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計画・実行システムの一般モデル ―生産管理システムと金融業務システムの共通性―

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(1)Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 1. はじめに. 計画・ 計画・実行システムの 実行システムの一般 システムの一般モデル 一般モデル. 多くの企業情報システムは,時間の経過の中で煙突状態になっていく.煙突状態の システムとは,独立したサブシステムがいくつも乱立して,互いに連携しないさま, いわゆる縦割りで,無節操な連携のシステム構造をいう.Marshall[1]は,これを 1 つ の型(エンティティタイプ)をロール(エンティティロール)ごとに分割してシステ ムを作ってしまった結果だとする.図 1 左はそのイメージである.企業情報システム は,一貫したシステム間の連携を必要とするが,図に示すように,各煙突システムの 中では類似の型を持っているのに,それぞれ独自に設計され,型は互いに理解できな い状態にある.それは,用語の意味やコードの不一致という形で端的に表面化する. 企業情報システムの再構築で考慮すべきことは,そのような煙突システムを,本来 の型が中心になるように,必要に応じてリファクタリングしていくことである.その 目的は,ビジネス環境の変化に迅速に対応できるようにすることであり,図 1 右のよ うに共通の型を保持するドメイン層と,業務ごとの特殊性を吸収する層に分離するこ とを考える.その中心となるドメイン層に基幹システムのコアとなるモデルを置く. 以下では,まず製造業の生産管理システムの一般モデルを再評価し,次に金融業の 基幹システムの 1 つである業務システムの一般モデルを対照し,これらの共通モデル を作成した後,その共通性と差異を検討することを通して,企業情報システム再構築 に向けての知見を得る.. ―生産管理システムと 生産管理システムと金融 システムと金融業務 金融業務システムの 業務システムの共通性 システムの共通性― 共通性― 児玉公信† 生産管理システムと金融業務システムは,まったく異なるように見える.作業 の計画と実行を,時間軸に配置された予定イベントのネットワークとその実績と とらえ,個々のイベントを勘定パターンで表現し,在庫(残高)の時間的推移を 追跡できるようにすること,業務プロセスを生産計画(契約)のライフサイクル を管理するものと見なすことで,共通の概念モデルで扱うことができる. この実装に向けて,計画を立てるための知識システム,計画の実行を予定と実 績のイベントとして記録する実行システム,計画のライフサイクルの進行を促す 業務インタフェース,これらの状況をモニタする報告システムからなるシステム アーキテクチャを設定する.そのうえで,2 つのビジネスの本質的な共通性と特 殊性について議論する.. A General Model of Plan-Execution Systems: Commonality and Variability between a Production Management System and a Financial Operation System. 2. 生産管理システムの 生産管理 システムの一般 システムの 一般モデル 一般 モデル 生産管理システムでは,見込みや顧客注文に基づいて生産計画を立て,部品の所要 量や作業工数を計算し,製造指示を発行して,その実績情報を収集することで QCD をコントロールする.児玉[2]による生産管理ステムの一般モデル(CHARM)を簡単 にレビューする.. Kiminobu Kodama† Though production management systems and financial operation systems seem quite different, they can be dealt with using a common conceptual model by making the following assumptions. (1) Business plans and plan executions can be described as a network of planned tasks and their results. (2) By describing each task using the Account Pattern, the value-flow over time can be