノード w0 および x0 はさらに前方から v 0 および y 0 をそれぞれ発見する.ノード v 0 および y 0 はそれぞれノード w および DEST ノードと接続す ることで経路が復元される. なお,DEST 代表ノードが DEST 領域から外れる場合もあ る.図 9 では,DEST 代表ノードは強制的に後方ノードである ノード y 0 との接続を切断し,経路から離脱する.図 10 では, ノード y 0 は DEST 領域から新たな DEST 代表ノードを選択し て接続することで,経路が復元された例を示している. 移動しない SRC ノードとその前方ノード間のリンク,およ び DEST 代表ノードとその後方ノード間のリンクは経路上で最 も切断しやすい個所であると想定される.GVGrid における経 路維持プロセスを用いることで,少ないオーバヘッドでの局所 的な再構築が可能となる.. −117−.

(6) 500. GVGrid GPCR. DEST. RREQ messages. 400. y’ x’. 300. 200. 100. v’ u’. w 0. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. 1400. 図 13: 経路探索プロセス-探索メッセージ数. SRC. 50. GVGrid GPCR. 図 10: 経路維持 - 代替 DEST ノード RRPR messages. 40. 30. 20. 10. 0. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. 1400. 図 15: 経路維持プロセス-探索メッセージ数. GPCR で経路を探索する時,各ノードは隣接ノードの中で最も DEST へ近いノードを選択し,メッセージを転送する.ノード の転送したメッセージが行き当たりに到達した場合,逆戻りし て手前の交差点で逆時計周りの方向へ迂回路を探索することで, 経路の発見率を向上させる.転送方向に交差点がある場合,交 差点内のノードにメッセージを中継してもらうことで,建物な どで発生した電波の遮断により経路ノード候補数の減少を防い でいる.経路が切断した場合,GPCR は SRC から DEST へ再 探索を行う.. 図 11: 実験に使用したマップ (吹田市). 4 4.1. 評価実験 シミュレーション設定. GVGrid の性能を評価するために,道路交通流シミュレータ N ET ST REAM [14] とネットワークシミュレータ GT N etS を 使用した. N ET ST REAM は豊田中央研究所で開発されており,現実 の車両の進路変更,速度制御などを取り入れ,長野冬季オリン ピック [15] の交通量概算にも使われた道路交通流シミュレータ である. N ET ST REAM で出力される 15 分間の車両データログファ イルを GT N etS に導入することで,GVGrid プロトコルのシ ミュレーション実験を行った.シミュレーション設定はフィー ルドサイズが約 1200m x 1200m で,s と DST の直線距離が 500m,1000m,1500m で,同時存在ノード数が約 200,車両 速度が 8.3m/s(30km/h)∼16.6/s(60km/h),グリッドサイズが 70m,無線範囲が 200m,帯域 2Mbps,シミュレーション時間 が 600sec とした. GVGrid の比較対象として,GPCR を実装した.GPCR は GPSR の車車間通信版で,高い経路の発見率を目指した深さ優 先探索手法である.GPCR は,建物などで電波の周辺への伝 播は阻害され,電波の届くノードは同じ道路上にある可能性が 高いという前提の下で SRC から DEST への経路を構築する.. 4.2. 経路探索プロセスの性能. 経路発見率 経路の発見率は,経路探索プロセスの総実行回数 の内,経路を発見した回数の割合である.図 12 の通り,GPCR の経路発見率は距離による影響は小さく,常に高い発見率を保 持している.GPCR は DEST に可能な経路があればそれを高い 確率で発見する.これに対し,GVGrid は距離が長くなるにつ れ,徐々に発見率が劣化してゆく.GVGrid は幅優先探索である が,転送ノードを選択する基準がより厳しいため,転送ノード 候補数は GPCR より少なく,繋がった後の経路安定性を最重視 しているため,経路の発見率は GPCR より低い.しかし,都市 部のような密度の高い環境下では,GVGrid の発見率と GPCR のそれとの差はほとんどない(図 12(a)).. 探索メッセージ数 探索メッセージ数は一回の経路探索プロセ スで送信される RREQ の総数である.GPCR は深さ優先探索の ため,探索メッセージ数は非常に少ない.これに対し,GVGrid は幅優先探索のため,探索メッセージ数は GPCR の数倍に到達 したが,総数としては低い範囲に抑えている(図 13).. −118−.

