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The Effect of the Simplified Skill and the Step-by-Step Practice of Seoi-Nage on Novices at Judo

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Academic year: 2021

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柔道初心者における背負い投げの簡易化した目標技能と 段階的練習の効果

三戸 範之(秋田大学)・石井 直人(秋田工業高等専門学校)

The Effect of the Simplified Skill and the Step-by-Step Practice of Seoi-Nage on Novices at Judo

SANNOHE, Noriyuki1; ISHII, Naoto2

1Akita University, 2Akita National Institute, College of Technology

Summery

The purpose of this study was to examine the effect of the step-by-step practice and the simplified seoi-nage on the safe practice of judo by novices. Participants were 18 students who attended a college judo class. Trials in the experiment were composed of two kinds of the conditions, which were seoi-nage without the step-by-step practice, and seoi-nage after practicing the three steps. After the trials, participants answered a five-point scale questionnaire asking how they felt when they were thrown or threw. Binomial tests demonstrated that high head fixation was significantly greater than low head fixation on any conditions. This finding suggests that simplified skill and step-by-step practice are effective for head fixation of thrown participants. Measurements of the degree of head fixation revealed an effect of step-by-step practice (two-way ANOVA, F1, 17 = 3.676, p = 0.07), but ANOVA did not detect an effect of holding, nor interaction between the step-by-step practice and holding. This finding suggests that step-by-step practice is effective on head fixation of thrown participants. Results imply that simplified skill and step-by-step practice of seoi-nage are effective safe practice of novices at judo. The findings of this study will contribute to plan the safe and easy practice for instructing novices at judo.

Key Words : judo, seoi-nage, simplified skill, step-by-step practice, safe practice

1 はじめに

 柔道の初心者指導では,安全で無理のない練習が重要 である。柔道において,近年とりわけ安全に留意した取 り組みの重要性が高まっている。その背景として,柔道 の重大事故の発生が報告されていることがあげられ,重 大事故は,授業ではほとんどみられないが,運動部活動 で発生している状況がみられる(内田,2013)。柔道に おいて事故防止は,重要課題の一つであるといえる。

 柔道に特徴的な事故は,頭部打撲,頸椎の怪我などで あり,なかでも柔道初心者の事故に多いのは,頭部打撲 である(全日本柔道連盟,2015a,pp.5-19)。頭部打撲 の原因となる技は大外刈りが多く,背負い投げや大内刈 りにもみられる(全日本柔道連盟,2015a,p.11)。この ような柔道初心者の事故の傾向から,重大事故防止のた めには,頭部の打撲を防止する対応が効果的であるとい える。

 また,平成 24 年から中学校では,武道が必修化された。

そのため,柔道の授業では初心者や運動の苦手な生徒,

男女共習など,これまで以上に多様な生徒に対応する必 要があり,授業においても安全で無理のない指導法が一 層重要となっているといえる。

 これまでの柔道の安全についての研究において,頭部 打撲防止の観点から,投げ技の技能や練習法に焦点を当 てた研究は,三戸ら(2017)による大外刈りについて のものがある。ここでは,極めの局面における引き手を 保持する技能として片手および両手保持の安全への効果 を,大外刈りの試技における受けおよび取りの意識から 検討した。その結果,片手保持,および両手保持はとも に,頭部打撲防止のために頭頸部を固定する効果があり,

両者を比較すると両手保持が片手保持にくらべより効果 的であることを明らかにした。このような,各技におけ る技能や練習法に焦点を当てた安全に関する研究は少な く,それほど進展していないのが現状である。

 本研究では,背負い投げをとりあげ,頭部打撲防止の

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観点から,安全のための技能や練習法について検討する。

背負い投げは,試合で多くみられる投げ技であるが,初 心者には習得が容易であるとはいえない。中学校の授業 では,背負い投げは3年生の進んだ段階で扱うことと なっている(文部科学省,p.109)。理由としては,取り にとっては,技術が複雑で難易度が高く,受けにとって は,両足が宙に浮き,投げられたときの負荷が高く恐怖 心を持ちやすいことがあげられる。したがって,負荷を 低くするよう課題の与え方を工夫することができれば,

