タイトル 弁護士会照会に対する報告拒絶と報告義務の確認の訴 え
著者 酒井, 博行
引用 北海学園大学法学部50周年記念論文集: 247‑272
発行日 2015‑03‑15
弁 護 士 会 照 会 に 対 す る 報 告 拒 絶 と 報 告 義 務 の 確 認 の 訴 え
酒 井 博 行
第 一 章 問 題 の所 在 弁護 士 会 照 会︵ 弁 護 士 法 二三 条 の 二
︶は
︑ 弁 護 士 が受 任 事 件 に必 要 な 事 項 を公 務 所
・ 公私 の 団 体 に 照会 す る こ とを 所 属弁 護 士 会 に申 し 出
︑ 弁 護士 会 が 審 査の う え 相 当 と認 め た 場 合に 照 会 先 に 報告 を 求 め る制 度 で
쐍1
︶
あ り
︑弁 護 士 は この 制 度に よ り
︑ 必要 な 情 報 を 第三 者 た る 公務 所
・ 公 私 の団 体 か ら 入手 で き る
︒ 弁護 士 会 照 会は
︑ 民 事 訴 訟内 で 用 い る情 報 の
쐍2
︶
入 手
︑ 訴 え提 起 に 必 要 な情 報
︵ 訴 状の 当 事 者 欄 の記 載 で 被 告を 特 定 す る ため の 住 所 等︶ の 入 手 や
︑強 制 執 行 段階 で 債務 者 の 責 任財 産 を 探 知 する た め の 情報 の
쐍3
︶
入 手 等 のた め に 活 用が 考 え ら れ る︒ 弁護 士 会 照 会に お け る 照 会先 の 報 告 義務 は 明 文 で は規 定 さ れ てい な い が
︑ 照会 先 は 正 当な 理 由 が な い限 り 報 告 義務 を 負う と す る のが
쐍4
︶
判 例
・
쐍5
︶
学 説の 立 場 で あり
︑ こ の 義 務は 弁 護 士 会に 対 す る 公 的な
︑ な い し公 法 上 の 義 務と さ れ る
︒し か し︑ 弁 護 士 法上 は 報 告 拒 絶に 対 す る 制裁 が な い た め︑ 照 会 先 が報 告 を 拒 絶 する 場 合 が ある
︒ そ の た め︑ 報 告 拒 絶へ の 対処 が 課 題 と
쐍6
︶
な り
︑ 照 会 申出 を し た 弁護 士 な い し その 依 頼 者 が照 会 先 に 対 し︑ 報 告 義 務の 確 認 の 訴 えや
︑ 報 告 拒絶
が 不法 行 為 に 当た る と し て 損害 賠 償 を 求め る 訴 え を 提起 す る 事 案が 近 年 増 加 して い る
︒ 筆者 は
︑ 弁 護士 会 照 会 に おけ る 照 会 先の 報 告 拒 絶 に対 す る 制 裁が な い 現 状 の下 で 報 告 拒絶 に 対 処 す る手 段 を 確 保し 制 度を 実 効 化 する と い う 観 点か ら
︑ 報 告義 務 の 確 認 の訴 え の 許 容性 や 報 告 拒 絶を 理 由 と する 損 害 賠 償 請求 の 可 能 性の 探 求を 考 え て いる が
︑ 本 稿 では 報 告 義 務の 確 認 の 訴 えの 適 法 性 を検 討 す る
︒ 本稿 で は
︑ まず 報 告 義 務 の確 認 の 訴 えに 関 す る 従 来の 裁 判 例 を概 観 し︵
↓ 第二 章
︶︑ 次 に裁 判 例 を 踏 まえ
︑ こ の 訴え の 適法 性 に 関 する 問 題 に つ き︑ 特 に 確 認の 利 益 に 焦 点を 当 て て 検討 す る
︵
↓ 第三 章
︶︒ なお
︑ 本 稿 では 紙 幅 の 都 合等 か ら
︑ いか な る 場 合 に照 会 先 が 報告 義 務 を 負 うか と い う 要件 面 は 検 討 対象 と し な いこ と をあ ら か じ めお 断 り し た い︒ 쐍1
︶ こ の制 度 は 弁 護士 照 会 二 三条 照 会 等 と も呼 ば れ︑ 本 稿 でも 裁 判例 で これ ら の呼 称 が 用い ら れる 場 合は そ のま ま 記 すが
︑ それ 以 外 の部 分 では
弁護 士 会照 会 の呼 称 で統 一 する
︒ 쐍2
︶ 筆 者は
︑ 本来 当 事者 主 義が 妥 当 する 民 事訴 訟 審理 の 実体 面 に つき
︑ 現状 は 裁判 所 が主 導 す る職 権 主義 的 運用 と なっ て い るの で はな い か との 問 題意 識 から
︑ 当事 者 が 主導 的 な役 割 を担 う 本来 の 当 事者 主 義を 実 現す べ きで あ る と考 え るが
︑ その た めの 条 件 とし て
︑当 事 者
・代 理 人弁 護 士が 主 張・ 立 証 に必 要 な証 拠
・情 報 を早 期 に 相手 方 当事 者
・第 三 者か ら 入 手す る ため の 証拠
・ 情報 の 収 集手 続 の拡 充 が 必要 と なる
︵ この 点 につ き
︑ 酒井 博 行 当 事者 主 義的 民 事 訴訟 運 営と 当 事者 照 会の 制 裁 型ス キ ーム 化 に関 す る一 考 察 民 訴 六一 号
︹ 二〇 一 五年
︺ 一四 七
〜一 五
〇 頁等
︶︒ 弁 護 士 会照 会 は︑ 主 張・ 立 証 に 必要 な 情報 を 第三 者 たる 公 務 所・ 公私 の 団体 か ら 入手 す る手 段 と して
