結核専門病院における結核入院治療成績―標準治療が困難時の対応についてClinical Effects of Treatment for Mycobacterium tuberculosis Infection in Patients at a Specialized Hospital in 2011奥村 昌夫 他Masao OKUMURA et al.665-670

全文

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結核専門病院における結核入院治療成績

― 標準治療が困難時の対応について ―

1

奥村 昌夫  

1

佐々木結花  

1

吉山  崇  

1

松田 周一

1

大澤 武司  

1

森本 耕三  

2

野内 英樹  

1

倉島 篤行

1

尾形 英雄  

1

後藤  元       

は じ め に  結核治療の原則は化学療法であり,大半の結核は化学 療法で治癒させることができる。化学療法は,①感受性 薬剤を 2 剤(治療開始時は 3 剤)以上使用する,②治療 中は患者が確実に薬剤を服用することを確認する,③副 作用を早期に発見し適切な処置を行う,ことなどが必要 となる1)。しかし,実際には治療中断,不規則な服薬,薬 剤の副作用,等にて治療失敗例が後を絶たず,薬剤耐性 化の原因となるため,服薬を徹底せねばならない。今回 結核専門病院である当院で年間の入院治療成績を検討し たので報告する。 対象と方法  当院に 2011 年度に入院治療を行ったのは 296 例で,男 性が 196 例で平均年齢が 63.8 歳,女性が 100 例で 70.3 歳 であった。これらについて標準治療が可能であったか検 討を行った。また標準治療にて副作用が生じた場合の対 応と,耐性薬剤がみられた場合の対応について検討を行 った。このなかでイソニアジド(INH),リファンピシン (RFP)耐性の多剤耐性結核症(multi-drug resistant tuber-culosis : MDR-TB)は 18 例 で,男 性 は 12 例 で 平 均 年 齢 55.3 歳,女性は 6 例で 45.3 歳であった。これらについて も化学療法のみで治療が可能であったか,外科的切除術 が必要であったか検討を行った。  統計解析は,「独立多群間の検定一元配置分散分析法・ 多重比較法」を用いた。母分散が等しい場合には,p < 0.05 をもって有意差とし,母分散が等しくない場合は, 「独立 2 群間の差の検定。正規分布性と t 検定」により, p < 0.05 をもって有意差とした。 公益財団法人結核予防会複十字病院1呼吸器センター呼吸器内 科,2臨床検査科 連絡先 : 奥村昌夫,公益財団法人結核予防会複十字病院呼吸器 センター呼吸器内科,〒 204 _ 8522 東京都清瀬市松山 3 _ 1 _ 24 (E-mail : okumuram@fukujuji.org)

(Received 15 Jun. 2015 / Accepted 28 Jul. 2015)

要旨:〔目的と方法〕結核専門病院である当院での年間の結核入院治療成績を後ろ向きに検討した。 〔結果〕2011 年度は 296 例が入院治療を行った。そのなかで多剤耐性結核症は 18 例であった。薬剤感 受性検査はイソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),エタンブトール(EB),ストレプトマイシ ン(SM)の主要 4 剤に感受性であったのが 229 例(77.4%)であった。入院期間内に 86.5% にあたる 256 例が INH,RFP,EB または SM の 3 剤,あるいはピラジナミド(PZA)を加えた 4 剤による標準治 療を開始し,66.8% にあたる 171 例が継続使用可能であった。 4 剤治療を行ったもののなかで 80 歳未 満は 76.0% が治療可能であったものの,80 歳以上は 49.3% のみが治療可能で有意差がみられた。 4 剤 標準治療における培養陰性までの期間は 40.6 日であった。標準治療で肝機能障害がみられたのは 4 剤 治療では 8.5% であり,80 歳以上,80 歳未満の間で有意差はみられなかった。多剤耐性結核症はそれ ぞれの耐性状況に応じた治療を行い,18 例中 7 例が外科的切除術を行った。〔考察〕結核治療は多剤 併用にて治療期間が長く,副作用が出現するなど治療継続が困難な場合がある。患者それぞれの副作 用,耐性状況に応じた治療の継続が必要である。 キーワーズ:肺結核,標準治療,薬剤感受性,副作用

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80 70 60 50 40 30 20 10 0 10_19 20_29 30_39 40_49 50_59 60_69 70_79 80_89 90_99 cases on admission

