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Vol.51 , No.2(2003)002王 頌「浄源の『不真空論』に対する華厳的な捉え方 -「不真空」と「真心」の解釈について-」

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Academic year: 2021

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(1)

﹁不 真 空 ﹂ と ﹁真 心 ﹂ の 解 釈 に つ い て ・

浄 源 の ﹃ 肇 論 ・ 不 真 空 論 ﹄ に 対 す る 注 疏 は 、 色 々 の と こ ろ で 彼 の 教 学 の 特 徴 が 顕 れ て く る の で あ る の が 、 こ こ で は 、 彼 の ﹁不 真 空 ﹂ と ﹁真 心 ﹂ の 二 つ の 概 念 に 対 す る 捉 え 方 を 取 り 上 げ て 、 分 析 し て い き た い の で あ る 。 先 ず 、 ﹁不 真 空 ﹂ に つ い て 、 ﹃ 不 真 空 論 ﹄ に は 次 の よ う な 言 葉 が あ る 。 尋 夫 立 文 之 本 旨 者 、 直 以 非 有 非 真 有 、 非 無 非 真 無 。 欲 言 其 有 、 有 非 真 生 。 欲 言 其 無 、 事 象 既 形 。 象 形 不 即 無 、 非 真 非 実 有 。 然 則 不 真 空 義 、 顕 於 茲 。 故 放 光 云 、 諸 法 仮 号 不 真 、 譬 如 幻 化 人 、 非 無 幻 化 人 、 幻 化 人 非 真 人 也 。(1) 言 う ま で も な く 、 僧 肇 の 原 文 に 見 ら れ る ﹁有 ﹂ と ﹁無 ﹂ は 一 対 の 概 念 と し て 対 立 さ せ て 、 あ ら ゆ る 物 が 真 の 物 で は な く 、 そ の 本 性 が も と も と 空 で あ る こ と を 示 す も の で あ る 。 こ れ ら の 僧 肇 の 原 文 と 次 の 唐 代 の 元 康 の 注 釈 文 と を 合 わ せ て み れ ば 、 僧 肇 の 立 場 を 明 確 に 理 解 す る こ と が で き る 。 (2) 諸 法 虚 仮 、 故 日 不 真 。 虚 仮 不 真 、 所 以 是 空 耳 。 印 度 學 佛 教 學 研 究 第 五 十 一 巻 第 二 号 平 成 十 五 年 三 月 要 す る に 、 諸 法 の 虚 無 性 を ﹁不 真 ﹂ と い い 、 そ の 本 質 を 空 と 把 握 し 、 そ れ は 、 ﹁不 真 空 ﹂ と い う 。 上 掲 ﹃ 不 真 空 論 ﹄ の 原 文 に 対 し て 、 浄 源 は 次 の よ う に 解 釈 し て い る 。 ① 直 以 非 有 非 真 有 、 非 無 非 真 無 。 非 不 也 。 演 義 云 、 以 不 不 之 、 故 云 不 真 空 。 (令 模 紗 ・ 不 真 空 ) ② 幻 有 即 是 不 有 有 、 真 空 即 是 不 空 空 。 不 空 空 故 名 不 真 空 、 不 有 有 故 名 非 実 有 。 非 空 非 有 、 是 中 道 義 。 (中 呉 集 解 ・ 宗 本 義 ) ③ 論 第 一 真 諦 也 者 、 ⋮ (中 略 ) ⋮ 乃 是 妙 有 之 真 空 、 非 無 物 為 空 、 故 云 第 一 真 諦 也 。 (令 模 紗 ・ 不 真 空 ) 先 ず 、 こ の 三 つ の 引 用 文 の う ち の ① は 、 上 掲 僧 肇 の 原 文 に 対 す る 浄 源 の 直 接 の 注 釈 で あ る 。 こ れ だ け で 意 味 は は っ き り 伝 わ ら な い の で 、 ② と ③ の 説 明 が 必 要 と な る 。 ② は ① と は 直 接 関 連 が あ り 、 澄 観 の ﹃ 華 厳 経 疏 ﹄ 巻 一 四 の 言 葉 を 引 用 し て ﹃ 中 呉 集 解 ﹄(3) の ﹁宗 本 義 ﹂ の 部 分 で 書 い て い る も の で あ る 。 そ し て 、 ③ は ① と ② の 立 場 か ら さ ら に 進 ん で 浄 源 自 身 の 主 張 を 一一 535

(2)

