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行政経営システムにおける予算編成の構造と機能

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Academic year: 2021

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(1)

Summary

 The  Local  Autonomy  Act  in  Japan  stipulates  that  only  the  head  of  the  government  is  authorized to formulate and present the budget to the local government assembly. In the past,  local governments  used a  budget  system  where  the  finance  division assessed budgets one  by one, but they have since adopted a system where the fi nance division allocates a certain  amount of the budget to each department. 

 The  introduction  of  an  evaluation  system  has  been  spreading  rapidly  among  local  governments  since  the  mid-1990s.  As  a  part  of  the  administrative  management  system  reform, local governments are trying an approach where evaluation is associated with the  budgeting  system.  Some  local  governments  have  introduced  the  prioritization  of  policy  evaluation projects that gather information necessary to make budget allocation decisions.

 In this study, we clarified the budgeting structure and the functions of budgeting in the  administrative management system. In addition, we further clarifi ed the concept of associating  budgeting with a comprehensive plan and local government evaluation with the help of data  obtained through a nationwide survey on local governments.

1 研究の背景と目的

 本稿の目的は,2012 年 10 月から 11 月にかけて実施した『予算編成と行政経営に関する全 国自治体調査』 (C票) の第 1 報として,その調査結果の全体像を提示することである

1)

。  さて,わが国の地方自治法には,普通地方公共団体の長が担任する事務の一つに「予算を調 製し,及びこれを執行すること」 (第 149 条 2 号) が規定されており,自治体の予算編成権や議 会への予算案の提案権は首長のみが有している。そして自治体の (当初) 予算の編成過程の詳 細は団体によって多少異なるが,概ね予算編成方針の決定提示,各担当部門内での予算調整,

行政経営システムにおける予算編成の構造と機能

佐 藤   徹 

The Structure and Functions of Budgeting

In Administrative Management System of Local Governments

Toru Sato

(2)

各担当部門による要求,財政担当部門による予算査定と原案提示,首長査定,各部門との復活 折衝,議会への予算案提出といった手順を経て行われる。

 また近年は予算編成において従来のように財政担当部門による一件査定や一律シーリング方 式ではなく,部局別又は施策別に予算を配当する枠配分予算制度を導入する自治体も少なくな い。これに伴い,各担当部門による予算要求と財政担当部門による予算査定から,財政担当部 門による総枠提示と各担当部門内での予算調整へと移行する自治体も増えている。

 翻って,1990 年代半ば以降,自治体では行政評価システムの導入が急速に進展した。今日 では,都道府県,政令指定都市,中核市,特例市といった規模の大きな団体のほとんどが行政 評価を実施している。そして行政経営システム改革の一環として行政評価を総合計画の政策体 系や進行管理システムと統合させたり,さらに予算編成システムと連動させることが試みられ ている。総合計画,行政評価,予算編成の諸システムを独立に併存させるよりも,これらの緊 密な連携関係を構築することによって, 行政経営システムの質的向上が期待されるからである。

 こうしたなか,事務事業評価の結果活用のように個々の事務事業への予算措置をどの程度行 うかといったミクロレベルでの予算反映だけでなく,広くマクロな視点でどのような施策・事 業等に予算を重点配分するかを判断する際の諸情報を収集獲得するために,政策・施策評価に おいて施策又は事業間の優先順位づけを行う自治体も見られるようになっている。

 そこで本研究では,全国規模の自治体調査から得られたデータをもとに,行政経営システム において予算編成がどのような構造と機能を有しているか,また予算編成が総合計画や行政評 価とどのような連携関係を形成しているのかを明らかにしようとするものである。ただし,こ の種の先行調査が全く皆無であったというわけではない。例えば,予算編成過程を中心とした 全国規模のアンケート調査に関しては,古くは経済企画庁経済研究所システム分析室の野口悠 紀雄ら (1978) による『地方財政における意思決定の分析』 (調査対象=全国の都道府県,特別区,

