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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

変形サイクルと適正分析

著者 高橋 孝二

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

23

1

ページ 37‑56

発行年 1974‑11‑15

その他のタイトル Admissible Nodes for Transformational Cycles URL http://hdl.handle.net/10105/2636

(2)

変形サイクルと適正分析

高  橋  孝 (英語学研究室) (昭和49年4月25日受理)

句構造規則(Phrase Structure Rules)の定式化には、その根本に、自然言語の語の可能な配 列を統一している法則なり原理なりが、自然で簡明な形で与えられることが出来、この定式化が 人間の言語能力(liliguistic competence)のさまざまな実際の柏を最も良く性格づけ得るという、

経験的仮説に支えられた信念のようなものが背景にあると言われる。句構造規則の展開によって 得られる基底構造は、あらゆる言語に定義可能な文脈自由(colitext free)の構造であると仮定 され、文脈自由文法の詳細な研究が、個々の言語特有の文法現象によって検証されながら経験的 妥当性を確実なものとして行く時、文法理論の説明力は達成されることになる。

今日、変形生成文法研究の大きな流れの一つに、 Emonds (1970)を中心に据えた、可能な構 造記述、可能な構造変化(変形)を追求し発見しようとする論考を挙げることが出来るが、この 動向は明らかにPerformance Models構築の路線と軌を同じくしていると言えるo

本稿は、適正分析(proper analysis)の概念を、基底の句構造規則、ないしはこれと同じ形式 を持つ表層構造規則(出力条件)が持つ形式的特性を、変容可能な結節(nodes)の許容条件 (Admissibility Condition)としてとらえ、従来とかく明確さを欠いていた変形サイクルの実体 を、規則としての変形サイクル、規則適用の場(domain)としての変形サイクルとに分割して考 察を加え、何が問題かを基本的に把握し直しながらCyclical Grammarの組み立てを志向しよ

うとするものである。

(‑)

句構造文法(PsG)の規則に課せられるいくつかの制限を整理すると次のようになる。

(1) PSG‑Conventions

(a)一度(at a time)に書き換えられるのは、 arrowの左側に複数の記号列があって も、その中の一つだけである。右側の成分は複数であってもかまわないが、各記号 は同時にこっの異なる句に属すことはない。

(b)記号(構成要素)の循環的使用(recursion)はSのみに許される。

(C)この規則のレベルでは要素(成分)の消去(deletion)はない。ある記号がzero‑

elementに書き換えられることはないo また、連続する(adjacent)記号列のみが 一つの句を構成することが出来るO更に、すべての記号はいずれかの句に属してい なければならない。

37

(3)

38 高 橋 孝 二

(d)要素の順序入れ替え(permutation)は許されない。書き換えのどの段階でも順序 が運転することはない。

以上のPSGのoutputが文脈自由なP‑markerであり、ある記号列の構造記述(structural descriptions)を与えるものであるが、原理的には構造主義文法のI C分析の定式化である。変 形文法の基底部門は、いろいろな変形が通用される構造を指定(specify)するものとして、

Chomsky (1965)では(1)の規約を原理的に書き換え規則(rewriting rules)の中に組み入れて 来ている。 (1)の規約を備えた句構造規則の展開は枝分かれ構造(tree structures)によっても 示されるが、この構造は有限箇の結節(nodes)から成り、次の三つの関係概念を担っているO

( (e)、 (∫)、 (g) )

(e)直接ないしは余すところなく、上にある記号が下にある記号を支配する(dominate)。

この支配関係(dominance relations)が、各nodesの上位関係(higher in the tree)、埋め込み(embedding)の相対的深さ及びその数を規定する。統率(com‑

mand)の概念や、後に考察する「優位」の概念はここから出て来る。

(f)構成要素の線的順序(linear ordering)つまり「〜の左にある」 (is to the left of)、先行する(precede)という構造関係があるO

(g)記号連鎖として与えられる形態素なり語なりが、単にヒエラルキーを成すとしただ けでは不十分であり、適正な句標識としてのラベルが与えられなければならない。

このIabelled brackettingは、異なる文、異なる文の部(parts)の中にある構成 要素の異同についての情報を与えることになるO更に、各要素間に̀is a の関係を 基本的に与えることによって、 permutationの禁止を意図し、各要素が夫々一つの 結節に帰着し得るような形を与える。

上の派生(derivation)に関する規約で、 PSGの概略は示されることになるが、文の生成能 力(Generative Capacity)の観点から、次のように、より精密に規定される (Chomsky, 1965; Kimball, 1973)

(h)一組の非終端記号(nonterminals)の集合を∑とすると、 ∑・derivationは∑の中 の一つの記号、一番上のS (top nodeS)から派生展開して行くO従って言語理論 においては、 ∑はSのみから成る。このSが根(root)と呼ばれる nodeである。

( i ) Terminated derivationは終端記号(terminal symbols)のみから成る。

ここで、 (h)に関係する構造記述(SD)の葉合〈∑1, ∑2,‥‑‑)が文法の強生成能力(strong generative capacity)をなし、 (i)の文の集合 {Lj, L2,蝣‑・)が文法の弱生成能力(weak generative capacity)をなす。構造主義文法と変形文法の基底部門が共にP S Gの形式をとりな がら、両者が決定的に異なるモデルであるのはこの強生成能力の面から言えるのであるが、 TG の生まれる基盤そのものを与えた̀taxonomic'モデルとしてのPSG (構造主義文法)の欠陥を 次にふり返っておく。 TGそのものが持つ理論的弱さ(不必要な変形を許すこと等)もここに起 因していると考えられるからである。

(2) P SGの弱点(weaknesses) (Postal (1967))

(a)等位構造(coordinate constructions)に正しい句標識を与えることが出来ない.