Fig. Tuberculosis patients on admission (2011) (MDR-TB) Male 196 cases, 63.8 y/o (12 cases, 55.3 y/o) Female 100 cases, 70.3 y/o ( 6 cases, 45.3 y/o)

Table 1 Standard treatments succession on admission

All <80 y/o ≧80 y/o HREZ HRE 160/234 cases (68.4%) 11/22 cases (50.0%) 127/167 cases (76.0%) 8/9 cases (88.9%) 33/67 cases (p<0.001) (49.3%) 3/13 cases (23.1%)

H : INH (isoniazid), R : RFP (rifampicin), E : EB (ethambutol), Z : PZA (pyrazinamide)

そのなかで 80 歳以上では 67 例中 33 例の 49.3% が 4 剤標 準治療可能であった。一方で,80 歳未満は 127 例の 76.0 % が治療可能であり,両者で有意差がみられた。3 剤治 療が可能であったのは 22 例中 11 例(50.0%)で,80 歳以 上は 13 例中 3 例(23.1%)のみで,80 歳未満は 9 例中 8 例(88.9%)が治療可能であった。  以上から MDR-TB を除いて標準治療 4 剤で開始した 234 例,3 剤で開始した 22 例のなかで合計 66.8% にあた る 171 例が標準治療を継続することが可能であった。  標準治療が可能であった症例のなかで固形培地による 8 週培養陰性化までの期間は,PZA を含む 4 剤使用例で は 40.6(±24.0)日であった。これらのなかで糖尿病合 併例では 51.7(±27.0)日,非合併例では 36.9(±21.7) 日と有意に糖尿病合併例で菌陰性化に期間を要した。一 方,3 剤治療例は治療開始時より菌陰性の症例もみられ たことから,37.4(±21.7)日と菌陰性化までの期間は 短かった。 ( 2 )標準治療困難時の対応について  a )標準治療にて肝機能障害出現時の対応   4 剤標準治療開始後,肝機能障害が 234 例中 20 例(8.5 %)にみられた。このなかで 80 歳未満は 14 例で 8.4% に, 80 歳以上では 6 例で 9.0% にみられ,両者で有意差はみ 例を占め,次に 70 歳代が 54 例,90 歳代は 21 例と,80 歳 以上が93例(31.4%),70歳以上が全体の49.7%を占めた。 症例は肺結核が 295 例(脊椎結核,結核性髄膜炎,粟粒 結核,結核性胸膜炎等,肺外結核合併症も含む)で,肺 外結核(結核性胸膜炎)が 1 例であった。男性 38 例,女 性 11 例の計 49 例(16.6%)が過去に結核の既往があっ た。また 68 例に糖尿病の既往があった。薬剤感受性検査 は INH,RFP,エタンブトール(EB),ストレプトマイシ ン(SM)の主要 4 剤に感受性であったのが 229 例(77.4 %),INH に耐性であったのが 19 例(6.4%),RFP に耐性 であったのが 1 例(0.3%)(ただし,前医では INH,RFP 耐性の多剤耐性結核として紹介)にみられた。INH,RFP 耐性の MDR-TB が 18 例(6.1%)にみられた。 ( 1 )標準治療成績  入院後 INH,RFP,PZA,EB あるいは SM の 4 剤によ る標準治療,またそれに準じた治療で開始したのが 234 例(79.1%)にみられた。そのなかで 80 歳以上において は 93 例中 67 例が 4 剤で治療を開始した。一方で INH, RFP,EB の 3 剤で治療を開始したのが 22 例(7.4%)で, そのうち 3 例は当院では治療開始時より喀痰塗抹,培養 ともに陰性の症例であった。22 例中 80 歳以上は 13 例で あった。以上から 86.5% にあたる 256 例が 4 剤あるいは

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Table 2 Liver dysfunction on standard treatment

Table 3 Coping with liver dysfunction

All <80 y/o ≧80 y/o a) HREZ b) HRE 20/234 cases (8.5%) 2/22 cases (9.1%) 14/167 cases (8.4%) 0/9 cases 6/67 cases N. S (9.0%) 2/13 cases (15.4%)

a) Liver dysfunction on HREZ   HRZE→HRE

  HRZE→RE/LVFX   HRZE→REZ   HRZE→HEZ/LVFX   HRZE→HES/LVFX

  HRZE→HEZ (decrease of platelet)   No treatment (drug induced eruption) b) Liver dysfunction on HRE