市および人口が多い上位 100 団体の町の財政担当課長) に見ることができる。これはウィルダフス

キー ( Wildavsky,A. ) やクリサイン ( Crecine,J. ) らの増分主義仮説がわが国自治体にも妥当する

かどうか,また予算編成に関する意思決定プロセスを類型化した場合にその類型にいかなる要 因が影響するかを統計的に解明しようとしたものである。また,日本都市センターが 1979 年 12 月から 1980 年 1 月にかけて実施した『都市における予算編成過程に関するアンケート調査』

(調査対象=全国 646 都市の財政担当部(課) ) があるが,これは予算編成過程の現状と問題を探り,

都市経営における政策決定のメカニズムを解明する手がかりを得ようとしたものである。また 西山一郎が 1994 年 8 月から同年 12 月にかけて行った全国自治体調査 (調査対象=全国の市町村 の 3 分の 1 を層別系統抽出法により抽出した 1074 団体の財政主管課長) とそれに基づく一連の業績 (西 山 1995,1996 a ,1996 b ,1997) がある。この調査は前述の経済企画庁調査と都市センター調査を 参考にしながら行われている。さらに近年では,予算編成のみを対象とした調査ではないが,

日本都市センターが 2007 年に実施した 『市役所事務機構に関するアンケート調査』 において 「予 算編成」が調査項目の 1 つに取り入れられている (日本都市センター 2008) 。

 本調査ではこうした先行調査における知見も踏まえながら質問紙の設計を行っているが,行

政経営システムの質的向上を図るためには「計画」 「評価」 「予算」の有機的連携が不可欠との

認識に立ちながら,予算編成のシステム構造を把握した上で,予算編成と総合計画及び行政評

(3)

価の連動状況の実態把握に努めている点に特徴がある。なお, 本調査では全国の都市自治体 (市・

東京都特別区) を対象に郵送法による質問紙調査を行っている。都道府県や町村を調査対象に しなかったのは,町村レベルでは行政評価の導入率が相対的に低いことに加えて,都道府県・

町村と都市自治体を同列に比較して論じるには無理があることなどの理由による。

2 調査概要

 本調査は『予算編成と行政経営に関する全国自治体調査』 (C票) と題して実施された。調 査対象は,都道府県・町村を除くすべての団体,すなわち全国の市及び東京都特別区 810 団 体 (2012 年 8 月現在) である。これら自治体の「財政」担当課宛てに,Q1からQ 28 で構成さ れた質問紙 (A 4 判で 8 頁) を,2012 年 10 月 24 日を回答期限として,同年 9 月末に郵送した。

10 月中旬に回答へのお礼を兼ねた督促ハガキを調査対象団体すべてに郵送したところ,656 団 体からの調査票が回収された (回収率 81 . 0%)

2)

 なお, Word 形式の質問紙を用意した上で,回答者から依頼があれば,質問紙のデータを送 付し,電子メールによる回答も受け付けることにした。また,回収された質問紙の中に不明な 点等がある場合については,電話や電子メールによって内容照会を行った。

3 予算編成のシステム構造

3.1 予算編成方針

 財政担当部門では行政需要 を背景に予算規模のおおよそ の見通しを立て,予算編成方 針を作成する。その際,自治 体行政のトップである首長や 自治体政策の企画調整を担う 総合計画担当部門はどのよう に関与しながら予算編成方針 が作成されるのであろうか。

まずはこの点について尋ねることにした ( Q 2) 。

 その結果が図1である。最も多いのが「財政担当部門で作成した後, 首長の承認を得る」で,

6 割を超えている。ついで「財政担当部門と総合計画担当部門などで協議した後,首長の承認 を得る」 (22 . 9%) , 「首長の意向を受けて,財政担当部門内で作成している」 (7 . 3%) , 「首長の 意向を受けて,財政担当部門と総合計画担当部門で協議して作成している」 (3 . 7%) の順であ る。首長の関与がなく, 「財政担当部門と総合計画担当部門などで協議して作成している」団 体 (1 . 4%) もわずかながら存在している。