(b)照応表現(anaphoric expression)、命令文、削除(deletions)等の̀understood elements'説明の根拠を与えることが出来ず、代名詞と固有名詞との区別を与える

(4)

ことも不可能である。

(C)呼応(agreement)の処理にいちじるしく simplicityを欠く。

(d) active と passive questionと declarative assertionと negationとの、直観的 に認められる関係を説明出来ない。

(e)文型(sentence type)が固定してしまって、 reconstruct出来ない。

(∫) ̀feature'方式を欠くために、意味の問題のからむ文脈に制約される範ちゅう化の問 題には殆ど無力である。

このような強生成能力における限界が、文脈自由から文脈依存(context‑sensitive)の句構造 文法に発展し、句標識から他の句標識へと写像する文法変形が導入されることになるが、 Ross (1967)による適正分析への任意成分要素としての変項(variables)の導入、句構造娩別として ではなく結節許容条件として基底規則をとらえ直そうというMcCawley (1968)の主張がからみ 合って来ている。

Kajita (1974)によれば、 Chomsky (1955)以来の基本的仮説は,句標識(P‑markers)の終 端連鎖の適正分析に加えられる操作のみが、個々の変形規則の構造変化によって指定され、派生 句構造のその他の諸相は一般原則によって決定される、というものである。この一般原則が何か ということが実は大問題であり,本稿は「変形サイクル」という視点から(二)以下に考察しよ うとするものであるが、現在、文法変形として認められている原始基本変形(primitive/basic elementary transformations)としては、消去・代入・付加の三つがあり、これらの変形の複合 として構造変化が定義されることを確認しておく。またMcCawleyの許容条件は、ある結節がも しAというラベルを持ち、直接にこっの結節を文配するならば、それは許容される<A ; BO というものだが、ここでは次の(3)が、基底の句構造規則としても表層構造規則としても存在し ないために、英語ではこの構造記述から生成される派生句構造は存在せず、従ってこの種の変形 は強すぎる、というようにこの条件を拡大して用いることにする。

(3) S‑NP‑Aux^S‑^VP (Kajitaの例)

問題は前述の「強生成能力」をなす構造記述(SD)の配列(configuration)に,どのような制 約を課すかということであり、無制限な書き換え姐別と変形文法とを切り離すことであり、可能 な変形もこれに対応して規定されることになる。

(ニ)

文法規則の循環的適用(cyclical application)のmodeが明確になれば、その文法規則の妥 当性が認知され「可能な変形規則」の複合のあり方が知られることになる Chomsky(1965)に 変形サイクルの概念がはじめて提示されたが、このわく組みをより具体的に考えなおしてみると、

変形サイクルは次のような適用手順を踏むことになる。

(4)循環適用の手順

(a)ある一つの規則(Ri)が最も深く埋め込まれたSlの車で、統語的に定義された文 法単位の派生(derivation)に、実際にまたは空虚に(vacuously)働く。

(b) Siより高いSnの中で、他の規則(Rj)通用の問にはさまれて、通用条件が整っ ていさえすればRiは再び働くことが出来る。

(C)規則RiとRjのと適用順序には順序づけがあり、Pi‑T(Pi‑1)の原則がsuccessive

(5)

40 Il''J 蛸 孝 ∴

な変形サイクルの基本になるが、 Riがストレー 土にSnを経て一番上のSにまで 働き、その後Rjが同様に働いて行くこともあり得る。つまりサイクルが線形順序

になる場合もあり得る。

このように‑・組の循環規則が互に順序づけられて、最も深く埋め込まれたSという領域から

̀bottom‑to‑top'に働くとき,このサイクルの場から見た規則は次のように分類される。

(5) Cyclic Rulesの分類

a) precyclical規則    c) post・cyclical規則 b) cyclical規則     d) lasトcyclical規則

文法の変形部門を構成する上記の変形規則が実際に存在するかどうかの枚討に入る前に、語い そう入(lexical insertions)の段階ないし順序づけ(ordering)に関する四つの方向について見 ておくことにする。

一つは、語い項目(lexical items)は派生(derivation)が終了するまで挿入されない、という ものであり、ここでの派生は変形による展開の意である。この方向が否定されるのは、ある変形 が働くためには特定の形態素が現実に存在することが必要とされる例があるからである。例えば 次の(6)でforがdeleteされるためには、その直前にwantがなければならず、この点でdesire

と異なる。

(6) a) I want you to win the prize.

b)

c) I desire for you to win the prize.

二つめは、語い項目は派生の開始時にすべて挿入される、というものであるが、この方向が否定 されるのはある語い項目が対応する意味(材料の複合体)は、意味表記それ自体の成分である必 要はなく、辞書前(prelexical)の変形の過程で生じて来る成分であることもあり得るからであ る。いくつかのsemantic predicatesを一つの語単位にgroupづけするこの立場(̀collection' 変形)については既に論じたことがあるので省くが、英語に存在しない語い項目を要請するよう

になる(7)のような「派生句構造」に関連して二つの道があることに注目しておく必要がある。

(7) CAUSE BECOME NOT OBNOXIOUS →?

(a) predicate‑raising変形には何らの制限もなく、ただ表層構造はその終端結節が可能 な語い項目を担うことが出来れば適格である、という表層構造規刺(制約)だけが 文法に諜せられることになる。

(b) (7)のような構造の派生を排除するような制約をこの種の変形そのものに課す。

McCawley (1971)はRos 等のoutput conditionsをこのレベルに通用すること の可能性を示唆しているが、ある言語の変形による派行句構造の一面が、出力条件 という表層構造からの情報によって決定されるという可能性は大いに注目される。

( (3)参渦)例えばRoss (1967)のComplex Nr Constraintは次の(8)の生成を 阻止するが、 (9)の語い項目そのものの存在不可能な理由をも与える。

(8) *How many movies have you met the man who directed?

(9) *<flimp>‑kiss a girl who is allergic to

(6)

三つめは、語い挿入は随所規則(anywhere rule)であり、他の規則との関連において固定した 順序づけがなく、派生のどの時点ででも適用される、というものであり、これは変形サイクルを 採らない立場である。この規則の例としてはRoss(1970)の空所化変形(Gapping)があるが、

S‑deletion も含まれるとなると前循環規則それ自体の存在も疑わしいものとなる。次の(10)はよ

く用いられるS削除変形の例である。

(10) Margaret is believed by many to be pregnant, but she denies it. (S‑Pro) 四つめの方向は、 syntaxにサイクルが存在するかどうかという文法の組み立て方(organization) に最もかかわるものであるが、次の(ll)に示すようにある言語の持つ変形が二つのsubsystems に分けられるとすると、 I亘ココのところであらゆる語い挿入がなされるとする。

(ll) cycle‑→庄二王コ‑ postcyclic規則

̀after'  ̀before'

ところでPost cyclic規則(後循環規則)の例としてもあげられている代名詞化はサイクル性に 関して疑われて来ているので、その検討を通して(ll)を再吟味して行くことにする。