安全性を高め恐怖心を和らげることができるのではない かと考えられる。

 負荷を低くする課題の与え方の工夫として,目標技能 の簡易化や段階的練習を取りいれることがあげられる。

本研究の目的は,柔道初心者における背負い投げの目標 技能の簡易化と段階的練習の安全への効果を検討するこ とである。背負い投げにおいては,両足が宙に浮くこと が受けの負荷を高めていると考えられるので,簡易化し た目標技能を用い足を接地させて投げることにより,受 けは負荷を低減できると考えられる。取りは,簡易化し た目標技能により,投げるスピードや受けの運動の制御 が容易になると考えられる。また,段階的に背負い投げ の練習を行うことにより,簡単な課題から徐々に難易度 が高くなり,受け,取りはともに無理なく技を習得する ことができると考えられる。 

 本研究においては,簡易化した背負い投げおよび段階 的練習後の簡易化した背負い投げの試技において,投げ られたときおよび投げたときの意識について,質問紙に より分析し,背負い投げの目標技能の簡易化と段階的練 習の安全への効果を検討する。

 本研究は,背負い投げにおける,安全な指導法や練習 法の工夫改善に貢献するための,技術と練習法に関する 基礎的研究である。

  2 方法

(1)目標技能を簡易化した背負い投げ

 本研究で用いる目標技能を簡易化した背負い投げは,

受けを持ち上げた後で,片足を接地させ,斜め前に転が すように投げることとする(図1)。

(2) 背負い投げの段階的練習

 背負い投げの段階的練習は,片膝をついた受けを体さ ばきで投げる,受けを背負って歩く,および受けを背負 い投げで持ち上げるという3段階とする(図2)。

(3)被験者

 被験者は,柔道の授業を受講している柔道初心者 18 名である。被験者は,本研究における実験を行う前に,

後ろ受身,横受身,前回り受身の各種受身と膝車や体落 としなど基礎的な投げ技を学習している。

(4)手続き

 被験者が2人ずつペアを作り,それぞれが背負い投げ の試技を行う。試技は,2つの条件で行う。一つは,段 階的練習を行わない目標技能を簡易化した背負い投げ,

もう一つは3段階の段階的練習を行ってからの目標技能 を簡易化した背負い投げである。目標技能を簡易化した 背負い投げの試技は,相手を背負い投げで持ち上げた後,

相手の足を接地させ転がすように投げることとする。試 技の条件それぞれ,投げの最終局面すなわち極めにおい て片手保持と両手保持の2種類の技法を用いる(図3)。

 試技後,被験者は質問紙に回答する。

(5) 試技後の質問紙 

 質問紙は,投げられたときおよび投げたときどのよう に感じたかについて,5件法の評定尺度を用いる。質問 紙における,受けへの質問は頭頸部の固定度,取りへの 質問は投げたときの違和感である。

 柔道初心者において事故防止のためには,頭部を打撲 させないことが重要である。初心者は,頸部を前屈させ 頭頸部を引き上げる技能が十分でないと考えられる。し たがって頭部打撲を防止するためには,取りは投げたと き引き手を引き上げ,受けの頭頸部は前屈し固定されて いることが重要であると考えられる。また,取りはバラ ンスを崩さず安定した立ち姿勢を保つことが,引き手を しっかり引き上げるために重要であると考えられる。

 質問紙における,受けの頭頸部の固定度について5段 階の評定尺度は,「1頭頸部がしっかり固定されており,

頭を打つ不安を全く感じない」,「2頭頸部が固定されて おり,頭を打つ不安を感じない」,「3頭頸部がしっかり とは固定されておらず,頭を打つ不安をやや感じる」,「4 頭頸部が固定されておらず,頭を打つ不安を感じる」,

および「5頭頸部が固定されておらず,頭を打つ不安を 強く感じる」である。  また,試技の際に頭を打ったか の質問を加える。

 取りの投げたときの違和感について5段階の評定尺度 は,「1全く違和感を感じない」,「2違和感を感じない」,

「3やや違和感を感じる」,「4違和感を感じる」,および

「5違和感を強く感じる」である。

(6)分析

 検定には,二項検定と二元配置分散分析を用いる。二 項検定では,受けおよび取りともに,質問紙回答1から 4を二つのグループに分類し,受けは,回答1および2 を選択した頭頸部高固定グループと回答3および4を選 択した頭頸部低固定グループの人数の偏りを分析する。

