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(1)

ソーシャルメディアの利用に及ぼす 自己と周囲の文化的価値観の影響

針 原 素 子

1. 研究の背景と目的

近年、様々なソーシャルメディアが導入され、多くの人々がこれまでにな い人づきあいを始めている。これまで、日本人は、アメリカ人などと比べ、

他者一般への一般的信頼が低く、固定的なコミットメント関係に留まる傾向 があることが指摘されている(e.g., 山岸,1998)。そこに、人々が気軽に多 くの人と交流できるソーシャルメディアが登場した現在、日本人の人づきあ いがより積極的になるのか、それとも、やはり日本人の人づきあいの規範に 沿った形で、それらのサービスが利用されるのかは興味深いところである。

本研究では、2011年の時点で大学生の間でもっともよく使われていた

mixiTwitterを対象1に、どのような人がどちらのサービスをどのように

使い、満足しているのかを検討することとした。巷でも、日本で生まれた mixiは、仲間づきあいを大事にする日本人に合ったサービスであり、アメ リカで生まれたTwitterは、自由な人づきあいを好むアメリカ人的なサービ スであるといった話がされることがある。「ソーシャルメディア白書2012

(トライバルメディアハウス・クロスマーケティング,2012)によると、

mixiは、コミュニケーションの前提として相互承認が必要であるため、

「会ったことがあり、親密な人」とのコミュニケーションが59.9%と多く、

コミュニケーション相手であるマイミク数は平均35人と少なかった。一

方、Twitterは、相互承認なしに一方的にフォローすることが可能なため、

「会ったことがなく親密ではない人」とのコミュニケーションが56.1%と多

(2)

く、コミュニケーション相手の数もフォロー数は平均64人、フォロワー数 は平均58人とmixiに比べると多い傾向にあった。このような点からも、

mixiが既存の固定的な人間関係を維持する目的に使われる 日本人的 サービスであり、Twitterがより開放的な人間関係を構築する アメリカ人 なサービスであるという指摘も理にかなったものと言えるだろう。そこ で、本研究では、同じ日本人の中でも、より 日本人的 な人がmixiを好 み、 アメリカ人的 な人がTwitterを好むというようなことが実際にあるの かどうかを検討することとした。そのため、文化的差異を語る時にもっとも よく用いられる、個人主義・集団主義という文化的価値観の個人差を測定し、

それらがmixi/Twitterの利用にどのような影響を及ぼしているかを検討する。

また、人々との交流を主な目的とするソーシャルメディアの特徴として、

自分がどのような価値観を持っているかのみならず、周囲の他者がどのよう な価値観を持っていると思うかも、同時に影響する可能性がある。近年、比 較文化研究の分野においても、文化間の差異を生み出しているのは、個人個 人が持っている文化的な価値観ではなく、周囲の他者がどのような文化的価 値観を持っているかという合意性の認知であるという指摘がなされている

e.g., Zou, Tam, Morris, Lee, Lau, & Chiu, 2009)。それらのことを考えても、

人々が自分の価値観だけでなく、周囲の人々がどのような人づきあいを望ん でいるかという認知が人々のソーシャルメディア利用に影響を及ぼす可能性 があるだろう。

そこで、本研究では、自分自身の文化的価値観だけでなく、友人、一般的 な日本人という2つの異なる対象について、どのような文化的価値観を持っ ていると思うかを推測して回答してもらい、それらがどのようにmixi/Twit- terの利用に影響しているかを検討することとする。

大まかに、mixi利用は集団主義的な価値観によって促進されており、

Twitterは個人主義的な価値観によって促進されるという予測を持ちつつ、

利用頻度、様々な利用形態、利用満足度に、自他の文化的価値観がどのよう に影響するかを探索的に検討することとする。

(3)

2. 方法

20117月に、東京女子大学の学生、341名(1年生13名、2年生147 名、3年生151名、4年生17名、学年不明13名、平均年齢19.96歳)を対 象に、講義中に質問紙を一斉配布し、回答してもらった。

質問紙の構成は、mixi/Twitterのそれぞれについて登録の有無を問い、登 録していると回答した人に対して、利用頻度、利用形態、満足度などを聞 き、最後に全員に自分自身の文化的価値観、友人の文化的価値観の認知、一 般的な日本人の文化的価値観の認知を問う形になっていた。具体的な質問項 目と尺度構成は以下の通りだった。

2.1mixi/Twitterの利用頻度

mixiの利用頻度については、平均的なログイン間隔(「1. ログインしな い日もある」~「6.1時間以内」の6点尺度)、日記の更新頻度(「1. まった く更新しない」~「6.11回以上」の6点尺度)、ボイスの更新頻度(「1.