  HRE→RE/LVFX 20/234 cases (8.5%) 9 cases 6 1 1 1 1 1 2/22 cases (9.1%) 2 cases

Table 4 Reasons for changing from RFP to RBT

RFP→RBT 15/256 cases (5.9%)  Appetite loss 11 cases

 Renal dysfunction 2 cases  Liver dysfunction 1 cases  Arrhythmia (arterial fi brillation) 1 case LVFX : levofl oxacin られなかった。 3 剤標準治療では肝機能障害が 22 例中 2 例(9.1%)にみられ,どちらも 80 歳以上の症例であった (Table 2)。4 剤治療で肝機能障害を起こした後,3 剤標 準治療が可能であったのが 20 例中 9 例みられた。また RFP,EB,レボフロキサシン(LVFX)にて治療可能であ ったのが 6 例みられた。INH による肝機能障害を疑い, RFP,EB,PZA で治療可能であったのが 1 例,RFP によ る肝機能障害を疑い,INH,EB,PZA,LVFX にて治療を 行ったのが 1 例,INH,EB,SM,LVFX で治療を行った のが 1 例,INH,EB,PZA が 1 例であった。一方で薬疹 も出現し,治療中断,原因薬剤が特定できず治療再開で きなかったのが 1 例存在した。以上より肝機能障害出現 時はINH,RFPを 2 剤併用できたのが20例中 9 例のみで, その他は INH,RFP のいずれかのみを使用した。また標 準治療開始後肝機能障害が出現し,その後 PZA が使用で きたのは 20 例中 3 例のみであった。   3 剤治療にて肝機能障害が出現し中断した 2 例につい てはいずれも RFP,EB,LVFX にて治療可能であった (Table 3)。  b )標準治療継続困難にて LVFX 使用例について   標 準 治 療 が 困 難 で LVFX を 使 用 し た の は 合 計 37 例 (14.5%)で,主な使用理由は INH 耐性によるものが 13 例 で,標準治療で肝機能障害にて LVFX を使用したのが 12 例みられた。LVFX を使用した症例での 8 週培養陰性ま での期間は 40.8(±18.7)日で,標準治療と有意差はみ られなかった。  c )RFP の使用が困難にてリファブチン(RBT)使用 例について(Table 4)  今回の標準治療で RFP が副作用で使用できず,RBT に変更することによって治療可能であったのが 15 例 (5.9%)みられた。主な変更理由は食欲不振が 11 例,腎 機能障害 2 例,肝機能障害 1 例,不整脈(心房細動)が 1 例であった。RFP 使用例( 4 剤治療)では 8 週培養陰 性となるまでに前述のように 40.6(±24.0)日で,RBT 使用例は 40.4(±26.9)日で有意差はみられなかった。 ( 3 )INH 耐性時の対応について  INH 耐性,RFP 感受性と判明したのが 19 例(6.4%)に みられた。そのなかで 11 例は INH 以外にも SM にも耐性 がみられた。これらに対して LVFX を追加して菌陰性化 が得られたのが 19 例中 11 例,SM 追加にて対応したのが 1 例,4 剤標準治療をそのまま継続したのが 1 例みられ, これらは入院期間内に菌陰性化が得られた。また薬剤感 受性結果判明前に死亡したのが 2 例,自己退院したのが 1 例みられた。一方で 4 剤標準治療開始後 EB による薬 疹の疑いにて中止し INH,RFP,PZA で治療を行ったの が 1 例みられた。すなわちこの症例は INH が耐性であっ たため,RFP,PZA の 2 剤で治療を開始し,その後 RFP 単剤で治療を行ったことになる。この症例は入院期間内 に菌陰性化が得られており,治療も終了しており当院通 院期間内には再発はみられなかった。 ( 4 )RFP 耐性時の対応について  RFP 耐性が 1 例(0.3%)みられたが,前医では INH 耐