tracked. (3) Business processes can be defined as several series of events that make progress in the life cycle of the production plan or the contract. To implement this model, a system architecture was designed consisting of a Knowledge System to create the networks, an Execution System to record the events of plans and results, a Business Interface to move the life cycle of the plan or the contract forward, and a Reporting System to monitor the business situation. In this report, we discuss the commonality and variability between two types of business systems based on the above model and system architecture.. A sys. B sys. C sys. AX. BX. CX. AY. BY. CY. A xyz. AZ. BZ. CZ. X. 図1. A. B. C. BC xyz. Y. Z. 煙突システムの再構築. † 情報システム総研 Information Systems Institute, Ltd.. 1. ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(2) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 名称. 取引 2..*. *. 移動 数量 質量 開始日時 終了日時. 取引日 計上日. 量( 累積). 勘定. 製造では徐々に量 が増(減)する. 受 在庫. 払. 受 終了. 開始. 払. 図3. 現在. 期首. (a) 勘定パターン. 取引による 移動. (b) 流動表. 勘定パターンと在庫量の導出. 2.2 勘定パターンの 勘定 パターンの意味 パターンの 意味と 意味 と 拡張. 図2. CHARM の特徴は,版に関わらず,製造作業を記述するために勘定パターン[3]を使 用している点とである.勘定パターン(図 3a)は,本来,会計取引を表現するもので, 金額の移動元と移動先を記録し,追跡する複式簿記の仕訳に対応する.これを「もの」 の移動を追跡する在庫取引として拡張することはよくある[3].ここから,取引は価値 の移動を記述し,勘定は価値の器であると解釈できる. 生産管理においては,取引を製造取引として拡張する.製造取引は,生産活動に伴 う価値の移動を記述する.たとえば部品 A の勘定を設けておき,ここに対する消費型 の移動を勘定パターンで記述する.部品 A の在庫量は,その勘定に対する「受」と「払」 の累積量の差として導出できる.図 3b は,残高または在庫量が累積量の差であること を説明している.勘定パターンの真価は,このように,勘定の在庫(残高)を時間的 に変化する動的な値であり,永続化して保持するのではなく,必要に応じて導出すべ きとした点にある. さらに CHARM では,生産管理業務をモデル化するに当たって,勘定パターンに次 の 3 つの拡張を加えた.1 つめは,製造業では価値移動が長時間かけて進むために, 開始日時と終了日時を述べることでその様子を記述する点,2 つめは,予定の取引を 記述することで,未来の在庫を導出し,引き当ての対象とする点,3 つめが,勘定の 粒度を在庫の管理単位とした点である.もし,在庫量を現物一つひとつの単位で把握 しようとすれば,現物の数だけ勘定を設ける必要がある. 2.3 生産計画の 生産計画 の 意味 生産計画を立てることは,予定の製造作業ネットワーク(図 4)あるいは WBS を生 成することを意味する.ここで製造作業とは,設備(人も含む),エネルギー,時間を 使って,指定された終わりの「もの」を得るために,始めの「もの」を変換する仕事 と定義し,この価値の移動の過程を製造取引としてモデル化する.また,製造作業ネ ットワークとは,作業を実行順にネットワーク化したものを意味し,製造取引の有向. 生産管理システムの一般モデル(第 2 版). 2.1 生産管理システムの 生産管理 システムの一般 システムの 一般モデルの 一般モデルの拡張 モデルの 拡張. 