まったく更新しない」~「6.1日に5回以上」の6点尺度)の3項目で回答 してもらい、その平均値をmixi利用頻度として用いた(α.59)。

Twitterの利用頻度については、平均的なツイート回数(「1. ほとんどつ

ぶやかない」~「6.120回以上」の6点尺度)と閲覧頻度(「1. 見ない日 もある」~「6.30分に1回程度」の6点尺度)の2項目で回答してもらい、

その平均値をTwitter利用頻度として用いた(r.70, p.001)。

2.2mixi/Twitterの満足度

mixi/Twitterそれぞれについて「mixi/Twitterのない生活は考えられな

い」「何か別のことをしていてもmixi/Twitterが気になってログインしたく なる」「たまにmixi/Twitterをやめたくなる時がある(反転)」「これからも

mixi/Twitterを続けていきたい」「なんだかんだmixi/Twitterを利用してい

てよかったと思う」の5項目で回答してもらった(「1. 全くあてはまらな い」~「7. とてもあてはまる」の7点尺度)。mixi満足度については、それら

(4)

1. mixiの利用形態、他者意識に関する尺度 M SD

記事更新 2.21 0.83 r.59***

 日記やボイスを更新する

 フォトアルバムやボイスに写真を載せる

コミュニティ利用 1.55 0.67 r.52***

  自分の所属しているグループのコミュニティに書き 込みをする

  不特定の人が参加しているコミュニティ(趣味・娯 楽等)に書き込みをする

マイミク対話 3.15 0.86 α.89   マイミクが更新した日記やフォトアルバムをチェッ

クする

  マイミクの日記やボイス等にコメントやイイネ!を 付ける

 コメントが付いたら返す

ネットワーク拡大 2.03 0.65 α.71  マイミクの紹介文を自分から書く

  知り合いをmixi内で見つけたら、自分からマイミ ク申請する

  マイミクのマイミクに気になる人がいたら、自分か らマイミク申請する

  マイミクのマイミクからマイミク申請が来たら承認 する

他者反応意識 3.45 1.39 α.84  コメントやイイネ!が付かないと落ち込む

  自分が相手の日記やボイスにコメントをしたあと、

相手からの返信が気になり度々相手のページに飛ん でしまう

  日記やボイスに何かを更新する時は、マイミクの反 応を気にして書き方や内容に気をつかう

  書きたいことを書けるように、日記ごとに公開する 範囲を変える

  相手に興味をもっていることを知られるのが嫌で足 あとを消す

  相手にコメントしていないことを知られるのが嫌で 足あとを消す

*** p.001

(5)

5項目の平均値を用い(α.74)、Twitter満足度については相関の低かった 1項目(「たまにTwitterをやめたくなる時がある(反転)」)を除外し、4 目の平均値を用いた(α.86)。

2. Twitterの利用形態、他者意識に関する尺度

M SD

記事更新 2.63 0.86 α.78

 日々の行動や考えをツイートする

 面白いツイートを見つけるとリツイートする  Twitterに写真を載せる

情報収集 2.91 0.96

 ニュースや興味のある話題の情報収集をする

フォロー対話 3.08 0.86 α.83   タイムライン上のツイートをさかのぼってチェック

する

  フォローしている人のツイートに対してリプライを する

 リプライが来れば返す

ネットワーク拡大 2.29 0.76 α.62   知り合いをtwitter内で見つけたら自分からフォロー

する

  知らない人でもその人のツイートが面白そうであれ ば、フォローする

 フォローされれば誰であってもフォローを返す

他者反応意識 3.38 1.43 α.85  リプライが来ないと落ち込む

  リプライしたあと、相手からの返信が来るか気にな

 ツイートする時はフォロワーの反応を気にして  書き方や内容に気をつかう

  タイムライン上の雰囲気と異なるようなツイートを、

投稿することにためらいを感じる

気まま利用 4.00 1.44 α.63   思ったことがつぶやきにくくなるので、知り合いを

見つけてもフォローしない

  Twittermixiと比べて気をつかう必要がないので  知らない人にフォローされても抵抗はない好きだ

(6)

