奈良教育大学学術リポジトリNEAR
音楽と情緒との照応関係の分析的研究
著者 今井 靖親, 増田 忍
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 19
号 1
ページ 249‑278
発行年 1970‑11‑30
その他のタイトル AN ANALYTIC STUDY CONCERNING CORRESPONDING RELATION BETWEEN MUSIC AND EMOTION
URL http://hdl.handle.net/10105/3071
249
音楽と情緒との照応関係の分析的研究
今 井 靖 親・増 田 忍
(心理学教室) 〔音 楽 教 室)
音楽と呼ばれる芸術の本質的特徴としては、まず第‑に、その「非具象性」あるいは、 「抽象 性」が挙げられる。 (美学事典、 p.318ff.)音楽という、この、手でとらえたり、目で見たりす ることのできない昔の流れ‑しかも、特別な場合を除いては、何ものをも描写しえない晋の流 れを享受するとは、いったいどのようなことなのだろうか。
我々が音楽を聞くとき、そこに或る感情の動きを経験することは否定できない。しかも、その 感情の動きは、曲の種類によって性質が異っているO このような事実に即して考察するならば、
非具象的な音の流れである音楽と人間の感情の動きの間に、或る照応的な関係の存在を容認でき頚 るように思う。
実際、音楽の歴史をふりかえってみれば、音楽と感情とは常に何らかの形で結びつけられてき たO その最も典型的な関係は、音楽を感情の表現とみる考え方にあらわれるo そこでは、一般に 音楽は内容と形式という二面に分割され、感情は内容として設定される。この考え方は、自律主 義的な音楽観の誕生によって、音および音の流れの非具象性という点から論破されてはいる。し かし、非具象性のゆえにこそ、音楽は他の芸術以上に人間の感情の動きに密接な関係を持ってい るのではないだろうか。この点を追求しているのがアリストテレスのミメ‑シスの概念である(1)
ミメ‑シスfittpt叩Eりま、一般に模倣と解されているが、いわゆる「模倣」を指すのではなく、
ひじように独特な意味を包含していて、音楽の場合は「音楽rが表わすものが心情でありながら も、内容と形式は相即不離に全く一体となったもの」 (竹内敏雄、アリストテレスの芸術論p.
266)と解されている。
アリストテレスは次のように記している。
save d埴E軸αTα fiaXcarα, TIOLQ虎rtfC aXydti>a<; ¢∂oefC雷∂ TO打FLy紬ok Km rote jusX古OW, o'p西r EαE一打PXOT苛Tof, ぷαc vav allotr) 6c尼か
(リズムやメロディには、憤怒や穏和・‑・‑等エートス(2)の性質に本来非常によく似たものが存す る) (政治学5章1340a 38) hお古TO打pel甜Eu α占rocc eozc 〃LPα叩α Tα I(石v Tjdav (様々な
メロディは、それ自身のうちにエートスを模倣したものを含んでいる) (同上)
これらからもわかるように、アリストテレスは、音楽と心情の間に或る類似性を兄い出してい るのであるが、それは両者における「運動性」であると考えられる wアリストテレスは記して いるO 「聴かれるものだけが動きを持っているo この動きがエ‑トス的な性質と、リズムとメロ ディの両方に於て類似しているのであるO」 (諸問題集27集919628‑24)
アリストテレスは聴覚的なものの、時間における連続的な起伏という点に着眼しており、この 意味において、同様に時間的な運動を伴うエートスと類似すると考えたのであろう。 (竹内p.277 参照)それゆえ、竹内氏によれば「音楽の運動が音の外面的に知賢された動きであるのに対し て、エートスの運動が、心の内面的に体験された動きであることに着目した場合には、この内外
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田)
図3時間、GSRグラフ符号、音楽の諸要素を対照させたものであるInstrumentsN0.は、
それぞれ次のものを指す1‑Fl.pice.1;2,2‑Fl.gr.1;2,3‑Fl.insol,4‑Ob.1;
2,5‑Ob.3;4,6‑Cor.iniリ7‑Cl.pice.,8‑Cl.1;2,9‑Cl.basso,10‑Fag., 11‑CFag.,12‑Corni1;2,13‑Corni3;4,14‑Corni5;6,15‑Corni7;8,16‑Tr.
pice.,17‑Tr.1;2,18‑Tr.3,19‑Tr.basso,20‑Tr.boni1;2;3,21‑Tuba1;2,22
‑Timp.1;2,23‑Timp.3;4,24‑Gr.Cassaortamtam,25‑Vl.I,26‑Vl.II,27‑
Via,28‑Celli,29‑Bassi
両面の運動は、いわば平行性をもって相応ずるカ‑ブを描きながら進行することができ、音楽と 感情とは別個に、相即不離の侶応関係で進んでいくと考えられる。」(竹内p.277参照) アリストテレスの理論に従って、享受の側から再び音楽をかえりみれば、そこでは、音楽は当 然感情を喚起するものとなる(3)
。
この研究において、我々はアリストテレスの理論を、美学的にではなく、心理学的な方法を用 いて検討することを試みた。すなわち感情や情緒と密接な関係をもっている生理的反応を測定 し、それを指標として、音楽と感情との間の照応関係を分析的に究明しようと試みたのである。
ところで心理学の分野では、GSR(PGR)、血圧、発汗、瞳孔変化、唾液分泌、呼吸、胃腸活 動、新陳代謝、筋緊張、EEGなどの生理的反応が情緒の指標として古くからとりあげられて普 た。しかし、これらの生理的反応と音楽との関係が、すべて分析されているわけではなく、現在 までごく一部の反応が研究されているに過ぎない。ここでは従来の研究の中から、今回の我々の 研究に特に関係あるものをいくつかあげてみようO
まず、音楽の呼吸や脈樺に及ぼす影響については、Ellis,D.S.とBrighouse,G.1952の研究 がある。彼らは、Hallのブルーインタバル、Debussyの牧神の午後への前奏曲、Lisztの‑ンガ リヤ狂詩曲2番の3曲を、36人の大学生に聞かせて、呼吸と脈博の変化をみたところ、音楽を聞 いている間は、聞く前に比較して、いずれも呼吸数は増加することがわかった。しかし脈樽には 特別の変化は兄い出せなかった。
音楽と情緒との腰応関係の分析的研究(今井・増田)
53匹竺ヨ
.暑O d
.... 一.I
P l‑ .‑
.l.....