現在,CHARM は改訂され,第 2 版になっている(図 2).主な改訂点は次の 2 つで ある. (1) 生産座席予約の再定義 第 1 版では,顧客注文と生産計画の間接的な引当と,下流工程の生産計画と上流工 程の生産計画との間の間接的な引当とは別の生産座席予約であると見ていた.つまり, 生産座席予約には 2 つのタイプがあると考えていた.第 2 版では,生産計画を生産注 文であるとみなすこと,さらに顧客注文を生産注文の一種であると見なすことによっ て,生産座席予約を生産注文間の間接的引当関係であることを明確にした.これによ って,生産座席予約を一律に扱えることになった. (2) 資源の意味の拡張 第 1 版では,資源の意味を,材料,部品など,消費されて製品に変換されていく「も の」に限定していた.第 2 版では,製造取引の割当対象となるものを,設備,治工具, 容器にまで拡張した.これによって,たとえば金型を作る作業と,出来上がった金型 を使って他の製品を製造する作業を 1 つの生産注文で扱える.資源の移動には,消費 型,使用型,循環型があるものとし,時間軸に沿って変動する在庫または設備能力が 負にならないことという制約ルールに基づいて作業の実行時刻を調整する.モデル上 では,残量を資源保有の導出属性/state または/availability として扱う.. 2. ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(3) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 1. 2. 3. 時間. 5. 部品c. 設備x. 4 6. 製造番号1. 7. 10. 部品c. 設備x. 実施作業. 部品b. 8. 後 作業名 標準コア時間 標準バッファ時間 is割込可能 ロット化情報 作業原価. 製造番号2. 11. 12. 設備x. 部品b. 13. い. 図4. 製品A(3) 製造番号3. 1. *. 1. 資源階層. * 資源. 占有 量 時間. 1 資源名 寿命 資源原価 能力. *. 設備. 消費. 図5. 非循環グラフ(DAG)で連結された作業の集まりとしてモデル化する.生産スケジュ ーラは,こうして生成された作業が必要とする部品の所要量を満足するように,また 設備能力の要求が干渉しないように,実施日時を前後に調整する操作である. 2.4 製造業務における 製造業務 における知識 における知識 あらゆる計画の立案に際して,知識が必要となる.生産計画の立案における知識と は,MRP では部品表(Bill of Materials)と呼ばれたものである.IEC 62264 では部品 構成情報だけではなく,すべての資源構成情報(Bill of Resources)を指す.NPO 法人 技術データ管理支援協会(通称 MASP)では,作業から見た品目と設備の制約ルール であると述べている[4].さらに MESX-JP は,作業,品目,設備の対等な制約ルール であるとし,OMSB 構想[5]を提案している.児玉[6]は製造ビジネスにおける設計,製 造,保守の 3 局面間の知識連携を提案している.図 5 は,OMSB 構想の概略モデルで ある.生産方式が高度化するにつれて,管理水準も高度化し,それに必要となる知識 のあり方も高度化していくのがわかる. 知識は,実行モデルから知識レベルを分離したものとしてモデル化できる.知識レ ベルは,アナリシスパターン[3]で導入されたもので,操作レベルのインスタンスの生 成に制約を与える.制約ルールを記述するために,知識レベルの型はほとんどがパワ ータイプであり,モデルの記述はかなり抽象的になる. 制約ルールの実装方法の 1 つは,マスタファイルと呼ばれるもので,生成を許す条 件をすべてデータとして列挙することで,列挙されなかった条件を生成不可とするも のである.品目マスタや品目構成マスタがそれに当たる.しかし,多品種生産では仕 様値の組み合わせが爆発するため,インスタンスの生成を許す条件をすべて列挙する 方法は,事実上有効とは言えなくなっている. 品目以外の制約ルールでは,形状コード[7]を使って製造方法を整理して記述するこ とが試みられた.しかし,当時の技術ではコードの解釈に基づく動作をプログラム中 にハードコードせざるを得なかった.制約ルールの合理的な実装手法が必要である.. * 品目. 代替する. 製造作業ネットワーク. 1 {xor}. 作業 製品A(2). 投入部品. 0..1 アクション. 前. 9. イベント ガード. トリガする 順序制約. 部品群b. 状態機械. 1. 製品A(1). 