2.3mixi/Twitterの利用形態、他者の意識

mixi/Twitterそれぞれ特有の機能があるため、別項目で様々な利用方法を

挙げ、それらを「1. 全くしない」~「4. よくする」の4点尺度で回答しても らった。そこから、mixiに関しては、記事更新、コミュニティ利用、マイ

3. 個人主義・集団主義項目

個人主義人と話すときは率直に思った通りに話すのが好きだ α.76 自分がどうなるかは、自分の行動次第である

自分の考えや行動が他人と違っていても気にならない 自分のやりたいようにすることが多い

誤解を恐れず、嫌な時にはNOと言う 自分のプライバシーは大事だ 誰と一緒にいても同じようにふるまう 周りの人とは独立した人生を送るべきだ

いろいろな面で、自分が個性的で他の人と異なっているのを楽しむほうだ

M SD

自分 4.07 0.59 友人 3.99 0.62 日本人 3.46 0.57

集団主義人が自分をどう思っているかを気にする α.72 仲間の和を保つことは、自分にとって大事なことだ

たとえ友人と意見が合わなくても、反対意見は言わない 友人が幸せであることは、自分にとって大事なことだ グループごとに自分のキャラを変えている

自分にとって、楽しみとは人と時間を共に過ごすことだ 大学では家とは異なる顔を見せる

人と意見が対立したとき、相手の意見を受け入れることが多い 他の人との関係のほうが、自分自身の成功よりも大事である 友人とお菓子を分け合うのが好きだ

相手やその場の状況によって、自分の態度や行動を変えることがある

M SD

自分 4.01 0.55 友人 3.86 0.53 日本人 4.37 0.58

(7)

ミク対話、ネットワーク拡大の4尺度、Twitterに関しては、記事更新、情 報収集、フォロー対話、ネットワーク拡大の4尺度を作成した(具体的な項 目については表12を参照)。また、mixiTwitter上で他者の反応を意識 するかどうかについての項目も設け、mixiに関しては他者反応意識、Twit- terに関しては他者反応意識、気まま利用の2尺度を作成した(具体的な項 目については、表12参照。「1. 全くあてはまらない」~「7. とてもあては まる」の7点尺度)。

2.4 自他の文化的価値観

Singelis, Triandis, Bhawuk & Gelfand 1995)の水平的—垂直的個人主 義・集団主義尺度から16項目、高田(2000)の相互独立的—相互協調的自 己観尺度から4項目を用いた。それに加え、高田(2000)の「他者への親 和・順応」因子に関わる、自己の状況依存性について独自で2項目を作成 した(「グループごとに自分のキャラを変えている」「大学では家とは異なる 顔を見せる」)。計22項目について、まず自分自身についてどのくらいあて はまると思うかを「1. 全くあてはまらない」~「6. とてもあてはまる」の6 点尺度で質問し、次に、周りの友人達を思い浮かべるように教示し、それぞ れの項目がどのくらい友人にあてはまると思うかを「1. 全くあてはまらな いと思う」~「6. とてもあてはまると思う」の6点尺度で質問した。最後に、

同じ項目について一般の日本人にあてはまると思うかどうかを「1. 全くあ てはまらないと思う」~「6. とてもあてはまると思う」の6点尺度で質問し た。

因子分析を行ったところ、Singelis et al. 1995)の水平的―垂直的の分類 はきれいに分かれなかったため、Singelis et al. 1995)の個人主義項目と高 田(2000)の相互独立的自己観項目を合わせて個人主義尺度、Singelis et al.

1995)の集団主義項目と高田2000)の相互協調的自己観項目、さらに独 自に作成した状況依存性2項目を合わせて集団主義尺度として用いること とした。その際、他の項目と相関の低い項目は除き、個人主義尺度は9

(8)

目の平均値、集団主義尺度は11項目の平均値を用いた(最終的に分析に用 いた項目は表3参照)。

3. 結果

3.1mixi/Twitterの利用状況

まず、mixi登録の有無とTwitter登録の有無の状況を見てみると、表4 通り、Twitter登録者は全体の60.4%にあたる206名、mixi登録者は全体の 73.0%にあたる249名となっていた。mixiあるいはTwitterの少なくともど ちらか一方に登録している人は、全体の83.9%にあたる286名にのぼり、