‑ ......・.・.・.‑‑ .‑ ..‑
‑
... ..・.
‑‑. r
】‑ I
‑
251
Francとs,R.は音楽に対する情緒反応を、 GSRを含めたポリグラフで調べた。その結果兄い出 されたおもなものは、まず曲の主題の認知に伴なうものであるO たとえば、バツ‑のフ‑ガを被 験者に分析的態度で聞かせると、主題が再現する度に、大きな反応がGSRで現われることを認
めた。
また、彼は被験者の音楽的素養とGSRとの対応を問題としてとりあげたが、音楽的素養が大 きくなるにつれて、生理的反応が増大するが、ある程度以上に素養が大きくなると、逆に不必要 な反応が減少するという興味ある結果を報告している。
桜林と坂本1958も、呼吸とGSRにあらわれた音楽的反応を研究している。彼らは、楽曲にマ
‑チ、ジャズ、オペラを選び、メトロノ‑ムをコントロールとして用いた。その結果は、マーチ が最もメトロノ‑ム型に近く、ジャズや電子音楽も後半より前半のほうが強い反応を示したのに 対して、クラシックやオペラでは、全面にわたって適当な興奮分布が分散して現われたという。
Henkin R. I. 1957は、因子分析と予備実験の結果にもとずいて、メロディに対する GSR 反 応が時間とともに電気抵抗を減じ、リズムに対しては、時間とともに反応が増大するのではない かという仮説を立て、被験者に数種類の音楽を聞かせる実験をおこなった。その結果、彼の仮説 は大体において支持された。
Zimny, G. H.とWeidenfeller,E.W. 1962は、静かな音楽はGSRを減少させ、興奮的な音楽 はそれを増大させる、というこれまでの結果が、子どもの場合には、もっと顕著に現われるだろ うと考え、実験をおこなっている.音楽は、興奮的なものとして、 Dvorakの新世界交響曲の 第四楽章、沈静的なものとして、 BachのG線上のアリアが返ばれ、それぞれ9分ずつ提示さ れた。記録は2分、 4分、 6分ごとに整理されている。音楽を聞く前の被験者のGSRのレベル を0として、音楽を聞かせた後の変化をあらわすと、明らかに興奮的な音楽はGSRの反応を増 大させ、静かな音楽は減少させていたが、発達的な差違はみられなかった。
252 音楽と情緒との嘩応関係の分析的研究(今井・増田)
3 0 & *0
. . ..
..・..‑
. ‑ .. ‑ . .. . . .. .‑ .
方 m
実験装置
まず音楽を聴取するための装置を説明しようO音楽を録音したテ‑プレコ‑ダー(SONY TC‑
355)とステレオ(Victor SSL‑45T)とを連動させ、被験者はレシーバー(Victor STH‑1000) によってステレオから音楽を聞けるようにした。レシーバ‑の使用は、,音楽を効果的に聴取する ためだけではなく、外部の不必要な音刺激を遮断することにも役立てた。
呼吸およびGSRの測定は、皮膚電流反射測定装置(TKK RP4)を用いて同時におこない、
ペン書きオッシログラフで記録した。
被 験 者
奈良教育大学に在学する女子学生(18才〜19才)の中からアトランダムに17名を選び、そのう ち、体動その他のAr山actによって、 GSR記録の不完全な者6名を除いた。
実験に用いた音楽
ストラビンスキー(ロシア1882)の「春の祭典」 Le Sacre du Printempsよりいけにえの踊 り、1913Cつ
レコ‑ドは、コロンビアOS228イ‑ゴル・ストラビンスキー指揮、コロンビア交響楽団演奏 手 続 き
検査は、次の項目に該当するような被験者の状態を避けておこなわれた(a)隆眠不足(ら) 食事直後(C)空腹(d)身体的苦痛がある(e)運動直後
入室した被験者を、実験装置の横に置かれたいすに着席させ、次のような教示を与えたD
「これから音楽を聞いてもらって、呼吸その他に及ぼす影響を調べたいと思いますo まずこれ をつけてください。」と言って実験者か助手の女子学生が、被験者の上腹部に呼吸記録用の蛇管 を、また、右手の第二指と第四指にGSR用電極を装着し、レシ‑バーをかける.
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田)
*R ? /d e c .
ノ、
3
好 S D
== ==
253
「気持ちを楽にして静かにいすにすわっていてください。少しぐらい身体を動かしてもかまい ませんが、右手(GSR電極をつけたほう)は、できるだけ動かさないように。初めは、あなた が落ちつくまで5分間静かに待ちます。その後、音楽を数分問聞いてもらいます。耳を傾けて聞 いてください。音楽が終ったら、合図があるまで2‑3分間そのまま静かにしていてください。
検査はそれで終わりです。」
被験者に呼吸測定用蛇管、 GSR測定用電極、音楽聴取用のレシーバーの装着を終ったら、テ
‑プレコ‑ダーのカウンターの数字に従ってテープをスタートさせ、同時に皮膚電流反射測定装 置の記録器を作動させる。
初めの5分間は特に操作的な刺激は何も加えない。これは,自発性皮膚抵抗反射発現のぐあい を観察し、できるだげその消失を待って被験者に平静な状態で音楽聴取をおこなわせるためであ る。 5分経過したら、音楽の演奏を聞かせるO (4分25秒間)音楽終了後さらに3分間静かに呼 吸と GSRの測定を続け、検査を終る。記録紙の速度は毎秒2.5cmとした。
結果の整理
呼吸の測定に関しては、各被験者の1分毎の呼吸数をもとにして全体の平均と標準偏差を求 め、音楽前、音楽中、音楽後の3つに区分して増減を比較した。
GSRについては、各被験者の1秒毎における反射の振幅を5秒おきに合計し、音楽聴取5秒 前の値を基準にして、それぞれ伝導変化値Change in conductance △C‑C′‑C‑
(単位ββ)を求め、本実験の反応値とした。
音楽とGSR との関係の分析については、後述するように、楽譜および展開図をもとにGSR のグラフと対応させて、各時間、各phraseにおけるGSR反応と音楽の照応関係を検討した。
254 音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田〕
∬ ̀ 0
....