(5)に示した変形循環の分類は、実は独自のいくつかの下位原則の集まりであり、この事実は 次第に明らかになって行くが、変形通用を支配する中心的な概念としての変形サイクルの原理の 背景には次のような理論そのものにかかわる問題(logicalquestion)があるO即ち、もし変形が 句標識から句標識への写像であるならば、ある一つの変形のoutputが他の変形のinputとなり 得ないか、という問いである。そして「変形サイクル」と言うとき、 ̀yes'という答えから出発

しているわけである。このことは、句構造規則が夫々の出力に適用されて展開し深層構造を生み 出して行くように、ある変形も他の変形の出力に通用され得るという両部門の持つパラレルな性 質を示すものであり、両者の̀derivations'に共通する文法的制約が存在することを暗示してい る。ただ、一組の変形規則は明示的に外在的順序(extrinsic order)に従っていて、いわば出番 が来るまで働かないという点で、句構造規則よノり制限がきびしいという点で異なる。さて、

Grinder (1972)は、規則適用のサイクルと言うとき、その動機には二つ考えられることを指摘 している。

(12) (a)primary motivation (b)secondary motivatioIl

(a)はある表層構造を派生するとき、最少限二度用いられる規則Riと、最少限一度用いられる 別の規則R]'が存在する場合に限って認められる動機であるとされる ((4)のb参照) (b)はあ

る統語現象が循環原則に従っているように見えても、実はnoncyclic grammarでも十分説明さ れる、という場合に与えられたものである Ross (1969)の代名詞化の規則を循環的適用の原則

によって説明した分析の仕方は次のようなものであった。

(13) a) That hei was sick disturbed Harrys.

b) That Harryi was sick disturbed hirrii.

c) Realizing that he; was sick disturbed Harry;.

d) Realizing that Harry; was sick disturbed him;.

(13)のa)、 b)、 C)では代名詞がHarryを指しうるのに対し、 d)ではiという同一の指示関係 は成立しない。 C)の探層構造は,次の(14)のように概略示すことが出来、

(14) [[Harry; realized [Harry; was sick]si]s2 disturbed Harryi]s3

代名詞化変形が循環的に通用されるとき、まずS2の場(サイクルの場)で二番目のHarryが

(7)

42 高 橋 孝 二

heに変えられ、次にS3サイクルで同一名詞句消去(equi‑NP deletion)によってS2の主語が 主文のHarryと同一であるために消去されてC)が得られるとする。 S2で一番目のHarryがhe に変えられることはないから、 d)の指示関係が同一でないことを説明出来ることになるo 「代名 詞化」の規則そのものを否定する立場は別として(12)の観点から見ると、 (14)からC)の表層構造 を導くために適用されている規則は二種類であるが、ある規則が他の規則にはさまれて最低二回 は用いられるという(12)の(a)には当てはまらならないことになる pronominalization適用の方 向として̀upward orientation'という制限を用いさえすればd)は説明出来ることになり、 (12) のb)に当てはまるだけとなってしまう。また、同一指示性(coreferentiality)の条件を必ず含む 上の二種類の変形規則が、いくつかの基本変形(前述)の複合(complex operations)にすぎな いとする考え方が正しく証明されることになれば(14)にはただ一つの規則しか働いていないこと になり、 Rossの主張は説明の深化にはならないとされたo 次の例は、上の二種類の規則が関係

し合わないことを示している。

(15) Harryi's realizing that he; was sick disturbed him; (Grinder, p. 87)

以上からRossが代名詞化の規則が循環的に通用されるとするときのサイクルとは、ある変形 が働く場としてのサイクル(cyclicnode)を指定しているだけであると考えられる。次に、代名 詞化とthough変形とがかかわる場合について考える。 though変形(though‑movement)の構 造変化は次のように示される。

(16) though, X, AP‑AP, though, X

例えば次の(ユ7)a)から(ユ7)b)への変形過程を考えてみると、

(17) a) [though I believe [that Betty^ is fond of the boy Betty; smiled at]si]s2 b) Fond of the boy Betty; smiled at though I believe that she; is

a)のSlサイクルで一番目のBettyがsheになることはありえないのに、構造変化を受けた後 のb)ではsheiになれる。逆にSlで二番目のBettyが代名詞化されると、 b)は生成されないO 艮く知られているJackendoff等のサイクルを持つ代名詞解釈規則による解決もあるが、 S,サイ クルが(4)の(a)の空虚に通用される環境であることが立証されれば代名詞化の規則は二度用いら れて居り、問にthough変形が入っているので(12) (a)のprimaryな動機が与えられることに

なるO あるいは、このような左方転位による話題化と代名詞化とにはより一般的な原則があるの かも知れないO (この点に関して、 「変形の相補分布」という題目で稿を改めて論じる予定であ る。)「変形」規則であれ、 「意味解釈」規則であれ、共に変形サイクルの概念を重視しているので あるが、 Jackendoff(1972)は変形への制限として次を挙げている(Analyzability convention)

(18)変形が正しく通用されるためには、当該サイクルに関係を持つ主節(main clause) が、次の四つの役割を果さなければならない。

(a)変形は主節の構成要素をdeleteL insertL, moveする。

(ち)変形は埋め込まれた文(従節)の構成要素を主節に moveする。

(C)変形は主節の構成要素(例えば動詞)の担う規則素性(rule feature)の指示によ って従節に通用される (cf. complementizer deletion rules)

(a)(b)(c)は一番上のSにかかわる「根変形」 (Emonds(1970))と合致し、 (d)は更にPostal (ユ972)に通じるものが認められる。

(d)このとき変形は二つの異なる(分離した)従属節の中の成分を巻き込みながら通用

(8)

される。この制約を採用すると、例えば受動変形(passivization)が次に示す従節に二度適用さ れるのを阻止することが出来る。

(19) a) QJohn said (^that Bill gave the salami to Fred.]si ]s2

a)のSlサイクルにpassiveが適用されてb)が導出されるが、従姉は再び受動変形が通用されう る構造記述に合致している。

b) John said Qthat the salami was given蝉by Bill.]si

何故なら、下線部のPPは直接動詞に続いていて、次のC)のように受動変形が適用されうる通常 の環境であるからであり、前置詞に従うNPがsubjectになり得る。

c) This bed was slept in by George Washington.

しかし、 b)のSlサイクルに再びpassiveが通用された次のd)は許容されない。

d) *John said that Fred was been given to by the salami by Bill.