 つぎに,予算編成方針にどのような事項が記載されているかについて尋ねたところ,図2に 示すとおり, 「財政環境」 (97 . 6%) , 「国あるいは都道府県の動向」 (87 . 9%) , 「各経費の要求要領」

図1 予算編成方針の作成方法

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(4)

(73 . 6%) についてはほとんど の自治体で記載事項となって いる。 だが, 「予算編成の日程」

「要求限度 (シーリング等) 」 「翌 年度の重点施策」については 記載事項とする自治体とそう でない自治体とで分かれてい る。なお,政策等の優先順位 については約 4 分の1の自治 体で記載されている。

3.2 予算全体の規模に関する見通し  財政担当部門では,各担当部門の要求 前の段階で予算全体の規模に関するおお よその見通しを持っていることが少なく ない。それでは,その見通しはどのよう に立てられているのだろうか ( Q 4) 。  この点については図 3 に示したとお り, 「歳入や歳出に関するおおよその積 み上げによって見通しを作成している」

自治体が 5 割を超えている。一方, 「前 年度予算規模と税収の伸び率等によって

見通しを作成している」自治体,すなわち積み上げ型でない自治体は 4 分の1である。なお,

予算全体の規模に関するおおよその見通しを持っていない自治体も約 1 割存在している。

3.3 枠配分予算制度の導入状況

 予算編成にあたり財政担当部門が個別の事業を一 件ずつ査定するのではなく,各担当部門に対して一 定の予算枠をあらかじめ提示し,枠予算の対象経費 については各担当部門が予算要求を取りまとめる枠 配分予算制度を導入している自治体も少なくない。

そこで枠配分予算制度の導入状況について尋ねるこ とにした ( Q 5) 。

 その結果が図 4 である。導入済の自治体は 47 . 7%

であるが,今後導入を予定又は現在導入を試行中・

検討中の自治体を含めると 53 . 6%と半数以上とな

る。ただし, 「いまのところ導入の予定はない」自治体が 30 . 6%,また「以前導入していたが,

現在は廃止している」自治体が 15 . 7%存在している。

図3 予算全体の規模に関する見通し

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図4 枠配分予算制度の導入状況

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˪Ɂ766

(5)

 そして現在,枠配分予算制度を 導入している自治体に導入年度を 尋ねたところ,図 5 に示したとお り,平成 14 (2002) 年度あたりか ら導入する自治体が増加し,平成 16 (2004) 年度から平成 19 (2007)

年度をピークにして,それ以降は 導入団体が下降基調にあることが うかがえる

3)

3.4 枠配分予算の方法  予算の枠配分の方法として は行政組織別に配分する方法 と政策体系に沿って配分する 方法に大別できる。そこで枠 配分予算制度の導入団体に対 して予算の枠配分方法をマル チアンサー方式で尋ねること にした ( Q 6) 。

 その結果,図 6 に示したと おり, 「部別に配分」とした 自治体が 69 . 6%と最も多く,

「課別に配分」とした自治体 は 24 . 0%であった。一方, 「施 策別に配分」とした団体は 8 . 7%であり, 「政策別に配分」

はわずか 3 . 8%にとどまって いる。

 また, 「施策別に配分」又 は「政策別に配分」と回答し た団体に対して,部や課にま

たがる政策・施策の予算調整の方法について尋ねたところ ( Q 7) , 「当事者間で調整している」

(37 . 1%) が最も多く,ついで「財政担当部門が調整している」 (31 . 4%) , 「庁内調整会議等の場 で調整している」 (25 . 7%) の順に多かった (図7) 。

3.5 枠配分予算の対象経費

 枠配分予算を実施する上では,どのような対象経費を枠配分するかが論点となっており,こ の点につき自治体によっても異なっている。そこで, 「経常的経費のうち扶助費, 公債費等」 「経