.■■■■■■‑ .■■■‑ .■‑ ■■■■■■■.‑ ■■■■■■‑
結 果
1.呼吸について
音楽を聴取することによって、被験者全員に聴取前より呼吸数の増加が見られた。
表1には音楽を聞く前と音楽中と音楽終了後における1分毎の呼吸数が示されている。図1は 表1 音楽聴取前・中・後における呼吸数
育
時
( )は25秒間を1分間に換算した値を示す 衷2 音楽聴取による呼吸数の変化のt検定(音楽聴取前
の1分間を基準とし、音楽中および音楽後を比較〕
P<0.05
** P<0.01
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 255
̀∫ ?o ガ二
■ 看
■■ ■
■
l■ー
44.4 1
時 間(雇)
、図1 音楽聴取前・中・後の呼吸数
これをグラフにしたものである。これによると、音楽聴取中はそれ以前と比較して、あきらかに 呼吸数の増加が見られ、音楽終了後にはほぼ聴取前の状態に復していることがわかった。
音楽を聴取する前の1分間を遠準とした場合、他の時間における呼吸数の増加が統計的に有意 であるか否かを検定したものが表2である。
音楽を聴取し始めてから1分間の呼吸数の増加がわずかに有意にならなかったのは、この部分 はGSR も急激な増加を示し、ペン書きオッシログラフの振れがMaximumに達した被験者も いるこ七、記録紙に記録された呼吸曲線に、乱れた波形が多く現われていることなどから判断し て、平静でいた被験者が、突然強烈な音楽を聞かされて驚博し、いわゆる息をのむ状態に陥った
ことが原因と考えられる。
256 音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田〕
8 0 I 防
看
■"
"
〟
=:≡ = 案
■■車細 事 ■■寡 ■ 車■
2.音楽とGSRとの照応関係について
5秒毎の時間における全被験者の平均伝導度変化値をグラフに表示したのが図2である。
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110
秒(sec.)
図2 GSRの時系列差図表
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 257
ケQAJU>.
JJ 又
90 ?s
・‑. JtU ‑t変動曲線
一一一一・ 30秒毎の移動平均
ヽヽ
258 音楽と情緒七の婿応関係の分析的研gL(今井・ ∵増田L
/00ML.
H^H^^^^^^^^^^^^^^^^^^I^^E i
/ 0 0 ′一嘘.
‑ ■■■■■■■■■
被験者に電極を装着し、 GSRを記録し始めてから、音楽聴取前にすでに5分間経過している ので、各被験者の気持ちもおちつき、自発性抵抗もあまり出現しなくなっている。そこに突然聞
こえてくるストラビンスキーの音楽が、いかに強烈な刺激であるかは、グラフの初めの部分が明 瞭に示している。以下、音楽の進行にともなって、 GSRは図のようなカーブを描いて行く。点 線は全体の大まかな変動傾向を把擦するために、 30秒毎の移動平均をとって描いた曲線である。
グラフに記入されている、イ〜フまでの記号は、 GSR との照応関係を分析するために、便宜 的に設けたものである。
図3には、 GSRの変動傾向と音楽との相互関係が示されているが、これをもう少し詳細に検 討してみよう。
(1) moH 1 (語例1)に関して 譜例1
複リズム、多拍子、リズム操作の最も甚しいモティーフである。和声はd一五S・aを中心にその まわりを平行2度で駆け巡って音塊と化し、全ての音符はスタ九一ティシモ、弦はdawn bow で奏するよう指示され、fの上にさらに思いがけなく出現するアクセント、 sforzandoが非常に 切迫した緊張感、熱狂感を表わしている。楽器編成27種で、全mo山のうち最大である。図2
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・′増田〕 259
〟 //」 ′h
‑
‑ . .‑..・. ・.・.・ . ・.‑ .・..
.. ‑
. .‑
r ‑■■‑ .‑‑.‑
のグラフ〔イ〕、 〔ヨ〕、 〔ウ〕、に出現するがGSRはどの回においてもすべて上昇する。 〔イ〕に おいては、被験者は無音の状態から急に音塊の只中に突入することになり、 GSRがmax.を 記録した者も数名ある。初めての刺激という点に、さらに刺激の強烈さが加えられるのであろ う。 〔ヨ〕、 〔ウ〕はそれぞれ∠Tの後であり、 〔ノ〕はCの部分の後であるがどの場合も上 昇していることを考えれば、このmotiOまGSRを上昇させる傾向を持っているのではないだろ
うか。
(2)motif 2 (語例2)に関して 譜例2
motif lと同じくやはり複リズム、多拍子であるが、1のようには強烈ではない。むしろmotif 3のBackgrund的性格を持っていると考えられるO 〔ロ〕、 〔ニ〕、 Cヌ〕ほいずれもppで、
弦+ Fag.CFag.corni.という編成である。 〔ロ〕 〔ニ〕はdをBassにc,d,e,f,g,a,hの すべての音が重ねられて同時に響いている。 〔ヌ〕では長2度低くなっている。 〔チ〕ではやは り dをBassにFl.glのgesJまで音域はひろがり、 motif 2ほffで非常に強調されてあらわ れる。 〔ロ〕、〔ニ〕、〔チ〕においてG S Rは、下降している motif 2は1よりリズム操作 も少ないと考えられるが、∬の〔チ〕の場合においてさえ、下降しているのは興味深い。 〔ヌ〕
においてほ、前後関係、編成は〔ロ〕、 〔ニ〕とかわりなく、音程が長2度低いのであるが、ここ だけGSR は上昇する。原因はわからない。
(3)motif 3 (語例3)に関して
語例o i i
260 音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田)
/ 2 0 ′j J . ′ュo
一
‑ ..
.‑
‑
. ▼ .一 I L :
この曲の中ではかなり旋律的要素の強い、しかし非常に短い切迫したリズムの断片であって、
怪鳥の叫びを連想させる。被験者に実験後参考のために感想を問うたところ、このmotifの強 烈さ、音色の特異性に言及する者が数人いた。ここは楽器の使用法に特に工夫がみられるところ で、 pice系、/,marc,アクセントの長2度平行は、原色効果も甚しいO 〔‑〕、 〔ホ〕ではいずれ もGSRは上昇するが〔ル〕では下がる。この原因は〔ハ〕、 〔ホ〕にみられるような耳をつんざ くfではなく、トロンボーンの比較的安定した音色に帰すことができるのではないだろうかO
(4) motif 4(譜例)、 5(語例5)に関して 語例4
いずれもBass mo山である。 4が初めて現れる〔ソ〕ではGSRは下降している。 5の現れ る〔ツ〕ではGSRは上昇する Bass motifが、上声の非常に特徴的な動きの中で、どの程度 まで聴取されるかは、今後の課題の一つである.
