• 検索結果がありません。

道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health,58,31−34(2008)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health,58,31−34(2008)"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub. Health,58,31−34(2008)

2008年の北海道における麻しん報告の動向 一全数報告と旧定点医療機関報告の比較一

   Epidemiological Survenlance for Measles in Hokkaido tn the Year 2008

−Evaluation of Case Reports from Sentinel Clirdcs and Hospitals hl Comparison          with Al Cases by the Mandatory Notification一

中野 道晴   横山 裕之   地主     長野 秀樹   岡野 素彦

Michiharu NAKANo, Hiroyuki YoKoYAMA, Masaru JD可usHI,

     Hideki NAGANo and Motohiko OKANo

Key words:epidemiological surveilance(発生動向調査);measles(麻しん);sentinel chnics and      hospitals(定点医療機関);mandatory notification(全数報告)

 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する 法律(以下,感染症法)」で五類感染症に位置付けられて いる麻しんは,2006年秋の関東地方の小流行1 2)に続き,

2007年には全国的にその増加傾向が認められ,北海道でも 室蘭,滝川,紋別保健所管内などで報告数の増加をみた3).

 従来,麻しんにおける発生動向の把握は,定点報告(人 口などをもとにして地域ごとに定められた数の指定医療機 関による定期的な患者報告)として実施されてきた.小児 麻しんは,小児科の定点医療機関(道内で143カ所)から,

また15歳以上で症状や所見から当該疾患が疑われ,検査室 診断をされた場合は成人麻しんとして,基幹定点医療機関

(23カ所)から報告されていだ).

 しかし,全国の麻しん発生状況⑯及び北海道が独自に行っ た積極的疫学調査7)から,15歳以上の麻しん患者の報告が 増え,その感染状況全体を十分に把握することが,これま での小児科定点を中心とする報告体制からは困難であるこ

とが判明した.

 一方,世界保健機構(World Health Organization:1 WHO)を中心とする国際的な麻しん撲滅運動8)とも連携

し,感染症法施行規則の改正が行われ,2008年1月1日よ り,それまでの定点報告から全数報告(全医療機関におけ る医師の診断を基にする報告制度)一へとサーベイランス体

制が強化された9).

 全数報告となった本年は,札幌市(以下,札幌市,旭川 市,小樽市,市立函館は政令市保健所),滝川,千歳保健 所管内などで報告数の増加を認め,第20週(2008年1,月1 日〜5,月18日)までに全道で1,107人,特に第17週には125 人と最多の報告数であった.またその過半数が15歳以上の

成人麻しん患者であった.

 これまでに感染症発生動向調査において,定点報告がそ れぞれの地域における全体の流行状況を反映しているか否 かについて検討した報告1α11)は少ない.今回,著者らは昨 年12月まで定点として指定されていた医療機関(以下,旧 定点)における報告が,全数報告とどのように関連してい るのかに関し,本年第1〜20週の内容を元に解析し,感染 症発生動向調査における定点報告制度の評価を行った.

方 法

 基本的な患者情報は,行政総合ネットワーク(LocaI

Gove㎜ent Wide盈ea Ne圃rk:LGW脚騰を通

じて,厚生労働省が所管する感染症サーベイランスシステ ム(National Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases:NESID)の中央データベースから,2008年第 1〜20週の全数報告帳票ファイルをダウンロードしユ2),使 用した.このファイルには全数報告対象感染症の患者情報 として,保健所管内ごとに報告した医師が所属する医療機 関名,診断日,臨床・検:査診断の区別,患者の性別,年齢 別報告数などが記載されている.このファイルから Microsoft社のAccess, Excelを用いて麻しん報告分の情 報を抽出した.これを用いて保健所ごとに毎週の全数報告 数(以下,〈総数〉),旧定点医療機関からの報告数(以 下,〈旧定点〉),成人麻しんの報告数(以下,〈成人〉)

を集計,図表化した.またそれぞれの報告の相関について,

統計解析ソフトであるエス・ピー・エス・エス社のSPSS Base Systemを用い,ノンパラメトリックな変数間の関 係を示すSpea㎜anの順位相関係数を算出し,評価した.