図6 枠配分予算の方法

図7 組織横断的な予算調整の方法

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図5 枠配分予算制度の導入年度

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(6)

常的経費のうち人件費」 「経 常的経費のうち義務的経費以 外の経費(物件費,維持補修 費等) 」 「投資的経費」 「首長 の公約や政策判断等によって 実施される政策調整枠等」 「そ の他」の選択肢を用意し,該 当するものを全て選択しても らうことにした ( Q 8) 。

 その結果,図 8 に示すとおり, 「経常的経費のうち義務的経費以外の経費 (物件費,維持補修 費等) 」が 81 . 1%と最も多く,ついで「投資的経費」とした自治体が 30 . 8%であった。公債費 や人件費等の義務的経費を枠配分予算の対象とする自治体も存在するが少数である。また首長 の公約や政策判断等によって実施される政策調整枠等を枠配分予算の対象としている自治体も 1 割強にとどまっている。

3.6 枠配分予算制度の問題点  枠配分予算制度を導入して いる団体において,財政担当 部門は何らかの問題点を認識 し て い る の だ ろ う か。 こ の 点につき尋ねることにした

( Q 9) 。

 図 9 に示したとおり, 「そ の他」 (35 . 7%) を除いて, 「特 に問題はない」 (36 . 1%) とす

る自治体が多いが, 「各部局長の能力差によって,部局間で不均衡が生じる可能性がある」と する自治体 (28 . 5%) も 3 割弱存在する。また「事業全てに精通した職員が少なくなる」とす る自治体も 1 割存在している。

3.7 予算ヒアリングの実施状況  大抵の自治体の財政担当部 門では予算ヒアリングを実施 しているが,枠配分予算の対 象経費との関係において,そ の実態がどうであるかを把握 することにした ( Q 10) 。  その結果,図 10 に示すと おり, 「すべての部局,経費

図9 枠配分予算制度の問題点

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図 10 予算ヒアリングの実施状況

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˪Ɂ763 図8 枠配分予算の対象経費

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(7)

について行っている」自治体が 84 . 4%である。 「枠配分対象経費であっても,枠配分額内に収 まらなかった事業についてはヒアリングを行う」自治体 (10 . 6%) や「枠配分対象経費につい てはヒアリングを行わない」 (5 . 4%) 自治体は少数派である。

3.8 財政計画の策定状況  財政担当部門では財政計画 をどのように策定しているの だろうか。その場合,財政計 画と総合計画の実施計画とは どのような関係を形成してい るのだろうか。本来,財政計 画と実施計画は密接不可分な 関係にあるものと考えられる が,その実態はどうかについ て尋ねることにした ( Q 12) 。

 その結果,図 11 に示すとおり,49 . 8%と約 5 割の自治体が実施計画と連動した財政計画を 策定しており,実施計画とは特に連動していないが財政計画を策定している自治体は 29 . 4%と 約 3 割である。約 8 割の自治体が財政計画を策定しているが,策定していない自治体も 13 . 3%

存在している。

 さらに,財政計画を策定している団体に対して,その計画期間を尋ねたところ,最も多かっ たのが「5 年」 (43 . 8%) であった。ついで, 「10 年」 (23 . 2%) , そして「3 年未満」 (21 . 3%) であった。

4 予算編成と総合計画の関係

4.1 予算編成と実施計画のフロー  予算編成と実施計画の関係 は,実施計画の改定 (ローリ ングを含む) をしていない場 合や,予算編成と実施計画の 改定 (ローリングを含む) は連 動していない場合を除き,① 先に実施計画に計上する事業 が提示され,これに即して予 算編成が進められる,②予算 編成と実施計画の改定 (ロー リングを含む) は連動しなが

ら同時並行的に進められる,③予算編成終了後に,その結果をふまえて実施計画の改定 (ロー リングを含む) が行われる,といった 3 パターンが想定される。

図 11 財政計画の策定状況

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図 12 予算編成と実施計画のフロー

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(8)