(5)moH 6 (語例6)に関して 譜例6
′ \ /‑ヽ
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 261
'? ッ
/ 3 $ / 4 」0 / * S
.・..
..‑.・.・.
‑ ‑ ‑
音価が最も長く(」 ‑126)、全音階的で、メロディーの要素が強いO 〔ナ〕ではGSRは上昇 し、 〔い〕では下降する。この部分については考察の項を参照されたい。
Dynamic に関して
長く続くfやpにおけるGSRの変化に、 Dynamic以外の要素がより多く入っていることが 考えられるので、変化する箇所を検討すれば: /subito ppではGSRは一般に下降すると考え られる。 〔ロ〕、 〔ニ〕においては、もちろんmotif 2の性格が複合されたものとしてではあろう が下降線が現れている。 〔ヌ〕においては上述の如く、楽器編成、 Dynamicを考慮しても原因は つかめないo一方、 pp subito/は、〔ホ〕とCオ〕の二箇所に出てくるが、いずれの場合もGSR は上昇している。またcresc.も〔‑〕におけるように上昇すると考えられる。 〔カ〕で下降し ているのはTとの関連があるのではないだろうか。
(7) Orchestrationに関して
音色や編成についてはmotifを考察する時、すでにこれらも含めてとり扱っているので、こ こでは革に楽器の増減のみを諭ずれば、楽器がcresendoのような効果で漸増してゆく場合 や、一度に増える場合はGSRは上昇している。 〔リ〕、 〔ナ〕、 〔ム〕、 〔ク〕、 〔マ〕、 〔チ〕で下降 しているのは、 3motifからの開放という意味があるのではないだろうか。反対に楽器が激減す る場合は、 GSRは下降すると考えられる。 〔ロ〕、 〔ニ〕、 〔ヤ〕、 〔ヌ〕で上昇するのはmo朋2 でも述べた通り原因は不明である。
Sequenceに関して
motif 6は〔ナ〕 ‑ 〔ラ〕 (bar150‑174)にかけて9臥〔い〕 (bar 181‑203)かけて8 回、拡大されたりして現われる。 Sequenceは緊迫感を増すためによく使われる手法であるが、
〔ナ〕の場合、 mo山6は初めて出現、GSRは上昇して3回くり返される。 〔ラ〕では5回く り返されるがGSRは下降、 〔ム〕で上昇するのはbar142で各声部が整理され、非常に単純か つ明快なリズムでJ ‑♪に移ることに関係があるのではないだろうか。 〔い〕の場合も、 Orche‑
262 音楽と情緒との照応関係の分析的研究〔今井・増田)
/ S O 丘r
...‑ ...・.・.・.・. ...‑
..‑ .
...・..
‑ ‑
,
..‑ .‑ ‑...‑ .・..・.・...‑ ....‑ ..‑ . ‑ ‑
‑ ‑ l ‑ ‑
^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ ^ H 蝣
strationの創意工夫、対旋律の多様化が見られるにもかかわらず、 GSRはただ下る一方であるo motif 6のややmelodiousな性格とも関連があると思われるが、 Sequenceにおいて音楽は徐々
に拡大されてゆくにもかかわらず、 GSRが下降線をたどるのは興味深い。
以上、 GSRの変化と、音楽の変化とを対照させながら、その原因を検討してきた。元来バレ
‑のために創られた「春の祭典」は注4の如く、儀式の進行過程に合わせて作曲されており、音楽 だけでもその視覚的状況を十分に示唆し、原始宗教的な雰囲気に満ちあふれている。我々は音楽 以外の要素をできるだけ排除するために、被験者には事前に楽曲についての教示は何も与えなか った。被験者の聴取の態度としては、音響体から何ものかを連想するものと、音色そのものに即 して聴く者、又その各種の程度が当然考えられるが、それにもかかわらず、被験者一人一人のペ ン書オッシログラフの動きによるカ‑ブが相似形を表わしており、しかもその形状が上述の如く 音楽の進行状態に即応していると考えられる点が多いのは興味深い。最初に紹介した諸論文は、
この点に関して或いは最初から否定的に考えているのではなかろうか0
考
音楽の聴取により、それ以前と比べて呼吸数が有意に増加することが確認されたが、これは、
音楽という刺激によって、明らかに情緒的反応がひき起されたことを示している。この我々の実 験結果は、 E】lis ら(1952)の研究において、興奮的な音楽として選ばれた‑ンガリヤ狂詩曲の 場合と最もよく類似している.しかしながら、 Ellis らの実験においても、我々の実験において も、呼吸数は1分間という比較的長い時間の単位で測定したものであるので、音楽のどの部分 で、どういう要素が呼吸数の増加に関係しているかなど、細かい点についてはほとんど何も示し てはくれないo結局、呼吸数の増減という生理的反応は、音楽聴取による情緒の変動を明瞭に示
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 263
/ S e
‑ ‑
..‑ .・.・.・.・.・.・.・.・.........
^^^^^ H
..‑
‑
‑
‑
.‑
‑ .. ‑ ‑
..‑ .・.・.・.・ .‑ .‑...‑ .. ..■‑■■.‑
‑ ... .‑ .‑ ‑ .
‑
‑
‑ ‑ ...