循環. 代替する. 使用. 製造知識(OMSB)のモデル. 3. 金融業務システム 金融業務 システム 生産管理システムの対局にあるものとして金融業の業務システムのモデルを取り 上げる.ここでいう金融業務システムとは,リース,ローン,投資などの金融サービ スの中に含まれる貸金に依拠して,期間内の元利の受け取りを図るシステムをいうも のとする.金融業務システムは,金融サービスの契約に基づいて予定のキャッシュフ ローを展開し,時間に依存するリスクと債権の回収をコントロールする. 3.1 金融ビジネスの 金融 ビジネスの解釈 ビジネスの 解釈 金融ビジネスにおける価値の移動は,キャッシュフローによって評価される.リー ス取引を例に挙げる.貸し手を「レッサー」,借り手を「レッシー」とする.レッサー がリース物件を購入し,それを提供されたレッシーがその見返りとして物件購入代に 利息を含めてリース料金を支払う[8].レッサーは,契約ごとの最終的な利益を追求す る.この業務の流れをプロセス図(図 6)で示す. レッシー. 提案を 検討する プラン. 提案. 承認. 物件. レッサー. 契約を 物件を 締結する 購入する. 提案 する. 契約. メーカ. 3. 発注. 物件を 送付する. 図6. 物件を使用する. 物件を 検収する. 代金を支払う 請求 請求. 検収. 代金を 支払う. 代金 代金. リースを実施する. 物件を 返却する 物件. 終了し, 売却する. 代金 債権. 代金を 受け取る. リースの業務フロー(プロセス図). ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(4) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 契約1. 3.3 金融業務における 金融業務 における知識 における知識. 物件を購入する. 時間. 金融業務の作業ネットワークを生成するために,当然,知識が必要とされる.どの ようなサービス品目(商品型)があり,どのような物件(資産型)を扱い,どのよう に手配をし,貸金を実行していくかというライフサイクルパターン(処理型)のほか に,商品と物件間の制約,商品と処理手順間の制約,物件と処理手順間の制約,それ に,全体としてその契約がどのくらいの利益になるかなどを評価するための総合的な 知識を何らかの形で明示し,実装可能な形で表現できなければならない. これらの知識体系は,現在,十分にモデル化できたとは言えない.商品型,資産型, 処理型という 3 つの型で十分なのかもわからない.ただし,製造業務における知識の 持ち方(図 5)が参考になる.3 つの型はそれぞれの特性を表現する変数によって説明 され,各型の間の制約ルールはそれら変数の関係式として記述できる可能性がある. たとえば,リース:商品型は,対象物件,金利,期間などの変数でパラメタライズさ れ,対象物件が複写機:物件型の場合は,利率の有効範囲は a%~b%,期間の有効範 囲は c 回~d 回というようなルールの記述になる.. 購入 実施する. 請求1. 請求2. 請求3. 請求60. ・・・. 終了し売却する. 売却. 図7. 金融業務の作業ネットワーク. 実行 勘定型. 取引型. 1 型. 契約. * 1. 1 型. * 勘定 名称. * 取引 2..*. * 移動. 1. 取引日 計上日. * {ordered}. 数量. 1. 処理. 契約. 4. 金融業務 金融 業務システムのアーキテク 業務 システムのアーキテクチャ システムのアーキテク チャ. * *. {ordered}. 金融業の業務システムの一般モデルを,システム構成設計に含めて示す(図 9-11). 全体として層別化アーキテクチャ[3]を採ることとし,上から,ユーザインタフェース (UI)層,業務層,ドメイン層,永続層とする.これらは,上位層から下位層への一 方向の参照関係で結ばれる.ドメイン層をさらに,知識レベルの知識ドメイン,操作 レベルの実行ドメイン,会計システムである報告ドメインに分ける.ドメインは,そ れぞれ UI 層と業務層と永続層を持つ.UI 層と業務層の境界が不鮮明なので,2 つを 合わせて業務インタフェースと呼ぶ.なお,この構成形式を“NEXT”と仮称する.. 1 契約先 資産. 図8. 予定. * *. 実績. パーティ. 実行ドメインのモデル. 3.2 金融実行 金融 実行システムのモデル 実行 システムのモデル. 金融業務の実行管理機能は,契約(または約定)に基づく取引の開始から終了まで の入出金の予定のビジネスイベントを設定し,その実施に際して,入金の遅れ,中止 などのリスクを追跡する.