 そこで,実施計画と予算編成の業務フローが①から③のパターンのうち,どれに最も近いか について尋ねることにした ( Q 13) 。その結果は図 12 に示したとおり,47 . 4%の自治体が「先 に実施計画に計上する事業が提示され,これに即して予算編成が進められる」 (パターン①) と いう流れであった。ついで, 「予算編成と実施計画の改定 (ローリングを含む) は連動しながら 同時並行的に進められる」 (パターン②) が 27 . 8%であった。実施計画は基本構想・基本計画と 予算編成を架橋するという本来の機能が確認された。しかし一方で, 「予算編成終了後に,そ の結果をふまえて実施計画の改定 (ローリングを含む) が行われる」 (パターン③) といった実施 計画が後付けの自治体 (11 . 9%) や「予算編成と実施計画の改定 (ローリングを含む) は連動し ていない」という自治体 (10 . 5%) も見られる。

4.2 予算編成過程における実施計画情報の利用度  予算編成過程において財政

担当課が実施計画の情報をど の程度利用しているかについ て, 「十分に利用している」 「ど ちらかと言えば,利用してい る」 「どちらかと言えば,利 用していない」 「ほとんど利 用していない」の 4 件法によ り尋ねることにした ( Q 14) 。

 図 13 が集計結果である。 「十分に利用している」が 43 . 3%と最も多く, 「どちらかと言えば,

利用している」とした自治体は 34 . 4%であった。8 割近くの自治体の財政担当者は,予算編成 過程において実施計画の情報を利用しているものと考えられる。

4.3 総合計画と予算編成の関連性  総合計画と予算編成の関連 性について,①実施計画に計 上された事業は予算化してい るか,②政策的経費・投資的 経費にかかる事業については 実施計画の改定時に総合計画 担当部門が査定し,それ以外 の経費にかかる事業ついては 財政担当部門が予算査定を 行っているか,③各担当部門 が事業の予算要求を行うため には実施計画に計上されるこ

とが必要であるか,④実施計画に計上された事業の事業費は財政的な裏づけがあるか,といっ 図 13 予算編成過程における実施計画情報の利用度

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表1 総合計画と予算編成の関連性

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(9)

た各事項について, 「あてはまっている」 「どちらかと言えば,あてはまっている」 「どちらか と言えば,あてはまっていない」 「ほとんどあてはまっていない」の 4 件法により尋ねること にした ( Q 16) 。

 その結果は,表1に示したとおり, 「実施計画に計上された事業は予算化しているか」につ いては「あてはまっている」が 35 . 3%, 「どちらかと言えば,あてはまっている」が 54 . 8%と 肯定的な回答をした自治体の割合が最も高い。ついで  「政策的経費・投資的経費にかかる事 業については実施計画の改定時に総合計画担当部門が査定し,それ以外の経費にかかる事業つ いては財政担当部門が予算査定を行っているか」については,あてはまっていないとする自治 体のほうが多い。

  「各担当部門が事業の予算要求を行うためには実施計画に計上されることが必要であるか」

について肯定的な回答を行った自治体の割合は 85 . 2%である。財政担当部門が実施計画を重視 している点がうかがえる。なお, 「実施計画に計上された事業の事業費は財政的な裏づけがあ るか」については,肯定的な回答と否定的な回答の割合は拮抗し二極化している。

5 予算編成と行政評価の関係

5.1 予算編成と行政評価のフロー  予算編成と行政評価の関係 は,①先に評価結果が提示さ れ,これに即して予算編成が 進められる,②評価と予算編 成は連動しながら同時併行的 に進められる,③先に予算内 示が提示され,これに即して 評価が進められる,④評価は 予算編成とあまり連動してい ない,といった 4 パターンが

