• 検索結果がありません。

Table 1 Characteristics of the patients Table 2 Grading of the extent of pleural effusion and thickness on CT findings

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Table 1 Characteristics of the patients Table 2 Grading of the extent of pleural effusion and thickness on CT findings"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

652日 胸 疾 会 誌24(6), 1986. ● 原 著

CT所

見 か ら見 た 癌 性胸 膜 炎53例 の治療 とそ の経過

-特 に多房 化 につ

いて-福田 泰樹

本間

中田 正幸

米田 修一

野口 行雄

吉田 清一

要 旨: 癌 性胸 膜 炎の 治療 経過 を知 るた め に, 53例 の 原発 性肺 癌 患者 の癌 性胸 膜 炎のCT像 延 べ101例 につ いて, CT所 見 と臨床 経過 との関 係 に つい て検討 した. 組 織 型 は, 43例 が腺 癌 で他 は扁 平上 皮癌4例, 小 細胞 癌4例, 大 細胞 癌2例 で あ った. 局所療 法 と して用 いた注 入 薬剤 はadriamycin, OK-432が 多 く, 治 療 回数 は平 均6. 1回, 中央値3回 であ っ た. 全体 の中 間生存 期 間 は6カ 月 で あ った. 胸 膜 癒着 術 が成功 しな か った例 で は, CT上, 胸水 の増 生, 胸膜 の肥厚, 胸膜 腔 の 多房化 が 見 られ た. 多 房 化 は21例39. 6%に み られ, う ち治療 開 始後1カ 月 以 内 また は治 療 回 数3回 以 内 に 出現 した もの は 各 々13例 で あ った. 多 房化 後 に も悪性 細胞 の 出現 をみ る もの が多 く, また多房 化 によ る延 命 効果 もみ ら れ なか った. 胸 腔 の多 房化 は難 治 化 の原 因 と考 え られ, これ を防 ぐため の対 策 につ いて検 討 を加 え た. キー ワー ド: 原 発性 肺 癌, 癌性 胸膜 炎, CT検 査, 多 房化, 胸 腔 内注 入療 法