また、mixi/Twitter双方に登録している人も全体の約半数(49.6%)にあた

169名であり、20117月時点において、大学生のソーシャルメディア 利用率の高さが窺える。ちなみに、20113月に総務省が行なった全国調 2(総務省,2011)では、10代~30代の携帯電話、PHS所有者の内、約 49.3%がSNSmixi, Facebook等)を利用し、約31.8%がTwitterを利用し ていた3。それらと比較しても、東京地域における女子大学生のソーシャル メディア利用率が特に高いことが分かる。

4. mixi及びTwitterの登録有無についてのクロス表

Twitter登録有 Twitter登録無

mixi登録有 169 80 249

49.6% 23.5% 73.0%

mixi登録無 37 55 92

10.9% 16.1% 27.0%

206 135 341

60.4% 39.6% 100.0%

(9)

3.2 自他の文化的価値観の単純集計

個人主義、集団主義得点の平均値を自己と友人、自己と日本人の間で比べた ところ(表3参照)、自己と日本人の比較では、従来の知見通り、自分の方が

M4.07)日本人よりも(M3.46)個人主義的であり(t 303)=12.88, p

.001)、自分の方が(M4.01)日本人よりも(M4.37)集団主義的でな い(t 303)=-10.51, p.001)と回答していた。ところが、友人との比較 では、自分の方が(M4.07)友人よりも(M3.99)個人主義的である(t

303)=2.09, p.05)という傾向は同じであったが、自分の方が(M4.01 友人よりも(M3.86)集団主義的である(t 303)=4.68, p.001)と答え、

日本人の比較とは逆の結果となった。

3.3 mixi/Twitterの利用頻度、利用形態に及ぼす自他の文化的価値観の 影響

次に、mixi/Twitterの利用頻度、並びに様々な利用形態などが、自他の文

化的価値観にどのような影響を受けているかを検討するため、自己の個人主 義、集団主義と周囲の個人主義、集団主義を同時に説明変数とした重回帰分 析を行なった。その際、自他の文化的価値観の組み合わせの効果も見るた め、個人主義、集団主義それぞれの交互作用項も投入した。また、友人の文 化的価値観と日本人の文化的価値観は別々に投入した。表56の左列は自 己と友人の文化的価値観を説明変数とした結果、右列は自己と日本人の文化 的価値観を説明変数とした結果である。

mixi利用に対する結果から見ると、表5から分かる通り、他者反応意識 に対して自己の価値観が効果を持っており、自分自身が個人主義的な人ほど 他者の反応を意識せず(β=-.26, p.001; β=⊖.27, p.001)、自分自身が集 団主義的な人ほど他者の反応を意識する(β.24, p.01; β.21, p.01)こ とが分かった。また、ネットワーク拡大傾向に日本人の個人主義的価値観認 知が正の効果を持っており(β.15, p.05)、日本人一般が個人主義的だと 思っている人ほど、mixiを使ってネットワークを築く傾向にあることが分

(10)

5. mixi利用頻度、利用形態する自他文化的価値観効果 利用頻度記事更新コミュニティ利用マイミク対話ネットワーク拡大他者反応意識 自己価値観  自己個人主義的価値観.09.04.05.01.06.05.07.04.01.02.26***.27***  自己集団主義的価値観.13.08.07.09.03.00.05.02.07.03.24**.21** 周囲価値観認知  友人個人主義的価値観.05.08.02.07.05.09  友人集団主義的価値観.12.07.02.11.08.06  日本人個人主義的価値観.01.03.10.04.15*.10  日本人集団主義的価値観.02.02.12.06.05.11 自己×周囲交互作用項  自己個人主義×友人個人主義.13.05.08.06.07.08  自己集団主義×友人集団主義.13.05.04.14.01.10  自己個人主義×日本人個人主義.01.00.06.00.06.14  自己集団主義×日本人集団主義.05.11.06.07.03.02 R2.04.01.02.02.02.03.02.01.02.02.13***.14*** p.10, *p.05, **p.01, ***p.001

(11)