想定される。そこで,行政評価と予算編成の業務フローが①から④のパターンのうち,どれに 最も近いかについて尋ねることにした ( Q 18) 。

 その結果は図 14 に示したとおり,事務事業評価ではパターン①と②の割合はそれぞれ 57 . 7 % ,14 . 3 % で最も高い。つまり「先に事務事業評価結果が提示され,これに即して予算編 成が進められる」か, 「事務事業評価と予算編成は連動しながら同時併行的に進められる」と いう自治体が 7 割以上を占めている。これに対して,施策評価ではパターン①及び②の割合は 62 . 6 % ,また政策評価ではパターン①及び②の割合は 58 . 5 % とやや低くなっている。

5.2 行政評価結果の予算編成過程への反映

 行政評価 (事務事業評価,施策評価,政策評価のいずれか 1 つ以上) を実施している団体に対して,

今年度に行った行政評価の結果 (今後の方針等) がどの年度の予算の編成過程において反映され 図 14 予算編成と行政評価のフロー

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(10)

るかについて尋ねることにし た ( Q 19) 。ただし, ここでの 「来 年度予算の編成過程」とは,

今年度の後半に行われる予算 編成過程をさすものとした。

 その結果,図 15 に示した とおり,評価の対象に関係な く,今年度行った評価の結果

は「来年度予算の編成過程において反映」とする自治体の割合が最も高い。なかでも事務事業 評価については,77 . 6%と 8 割近くの自治体が今年度行った評価の結果は「来年度予算の編成 過程において反映」されるとしている。一方,施策評価については, 「来年度予算の編成過程 において反映」とする自治体は 47 . 7%と 5 割に満たない。

5.3 予算編成過程における行政評価情報の利用度  財政担当者が予算編成過程

において行政評価情報をどの 程度利用しているかについて 把握するため, 「十分に利用 している」 「どちらかと言え ば,利用している」 「どちら かと言えば, 利用していない」

「ほとんど利用していない」

の 4 件法により尋ねることに した ( Q 20) 。

 図 16 がその集計結果である。事務事業評価の場合, 「十分に利用している」が 26 . 4%と施策 評価や政策評価の場合と比較して,その割合が最も高い。これに「どちらかと言えば,利用し ている」を含めると,財政担当者が予算編成過程において事務事業評価情報を利用している自 治体は 68 . 6%と 7 割近くにのぼる。施策評価の場合では,財政担当者が予算編成過程において 評価情報を利用している自治体の割合は低下し 55 . 4%である。また,政策評価の場合のそれは 51 . 0%と最も低い。

5.4 事務事業評価結果と予算編成の関係

 事務事業評価結果と予算編成には何らかの規律が存在するのだろうか。この点についても尋 ねたところ ( Q 23) ,事務事業評価で「廃止」の結果となった事業については原則として予算措 置は行わないとする自治体が 59 . 1%と約 6 割にのぼった。また,事務事業評価で「縮小」の結 果となった事業について原則として予算を減額措置しているかどうかを尋ねたところ,52 . 6%

の自治体がこれに該当した。

 ところが,事務事業評価で「拡充」の結果となった事業について原則として予算を増額措 図 15 行政評価結果の予算編成過程への反映

82/2 21/: 29/1 58/8 8/9 55/6

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図 16 予算編成過程における行政評価情報の利用度

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(11)

置しているとした自治体は 28 . 1%であり, 評価結果が「拡 充」であるからといって必然 的に予算が増額されるわけで はない。昨今の厳しい財政事 情がうかがえる。なお,事務 事業評価結果と予算編成の両 者に特別な関係は認められな

いとする自治体も 22 . 1%存在している。

5.5 枠配分予算制度と政策等の優先順位・優先度  枠配分予算制度を導入して

いる団体に対して,部 (又は 課) ごと,あるいは施策 (又 は政策) ごとにシーリングレ ベルの設定に違い (差) を設 けているかどうかについて尋 ねることにした ( Q 24) 。  その結果, 「シーリングレ ベルに違い (差) は設けてい ない (一律である) 」とした自