1.. . ‑ . . A . . 1.. .′ 、. . i
‑
してはいるものの、音楽と感情との照応関係を分析的にとらえる場合には、それほど有効な据標 とはなりえないのである。
次に、テレビドラマ視聴時における情動反応をGSRによって測定することを試みた研究があ るので、この点に関して簡単にふれておこう。テレビ視聴の場合には、たとえば次々に展開する 各シーンの、どの部分が視覚的な刺激として受けとられているかが明らかでないうえ、実際には 会話やバックグラウンドミ.1‑ジックその他の聴覚的な刺激が複雑に加わっている GSRによ って、こうした複雑な視聴過程を分析的にとらえようとすることは、ほとんど不可能と考えられ る。さらに言えば、テレビ視聴時のGSRをみるためには、被験者に電極を装着し、基抵抗や自 発反射の測定を経て、テレビドラマのGSR測定を終るまでに、少なくとも40‑50分を要するは ずである。そのように長時間では、 Artifactの介入によってGSR測定そのものが不正確になり やすい。このような点から、テレビ視聴時の情緒的反応をGSRによってとらえようとする試み に対しては、あまり多くの期待を寄せるわけにはいかないと考えている。
音楽聴取の場合は、少なくとも視覚的な刺激の影響を考慮する必要がないし、わずか数分問の 聴取で音楽と情緒面との照応関係を、時には被験者が意識化、象徴化できなかった印象や情動的 なインパクトをも含めて、じゅうぶんにとらえるという長所をもっている。
音楽のGSRに及ぼす影響に関する実験は幾つか発表されているが、いずれも音楽に対する考 え方が一元的、表面的なものが多いように患われるO ここでは、上述の我々の実験結果をもと に、おもにHenkin (1955、 1957)の研究に対する考察をおこなってみよう。
Henkinは、音楽の因子分析をおこない、抽出されたリズム因子とメロディ因子それぞれの強 弱とGSRの関係について実験的な研究を試みている。次に示したのは彼の結論の一部であるO
田リズム園子強の場合、 GSRは上昇し、メロディー因子強の場合、 GSRは下降する。
(2) GSRの変化は音楽の様式、 dynamic, orchestration,音色によるのでほなく、明瞭にリズ ムとメロディによる。
音楽と情緒との珊応関係の分析的研究(今井・増田〕
q岨K23
欄 . ′TO
..‑ ....‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ■■..■ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
‑
...●
l ‑
.■■■■■.■■‑ ‑ ...............‑
‑ ..
‑ ‑
〜
‑
Henkinは、メロディとリズムの強弱を4種に分類し、それに無音を加えて寓4のような仮説 曲線を実証しようとしたのであるO
彼によれば、 「いけにえの踊り」は"リズム強・メロディやや弱"なので、 GSR はEで表わ される弧線に近い曲線になるはずである。彼は音楽的素養のある者を対象にした第一実験と、同
0 2 4 6 TIME IN MINUTES BEGINNING OF AUDITORY STIMULUS
図4 Henkinの仮設曲線
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田〕 265
/SQ い ち,6
β 、/ 好 ′事Q 爪 ′打
... ‑
.‑ . .‑
.‑ .‑
r
...■
...‑ ....‑....
‑
■..‑ llll.llll■.
‑ ‑
■■■‑ llllll■
■■‑ ...
...
...‑ ‑
‑
. ■■■■■■■■‑ .... .■■■■■■‑ ...■■■■■■■■■‑ ■■■■■■■■‑
r m ‑
■■ 細 == ■細
種の因子組み合せによる他の楽曲を使って(ただし、ストラビンスキー〔リズム強〕とカバレフ スキー〔メロディ強〕ほ共通に使って)一般学生を対象とした第二実験をおこなっている。 Hen kinは、 「いけにえの踊り」が第一実験と第二実験と異なった結果を示したことについて、その 原因を被験者の音楽的素養の差に帰し、仮説に近い第一実験のほうを支持している。従って、彼 の実験の結論は、まず第一に、すべて同じ楽曲でおこなわれたのではないということ、次に、同 傾向の楽曲でも、 「いけにえの踊り」のように、第‑実験と第二実験とで異なった結果が出てい るのに、それについては全くふれていないこと、それにもかかわらず、原因を素養の差に帰して いるという3点において問題がありはしないだろうか。桜林と坂本(1958)の研究において、ジ ャズや電子音楽が後半より前半のほうに強い反応をしたこと、クラシックやオペラでは全面にわ たって適当な興奮分布が分散して現われたという結果が得られていることからみても、 Henkin の仮説は簡単には認めがたい。
一般学生を被験者とした我々の実験では、 30秒毎の移動平均(図2点線)に見られる如く、
GSRのカーブは漸次下降を示しており、どちらかと言えばHenkinの仮説グラフにおけるC、
すなわち無音の状態に近いものになっている。彼の第二実験の結果のほうが、我々のものに近い ことがわかる。元来、音楽においては互いに分離させることのできないリズムとメロディを、彼 はあまりにも対立的に考えすぎているように思われる。
Henkinは,次に、仮説をもとにその条件を満たしうる楽曲を、 Symphonieや管弦楽曲の中か ら幾っか選出して実験している。しかし、そのほとんどが、第1主題とそれに対照的な性格を持 つ第2主題をもとに展開されている楽曲であり、 Episodo等も含めて、彼の選んだ楽曲の中で、
終始同じ因子が支配的なものがあるとは考えられない。従って、楽曲の大づかみな性質を基に、
ただ物理的に1分あるいは2分後のGSRを測定する方法は、あまり意味がないように思う。各 因子の強弱によるGSRの実験をおこなおうとするならば、できるだけ単純な要素の楽曲を選ぶ べきではあるまいか。
266 音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田)
200.加.
0 /好 .抑
i
‑
‑ ‑ ...
‑ ー
m ‑ U
‑ .‑ ..‑...‑ ... ‑
.‑‑ ‑
‑ ‑
.‑ 蝣i蝣I ■
彼の実験には、以上のように、二元的な楽曲を一つの支配的な因子のもとに総括するという問 題点があるが、リズム因子、メロディ因子とGSRとの関係をさらに検討するため、試みに「い
けにえの踊り」のリズム園子の強い部分とメロディ因子の強い部分を詳細にみてみよう。 Henkin は楽曲全体をとりあげ、我々は楽曲の一部分を考察するという次元の相異はあるが、一つの楽曲 の支配的な因子による傾向は、その楽曲中のかなり長い部分にも同様にみられるであろうから、
二元的といわれる西洋音楽における部分的な検討は、あながち無意味であるとは考えない。
このような考えにもとづいて、我々の実験結果にもう少し詳細な検討を加えてみよう。
(a)リズム園子強(へンキン説では上昇)の場合
まず、ストラビンスキーの中で、リズム因子が最も強いと思われるm.1 (語例1)について は、 〔イ〕30秒間一一上昇の後、下降 〔ヨ〕〜〔ソ〕一一上〔ヨ〕‑下〔タ〕‑上
〔レ〕‑下〔ソ〕で、全体としては下降 〔ウ〕 5秒間日日目上 〔ノ〕〜〔フ〕=‑・上〔ノ〕
‑下〔オ〕 ‑上〔ク〕‑下〔ヤ〕 ‑上〔マ〕‑下〔ケ〕‑上〔フ〕となってお り、各部分におけるGSRのカーブは、初めの5‑10秒間は必ず上昇するが、その後は波形を 描きながら急速に、または、やや下降する。
(b) メロディ因子強(へンキン説では下降)の場合
やはり、メロディ因子が最も強いと思われるm.6 (譜例6)について謝べてみると、 〔チ〕
‑ 〔ム〕一一上〔ナ〕‑下〔ラ〕‑上〔ム〕で全体としては下降 〔い〕 ‑‑・下降と なっている。
以上の如く、リズム因子、メロディ園子のいずれかが、比較的強い場合でも、両者の間に顕著 な相違がみられない m.6の場合に、 m.1程の曲折が現われないのは、リズムによると考えるよ り、少なくともストラビンスキーのこの曲に関しては、楽器の突然の増加・減少による音色の変 化とか、 sfなどに原因を求めるほうが、より妥当であろう。
すでに紹介したように、 Henkinは、 GSRはメロディやリズム以外の因子‑すなわち、晋
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 267
2丘 2/O
.‑ .....‑ .....‑ .
