Proteolytic clostridiaの凝集反応
〔1〕 Cl. bifermentansとCl. sordelliiの凝集反応
金沢大学医学部微生物学講座(主任 西田尚紀教授)
経 田 政 人
(昭和42年12月1日受付)
C1.一bifermentansとC1. sordelliiが同一species か否かについて種々論議が行なわれて来た.このこと については最近Brooks 1)らは精細な綜説を書き,更 に数多くの両speciesの菌を使って実験を行ない,
両者が別のspeciesとさるべきものであるという結
論を述べた, これに対して,Nishida et al 2), Ta・
mai eta13)は両者は胞子形成能が異なるだけで同一 speciesに属するものであると述べ,且Cl. sordel・
1iiのsubstrainの中から加熱選択により胞子形成 能の良いものを選iぶことによってC1. bifermentans の性状に一致するものを選ぶごとができたと述べた.
私は彼らの主張を更に免疫学的に確かめるために本研 究を行なった.従来この両者閥には共通抗原があるこ とは多くの学者によってなされているが4)5),そのす べてはC1. bifermentansとCl. sordelliiがそれ ぞれ特異の抗原を保有していることを述べている.
従って加熱耐性株を選ぶことによって得られたC1.
bifermentansの性状を持つCl. sordelliiが果して 抗原的にもCl. bifermentansに一致し, C1. sord・
elliiの抗原要素を喪失するか否かを確かめるべく実 験を行なった.
実験材料及び実験方法 1.使用菌株
Cl. bifermentans 12株, C1. sordellii無毒株(N
−P)6株,C1. sordellii有毒株(P)10株を使用し た.CI. bifermentans No.302, No.315;No.317,
No,7031, No.7037, No.7039は著者の教室で分離 同定された株であり,No.506,は英国のNational Collection of Type Cultures(NCTC)より分与 されたものであり,No.7222, No.6800, No.1340,
No. SJ3, No. SJ2株はHuang博士(香港大学)よ り分与された菌株である.Cl. sordellii無毒株No.
6927,1621,1623,1619,1620,6929株は,すべて英 国のWellcome Research Laboratoriesの1.
Batty博:士より送付されたものである. Cl. sordellii 有毒株No.4707,4708,4709,3703,1733,1732,
1694株はHuang l専士より送付されたものである.
SJ4株は前述のSJ2, SJ3と同様にC1. sordellii No.82株のsingle cell isolate 12)で英国Leeds大 学のK.1.Johnstoneの好意により得られた菌株であ り,Huang博:士を経て入手した. No.7222 R株は,
Cl. sordellii無毒株=7222を培養し,その免疫の経過 中に死んだ家兎の心臓血から再分離された有毒性変種 である,これもHuang博士より入手した。(Huang
1959).
以上の使用菌株すべては,当教室において再検討し た.コロニーの形態についてはZeissler 13)の血液寒 天培地の平板になすり,嫌気的に培養観察し,生物学 的性状14)15、については,K. Tamai et al 3)によっ て,両者の差異点として認められたウレアーゼ反応,
マンノース分解,インドール産生,ゲラチナーゼ活性 を試験した.また,毒性と胞子形成能をも測定した,
この方法については,S. Nishida et al(1964)2)に よった.
皿.抗血清の作製法
免疫家兎は約2.5〜3.Okgのものを使用した.免 疫のための菌株は,その旧株をcooked meat broth に37。C24時間培養後,1%glucose加10%(V/V)
cooked meat broth(50 ml入り,スクリウドキャッ プ付投薬ビン)に移植し,18〜24時聞,37。Cで増菌 した.培地のペプトンとしては,ポリペプトン(大 五,大阪)を使用した.培養後,肉かすを混じないよ
う注意して上清液を採り,滅菌した布を通して濾過 後,遠心(5000rpm 20分)し,滅菌生食水で1回洗 浄した.沈渣に0.4%ホルマリン生食水を加え,Bro・
A琴glutination of Proteolytic Clostridia(1)Agglutination Qf C乙∂ゲθ7甥6初απεand C1・30κθ1〃ゴ, M撹sato.Tsuneda. Department of Bacteriology, School of Medicine,
Kanazawa University.
wn s opacity tube No.516)の混合に合せて希釈し た.免疫法はWalker(1963)10)の方法に従い家兎に 注射を繰返した.:最終の注射後,6日目に試験的採血 を行ない,凝集価が5000単位以上を示した時,全採血 を行なった.得られた血清は560C30分間不活性化後,
0.02%マーゾニン(武田)を加え,40Cにて保存し
た.