6. Twitter利用頻度、利用形態する自他文化的価値観効果 利用頻度記事更新情報収集フォロー対話ネットワーク拡大他者反応意識まま利用 自己価値観  自己個人主義的価値観.06.11.21*.24**.18*.19*.21*.18*.35***.37***.22**.23**.05 .05  自己集団主義的価値観.12.16.05.11.05.07.19*.15.15.14 .29**.29***.18*.20* 周囲価値観認知  友人個人主義的価値観.01.02.05.03.06.07.12  友人集団主義的価値観.01.05.10.10.08.02.05  日本人個人主義的価値観.14.03.02.07.11.11.08  日本人集団主義的価値観.05.06.09.04.02.05.13 自己×周囲交互作用項  自己個人主義×友人個人主義.19*.06.03.01.18*.00.06  自己集団主義×友人集団主義.04.03.05.00.06.02.01  自己個人主義×日本人個人主義.21*.09.16 .09.02.08.18*  自己集団主義×日本人集団主義.10.06.04.06.11.09.18* R2.05.06.07.07.07*.09*.08*.08*.20***.17***.12***.15***.07*.11** p.10, *p.05, **p.01, ***p.001

(12)

かった。有意な効果を持つ交互作用項はなかった。

次に、Twitter利用について見ると、表6から分かるとおり、自己の個人

主義的価値観が多くの利用形態に正の効果を持っており、個人主義的な人ほ ど、頻繁に記事を更新し(β.21, p.05; β.24, p.01)、情報を収集

β.18, p.05; β.19, p.05)、フォローと対話し(β.21, p.05; β.18, p.05)、ネットワークを拡大し(β.35, p.001; β.37, p.001)、他者の 反応を意識しない(β=-.22, p.01; β=-.23, p.01)ことが分かった。ま た、集団主義的な人ほどフォローと対話し(β.19, p.05)、他者の反応を 意識し(β.29, p.01; β.29, p.001)、気ままな利用をする(β.18, p

.05; β.20, p.05)ことが分かった。集団主義的な人が気ままな利用をす

るのは予測と異なるが、集団主義的だからこそ、気ままに発言できる場を

Twitterに求めているのかもしれない。

Twitter利用に関しては、さらに予測していたいくつかの交互作用が有意

であった。まず、Twitterの利用頻度に対して、自己個人主義×友人個人主 義、自己個人主義×日本人個人主義のそれぞれが正の効果を持っていた

β.19, p.05; β.21, p.05)。そこで、この交互作用のパターンを明らか にするため、単純傾斜性の検定を行った(図1参照)。ここから、個人主義 得点の高い人は、周囲も個人主義的だと思うほどTwitterを頻繁に使うよう になり(ただし、傾きは有意ではない)、個人主義得点の低い人は、周囲が 個人主義的だと思うほどTwitterを利用しなくなるというパターンであるこ とが分かった(日本人の個人主義認知のみ有意(b=-.66, p01)。

次に、ネットワーク拡大傾向に対する自己個人主義×友人個人主義の正の

効果(β.18, p.05)について検討したところ、図2のようなパターンを

示し、個人主義的な人は友人が個人主義的だと思うほど、ネットワークを拡 大する傾向にある(ただし傾きは有意でない)が、個人主義的でない人は友 人が個人主義的であると思うほどネットワークの拡大を行なわない傾向にあ る(b=-.24, p.10)ということが分かった。

(13)

p.10

2 Twitterによるネットワーク拡大に対する自己個人主義×友人個人主義の効果

p.10, *p.05

3 Twitterまま利用に対する自己個人主義×日本人個人主義(左)、自己集団

主義×日本人集団主義(右)の効果

** p.01

1 Twitter利用頻度に対する自己個人主義×友人個人主義(左)、自己個人主義

×日本人個人主義(右)の効果

(14)

さらに、気まま利用に対する、自己個人主義×日本人個人主義の正の効果

β.18, p.05)、自己集団主義×日本人集団主義の負の効果(β=-.18, p.05)を検討したころ、図3のようなパターンとなっていた。ここから、

個人主義的価値観については、個人主義的な人は日本人が個人主義的である と思うほど気ままな利用をし(ただし傾きは有意ではない)、個人主義的で ない人は周囲が個人主義的であると思うほど気ままな利用をしない傾向にあ