︑ 本来 の 当事 者 主義 の 実 現に 資 する 制 度で あ ると 考 え られ る
︒ 쐍3
︶ 金 銭執 行 につ き
︑債 務 者に 自 ら の財 産 を開 示 させ る 財産 開 示 手続
︵ 民事 執 行法 一 九六 条 以 下︶ が ある が
︑対 象 とな る 債 務名 義 が限 ら れ るこ と
︑虚 偽 陳述 等 に対 す る 制裁 が 過料 に とど ま るこ と 等 から
︑ 実効 性 に疑 問 があ る
︒ また
︑ 現行 民 事執 行 法に は 債 務者 の 財産 情 報 を第 三 者に 照 会す る 制度 が な く︑ 加 えて
︑ 預金 債 権の 差 押 命令 申 立て の 際に 支 店等 を 明 確に 特 定し な い申 立 てを 最 高 裁が 不 適法
と し たた め︵ 最︹ 三 小︺ 決 平 成二 三 年 九月 二
〇日
︹ 民 集六 五 巻六 号 二七 一
〇 頁︺
︑ 最︹ 一 小
︺決 平 成 二五 年 一月 一 七 日︹ 判 時二 一 七六 号 二 九頁
︑ 判タ 一 三八 六 号一 八 二 頁︺
︶︑ 特に 債 権執 行 の対 象 た る債 務 者名 義 の預 金 口座 の 存 否等 を 弁護 士 会照 会 によ り 金 融機 関 に照 会 す る必 要 性は 高 い︒ 現 行法 で の 金銭 執 行の 問 題点 や それ を 踏 まえ た 立法 提 案︵ 特 に 財産 開 示手 続 の実 効 化
︑第 三 者照 会 制度 の 新設
︶ に つ き︑ 三 木浩 一
︵司 会
︶ほ か
︵座 談 会︶ 債 務 名義 の 実効 性 強化 に 向け た 展 望 同 編 金 銭執 行 の実 務 と 課題
︵青 林 書 院︑ 二
〇一 三 年
︶二 九 九頁
︑ 執行 法 制研 究 会 民 事 執行 制 度の 機 能強 化 に 向け た 立法 提 案 三 木編
・ 前 掲三 五 三頁
︒ 쐍4
︶ 最
︵三 小
︶判 昭 和五 六 年四 月 一 四日
︵ 民集 三 五巻 三 号六 二
〇 頁︶ 等
︒ 쐍5
︶ 飯 畑正 男 照 会制 度 の実 証 的 研究
︵日 本 評 論社
︑ 一九 八 四年
︶一 九 六 頁︑ 新 堂幸 司 新民 事 訴 訟法
︵ 第 五版
︶
︵弘 文 堂
︑二
〇 一一 年
︶三 八 九 頁︑ 髙 中正 彦 弁 護 士法 概 説︵ 第 四 版︶
︵ 三省 堂
︑二
〇 一二 年
︶一 一 八頁
︑ 川嶋 四 郎 民事 訴 訟 法
︵ 日本 評 論 社︑ 二
〇一 三 年
︶四 九 五頁
︑ 梅本 吉 彦 民 事 訴訟 法︵ 第四 版 補正 第 三刷
︶
︵信 山 社
︑二
〇 一三 年
︶一 八 一 頁︑ 高 橋宏 志 重 点 講 義民 事 訴訟 法︵ 下
︶
︵ 第 二版 補 訂版
︶
︵ 有斐 閣
︑二
〇 一四 年
︶八 七 頁 等︒ 쐍6
︶ 日 本弁 護 士連 合 会で は 弁護 士 法 二三 条 の二 の 改正 案 が策 定 さ れ︑ 二
〇〇 二 年一 一 月二 二 日 の理 事 会に て 司 法 制度 改 革 にお け る証 拠 収 集手 続 の拡 充 のた め の弁 護 士 法第 二 三条 の 二の 改 正に 関 す る意 見 書 が 採択 さ れ てい る が︵ こ の意 見 書 は見 直 しが 行 われ た 上で
︑ 二
〇
〇八 年 二月 二 九日 の 理事 会 に て 司 法制 度 改 革に お ける 証 拠収 集 手続 拡 充 のた め の弁 護 士法 第 二三 条 の 二の 改 正に 関 する 意 見書 が 再 度採 択 され て いる
︶︑ この 改 正案 で は 日弁 連 が報 告 拒絶 者 に対 し 勧 告す る こと が でき る こと が 明 文化 さ れて い る︒ 改 正 案の 概 要等 に つ き︑ 石 丸鐡 太 郎= 上 杉一 美 弁護 士 会照 会 制度 の 改正 運 動 など に つい て 自 正 六二 巻 一 三号
︵ 二〇 一 一年
︶ 三二
〜 三 三頁
︑ 高橋 金 一 弁 護 士法 第 二三 条 の二 の 改 正に つ いて
自正 六 六巻 一 号
︵二
〇 一五 年
︶四 四 頁︒
第 二 章 裁 判 例 弁護 士 会 照 会に 対 す る 照 会先 の 報 告 義務 の 確 認 の 訴え に 関 す る公 刊 裁 判 例 は︑ 現 在下 級 審 裁 判例 が 七 件 あ る︒ な お︑ こ こで 紹 介 す る裁 判 例 は 全 て︑ 報 告 義 務の 確 認 請 求 と報 告 拒 絶 を理 由 と す る 損害 賠 償 請 求等 が 併 合 さ れて い る 事 案︑ 照 会先 に 対 す る損 害 賠 償 請 求訴 訟 内 で 報告 義 務 の 中 間確 認 の 訴 えが 提 起 さ れ た事 案 に 関 する も の で あ る︒
① 大阪 地 判 昭 和六 二 年 七 月 二〇 日
︵ 判 時一 二 八 九 号 九四 頁
︑ 判 タ六 七 八 号 二
〇〇 頁
︶
︻ 事 案 の 概 要︼ 亡A の 子 X ら︵ 原 告
︶ か らA の 死 亡 に関 す る 事 件 処理 を 受 任 した Z 弁 護 士