Lung cancer, Carcinomatous pleuritis, CT examination, Loculation, Intrapleural instillation therapy は じめ に 原 発 性 肺 癌 の 経 過 中 に そ の50%に 合 併 す る と さ れ る1)2)癌性 胸 膜 炎 は, そ の 胸 水 の 貯 留 に よ り呼 吸 困 難, 呼 吸 不 全, さ ら に は 循 環 不 全 を 来 す だ け で な く, 治 療 と して の 排 液 に よ る タ ン パ ク の 喪 失, 栄 養 状 態 の 悪 化, 感 染 の 危 険 性1)3)な ど, 患 者 に 与 え る 負 担 は 大 き い. そ こ で 胸 水 の 排 除, 肺 の 再 膨 張, 呼 吸 状 態 の 改 善, 悪 性 細 胞 の 陰 性 化, 胸 膜 腔 の 閉 鎖(胸 膜 の 癒 着), 胸 水 の 再 貯 留 の 防 止 な ど を 目標 と し て, 外 科 的 治 療 を 始 め と し て種 々 の 治 療 が 試 み ら れ て き た3)∼5). 内科 的 治 療 と し て は, 1969年 にLeiningerら がtubedrainageと 化 学 療 法 剤 の 注 入 療 法 を 発 表 し て 以 来1), こ れ が 広 く行 わ れ て き た. このtubedrainage, 及 び 薬 剤 注 入 療 法 の 限 界 を 指 摘 す る意 見 も あ る が6), 実 際 に 多 くの 報 告 で 生 存 期 間 の 延 長 な ど そ の 有 効 性 が 確 認 さ れ, 現 在 の と こ ろ, 内 科 的 に は 本 療 法 が 最 も好 ま しい と考 え ら れ て い る1)3)7)∼10). し か し, tubedrainage法 に よ る 内 科 的 治 療 の 胸 水 の治療 経過 を 経時 的 にみ る と, そ の良好 な治療 成績 の 報 告 に もか かわ らず, 一 時的 に コ ン トロール で きた胸 水 が再 貯 留 した り悪 性細 胞 の再 出現 を み る こ と も多 く, さ らに長 期頻 回 の治療 に もかかわ らず 胸 水を コン トロールで きず に, 胸 膜 の肥 厚 の進行 や胸 水 の中 に隔 壁 が形成 され(多 房化), 治療 に難 渋 す る こ とも多い. 一 方, CT検 査 の普 及 に伴 い, 胸 水 量や 胸膜 の状 態, さ らに胸 水 内部 の状 態(特 に隔壁 の形 成=多 房化)な どの胸腔 内病 変 が, これ までの胸 部 単純 写真 と比 較 し て か な り正 確 に把 握 で き る よ うに な った10). そ こで 我 々 は, 原発 性 肺癌 の癌 性胸 膜 炎 につ いて, 治療(胸 腔 内薬剤 注 入)と そ の経過 に関 して, CT所 見 上 の胸 水 量, 胸膜 肥 厚, 胸 腔 の多 房化 につ い て検 討す る ことで, 癌 性 胸 膜 炎 の 治療 経 過 を 経 時 的 に把 握 しよ う と試 み た. 対 象 お よ び方 法 過去4年 間 に当 が んセ ン ターで入 院加 療 を うけた原 発 性肺 癌 の癌 性胸 膜 炎患 者 中, CTに よって胸 水 の 状 態 を把 握 で きた53例 のCT像, 延 べ101件 につい て検 討 した. 患者 の 臨床像 は表1の ご と くで あ り, 男 女比29/24, 〒362埼 玉 県 北 足 立郡 伊 奈 町 大 字 小室818番 地 埼 玉 県 立 が ん セ ン ター 呼 吸器 科 (受付 日昭和60年10月7日)

(2)

CT所 見 か ら見 た 癌 性胸 膜 炎53例 の 治療 とそ の 経過 653 平 均 年 齢57. 2歳, 腺 癌 が43例81. 2%と 圧 倒 的 に 多 く以 下 扁 平 上 皮 癌, 小 細 胞 癌, 大 細 胞 癌 が 各 々4例, 4例, 2例 で あ っ た. 原 発 巣 別 で は 原 発 巣 の 明 ら か な もの50 例 中23例43. 5%が 左 右 い ず れ か の 下 葉 の 原 発 で あ っ た. 臨 床 病 期 で はIII期 が18例34. 0%, IV期 が35例 66. 0%, 治 療 回 数(薬 剤 注 入 回 数)で は5回 以 内 が31 例58. 5%で, 平 均6. 1回, 中 央 値3回 で あ っ た. 注 入 薬 剤 はadriamycin(以 下ADR)単 独, OK-432(以 下OK) 単 独, ADR+OK, ACNU, neothramycin(以 下 NTM), mitomycin (以 下MMC), aclacinorubicin(以 下ACM), そ の 他(bleomycin, methotrexate)な ど で, 前3者 が 注 入 薬 剤 別 延 べ 症 例 数82例 の う ち57例 69. 5%を 占め て い た. CT撮 影 回 数 は2回 以 内 の も の が38例71. 7%を 占 め て い た.

尚, 局 所 療 法 に 加 え て 全 身 的 化 学 療 法 も併 用 し て い る.