一31一

(2)

表1 2008年第1〜20週の北海道における麻しん報告数 表2 2008年1〜20週の北海道内保健所管内別麻しん報告数    総数   旧定点  成人  旧定点/  成人/

週    (人)   (人)   (人)  総数(%)・総数(%) 保健所 総数  旧定点  成人  旧定点/ 成人/

(人)  (人)  (人) 総数(%)総数(%)

 1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 合計

 6  7  4  3 14 10 11 11 12 15 12 12 16 19 22 48 38 42 23 35 360

 1  9  4 10 41 26 45 21 25 21 23 22 34 22 34 74 94 57 40 70 673

75.0 46.7 33.3 15.8 18.7 18.9 18.6 33.3 34.3 46.9 30.8 37.5 28ユ 42.2 40.7 46.6 30.4 41.2 24.5 30.4 32.5

12.5 60.0 33.3 52.6 54.7 49ユ

763

63.6 71.4 65.6 59.0 68.8 59.6 48.9 63.0 71.8 75.2 55.9 42.6 60.9 60.8 総数;全数報告数,旧定点;旧定点医療機関からの報告数,

成人;15歳以上の報告数(臨床診断例を含める)

札幌市   498 滝川    120 千歳    103 旭川市   81 小樽市   55 江別    35 紋別    31 岩見沢   29 苫小牧   29 岩内    28 北見    28 室蘭    17 釧路    11 名寄    10 帯広    7 市立函館  6 深川     6 網走    6 静内    2 富良野   2 浦河    1 倶知安   1 稚内    1

100 68 40 21  4  8 30 19 11 15 15 12  4  1  2  0  6  1  2  1  0  0  0

295 65 41 51 43 28 16 13 21 26 16 15 11 10  3  6  4  4  2  1  0  1  1

20ユ 56.7 38.8 25.9  7,3 20.0 96.8 65,5 37.9 53.6 57.7 70.6 36.4 10.0 28.6  0.0 100.0 16.7 100。0 50.0  0.0  0.0  α0

59.2 54.2 39.8 63.0 78.2 80.0 51.6 44.8 72.4 92.9 57ユ 88.2 100.0 100.0 42.9 100.0 66,7 66.7 100.0 50.0  0.0 100.0 100.0

結果及び考察

 表1は北海道における2008年第1〜20週までの麻しん総 数,旧定点及び成人の報告数である.1週間の報告が!00 人を超えたのは第16〜18週と第20週で,第17週が125人と 期闇中最多であった.なお,総報告数の60.8%が15歳以上 の成人であった.また表2に各保健所管内別の報告数を示 した.第20週までに全道30保健所管内のうち,23管内から 報告があり,このうちく総数〉が20人以上でく成人〉の比 率が高いのは,小樽市,江別,苫小牧,岩内で,報告の少 ない管内でも6管内ではすべての報告が〈成人〉であった.

 成人麻しんの報告義務がある基幹定点医療機関は,全道 の保健所管内のうち,23管内のみに設定されているにすぎ ない.このため一昨年から症例が増えている成人麻しんの 患者数の把握には不十分であることが指摘されていた.表 1で示したように本年は,20週のうち15週でく成人〉が半 数を超えていた.昨年までの小児科を中心とした定点報告 の体制のみでは,このような症例の多くが報告されなかっ たと考えられる.また,昨年まで北海道で実施されていた 積極的疫学調査による定点医療機関以外からの報告調査η においても,散発的な事例では把握が困難であったと思わ

れる.

 報告数が30を超えた7管内のく総数〉,〈旧定点〉及び く成人〉の各週別推移を図1に,また報告数が20を超えた 11管内の各報告間の相関係数(総数が0の報告は除外した.)

