AN EPIDERMOID CYST OF THE ORAL FLOOR OF CHILD FOUND BY SCHOOL DENTAL EXAMINATION HE PURPOSE AND THE MEANING \T OF SCHOOL DENTAL EXAMINATION \ Takahiko

学校 歯科検診 によ り発 見 され た

小 児 口底部類表皮 嚢胞 の1例

―学校歯科検診の目的 と意義―

AN EPIDERMOID CYST OF THE ORAL FLOOR OF CHILD

FOUND BY SCHOOL DENTAL EXAMINATION

•\T

HE PURPOSE AND THE MEANING OF SCHOOL

DENTAL EXAMINATION•\

Takahiko NISHIWAKI, Satoshi YASUDA,

Hiroyasu SAKAI*, Iwao HYODO*, Nobumitsu OKA*

Department of Oral Surgery and Stomatology, Sekigahara Hospital (Chief : Takahiko NISHIWAKI)

*Department of Oral and Maxillofacial Surgery

, School of Medicine, Gifu University (Chief : Prof. Nobumitsu OKA)

Key Words;School dental examination(学 校 歯 科 検 診),Epidermoid cyst(類 表 皮 嚢 胞),Child(小 児)

Epidermoid cysts are commonly found throughout the body. In the oral regions, they usually appear in the floor of the mouth. As they grow, they may displace the tongue upward causing various speaking and eating difficulties. Therefore, adequate treatment of the cysts should be done immediately.

We found an epidermoid cyst in the floor of the mouth of a 9-year-old boy by school dental examination. The patient became aware of his sublingual swelling about six months prior to the examination. Although his teacher pointed out his unclear pronunciation, the patient evaded to mention the swelling. We removed the cyst under general anesthesia. In this way, we quickly remedied the patient's speaking and eating problems.

By this experience it was strongly suggested that not only school dentists, but also all dentists should always examine whole oral cavity precisely as well as the teeth.

POMS. Vol.1 No.2 1991(140-144)

緒 言 類 皮 嚢 胞,類 表 皮 嚢 胞 は,全 身 各 所 に発 生 す る 嚢胞 で あ る1-3).口 腔 領 域 で は,口 底 部 に好 発 し,舌 の 運 動 障害 に よ る発 音,嚥 下 へ の影 響 が 指 摘 され て い る4-7).特 に小 児 期 にお いて は,早 期 発 見 と適 切 な処 置 が 必 要 で あ る. 我 々 は,学 校 歯 科検 診 に よ り発 見 し た9歳 男 子 の 口底 部 類 表 皮 嚢 胞 を経 験 した の で,学 校 保 健 行 政 に関 して も若 干 の文 献 的 考 察 を加 え報 告 す る. 症 例 患 者:9歳 男子. 初 診:平 成2年5月 ■ 日. 主 訴:右 口底 部 腫 脹. 既 往 歴:て ん か ん. 家 族 歴:特 記 事 項 な し. 現 病 歴:数 カ月 前 か ら右 口底 部 の 腫脹 を 自覚. 教 科 書 音 読 時 の発 音 が 不 明 瞭 で あ る点 を教 師 か ら指 摘 さ れ て い た が放 置 し て い た.平 成2年4 月18日,我 々 が 学 校 歯 科検 診 を行 っ た際 に,右 口底 部 の 腫 脹 を認 め た た め,養 護 教 諭 を通 じ精 査 目的 に 当 科 を受 診 さ せ た. 現 症:全 身 所 見;体 格,栄 養 状 態 良 好 で, 写 真1初 診時 顔 貌 学校歯科検診により発見された類表皮嚢胞 臨 床 検 査 結 果 に も異 常 所 見 は認 め られ な か っ た. 局 所 所 見;口 腔 外 所 見 に特 記 事 項 はなか った(写 真1).口 腔 内所 見 と して は,右 口底 部 に触 診 上 波動 を呈 す る嚢 胞 様 病 変 を認 め,舌 の挙 上 と発 音 障 害 を認 め た(写 真2). 臨 床診 断:右 舌 下 型 ガ マ腫. 処 置 及 び経 過:平 成2年7月4日,GOF全 身 麻 酔 下 に,直 上 粘 膜 を切 開,剥 離 し た と こ ろ, 黄 色 が か っ た嚢 胞 壁 を確 認.類 皮 嚢 胞 お よ び類 表 皮 嚢胞 の診 断 の も と,全 摘 出術 を施 行 した. 摘 出物 所 見:2.5×2.5×2.0cmの 卵 型 で,黄 白色,粘 稠 な 内容 液 を認 め た.内 容 液 に は,コ レス テ リン結 晶,扁 平 上 皮 細 胞,脂 肪 が 多数 含 写 真2初 診 時 口腔 内所 見 写真3嚢 胞 内 容 液顕 微 鏡所 見(×100)