(7) 100. GVGrid GPCR. 80. 80. 60. 60. Discovery rate. Dicovery rate. 100. 40. 40. 20. 20. 0 400. GVGrid GPCR. 450. 500. 550. 600 Distance(m). 650. 700. 750. 0. 800. 2. (a) 密度 560 台/km. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. 1400. (b) 密度 140 台/km. 2. 図 12: 経路探索プロセス-経路探索率. 100. GVGrid GPCR. 80. 80. 60. 60. Recovery rate. Recovery rate. 100. 40. 40. 20. 20. 0 400. GVGrid GPCR. 450. 500. 550. 600 Distance(m). 650. 700. 750. 800. 0. 2. (a) 密度 560 台/km. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. (b) 密度 140 台/km. 1400. 2. 図 14: 経路維持プロセス-経路再探索率. 4.3. 経路維持プロセスの性能. 経路再探索率 経路再探索率は,経路の切断回数に対し,そ の経路を回復できた回数の割合である(図 14).GPCR の経路 維持は,単純に SRC からの再探索であるため,経路発見率の部 分で示した数値と大体一致している.これに対し,GVGrid は 初期発見した経路のグリッドの列上でのみ経路を再探索するた め,経路ノードの候補数が大きく抑えられているため,GPCR ほど高くない.GVGrid の維持能力は密度による影響が最も大 きく,ノード密集度の高い地域では,高い維持率も可能である (図 14(b)).. 探索メッセージ数 経路維持の探索メッセージ数は経路維持 プロセス内に送信された RRPR(GPCR は RREQ)の総数で ある.GPCR は経路の再探索であるため,経路探索能力の部分 で示した探索メッセージ数とさほど変わらなかったが,GVGrid の探索メッセージ数は GPCR よりも少なかった.これは初期 経路のグリッド内に対してのみメッセージを転送しているため, 修復したグリッド個分のメッセージのみで済んでいることによ る(図 15).. 4.4. くなるに従い,GPCR の探索した経路の長さが大きく増加した. GPCR は深さ優先探索のため,シナリオによって非常に長い迂 回路を探索してしまう可能性がある.これに対し,GVGrid は 距離に応じて線形的に増加した.GVGrid は幅優先探索のため, 安定した経路の長さを提供している(図 16(a)).. リンク生存時間 GPCR は距離の増加に従い,切断回数は劇 的に増加するため,リンクの生存時間は大きく下がる.GPCR は転送ノードを選定するときに,宛先領域への近さのみを基準 しているため,高速に移動する車両ノードを対象とした環境で は,非常に切断しやすいのは明らかである.GVGrid は同じ道 路や接続しているノードを選択しており,かつグリッドを利用 することで,選択したノードは自身との距離が近く,離れるま で時間がかかるため,切断回数は少なく,リンクの生存時間も 相対的に長い(図 16(b)). 以上の結果より,GPCR は経路の発見率は高いが,安定で なく,切断しやすい特性を持つため,継続的な送受信に適せず, 比較的サイズの小さなデータの配布に適している.GVGrid は 経路の発見率は GPCR にかなわないが,経路は比較的安定して おり,切断率が低いため,継続的な送受信に有効と考えられる.. 5. 経路品質の評価. 経路長 経路長は経路全体のホップ数である.必ずしも経路が 長いほど悪いわけではないが,経路が長くなるにつれ,ノード が増え,どこかで切断する確率が上昇するため,経路長も経路 品質の重要なメトリックの一つである.SRC から DEST まで の距離が短い場合,GPCR の経路長は非常に短いが,距離が長. あとがき. 本稿では,位置情報を用いた車車間ルーティングプロトコル GVGrid を提案した.GVGrid は,SRC から DEST まで,道 路に沿って経路を構築し,経路切断時において,初期経路の形 に沿って経路を回復することで,経路切断率を低減し,経路探 索メッセージを抑制できるといった特性を持つ.. −119−.