このような二回目のpassiveの派生には主節が何らの関与もしていないからであり、場としての サイクルが̀disjoint'な二つの節にわたっていないからである。このことは本稿の適正分析の立 場からとらえ直せば、句構造規則に同一の成分のみの展開を禁止する制限(Looping Condition)が あるように、変形派生が同一サイクルでは成立しないという繰り返しを禁止する規約(Iterative Rules)を破るものであるから、と言える。

(18)のような規約が正しいとすると、最終循環規則(lasトcyclic)と呼ばれる変形規則の適用範 囲が大巾に限られて来る。‑つまり最終サイクル変形は本質的に main (matrix/topmost) clause にかかわる。従って次のようにとらえることが可能である。

(20) (a) Cyclic変形‑‑・どのようなclausesにも適用できる変形。

(b) Last Cyclic変形・‑Hmain clauseにのみ適用される変形(Root)

これはEmonds (1970)と一致する Emondsは、探層構造と表層構造との違いが大きくなり すぎないための条件づけを試みて来ている。変形の生成能力へ重い制限を加えるために、ある変 形のoutputは基底部門における規則((1)参照)によって独立に、別個に、生み出される構造 と同じでなければならない、とする。例えば、受動文でdeep objectが表層で主語の位置を占 め、 Auxと MainVの中間に位置しないのは、 base ruleがこの位置にNPを生じないからで あり、同様にdeep subjectがbyの右に来るのは、他の一般の前置詞句の形に一致するからで ある。これが構造保持(Structure‑preserving)の仮説であり、サイクルをなす変形がもたらす 派生句構造もこの原則に従わなければならないとする Kimballの立場と共通するものである。

この仮説への例外はすべて主節に関係するものであり、構造変化による deformationsは根文 (root sentences)にのみ適用されるとするO これが昼変革(Root transformations)であり, 前述の最終サイクル変形に相当し,従来不明確であった"shallow structures"のレベルが根変 形適用前に派生される構造であることが確認されて来ている。この仮説に対する反例が提出され て来てはいるが(その拡大について後述)、変形適用のdomainをこのように規定すれば、どの レベルの構造が変化しているかを調べるだけで、ある変形がcyclicか、 last‑cyclicであるかが 予測されることになり、言語理論への貢献度はきわめて大きいものがある。

(18)の(d)は変形サイクルの循環的順序づけ(cyclic ordering)の問題にかかわって来る。

Postal (1972)によれば、この問題に関して次の二つの立場がある。

(21) (a) successive cyclicの仮説 (b) higher‑trigger cyclicの仮説

(9)

蝣u 高 橋 孝 二

(a)はある種の変形が適用されるとき、一つ一つのcyclic nodeをず経由して最終サイクルに 至る、というものであり、 (ら)はその変形をtriggerする要素がtreeの上位に存在すれば、スト レートにそのサイクルの場に適用され、その要素が欠けているときには構造変化が生じない、と いうものである。 ((4)の(C)参照)今次の(22)のような基底構造があり、 U‑Rules (wh前置、

話題化、等)が通用されるとすると、

(22) (便宜上埋め込まれるSの示し方を「かっこづけ」の場合と逆にして示す) (a)の立場は、 NPiがS2サイクルでS2の前(front)

s2

X NPtFrY

に移動させられ、SlサイクルではSlの前、そして最 終的にSoサイクルでSoの前に位置することになる

と主張する。ここでNPiがRootに逮するまでにwh 前置が三度通用されることになる。

(ら)の立場は、この規則を促す要素がSoに存在しな ければならず、 NPiがその要素の存在する領域(So サイクル)にストレートに移動させられ、このよう な適用環境が生じない場合は、 NPiがS2、 Slサイ

クルの元の位置(original position)に留まることも あり得ると主張する ((4)の(b)参照)

各サイクルの場を必ずsuccessiveに経由するという(a)の背景には、例えばJackendoffの 代名詞化解釈規則にサイクルを持たせようという意図があると指摘しているが、この解釈規則 (Noncoreferentiality rule)は循環的に+coreferentialの指定を随意的に与えて行き、 ‑coref‑

erentialの指定は、あらゆる変形の通用が終了した"shallow structure"のレベルで(するとこ の規則はIast cyclicということになる)まだcoreferenceの指定を与えられていないNPと Proのペアはすべて‑coreferentialとする、というものである Postalは(b)の立場を主張し

ながら、その根拠としてPreposition Dangle, Raisingと Tough Movementの例を挙げる。

次の(23)で、 (21)(a)の立場はd)e)を説明出来ない。

(23) a) I believe Mary thinks Joan talked to someone.

b) Who do you believe Mary thinks Joan talked to?

C) 'Fo whom do you believe Mary thinks Joan talked?

d) *Who/Whom do you believe to Mary thinks Joan talked?

e) *Who/Whom do you believe Mary thinks to Joan talked?

このような例に対してsuccessive cyclicの立場はfeature方式を採ることになる(23)のb)c) の相違は[+wh]をNPのみに付与するか、 PPに付与するかによるとする.すぐにこの方式は Pied Pipi】1gの反例によって否定されるが、本稿にとって重要なのは、このような素性の付与が d)e)を説明する決定的な表層構造の特徴も、意味的特徴も反映するものでなく、文法の力をいた ずらに強めるだけであるとする警告であり、(18)の(C)に反することになる。この方向にBresnan の変形回路としてのCOMPの概念が位置づけられると思う。 (後述)

次に、英語には従属節から主節にNPを引き上げる(raise)循環規則があり、挿文の主語を引 き上げるRasingと、構文の主語以外のもの(nonsubjects)を引き上げるTough Movement とがある。

(24) a) John seems to love Betty.

(10)

b) John is tough (for Betty) to please.

このとき、主・従二つのSo Siが関係しているのだから(21)(a)の立場(SCH)は次の(25) を主張せざるを得ない。

(25) (a) SiのNPにU‑Rulesを適用しても、次の規則、例えばTough‑M適用の環境 を保持している。 (Soのサイクル)

(b) SiのNPにU‑Rulesを通用すると、次の規則、例えばTough‑M適用の環境 を破壊してしまう。 (Soのサイクル)

しかしSCHは、同じただ一つのNPにこれらが関係することによって生成される文の存在を 許容しない。 (従って(25)の(a)(b)を共に主張出来ないモデルである。)

(26) What do you think would be difficult for John to find?