Table 1 Characteristics of the patients

Table 2 Grading of the extent of pleural effusion and thickness on CT findings

(3)

654 日胸 疾 会 誌24(6), 1986. 表2の ご と く, 胸 水 量 をCT所 見 上V0か らV5ま で, 胸膜 の肥 厚 の状態 をTOか らT4ま で の各段 階 に分 け, そ の模 式 図 を図1に 示 した. VlとV2と は半 月上 に 貯 留 した 胸 水 の頂 点 が胸 隔 の 厚 さの1/2を 越 え るか 否 かで 分け た. 大 量 の胸 水 を認 め る もので, 肺 に含気 を 残 す もの はV3, 肺 に含 気 を残 さない ものはV4, 縦 隔 の対側 へ の 変位 を認 め る もの をV5と した. 胸 膜 の 肥 厚 に つい てはT1, T2は 各 々胸膜 の 肥厚 が一 部(Tl)ま た は全 周 に及ぶ もの(T2)と した. 被 包化 は, 図1の ご と く, 臓 側胸 膜 と壁 側胸 膜 との接 点 が鈍(round)な もの とし, 臓側 胸膜 が 肺 に対 して 凹 とな って い る もの をT3, 凸 とな って い る もの をT4と して 区別 した(但 し両者 の差 は肥 厚 の程 度の 差 とい うよ りも, 被 包 化 さ れ る胸 水 量 の少 ない ものがT4へ と進 行 す る よ うに思 わ れ た). さらにCT上, 胸 水中 に明 らか な隔壁 形 成 を 認め るか, また は治療 時 に混 入 した空 気 が複 数 の鏡面 を形 成 した り胸 水 中 にtrapさ れ た 状 態 が 見 られ た も のを 多房 化 とした(図1, 図2). 結 果 治 療開 始 か らCT撮 影 までの期 間 と胸 水量, 胸 膜 肥 厚 との関 係 は図3A, Bの ご と くであ った. 胸水 量 は, Fig. 1 Schematic example of grading the extent

of pleural effusion (Vl-V5), the thickness of the pleura (T3-T4) and loculation.

loculation

Fig. 2 The loculated pleural space. A) Without contrast medium. Multiple free air spaces were observed in pleural effusion. B) With i. p. tion of contrast medium, The loculated pleural

space was demonstrated more clearly.

prior after 1-2 2-3 3-6 6-12 12- m n=34 n=29 n=8 n=6 n. 8 n=8 n=8 □v0 □v1 □v2 □v3 □v4 □v5 (A)

Fig. 3 Analysis of the CT findings concerning the period after the initial instillation. A) Volume of the pleural effusion. B) Thickness of the pleura. Both were liable to increase in proportion to the period of observation. □T0 □T1 □T2 □T3 □T4 prior after 1-2 2-3 3-6 6-12 12- m n=34 n=29 n=8 n=6 n=8 n=8 n=8 (B)

(4)

CT所 見 か ら見 た癌 性 胸 膜 炎53例 の治 療 とそ の 経過 655 治療期 間 が長 い もの程 多 い傾 向を示 す. 一方, 胸 膜 は 治 療前 に は過半 数 に肥厚 を み ないが, 経 過 とと もに肥 厚 所見 が強 くな り, 1年 後 には胸 水 を被 包化 す る もの が過半 数(6/8)を 占め るに至 って い る. 治療 回 数 と胸 水量, 胸 膜 肥 厚 との関 係 は 図4A, B の ご とくで あ った. 胸水 量 は治療 回 数 の多 い ものほ ど 多量 の胸 水 を有 す る傾 向が み られ るが, これ は逆 に 多 量 の胸 水 に対 して頻 回 に治療 が行 わ れ るため と も考 え られ る. また胸膜 は治療 回数 と共 に肥 厚 を示 す もの が 増加 す るが, 治療 期 間 との場 合 ほ どにそ の傾 向 はは っ き りして いな い. 多房 化 は53例 中21例39. 6%に み られた. 表3は そ の 一 覧で あ る. 多房 化 確認 までの間 に行わ れた 治療 を注 入薬 剤別 にみ る と, 7処 方 が 行わ れ てお り(ADR+OK 13例(32), ADR4例(15), OK4例(10), MMC 5例(6), NTM2例(5), ACM2例(3), そ の 他2例(6):()内 は全 対象53例 に おけ る処方 例 数), この 中で, MMC注 入例6例 の うち5例 に多 房化 を認 めて い る こ とは, 興味 深 い. 治療 期 間 と多房 化 との関 係 では, そ の頻 度 をみ る と 図5Aの ご と く, 治療 開始1カ 月 以内 の もの では29例 中13例46. 4%に そ の 発 生 を み る が, そ れ 以 後 は 10∼30%の 発 生率 でや や低 くな る. 一一方, 多房 化 を生 じた21例 でみ る と, 図5Bの ご と く13例61. 0%が 治 療 開 始1カ 月以 内 に生 じた もの であ る. 注入 回数 との関 係で は図6Aに 示 す ご と く, 治療 回 数 と多房化 の発 生頻 度 との間 には特 に 明瞭 な関 係 はみ られ なか った. 尚, 治療 前 に既 に多 房化 が み られた も のが1例 あ ったが前 医 で の治療 を否 定 で きなか った. 多 房 化 例21例 で み る と 図6Bに み る ご と く13例 61. 6%が3回 以下 の注 入で発 生 した もので あ る. Fig. 4 Analysis of the CT findings concerning the