‑
‑
‑ ....
.‑ ..... .‑ ‑ .‑ .‑
‑
‑ ....
.... ....
‑
‑ ‑
= = .■■一■■■一
‑ ‑ I‑ II
■■■■■■■■■‑ ‑ 1■■■■■■,■■■■‑ ■■■■‑ ‑ . . . P L楽の様式、 dynamic, orchestration,音色にはよらないと結論を下している。音楽とGSRとの 関係を追求したHenkinの研究で、音楽におけるこれらの重要な要素が排除されてしまったのは、
実験結果の整理方法に欠陥があったと思われる。すなわち、彼は音楽とGSRとの関係を分析的 に検討するのに、音楽の観点からではなく、単に物理的な時間の単位に従って、音楽によるGSR を量的に測定しているのである ZimnyとWeindenfellerの研究方法も、ほぼ同様である。音 楽の立場から言えば、 1分あるいは2分という時間はかなり長い単位であって、その間には種々
の要素が盛り込まれ、あるいは展開されている。それゆえ、このような方法をとる限り、音楽と GSR との関連は、きわめて大まかにしかとらえることができないのであって、粗い網の目から
は、音楽の複雑に籍綜した各種の要素は脱落してしまうと思われる。音楽の影響を検討するので あれば、何よりも音楽の観点から、すなわち、楽曲の各方面からの詳細な分析が必要であろう。
以上のような見地から、我々は5秒毎のGSRの反応を、音楽の進行状態に照応させて分析す るという方法をとった。その結果、既に述べたように、単にリズムとメロディに対する反応だけ ではなく、 dynamic, orchestration,構成など、一つの曲に含まれる要素の複合された反応として GSRが現われて来たと考えている。
もちろん、幾つかの要素の中で、特に強く反応するものもあれば、ひじように弱いものもある であろう。また、音楽の享受には、瞬間に現出するこれらの要素に対する反応の他に、より内面 的なもの、記憶に依存するような音言語としての音のfigureに関する知識や様式感なども含ま れていることも忘れてはなるまい。
音楽と情緒との照応関係を把握しようとするこの種の研究を今後いっそう深めて行くには、情 緒的反応の、生理的指標としてのGSRそのものの妥当性を検討することを含めて、心理学的に
はより大きい標本による発達的研究、情緒の生理・心理的研究が必要であり、音楽の側からは、
用披数弁別による音響体の各要素の分析的研究、各motifやphraseの楽曲全体および前後関係 の検討、さらに各要素を再び綜合するといった手続きが必要である。
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田)
純血.
Z JS 寺0
.‑ . ...
..‑... ...‑.
....l・...・. ‑
‑ ‑
‑
.llllllllllllllllll‑ ‑ ‑ ‑ l l lll‑ ‑ ‑ iil
E=3 約
音楽と情緒との間に照応関係を認めたアリストテレスの理論は、美学あるいは音楽の分野では よく知られている。
彼の理論に関して、我々は、情緒反応の生理的指標として、呼吸およびGSRを用いることに よって、美学的にではなく、心理学的に研究した。
被験者は11人の女子学生である。彼らに、ストラビンスキーの「春の祭典」より「いけにえの 踊り」を聴取させ、呼吸数とGSRを測定した。
資料は次のように整理された。
1.呼 吸=‑‑音楽聴取中と聴取後の呼吸数を、聴取前の呼吸数と比較する。
2. GSR‑‑‑5秒毎に各被験者の反応を伝導度変化値で表わす。 (音楽の演奏時間が4分25 秒なので全部で53か所)被験者全体の平均を算出し、それをもとにグラフを作 成する。
3.音楽とGSRとの間の照応関係‑‑‑楽譜、音楽展開図、その他の図表を用いて音楽および 心理学的観点から分析をおこなう。
本研究のおもな結果は次のように要約される。
1.一般に、音楽が始まると呼吸数の増加がみられる。
2.音楽聴取中は、開始後1分間を除いて、それ以前より有意に呼吸数が増加する。
3.本実験においては、 GSRと次の音楽の要素の間に照応関係を兄い出すことができた。
(a) motif (モティーフ) (b) dynamic (ダイナミック) (c) orchestration. (オーケス トレイション)
4.上記の結果以外に、次の知見が得られた。
(a) GSR は、リズムEg子およびメロディ因子に関係なく、時間的経過に従って減少す
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 269
0 々好 .細
...‑
…… ……≡
‑ .....