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したため,INH を 3 倍量の 15 mg/kg で,PZA,エチオナ ミド(TH),パラアミノサリチル酸(PAS),SM にて治 療を行い菌陰性化が得られた。  標準治療を開始できなかった症例も含めて,MDR-TB を除いた 278 例中,入院治療にて 8 週培養陰性化が得ら れたのは 76.3% にあたる 212 例で,治療中断となったの は 10 例(3.6%)にみられた。一方で 56 例(20.1%)が入 院期間内に死亡した。56 例中 34 例は 80 歳以上であった。 治療中断となった理由は薬疹出現にて原因薬剤を特定で きなかったのが 2 例,自己退院が 4 例,腎機能障害にて 転院となったのが 2 例,入院中肺塞栓症合併にて転院と なったのが 1 例,心筋症にて転院となったのが 1 例であ った。 ( 5 )MDR-TB の治療成績  INH,RFP 耐性の MDR-TB は 18 例で,男性は 12 例で平 均年齢 55.3 歳,女性は 6 例で 45.3 歳であった。この 18 例 の な か で INH,RFP 以 外 に 二 次 抗 結 核 薬 で あ る KM, LVFX にも耐性を示す超多剤耐性結核(extensively multi-drug resistant tuberculosis : XDR-TB)は,男性 2 例,女性 1 例の計 3 例存在した。18 例のなかで過去に結核治療歴 があるのは 13 例存在した。耐性薬剤数は MDR-TB では INH,RFPの 2 剤のみは 4 例で,3 剤が 3 例,4 剤が 3 例, 5 剤が 3 例,6 剤が 1 例,7 剤が 1 例であった。XDR-TB においては 2 例が 8 剤に, 1 例が 10 剤に耐性を示した。 抗結核薬はそれぞれの耐性状況に応じた治療を行った。 XDR-TB の 1 例を除いて 4 剤以上の薬剤にて治療を行う ことが可能であった。治療は外科的治療を MDR-TB が 5 例,XDR-TB が 2 例の合計 7 例に行った。内科的治療は 感受性薬剤をできるだけ多く使用することを目標とし, 4 剤使用できたものが MDR-TB で 5 例,5 剤使用できた も の が TB が 3 例,XDR-TB が 1 例,6 剤 が MDR-TB が 4 例,XDR-MDR-TB が 1 例,7 剤が MDR-MDR-TB で 2 例,9 剤 使 用 で き た の が MDR-TB で 1 例 で あ っ た。た だ し XDR-TB で 1 剤のみしか使用できなかった症例も存在し た。結果は,胃癌を合併した 1 例は入院期間中に死亡し たが,他の 17 例は菌の陰性化が得られた。 考   察  結核治療の原則は化学療法が中心であり,大半の結核 は化学療法で治癒させることができる。標準治療を行う ことができれば再発率は 1 ∼ 2 % である。標準治療を開 始するにあたって PZA 使用の可否が問題となるが,結核 治療の国際基準 ISTC(International Standards for

Tubercu-PZA を使用しない場合,治療期間は 6 カ月から 9 カ月へ と 1.5 倍長くなる。また薬剤性肝障害の出現頻度は PZA 使用の有無によって大差がないといわれている1)。当院 での肝機能障害出現頻度は,3 剤治療で開始した症例が 少なかったため有意差検定はできなかったが,全体で 4 剤治療では 8.5%,3 剤治療では 9.1% と大きな差はみら れなかった。また 4 剤治療では 80 歳未満と 80 歳以上で 有意差はみられなかった。薬剤耐性菌であった場合, 4 剤使用のほうが新たな耐性発現防止のためにも安全であ り,治療期間の短縮にもつながることから,全身状態を 随時確認しながら可能なかぎり 4 剤治療で開始すること を検討してもよいのではないかと思われた。宮沢ら2) 検討でも INH,RFP,EB,PZA の 4 剤で治療を行った 80 歳以上の高齢者と 80 歳未満では肝障害出現頻度は同程 度であり,80 歳以上でも PZA 併用初期強化短期化学療 法を行うことが望ましいとしている。  標準治療期間は 6 カ月から 9 カ月と長期にわたること から継続が困難となる場合もある。今回 79.1% にあたる 234 例が 4 剤で,7.4% にあたる 22 例が 3 剤で標準治療を 開始したものの,そのうちの 66.8% にあたる 171 例のみ が治療を継続することが可能であった。4 剤治療では 80 歳未満で 167 例中 127 例の 76.0% が治療可能であったも のの,80 歳以上では 67 例中 33 例の 49.3% のみが可能で, 両者の間で有意差がみられたが,どちらも予想よりかな り低い成績であった。全症例のなかで 80 歳以上が 31.4%, 70 歳以上が 50% 近くと高齢者が多かったこと,MDR-TB を除いた 278 例中 56 例が死亡しているなど重症例が多か ったこと,RFP は本邦では内服薬しか存在しておらず重 症例では服薬の継続が困難になる,などが原因として挙 げられるが,いかに長期間の治療継続が困難であるか痛 感させられた。  今回の検討で INH 耐性,RFP 感受性が 19 例(6.4%)み られた。RFP が薬剤感受性にて使用可能で INH が使用で きないとき,結核診療ガイドラインではRFP,PZA,SM, EB の 4 剤が使用できればこれを第一選択とし,排菌量 が多い場合には LVFX または TH を加えた 5 剤とするこ とを検討するとしている。今回 19 例の INH 耐性結核の なかで 11 例が SM にも耐性を認めた。RFP が短期化学療 法として導入されるまで,1950 年代から 60 年代にかけ て INH,SM,PAS などの併用療法が行われた時代があ り,そのころは日本でも結核が蔓延していた時期であっ た。そのころ結核に感染し後に高齢となってから再燃し た患者のなかには,INH 耐性時に SM を使用できないこ