number of i. p. instillation therapy procedures. A) Volume of the pleural effusion. B) Thickness of the pleura. Concerning the number of therapy, both had the same tendency in Fig. 2.

0 1 2 3-5 6-10 11-n=35 n=18 n=14 n=15 n=13 n=6 □v0 □v1 □v2 □v3 □v4 □v5 (A) 0 1 2 3-5 6-10 11-n=35 n=18 n=14 n=15 n=13 n=6 □T0 □T1 □T2 □T3 □T4 (B)

Fig. 5 Analysis of the cases of loculated pleural space from the standpoint of the period of the observation. A) Incidence of the loculation. Loculation observed in approximately half

(46. 4%) of the cases in which the observation period was less than 1 month and then the

cidence gradually decreased with time. B) The observation period of 21 cases with loculated pleural effusion. In 13 cases, loculation developed within 1 month after the initiation of the local

therapy. (A)

(5)

656 日 胸 疾 会 誌24(6), 1986. 表3に 示 した 多房 化例21例 中, 2回 以 上CT撮 影 を 行 った ものは14例 で 胸水 量, 胸膜 肥 厚 いずれ も経 過 と 共 に増 強 して いた. この内多 房化 を確 認 した 後 に さ ら にCT撮 影 が行 われ た症 例3, 4, 12, 13で は, 多 房化 後 に胸 水量 の増 加 は な か った が, 症 例4, 12に お い て は胸 膜 の 肥厚 が 各 々T1→T3, T2→T3へ と進 行 して い た. CT上, 多房化 を確 認 した後 に胸 水 の細胞 診 を 行 っ た12症 例 におい ては, 1例 が 胸水 中 に悪性 細胞 を認 め な か った に過 ぎず, 残 り12例で は, た とえ一 時的 に悪 性細 胞 が消失 して も, そ の後, 何 れ かの 時期 に悪 性細 胞 の出 現を みて お り, 特 に多 房化 を確 認 した後1カ 月 以 内に悪 性細 胞 の再 出現 を見 た もの は8例66. 7%に 及 ん でい る(表3). 53例 全 体 の, 胸 膜炎 治療 開 始 日か ら算定 した中 間生 存期 間 は6カ 月 であ った. 多房 化 例 の中間 生存 期 間 は 4ヵ 月 で, 多 房化 を確 認 出来 なか った 残 り32例の それ の8カ 月 よ り短 い傾 向が 見 られた が, 統計 学的 に有 意 差 を認 めな か った. 考 案 当セ ン ターで 加療 を受 け た肺癌 の癌 性胸 膜 炎患 者53 例 のCT所 見 を, 胸 水量, 胸 膜肥 厚 の程 度, そ して特 に治 療 の難渋 化 を招 く事 が多 い に もか かわ らず充 分 な 検 討 が行 われ て い ない胸 水 の多房 化 に注 目し, 治 療 回 数, 治療 期間 な どの 臨床経 過 との関係 に つい て検 討 を 加 えた. 胸水 量 と治療 経過 の関係 で は, 治 療期 間 が長 いほ ど, 大 量 の胸 水を有 す るもの が増 加 し, 12カ 月以上 治療 を 行 った症例 の半 数 は, 患側 の胸 膜腔 の大部 分 を占 め る 胸 水 を有 して いた. 治 療 回数 にお いて も同様 の傾 向が み られ, 11回 以上 の薬 剤注 入 を行 った 症例 で は総て, 患 側 の胸 膜腔 の大 部 分を 占め る胸 水 が観 察 され た. こ の こ とは, 治 療開 始後, 比較 的早 い時 期 に胸膜 癒着 に 成 功 しない場 合 には, 局所 療 法 を続 けて も胸水 は増 加 し, 患側 胸腔 の大 部 分を 占め るよ うにな り, 一 層胸 膜 の癒着 が難 し くな る ことを示 してい る. が, 逆 に, 胸 水量 が多 い もの は, 局所療 法 に反 応 し難 く, 大 量 の胸