︵参 加 人
︶ は︑ 労 災 死 亡 認定 申 請 の 判断 資 料に 供 す る ため
︑ Y 医 療 法人
︵ 被 告
︶に 対 す る A の診 療 経 過 等に 関 す る 照 会を 大 阪 弁 護士 会 に 申 し 出︑ 照 会 が なさ れ たが
︑ Y は 回答 を 拒 絶 し た︒ X ら は 大阪 弁 護 士 会 に代 位 し て Yに 対 し 照 会 事項 に つ き 同弁 護 士 会 に 回答 す る こ とを 請 求し
︑ ま た
︑損 害 賠 償 を 請求 し た
︒ この 訴 訟 に Z が独 立 当 事 者参 加 を し
︑ Zと X ら
・ Yと の 間 で 照 会事 項 に つ き同 弁 護士 会 に 代 位し て 同 弁 護 士会 に 回 答 する こ と を 求 める 権 利 を 有す る こ と の 確認
︑ お よ び同 弁 護 士 会 に代 位 し て Yに 対 し照 会 事 項 につ き 同 弁 護 士会 に 回 答 する こ と を 請 求し た
︒
︻ 判 旨
︼ 大阪 地 裁 は
︑照 会 先 は 原 則と し て 回 答義 務 を 負 う もの の
︑ 正 当な 事 由 が あ れば 回 答 を 拒否 し 得 る と した が
︑ 弁 護士 法 二三 条 の 二 は照 会 先 に 照 会事 項 の 回 答を 請 求 す る 権能 を 弁 護 士会 に 専 属 さ せ︑ 一 般 私 人は も と よ り 弁護 士 も 直 接に 照 会先 に 特 定 の事 項 に つ き 回答 を 請 求 する い か な る 権利 も 有 さ ず︑ 一 般 私 人 も弁 護 士 も 弁護 士 会 に 代 位し て 照 会 先に 対 し弁 護 士 会 宛に 回 答 を 請 求す る こ と も許 さ れ な い とし て
︑ X らの Y に 対 す る回 答 請 求 に係 る 訴 え と Zの 参 加 に 係る 全 ての 訴 え を 却下 し
︑ X ら のそ の 余 の 請求 を 棄 却 し た︒ Z の 参 加請 求 中
︑ 確 認請 求 に 関 する 判 示 は 次 の通 り で あ る︒
⁝ Z の X ら 及び Y に 対 する 右 回 答 請 求権 の 確 認 請求 に か か る 訴え の 部 分 は︑ Z が Y に 対し て 直 接 ま たは 大 阪 弁 護士 会 に代 位 し て 右回 答 請 求 を する 権 利 を 有す る こ と が なく
︑ か つ
︑Y が 大 阪 弁 護士 会 に 右 照会 に 対 す る 回答 を し な いこ と によ っ て
︑ かり に 弁 護 士 であ る Z が 受任 し た 事 件 の処 理 に 支 障を 生 じ て な んら か の 具 体的 損 害
︵ 権 利侵 害
︶ を 被む る とい っ た こ とが あ っ て
︑ それ が Y の 責に 帰 す べ き もの で あ る とし て も
︑ そ の場 合 に は Zは Y に 対 し て端 的 に 損 害賠
償 請求 を す る など の 方 法 に よっ て 救 済 を求 め る べ き もの で あ り
︑そ れ に よ ら ずに Y が 大 阪弁 護 士 会 に 対し て 右 回 答義 務 を負 う こ と をZ と X ら 及 びY と の 間 で確 認 し て お くべ き 法 的 利益 が Z に あ ると は 本 件 にお け る 全 資 料を 総 合 し ても 到 底認 め ら れ ない か ら
︑ 確 認の 利 益 を 欠い た 不 適 法 な訴 え と い うべ き で あ る
︒
② 岐阜 地 判 平 成二 三 年 二 月 一〇 日
︵ 金 法一 九 八 八 号 一四 五 頁 参 照︶
︻ 事 案 の 概 要︼ 帝王 切 開 手 術中 に 高 次 医 療機 関 へ の 救急 搬 送 が 必 要と な り
︑ 搬送 後 に 死 亡 した A の 夫
︵X욼 原 告
︶ の 委任 を 受 け た
X욽 弁 護士
︵ 原 告
︶は
︑ 医 療 過 誤訴 訟 提 起 の際 の 方 針 を 判断 す る た め︑ B
︵ 岐 阜 中消 防 署 長
︶に 対 す る
︑ 亡A の 搬 送 に係 る 救急 活 動 内 容に 関 す る 照 会を 愛 知 県 弁護 士 会 に 申 し出
︑ 照 会 がな さ れ た
︒ Bは 照 会 事 項の 一 部 に つ き回 答 し た が︑ そ の余 に つ き 回答 を 拒 絶 し た︒ X ら は Y市
︵ 岐 阜 市
︒被 告
︶ に 対し
︑ B の 回 答拒 絶 が 違 法で あ る こ と の確 認
︵ 行 政事 件 訴訟 法 四 条
・三 九 条
︶︑ Bに 対 す る 回 答の 義 務 付 け︵ 同 法 三 条 六項 二 号
・ 三七 条 の 三
︶︑ お よ び 国 家 賠償 法 一 条 一項 に 基づ く X ら への 損 害 賠 償 を求 め た
︒
︻ 判 旨
︼ 岐阜 地 裁 は
︑回 答 拒 絶 の 違法 確 認 の 訴え
︑ 回 答 の 義務 付 け の 訴え を 却 下 し たが