取りは,回答1および2を選択した低違和感グループと 回答3および4を選択した高違和感グループの人数の偏 りを分析する。評定5は,受け,取りともに回答したも のはいなかったので,二項検定の分析から除くこととす

(3)

る。二項検定は,段階的練習を行わない簡易化した背負 い投げ,および段階的練習後の簡易化した背負い投げに おける,片手保持および両手保持の4条件において行う。

 二元配置分散分析においては,独立変数は段階的練習

(なし・あり)および保持のし方(片手保持・両手保持),

従属変数は受けの頭頸部の固定度と取りの投げたときの 違和感である。

 はじめの段階的練習を行わない簡易化した背負い投げ の試技においては,ここで用いる簡易化した目標技能の,

受けの頭頸部の固定度,および取りの投げたときの違和 感への効果を分析する。二つ目の段階的練習後の簡易化 した背負い投げの試技においては,段階的練習の,受け の頭頸部の固定度,および取りの投げたときの違和感へ の効果を分析する。

①片膝の受けを投げる ②おんぶ ③背負い投げの形 図1 背負い投げの簡易化した最終課題

図2 背負い投げの段階的練習

①片手保持 ②両手保持 図3 背負い投げの決めの技術

①片膝の受けを投げる ②おんぶ ③背負い投げの形 図1 背負い投げの簡易化した最終課題

図2 背負い投げの段階的練習

図1 背負い投げの簡易化した最終課題

  ①片膝の受けを投げる       ②おんぶ        ③背負い投げの形       図2 背負い投げの段階的練習

①片手保持         ②両手保持 図3 背負い投げの決めの技術

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3 結果

(1) 簡易化した目標技能と段階的練習の頭頸部固定への 効果 

 表1は,背負い投げにおける受けの意識について,頭 頸部高固定と低固定の人数を示したものである。二項検 定の結果,段階的練習を行わない簡易化した背負い投げ は,片手保持は人数の偏りが有意で,両手保持は有意傾 向であった。表1によると,段階的練習を行わない簡易 化した背負い投げは,片手保持,両手保持ともに頭頸部 高固定の人数が低固定に比べ多いといえる。段階的練習 後の簡易化した背負い投げは,片手保持,両手保持いず れにおいても,人数の偏りが有意であった。表1による と,段階的練習後の簡易化した背負い投げにおいて,片 手保持,両手保持ともに頭頸部高固定の人数が低固定に 比べ多いといえる。

 図4は,受けの意識について,頭頸部固定の評定平均 値を示したものである。評定平均値は,段階的練習を行 わない簡易化した背負い投げでは,片手保持が 2.00,両 手保持が 1.83,段階的練習後の簡易化した背負い投げ では,片手保持が 1.78,両手保持が 1.61 であった。表 2は,従属変数を受けの意識,独立変数を段階的練習(あ り,なし)および保持のし方(片手保持,両手保持)と した二要因分散分析の結果である。表2に示すとおり,

段階的練習の主効果は有意傾向が見られた(F(1,

17)= 3.676,P < .10)。片手保持,両手保持ともに,

段階的練習後の簡易化した背負い投げは,段階的練習を 行わない簡易化した背負い投げに比べ平均値が小さく,

背負い投げの段階的練習は頭頸部固定に効果的であると

いえる。保持の主効果および交互作用は有意ではなかっ た。

 頭を打ったかについては,段階的練習を行わない簡易 化した背負い投げの片手保持,両手保持において,頭を 打ったと答えた人数がそれぞれ 1 名であった。段階的練 習後の簡易化した背負い投げの片手保持,両手保持にお いて,頭を打ったと答えたものはいなかった。二項検定 によると,いずれの条件においても人数の偏りは有意で,

頭を打たない人数が打った人数に比べ多いといえる。

(2) 簡易化した目標技能と段階的練習の投げたときの違 和感への効果 

 表3は,取りの意識について,投げたときの低違和感 と高違和感の人数を示したものである。二項検定の結果,

段階的練習を行わない簡易化した背負い投げにおける片 手保持は,人数の偏りが有意であった。表3によると,

段階的練習を行わない簡易化した背負い投げにおける片 手保持は,低違和感の人数が高違和感の人数に比べ多い といえる。段階的練習を行わない簡易化した背負い投げ における両手保持は,人数の偏りが有意ではなく,低違 和感と高違和感の人数に差はみられなかった。