リース取引における作業ネットワークの例を図 7 に示す. ここでは,リース物件の購入作業,期間分のリース料の請求作業,リース終了後の物 件売却作業がシリアルに並んでいる.これは,図 4 に示した製造作業ネットワークと 同等であるが,他の作業との設備使用の干渉を調整する必要がないので,幾分簡単に なっている.これをモデル化したのが図 8 である. 金融業務システムにおいても,ビジネスイベントに伴う価値の移動を勘定パターン によって表現する.むしろ,これが勘定パターンの本来の意味である.勘定はこの取 引で使われる現預金,資産,保険料,リース料などの primitive なものとし,貸借対照 表,損益計算書などの法的な報告書を組み上げるまでの勘定体系を設けないものとす る.ただし,勘定のインスタンスは「契約」ごとに設定するものとし,これによって, 契約ごとのビジネス状況を把握できるようにする.「資産」は物件の価値の器であり, 評価価値という残高を持つ特殊な勘定として扱う.. ユーザインタフェース層. U/I層. 報告業務. 業務1. 業務3. 知識設計. 報告. 実行(ドメイン). 知識. 永続層. 永続層. 永続層. 図9. 4. 業務2. U/I層. 情報システムアーキテクチャ(NEXT). ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(5) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 4.1 業務インタフェース 業務 インタフェース. 知識. 業務インタフェースの役割は,契約のインスタンス(:契約)を生成し,ビジネスの 進行に応じて状態を遷移させながら, :契約の終了によって消滅するまでの一生をコン トロールすることである.アクタからは:契約のライフサイクルに見えるが,その実 体は作業ネットワークの生成と期限の到来に基づく状態遷移のトリガリングの連続で ある. :契約のライフサイクルは,扱うサービス品目の特性によって異なるので,業務 層のパッケージは複数作られる可能性が高い.しかし,実行ドメインを共有すること で,システムの煙突化が避けられる. 4.2 知識ドメイン 知識ドメイン 知識ドメインでは,3.3 節で述べた業務の知識を保持する.図 10 の上半分がそれで, 実行ドメインに対する知識レベルの型からなる.商品型,資産型,処理型が互いに関 連する様子は三角形の構造で表現され,各辺に関連型として制約ルールが置かれてい る.図が煩雑になるので省略しているが,各型は観測パターン[3]によってパラメタラ イズされ,それぞれの型の多様なインスタンスを生成できる. 図 10 の下半分に示したのは実行ドメインの一部で,ここに保持される作業ネット ワークが知識ドメインとどのように対応しているかを示している.これらのインスタ ンスは変数値を持って識別される.この実装に当たっては,実行ドメインから知識ド メインへの一方向の参照性を守るように設計する必要がある. 知識は常に更新されていくので,知識ドメインには版管理機能が必須である.過去 の知識をあとから参照することもあるし,近い将来の法改正に対応した知識を使って, 新しいビジネスのシミュレーションも行える.知識ドメインの分離には,このような 効果もある. 4.3 実行ドメイン 実行 ドメイン 実行ドメインのモデルは,既に 3.2 節で説明したとおりである. 作業ネットワークの生成に関わるドメイン間のコラボレーションは次のようにな る.業務インタフェースのユースケースは契約条件(変数値)を示して,実行ドメイ ンの契約オブジェクトを介し,知識ドメインにその変数値に基づく作業ネットワーク の生成を要求する.契約条件が妥当ならば,作業ネットワークを導出し,そうでなけ ればエラーを返す.契約オブジェクトは生成された作業ネットワークを(何らかの形 で)受け取って,ユースケースに作業ネットワークの参照を返す.ユースケースはそ の参照を介して,その契約の評価指標をいくつか導出してアクタに表示する.アクタ は,それで良ければ実行ドメインに作業ネットワークの永続化を指示する.問題があ れば,変数値を調整して,これまでのやりとりを繰り返す. 生成された作業ネットワークは,最初の時点ではすべて予定であることに注意する こと.勘定の残高導出の際には,過去の取引については実績の移動を用い,未来の取 引については予定の移動を用いる.. SA制約ルール. 資産型. *. 1. 名称. AP制約ルール. *. 型. 商品型. *. 名称. *. 1. 型. SP制約ルール *. *. 処理型 名称 1. 型. 実行 *. *. 資産. 処理. * *. 1. 契約. {ordered} 1. 