......‑
‑
l■
る。
(b) sequence (ゼクエンス)においても同様な傾向がみられた。
音楽と情緒との問の照応関係を明確にするためには、今後、情緒反応の生理的指標としての GSRそのものの妥当性を検証すること、音響体としての音楽をいっそう厳密に分析すること、
より大きい標本についての発達的研究をおこなうことなどが必要である。
<付 記>
本研究をおこなうにあたって、一方ならぬ御援助と御指導をくださった、同志社大学中瀬古和先生、本学の 牧野英三先生、上田敏見先生、杉村健先生、市川米大先生、玉瀬耕治先生、ピタタ‑技術開発課の清水境一 氏、京都大学の大麻南氏、私たちと共に資料整理その他に協力してくれた本学学生桶本真也君、松井漣江さ ん、八木康夫君、また被験者の学生諸君はか多くの方々に心から感謝します。
注
(1) ftiwdcsは一般にNachahmung, imitation,模倣と解されている。しかしアリストテレスの場合は、全 ての表現を表現されるものとの照応関係において把捜した包括概念であり、その対象ならびに方式に関するな んらの制限をも含まない(竹内:古代芸術・‑HP.273)と考えられる。対象としてほ外的、内的の2種あり、普遍 化的表現、及び対象の高揚という一種の理想化の意を含んでいる。ア1)ストテレスの立場にたって、再び芸術 を〟iftydiSとして考察したのはMoriz Geigerであるが、彼はp,t卯elrの内容的‑積極的な立場を認めながら も、それを所謂「模倣芸術」即ち彫塑、絵画、詩などに限っており、音楽は建築、舞踊と共に考察から省れて いる (M. Geiger Zugangezur Asthetlk p.87ff., Diepsychische Bedeutungder Kunst参照)o しかし 非模倣的と考えられる音楽において、模倣を積極的に認めた研究にCarles BatteuxのLes quatre poetiques
d'Aristote, d'Horace, de Kida et二de Boileau (1771〕 Trait芭 des Beaux‑Arts, reduits A un m芭me
音楽と情緒山の照応関係の分析的研究(今井・増田)
机比.
点灯 250 2 tt ̀O
‑ I^^M 喜
‑
〟
‑ 獲
‑ ‑ ‑ ‑ 看
principe (1746〕及びCours de belles‑lettres (1765 and 1774)があるO彼の理論はドイツに導入され、ド イツ.バロック音楽観の Nachahmungslehre,とAffektenlehre の基となったo しかし、 C. P. E. Bach, Leopold Mozartを経て、ウイ‑ン古典派における古典主義的音楽観の確立と共に、次第に忘れ去られた。再 度音楽におけるNachahmungを問題としたのほ、 W. Serauky : Die Musikaliche Nachahmungs邑sthetik im Zeitraum von 1700 bis 1850, R. Schafke : Geschichte der Musckasthetik 1934, H, Kretzschmar ; Allegemeines und Besonders zur Affektenlehre in Peters Jahrbuch, A. Schering : Musikasthetik der deutschen Aufkl邑rung ; Zeitschrift dep Internationalen Musikgesellschaft 1807.8又さらに論を進めて Symbolという概念から考察したS. K.Langerのシンボルの哲学1959、さらに社会主義な立場にたつLuk丘cs
: Asthetik 1961等がある。
(2〕広義においては情緒別納?とそれ軒こ関する能力Ovvafi的 とそれへの関係において我々があるいは善 く、あるいは悪く行動するところの状態gE=叫 との3要素を包括するo 芸術的には情緒及び状態としてのエ
‑トスが模倣の対象となり、従って我々の心意、心情Gemiitの内容を包括するのであろうO又エ‑トスは本 来静的なものであるが、カタルシス論がパトス的な音楽を含んでいることからも、広い意味で心情と考えるこ とができるO (竹内:アリストテレス‑ 蝣p.210‑273〕本論文においては、心理学との関連から、エ‑トスに あたる語を全て、 「感情」で代用した。
(3)音楽上の「カタルシス論」はこの点から発展したしたものである。
(4)ストラビンスキー(1882、ロシア〜)の春の祭典(1913)は彼の作品の第1期〔民族主義的原始主義時 代)の頂点をなすもので、ディオニソス的なものが最も強く表われている。即ち単純で生気あるmotifの展 開ぬきのくり返し、ほとんど音塊のような感じのはげしい不協和音、ポリ・トナ‑ルの手法、楽器の特殊音域 の積極的使用、強い刺激的な色彩感覚などによって、複雑でありながら原始的、根源的な迫力に富んだものに なっている。人々がそこに聞くのは、未開人たちの自然の全能に対する神秘的なおそれとおどろきであり、自 己の衝動的な重荷に苦しめられた叫びあり、願望の魔力的なほとばしりであり、自分自身の未知なものへの不 安であり、呪術的な狂乱と耽慨であるO (ウェルナーP.161ff.)元来バレーのために作られたこの曲のしぐさ の基礎になっているのは礼拝の過程という考えである。大地を舞踏で呼び起して、大地への祈りを捧げること が始まり、夜にはいけにえの祭りが準備され、死の舞踊が行われるo我々が実験に使用したのは、この曲の頂
音楽と情緒との照応関係の分析的研究〔今井・増田) 271
之̀ 270
フ Alt.
2̀r 名相 ‑**T
‑
‑ .‑ .‑ ■■■m
I
点、いけにえの踊りの部分であるo長老や部族にとりまかれて、いけにえに選ばれた韮女は、急に狂熟的な踊 りをはじめるo この踊りは次第に高まり、法悦の世界から狂乱へと転化するかのようであるo彼女は地にたお れて息絶えるまで、この狂乱の舞踊をつづけるo息絶えた蛋女の身体は大地への豊鏡へのいけにえとされ、部 族は、大地と神聖に結びつくために地面に横たわる.めまぐるしく変る拍子、切迫したリズム・モティーフ、
切々なメロディー、不協和音の音塊、特殊音域のヒステリックな叫び、怪奇なオスティナ‑ト・モティ‑フが 曲の中を交鋸する。
文 献
Aristotle 詩 学(桧浦嘉一訳) 岩波書店 政治学(山本光雄訳) 1960岩波書店
諸問題集1957 Ross Works of Aristotle translated into English Vol.6, Vol.19.
Ellis, D. S., & Brighouse, G., 1952 Effect of music [on respiration and heart‑rate. Amer. J.
Psych0., 65, 39‑47
藤森 聞‑ 木村 忠良1952精神電流現象、脈持、呼吸の相互関係について 医療第6巻第6号367‑371
藤森 聞‑ 1953糖神電流現象(1〕心理学講座第2巻1‑270
原野広太郎1958 血管運動の変化に反映される情緒の実験的研究 日本心理学会第22回大会発表論文集
p. 160。
平 凡 社 音楽事典ストラビンスキーの項
Henkin, R. I. 1955 A factorial study of the components of music. J. Psychol., 39, 161‑181.
Henkin, R. I. 1957a A reevaluation of a factorial study of the components ofサmusic. J. Psychol.,
43. 301‑306.
Henkin, R. I. 1957b The prediction of behavior response patterns to music. J. Psychol., 44, 111
272 音楽と情緒との蝿応関係の分析的研究(今井・増田〕
‑127.
