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‑Potentiometric study on the redox loop of catalyst and the production ‑ consumption loop of Br‑ in Belousov Zhabotinskii reaction. ‑

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(1)

化学視覚教材の研究 −電位測定法を用いて振動反 応における触媒の働きをとらえる−

著者 松村 竹子, 杉江 美香子, 小島 ふみ子

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

9

ページ 27‑44

発行年 1986‑03‑16

その他のタイトル A Visual Aid for Chemical Education − Potentiometric study on the redox loop of

catalyst and the production ‑ consumption loop of Br‑ in Belousov Zhabotinskii reaction.−

URL http://hdl.handle.net/10105/4583

(2)

一電位測定法を用いて振動反応における 触媒の働きをとらえる‑

松 村 竹 子・杉 江 美香子・小 島 ふみ子

(化学教室)  (福山市立済美中学校) (土佐清水市立下ノ加江小学校)

A Visual Aid for Chemical Education

‑Potentiometric study on the redox loop of catalyst and the production ‑ consumption loop of Br‑ in Belousov Zhabotinskii reaction. ‑

Takeko Matsumura‑Inoue (Department of Chemistry) Fumiko Ojima ( Schimonokae Elementary School ) Mikako Sugie ( Seibi Junior High School )

Abstract

An experimental system for the study on the kinetic behavior of oscillation chemical reaction based on the potential measurement is described with Mn (II) catalyzed B‑Z reaction.

Key words : A Visual Aid. Oscillation Chemical Reaction, Kinetic Behavior

1.緒   口

熱平衡状態から遠く離れた状態で、時間的、空間的な規則性や秩序性がつくられるような現 象を非線形平衡の現象という。 Bel。us。v Zhab。tinskii反応(B‑ Z反応ナ)功はその例の一つであ り、撹拝下では反応液にネオンサインのような同期的な色の変化が現れ、静置しておくと反 応液に層状構造が見られるO この反応は、通常の化学反応が一方向の変化であるのにたいして、

変化が周期的に再現され、しかも著しい呈色変化を伴うので多くの生徒や学生の興味をひき、導

〕'‥. ∴̲・ふ.∴∴.:∴∴   ミ二二二∵ ∴

クラブ活動や大学における化学実験においてこのような振動反応は素材として盛んに用いられ

(3)

に、我々は肉眼による呈色変化の観察による速度論学習教材について報告したが、5)6)今回は、電 位測定によって、触媒の酸化還元反応の周期的挙動と、反応中間体の周期的な濃度変化を追跡

しB‑Z反応機構の大すじを把握する方法について検討した.

2. Belou畠ov ‑ Zhabo血skii反応の原理

B‑Z反応とは硫酸酸性溶液中でマロン酸が微量の触媒イオンの存在下で、臭素酸イオンに 酸化される反応( 1式)が、同期的な触媒イオンの酸化還元反応と臭化物イオンの生成消失を 伴って進行する反応である。

3BrO,"+ 5CH2 (COOH)2 + 3H

+

3BrCH(COOH)2+ 2HCOOH+ 4CO2+ 5H20  (1)

B ‑ Z反応機構は複雑であるが、 4つの主反応によって振動現象が説明される♂

(2)式‑5式、 Mn2+/Mn3+を触媒とした場合)

BrO,十4Mn2++ CH2(COOH)2十5H十

BrCH(COOH)2+4 Mn3+ +3H20

4 Mn3++BrCH (COOH)2+ 2H20 4Mn2++Br‑+HCOOH+2CO2+ 5H

BrO3十2Br 十3CH2(COOH)2十3H+

3BrCH(COOH)2 +3H20

6Mn3+ +CH2(COOH)2+ 2H20

6Mn2+十HCOOH十2CO2+6H

+

(2)

(3)

(4)

(5)

反応中間物のBr の濃度のしきい値( 〔Br 〕 crit  を境として反応が入れ替わること によって振動が生じる. Br の濃度変化と触媒種Mn2+‑Mn  の酸化還元に着目すると、