る(b=-.47, p.10)というパターンであるのに対し、集団主義的価値観

については、集団主義的でない人は日本人が集団主義的であると思うほど気 ままな利用をするb.61, p.05)というパターンであることが分かった。

3.4mixi/Twitterの利用満足度に及ぼす自他の文化的価値観の影響

次に、mixi/Twitterそれぞれの利用満足度に及ぼす自他の文化的価値観の

影響を検討した。満足度には、どのような利用をしているかということが密 接に関わると考えられるため、利用頻度や利用形態も同時に投入する重回帰 分析を行なった。表78のモデル1は利用頻度や利用形態のみを説明変数 とした結果、モデル2はそれと同時に自己と友人の文化的価値観を投入した 結果、モデル3は自己と日本人の文化的価値観を投入した結果である。

mixiに対する満足度は、表7から分かるとおり、利用頻度が高いほど

β.29, 31, 32, p.001)、マイミクと対話をよくするほど(β.29, 33, 35, p

.001)、高いことが分かった。また、本人が集団主義的価値観を持ってい るほど(β.14, p.05)、日本人が個人主義的であると思う人ほど(β.16, p.01)、満足度が高いことも分かった。予測していた交互作用は、自己集 団主義×友人集団主義(β.18, p.01)、自己集団主義×日本人集団主義

β.18, p.01)が正の効果を持つことが分かった。

そこで、単純傾斜性の検定を行ったところ、図4のようなパターンと なった。ここから、自分が集団主義的である人に限って、周囲が集団主義的 であると思うほどmixiに対する満足度が高い傾向にある(友人の集団主義:

b.41, p.05、日本人の集団主義:b.22, n.s.ことが分かる。

(15)

7 mixi満足度に対する利用形態、自他の文化的価値観の効果 モデル1

β モデル2

β モデル3 β mixi利用形態

 利用頻度 .29*** .31*** .32***

 記事更新 .00 .02 .02

 コミュニティ利用  .04 .03 .04

 マイミク対話 .29*** .33*** .35***

 ネットワーク拡大 .02 .03 .03

 他者反応意識 .17* .10 .06

文化的価値観と交互作用項

 自己の個人主義的価値観 .06 .09  自己の集団主義的価値観 .14* .14*

 友人の個人主義的価値観認知 .04

 友人の集団主義的価値観認知 .06

 日本人の個人主義的価値観認知 .16**

 日本人の集団主義的価値観認知 .01

 自己個人主義×友人個人主義 .11  自己集団主義×友人集団主義 .18**  自己個人主義×日本人個人主義 .11  自己集団主義×日本人集団主義 .18**

R2 .37*** .44*** .44***

R2(モデル1との比較) .06** .07***

p.10, * p.05, ** p.01, *** p.001

*p.05 4 mixi満足度に対する自己集団主義×友人集団主義(左)、自己集団主義×

日本人集団主義(右)の効果

(16)

次に、Twitter満足度についても同様に重回帰分析で検討した結果、表8 のような結果となり、利用頻度が高いほど(β.35, 35, 40, p.001)、記事 の更新が頻繁であるほど(モデル2, 3においてβ.14, 14, p.05)、他者の 反応を意識するほど(モデル1においてβ.16, p.01; モデル2において β.12, p.05)、気ままに利用するほど(β.22,18,19, p.001)、満足度が 高いことが分かった。また、本人が集団主義的であるほど(β.12, 11, p

.05)、友人が個人主義的であると思う人ほど(β.18, p.001)、日本人が 個人主義的であると思う人ほど(β.11, p.05)、日本人が集団主義的であ ると思う人ほど(β.13, p.05)、満足度が高いことが分かった。

予測していた交互作用については有意な効果は見られなかった。

8 Twitter満足度に対する利用形態、自他の文化的価値観の効果

モデル1

β モデル2

β モデル3 β Twitter利用形態

 利用頻度 .35*** .35*** .40***

 記事更新 .12 .14* .14*  情報収集 .11 .10 .10

 フォロー対話 .06 .06 .06

 ネットワーク拡大 .08 .05 .03

 他者反応意識 .16** .12* .10  気まま利用 .22*** .18*** .19***

文化的価値観と交互作用項

 自己の個人主義的価値観 .05 .03  自己の集団主義的価値観 .12* .11*  友人の個人主義的価値観認知 .18***

 友人の集団主義的価値観認知 .04

 日本人の個人主義的価値観認知 .11*  日本人の集団主義的価値観認知 .13*

 自己個人主義×友人個人主義 .03

 自己集団主義×友人集団主義 .03

 自己個人主義×日本人個人主義 .03  自己集団主義×日本人集団主義 .02

R2 .65*** .70*** .70***

R2(モデル1との比較) .05*** .05***

p.10, * p.05, ** p.01, *** p.001

(17)