写真4病 理 組 織 学 的所 見(H-E染 色,×100) まれ て い た(写 真3). 病 理 組 織 学 的 所 見:嚢 胞 内壁 は,角 化 性 重 層 扁 平 上 皮 で,外 側 は線 維 性 結 合 組 織 か ら成 り, 皮 膚 付 属 器 官 は認 め られ な か っ た(写 真4). 病 理 組 織 学 的 診 断:類 表 皮 嚢 胞. 術 後 再 発傾 向 な く,現 在 経 過 良 好 で あ る. 考 察 Neuら1)は,類 皮 嚢 胞,類 表 皮 嚢 胞1495症 例 中,頭 頸 部 領 域 の 発 生 は6.94%で,そ の うち の 23.3%が 口腔 底 お よ び オ トガ イ 下 部 で あ っ た と 報 告 して い る.本 邦 に お け る 口 腔 領 域 で の 口底 部 発 生 率 は,玉 利 ら8)の73.9%か ら大 野 ら9)の46 %ま で 種 々 の 報 告 が あ るが,好 発 部 位 とす る と こ ろ に異 論 は な い.口 底 部 に発 現 した 本 嚢 胞 に お い て,最 も鑑 別 を 要 す る疾 患 に ガ マ 腫 が 挙 げ られ る が6,7),本症 例 に お いて も嚢 胞 の 発 現 部 位 が右 側 に偏 位 し て い た た め,ガ マ腫 との 鑑 別 に 苦 慮 した.補 助 的 診 断 法 とし て,頭 頸 部 領 域 の X線CT検 査 に お け る種 々 の ア ー チ フ ァク トは し ば しば 問題 とさ れ10),MRI11),超 音 波 エ コ ー12) の 本 疾 患 にお け る有 用 性 も報 告 され て お り一 考 に値 す る. 好 発 年 齢 と して,Meyer13)は,汗 腺,皮 脂 腺 の活 動 が 活 発 化 す る思 春 期 以 後 の 青 壮 年 期 を挙 げ て い る.し か し,皮 膚 付 属 器 の 分 泌 作 用 と, 嚢 胞 の増 大 との 関 係 に否 定 的 な 考 え14,15)もあ る. 本 症 例 で は,9歳 と,若 年 者 に発 見 さ れ た. 口底 部 の本 嚢胞 は,増 大 す る につ れ舌 の 偏 位, 運 動 障 害,発 音 障 害,食 物 摂 取 障 害 な ど を き た の発 見 と適 切 な処 置 が 必 要 で あ る.術 後 本 症 例 で は,構 音 の 改 善 が 術 前 の 記 録 と比 較 し著 明 に 認 め られ た. 本 嚢 胞 発 見 の 端 緒 とな っ た 学 校 歯 科 検 診 を含 め,わ が 国 で は複 数 の行 政 機 関 に よ り,地 域 歯 科保 健 活 動 が 行 わ れ て い る.わ が 国 の衛 生 行 政 は3つ に大別 され16),まず厚 生 省 管 轄 の 厚 生 行 政 は,地 域 保 健 を扱 い,生 活 の 場 を対 象 とす る. 次 に学 校 保 健 行 政 は,文 部 省 の管 轄 下 に,教 育 の場 を対 象 とす る.そ して,労 働 省 の 管 轄 とな る労 働 衛 生 行 政 は,職 域 保 健 を司 り,労 働 の場 を対 象 とす る. 生 涯 を通 じ る各 種 健 康 診 査 と保 健 指 導 体 系 に お い て,学 校 保 健 は6歳 ∼15歳 の発 育 期 の児 童, 生 徒 の健 康 を これ の み で 単 独 に担 って お り,そ の役 割 の 重 大 さ を再 認 識 させ る もの で あ る(図 1). 学 校 保 健 の体 系18,19)は,保 健 教 育,保 健 管 理, 保 健 組 織 活 動 に大 別 され,保 健 管 理 の範 疇 に て, 昭 和6年 の学 校 歯 科 医 制 度 の確 立(昭 和6年 勅 令 第144号)20)以 来,歯 科 健 康 診 断 お よ び事 後 措 置 が 位 置 づ け られ て きた(図2). 昭 和33年 の学 校 保 健 法22)の 公 布 に よ り,学 校 歯 科 医 が 必 置 制 とな り,学 校 歯 科 保 健 は確 固 と し た もの に な っ た.そ の後,昭 和48年5月17日 (省令17号),歯 科 疾 患 の検 査 内容 が,従 来 「歯 の 疾 病 及 び異 常 の 有 無 」 とな って い た もの が, 「口腔,歯 の 疾 病 お よ び 異 常 の有 無 を検 査 す る こ と とす る 」に改 め られ23),口腔 全 体 の診 査 の 重 図1生 涯 を通 じる各 種健 康 診 査 と保 健 指 導体 系 図17)