︑ 被 照 会者 が 正 当 な 理由 な く 回 答を 拒 絶し
︑ 申 出 弁護 士 の 業 務 遂行 の 利 益 や依 頼 者 の 裁 判を 受 け る 権利 な い し 司 法手 続 に よ り紛 争 を 解 決 する 利 益 が 侵害 さ れた と 評 価 し得 る 場 合 に は被 照 会 者 が損 害 賠 償 責 任を 負 う こ とが あ り 得 る とし た う え で︑ B の 回 答 拒絶 に は 正 当な 理 由が な い と して X ら の 損 害賠 償 請 求 を認 容 し た
︒ 回答 拒 絶 の 違法 確 認 の 訴 えに 関 す る 判示 は 次 の 通 りで あ る
︒
⁝ 弁 護 士 照 会制 度 は
︑弁 護 士 会 が
︑所 属 弁 護士 に よ る 申出 に 基 づ き
︑公 務 所又 は 公 私 の団 体 に 照 会 して 必 要 な 事項
の 報告 を 求 め るこ と が で き る制 度 と し て規 定 さ れ て おり
⁝
︑ 公 務所 な い し 公 的団 体 の み なら ず
︑ 私 的 団体 を も 照 会の 相 手方 と す る こと が で き る もの で あ る から
︑ 公 務 所 ない し 公 的 団体 に 対 し て 弁護 士 照 会 がさ れ た 場 合 であ っ て も
︑照 会 者︵ 又 は 照 会申 出 者
︶ と 被照 会 者 と が公 法 上 の 法 律関 係 に 立 つと 認 め る こ とは で き な い︒ し た が っ て︑ 照 会 者
︵又 は 照会 申 出 者
︶と 被 照会 者 と の 関係 は
︑ 行 政事 件 訴 訟 法 四 条に い う 公 法上 の 法 律 関 係 に は 該 当 しな い か ら
︑本 件 回答 拒 否 が 違法 で あ る こ との 確 認 の 訴え は
︑ 不 適 法で あ る
︒ なお
︑念 の た め
︑本 件 回 答拒 否
⁝ が 違 法で あ る こ との 確 認 の 訴 えが 民 事 訴 訟と し て 適 法 であ る か ど うか 検 討 す る に︑ こ のよ う な 訴 えに よ る こ と は︑ 本 件 回 答拒 否 が 違 法 であ る こ と を理 由 と す る 国家 賠 償 法 一条 一 項 に 基 づく 損 害 賠 償請 求 によ る こ と 以上 に
︑ 紛 争 解決 に と っ て有 効 な い し 適切 で あ る とい う こ と は でき な い か ら︑ 同 確 認 の 訴え は
︑ 民 事訴 訟 とし て も 確 認の 利 益 が な く︑ 不 適 法 であ る
︒
③ 名古 屋 高 判 平成 二 三 年 七 月八 日
︵ 金 法一 九 八 八 号 一三 五 頁
︶
︻ 事 案 の 概 要︼ 裁判 例
② の 控訴 審 判 決 で ある
︵ X ら が控 訴
︑ Y が 附帯 控 訴
︶︒
︻ 判 旨
︼ 名古 屋 高 裁 は︑ 原 判 決 の うち 回 答 拒 絶の 違 法 確 認 の訴 え を 却 下し た 部 分 に 対す る X ら の控 訴 に つ き
︑原 判 決 を ほぼ 引 用し 控 訴 を 棄却 し た
︒ な お︑ 回 答 の 義務 付 け の 訴 えを 却 下 し た部 分 に 対 す るX ら の 控 訴も 棄 却 さ れ たが
︑ X ら の損 害 賠償 請 求 を 認容 し た 部 分 に対 す る Y の附 帯 控 訴 に つい て は
︑ のX욽 請 求 を 認 容し た 原 判 決を 取 り 消 し
︑こ れ を 棄 却す べ きも の と し た︵ にX욼 対 す る附 帯 控 訴 は棄 却
︶︒
④ 東京 地 判 平 成二 四 年 一 一 月二 六 日
︵ 判タ 一 三 八 八 号一 二 二 頁
︑金 判 一 四 一 四号 三 一 頁
︑金 法 一 九 六 四号 一
〇
쐍1
︶
八 頁︶
︻ 事 案 の 概 要︼ A株 式 会 社 に対 す る 執 行 証書
︑ B に 対す る 仮 執 行 宣言 付 判 決 を有 す る X
︵ 原告
︶ か ら 受任 し た C 弁 護士 は
︑ 強 制執 行
・詐 害 行 為 取消 訴 訟 等 の 措置 を 講 ず るた め
︑ Y 銀 行︵ 被 告
︶ に対 す る 照 会 を東 京 弁 護 士会 に 申 し 出 た︒ 同 弁 護 士会 は
︑B 名 義 の 預金 口 座 の 有 無︑ 口 座 が ある 場 合 の 支 店︑ 口 座 番 号等 に つ い て の照 会
︑ A 名義 の 預 金 口 座の 有 無
︑ 口座 が ある 場 合 の 支店
︑ 口 座 番 号等
︑ 各 口 座か ら 第 三 者 に対 す る 送 金の 有 無 お よ び送 金 先 等 につ き Y に 照 会し た が
︑ Yは 報 告を 拒 絶 し た︒ X は Y に 対し
︑ Y が 本件 各 照 会 に つき 東 京 弁 護士 会 に 対 し 報告 す る 義 務が あ る こ と の確 認 を 求 め︑ 併 せて
︑ 慰 謝 料を 請 求 し た
︒
︻ 判 旨
︼ 東京 地 裁 は
︑照 会 先 は 原 則と し て 報 告を す べ き 公 法上 の 義 務 を負 う と し た うえ で