 段階的練習後の簡易化した背負い投げでは,片手保持,

両手保持いずれにおいても,人数の偏りが有意であった。

表3によると,段階的練習後の簡易化した背負い投げで は,片手保持  ,両手保持いずれにおいても,低違和感 の人数が高違和感の人数に比べ多いといえる。

 図5は,取りの投げたときの違和感について,評定平 均値を示したものである。評定平均値は,段階的練習を 行わない簡易化した背負い投げでは,片手保持  が 1.78,

表1  背負い投げにおける受け の意識:頭頸部の固定 ( 度数)

表2 分散分析表(背負い投げにおける受けの意識:頭頸部の固定)

表3 背負い投げにおける取りの意識:違和感

図4  背負い投げにおける受けの意識:頭頸部 の固定(評定平均値,n = 18)

図5  背負い投げにおける取りの意識:違和感

(評定平均値,n = 18)

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両手保持が 2.22,段階的練習後の簡易化した背負い投 げでは,片手保持  が 1.78,両手保持が 1.89 であった。

二要因分散分析の結果,段階的練習,保持の主効果およ び交互作用は有意ではなかった。

4 考察

(1)簡易化した目標技能と段階的練習の安全への効果  柔道初心者を被験者に,段階的練習を行わない簡易化 した背負い投げ,および段階的練習後の簡易化した背負 い投げの試技を行い,受けの頭頸部の固定度についての 意識を検討した。頭頸部の固定度について人数を分析し た結果,段階的練習を行わない簡易化した背負い投げ,

および段階的練習後の簡易化した背負い投げにおいて,

片手保持,両手保持ともに,頭頸部高固定の人数が低固 定に比べ多いことを明らかにした。この知見は,背負い 投げにおける簡易化した目標技能と段階的練習が,片手 保持,両手保持ともに,投げられたときに受けの頭頸部 を前屈させて固定することに効果があり,頭部打撲防止 のうえで初心者の安全な練習のために効果的であること を示唆する。

 頭頸部の固定度について二要因分散分析の結果,段階 的練習の主効果が有意傾向で,段階的練習後の簡易化し た背負い投げが,段階的練習を行わない簡易化した背負 い投げに比べ,頭頸部の固定度を高く評価する傾向があ ることを明らかにした。この知見は,段階的練習が投げ られたときの受けの頭頸部をより固定することに効果が あり,頭部打撲防止のうえで初心者の安全な練習のため に効果的であることを示唆する。

 以上のように,段階的練習を行わない簡易化した背負 い投げ,および段階的練習後の簡易化した背負い投げの 試技における,頭頸部の固定度についての受けの意識の 検討から,目標技能の簡易化および段階的練習法は,片 手保持,両手保持いずれにおいても,初心者の背負い投 げの安全で無理のない練習に効果的であると考えられ る。

 また,頭を打ったかについての質問に対し,段階的練 習を行わない簡易化した背負い投げの試技においては,

片手保持,両手保持それぞれ,頭を打ったと答えた人数 が1名と少数で,段階的練習後の簡易化した背負い投げ の試技においては,試技の片手保持,両手保持において,

頭を打ったと答えたものはいなかった。簡易化した目標 技能および段階的練習を用いた試技において頭を打つ人 数が少ないことを示す知見からも,簡易化した目標技能 および段階的練習の安全への効果が示唆される。なお,

頭を打ったと回答した 2 件については,状況を目視およ び聞き取りにより確認した結果,頭を打ったという状況 は,投げられたとき頭がマットに触れた程度であり,安

全性に問題はないといえる。

 次に,背負い投げの試技における,取りの投げたとき の違和感についての意識を検討した。投げたときの違和 感について人数を分析した結果,段階的練習を行わない 簡易化した背負い投げでは,片手保持は,低違和感の人 数が,高違和感の人数に比べ多いことを明らかにした。

この知見は,背負い投げにおける簡易化した目標技能が,

片手保持において,投げたとき取りの姿勢を安定させ,

頭部打撲防止の観点から初心者の安全な練習のために効 果的であることを示唆する。両手保持は,低違和感と高 違和感の人数に差がみられなかった。したがって,簡易 化した目標技能を用いた背負い投げは投げたときの違和 感に対し,片手保持では効果的であるが,両手保持では 効果的であるとはいえない。