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とは少なくないと思われる。また入院治療から外来治療 に移行した場合,外来で週 2 回程度 SM を継続すること は患者にとっても負担が大きい。よって LVFX を使用す ることは有用であると思われた。一方で INH 耐性にもか かわらず 4 剤治療を継続し,後に薬疹の出現にて EB を 中止,2 カ月後に PZA を中止した症例が 1 例存在した。 この症例は結局,RFP,PZA の 2 剤で治療を行いその後 RFP 単剤で治療していたことになり,薬剤感受性検査の 結果を十分に把握していなかった可能性がある。再発, 薬剤の耐性化を招く可能性もあり,今後反省しなければ ならないと思われた。  RFP によると思われる副作用にて使用できず,RBT に て使用可能であった症例がみられた。RBT は 2008 年 10 月より日本で発売となったリファマイシン系薬剤であ り,日本結核病学会では,「 薬剤相互作用のため RFP の 使用が制限される場合」,「 副作用のため RFP 使用が制限 される場合」としている。今回相互作用にて変更した例 はみられなかったが,RFP による食欲不振にて RBT へ変 更した例がみられた。森本ら3)の検討でも RFP によって 副作用の出現した 28 例中 16 例が消化器症状であったと し,RFP から RBT への変更によりその他の抗結核薬を使 用した場合と比較して治療期間の短縮のメリットがある 可能性を示唆している。  結核の治療は多剤併用療法が原則であり,長期間にわ たることから副作用の出現が大きな問題となる。特に多 く認められる副作用の 1 つに肝機能障害がある。ガイド ラインでは標準治療で肝機能障害が出現した場合,肝毒 性が低い SM,EB,LVFX の 3 剤を使用し肝機能の回復 を待ち,肝機能安定後に INH,RFP のいずれかを追加す るとしている。肝機能が安定していれば,PZA による肝 炎の可能性が高いと考え,最終的には INH,RFP,EB ま たは SM の 3 剤治療を続けるとしている。われわれの成 績では 4 剤治療で肝機能障害が出現した 20 例のうち 9 例は INH,RFP,EB の 3 剤で対応が可能であった。残り の 11 例は INH と RFP を併用することは困難で,INH ある いは RFP のいずれかと LVFX を追加にて対応した症例が 多かった。LVFX は腎排泄であり肝機能障害をきたすこ とが少ないことから,肝機能障害出現時に LVFX を使用 することは有用であると思われる。  MDR-TB の治療においても前述のように可能なかぎり 感受性の薬剤を 3 剤以上使用する必要がある。感受性の 薬剤が 3 剤以上なら治癒する可能性が高いが,2 剤以下 なら失敗する可能性が高い4)。2011 年度における当院の MDR-TB 症例は,1 例の XDR-TB を除いて 4 剤以上の感 受性薬剤が使用可能であった。また 17 例中 7 例に外科的 切除術を行った。田尾ら5)が行った九州地区における多 剤耐性結核の臨床的検討においては,内科的治療群では 43% に排菌陰性化がみられたのに対し,外科的治療群で は 75% に排菌陰性化がみられたとしている。Jeon ら6)は, MDR-TB の予後良好の因子として,外科的切除術が可能 であることと Linezolid の使用を挙げている。MDR-TB で はINH,RFPの最も強力な薬剤が使用できないことから, 可能なかぎり外科的切除術が可能か検討すべきである。 今回使用可能な薬剤が 1 剤のみの症例が XDR-TB で 1 例 存在した。この症例は入院期間内に菌の陰性化が得ら れ,いったん前医へ戻ったが今後再排菌する可能性は十 分にあると思われるため,他者への感染対策も含めてし っかり経過を追っていく必要があると思われる。  本論文は,第 89 回日本結核病学会総会(岐阜)にて発 表した。