皿.凝集反応
生食水で抗血清を倍々希釈し抗原を希釈血清量と等 量に加えた.この場合の抗原の浮遊液は,前述の家兎 の免疫の際使用したものと等しい濃度の菌浮遊液を使 った.抗血清と抗原を混じ,56。C 2時闇,水槽に保 った後,一夜室温に放置し,翌日凝集価を測定した.
凝集価測定には凝集鏡を用い,生食水と抗原の自家凝 集反応は常に確かめた.
IV.吸収試験
新しく作製した濃い濃度の菌浮遊液(溶媒は生食水)
4.5m1に,0.5mlの被吸収血清を加え,56。C 24時 聞放置した.それを遠心(5000rpm,20分)後,上 清を無菌的に採取し,沈渣を除去し,更に等量の菌浮 遊液を加え,56。C24時間放置して吸収した.
V.加熱耐性株の選択
加熱耐性株を得る目的にて,Cl. sordellii No.
1734,No. SJ4, No.7222 R,の培養を行なった.10
%cooked meat brothに,37。C 24時間培養後,
80。C 10分,90。C 30分,100。C 10分を定めて加熱し た.加熱培養液を直ちに1%glucose加10%(V/
V)cooked meat brothに移植し,370C24時間培養 した.良く発育を呈した時,前述の種々の性状を検査 し,10%cooked meat brothで保存した.これらの 加熱耐性株から得られた抗原の交差凝集反応は,Cl.
bifermentansとC1. sorde11ii両者の抗血清に対し て行なった.
実 験 結 果 1.交差凝集反応
CL bifermentans, C1. sordellii(N−P), C1.
sordellii(P)の各々4株を,抗血清作製のために選 択した.各々の抗血清と,C1. bifermentans 12株,
C1. sordellii(N−P)6株, C1. sordellii(P)8株 の抗原とで,前準備としての交差凝集反応を行なっ た.結果は表1に示す通りであった.
C1. b玉fermentansは抗原的に単一でなく亜型が存 在するかの如く思われ,使用した菌株の凝集価をみる と,Cl. bifermentans:No.506,302の抗血清と,
No,315,317の両者間には,かなりの被凝集力の高
が認められた.また,C1. sordellii(N−P)株の抗血 清とは中間的に,CI, sordellii(P)株とは最も低い 凝集価を示すことが判明した.
C1. sordellii(N−P)株の殆んどすべては, Cl.
sordellii(N−P)株の抗血清とは最も強く凝集し,
C1. sordellii(P)株の抗血清とはこれより弱く, Cl.
bifermentansの抗血清とは最も低い凝集価を示し た. ただしCl. sordellii No.6927株のみは例外な 成績を示した.
Cl. sordellii(P)株は, Cl. sordellii(P)及び
(N−P)株の抗血清とは,よく凝集し,C1. b ifermen・
tansの抗血清とは低い価で凝集するか,或いは全く 凝集はしなかった.
以上の成歯からC1. bifermentansとC1. sorde1・
lii有毒株の間には,抗原的に僅かの共通点が存在す るとはいえ,多くの研究者(Tataki and Heut,1953 8);Huang,19599);Walker,196310))らが示した ように,両者間には特有のの抗原があることが予想さ
れた.
皿.加熱選択と凝集価の変化
加熱選択と凝集価の変化との相互関係については,
表2に示した.Tamai et a13)がCl. sordelliiか ら加熱耐性株を選ぶことによって,Cl. bifermentans 様の株を得ることができたと述べたが,この研究にお いても,加熱選択という基礎の上で,C1. sordellii 有毒株No.1734, No. SJ4, No.7222 Rの加熱耐性 株が生物学的性状,毒性,胞子形成能において変化 が生ずると同時に,凝集反応の価もまた,Cl. bifer・
mentans様に変ることを認めた.
Strain 1734/90, SJ4/90株は, Cl. sordellii No 1734,No. SJ4を90。C30分加熱に耐えて発育して来 た加熱耐性株であり,この菌株はその毒性を品詞に失 うのみならず,その生物学的性状もまた,CI, bifer・
mentansのようになった. この加熱耐性株は, C1.
bifermentansの血清とは,すべて高い値で(1:5120)
凝集し,その原論血清とは低い価(1:20to 1:80)で 凝集するにすぎなくなった.これら加熱耐性株は,他 のCl. sordellii有毒株にに対しても,原株よりも低 い凝集価で凝集した.原株を80。C 10分加熱して後,
再発育させたC1, sordellii 1734/80, SJ4/80,7222 R/80の低加熱耐性株は,毒性には変化なく,その生 物学的性状,胞子形成能は,C1. sordelliiとCl.
bifermentansの中間であり,コロニー形態は,殆ん ど後者に類似していた.これらの凝集価もまた,C1.
sordelliiとCl. bifermentansの中間値を示した.