勘定. 2..*. *. * {ordered}. * 取引. 移動 予定. 図 10. 知識ドメインの内容. 4.4 報告ドメイン 報告 ドメイン. 報告ドメインは,勘定ごとの残高を集計し,あらかじめ設定された勘定体系(勘定 チャート)に基づいて報告データを作成する.財務諸表はその典型である.勘定体系 には,商法基準の貸借対照表,損益分析書のほかに,米国証券取引委員会(SEC)基 準の財務諸表などがある.報告の形式が複数あることから,会計処理は事実の解釈方 法であることがわかる.報告システムと呼ぶのはこのためである. 図 11 がそのモデルである.通常は要約勘定パターン[3]を使うところを,実行ドメ インの勘定を参照し,報告ドメインで要約勘定を導出して,さまざまに要約すること を表している.勘定体系は基本的に DAG である.すなわち要約勘定のレベルは統一 されなくともよく,ネットワーク状にロールアップされていくものとする. この実装イメージは,当初,過去の取引を報告ドメインに複製してデータウエアハ ウス(DWH)を構成するものと考えた.これでもいいが,より簡易な実装として,実 行ドメイン側で,指定された報告期間での primitive な勘定型の残高を導出して,それ を報告ドメインに持ってきて,勘定体系を組み込んだ表計算シートに流し込むという 方法も可能である.これで複数の異なる財務諸表が容易に設定できる.ただし,報告 書が改竄されないように,変更ロックをかけておく.. 5. ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(6) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 報告. 報告. 集計先 {DAG}. 0..1. 勘定体系. /要約勘定 残高. * 1. 体系型. 1. 勘定. 多重分類. *. 名称. 集計元. 実行. 契約. * 勘定. * 1. 2..*. *. 名称. 移動 *. 現物. 取引 取引日 計上日. 0..1. 図 12. もの. 金. 勘定の種別. 数量. 1. このアーキテクチャを前提として,製造業も金融業もそのコアモデルはほぼ同一と 見てよい.ここで勘定を,金としての価値の器である「金」勘定と,ものとしての価 値の器である「もの」勘定とで使い分ければ,両方にまたがるビジネスも適切に記述 できる.図 12 はその部分モデルである.「もの」勘定といえども勘定であり,金額で 価値評価されるが,現物との対応があることがその特徴である.ほかに,報告が目的 の勘定もあると考えられ,これと「もの」「金」勘定は多重分類の関係にある. 5.2 可変性 モデルから見た金融業務と生産管理の違いの 1 つは,知識体系とその内容にある. 知識をどのように表現するかは,業種によって明らかに異なる.実際,OMSB モデル と知識ドメインのモデルは異なっているように見える.このため,知識ドメインを交 換できるフレームワークの実装が必要である.もう 1 つは,価値の対象が異なること である.このことは,価値の移動時間の差となって現れる.金の移動はほぼ瞬時に行 われるが,ものの移動には時間がかかる.この状況を,前者については勘定パターン の「移動」を関連クラスで表現し,後者については「移動」を広義の関連型で表現す るとともに,移動の開始日時と終了日時という属性を持たせることで表現した.この 微妙だが,この重要な差の意味を理解しなければならない. 実行ドメインにおける primitive 勘定のひと揃いが管理の粒度を決める.一方,報告 ドメインの勘定体系は,法制度や管理目的に応じて頻繁に変更される. 5.3 実装に 実装 に向 けての留意点 けての 留意点 モデルがほぼ同一だからといって,実装形態までが同一になるとは限らない.信頼 性や可用性などの非機能要求は,依然,実装設計を左右する.しかし,共通部分のス ケーラビリティを考慮したフレームワーク化と,可変部分の交換容易性を実現するこ とによって,基幹システムの再構築をアジャイルに進めるための開発基盤とし,実行 基盤とする.. 実績. 資産. 図 11. *. 報告ドメインの内容. 4.5 NEXT とアジャイル開発 とアジャイル 開発. この情報システムの構成設計は,金融業,製造業など,業種を問わず利用できるも のとなっている.知識の発見と体系化が重要な設計要素となるが,不確定な段階では, 業務インタフェースに,業務個別の知識の一部を組み込んでおくことでもよい. 各層が一方向の参照関係で分離されているので,共通性の高い実行ドメインとその 永続層をあらかじめフレームワークとして実装しておくことで,開発単位を小さくす ることができる.