浄 源 の ﹃不 真 空 論 ﹄ に 対 す る 華 厳 的 な 捉 え 方 (王 ) 一 二 打 ち 出 し た も の で あ る 。 浄 源 の 三 つ の 引 用 文 で 述 べ ら れ た 重 要 な 概 念 の 繋 が り を 纒 め て 見 る と 、 以 下 の 関 係 を 見 だ す こ と が で き る 。 A 不 有 有 = 非 実 有 幻 有 (空 ) B 不 空 空 -不 真 空 (不 断 空 ) 1 妙 有 ← 真 空 A と B の 概 念 は 互 い に 一 つ ず つ 対 応 し て い る が 、 A ・ B そ れ 自 体 も 自 己 の 体 系 を 形 成 し て い る 。 さ ら に 分 析 す る と 、 以 下 の 結 論 が 得 ら れ る 。 第 一 に 、 前 掲 引 用 文 ② の ﹁不 真 空 ﹂ と い う 言 葉 は 、 筆 者 の 管 見 の 限 り で は 、 澄 観 の 創 作 で あ る と 考 え ら れ る 。 浄 源 が 改 め て こ の 言 葉 を 用 い た こ と は 、 彼 が 空 を 支 え る 何 ら か の 実 在 性 を 見 つ け よ う と す る 意 図 が 強 く 見 ら れ る 。 更 に 考 察 を 進 め れ ば 、 こ れ は ﹁真 心 ﹂ 説 を 提 出 す る 理 論 的 な 前 提 で あ る と 考 え ら れ る 。 第 二 に 、 同 じ ② で 示 さ れ た よ う に 、 浄 源 は ﹁ 不 真 空 ﹂ を ﹁不 空 空 ﹂ の 別 名 と 理 解 し て い る 。 即 ち 、 浄 源 に お い て は ﹁不 真 空 ﹂ と ﹁不 空 空 ﹂ と は 、 本 質 に お い て も 理 論 的 な 役 割 に お い て も 全 く 同 じ で あ る と 理 解 し て よ い 。 こ の 点 に つ い て は 留 意 す る 必 要 が あ る 。 ② の ﹁真 空 ﹂ が 即 ち ﹁ 不 空 空 ﹂ 、 ﹁不 空 空 ﹂ と ﹁不 真 空 ﹂ と は 異 な ら な い と い う 論 述 か ら 、 B の ﹁不 空 空 ﹂ か ら ﹁不 真 空 ﹂ な い し ﹁真 空 ﹂ ま で の 繋 が り は 、 空 を 単 な る 空 虚 の こ と と し て 認 識 し な い こ と が 正 し い 空 の 理 解 で あ る こ と を 意 味 す る こ と が わ か る 。 要 す る に 、 イ ン ド 中 観 派 が 全 て を 否 定 し て あ ら ゆ る も の の 本 質 を 空 と し て 認 識 し た こ と に 対 し て 、 空 、 或 い は 仮 の 後 ろ に 常 に 実 在 す る と こ ろ の 、 何 ら か の 高 次 の 実 在 者 の 観 念 を 第 一 に 位 置 づ け よ う と す る こ と で あ る 。 ② 自 体 は 浄 源 が 澄 観 か ら 受 け 継 い だ も の で あ る 。 し か し 、 ﹃ 華 厳 経 疏 ﹄ の 原 文 の 引 用 さ れ た 箇 所 と 全 体 の テ キ ス ト の 文 脈 と の 関 係 か ら 見 る と 、 澄 観 が か れ ら の 言 葉 を も っ て 直 接 ﹁ 不 真 空 論 ﹂ に 言 及 し て い た わ け で は な い 。 浄 源 の 捉 え 方 と 扱 う 場 所 に よ っ て 、 こ れ ら の 言 葉 に 含 め ら れ る 意 味 は 更 に 強 く 現 わ れ て い る 。 そ し て 、 こ の よ う な ﹁不 真 空 ﹂ に 対 す る 解 釈 は 、 僧 肇 自 身 の そ れ と は 全 く 逆 の 方 向 へ 向 か っ て い る と い っ て よ い 。 特 に ﹁不 真 空 ﹂ は ﹁不 真 空 論 ﹂ の 最 大 な キ ー ワ ー ド で あ る と い う 点 か ら 考 え れ ば 、 こ れ ら の 言 葉 は 浄 源 疏 の 本 質 的 な 部 分 を 指 し 示 す も の と 考 え な け れ ば な ら な い 。 し か し 、 ③ の ﹁真 空 ﹂ と ﹁妙 有 ﹂ の 関 係 か ら 考 え れ ば 、 問 題 は さ ら に 複 雑 に な る 。 浄 源 の ﹁妙 有 の 真 空 ﹂ の 意 味 は 、 す な わ ち 妙 有 へ と 発 展 す る 真 空 、 或 い は 妙 有 と 本 質 的 に 異 な ら な い 真 空 と 理 解 し た ほ う が い い と 思 わ れ る が 、 ﹁妙 有 の 真 空 ﹂ の ﹁真 空 ﹂ は 本 体 論 的 な 意 味 を も っ て い る も の で あ る の に 対 し て 、 B の ﹁不 真 空 ﹂ か ら の ﹁真 空 ﹂ は ﹁空 に 対 す る 正 し い 理 解 ﹂ の こ と で あ る か ら 、 認 識 論 的 な 術 語 で あ る と い っ て よ 536

(3)