 また,段階的練習後の簡易化した背負い投げは,片手 保持  ,両手保持いずれにおいても,低違和感の人数が 高違和感の人数に比べ多いことを明らかにした。この知 見は,背負い投げにおける段階的練習が,片手保持,お よび両手保持において,投げたとき取りの姿勢を安定さ せ,頭部打撲防止の観点から初心者の安全な練習のため に効果的であることを示唆する。

(2) 目標技能の簡易化と段階的練習

 本研究の知見は背負い投げの簡易化した目標技能の安 全への効果を示唆した。本研究で用いた背負い投げの簡 易化した目標技能は,背負い投げで持ち上げたあと,受 けの足を接地させ,転がすように投げる方法である。背 負い投げは,相手を担ぎあげて大きく前方に回転さて投 げる技である。したがって,本研究で用いた背負い投げ の簡易化した目標技能は,本来の背負い投げの技能や力 動感と本質的に異なるのではないかとの指摘も成り立 つ。しかしながら,本研究における簡易化した目標技能 は,背負い投げの形で相手を持ち上げる運動を用いてお り,初心者の背負い投げ習得の導入として安全で簡単な 練習方法として用いることができると考えられる。

 投げ技の段階的練習について,三戸(2013)は,大 外刈りなど多くの技で低から高の視点で構成することが できることを明かにしている。大外刈りの低から高の視 点での段階的練習法は,全日本柔道連盟(2015)の事 故防止のための練習法にもみられる。しかしながら,三 戸ら(2013)が指摘するように,背負い投げなどでは 片膝の受けを投げることはできず,低から高の視点で段 階的練習法を考えることが難しい投げ技も見られる。

 本研究では,背負い投げを対象にアナロゴンの視点を 取り入れ,はじめ片膝の受けを体さばきで投げ,次に受 けをおんぶで背負う,最後に受けを背負い投げの形で持 ち上げるという段階的練習法を用いた。本研究の知見は,

背負い投げにおけるアナロゴンの視点を取り入れた練習

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の安全への効果を示唆しており,背負い投げなど,低か ら高の視点から段階的練習法を考えることが難しい投げ 技について,練習法を工夫するための示唆を与えると考 えられる。

(3)保持の技術

 投げ技において,頭部の打撲を防止し安全を確保する ために,引き手を保持することの重要性が指摘されてい る(本村,2003:鮫島ら,2006)。三戸ら(2017)は,

引き手保持の方法には片手保持と両手保持があることを 指摘し,大外刈りにおいて,片手保持と両手保持ともに 頭頸部の固定に効果的であることを明らかにした。

 本研究では,三戸ら(2017)による大外刈りの研究 と同様,背負い投げにおいて片手保持,両手保持ともに,

高固定の人数が低固定に比べ多い傾向が見られ,頭頸部 の固定に効果的であることが示唆された。このように,

刈り技系の大外刈りとまわし技系の背負い投げにおい て,同じく片手保持と両手保持ともに頭頸部の固定に効 果的である傾向がみられたことから,多くの投げ技で,

引き手保持の方法として片手保持と両手保持が安全な練 習のために効果的である可能性が指摘できる。

 また本研究において,背負い投げにおける片手保持と 両手保持の頭頸部の固定度を比較すると両者に差はみら れなかった。これに対し,三戸ら(2017)による大外 刈りの研究においては,両手保持が片手保持にくらべよ り固定度が高いことを明らかにしている。これは,刈り 技系の大外刈りが,相手を真後ろに刈り倒すため,強い 回転加速度により頭頸部が後屈し,後頭部を打撲しやす いという運動特性を持つためと考えられる。大外刈りに おいて,極めの局面における強い回転加速度による頭頸 部の後屈を防ぐためには,両手保持の方が片手保持にく らべ受けの頭頸部を支える力が強くなり有利になると考 えられる。

 これに対し,まわし技系の背負い投げは,相手を担ぎ あげて前方に回転させて投げる技で,頭部を打撲する危 険があるのは担ぎあげられた後身体が落下するときであ る。したがって,背負い投げで頭部打撲を防止するため には,掛けから極めの局面において,頭を打たないよう に落下のし方を制御することが重要であるといえ,背負 い投げでは,片手保持と両手保持において,頭頸部の固 定度に差がみられなかったと考えられる。