C1. sordellii No.7222 Rの動態は,幾分特有の面
があった.例えば,その毒性と生物学的性状は,Cl.
sordelliiの毒性株と全く一致し,胞子形成能は, C1.
sordelliiよりむしろC1. bifermentansに近かっ た.Cl. bifermentans様の株は,100。C 10分加熱し て得た株(7222R/100)のみであり,この菌株は800C 10分,或いは90。C30分の加熱を繰返し行っても・なお,
C1. sbrdelliiの性質の多くを保持していた株である.
しかしながら,ひとたびCI.bifermentans様菌株を 選択したならば,そのsubstraihはC1, biferlhen・
tansの抗血清に対して安定して被凝集性を示した.
皿.交差吸収試験
Cl. sordellii No.1734株と,その加熱耐性株1734
/90(生物学的性状の上でC1. bifermentansに一致 しているもの)の抗血清を準備し,抗原として両菌株
の他になおCl. bifermentans No.506を用いて,表 3における原案によって吸収試験を行った.
結果に,CL sordellii No.1734の抗血清は1734/
go株の抗原により,ある程度吸収されるが, c1. bi・
・fermentans No.506によっては吸収されないことを 示した.それに反して,1734/90株の抗血清は,毒性 のある原株の抗原では吸収されないが,しかし,CL bifermentans No.506の抗原では完全に除去された.
類似の結果は,C1. sordellii No. SJ4, N(L 7乞22R株 と,各々,その加熱耐性株SJd/90,物22「R/100を使 用して実験を行なった時得られた.SJ4/90と7222 R
/100の抗血清における凝集素は,その旧株での吸収 試験後も影響なくi残留レ,C1, bifermenta照No.506 フ抗原によって完全に吸収された.
表1 C1. bifermentansとCl, sordelliiの交差凝集反応 抗 原
(No.) 使用菌株
抗 血 清
C.bifermentans
506. 302. 315. 317
C.bifermentans i 7222
7039
……
Ii… 脚SJ3 315
_愚一
讐
7037
C.sordellii(N−P)
6927. 1619. 1620. 6929
3十* i 3十 i
…∵…亨…1罫
i i
_∵一∵.■
2+i2+
1+ i 1+
C…
ソ(N−P)・+i羅
}ll1 6929 C.sordellii(P)
1734 4707 4708 4709 3703 1733 1732 1694
・+ 堰E+
1+ i2+
1十 1十
2十
2十
2十
2十
±
3十
3十
「2十
2十
℃.sordellii(P)
1694. 1734. 1732. 3703
1十
1十
1十、
1十
±
2十
2十.
2十
3十
(N−P);無毒株,(P);有毒株
*凝集価;3+;1280〜5120,2+;320〜640,1+;80〜160, ±;20〜40
考 察
TissierとMartellyによって,1902年にC1. bi・
fermentansが分離され,1922年にSordelliによっ てC1. sordelliiが分離されて以来この両者を同一・
speciesに属さすべきか否かについて分類学的見地か ら論争が続いてきた.現在Bergey 17)は両者を同一 speciesと考えているのに対し, Brooks and Epps1)
(1959),Prevot 18), Willis 19), Cowan 20)らの欧 米の学者は別種とすべきであるとする立場をとってい る.しかしながら,1964年Tamai et al 3), Nishida et a12)らがC1. sordelliiから加熱耐性菌株を選ぶ
とC1. bifermentansの生物学的性状に一致するも のが得られると述べて以来,この論争は解決点に達し たように思われる.著者の研究は,C1. sordelliiか ら得られたCl. bifermentansの性状を有するものが Cl. befermentansと交差凝集を示し,且,吸収反応 によっても完全に同一菌を得られることを述べたもの で,この点先のNishida, Tamaiらの主張を完全に うらづけたものと信ずる.