業務特性に依存する業務インタフェース部分は,施主の特性,業務 の特殊性に合わせてアジャイルに要求を動かしながらシステムを開発していけばよい. 逆にこのようなフレームワークがないと,生産管理や金融業務のような基幹システム をアジャイルプロセスで開発することは困難になるだろう.. 5. 一般モデルの 一般 モデルの評価 モデルの 評価 異なる 2 つのビジネスの統一モデルを得た.この共通性と可変性について議論する. 5.1 共通性 生産管理と金融業務とは,まったく異なるビジネスに見えながら,作業の計画と実 行を,時間軸に配置された予定のイベントネットワーク(すなわち WBS)とその実行 結果(実績)のネットワークとして表現できることがわかった.個々の作業を勘定パ ターンによる価値の移動として表現し,在庫または残高の時間的推移を追跡できるよ うにすることで,実行上のリスクをリアルタイムにモニタできるようになる.また, 業務処理とは,生成された生産注文または契約のインスタンスのライフサイクルの遷 移をトリガするものと見なせることがわかった.. 6. ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

(7) Vol.2009-IS-109 No.4 2009/9/14. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 6. おわりに 企業情報システムの中でも基幹システムと呼ばれるものは,改良を重ねながら長期 間運用されてきた.それは古い技術基盤の上に構築され,多くは大きく変更されない できた.これが,業務要求の実現方法,設計論,開発手法,情報基盤などにおいて, 企業の技術レベルと世間の技術レベルのギャップを拡大してきた原因である.ここで 企業統合やビジネス構造の変化に対応するように情報システムを再構築しようとする とき,技術ギャップをキャッチアップするためのコストの大きさが,抜本的な対応に 踏み切れない原因の 1 つであるといえる.その苦肉の策が ERP パッケージの採用であ ろうが,これは問題を先送りしただけのように見える. 本稿では,基幹システムの一般モデルとアーキテクチャを提示した.現在,このモ デルとアーキテクチャに基づくフレームワークの実装を進めているところである.こ の完成によって,基幹システムの再構築が安全に,安く,早く実現できるようになる ことを目指したい.. 参考文献 参考文献 1) Marshall, C. 著,児玉公信(監訳): 企業情報システムの一般モデル―UML によるビジネス分 析と情報システムの設計,ピアソンエデュケーション (2001) 2) 児玉公信, 水野忠則: 少量多品種型生産管理システムの一般モデル CHARM の提案, 情報処理 学会論文誌, Vol. 47, No.2, pp.902-909 (2008). 3) Fowler, M. 著, 児玉公信ほか訳: アナリシスパターン, アジソンウエスレイジャパン (1998) 4) 児玉公信: 生産システムの革命[Ⅰ],IE レビュー,Vol. 50, No. 3, pp.59-64, 日本 IE 協会 (2009) 5) 児玉公信: 日本の製造業のための製造知識表現とそのモデル(OMSB)について, スケジュー リング学会 創立 10 周年記念シンポジウム (2008) 6) 児玉公信,水野忠則: 部品表の統合に関する一考察,情報処理学会 第 70 回全国大会 (2008) 7) Opiz, H.編,鈴木 隆,三宅 弘訳: グループ・テクノロジー, pp.143-177, 日本能率協会 (1969) 8) 森住 祐: 新版 リース取引の実際, 日経文庫, 日経 (2000). 7. ⓒ2009 Information Processing Society of Japan.

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図 2  生産管理システムの一般モデル(第 2 版)  2.1 生産管理生産管理生産管理 生産管理システムのシステムのシステムの システムの一般一般 一般モデルの一般モデルの モデルの拡張モデルの拡張 拡張 拡張 現在,CHARM は改訂され,第 2 版になっている(図 2).主な改訂点は次の 2 つで ある. (1)  生産座席予約の再定義  第 1 版では,顧客注文と生産計画の間接的な引当と,下流工程の生産計画と上流工 程の生産計画との間の間接的な引当とは別の生産座席予約であると見ていた.つまり, 生産

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