治体が 72 . 7%と, 「シーリングレベルに違い (差) を設けている」自治体 (27 . 3%) よりも多数 派であった。

 つぎに, 「シーリングレベルに違い (差) を設けている」と回答した団体に対して,シーリ ングレベルは政策等の優先順位や優先度を踏まえて設定されたものかどうかを尋ねたところ

( Q 25) ,61 . 8%の団体がこれに該当した。

 さらに,政策等の優先順位や優先度が何によって明確にされるかをマルチアンサー形式で尋 ねたところ ( Q 26) , 「首長の公約や政策判断」が 61 . 9%と最も多く, ついで「施策評価」 (38 . 1%) ,

「事務事業評価」 (31 . 0%) , 「実施計画」 (31 . 0%) といった順であった (図 18) 。

6 結論と今後の課題

 本稿では,2012 年度に全国の都市自治体 810 団体を対象として実施した『予算編成と行政 経営に関する全国自治体調査』 (C票) の分析結果 (第 1 報) を提示した。本調査結果から明ら かとなった点を整理すると,以下の 3 点に要約される。

 第 1 は,予算編成のシステム構造に関する点である。まず予算編成方針については自治体の 6 割が財政担当部門で作成した後,首長の承認を得る方法によって作成されている。また自治 体の半数以上で財政担当部門が各担当部門の要求前の段階で歳入や歳出に関するおおよその積

図 18 政策等の優先順位・優先度の根拠

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図 17 事務事業評価結果と予算編成の関係

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˪Ɂ581

(12)

み上げによって予算全体の規模に関する見通しを作成している。

 枠配分予算制度を導入済の自治体は 5 割弱であるが, 今後導入を予定又は現在導入を試行中・

検討中の自治体を含めると半数を超えている。平成 14 (2002) 年度あたりから同制度を導入す る自治体が増加し,平成 16 (2004) 年度から平成 19 (2007) 年度をピークに,それ以降は導入 団体が横ばいとなっている。枠配分の方式については「部別に配分」とした自治体が約 7 割で,

「課別に配分」としている自治体は約 4 分の 1 である。一方, 「施策別に配分」とした団体は 1 割に満たない。

 また枠配分予算の対象経費については, 「経常的経費のうち義務的経費以外の経費 (物件費,

維持補修費等) 」 としている自治体が 8 割を超え, 「投資的経費」 としている自治体は約 3 割である。

枠配分予算制度を導入している団体では, 「特に問題はない」とする自治体も 4 割近いが, 「各 部局長の能力差によって,部局間で不均衡が生じる可能性がある」とする自治体も 3 割弱存在 する。そして,約 8 割の自治体で財政計画が策定されているが,このうち実施計画と連動した 財政計画を策定している自治体は約 5 割である。

 第 2 は,予算編成と総合計画の関係である。まず約 5 割の自治体が「先に実施計画に計上す る事業が提示され,これに即して予算編成が進められる」という決定過程であった。また「予 算編成と実施計画の改定 (ローリングを含む) は連動しながら同時並行的に進められる」自治体 が 3 割近くを占めている。このように,実施計画は総合計画 (基本構想・基本計画) と予算編成 を架橋するという本来の機能を確認できる。

 そして 8 割近くの自治体の財政担当部門は,予算編成過程において実施計画の情報を利用し ていることがうかがえる。 「実施計画に計上された事業は予算化しているか」という問いに対 しては「あてはまっている」や「どちらかと言えば,あてはまっている」といった肯定的な回 答を行った自治体は 9 割にのぼっている。さらに「各担当部門が事業の予算要求を行うために は実施計画に計上されることが必要であるか」との問いに肯定的な回答を行った自治体の割合 は 8 割を超えており,財政担当部門が実施計画を重視している点がうかがえる。

 なお, 「政策的経費・投資的経費にかかる事業については実施計画の改定時に総合計画担当 部門が査定し, それ以外の経費にかかる事業ついては財政担当部門が予算査定を行っているか」