を表3に示した.〈旧定点〉の推移は,全道を含めてほと んどの管内でく総数〉とよく相関し,〈旧定点〉が地域の 流行状況を反映していたことが示唆された.特に滝川,千

総数;全数報告数,旧定点;旧定点医療機関からの報告数 成人;15歳以上の報告数(臨床診断例を含める)

札幌市,旭川市,小樽市及び市立函館は政令市保健所

表3 総数一円定点一成人血直面の相関 総数一   P値   総数一   P値 旧定点  (有意確率) 成人  (有意確率)

全道   0.835**

札幌市  0.710**

滝111     0.890**

千歳   0.845纏 旭川市  0.627**

小樽市  0.422 江別   0.084 紋別   0.976**

岩見沢  0.565 苫小牧  0.730*

岩内   0.595 北見   0.618*

<0.001

<0。001

<0。001

〈0.001  0.009  0.345  0.785

〈0.001  0.07  0.04  0ユ2

 0.011

0.980**

0.950**

0.925**

0.685**

α899**

0.982**

0.919牢*

0.819*宰 0.229 0.937**

0955**

0.297

<0.001

<0.001

<0.001   0.1

〈0.001

<0.001

<0.001  0.002  0.498  0.001

〈0.001  0.264 Speamlan順位相関係数(総数が0の報告は除外した)

**

F1%水準で有意,*=5%水準で有意

総数;全数報告数,旧定点;旧定点医療機関からの報告数 成人;15歳以上の報告数(臨床診断例を含める)

歳,紋別におけるく総数〉とく旧定点〉では,いずれも高 い相関があり,〈旧定点〉が地域の動向とよく一致してい た.しかし小樽市,江別,岩見沢,岩内の管内では,有意 な相関を認めず,〈旧定点〉が麻しん流行の動向を必ずし も反映していないことが示された.

 またく総数〉一〈旧定点〉とく総数〉一〈成人〉の相関 を比較すると,千歳,紋別以外の管内では,むしろ成人麻 しんの発生例の動向を反映し,小樽市,江別,岩内では

一32一

(3)

140 120 100 80 60 40 20 0

全道

ρ ・ ρ

〃、     、

f o Or

O  o  、  ,

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 1213 1415 16 17 18 1920

一一 香[一総数+旧定点■・O・・成人

30 25 20 15 10

5

0

滝川

噛馳

鴨 

,o

1 2 3 4567891011121314151617181920

+総数+旧定点一つ・・成人

14 12 10 8 6 4 2 0

1234567891011121314151617181920

    +総数+旧定点・・O・・成人

8 7 6 5 4 3 2 1 0

1234567891011121314151617181920

   +総数 +旧定点 ・・o・・成人

70 60 50 40 30 20

て0

0

札幌市

o

 、 e σ

O O OG  馬O

1 2 3 4567891011121314151617181920

+総数 +旧定点儒・O・・成人

25

20

15

10

5

0

千歳

○  、 f 、○

、○ ○ め

1 2 3 4567891011121314151617181920

+総数+旧定点日つ・・成人

25

20

15

10

5

0

小樽市

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1415 16 17 18 1920

+総数+旧定点・《:)一・成人

8 7 6 5 4 3 2 1 0

紋別

f

1234567891011121314151617181920

    +総数一一△一一旧定点 ・O.・成人

図1 北海道内の保健所管内別麻しん報告の推移 2008年高1〜20週(2008年1月1日〜5月18日目

総数;全数報告数,旧定点;旧定点医療機関からの報告数,

成人;15歳以上の報告数(人)

一33一

(4)

表4 保健所管内人ロと定点設置数

保健所 管内人口 小児科(基幹) 人口/定点数

(万人)   定点数    (万人)

文 献

全道 札幌市 滝川 千歳 旭川市 小樽市 江別 紋別 岩見沢 苫小牧 岩内 北見

565.7 186.8 13.0 21.8 35.7 14.4 20.9  8.4 19.9 21.8  2,6 17.1

143(23)

 37(1)

 4(1)

 5(0)

 8(1)

 4(1)

 5(1)

 3(1)

 5(1)

 5(1)

 ユ(0)

 4(1)

3.4 4.9 2.6 4.4 4.0 2.9 3.5 2.1 3.3 3.6 2.6 3.4

〈総数〉一く成人〉の相関のみが有意であった.これらの ことからく成人〉が多い場合には,〈旧定点〉は全体の発 生状況との相関が低くなることが示された.