岩原信九郎 細石恭子 塩川宣子 吉川玲子1955 嘘に対するGSRと性格特性との関係について 実 験心理学第1巻第3号82‑850
岩原信九郎1969教育と心理のための統計学 日本文化科学社
Langer, S. K, 1942 Philosophy in a 】1ew‑key.
Lazarus, R. S. & McCleary, R. A. 1951 Autonomic discrimination without awareness : Astudy of subception. Psychol. Rev., 113‑122.
森 二三男1960テレビ視聴時における GSRの集団測定について 教育心理学研究Vol.8, No.3‑4
18‑24
村上 義隆1967音楽表現の心理 新書館
新兼 良純 相場 均1967 「GSR研究の手引」 山越製作所
新兼 良純 白藤 美隆1969 「皮膚電気反射一基礎と応用‑」 医歯薬出版 音楽の友社 標準音楽辞典
名曲解説事典 管弦楽曲福 間 計夫 音楽心理学
相良守次編 多湖 輝 吉田正昭著1968心理学入門講座2 人間の欲望・感情 大日本図書
柴田 南雄1958現代の作曲家 音楽の友社
柴田 南雄1967西洋音楽史4 印派象以後 音楽の友社
桜林仁・坂元昂1958音楽行動の研究I 音楽的情動反応の測定と考察 日本心理学会第22回大会発表論 文集P.167
桜林 仁1961音高弁別力に及ぼす訓練配分の影響と意義に関する予備的考察 ‑音楽行動の研究
Ⅳ‑ 日本心理学会第25回大会発表論文集p.ll
桜林 仁1962飽和DYNAMICSの導入による適応環境理論 日本心理学会第26回大会発表論文集
p.9
桜林 仁.坂本 昂1963子守唄の脳波的特質とBGM‑音楽行動の研究Ⅴ一 日本心理学会第27回大 会論文集p.536
竹内 敏雄1958アリストテレスの芸術理論 竹内敏雄編1961美学事典 弘文堂
竹内敏雄編1964古代芸術理論とその現代的意義 講座哲学大系Vol.6 人文書院
Thomas, A. R. 1962 GSR duringl earning activities of children of low, average and high inte‑
ligence. Child Developm. 33, 879‑889.
玉瀬 耕治1968言語条件づけと強化の型不安および GSRの関係奈良教育大学紀要Vol.16,No.l,
205‑219.
宇留野藤堆・多湖輝1954精神電流現象(2)‑心理学の領域におけるPGR一 心理学講座 第2巻
1‑26
宇留野藤雄・多湖輝1954 GSRの測定について 心理学研究 第25巻第2号 40‑46 梅本 尭夫1970音楽心理学 誠信書房
浜辺英一・深田薗彦 音楽の心理学的研究
(1〕 日本心理学会 第25回大会発表 論文集1961, 471.
(2) 日本心理学会 第26回大会発表 論文集1962, 424.
(3) 日本心理学会 第27回大会発表 論文集1962, 533.
Weidenfeller, E. W. & Zimny, G. H. 1962 Effect of music upon GSR of depressives and schizo‑
音楽と情緒との照応関係の分析的研究(今井・増田) 273
phrenics. J. abnorm. soc. Psychol. 64, 307‑312.
Werner, H. MusilC in Gegenwart,
山松 質文1957日本人の音楽的才能の発達
依田 新編1967 「テレビの児童に及ぼす影響」のうち「テレビ視聴時のGSRJ 「テレビ視聴時の GSRとプログラムアナナイザ‑」 東京大学出版会
Zimny, G. H. & Weidenfeller, E. W. 1962 Effect of music upon GSR of children. Child Developm., 33, 891‑896.
表 G S R の 変 動 傾 向 と 音 楽 GSRの
カ ー ブ
a
b
C
d
5‑‑
10‑
15‑
25‑
3。
4。 拝
55‑60 下
1 ‑.ll ll.‑16 17‑26 27 33 34‑44
47‑54
60‑70 上 63‑73
70‑75 75‑80 8。 85;
85‑90 上
罪 90‑95 上
section motif 〜 orchestrationはinamik 全 楽 器
Fag. 12, CFag corni,弦4 上記のものに加
えて
Ob Cor. ingl.
Tr. Pice.
Tr. Tr‑boni.
Fag.12,C.Fag.
corm,
弦4
弦5 +Fl.picc.
Clar. pice.
Tr. pice. Tr, 弦5, Clarpicc.
Tr.picc. corni 上記に同じ Fl. pice, Flgr.
Fl. Oboe. Cor ingl. Clpicc.
Clar. ClarBaB.
Fag. C.
Fag. corni, Trpicc. Tr.
後Tr‑boni5弦
Tube Fag, C. Fag, corni. Trboni, 弦
考
motif 1 ∫の強烈な不協和音。 1あるいは2小節で交代する拍子。
切りきざまれたリズム。
ffsfzの絶えまない切迫したリズム操作のAの後、急にPPで新しいリズムモ ティーフの出た部分。
上記をバックに怪鳥の叫びを思わせる3つのモティ‑フが、 Tr.‑bone, Tr.
pice, Tr.に/ raarc.^>で次々にひきつがれてゆく。曲の中でも不気味さを増 すところである。
(ロ)と全く同じ部分
2のモティーフ卑弦5部か!(ロ)より12度高くsfできりきざむ。そのうえを、
Fl.picc, Clar.picc. Tr. piceが同時に3のモティーフを2度奏する。音色効果 とひじょうに高い音域が(ハ)よりさらに不気味さを増す0
3の出現間隔が短くなり、corniが加わる Fl. pic°.がなくなり、音域はやや 下るが、 2のmo朋の弦5部は∬で不協和な音塊と化したリズムを奏してい
るO
(へ)の続き。 3の断片の交叉0
3のモティ‑フが消え、今まで弦の鼻の2つのモティ‑フが木管群とcorniに ひろがる。
後にTr. bon Tubaが加わって、上昇及び下降半音階の急速な交代oその中 でFr. pice, Tr. pice.とVIl soloが3のmotifを奏するが、目立っては 聞こえない。混とんとしている。
(リ)のjjf混とん状態のあと急にPPで2のmotifを秦する。 (ロ)より長 2度低い。
軸轍 t疎 苗t co 遍m m来 8* 苛さ 望冷 (*
#‑ 歳E Bj