との問いに対しては否定的な回答を行った自治体のほうが多い。

 第 3 は,予算編成と行政評価の関係である。まず決定過程であるが, 「先に事務事業評価結 果が提示され,これに即して予算編成が進められる」か, 「事務事業評価と予算編成は連動し ながら同時併行的に進められる」という自治体が 7 割以上を占めている。このように事務事業 評価では予算編成に対して評価先行型か同時並行型が主流であるが,施策評価や政策評価では 評価先行型や同時並行型の自治体の割合はやや低い。

 また行政評価 (事務事業評価,施策評価,政策評価のいずれか 1 つ以上) を実施している団体では,

今年度に行った行政評価の結果 (今後の方針等) は評価対象に関係なく, 「来年度予算の編成過 程において反映する」としている自治体の比率が最も高い。

 さらに,財政担当部門が予算編成過程において事務事業評価情報を利用している自治体は 7

割近くにのぼる。施策評価や政策評価の場合には,それらの評価情報を財政担当部門が予算編

成過程において利用している自治体の割合はやや低く 6 割を下回っている。

(13)

 なお,事務事業評価結果と予算編成には何らかの規律が存在するかという点であるが,事務 事業評価で「廃止」となった事業については原則として予算措置は行わないとする自治体が 6 割にのぼっている。一方,評価結果が「拡充」のときに予算の増額措置を行う自治体は 3 割に 満たず,昨今の厳しい財政事情がうかがえる。

 最後になるが,本稿では紙面の都合上,全国調査の第 1 報として調査結果の全体像を提示す る点に主眼を置いたため,仮説検証を目的にした統計分析は行っていない。この点については 今後の課題としたい。

(さとう とおる・本学地域政策学部教授)

〔付記〕

 本稿は,科学研究費・基盤研究(C) 「政策の優先順位づけにおける意思決定構造の実証的研究

-都市自治体行政を対象に」 (研究課題番号:23530150,研究代表者:佐藤徹)による研究成果の 一部である。

〔注〕

1 ) 本稿では紙面の都合上,すべての設問についての調査結果を掲載していない。また学術的観点 から統計的手法による仮説検証が行えるよう質問紙票の各設問の配置操作を行っているが,本 稿では調査結果速報として概要のみを提示する。

2 ) 回答者の属性であるが,回答者の財政担当年数は 2 ~ 4 年が 37 . 5%が最も多く,ついで 2 年未 満が 28 . 1%,4 ~ 5 年が 19 . 9%,6 年以上が 14 . 5%であった。

3 )  枠配分予算制度を以前導入していたが現在は廃止している団体に対して,同制度がいつ終了し たかについても尋ねたところ,平成 20 年度から 23 年度に廃止した自治体が多かった。

〔参考文献〕

佐藤徹『自治体行政と政策の優先順位づけ』大阪大学出版会,2009。

西山一郎「わが国の市町村における予算編成過程 (1)   :1994 年の調査」 『香川大学經濟論叢』68

(2 / 3) ,pp. 3-40,1995。

西山一郎「わが国の市町村における予算編成過程 (2)   :1994 年の調査」 『香川大学經濟論叢』69(1) ,  pp. 1-60,1996 a 。

西山一郎「わが国の市町村における予算編成過程(3・完) :1994 年の調査」 『香川大学經濟論叢』

69(2 / 3) , pp. 3-143,1996 b 。

西山一郎「補説・わが国の市町村における予算編成過程:1994 年の調査」 『香川大学經濟論叢』69

(4) , pp. 1-31,1997。

日本都市センター『都市における予算編成過程』 ,1980。

日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』 ,2008。

野口悠紀雄他「地方財政における意思決定の分析」 『経済分析』71 号,経済企画庁経済研究所,

1978。

(14)

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附属資料 調査票『予算編成と行政経営に関する全国自治体調査』 (C票)

(15)

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