〔Brつ < 〔Br 〕critのとき、 Mn の酸化反応が進行し、 Mn3+とBrCH(COOH)2が 生成する。生じたMn3+はBrCH(COOH)により再びMn2十に還元され、同時に反応(3)によ ってBr‑が蓄積されていくO反応(3)で生じたBr‑は反応(4)で消費される。一方Mn3+はCH2 (COOH)2 によって、別の反応経路(5)でもMn2 に還元される。反応(3)で生成し蓄積された Br が〔Br ] > 〔Br ]critになると、反応(2)が停止し、反応(3)と(4)がループとなって進 行する。 〔Br 〕 < 〔Brつcritになると再び反応(2)が開始する。このように〔Brつと〔B了〕

cntの大小関係に依存しながら、繰り返し反応が生じるのである。

28

(4)

さらに、.触媒の酸化還元反応と臭化物イオンの生成消失反応の関連をより明確にするために、

反応(2)及び(4)をそれぞれ '(d)、 <(h)の素反応に分解して表わす。

2BrO2‑ + H,0

BrO,‑+ Mn2十+ H+

2匹l

BrO2‑+ HOBr十H+

HOBr 十CH2(COOH)2 BrCH (COOH)2 + H20 (d)

BrO√ 4Mn2+十CH2(COOH)2+ 5H十

BrCH(COOH)2 + 4Mn3十+ 3H20

BIn. p., L'H' ‑ ‑ HBrO;

HBrO2

+ Br  H ‑・・‑‑‑>2HOBr HOBr+Br +H     > Br2+H2O

十 HOBr

(2)

Br2+ CH2( COOH)2   > BrCH(COOH)2 +Br +H+ (h) BrOs  2Br 十 3CH2(COOH)2+ 3H

3BrCH(COOH)2 + 3H20

反応(2)は‑.臭素酸イオンの還元反応による中間不安定則也及哩の生成とこ

れらの中間種とマロン酸の反応による、マロン酸の臭素化を含んでいる。素反応a)(b)はまとめ ると次式のように表され、自触媒反応であることがわかる。

BrCW HBrO;

+2Mn2++3H+

2lHBrO2巨2Mn3+十H20

一方、反応(4)は、臭素酸イオンの還元反応による中間不安定種

(6)

HBrO2

及び HOBr の 生成とマロン酸の臭素置換o'̲反応を含んでいるO反応(2)において生じた圃 および HOBrは、反応(4)でBr と反応するO このため反応(4)は活発になり〔Br「 の生成消失 の振動振幅( 〔Br 〕 max. 〔Brつ:rin.蝣)は大きくなるO反応(3)はBr の再生産経路 としての反応(2)と(4)を仲介して, (2)(3)(4)の〔Brつ生成消失のループを形成し、同時にMn2+

の再生産にも寄与している。反応(5)は主として、 Mn2+の再生産経路として、反応(2)を活性化 し、更に(4)の活性化に寄与している。

(5)

3.反応経路の模式化

前章で述べた主反応((2)‑(5))の反応経路の関係を図式的にあらわすと、図1のようになるo

図1 B‑Z反応の模式図

これらの経路を触媒のレドックス(酸化還元)による経路‑ ループA ‑と、反応中間

'トIl.‑  ・'..."l、.l.'lJ.":   」蝣i;  ∴I蝣;'..∴ .;h.;い¥一・喝

連づけた経路図を図2に示す。

B‑Z反応の特徴である周期的な呈色変化は、ル‑プAの反応経路に対応している。電位測 定法では、円板白金電極(Pt‑E)でループAの反応を、臭化物イオン電極(Br ‑ISE)で

ループBの反応を追跡する。

このような反応径路の関係を念頭において実験を行うと、触媒の動きと反応の進行の関連が よく理解できる。

30

(6)