このように(21)いずれの立場を採用するかによって、同一NPに異なる変形がかかることを認め るかどうかが定まる。いずれにしても変形をtriggerする要素はsyntaxの面からはRoot‑Sに 存在するという基本的立場に立つのがよく((18)のC)後循環規則(Post cyclic)の存在がはっ

きりしない。変形サイクルの配列は結局次のようになり、

(27)魁二・}̲旦曳 Rp,‑‑, R\

Cyclic rules Last‑cyclic rules 従って(ll)の図式は(28)のように修正されることになる。

(28) all‑cycle ‑>庄:□ →last‑cyclic

̀after'  ̀before'

prelexicalな変形も持っているサイクル性、可能な語い項目の規定等、 (28)は大きな問題をはら んでいる。循環規則のどの規則通用の後にinsertionが行なわれるか明確に規定する作業が残っ ているが、この方向を開拓することは意義あるものと考えられる。

(≡)

適正分析を与えられた構造でも、尚、変形があいまいにかかる場合がある Chomskyの一貫 した姿勢は変形通用の一般的制約の追求にあると言えるが、変形サイクルの観点から変形への条 件について更に考察を続けよう。はじめに、あいまい性とは関係なく、絶対的にある要素への変 形適用を阻止(禁止)する構造上の環境について見る Bresnanの=Complementizer Substitu‑

tion Universal''は、節頭(clause‑initial)にuniversal element としてのCOMPを持つ言語 のみがCOMP‑substitution変形を許す、というものである。これはある項目をCOMPの位置 に移動させる変形が許容されるのは、このように分析された構造環境がある場合に限られるとい

う絶対禁止の条件である。この制限をとり入れた句構造規則は次のように示される。

(29) a) S‑→COMP

・PT(

cfs‑l>慧o}vp b) COMP‑P NP±WH このbase rulesの中に導入されたCOMPは終端連鎖に語い項目は人らす空(null)である。

このモデルを組み入れて、 Chomsky (1973)は次の循環原則を提案した。

(30) Strict Cycle Condition

あるサイクルを成す結節Aによって支配されている領域に、他のサイクルを成す結節

(11)

46 高 橋 孝 二

Bによっても支配されているAの下位領域(subdomain)があるとき、いかなる規則も この領域にのみ影響を与える仕方で通用されることはない(Ca一一[/>////]b‑ ]a) この条件は、ある変形派生がより広い包括的な領域へ(下から上‑)展開して行く過程で、ある 規則が前の段階のサイクルに戻ることを禁止する。 (この点で変形サイクルの切り換えも可能と するG.Lakoff (1971)のorientationの概念と対立する。)循環規則と考えられる間接疑問や 関係節の形式に働く wh‑Movement (U‑Rules)の例は次のように(30)の条件に従うO

(31) a) COMP you told me [s COMP Bill saw something]

a)の最も深いサイクルにwh‑rlacementとwh移動が通用されてb)となり、

b) COMP you told me [s[comp what] Bill saw]

b)の vhatをmatrixSのCOMPの位置まで移動させることになる。

この時、 Specified Subject Condition はもはや障害とならないが、 Tensed‑S Conditionを破 ることになる。これを救う方法として、両サイクルのCOMPからCOMPへの移動はこれを

̀escape'として許すという一つの制限解除を認めれば、 that‑insertion, Aux‑inversionを経て、

C)の表層構造が得られる。

c) What did you tell me that Bill saw?

しかしこのいわば「踊り場」としてのCOMPも、 matrixサイクルに受動変形が加わるとき 用をなさなくなる。

(32) John asked what to read.

a) *What was asked to read by John?  b) What did John ask to read?

先のPostalの主張((21)の(b))にこのCOMPの仮説は共通するものを持つが、このCOMP がcyclic node としての地位を与えられれば規則(29)は次のように修正される。

(33) S‑COMP S′

S/‑⇒NP Aux VP

ここでSは勿論循環規則の働くことの出来るサイクル(場) であるが、 S!はCOMPにその役目を渡してしまっている ためにサイクルの場となり得なくなっている。この肩代わ りの現象も、補文の文法解明にいろいろな問題を提起する ことになると思われる。

これらの特徴を(30)と共に述べる親約として次のものが考えられるO (34)次の構造記述ではいかなる規則もX, Yにかからない。

...X‥.[a‥.Z...‑WYV...]‥.

ここで、 (a) ZはWYVの「指定主語」 (anaphoricでない語い項目から成る)であ

co

(b) YはCOMP内にあるが、 XはCOMP内にない。

(c) YがCOMP内になく、 αが「定動詞文」 (tensedS)である。

(34)の核心はCOMPが二つ存在することを必須としているところにある。例えば次の派生が許 されないのはNPにCOMP‑nodeがなく、 COMPが一つしか存在しないからである。

(35) a) COMP you saw [NP John's pictures of who]

b) *Who did you see John's pictures of?

またCOMPへの「引き寄せ」は一つの項目だけに許される。次が許容されないのはS′にこっの whを与えられた要素があるからである。

(12)

(36) a) COMP he wondered [s COMP John put更型吏空理コ b) *What did he wonder where John put?

またCOMPは派生の段階でwh前置を果したあとでも依然として残っているのであるが、その 支配する領域に前置詞のdanglingを許さないとするが、 ((23)のd), e))これに対するPostal の見解が待たれる。重要なことは、いろいろな出力条件とされる現象がCOMP導入によって精 密になった構造環境内に課した制限によって予知出来ることであり、 (7)の(b)の方向に一致して いるということである。 (変形の相補分布の研究にはCOMPのような統語的媒体物を発見し、

それによる統一という方向に向うに違いない。)

(34)で次に注目されるのは指定主語(specified subject)であって主語以外のNPではないとい うことである。移動の方向が左方であることと関連して、文法カテゴリー問に̀superior の概 念をとり入れていることの帰結である。 AはBより上位である(A is superior tO B)という構 造上の関係は,句標識の中でAを支配するすべての大範ちゅう(major category)はBをも同様

に支配しているが、その逆は成立しない、という関係であり、 tree構造の根(root)にAがBよ り近くにあるということを意味する。主語は目的語より、主文の名詞句は従文の名詞句より上位 であると規定される。この上位の概念はA‑over・Aの原理のように適正分析に尚規則があいまい にかかる場合には上位の項を優先させるという(Conditions, p. 246)一つの評価尺度(evaluation measure)として有効であるが、文主語制限(CnpS]np)やKuno (1973)の不完全構成要素制限 等もすべて̀superior'という視点に立っている。

(37) The Clause Initial (Subject) Incomplete Constituent Constraint 不完全な句や節は節頭(主語)の位置に立つことが出来ない。

(例) *What did doing in his office not satisfy John?