︑ Y の報 告 拒 絶 に は正 当 事 由 がな い とし た
︒ そ して
︑ 報 告 義 務の 確 認 請 求に つ き 確 認 の利 益 を 認 め請 求 を 認 容 した が
︑ Y の故 意
・ 過 失 を否 定 し 慰 謝料 請 求を 棄 却 し た︒ 報 告 義 務 の確 認 の 利 益に 関 す る 判 示は 次 の 通 りで あ る
︒ Y は
︑本 件 各 照 会の 照 会 事 項 につ き
︑公 法 上 の 義務 と し て 東 京弁 護 士 会 に対 し
︑照 会 事 項の 報 告 義 務を 負 っ て い る︒ そ して
︑ Y が この 義 務 に 反 して 報 告 し ない こ と の 直 接の 結 果 と して
︑ X は A 及び B に 対 する 強 制 執 行 によ る 権 利 の実 現 が妨 げ ら れ てい る
︒ し た がっ て
︑ X は︑ Y が 公 法 上の 義 務 を 履行 し な い こ とに よ っ て 債務 名 義 に よ る債 務 者 に 対す る 権利 の 実 現 が妨 げ ら れ て いる の で あ るか ら
︑Y に よ る 権 利実 現 の 妨 害を 排 除 し て 権利 救 済 を 受け る た め
︑Y に 対 し︑ 照 会事 項 に つ き東 京 弁 護 士 会に 対 す る 報告 義 務 が 存 する こ と の 確認 を 求 め る こと が で き ると 解 す る の が相 当 で あ る︒ 本件 各 照 会 に対 す る 報 告 がな い た め Xが 強 制 執 行 のた め に 必 要な 情 報 を 得 るこ と が で きな い こ と は
︑国 民 の 権 利救
済 の観 点 か ら 見過 ご す こ と がで き な い Xに 対 す る 重 大な 権 利 侵 害に つ な が る もの で あ る と評 価 す る こ とが で き
︑ 照会 事 項の 報 告 を 受け る こ と は
︑X の 実効 的 な 権 利救 済 の 実 現 のた め に 不 可欠 で あ る
︒弁 護 士 会照 会 の 照 会事 項 の 報 告 が︑ 国 民の 実 効 的 な権 利 救 済 の 実現 の た め に不 可 欠 で あ り︑ 照 会 を 受け た 者 が 報 告を し な い こと に 正 当 な 理由 が な く
︑弁 護 士会 に 対 す る報 告 義 務 を 負う と 解 さ れる 場 合 に お いて は
︑ 照 会を 受 け た 者 が照 会 事 項 につ い て 報 告 しな い と き は︑ 弁 護士 会 に 照 会を 申 し 出 た 弁護 士 に 対 して 当 該 照 会 事項 に 係 る 法律 事 務 の 委 任を し て い た当 事 者 は
︑ 弁護 士 会 照 会制 度 によ っ て 保 護さ れ る べ き 権利 の 救 済 を求 め る た め
︑公 法 上 の 法律 関 係 に 関 する 確 認 の 訴え
︵ 行 政 事 件訴 訟 法 四 条︶ と して
︑ 照 会 を受 け た 者 を 被告 と し て
︑弁 護 士 会 に 対す る 報 告 義務 の 確 認 を 求め る こ と がで き る と 解 され る
︒ 国 民 の 実 効 的 な 権 利 救 済 を 図 る べ き 司 法 制 度 の 機 能 か ら み て
︑こ の よ う な 場 合 に 報 告 義 務 の 存 否 に つ い て 判 決 を も って 法 律 関 係を 確 定 す る こと が
︑ そ の法 律 関 係 に 関す る 法 律 上の 紛 争 を 解 決し
︑ 当 事 者の 法 律 上 の 地位 の 不 安
︑危 険 を 除 去 す る た め に 必 要 か つ 適 切 で あ る 場 合 で あ る こ と は 明 ら か で あ り
︑ 確 認 の 利 益 が 認 め ら れ る こ と は 当 然 で あ る
︒
⑤ 東京 高 判 平 成二 五 年 四 月 一一 日
︵ 金 判一 四 一 六 号 二六 頁
︑ 金 法一 九 八 八 号 一一
쐍2
︶
四 頁
︶
︻ 事 案 の 概 要︼ 裁判 例
④ の 控訴 審 判 決 で ある
︵ Y が 控訴
︑ X が 附 帯控 訴
︶︒
︻ 判 旨
︼ 東京 高 裁 は
︑原 判 決 の う ち報 告 義 務 の確 認 請 求 を 認容 し た 部 分に 対 す る Y の控 訴 を 容 れ︑ 確 認 の 利 益を 否 定 し て原 判 決を 取 り 消 し︑ 訴 え を 却 下し た
︒ ま た︑ 慰 謝 料 請 求を 棄 却 し た部 分 に 対 す るX の 附 帯 控訴 を 棄 却 し た︒ 報 告 義 務の
確 認の 利 益 に 関す る 判 示 は 次の 通 り で ある
︒
⁝ 二 三 条 照 会制 度 は
︑⁝ 照 会 を す る主 体 は 弁 護 士会 で あ り
︑そ の 相 手方 は 公 務 所又 は 公 私 の 団体 で あ る から
︑こ れ に 基づ く 法 律 関係 は 弁 護 士 会と そ の 相 手方 の 団 体 と の間 に 係 る もの で あ り