二三ユニこ

JL‑‑ 7.‑'\

反 応: 触媒の酸化 白金電極の  上 昇 電位, Ept

ループB

※2を抑制

触媒の還元 低 下

フィードバック

⊂王コ一一‑

反 応: BrCH(COOH)2 BrCHCCOOH), BrCH(COOH)2 の生産     の消費      の生産

Br し'"I '..「 &:   Br"し,7滴恐

イオン電極 の電位, EBr

HI 下

図2 B‑Z反応の2つの反応ループ

上 昇

⊂ロー

上 昇

4.試薬および装置 (i)試  薬

B‑Z反応は、反応基質(CH2(COOH)2)、酸化剤(KBrO3)および触媒(金属イオン) の適当な組合わせによって生じる。通常、反応基質と酸化剤の濃度比は4 : 1‑1 : 1の範囲 で、反応基質の濃度が高い程反応は長く続く。代表的な触媒を用いた反応系について表1に示

し *‑一

表1 種々の触媒を用いたB‑Z反応の実験条件

触 媒 及 び 濃 度

tlI (2) * (3)

M n S O i R u (b py )3 (C tO 4)2 C e (N O 3 V 2 N H 4N O 3‑4H 20 0.008 M ( 1.21?/ 」) 0.25 m M (0.17 免/ e ) 0.006 M (3.35 9/ e ) マ ロ ン酸 濃度

(C H 2 (C O O H )2 ; 0.2 M (20.8 9/ 」) 0.05 M (5 .20 ?/ 」) 0.275 M (28.62 9 / E )

K B rO , 濃度 0. 1M U 6 .70 9/ 」) 0.063M Q O.52 ? / 」) 0.0625 M (10.44 ? / 」)

酸 漉 度 H 3P O 4 7 1.5 M H 2S O 4 ‑ 0.8 M H 2S O 4 ‑ 1.5 M

(7)

米Ru(bpy)3 (CIO4)2の製法8) RuO2 (酸に可溶のもの) 濃HCl

加熱 RuCI3 ‑些L→K2 RuCl6 (褐色粉末)

H20

K 2Rucl5 2, 2′‑ビピリジン 酒石酸ナトリウム

(過剰量)、加熱

エタノール

RuCl4    >RuCl3 (緑黒粉末) 還元

Ru (bpy)3Cl2 eio4

〔 Ru (bpy)3 〕(CIO4)2 (橿赤色)

このほか、2+

Ru(phen>3を触媒するB‑Z反応9㌧反応基質を酒石酸10)、クエン酸…)マレ ィン酸2)、アセチルアセトン11)等に変化させたB‑Z反応についても検討されているO

(ii)器具および装置

実験に必要な器具および装置は次のとおりであるO

〔必要な器具および装置〕

電極:臭化イオン電極(Br ‑ISE) 白金電極(Pt‑E)

参照電極(ダブルジャンクション型、Cl の混入をさけるため) 電位装置:イオンメーター(PHメ・一夕‑)

(簡易型イオンメーター、PHメ‑タ‑の場合には分岐アダプターが必要) 記録装置:レコーダ(1台)

レコーダーがない時は実験者が最大および最小電位差を読み取る。

恒温槽:(10℃〜45℃)

熱帯魚用恒温槽セットを用いてもよい。

マグネティックスターラー

実験装置の組み立ての略図を図3に示す。

(8)

すなわち、臭化物イオン濃度〔Br 〕はAの臭化物イオン選択性電極〔Br"‑ISE〕を用い、

触媒の酸化還元反応はBの自金円板電極〔Pt‑E 〕を用いてそれぞれの電極をダブルジャンク ション参照電極(KNOs溶液の塩橋を含むもの)と連結して、 2台のイオンメーター(あるい はPHメーター)で測定する。飽和カロメル電極(S.C.E)のCrイオンが試料溶液に入る のを防ぐためにダブルジャンクション型参照電極を用いる。

臭化物イオン電極電位〔EBr‑〕と臭化物イオン濃度〔Brつの関係は一般に

EBr‑ ‑E +0.059 log〔Brつ   (Ⅴ)

(7)

で表されているが、低濃度領域では係数が0.059より小さくなる。 1 ×10  M‑1Mの濃度の

KBr溶液を調製し、各濃度の電位を測定して、 〔BrつとEBr‑の問の実験式を作成しておくO

→1‑‑‑

. OS 'S

*( AE ) le ii ua io d' s i

̲  j

‑*   ‑3

iォio‑ iサio l‑io w0‑ 1*10 1‑10 1‑10‑ 1*10 1*10°

x 【Br ] (M)