4. 考察

20117月現在、多くの大学生に使われていたmixi/Twitterを対象に、

その利用形態や利用満足度に、自分自身の文化的価値観と共に、周囲の人々 がどのような文化的価値観を持っていると思うかが影響するかどうかを検討 した。その結果、必ずしも一貫した結果ではなかったが、大まかにいって、

mixiに関しては、本人が集団主義的であるほど満足度が高く、その効果は、

周囲の人々も集団主義的であると認知している時に大きいという結果が見ら れた。反対に、Twitterに関しては、本人が個人主義的であるほど利用が促 進され、さらにその効果が、周囲の人々も個人主義的であると認知している 時に大きいという結果が見られた。この結果は、閉じたコミュニティとし て、招待されなければ利用を始めることができず、つながるためには双方の 了解が必要なmixiと、開かれたコミュニティとして、(アカウントに鍵がか けられていなければ)一方的にフォローすることのできるTwitterの特徴を つぶさに表していると考えられる。次々と新しいサービスが導入され、一年 経てば、各サービスのシェアが大きく変わる昨今であるが、今回の結果は、

そのサービスの形態によって、利用する層、満足する層が大きく変わってく ることを示唆している。

また、今回の結果は、人々がソーシャルメディアを利用する際、自分自身 の価値観に合致するかということだけではなく、周囲の人々の価値観も無意 識の内に推測し、そのメディアでその人々と楽しく交流し、何かを得ること ができるかという点も考慮していることを示したと考えられる。mixiで既 存の人間関係を維持、強化することに満足を感じる集団主義的な人は、周囲 の人々もそれを望んでいると思える時に、より満足感を感じ、Twitter ネットワークを拡大し、頻繁に使いたいと思う個人主義的な人は、周囲の他 者もそのような人間関係を望んでいると思える時に、そのような使い方が可 能になると考えられる。

どのようなソーシャルメディアが人々に受け入れられるか、その程度には 文化的な差異があるのか、といったことが議論に登ることがある。今回の知

(18)

見が示唆しているのは、あるソーシャルメディアが人々に受け入れられるに は、人々が実際に持っている文化的価値観に合致しているだけではなく、

人々が「他の人々が持っているだろうと認知する文化的価値観」にも合致し ている必要がある、ということである。たとえ、自由に新規ネットワークを 開拓したいと思う人がいて、それがあるソーシャルメディアで可能であった としても、その人が「でも他の人はそのような人間関係を望んでいないだろ う」と認知してしまえば、実際の利用に結びつかない可能性がある。近年の 研究は、日本人は、自分自身は個人主義的だが、世間の人は集団主義的であ ると考えていることを示している(平井,2000; 橋本,2011)。そのような 知見に基づけば、ソーシャルメディアで自由に人間関係を構築したいという 人が実際にはたくさんいるのだが、そのようなステレオタイプ的な文化的価 値観が存在するために、自由な人間関係構築が阻害されている、という可能 性もあるだろう。

本研究では、自己と周囲の文化的価値観という個人差のみを説明変数とし て用いた。しかし、ソーシャルメディアを積極的に利用する人としない人の 違いには、他にも、他者一般に対する一般的信頼や、人付き合いに関する規 範など、様々な要因が影響していると考えられる。また、実際にソーシャル メディアを利用する内に、他者がどのような文化的価値観を持っているかを 知るというプロセスもあるだろう。また、本研究は女子大学生のみを対象と して行ったものであるため、この結果の一般化可能性にも疑問は残る。今 後、日本人がソーシャルメディアを利用して、より積極的なネットワーク拡 大を行なうようになるのか、それとも、やはり日本人らしい利用の仕方をす ることになるのか、興味深い検討課題である。

謝 辞

本研究は、2011年度東京女子大学に提出された執行花子氏、吉川茉里氏 による卒業論文(執行・吉川,2011)で用いたデータを再分析したもので ある。学生たちが主に使うソーシャルメディアが刻々と変化するのを目の当

(19)

たりにし、歴史的資料としての意義も考え、投稿に至った。mixiTwitter を実際に使用する学生としての両氏の意見は、本研究の着想に大いに役立っ た。ここに深く感謝の意を表する。