︑ した が っ て
︑本 件 に お い てY が 本 件 各照 会 に対 し て 回 答す べ き 義 務 を負 う と し ても
︑ 当 該 義 務は Y が 東 京弁 護 士 会 に 対し て 負 う 一般 公 法 上 の 義務 に す ぎ ず︑ X に対 し て 直 接義 務 を 負 う もの で は な い︒ そ うす る と
︑本 件 各 照会 に 対 し て Yが 回 答 す るこ と に よ る 利益 は
︑X に とっ て は反 射 的 利 益に す ぎ な い ので あ る か ら︑ Y が 回 答 をし な い こ とに つ い て
︑ Xの 権 利 又 は法 律 関 係 に つい て 危 険 や不 安 が現 に 存 在 する と は い え ない
︒
⁝X は
︑ 本 件各 照 会 に 実 質的 な 利 害 関係 を 有 す る のは 申 出 を した 弁 護 士
︑ ひい て は そ の依 頼 者 で あ ると 主 張 す るけ れ ども
︑ そ も そも 法 律 関 係 の当 事 者 で なく
︑ 事 実 上 の利 害 関 係 にす ぎ な い 者 が他 人 間 の 法律 関 係 に つ いて 即 時 確 定を 求 める 利 益 を 有す る と い う こと は で き ない
︒ ま た
︑ 仮に
︑ X に おい て Y が 本 件各 照 会 に 回答 し な か っ たこ と に よ り自 己 の権 利 等 に つい て 危 険 又 は不 安 が 生 じた と い う の であ れ ば
︑ その 除 去 の た めに は
︑ 本 件確 認 の 訴 え によ る よ り も︑ 本 件回 答 拒 否 が違 法 で あ る こと を 理 由 とす る 民 法 七
〇九 条 に 基 づく 損 害 賠 償 請求 等 に よ る方 が よ り 有 効か つ 適 切 であ る
︒ 以上 に よ れ ば︑ 本 件 各 照 会に 対 す る 回答 義 務 の 確 認を 求 め る 訴え は
︑ 確 認 の利 益 が な く不 適 法 と い うべ き で あ る︒ なお
︑ 本 件 確認 の 訴 え は
︑私 人 で あ るX が 私 人 で ある Y に 対 して 回 答 義 務 を負 う こ と の確 認 を 求 め るも の で あ り︑ か つ︑ Y が 本 件各 照 会 に 対 して 回 答 を しな か っ た 行 為を 公 権 力 の行 使 に 当 た る行 為 と す るこ と は で き ない か ら
︑ 行政 事 件訴 訟 法 四 条に い う 公 法上 の 法 律 関係 に 関 す る 確認 の 訴 え と み る 余 地 はな い
︒
⑥ 東京 地 判 平 成二 六 年 七 月 二二 日
︵ 金 判一 四 五 二 号 五〇 頁
① 事 件︶
⑦ 東京 地 判 平 成二 六 年 八 月 七日
︵ 金 判 一四 五 二 号 五
〇頁
② 事 件
︶
︻ 事 案 の 概 要︼
︵
※ 両 裁 判例 の 事 案 の概 要 は お お むね 共 通 す るた め
︑ ま と めて 記 す
︶ Aら を 被 告 とす る 訴 訟 で 損害 賠 償 請 求を 認 容 す る 確定 判 決 を 得た
︵X욼 裁 判 例⑥ 原 告
︶︑ Bら を 被 告 と する 訴 訟 で 損害 賠 償請 求 を 認 容す る 確 定 判 決を 得 た
︵X욽 裁 判 例
⑦ 原 告︶ 両 名 の 訴訟 代 理 人 で あっ た C 弁 護士 は
︑ 各 確 定判 決 に 基 づく 強 制執 行 の 準 備の た め
︑ Y
︵一 般 社 団 法人 全 国 銀 行 協会
︒ 裁 判 例⑥
⑦ 被 告
︶ が設 置
・ 運 営す る 全 国 銀 行個 人 信 用 情報 セ ンタ ー
︵ セ ンタ ー
︶ に 対 する 照 会 を 東京 弁 護 士 会 に申 し 出 た
︒同 弁 護 士 会 はセ ン タ ー にA ら の 登 録 情報
︑ B ら の登 録 情報 の 報 告 を求 め た が
︑ セン タ ー は 報告 を 拒 絶 し た︒ はX욼 Y に損 害 賠 償 を 請求 し
︑ 中 間確 認 の 訴 え とし て
︑ Y がA ら に係 る 照 会 事項 に つ き 東 京弁 護 士 会 に対 し 報 告 す る義 務 が あ るこ と
︑ま た はあ っ た こ と の確 認 を 求 めた
︵ 裁 判 例
⑥︶
︒ はX욽
︑ 報 告 拒 絶の た め B ら に対 す る 強 制執 行 が で き ず︑ 財 産 的・ 精神 的 損 害 を被 っ た と し て︑ Y に 損 害賠 償 を 請 求 し︑ Y がB ら に 係 る照 会 事 項 に つき 東 京 弁 護士 会 に 対 し 報告 す る 義 務が あ る こ と
︑ま た は あ った こ と が 損 害賠 償 請 求 権の 存 否の 先 決 問 題で あ る と し て︑ 中 間 確 認の 訴 え と し てこ れ ら の 義務 の 確 認 を 求め た
︵ 裁 判例
⑦
︶︒
︻ 裁 判 例
⑥ 判旨
︼ 東京 地 裁 は
︑弁 護 士 会 照 会に 係 る 権 限は 弁 護 士 会 のみ に あ り