図4 溶液中のBr一濃度とBr ‑ ISEの電位関係

(9)

白金電極は触媒の酸化還元反応の度合によって次の式にしたがって変化する。

Ept ‑E"十0.059log

〔M, 〕

〔M red.〕

(Ⅴ) (8)

すなわち、触媒の酸化が進むと高い電位を示し、還元が進むと低い電位を示す。

但し、 E。:標準酸化還元電位

〔Mred.〕 :金属イオンの還元型の濃度

〔Mc 〕 :  〝  酸化型の濃度

マンガンイオンを触媒とした場合、 EptはMn3+とMn2+の濃度比の対数と直線関係で表 される。

・Pt‑E …log

〔Mn3+〕

〔Mn2‑ 〕

(9)

したがって、 EPtが増加するときにはMn2+  ‑→ Mn3十の変化が起こり、減少すると きにはMn3十  →  Mn2+の変化が起こっている。

5.ケーススタデー

ーMn2十を触媒とするB‑Z反応‑

B‑Z反応はCe3+/Ce4+を触媒する系について数多くの検討がなされているが、高校、大 学の一般的な化学実験室に常備されている試薬を触媒に選んで実験を行った.

MnSO4・5H20は淡桃色の結品で水にとかすと水溶液はほとんど無色である。リン酸の 共存下でMn2+を触媒するとB‑ Z反応は無色くす赤紫色のあざやかな呈色変化を伴って進行 する。赤紫色はMn3+の生成にもとずくと考えられ、リン酸は呈色に重要な役割を示している。

硫酸酸性中においてもMn2+を触媒とする振動反応は生ずるが、肉眼で観測できるほどの変化 は生じないO反応条件を変化させて、 Mn2+/Mn3+を触媒とするB‑Z反応の様子を電位差 測定によって追跡し、触媒と〔Br〕の関係を調べた。

5.1 実験操作

恒温槽を反応温度に設定し、 1・臭素酸か)ウム(KBrO㌻)溶液、 2.マロン酸(CH2(COOH)2) 溶液、3.マンガン( Mn2+)溶液の順に加え撹拝下において反応させる。そして〔Mn3十〕 / 〔Mn2当 と〔Br 〕の変化に対応する電位変動の波型を記録計で記録する。

5.2 Mn2+を触媒とするB‑Z反応の振動挙動

Mi2+を触媒とするB‑ Z反応の初期の酸化還元電位と臭化物イオン電極の電位の移動波型 を図5に示す。 aはMnS04を加えた点で、 b〜Cを振動1㌧ C〜dを振動2‑・‑としてそ れぞれBr"‑ ISEとPt ‑Eの最大電位と最小電位(EBr",  EBr, min.)、 (Ept,

Ept, min.)を記録し、全振動反応を通じての電位移動、臭素イオン濃度変化、 1振動における 速度(1 /周期)のデータ‑を表2に示した0

34

(10)
(11)

表2 電位振動の時間的経過

Mn3 : 6mM, GH2(COOH)2: 0.2M, H3PO4: 1.5M, KBrO3: 0.1M, 25℃

〔M n 3十〕/ 〔M n 2+ 〕 C B r " ] 1 振 動 の 速 度

振 幅 臭 素 イ オ ン 濃 度 周 期 1 / 周 期

m V ( m V ( m V ) ( m V ) ( M ) s ec . 110 ー1

1 6 一4 9 8 5 2 1 0 4 0 18 8 5 2 . 0 2 2 3 . 5 1 7 1 . 5 1 . 6 2 x 1 0 "一 5 2 9 1 . 8 9

2 1V 5 6 8 13 1 0 2 3 2 1 0 4 6 . 7 2 2 1 . 0 1 7 4 .3 1 . 9 2 x 1 0 " I 5 4 7 1 . 8 3

3 2 8 ' 3 8 7 9 5 1 0 1 3 2 1 8 4 5 . 0 2 2 0 . 9 1 7 5 . 9 2 . 0 2 x l O " 6 4 2 1 . 5 6