Table 3 Characteristics of the Patients with Loculated Pleural Space

Hist: histology, Prim: primary site, Surv: survival time, Inst: i. p. instillation Adc: adenocar-cinoma, Sqc: squamous cell caradenocar-cinoma, Lcc: large cell carcinoma, RUL: right upper lobe, RML: right middle lobe, RLL: right lower lobe, LMBr: left main bronchus, LUL: left upper lobe, LLL: left lower lobe,?: (primary site)unknown.

(6)

CT所 見 か ら見 た癌 性 胸 膜 炎53例 の治 療 とそ の経 過 657 水 が残存 す るた め に治療 経過 が長 引 いた とも考 え られ よ う. また胸 膜 の肥 厚 にお いて も同様 に, 治療 期 間 が12カ 月 以上, また は治療 回数 が11回 以上 に及 ぶ もので は, いず れ もそ の半 数以 上 に, 胸 水 の被 包化 の傾 向 がみ ら れ た. しか し, 胸 膜肥 厚 に関 しては, 治療 回 数 よ り も 治療 期 間 との間 の方 が比較 的 明瞭 な相 関 関係 が見 られ るよ うに思わ れ た. つ ま り注 入薬 剤 に よ る胸膜 の刺激 よ りも, む しろそ の後 の経過 時間 の方 が胸 膜肥 厚 の程 度 に関 して は, よ り重要 な因 子 とな って い る と思 われ る. 今 回 の検 討 に おい て, 多房 化 は21例39. 6%に み られ た が, 治 療前 に多 房化 を認め た もの は1例 に過 ぎず, この1例 も前 医 での 治療 を否 定 で きなか った もの で, この こ とは治療 な どの操 作 が加 えられ なけ れば 多房化 は起 り難 い こ とを示 俊 す る. つ ま り, 多房化 の原 因 と して, 薬剤(抗 癌剤, 胸 膜刺 激 剤)の 刺 激 がか え って 胸水 貯 留 を促進 し, 壁側 胸膜 と臓 側 胸膜 を物 理的 に引 き離 す方 向に作 用 し, つ いで析 出 したfibrinが 胸 腔 内 に隔 壁 を形 成す る と考 え られ よ う. しか し一 方 では, 治療 回数3回 以 内, または 治療 期間1カ 月 以内 に生 じ た もの が, 観 察 され た多房 化 の60%以 上 を 占めて い る. 今 回の検 討 で は, 母 集 団 自体 に治療期 間 が短 い もの, 治療 回 数が 少 ない もの が多 いた め に(治 療期 間1ヵ 月 以 内の もの29例, 治 療 回数3回 以内 の もの42例), 多房 化例 の検 討 に おい て も, 上記 の よ うな結 果 が出た 可能 性 を考慮 す る必 要 はあ る. しか し上 記 の こ とは, 少 な くとも, 比較 的早 期 に しか も少 ない薬 剤注 入 回数 で も, 多房 化 が生 じ得 るこ とを示 して い る. つ ま り, 胸 水 の 治療 開始 早期 にで も多房 化 を きた し, 容 易 にそ の胸 膜 炎 が難治 化 とな り得 る恐 れ があ る と言 うこ とで あ る. 