︑申 出 を し た 弁護 士 お よ び依 頼 者 は 照 会先 に 報 告 を求 め る権 利 を 有 しな い こ と は もと よ り
︑ 報告 を 求 め る につ き 法 律 上の 利 益 を 有 して い る と 認め る こ と も でき ず
︑ Y の報 告 拒絶 が のX욼 法律 上 の 利 益 を侵 害 す る とは い え な い とし て 損 害 賠償 請 求 を 棄 却し た
︒中 間 確認 の 訴 え は却 下 さ れ た が︑ こ の点 に 関 す る判 示 は 次 の 通り で あ る
︒
⁝ Y が 本 件 照会 に 対 し て報 告 を 拒 否 した と し て も︑ のX욼 法 律 上保 護 さ れ た 利益 を 侵 害 する も の と は 認め ら れ な いも
の であ っ て
︑ この こ と は
︑ Yが 東 京 弁 護士 会 か ら の 本件 照 会 に 対し て 義 務 を 負う か 否 か に左 右 さ れ る もの で は な い︒ した が っ て
︑Y の 東 京 弁 護士 会 に 対 する 報 告 義 務 の有 無 は
︑ のX욼 Y に 対 す る不 法 行 為 に基 づ く 損 害 賠償 請 求 権 の存 否 の先 決 関 係 に立 つ 法 律 関 係に 当 た る もの と 解 す る こと が で き ない か ら
︑ 本 件中 間 確 認 の訴 え は
︑ い ずれ も 不 適 法と し て却 下 す べ きも の で あ る
︒
︻ 裁 判 例
⑦ 判旨
︼ 東京 地 裁 は 中間 確 認 の 訴 えを 却 下 し たが
︑ こ の 点 に関 す る 判 示は 次 の 通 り であ る
︒ 弁 護 士 会 照 会制 度 は
︑⁝ 照 会 の 主 体を 弁 護 士 会
︑そ の 相手 方 を 公 務 所又 は 公 私 の団 体 と す る もの で あ り
︑そ の 法律 関 係は 弁 護 士 会と 公 務 所 又 は公 私 の 団 体と の 間 の 公 法上 の 権 利 義務 関 係 で あ る︒ はX욽
︑ 本 件 照会 の 実 質 的 な主 体 は 申 出を し た 弁 護 士及 び 依 頼 者で あ る と 主 張す る が
︑ Yが 本 件 照 会 事項 に つ い て報 告 義務 を 負 う 場合 で あ っ て も︑ 当 該 義 務は Y が 東 京 弁護 士 会 に 対し て 負 う 公 法上 の 義 務 であ り
︑ にX욽 対す る 義 務 では な いか ら
︑ Y が本 件 照 会 事 項に つ い て 報告 す る こ と によ る のX욽 利益 は
︑ 法 律 上の 利 益 と はい え な い
︒ よっ て
︑ 仮 に︑ Y に 本 件 照会 事 項 に つい て 東 京 弁 護士 会 に 対 する 報 告 義 務 違反 が 認 め られ て も
︑ そ れに よ り にX욽 対 す る不 法 行 為 上の 義 務 違 反 が認 め ら れ るわ け で は な い︒ 他 方
︑ Yに 上 記 義 務 違反 が 認 め られ な い と し ても
︑ そ の こと に よっ て のX욽 個別 具 体 的 な 権利 の 侵 害 がお よ そ 認 め られ な く な ると ま で は い えな い
︒ そ うす る と
︑ Y が本 件 照 会 事項 に つい て 弁 護 士会 に 対 し て 報告 す べ き 公法 上 の 義 務 を負 う か 否 かの 判 断 は
︑ Yが 本 件 照 会事 項 に つ い て報 告 を 拒 否し た 行為 が にX욽 対す る 不 法 行 為を 構 成 す るか ど う か の 判断 と の 関 係で
︑ 先 決 関 係に あ る と はい え な い
︒ した が っ て
︑本 件 中 間 確 認の 訴 え に つい て は
︑ い ずれ も 訴 え の利 益 が 認 め られ な い と いう べ き で あ るか ら
︑
⁝ 不適 法 とし て 却 下 を免 れ な い
︒
なお
︑ 本 判 決は
︑ 照 会 先 は原 則 と し て弁 護 士 会 に 報告 を す る 公法 上 の 義 務 を負 う と し つつ
︑ Y の 報 告拒 絶 に は 正当 な 理由 が あ る とし て
︑ のX욽 損害 賠 償 請 求を 棄 却 し た
︒ 쐍1
︶ こ の判 決 に関 す る論 稿 とし て
︑ 渡邉 迅= 三 崎 拓生 弁 護士 会 照会 の 報告 拒 否 に対 す る法 的 救済 措 置 N B L九 九 六号
︵ 二〇 一 三年
︶ 三 六 頁︑ 伊 藤眞 民事 訴 訟の 目 的再 考 新 堂 幸 司監 修・ 高橋 宏 志= 加 藤新 太 郎編 実務 民 事 訴訟 講 座︵ 第三 期
︶第 一巻
︵ 日本 評 論社
︑ 二
〇 一四 年
︶五
〇
〜五 六 頁︑ 評 釈 とし て
︑黒 田 直行
判批
J A金 融 法務 五
〇六 号
︵二
〇 一 三年
︶ 四八 頁
︒ 쐍2
︶ こ の判 決 に関 す る論 稿 とし て
︑ 伊藤 眞 ほか