4 3 8 ' 2 0 7 9 2 1 0 0 6 2 1 4 4 4 . 5 2 18 . 0 1 7 3 . 5 2 . 0 5 x 1 0 " 5 8 2 1 . 7 2

5 4 7 ' 0 1 7 8 6 1 0 0 2 2 1 6 4 3 . 7 2 1 7 . 2 1 7 3 . 5 2 . 1 0 x l O " 5 2 1 1 . 9 2

6 5 5 ' 0 4 7 8 6 9 9 7 2 1 1 4 3 . 1 2 1 5 . 9 1 7 2 .8 2 . 1 4 x 1 0 一4 4 8 3 2 . 0 7

7 6 2 '0 7 7 8 8 9 9 7 2 0 9 4 2 . 8 2 2 6 . 1 1 7 3 .3 2 . 1 6 x l (r 4 4 2 3 2 . 3 6

8 7 0 r 0 3 7 8 6 9 9 1 2 0 5 4 2 . 8 2 1 6 . 2 1 7 3 . 4 2 . 1 0 X 1 0 " I 4 7 6 2 . 1 0

9 7 6 ' 5 1 7 6 9 9 2 0

7 8 1

1 5 1 4 2 . 7 1 2 5 . 1

1 1 6 . 0

8 3 . 1 2 . 1 7 x 1 0 ‑ 4 1 . 0 2 X 10 「5 1 . 5 7 x 1 0 "

4 0 8 2 . 4 5

‑1.63×10 M以下を示すO

表2から、電位変動の時間的経過について次のようなことがわかる。振動電位の値は、第3 回目の振動から安定した値を示し、 「五二うり「lではEpt, ‑1000±lOmV、 Ept,:

‑790士5mV、振幅 .‑ E, 210±5mVの値を示しており、 Mn2+く→Mn3+の酸 化還元反応が定常的であることを示している。

也lでは、 〔Brつ‑ax.が211 ×1(T4Mから〔Bri

<1.63×1(TBM まで

1(氾00倍もの濃度変動がくり返し、進行していることを示している。振動の周期は変動がはげ しく一定値を示さないが、反応後期に減少している.これは、溶液内の組成変化‑ CH2

(COOH)s、 BrO;の濃度の減少とBrCH(COOH)2の増加一 に対応する2つのルー プ径路の調節作用によるものと思われるし このように、電位的な測定によって、溶液内の濃 度振動を直接とらえることが可能になり、反応の微視的な性質を把握することができる。

Mn2+を触媒するとB‑Z反応はRu (bpy>32+やCe3+を触媒とするB‑Z反応に比べて ユ回の振動周期が極めて長く,常温では9分〜10分に1回の割合で反応がくり返えされる。又、

触媒の酸化還元振動の振幅とBr の生産消費の電位振幅もこれらの触媒を用いた場合に比して 大きいのが特徴である。このような振動挙動はどのような外的条件に支配されているのだろう

か、外的な反応条件を種々変化させて、反応の制御因子をさぐってみる。

5.3 反応条件と振動挙動

表'3に示すように反応物質の濃度や反応温度を変化させて、 B‑ Z反応の振動挙動を電位測 定によ って追跡した。

36

(12)

表3 反応条件

条 件 M n S O 4 ( m M ) K B r O , C H 2 ( C O O H ) : H 3 P O 4 1 温 度 ( ℃ )

触 媒 濃 . 皮

・ t 4 6 8 1 2

0 . 1 0 . 2 1 . 5 2 S . 0

リ 濃 ン 酸 度

8 0 . 1 0 . 2 2 . 5

3 . 5 2 5 . 0

皮 8 0 . 1 0 . 2 1 . 5 3 5 . 0

4 5 . 0

<i > 反応条件と振動の巨視的特徴

常温(25℃)において4mM‑12mMのMn;の存在のもとで、継続的な振動を生じ、白金 電極の電位、 Ept、および臭化物イオン電極の電位、EBr‑の電位振動が観測される。振動 反応の継続時問は、各条件因子を変化させると、図6に示すように変化する。すなわち振動継