 著者の COI(confl icts of interest)開示:本論文発表内 容に関して特になし。 文   献 1 ) 日本結核病学会編:「結核診療ガイドライン」Ⅴ章 結 核の治療. 南江堂, 東京, 2012. 2 ) 宮沢直幹, 堀田信之, 都丸公二, 他:80 歳以上の高齢 者結核における PZA 併用治療の検討. 結核. 2013 ; 88 : 297 300. 3 ) 森本耕三, 吉山 崇, 久世眞之, 他:結核症へのリフ ァブチンの使用経験. 結核. 2013 ; 88 : 625 628. 4 ) Iseman MD : Treatment of multidrug-resistant tuberculosis.

N Eng J Med. 1993 ; 329 : 784 791.

5 ) 田尾義昭, 北里裕彦, 川崎雅之, 他:多剤耐性結核の 臨床的検討― 2004∼2009 年の九州地区入院症例の検討. 結核. 2011 ; 86 : 751 755.

6 ) Jeon DS, Kim DH, Kang HS, et al. : Survival and predictors of outcomes in non-HIV-infected patients with extensively drug resistant tuberculosis. IJTLD. 2009 ; 13 : 594 600.

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Abstract [Objective and Methods] We analyzed the clinical effects of treatment for Mycobacterium tuberculosis infection for 1 year in our specialized hospital in 2011. Two hundred and ninety-six (296) patients were admitted and received treatment.  [Results] Two hundred and fi fty-six patients (86.5%) were started on the standard treatment with 3 drugs (isoniazid [INH], rifampicin [RFP], and ethambutol [EB] or strepto-mycin [SM]) or 4 drugs (INH, RFP, EB or SM, and pyrazinamide [PZA]). One hundred and seventy-one patients (66.8%) continued receiving the standard treatment during the admission period. Of 160 cases who could continue 4 drugs, under 80 year-old patients were 127 cases (76.0%), but over 80 year-old patients were 33 cases (49.3%). The mean duration for negative conversion of sputum culture was 40.6 days. Liver dysfunction due to 4 drugs (INH, RFP, EB, and PZA) was noted in 8.5% of patients. Eighteen of the 296 patients had multi-drug resistant tuberculosis (MDR-TB). Each MDR-TB patient received individualized treatment. Moreover, 7 of the

MDR-TB cases were treated surgically.

 [Discussion] Treatment of TB had taken long time, and some patients could not continue the treatment owing to the adverse effects of drugs. Hence, it is important to monitor adverse effects of drugs in each patient.

Key words : Pulmonary tuberculosis, Standard treatment, Drug-sensitivity test, Side effect

1Department of Respiratory Medicine, 2Department of

Clin-ical Laboratory, Fukujuji Hospital, Japan Anti-Tuberculosis Association (JATA)

Correspondence to: Masao Okumura, Department of Respi-ratory Medicine, Fukujuji Hospital, Japan Anti-Tuberculosis Association (JATA), 3_1_24, Matsuyama, Kiyose-shi, Tokyo 204_8522 Japan. (E-mail: okumuram@fukujuji.org)

1Masao OKUMURA, 1Yuka SASAKI, 1Takashi YOSHIYAMA, 1Shuichi MATSUDA, 1Takeshi OSAWA, 1Kozo MORIMOTO, 2Hideki YANAI, 1Atsuyuki KURASIMA,

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