句構造の中で、もしXがYより上位にあるならば、 YはⅩより下位にある(subjacent)ことに なり、この時Yを含みXを含まない一つの循環範ちゅうC (C≠Y)があるならば、 X、 Yは同 じ変形サイクルの領域にあるか、両者がただ一つのサイクル境界によってのみ隔てられているか である。このsubjacencyの原理は次を説明する。

(38) a) COMP he believes [s COMP John saw [NPa picture of who]] (cf, (35)) b) Who does he believe that John saw a picture of?

この場合はC‑NPサイクルで(35)と比較すると、ただ一つだけのNPからの取り出し(extrac‑

tion)が許される環境である。しかし次例は埋め込まれたCOMPの位置でwh一前置は終了する ことになる。

(39) a) COMP he considerered [NP the question [s COMP John saw who]]

b) He considered the question who John saw.

(39)a)は̀adjacent'サイクルを構成しないからである。また文脈依存の句通造規則の場合は語い 項目のcontextual featuresを考慮せざるを得ない。 (後述)

c) *He believes the claim who John saw.

(30)を含み得る変形サイクルに関する適正分析への条件として、現在のところ、次のものが提出 されている。

(40) Subjacency Condition

αをサイクルをなす結節(cyclic node)とするC‑...X‥.]の構造がある時、変形T

(13)

48 高 橋 孝 二

の構造記述がαであり、 Xが∑のある項を満足する最も上位の範ちゅうであるなら ば、 Tが適用されるのはαがXを含む唯一の循環範ちゅうであるときのみであり、

特に取り出し規則のときはXより下位の範ちゅうが∑に含まれていなければならな い。 (変項ではない。)

Emonds (1970)の根変形は一番上のSにかかわる変形(最終循環規則)であったが、もし、意 味論的情報を導入するならば、下位のSにまで拡大することが可能になる。句構造規則そのもの にもいろいろな変種(varieties)があるが、適正分析の中に意味的情報を組み入れることがどう しても必要であり、 (40)の条件はこの方向を目ざす環境の特殊化(specification)の例としてと らえるべきである。文法の生成能力から、文法は次のように分類されるが、最も強い力を持つ (a)は、実は変形文法の落し穴につながり、 (C)をふまえた(b)の精密化がこれからの問題である と言える。 (28参照)

(41) Chomsky hierarchy (Kimball (1973), p. 16) (a)無制限書き換え体系(URS)

(b)文脈依存文法(CSG) (C)文脈自由文法(CFG)

(a)通常文法(RG) (Mirror Imageの規則もここに入ることになる。)

この精密化への一歩としてHooper& Thompson (1973)は根変形の分布を̀assertion'という 意味的概念から調べた結果、この変形がEmondsの主張と異なり、埋め込まれた文にも通用さ れうることを報告しているo 根変形(Root transformations)はnodesを句構造規則にはない 位置に移動(insert, copyを含む)させるが、派生構造が一番上のSに直接支配されている場合 に限って許されるものであった。例えば、否定辞前置(Negative Constituent Preposing)は主 語・補助句転倒(SAD を伴うが、その結果得られる派生構造は、特にNegと Auxが、

highest Sに直接に支配されていなければならない。

(42) a) I have never had to borrow money.

b) Never have I had to borrow/ money.

C)    S

25=ii函=≡器

Neg Aux

このようにrootにかかわると性格づけることによって、等位接続構造に上の変形が通用され るけれど、

(43) I've been out of work before, but never have I had to borrow money.

埋め込まれたサイクル頚城では許されないことになる.

(44) *The fact that never has he had to borrow money makes him very proud.

論述に便利なように、文法の基底部門では生成されない根変形CRTs)の例をまとめておこうo (45)根変形

①vp前置 ⑧ Neg前置 ⑧方向の副詞(Directional Adverb)前置 ④be回転 (Preposing around be) ⑤分詞前置 ⑥前置詞句置き換え(substitution)

⑦内置(Subject Replacement; Intraposition) ⑧直接引用文(Direct Quote) 前置 ⑨補文前置 ⑲文副詞転位(dislocation) ⑪話題化 ⑫左方・右方転位

⑬疑問変形(直接・付加) ⑲感嘆文、他

(14)

sA I以外の根変形は(a)変形体に同じ効果を与えること、 (b)分布に類似の制限を伴うこと、

等から「異変形」として再整理出来ることは前述したところであるが、その際、形式面(formal properties)からなされるべきであって、意味上の効果を基準としてはならない。例えば「強意̲」

という基準で(45)の⑪と分裂文とを統合することは出来ない。

(46) a) Topicallization: This book you should read.

b) Cefting: It's this book that you should read.

a)の派生句構造はNP‑NP‑VPで、句構造規則によって生み出されない英語の例であり、 b)の NP‑V‑NP‑Sは容易に生み出され、従って構造保持変形(本稿のcyclic規則)であるからで ある。しかし̀assertion'と いう確立され得る意味範ちゅうから(45)の相補分布性とらえられ、

根変形は補文が̀assertion'である場合にも通用される。 (前提節(presupposed clauses)には不 能。)

(47) (a)伝達動詞(verbs of saying)の場合(Nonfactive)

(say, report, exclaim, assert, vow/be true, be certain, be sure, be obvious…)

that‑Sは「主張」の伝達される discourseであるO

(例) Mymother claims that to read so manycomic books is a waste of time. ⑦ (ら)心的過程(mental process)を示す動詞の場合(Nonfactive)

(suppose, believe, think, expect, guess, imagine/it seems, it happelis...)

that‑Sは「主張」そのものの同価であり、これらの動詞の意味内容は後退している。)

(例) It appears that些旦̲些he read thoroughly. ⑪

(C)半信半疑(uncertainty)を示す動詞の場合(Nonfactive) (doubt, deny/be(im)

possible…)

thaトSは「主張」にも「前提」にも関与せず、 uncertaintyそのものが主張されてい る。従って、 RTsは適用されない。

(刺) *It's likely that seldom did he drive that car. ⑧

(d)前提された補文に対する感情や主観的態度を示す動詞の場合(Factive)

(resent, regret, be sorry, besurprised, bother, be odd, be strange, be interesting…)

従ってRTsは通用されない。

(例) *Sally plans for Gary to marry her, and it bothers me that marry her he will.①

(e)補文の命題のtruthを知るようになる、その知り方を示す動詞の場合(Factive/

Semifactive)

(realize, learn, find out, discover, know, see, recognize...)