続時問は、リン酸濃度の増大と共に増加する.一方触媒濃度の増加や反応温度の上昇とともに 反応ははやく終結する。振動周期は、経過時間と共に溶液内の反応物質の濃度変化に対応して 変化するので正確に測定できないが、周期に対して影響の大きい因子はリン酸濃度と反応温度 で、反応中期の周期は、図7に示すような相蘭を示し、リン酸濃度が高いほど、また反応温度 が高いほど振動周期が短かくなる。

(13)
(14)

<ii> 反応条件と電位振動

図5に示した電位振動の最大値( max.)、最少値( min.)を記録紙上で、あるいは直接読み 取って、反応経過時間に対してプロットした。

電位振動の特性と溶液内の触媒(Mn3+およびMn2+)の濃度との関係は、(8式)から導か れる。

Ept =E‑+0.059 log

〔M。x. 〕

〔 Mred.〕

(8)

白金電極の電位は系に存在する旭13+の濃度が高い時、高い値を示し、 Mn2+の濃度が高い 時、低い値を示す。

また、電位振動の振幅は、最大電位(Ept)   と最小電位(EPt7 min. の差△E

‑Ept,  ‑Ept,  で表わされる。

Ept,  において〔Mn3+〕は最大(〔Mn3+]   になり、 〔Mn2 〕は最少 (〔Mn2十〕min )になる。

溶液中のマンガンイオンの濃度は一定であるから、モル分率で考えると

〔Mn3+〕 max. ‑*‑ 〔Mn2+〕 (101

が成り立っ。

一方、 Ept,  において、〔Mn2+〕は最大( 〔Mn2十〕max. )になり、 〔Mn3十〕は最 小〔Mn3+〕 rain. )になり

〔Mn2十〕max. 十〔Mn3+〕   ‑j

が成り立っ。

従って、 △E‑EPt,max. ‑Ept

E Pt,max. ‑E。十0.059log

Ept,  ‑E‑十0.059 log

△Eニ= 0.059 log 〔Mrv 〕max.

〔Mn2十〕 min.

mi。 は次式で表される。

〔Mn3+〕 max.

〔Mn2+〕 min.

〔Mn3+〕min.

〔Mn2+〕 max.

〔Mn3十〕 tnin.

〔Mn21うmax.

m)

(V) (12

今、触媒として加えたMn2+の99%がEpt,  でMn3+になったとし、 Epj> min.で 再び99%がMn2+になったとすると、 (これは触媒の酸化還元反応がはぼ99%の効率で生じて いる場合に相当する。 )

・E‑0.059(log等‑ log孟‑)

‑0.059log 99 +log

‑ 2 × 0.059log99±岩0.240

(15)

△E‑4 × 0.059≒0240となり、実験値に近い値になる。

臭化物イオン電極の最大、最小電位は、既に濃度変換された値として示されており、この値 からループBの活発度がわかる。最小濃度は1.68×10 Mというイオン電極の検出感度を越え‑8

て減少しており、反応のダイナミックな特質が認られる。

以上のような観点から、ループAとループBに対応する2つの電位振動と反応条件の関係を 調べてみる。触媒濃度の変化は、電位振動の最大値、最小値や振幅にあまり大きな影響を与え ないが、リン酸濃度と反応温度の変化は電位振動に影響を及ぼす。リン酸濃度の変化に対する 電位振動の変化の様子を図8に示した。

図8 〔HsPO4〕と電位振動の経時変化

リン酸濃度が増加すると白金電極の電位は最大電位(Ept>  、最小電位(Ept min. ) 共に高い値を示している。このことは、溶液中のMn3十の濃度がリン酸濃度の増加と共に高く

なることを示していると考えられる。

電位振幅は、あまり変化しないが、リン酸濃度が高くなると振幅はやや減少する.一方Br‑

の最大濃度はリン酸濃度の増加に伴って増大する。これは、 Br の生産・消費のループBの反 応が活発になることに対応していると考えられる。

反応温度と電位振動の関係は図9のようになり、反応温度が高くなると白金電極の電位は EPu: 及び蝣Pt,min.共に低い値を示すoこれは、反応温度の増加と共にMn2十の 濃度が増加することを示しており、ループAに関与するMn2+の割合が減少していると考えら れる。振幅は、反応温度の上昇と共にやや減少しており、触媒の有効濃度の低下と一致してい