多 房化 の発 生頻 度, 39. 6%は, 長尾 らの報告(3/25, 12%)7)よ りかな り多 い. これ は当 セ ン ターの場合, 薬 剤 注 入後 ドレーンを 比較 的早 期 に抜 去す るた め, 薬 剤 に刺 激 され再 貯 留 した胸 水 がそ の まま多房 化 へ と移 行 し, 為 に, 多 房化 の発生 が増 加 した と考 え られ る. 今 後 の検討 課題 の一 つ と考 えてい る. また, 多房 化 を来 した 後 の胸 水の状 態 につ い ては, 肥 厚 は進 行す る傾 向 に あ り, この事 は, 多房化 自体 に よって排 液や 薬 剤注 入 が困難 に な るばか りで な く, 胸 水 の肺 圧 迫 に よる呼 吸床 の減 少, 胸膜 肥厚 に よ る肺 コ ンプ ライ ア ンスの低 下(trappedlung)1)な どを来 す こ とにな る. さ らに我 々 の検 討 で は, 多 房化 は必 ず しも 胸 水 中 の悪性 細胞 の コン トロールを意 味せ ず, そ れ に よる延命 効果 も期 待 出来 な か った こ とか らも, 胸 水の 治療 に あた って 多房化 は何 ら利点 の ない, 避 け るべ き 病 態 で あ る と考 え られ る. 多 房化 の治 療 につ いて は, 胸 膜 の肥 厚 と多房 化 が見 られ た難 治性 の非 悪性 胸膜 炎 例 で この多房 化 した部 分 を切 除 し, 肥 厚 した胸 膜 に切 開 を入れ た り切除 す る こ とで肺 を再膨 張 させ る こ とが で き, また そ の 後 胸 水 の 再 貯 留 が 見 られ な か った と Mooreら は報告 して い る11)が, 癌 性胸 膜炎 の 多房化 に これ を適応 す るには 問題 が あろ う. 以 上 の事 か ら, 胸水 の 内科 的治 療 に当 って は, 胸 膜 の肥厚 に よ って肺 の膨張 性 が失 われ る前 に早 期 に肺 の 再 膨張 を はか るこ とが 望 ま しい. さ らに これに加 えて, 多房化 を防 ぐ配慮 が必要 で あ る. Fig. 6 Analysis of the cases of loculated pleural

effusion from the standpoint of the number of i. p. instillations. A) Incidence of the loculation. There was no clear relationship between the

incidence and the number of i. p. instillations, but at least i. p. instillation seems to be a trigger for the biginning of loculation. B) The number of i.

p, instillations in 21 cases of loculated pleural effusion. In 13 cases (61. 5%) only less than 3

instillations were performed. (A)

(7)