1 本論文投稿時の2013年においては、mixi利用者が減少し、変わってFacebook

利用者が増加している。リスキーブランド(2013)の推計では、mixiを日常的 に利用している活用者は2011年の6,969,000人から20126,058,000人、2013 年には4,396,000人と減少し、Twitter活用者は2011年の5,576,000人から2012 6,537,000人、2013年には7,826,000人と微増し、Facebook活用者は2011 1,575,000人から20125,833,000人、2013年には9,060,000人と大きく増 加している。さらに、新たに登場したLINE活用者が10,942,000人と一番の活 用者数になっている。同様に、ICT総研(2013)のインターネットユーザー対 象の調査では、利用率が最も高かったのはFacebook34%、次いでLINE 27%、Twitter26%、mixi22%の順となっている。

2 20113月に全国の携帯電話(スマートフォン含む)又はPHSを所有している

13歳以上の男女を対象に行われたインターネット調査。有効回収数は3171名。

震災直後であったため、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨木、栃木、千 葉の9県は除かれている。

3平成23年版情報通信白書より、10代~30代の1469名の内、61.3%の901名が 何らかのソーシャルメディアを利用し、その利用者の内、80.5%がSNSを、

51.9%がTwitterを利用していることから計算した数値。

引用文献

橋本博文(2011).相互協調性の自己維持メカニズム,実験社会心理学研究,502),

182–193.

平井美佳(2000).「日本人らしさ」についてのステレオタイプ:「一般の日本人」と

「自分自身」との差異,実験社会心理学研究,392),103–113.

ICT総研(2013. 2013SNS利用動向に関する調査, http://www.ictr.co.jp/report/

20130530000039.html20131025日閲覧)

リスキーブランド(2013. 生活者分析:SNS活用者動向,〈http://www.riskybrand.

com/topics/report_130724.pdf20131025日閲覧)

執行花子・吉川茉里(2011. ソーシャルネットワーキングサービスの利用満足につい : 自己と友人の個人主義・集団主義的価値観認知との関連, 東京女子大学卒業 論文(未公刊)

Singelis, T. M., Triandis, H. C., Bhawuk, D. P. S., & Gelfand, M. J. 1995).Horizontal and vertical dimensions of individualism and collectivism: A theoretical and mea- surement refinement. Cross-Cultural Research, 293),240–275.

総務省(2011).「平成23年版情報通信白書: 共生型ネット社会の実現に向けて」

ぎょうせい

(20)

高田利武(2000).相互独立的―相互協調的自己観尺度に就いて,奈良大学総合研究 所所報,8, 145–163.

トライバルメディアハウス・クロスマーケティング(2012).「ソーシャルメディア白 2012」翔泳社

山岸俊男(1998).「信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム」東京大学出版会 Zou, X., Tam, K., Morris, M. W., Lee, S., Lau, I. Y., & Chiu, C. 2009. Culture as Com-

mon Sense: Perceived Consensus Versus Personal Beliefs as Mechanisms of Cul- tural Influence. Journal of Personality and Social Psychology, 974),579–597.

キーワード

ソーシャルメディア、mixiTwitter、文化的価値観、個人主義、集団 主義

表 1.   mixi の利用形態、他者意識に関する尺度 M SD 記事更新 2.21 0.83 r = .59 ***  日記やボイスを更新する  フォトアルバムやボイスに写真を載せる コミュニティ利用 1.55 0.67 r = .52 ***      自分の所属しているグループのコミュニティに書き 込みをする      不特定の人が参加しているコミュニティ(趣味・娯 楽等)に書き込みをする マイミク対話 3.15 0.86 α = .89      マイミクが更新した日記やフォトアルバムをチェッ ク
表 7   mixi 満足度に対する利用形態、自他の文化的価値観の効果 モデル 1 β モデル 2β モデル 3β mixi 利用形態  利用頻度 .29 *** .31 *** .32 ***  記事更新 .00 .02 ⊖ .02  コミュニティ利用  .04 .03 .04  マイミク対話 .29 *** .33 *** .35 ***  ネットワーク拡大 ⊖ .02 ⊖ .03 ⊖ .03  他者反応意識 .17 * .10 .06 文化的価値観と交互作用項  自己の個人主義的価値観 ⊖ .06 ⊖

参照

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