い 。 従 っ て 、 こ の 認 識 論 に お け る ﹁真 空 ﹂ が 本 体 論 に お け る ﹁真 空 ﹂ へ と 展 開 す る と 、 一 つ の 論 理 的 な 問 題 が 生 じ て く る 可 能 性 が あ る 。 第 三 に 、 浄 源 が ﹁妙 有 ﹂ と ﹁真 空 ﹂ と を 関 連 さ せ て 、 ﹁ 幻 有 ﹂ に 対 応 す る こ と は 、 法 蔵 ・ 宗 密 の 影 響 を う け た こ と で あ る 。 上 の 浄 源 が 引 用 し た 澄 観 の 原 文 に は 、 ﹁妙 有 ﹂ を 用 い て は い な い が 、 法 蔵 と 宗 密 の 著 作 に は 、 ﹁妙 有 ﹂ が し ば し ば 出 て く る 。 こ の 点 に つ い て は 、 木 村 清 孝 先 生 の 優 れ た 論 文 が あ り 、 大 い に 参 考 に な る 。(4) 最 後 に 、 A と B の 両 系 統 を 比 較 し た 結 果 と し て 、 以 下 の 結 論 を 纒 め る こ と が で き る 。 す な わ ち 、 A は 、 ﹁非 実 有 ﹂ と ﹁ 幻 有 ﹂ な ど の 概 念 を 用 い て 、 僧 肇 の 諸 法 の 非 真 実 性 を 見 出 し て 、 そ こ か ら 空 の 結 論 を 打 ち 出 す 段 階 と 大 体 同 じ で あ る 。 B は ﹁ 不 空 空 ﹂ 、 ﹁ 妙 有 ﹂ 、 ﹁真 空 ﹂ な ど の 概 念 を 用 い て 、 澄 観 ・ 宗 密 な ど の 華 厳 と 神 会 の 禅 と の 接 点 が 見 ら れ て 、 浄 源 が 提 唱 し て い る 空 を 支 え る 真 如 ・ 一 心 の 世 界 に 当 た っ て い る 。 こ の 一 心 思 想 が も と も と ﹃ 不 真 空 論 ﹄ に 含 ま れ て い た こ と を 裏 付 け る た め に 、 浄 源 は 僧 肇 の ﹁是 以 聖 人 、 乗 真 心 而 理 順 、 則 無 滞 而 不 通 ﹂ と い う 言 葉 の な か に あ る ﹁真 心 に 乗 じ て 理 に 順 ず る ﹂ の ﹁真 心 ﹂ は 、 す な わ ち ﹁妙 明 の 真 心 ﹂ で あ る と 解 釈 し て い る 。 即 妙 明 真 心 、 非 集 起 縁 慮 之 心 。 (中 呉 集 解 ・ 不 真 空 ) そ し て 、 こ の 真 心 に つ い て 、 さ ら に 解 釈 を 加 え て い る 。 心 常 住 真 心 也 。 体 絶 妄 想 故 不 有 、 霊 照 独 故 不 無 (中 呉 集 解 ・不 真 空 ) ま た 、 ﹁本 源 の 妙 心 、 諸 々 の 封 待 を 絶 す る ﹂ と い い 、 こ の 真 心 を 万 物 の 起 源 と 見 な し 、 相 対 性 を 超 え る 超 越 的 な 根 元 で あ る と 主 張 し て い る 。 浄 源 に と っ て 、 こ の 空 を 支 え て 常 に 実 在 し て い る 妙 明 の 真 心 は ﹃ 肇 論 ﹄ の 全 体 か ら 見 て も ﹃ 肇 論 ﹄ の 中 心 点 を な す も の で あ る と 考 え ら れ て い る 。 こ れ は 次 の 言 葉 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る 。 宗 本 之 要 、 其 妙 明 真 心 乎 。 (中 呉 集 解 ・ 宗 本 義 ) 要 す る に 、 ﹃ 肇 論 ﹄ の 要 点 は ﹁妙 明 の 真 心 ﹂ で あ り 、 或 い は 、 そ の 本 旨 は 真 心 を 明 ら か に す る こ と で あ る と い う 。 1 大 正 四 十 五 、 一 五 二 、 下 2 大 正 四 十 五 、 一 七 〇 、 上︱ 下 3 大 正 四 十 五 、 六 〇 四 、 中 ・ 二 十 八︱ 下 ・ 四 4 木 村 清 孝 ﹁真 空 妙 有 論 の 形 成 と 展 開 ﹂ ﹃東 ア ジ ア 仏 教 の 基 礎 構 造 ﹄ (春 秋 社 ) に 所 収 。 ︿ キ ー ワ ー ド ﹀ 宋 代 華 厳 宗 、 浄 源 、 僧 肇 、 不 真 空 、 真 心 (国 際 仏 教 学 大 学 院 大 学 博 士 課 程 ) 浄 源 の ﹃ 不 真 空 論 ﹄ に 対 す る 華 厳 的 な 捉 え 方 (王 ) 一三 537

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