(例) I discovered that this book, it has the recipesin it. ⑫

以上概観したようにRT'iは文脈依存であることになるが、埋め込み文の動詞が屈折を失って いる(uninflected) reduced clauses (不定詞、動名詞、仮定法)への通用は禁止される。 (cf.

Tensed‑S Condition)

(48) a) Infinitive: *The director wanted up the street to trot the dog. ⑨

b) Gerund: *The idea of more significant being the development of a semantic

theory intrigued Bill.ゥ

c) Subjunctive: *It's mandatory that in the halls stand the guards. ㊨

(15)

50 高 橋 孝 二

変形領域のNon‑finite性に sensitive な現象としての(48)は伝統文法以来の未成節等の再吟味 を待っている。 VTがtenseを含む要素であるとき、 [np NP Vt...]は適正分析ではなく排除 されるならば、 non‑tense とNPとの関係、 COMPの有無にしぼられて来るのではないか、と 考えられる。

(四)

CyclicGとLinearGとは結局同じ表層構造を生成することになることをKimball (1972)は 空理亘竺一軸‑passive‑passive一睡竺‑raising等の例によって示しているが、 (45)の根 変形の場合とは逆に,一つの循環規則が実は過剰な能力を備える余分な仕組であることがあるO

このことをはじめに「等位構造制約」について検討する。

蝣l!l (予t、̲

等位構造において、いかなる被接続要素(conjuncts)も、またそれに含まれるいかな る要素も取り出して移動させることは出来ない。

この制約は単一の(unitary)現象について述べているのではなく、前半の被接続要素そのものの 移動を禁止する部分と、後半のconjunctsの中にある要素の取り出しを禁止する部分とが本質的 に異なる現象であることをGrosu (1973)が指摘している。

(50) CSCの前半の制約に従う規則。

a) Super‑Equi‑NP‑Deletion John knows it would be dangerous for<# *>and Mary to wash themselves with acid.

b) VP Deletaion: I couldn't lift this rock,but I know boy who can lift this rock

*

and bend a crowbar too.

c) Sluicing: Somebody came in at 5 0'clock, but I have no idea who came in at 5 0'clock

and left at ten.

d) Genitive‑Head Deletion: I like John's mother, but I don't like Bill's

匿聖1orfather.等o

上の現象にはCoordination Reductionが先に働いて、消去へのinputを作り得ない、とも考 えられるが、 d)に関して構造記述からだけでは扱えない問題が残る。

(51) CSCの後半の制約を免れる場合。 (関係節化)

a) I went to the store and bought some whiskey.

b) This is the whisky which I went to the store and bought.

c) This is the store which I went to and bought some whiskey.

このような事実からGrosuはCSCが単一の寛象を扱うものではなく、より一般的な独立した 制約の二つの特殊な具体例にすぎないと主張し、規則の分割を示唆している。規則の分割は新し い統合へと向うことになるが(GappingとConjunction Reductionは同一規則など) COMP のような概念の導入(前述)の他に辞書項目挿入のレベルによる基準も可能と思われる。変形サ イクルの概念を捨て去っても同じ結果が得られるとされる例に用いられる規則の中、はじめにふ れた受動変形と引き上げ変形について考えてみる。

(16)

今次のellipsisの行なわれた文が許容されないことを説明するためには、語い項目挿入(lexical insertion)のレベルで選択制限(selectional restriction)が破られていることを言わなければな

らない。

(52) a) *Jack admires chastity, and sincerity the bedpost. (Hankamerの例)

b) *Sincerity admires the bedpost.

このレベルはpassiveやraisingが通用される前に存在するとしなければならない。選択制限を 受ける項が変形通用後は無限に離れてしまうからである。 (基底構造がdistort されてしまう。)

(53) *The bedpost is believed to be admired by sincerity.

(53)が許容されない理由をどのような立場から説明するにしても(52)のb)の始発の段階が問題と なる。一組になった<^passive‑raisingj>は、 raisingが新しいclause matesを作るために、最も 深く埋め込まれたSの目的語の位置にあるNP (bedpost)を表層の主文の主語の位置に移動さ せているが、この場合(53)に見られるように時制形態素はないからTensedS Conditionはかか

らない。逮択制限違反の度合は(52)のb)より(53)の方が「重い」のではないかと考えられる。二 つの変形が同程度に違反しているならば、言語運用上、一方の変形は認めない方が良い。この場 合、他の動機とも合わせてRaisingが問題であると思われるがここでは詳述しない。 (受動化

は話題化に等しいとすると、不必要なトピックを構成することになるが、これはこれで興味ある 文体上の問題を提起すると思う。)次に変形規制の外在的順序(extrinsic order)について吟味

する。規則通用の許容されうる連続という点から、関係詞節縮少変形(RCR)と名詞句からの 外置(ENP)との順序を見ると、 RCR‑ENP、 ENP‑RCRいずれの順序も次の(54)香 説明出来る。

(54) *A jug got broken from India. (外置を「内置」とする根変形については(45)の⑦

^n..:D

Koutsoudas (1973)は複合名詞句転移が規則通用に課せられた制約ではなく、派生への制約で あることを示し、関係節や疑問文にかかわる多くの変形規則がこの制約によって説明され得ると

している。

(55) The Complex NP Constraint (revised and extended)

もし派生の‑展開列(a linej に複雑名詞句(中心語とSlから成る) NPiがあり、

この派生の他の展開列にSlに含まれている要素がある時、このAをNPl、 Slいず れにも支配されない仕方で移動させる派生句構造は許容されない。しかしAが最終的 に表面構造に現われない場合はこの限りでない。

(例) *The dog,the girl came in whowas hitting. (根変形への一つの反例となるO) (55)のような一般言語理論が見つかれば、個々の変形規則問の順序づけの問題は消滅することに なり、これまでの本稿における論述と一致する。このように変形適用のための適切なconventions を決定するためには、構造変化の行なわれる領域(domain)の適正分析が最も重要であり、補い 合う個々の変形についての再組織化が進むにつれて、 ̀primary motivation'としての変形規則が 減少し、場としての変形サイクルが重要になって来ると筆者には予想される。サイクル・ノード にS、 NP以外のものを発見する仕事も残されている (Art‑SモデルとVPサイクルといった 問題を考える中で、これまで論じなかった付加(adjunction)現象について改めて考える予定で

5s*35!