40

(16)

るo Br の最大濃度に対する温度の影響は著しく、反応温度が高いとB了の最大濃 度は減少する。これらの特徴を表4にまとめて示した。

40   60      20   40   60   80

図9 反応温度と電位振動の経時変化

時間/分 溶液組成

CH2(COOH)2 : 0.2M KBrO3 : 0.1M H3PO4 : 8mM MnSO4: 8mM

(17)

表4 反応条件と電位振動の特徴

反 応 条 件 白 金 電 極 電 位 振 幅 B r ‑ の 最 大 濃 度

H 3 P O 4

1.5 M 低 2 1 0 3 .8 × 10 M

3 .fiM 高 ( M n 3 + が より 優 勢 ) 1 9 0 5 ×10 M

反 応 速 度

2 5 ℃ 高 2 1 0 3一8 × 10ー4M

4 5℃ 低 ( M n 2 + が よ り 優 勢 ) 1 9 0 1.3 × 10" 4M

表3から3.5Mリン酸性溶液中では、電位振動の振幅が小さくなっているにもかかわらず、

Br‑の最大濃度は増加している。このことは、ル‑プAとループBが活発に働いていることを 示している。そして1.5Mリン酸中では、ループBが主として働き、ループAはやや不活発で

ある。つまり、ループAでは、反応経路のうち(2ト(5)の反応が不活発なためと考えられる。

一方、反応温度が45℃のとき、 Br の最大濃度が著しく減少しているo これは、触媒の有効 濃度が少ないことと、 (2)‑(5)の反応経路が不活発なためと考えられる。

このように、電位振動の特徴から反応経路の活発さを判断することができるが、更に進んで 電位変化の追跡から調べてみた。

A (1.5M‑H3PO4) B (3.5M‑H3PO4>

t

m

>

x

o

:

1

,

I

?]尋co3SI‑Lq

1 2     3    1' 2'    3'

図10 反応温度と電位振動の経時変化

42

(18)

<iii> 反応径路と振動波形

H3PO4濃度1.5Mと3.5Mの場合の電位波形を図10に示した。図10 AとBを比べてみ ると, Mn2+⇔Mn3 、 〔Br 〕 max.く→ 〔Brつ mi。. の急激な変化(1‑2、l'‑2′) はA, Bのも共通している。その後の電位変化において、 A (1.5M‑H3PO4)ではMn3 の生成に基づく電位変化がみられるが、 B (3.5M‑H3PO4)では、 Mn2十に基づく電位が 一定値を示し、 〔Brつ の減少度も少なく、振動はよりパルス的になっている。 Aにおける Mn2+十与Mn3+の変化は2つの点線(a、b )の合成と考えると、ループAの反応と対応し て考えることができるO ループAにおいて、反応(3)と反応(5)によって、 Mn3+はMn2+に還元 されるが、このループが不活発であると反応(2)で生成したMn3+が溶液中に蓄積してきて、 A のようにMn3+による電位上昇(点線a)が観察される。

〔ループA〕の活潜さは反応(2)‑(5)の径路によって支配されるが、リン酸濃度の増加によっ て反応(5)が活発になり、反応(2)で生じたMn3 はただちにMn2+になる(5)の活性化はまた、

反応(2)を活性化し,さらに(2)‑(3ト(4)の〔ループB〕の反応を活性化する。このことによって、

振動波形はBのようにパルス的になる。

このように〔ループA〕と〔ループB〕は二つの水車のようにかみあってまわっているが、

この水車のスピードは〔ループA〕の活性度によって決まる。 2章で述べた素反応の式でさらに 詳しく見ると次のようになり、

Br0,日J両前 2Mn: 3H+

HBrO2

自触媒反

HOBr + Br一十H+

十2Mn3++H20

じ、

BrCV +HOBr +H+

2 HOBr Br2+ H20

*‑‑>12)

k  > (2)

(f)を1‑ ‑‑>(4)

(g) *  + (4)