(8) 30. GVGrid GPCR. 25. 25. 20. 20. Link life. Route length(hops). 30. 15. 15. 10. 10. 5. 5. 0. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. 0 400. 1400. GVGrid GPCR GVGrid link life GPCR link life. (a) 経路長. 600. 800. 1000 Distance(m). 1200. 1400. 1600. (b) リンクの生存時間 図 16: 経路品質. ネットワークトポロジ,ノード密度などが GVGrid の性能に 与える影響や,経路長と交差点数間などのメトリックが経路の 切断率に与える影響を調べることなどが今後の課題である.. [9] R. Morris, J. Jannoti, F. Kaashoek, J. Li, and D. Decouto. CarNet: A scalable ad hoc wireless network system. In Proc. of SIGOPS European Work-shop, 2000. [10] S.-Y. Ni, Y.-C. Tseng, Y.-S. Chen, and J.-P. Sheu. The broadcast storm problem in a mobile ad hoc network. In Proc. of ACM/IEEE Mobicom, pages 151–162, 1999.. 参考文献 [1] B. Karp and H. T. Kung. GPSR: Greedy Perimeter Stateless Routing for Wireless Networks, Proc. of ACM/IEEE Mobicom, pages 243–254, 2000.. [11] M. Sun, W. Feng, T. Lai, K. Yamada, H. Okada, and K. Fujimura. GPS-based message broadcasting for intervehicle communication. In Proc. of Int. Conf. on Parallel Processing, pages 279–287, 2000.. [2] Christian Lochert,Martin Mauve,Holger Fusler,and Hannes Hartenstein. Geo-Graphic routing in city scenarios. ACM SIGMOBILE Mobile Computing and Communications Review, pages 69–72, 2005.. [12] C. Lochert, M. Mauve, H. Fusler, and H. Hartenstein. Geographic routing in city scenarios. ACM SIGMOBILE Mobile Computing and Communications Review, pages 69–72, 2005.. [3] Hao Wu,Richard Fujimoto,Randall Guensler,and Michael Hunter. MDDV:a mobility-centric data dissemination algorithm for vehicular networks. Proc.of the 1st ACM Workshop on Vehicular Ad Hoc Networks(VANET2004), pages 47–56, 2004.. [13] A. Mizumoto, H. Yamaguchi, and K. Taniguchi. Costconscious geographic multicast on manet. In Proc. of IEEE 1st. Int. Conf. on Sensor and Ad Hoc Communications and Network (SECON2004), pages 44–53, 2004.. [4] 孫 為華,山口 弘純,谷口 健一. 車両の分布情報を利用した二 地点間通信経路の車車間通信による構築と維持. マルチメデ ィア,分散,協調とモバイルシンポジウム (DICOMO2005), pages 149–152, 2005.. [14] E. Teramoto, M. Baba, H. Mori, H. Kitaoka, I. Tanahashi, and et. al Y. Nishimura. Prediction of conditions for the nagano olympic winter games using traffic simulator NETSTREAM. In Proc. of 5th World Congress on Intelligent Transport Systems, pages 1801–1806, 1998.. [5] J.L.Sobrinho and A.S.Krisnakumar. Distributed multiple access procedures to provide voice communications over IEEE 802.11 wireless networks. Global Telecommunications Conference vol3, pages 1689–1694, 1996.. [15] G. F. Riley. The Georgia Tech network simulator. In Proc. of the ACM SIGCOMM Workshop on Models, Methods and Tools for Reproducible Network Research, pages 5 – 12, 2003.. [6] Y.-B. Ko and N. H. Vaidya. Location-aided routing (LAR) in mobile ad hoc networks. In Proc. of ACM/IEEE Mobicom, pages 66–75, 1998. [7] G. Korkmaz, E. Ekici, F. Ozguner, and U. Ozguner. Urban multi-hop broadcast protocol for inter-vehicle communication systems. In Proc. of the 1st ACM Workshop on Vehicular Ad Hoc Networks (VANET 2004), pages 76–85, 2004. [8] L. Briesemeister and G. Hommel. Role-based multicast in highly mobile but sparsely connected ad hoc networks. In Proc. of ACM Mobihoc, pages 45–50, 2000. (poster paper).. −120−.

(9)

図 1: 事故現場への流入地点となる交差点付近へ事故情報 を送信する例 ブロードキャストベースの情報散布プロトコルとして,文献 [7][8][3] などが提案されている.なかでも, UMB[7] は各車両 が道路に沿ってなるべく遠方にある車両にメッセージを送信し, 経路のホップ数の減少を図るプロトコルである. UMB では道路 の各交差点にあらかじめリピータが設置してあると仮定してい るため,実用性に乏しいといった欠点がある. RBM [8] はノー ド密度の低い高速道路での情報伝達を目的として,メッセージ

参照

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