(17)

52 高 橋 孝 二

ここで(28)の二つの循環規則の性質をまとめておこう。

基底における記号連鎖の形式を保持する変形(ある変形のinputとoutputとが本質的に同じ構 造を持つ)が循環規則(all‑cyclic)であり、基底の句構造規則では展開出来ないoutputを生み 出す変形が最終循環規則(lasトcyclic)であった。後者は根(root)に支配されていることが依然 として形式的特徴であるが、ある種の意味素性(semanticfeaurte)を持つ場合に下位のS内に 通用されることも可能であった。前者があいまいにかかる場合には、構造上の優位関係で規定す るという仕組についても検討した。変項(variables)はどちらの規則のものかも一部うかがい知 ることが出来た。両者の特質はKimballに従って次の(56)のように修正を加えながらまとめる ことが可能となったわけである。

(56)(a)All‑cyclic規則

1.適用の全過程を通して基底の句構造と同じ派生句構造を保持する。例えばKajita (1974)はRoss(1967)の出力条件の一部を次のように定式化しているo

vp‑V(Pronoun)j(‑

(鑑0(Particle)j(pp)A tide)(NPi)孟蝣J>

(ここでNP2は複雑名詞句を、NPlは代名詞 以外の非複雑名詞句を示す。)

2.変項(variables)にのみ依存する適用は含まれない。

3.例外(exceptions)もあり得る。もし̀predicateraising'のようなprelexical変 形を認める立場に立てば((28)参照)「例外」は消えることになる。

4.構造上のあいまい(ambiguities)をもたらさない。

5.一つのSサイクルの中でいくつかの規則適用が許される。

6.句標識の下から上へ通用される。

7.ComplexNPconstraintのような制約をこのレベルに取り入れることが可能に なれば、通用順序(例えばBurt(1971)p.253のような)はかまわないことに なる((55)参照)

(b)Last‑cyclic規則

1.基底の句構造規則によって生み出されない表層構造に至る。

2.変項に本質的にかかわる通用である。

3.例外は存在しない。

4.構造上のあいまいはA‑over‑A principleのような原理が確立されれば避けられ る。もし(a)の4.に入れるべきであるとすると、変形規則か解釈規則かに分かれ る。

5.一つのSサイクルの中で一つの変形のみが適用される。

6. topmostSにのみ適用されるが、 IowerSに可能な場合もある0 7.規則の通用順序は、従って問題とならない。

ここで語い挿入が許されるレベルは適正分析と認められる[十Lexical Insertion]という規則 素性の与えられた環境であるが、意味的要素のみが主要な役割を果しているのではく、統語上の 原理に基づく語い表記(lexical representation)の実現され方がやはり問題になることは、次の 例からもうかがうことが出来る。

(18)

(57) Archie asked Edith whether she could

??would be able to

*was able to

**had the ability to

please leave after lunch.

Ross (1973)は̀Penthouse'の原理を提出し、従属節だけにのみ適用される統語上の過程(棉 造変化)は存在しないとし、 Reference Questions Fronting rules Embedded force rules ((57)の例) 、 Pseudo‑imperatives Idiomatic sentence types、 等の現象についてその根拠を示 そうとしている。この論述の中から変形サイクルに関係を持つ二つの問題を最後に換討しておき たい。変形の場としてのSサイクルを必ず巻きぞえにする(bisentential)規則の中、 Equiは埋 め込み文の主語を消去し、 Raisingは埋め込み文の主語のみを引き上げるために両者は方向逆の 変形のように見えるが、二つのSサイクル構造記述が、補文の主語がすぐ上位の母体文の何らか の要素とcoreferentialである場合に限るという制限、つまり、補文の主語にサイクノレ性を持つ NPという指定を与えることによって条件の一致が見られるために̀Penthouse'の原理に抵触し ないことになる。もう一つは、評価の形容詞(wicked kind, clever, dumb, nice, smart,‑‑・, bitchのような名詞も含む)を持つ構文が次の三つの表層構造として派生されるとき、

(58) a) Tom was wicked to call me.

b) ?To call me was wicked of Tom. (b)はいずれC)となる。) c) It was wicked of Tom to call me.

これらが埋め込まれた現象を見ると夫々許容度が異なって来ることが分かる。

(59) a) ?They doubt that you were smart to fold early.

b) They doubt that it was smart of you to fold early.

前述のHooper‑Thompsonの例で((47)参照) ̀doubt'は根変形を補文中で許さないものであっ たo この方向で考えれば(58)のa)からPsychMovementによってb) (c))が導かれるとすると、

心理主語移動変形はこの種の補文中で義務的に適用されなければならなくなり、本稿での最終循 環規則ではないことになる。見方を変えれば、この埋め込み文の中でit‑replacementが働かな いとも言えるが、サイク移動を語い前の変形に入れる可能性はまだ残っていることが分かる。

(collection 変形)本稿のこれまでの立場から Rossの提出したこの原理は次のようにまとめる ことが出来る (p.411)

(60) The Penthouse Principle

従属節サイクル(下位のcyclic nodes)に通用されるすべての統語規則(cyclic rules) は主節サイクル(根のcyclic node)においても適用される。

(60)は文法的活性化が埋め込みの疎さの程度に応じながら最上位の文結節を頂点とする傾向、下 位のサイクル内の統語現象を上位のサイクルにも許す̀desubordinatorize'の傾向にあることを 示す仮説であり、これまで考察して来た二分法を更に統一するものであるO しかし、 「変形サイ

クルと適正分析」という題巨封こよるこれまでの検討・再吟味は、根(treetops)を中心とする句 構造標識内のPrimacyの問題、文脈自由の結節に付与されている(結節を構成する) COMP

のような変形誘導体の発見等、今後の言語理論発展の方向を示すものであると言うことが出来る と恩う。部分的にせよこのような研究は次の実りある通時的研究の確実な土台を与えてくれるも のである。

以上

(19)

54 高 橋 孝 二

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参照

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