MandiaとBruner 21)は非加熱のホルマリン抗原 を使用した凝集反応により,proteolytic clostridia の血清学的反応では,ホルマリン加抗原を用うべきで 加熱抗原を用うべきでないと述べたので,亭亭では
表2 Cl. sordellii原株及びその加熱耐性株の交差凝反応
抗 原
抗 血
清
C.bifermentans
5・6・13・2・
1734原株 1734/800C*
1734/900C来
SJ4原株
SJ4/80。C SJ4/900C
7222R原株 7222R/80。C 7222R/90。C 7222R/900Cx2
7222R/100。C
※*
44 640 5120 20 320 512000000 2428
80 320 5120 80 1280 5120
0000024428
3・5・1317・
80 320 5120 80 1280 5120
0
40 40 20 2560
80 2560 5120
80 1280 5120
0
40 40 20 2560
C.sordellii(N−P)
6927.
320 5120 640 320 1280 80 160 320 320 640 20
1619・1・62・・
320 2560 160
320 640 320 20 80 160 1280 40
1280 5120 640 1280 5120 640 1280 2560 640 2560 40
6929.
640 2560 160 640 1280 640 320 320 160 320 80
C.sordelli(P)
・694・[・732・
2560 320 80 5120 640 160 1280 320 320 320 40
640 640 320 1280 320 320 640 640 320 1280 40
1734.
2560 2560 640 1280 640 320 1280 2560 1280 1280 40
3703.
640 80 80 2560 80 80 1280 80
0
20
0
*加熱耐性株を選ぶときに用いた温度を示す. 縣 凝集価
表3 C1. sordellii No.1734株の交差吸収試験 吸 収 血 清
抗 血 清「吸 収 原
C. sordellii
No.1734
C. sordellii No.1734/90QC
C.sordellii No. 1734/900C
C。bifermentans No.506
C,sordellii 1734 No.
lC。 bifermentans l No.506 C.bifermentans
No,506
抗 原
。謂瑠 1論灘4謬1と。
5120*
320 2560 160〜320 40
160 0
640 0 0 5120 2560 0 5120
C.bifermentans No.506
0 0 0 5120 2560 0 5120
*凝集価
加熱抗原については検索は行なわなかった.但し,
Huang 9)やWalker lo)は煮沸した加熱抗原を用い ているが,著者の成績と矛盾するような結果を出して いない.
かくてCl. sordelliiの耐熱株を選んで,ここから 完全にCI. bifermentansに一致した株を得ること ができることが判明したが,しかしなお且,私の実験 中にC1. sordellii菌の中にC1. bifermentansが 混在してきたのではないかという疑いが残るかも知れ ない.しかし各々のC1. sordelliiを加熱して常に C1. bifermentansのみが混入してきて他のclostri・
diaが混入してこないとは考えられぬことであり,ま たこの実験で用いたsingle cellからのCl. sorde1・
1iiからC1. bifermentansを得ているわけであるか ら,この点の疑いはないものと信ずる.
結 論
C1. bifermentans 12株, Cl. sordellii無毒株6 株,C1. sorde11ii有毒株9株を使用し,交差凝集反 応並びに吸収試験を行ない,次の結論が得られた.
C1. bifermentansとCl. sordelliiの交差凝集反 応の問には,明らかな差異が認められ,それぞれの特 異抗原が認められた.但しC1. sordelliiの加熱耐性 株を選択して,その性状が,Cl. sordellii無毒株,
或いは,C1. bifermentansのそれに一致するに至っ たとき,C1. bifermentansの抗血清と高い価で凝集 し,逆に原抗血清とは低い凝集価を示した.なおまた 収吸試験の上でも完全にC1, bifermentansと一致 することが明らかにされた.
稿を終るに臨み,終始御懇篤なる御}旨導並びに御校閲を賜った 恩師西田尚紀教授に衷心より感謝の意を表します.また菌株の分 与をうけたWellcome Research Laboratoriesの1. Batty 博士,香港大学のHuang博士に感謝致します.なお,絶えず御 助力,御支援下さった細菌学数室の玉井健三博士並びに諸先生に 深く感謝の意を捧げます.
文 献
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Abstract
Immunological correl;itions between Cl. bijermentans and Cl. sordellii were investig}ted with use of 12 strains of Cl. bijeermentans and 6 nonpathogenic and 9 pathogenic strains of Cl. sordellii. Distinctive species‑specific antigens were observed in each of both species. However, Cl. sordellii strains, when committed to heat‑selection and recovered from heating at 90 C for 10 or 30 min, turned out to exhibit the agglutinability approximate to that of Cl. bilf7ermentans against the antisera of Cl.bijermentans and, on the contrary, to lose their own species‑specific antigen. This "result was also confirmed‑ by absorption test.