要 性 が 促 され て い る.続 い て 昭和49年3月26日, 文 体 保 第101号,文 部 省 体 育 局 長 通 達24)に は,学 校 に お け る歯 牙,特 に 口腔 の健 康 診 断 の 方 法 及 び 技 術 的 水 準 に つ い て,「 口 腔 の 検 査 は,口 角 炎,口 唇 炎,唇 裂,顎 裂,舌 小 帯 異 常,そ の 他 の 舌 異 常,唾 石 な どに つ い て も注 意 す る こ と。」 と述 べ られ て お り,具 体 的 な 疾 患 名 に まで 言 及 し,広 く口 腔 の 注 意 深 い診 査 が 要 求 され て い る. ま た,学 校 保 健 法施 行 規 則 第7条25)で は,学 校 に お け る健 康 診 断 の事 後 措 置 と して,9項 目 にわ た っ て 示 され て お り,そ の うち 歯 牙 お よ び 口腔 と関 連 あ る もの と して, 1.疾 病 の 予 防 措 置 を行 う こ と. 2.必 要 な医 療 を 受 け る よ う指 示 す る こ と. 3.必 要 な検 査 等 を受 け る よ う指 示 す る こ と. 4.そ の 他,発 育,健 康 状 態 等 に応 じ て適 当 な 保 健 指 導 を行 う こ と.が 挙 げ られ て お り,健 康 診 断 後 の事 後 措 置 につ き詳 述 して い る. しか し,こ れ ら の歯 科 健 康 診 断 の方 法 お よび 事 後 措 置 に 関 して,現 場 で の 実 情 は十 分 な も の で は な い と思 わ れ る.学 校 歯 科 医 は,学 校 保 健 法 第16条22)に よ り定 め ら れ た 非 常 勤 職 員 で あ り,充 足 率 は きわ め て 高 い も の で あ るが,き め 細 か な 日常 活 動 の点 で は問 題 が あ る と思 わ れ, 将 来 の学 校 保 健 行 政 の あ り方 の検 討 は重 要 課 題 と考 え られ る. 医 療 意 識 の 発 達,医 療 機 関 の充 足 に伴 い,今 日で は,患 者 自身 の早 期 受 診 が 得 られ る傾 向 に あ る.し か し,本 症 例 の 患 児 は,父 子 家 庭 の第 3子 に て 父 兄 の十 分 な 関 心 が 得 られ ず,ま た, 学 校 の教 諭 に よ る発 音 障 害 の指 摘 の み で,そ の 原 因 の究 明 もな さ れ な い ま ま自覚 症 状 を放 置 し 図2学 校 保健 の体 系21) 学校歯科検診により発見された類表皮嚢胞 て お り,9歳 児 の 複 雑 な心 理 状 態26)へ の 庇 護 に 欠 け る一 面 も実 感 した.こ れ ら,小 児 にお け る そ の年 齢 的 特 殊 性 を考 慮 す る と,正 常 な 顎 顔 面 の発 育 に伴 う正 しい発 音 お よ び咀 嚼 機 能 の向 上 に と ど ま らず,健 全 な 身体,そ して 心 の 発 育 面 に お い て も,健 康 な 口腔 を維 持 さ せ る こ とは, 学 校 歯 科 医 の み な らず我 々 全 て の歯 科 医 師 の重 大 な責 務 で あ る と考 え られ る. 小 児 の齲 歯 数 の減 少 を,そ の歯 科 保 健 目標 の 1つ とす るWHOの 提 案27)の も と,厚 生 行 政 下 の地 域 保 健,そ して学 校 保 健 行 政 に よ り,集 団 歯 科 検 診 が 行 わ れ て い る.し か し,本 症 例 を経 験 し,単 に歯 牙 所 見 の み に と らわ れ る こ とな く, 常 に 口腔 全 体 の診 査 が 必 要 で あ る こ とが 痛 感 さ れ た. 結 語 我 々 は,学 校 歯 科 検 診 時 に,口 底 部 の嚢 胞 性 疾 患 を指 摘 し,成 長 期 の 小 児 へ の 障 害 を早 期 に 回 避 し えた の で,若 干 の 考 察 を加 え報 告 し た. 本論文 の要旨は第2回 日本小児 口腔外科学研究会(平 成2年12月2日,名 古屋)に 於いて発表 した. 謝辞:稿 を終えるにあた り,資料提供等 ご援助賜 りまし た,岐 阜 県歯科医師会大垣支部,児 玉昌也学校歯科担当 理事に,ま た,病 理組織標本作成等 ご協力賜 りました, 国保関ケ原病院検査室,岩 沢隆信室長および谷田俊幸主 任 に感謝致 します. 引用 文献

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