 両手保持における取りの違和感に着目すると,段階的 練習を行わない簡易化した背負い投げでは,投げたとき 違和感を感じる人数が相当数あるが,段階的練習後の簡 易化した背負い投げの試技は違和感を感じる人数が少な い。この知見は,両手保持の技能を適切に用いるために は練習が必要で,段階的練習は,両手保持の技能を向上 させ,安全のために効果的であることを示唆するといえ

る。両手保持は投げ技で頭頸部を固定するために効果的 であるものの,取りが両手保持の技能を適切に用いるた めには練習が必要であると考えられる。

 両手保持の技能を適切に用いるために練習が必要なこ とを示す知見は,三戸ら(2017)の大外刈りの研究に おいても同様に示され,この両手保持の技能の特徴は,

背負い投げのほか,他の投げ技にも共通している可能性 が指摘できる。両手保持の技能において練習が必要な理 由は,初心者にはやや難易度が高いためと考えられる。

すなわち両手保持は,両手とも握っているため受けの投 げられる力が取りの身体に伝わりやすく,初心者はバラ ンスを崩すなどの影響をうけやすいと考えられる。

5 結論

 背負い投げを対象に,簡易化した目標技能と段階的練 習の安全への効果を検討した。試技は,段階的練習を行 わない背負い投げの試技,および3段階の段階的練習を 行ってからの背負い投げの試技の2条件である。背負い 投げの試技は,足が接地している受けを転がすように投 げる簡易化した技能を用いた。極めの技法は,試技2条 件においてそれぞれ,片手保持と両手保持の2種類を用 いた。被験者は試技後,投げられたときの頭頸部の固定 度,および投げたときの違和感について,質問紙に回答 した。

 質問紙回答における受けの頭頸部の固定度の人数の偏 りを分析した結果,段階的練習を行わない簡易化した背 負い投げ,および段階的練習後の簡易化した背負い投げ において,片手保持,両手保持ともに人数の偏りが有意 で,高固定の人数が低固定に比べ多い傾向がみられた。

目標技能の簡易化と段階的練習法は,背負い投げで投げ られたときの頭頸部の固定に効果があるといえ,初心者 の練習の安全のために効果的であることが示唆された。

受けの頭頸部の固定度の平均値について分散分析を行っ た結果,段階的練習の主効果が有意傾向であった。片手 保持,両手保持ともに,段階的練習後の簡易化した背負 い投げは,段階的練習を行わない簡易化した背負い投げ に比べ平均値が小さい傾向がみられた。段階的練習は頭 頸部固定に効果的であるといえ,初心者の練習の安全の ために効果的であることが示唆された。

 試技において受けが頭を打ったかについては,段階的 練習を行わない簡易化した背負い投げにおいて,片手保 持,両手保持それぞれ,頭を打ったと答えた人数が1名 であった。段階的練習後の簡易化した背負い投げの試技 においては,片手保持,両手保持いずれも,頭を打った と答えたものはいなかった。試技において,頭を打った 人数は極めて少数であるとともに,打った状況について は,口頭および目視により安全性に問題がないことを確

(7)

認した。

 質問紙回答における取りの投げたときの違和感につい て人数の偏りを分析した結果,段階的練習を行わない簡 易化した背負い投げにおける片手保持は人数の偏りが有 意で,低違和感の人数が高違和感にくらべ多い傾向がみ られた。両手保持は人数の偏りが有意ではなく,低違和 感と高違和感の人数に差はみられなかった。したがって,

簡易化した目標技能を用いた背負い投げは投げたときの 違和感に対し,片手保持では効果的であるが,両手保持 では効果的であるとはいえなかった。

 段階的練習後の簡易化した背負い投げでは,片手保持,

両手保持いずれにおいても,人数の偏りが有意で低違和 感の人数が高違和感の人数にくらべ多い傾向がみられ た。したがって,段階的練習法は投げたときの違和感に 対し,片手保持,両手保持ともに効果的であるといえ,

初心者の練習の安全のために効果的であることが示唆さ れた。

 本研究の知見は,簡易化した目標技能と段階的練習の 初心者の背負い投げの安全な練習への効果を示唆し,柔 道投げ技における初心者の安全で簡便な練習法の工夫や 改善に貢献すると考える。

 今後の課題としては,被験者や実験デザインの工夫に より,さらに目標技能の簡易化や段階的練習法の安全へ の効果について検討を深めることができると考える。

文 献

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