 表4にそれぞれの管内人口と定点医療機関設置数を示し た.滝川,小樽市,紋別及び岩内において北海道の人口比 の平均以上の定点医療機関が設置されている.麻しんの発 生動向においては,滝川,紋別ではく旧定点〉が発生動向 をよく反映していたが,小樽市,岩内ではく旧定点〉のみ では地域における動向の正確な把握は困難であった.

 今回の検討でみられたように,定点医療機関からの報告 は,通常,地域の感染症発生動向を反映すると思われるが,

対象年齢以外の患者が多数発生した場合には,動向把握が 不十分となり,限界があることが示唆された.

 麻しん以外にも,これまで主に小児に発症する感染症と されていた百日咳などでも,近年,成人例が増えており13),

今後も定点医療機関からの報告がその時の地域の感染症発 生動向を正しく把握できているかどうかを注意深く判断す ることが必要と考えられた.

1)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  報, 27(9), 224−228 (2006)

2)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  報, 28(9), 239−252 (2007)

3)地主 勝,長野秀樹,工藤伸一,横山裕之,申野道晴,岡   野素彦,田邊寛樹,山口 亮,矢野公一:病原微生物検出   情報,29(5),128−129(2008)

4)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律   第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出i基準,2006年   4月1日一2007年12月31日

5)多屋馨子:病原微生物検出情報,29(7),189−190(2008)

6)多屋馨子,山本久美,佐藤 弘,岡部信彦:平成19年度厚   生労働科学研究費補助金(振興・再校感染症研究:事業一ウイ   ルス感染症の効果的制御のための病原体サーベイランスシ   ステムの検討)研究報告書,厚生労働省,東京,2008,pp.

  75−131

7)横山裕之,中野道晴,長野秀樹,地主 勝,田邊寛樹,岡   野素彦=道衛研所報,58,27−30(2008)

8)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情   報,28(9),261−263(2007)

9)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律   施行規則の一部を改正する省令(平成19年厚生労働省令第   159号,平成19年12月28日公布,平成20年1月1日施行)

10)神谷信行,灘岡陽子,池田一夫,藤谷和正,広門雅子,柳   川義勢,諸角 聖:東京健安研セ年報,56,375−378

  (2005)

11)灘岡陽子,神谷信行,池田一夫,藤谷和正,広門雅子,柳   川義勢,諸角 聖:東京健安研セ年報,56,379−383

  (2005)

12)横山裕之,中野道晴,本間 寛:道警研所報,56,45−48   (2006)

13)蒲地一成,豊泉裕美,韓 賢子:病原微生物検出情報,29

  (3), 65−66 (2008)

一34一

参照

関連したドキュメント

参考 日本環境感染学会:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第 2 版改訂版

• 1つの厚生労働省分類に複数の O-NET の職業が ある場合には、 O-NET の職業の人数で加重平均. ※ 全 367

バドミントン競技大会及びイベントを開催する場合は、内閣府や厚生労働省等の関係各所

MPの提出にあたり用いる別紙様式1については、本通知の適用から1年間は 経過措置期間として、 「医薬品リスク管理計画の策定について」 (平成 24 年4月

宮崎県立宮崎病院 内科(感染症内科・感染管理科)山中 篤志

は、これには該当せず、事前調査を行う必要があること。 ウ

○ 「健康診断個人票」(様式第2号)の裏面の「業務の経歴」欄には、石綿に係る経歴 のほか、有機溶剤中毒予防規則(昭和 47 年労働省令第 36 号) 、鉛中毒予防規則(昭和

② 特別な接種体制を確保した場合(通常診療とは別に、接種のための