658 日 胸 疾 会 誌24(6), 1986. ま と め 1)CT検 査 は胸 水の状 態 の把握 に有用 で あ った. 2)53例 の うち, 腺 癌 は43例81. 2%を 占 めた. 3)胸 水 量 と胸 膜肥 厚 の程 度 は, 治 療 回数 と治 療期 間 に依存 す る傾 向が み られた が, 胸水 量 は治療 回数 と, 胸 膜肥 厚 は治療 期 間 とに比較 的 深 い関 係 がみ られ た. 4)多 房 化 には, 薬 剤 注入 な どの何 らか の治療 行為 が 原因 と考 え られ, 一 方60%以 上 が治 療開 始1ヵ 月以 内, 薬剤 注入 回数3回 以 内に確 認 され た. 多房 化 は胸膜 の 肥厚 の進 行 の阻止 や, 胸水 中 の悪 性細 胞 の消失 を 意味 せず, 生 存期 間 の延長 に も寄与 しな い, 何 ら利 点 を持 た ない病 態で あ るの みな らず その後 の治療 を 困難 にす る. 5)従 って, 胸水 の 多房化 を 防 ぐこ とは胸 水治 療 上重 要 であ り, このた め に可能 な限 り早期 に 治療 を行 い, 肺 の再膨 張 と胸膜 の確 実 な癒着 を図 る方法 の開発 が必 要 であ る. 尚, この論文 の要 旨は1985年4月9日, 第25回 日本胸部疾 患学会総会で発表 した. 文 献

1) Anderson, C. B., Philpott, G. W. & Ferguson, T. B.: The treatment of malignant pleural effusions. Cancer, 33: 916, 1974. 2)太 田満 夫: 癌 性 胸 膜 炎 の診 断 と治 療. 肺 と心, 25: 1, 1978. 3)山 村 雄 一, 坂 谷光 則, 小 倉 剛, 平 尾 文 男, 岸 本 進, 古 瀬清 行, 河原 正 明, 福 岡正 博, 高 田 実, 桑 原 修, 池 上 晴 通, 中 村 慎 一 郎, 小 川 暢 也:癌 性 胸

水 を 伴 う肺 癌 に 対 す るNocardia rubra cell wall

skeleton(N-CWS)の 効 果. 癌 と化 学 療 法, 10:

63, 1983.

4)西 條 長 宏, 江 口研 二, 富 永 慶 昭, 新 海 哲, 清 水 英

治, 渋 谷 昌 彦, 島 袋 全 啓, 仁 井 谷 久 暢: 癌 性 胸 膜 炎

(肺 の 腺 癌 に よ る)に 対 す るNocardia rubra cell

wall skeleton(N-CWS)を 用 い たRandomized

trialに よ る 治 療 成 績. 癌 と 化 学 療 法, 10:290, 1983. 5)小 室 康 男, 西 島 昭 吾, 本 間 威, 吉 田 清 一: 癌 性 胸 膜 炎 に 対 す る局 所 注 入 療 法. 肺 癌, 20: 21, 1980. 6)高 木 啓 吾: 癌 性 胸 膜 炎 の 外 科 病 理 学 的 検 討 一 全 胸 膜 切 除 例 で の 検 討 一. 肺 癌, 21: 161, 1981. 7)長 尾 啓 一, 滝 沢 弘 隆, 椙 田 隆, 渡 辺 昌 平: OK-432 に よ る 癌 性 胸 膜 炎 の 治 療-チ ュ ー ブ ド レ ナ ー ジ 法 に つ い て-. 癌 と化 学 療 法, 6: 1161, 1979. 8)浦 田 淳 夫, 西 村 穣, 太 田 和 雄: OK-432に よ る 癌

性 胸 膜 炎 の 治 療-Randomized controlled study

の 成 績-. 癌 と化 学 療 法, 10: 1497, 1983. 9)川 田 博, 荒 井 信 吾, 蒲 田 英 明, 岡 野 弘, 谷 本 晋 一: 癌 性 胸 膜 炎 の 治 療 と検 討 一 と くに 胸 膜 癒 着 術 に つ い て 一. 肺 癌, 19: 127, 1979. 10)小 室 康 男, 米 田 修 一, 西 島 昭 吾, 本 間 威, 吉 田 清 一, 鈴 木 文 直, 山 本 鼎, 砂 倉 瑞 良: CT scanの 胸 膜 病 変 へ の 応 用. 日胸 疾 会 誌, 39: 448, 1980.