(2)で生じた不安定中間種極BrO2 型が(2)と(4)の橋渡しをしていることがわかる。

<1V> 電位測定によってとらえたMn*を触媒とするB‑Z反応の特徴

<1 >‑ くiii>のように電位測定によるさまざまなアプローチによって、 Mn2+を触媒とす るB‑Z反応の特徴を明らかにすることが出来たo

触媒の酸化還元速度はリン敢濃度によって著しく影響されるが、これはMn2+のリン酸錯体 の生成が触媒作用の基礎になっているためと考えられる。一方反応温度は全体の反応速度を速 めるが、反応基質や酸化剤の消費速度もたかめるため触媒の反応効率(Br の生産消費)を低 くしているO撹梓下、常温でのMn2+を触媒とするB‑Z反応は、長周期で振幅の大きく振動 回数は少ないという特徴を有していることがわかった。通常反応は、 10回ぐらい振動した後、

停止する。しかし,さらに注意深く観察すると、反応停止後、撹拝を止めたり反応温度を高め たりすることによって、振動が再関するという特異的な挙動が認められる。このような振動の 断続は、化学的カオス現象ともいうべきもので、更に興味を引く。この挙動についての詳細は

(19)

6.ま と め

周期的な呈色変化に着目した振動化学反応の視覚教材を更に進めて、電極をセンサーとして 用い、振動反応の触媒や中間体の動きをとらえる方法について述べた0

13 14)

BIZ反応は、秩序現象のモデルとされ、筋肉の収縮や神経の興奮などの生理的振動現象 に似た規則性を有している。

しかしながら、反応物質の空間的、時間的有限性によって、振動波形に微小な相違があらわ れる。この微小な変化は、‑系内におけるさまざまな粒子の微視的な挙動によって惹きおこさ れるのであるが、‑電位振動の経時変化(最大、最小電位あるいは電位振幅)として、あるい は2つの電位振動間の相関として、巨視的な特徴へと発展する。

触媒としてMn2十を選んだ理由は、触媒としての有効性が既知であること、高校あるいは大 学の初級レベルの化学実験室に常備された物質であることである。5章は、1つの実験例とし ての提示であって、系は他に種々設定できるであろう。実験装置が整っているほどB‑Z反応 というブラックボックスの中味を知る手だては多い。しかし、反応系の選択とさまざまな工夫 霊M,

H^‑^票芸雲霊孟霊豊慧腎票霊芸蝣tア霊警言霊孟o(豊

の驚きがやがて、注意深い観察力を生み出し、持続的な測定によって、化学反応のしくみを体 験的に理解できるという点で、B‑Z反応はそれ自身内容豊かな視覚教材であるO

7.引 用文献

1) B. P‑ Belousov, Sb. Ref‑ Radiates, 1958 Medgiz , (1959) , 145 2) A‑M. Zhabotinskii, Dokl. Acad. Nauk. CCCP,157, (1964) , 392 3) R.J.Fieldg紬/. ,J. Chem‑ Educ, 49, (1972)

4)早川俊美、吉川研一、脇 健、化学教育、 27、 (1979) 、 355

5)松村竹子、竹内巧、田辺文子、藤田敏明、化学教育、 28、 (1980) 、 455 6)松村竹子、奈良教育大学工学センター研究報告、 6、 (1983) 、 53

7) R‑M. Noyes.etal., J. Am‑ Chem‑ Soc. 94,(1972) ,8649, ibid, 102, (1980), 4644 CF. Lui et al. , Inorg‑Chem‑ 3, (1964), 1085

9) K‑ Yoshikawa.Bull. Chem‑Soc‑Jpn. 55, (1982), 2042

10) L‑ Adamcikova et al ,Collect.Czech.Chem‑ Commun, 47, (1982) , 2333

ID L‑Treindl‑e/al.. Collect‑Czech‑Chem・Commun. 46, (1981) , 2831

12) R‑Rastogi<?ifa/..Indian J‑Chem‑ 19A, (1990) , 1 13)竹中敏文、化学教育、 33,(1985), 388

14)田崎健郎、動物生理、 2, (1985), 19 15)福永勝則、熊本県理化研究会報告(1984年)

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参照

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