11)Moore, P. J. &Thomas, P. A.: Thetrapped

lung with chronic pleural space, a case of recur-ring pleural effusion. Milit Med., 132: 998, 1967.

12)西 條 長 宏, 西 脇 裕, 川 瀬 一 郎, 小 林 利 次, 鈴 木

明, 仁 井 谷 久, 末 舛 恵 一: 延 命 効 果 か らみ た 癌 性 胸 膜 炎 の 治 療 成 績. 肺 癌, 18: 51, 1978.

Abstract

CT Findings of 53 Cases of Carcinomatous Pleuritis -Loculation of the Pleural

Yasuki Fukuda, Takeshi Homma, Masayuki Nakata, Shuuichi Yoneda, Yukio Noguchi and Seiichi Yoshida

Saitama Cancer Center, Saitama, 362 Japan

To investigate the clinical course and the prognosis of carcinomatous pleuritis following local therapy, we studied 101 CT films of 53 cases of carcinomatous pleuritis complicated with primary lung cancer. The histological types of the 53 cases included 43 adenocarcinomas, 4 squamous cell carcinomas, 4 small cell carcinomas and 2 large cell carcinomas. The median survival time was 6 months after the initial i. p. instillation. The mean number of i. p. in-stillations was 6. 1 times, median was 3. Instillated drugs were adriamycin, OK-432, ACNU, Mitomycin, aclacinorubicin or others.

In the cases failed in pleurodesis, thickening of the pleura, reaccumulation of the pleural effusion and the loculated pleural space were observed at CT examination.

(8)

CT所 見 か ら見 た 癌 性 胸膜 炎53例 の 治 療 とそ の経 過 659

The loculated pleural space was observed in 21 cases (39. 6%), and the loculation of 13 cases developed within 1 month after the initiation of the local therapy or with less than 3 times i. p. instillation. In 12 out of 13 cases, malignant cells remained or reappeared in pleural effusion in spite of local treatment after the loculation. There was no statistical significance between the mean survival time of cases with loculated pleural space (4 months) and that of cases without loculation (8 months).

The i. p. instillation of sclerosing agents are accepted to be rational and useful in the treatment of malignant pleural effusion. On the other hand, the drug instillation seems to have the disadvantage of the development of the loculated pleural space in the early stage of the local therapy. The loculation of the pleural space not only made it difficult to remove the pleural effusion and to reexpand the lung, but also was one of the causes of refractry pleuritis.

So, to minimize the development of loculation, it is suggested that local therapy should be begun as soon as possible after the detection of the pleural effusion with the aim of complete reinflation of the atelectatic lung and complete closure of the pleural space (pleurodesis).

Table  1  Characteristics  of  the  patients
Fig.  3  Analysis  of  the  CT  findings  concerning  the    period  after  the  initial  instillation
Fig.  5  Analysis  of  the  cases  of  loculated  pleural    space  from  the  standpoint  of  the  period  of  the    observation
Table  3  Characteristics  of  the  Patients  with  Loculated  Pleural  Space

参照

関連したドキュメント

The inclusion of the cell shedding mechanism leads to modification of the boundary conditions employed in the model of Ward and King (199910) and it will be

We show that a discrete fixed point theorem of Eilenberg is equivalent to the restriction of the contraction principle to the class of non-Archimedean bounded metric spaces.. We

Keywords: continuous time random walk, Brownian motion, collision time, skew Young tableaux, tandem queue.. AMS 2000 Subject Classification: Primary:

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

Answering a question of de la Harpe and Bridson in the Kourovka Notebook, we build the explicit embeddings of the additive group of rational numbers Q in a finitely generated group

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

In our previous paper [Ban1], we explicitly calculated the p-adic polylogarithm sheaf on the projective line minus three points, and calculated its specializa- tions to the d-th

Our method of proof can also be used to recover the rational homotopy of L K(2) S 0 as well as the chromatic splitting conjecture at primes p > 3 [16]; we only need to use the