︵座 談 会︶ 民事 訴 訟手 続 に おけ る 裁判 実 務の 動 向と 検 討 第 五 回 判 タ 一三 九 七 号︵ 二
〇 一 四年
︶ 四五
〜 四六 頁
﹇松 下 淳 一発 言
﹈︑ 四 九
〜五 一 頁﹇ 伊 藤ほ か 発言
﹈︑ 伊藤
・ 前掲 本 章 注쐍 1
︶五
〇
〜 五六 頁
︑評 釈 と して
︑ 石毛 和 夫 判 批 銀 法 七六
〇 号︵ 二
〇 一三 年
︶五 六 頁︑ 藤 田広 美 判批
債管 一 四二 号
︵二
〇 一 三年
︶ 一二 一 頁︑ 黒 田直 行 判批
JA 金 融 法務 五 二四 号
︵二
〇 一四 年
︶ 四四 頁
︑今 津 綾子
判批
リ マー ク ス五
〇 号︵ 二
〇一 五 年
︶一 二 二頁
︒
第 三 章 検 討 第 一 節 公 法 上 の 法律 関 係 に 関す る 確 認 の 訴え か
︑ 民 事訴 訟 法 上 の 確認 の 訴 え か 弁護 士 会 照 会の 報 告 義 務 に関 す る 確 認の 訴 え は
︑ 行政 機 関 に 対し て 提 起 さ れる こ と が あり
︑ ま た
︑ それ 以 外 の 場合 で も︑ 照 会 先 の報 告 義 務 は 公的 な
︑ な いし 公 法 上 の 義務 と さ れ る︒ そ の た め
︑こ の 訴 え が公 法 上 の 法 律関 係 に 関 する 確 認の 訴 え
︵ 行政 事 件 訴 訟 法四 条
︶ と して 認 め ら れ るか 否 か が 問題 と な る
︒ この 点 に つ き裁 判 例
②
③ は︑ 弁 護 士 会照 会 は 私 的 団体 も 相 手 方に で き る た め︑ 公 務 所
・公 的 団 体 に 対す る 照 会 の場
合 も照 会 者
・ 照会 申 出 者 と 照会 先 と が 公法 上 の 法 律 関係 に 立 つ とは 認 め ら れ ない と し て
︑報 告 拒 絶 の 違法 確 認 の 訴え は 公法 上 の 法 律関 係 に 関 す る確 認 の 訴 えと し て 不 適 法で あ る と した
︒ 他方
︑ 裁 判 例④ は
︑ 報 告 義務 を 負 う 照会 先 が 報 告 をし な い 場 合に は
︑ 依 頼 者は 公 法 上 の法 律 関 係 に 関す る 確 認 の訴 え とし て
︑ 照 会先 を 被 告 と して 弁 護 士 会に 対 す る 報 告義 務 の 確 認を 求 め る こ とが で き る とし た
︒ こ れ に対 し
︑ 控 訴審 判 決た る 裁 判 例⑤ は
︑ 傍 論 で︑ こ こ で の確 認 の 訴 え は私 人 た る 依頼 者 X が 私 人た る 照 会 先Y に 対 し 報 告義 務 の 確 認を 求 める も の で あり
︑ か つ Y の報 告 拒 絶 が公 権 力 の 行 使に 当 た る 行為 と す る こ とは で き な いた め
︑ 公 法 上の 法 律 関 係に 関 する 確 認 の 訴え と み る 余 地は な い と した
︒ この よ う に
︑報 告 義 務 に 関す る 確 認 の訴 え が 公 法 上の 法 律 関 係に 関 す る 確 認の 訴 え に 該当 す る か 否 かに つ き
︑ 積極 に 解す る の は 裁判 例
④ の み であ り
︑ 裁 判例
②
③
⑤ は 消極 に 解 す る︒ こ の 点 に 関し て
︑ 一 般に 弁 護 士 会 照会 お よ び 照会 に 対す る 報 告 は行 政 処 分 等 の行 政 特 有 の諸 行 為 に 関 わる も の で はな い た め
︑ 報告 義 務 に 関す る 確 認 の 訴え は
︑ 公 法上 の 法律 関 係 に 関す る 確 認 の 訴え と す る こと は で き な いと 考 え ら
쐍1
︶
れる
︒ 第 二 節 即 時 確 定 の利 益 確認 の 利 益 が認 め ら れ る ため に は
︑ 原告 の 権 利
・ 法的 地 位 に 危険 や 不 安 が 現存 し
︑ そ の解 消 の た め に確 認 判 決 の取 得 が必 要 か つ 適切 で あ る こ とが 求 め ら れる
︒ こ の 即 時確 定 の 利 益の 前 提 と し て︑ 確 認 判 決に よ り 保 護 され る べ き 原告 の 法的 利 益 の 存否 が 問 題 に なる
︒ この 点 に つ き裁 判 例
① は
︑弁 護 士 Z がY に 対 し 直 接ま た は 弁 護士 会 に 代 位 して 回 答 を 求め る 権 利 を 有し な い こ とを 理 由に 確 認 の 利益 を 否 定 し た︒ ま た
︑ 裁判 例
⑤ は
︑ 弁護 士 会 照 会を 行 う 主 体 は弁 護 士 会 であ り
︑ こ れ に基 づ く 法 律関
係 は弁 護 士 会 と照 会 先 と の 間に 係 る も ので あ り
︑ Y が報 告 義 務 を負 う と し て もそ れ は 弁 護士 会 に 対 す る一 般 公 法 上の 義 務で あ り 依 頼者 X に 対 す る直 接 の 義 務で は な い た め︑ Y が 報 告す る こ と に よる X の 利 益は 反 射 的 利 益に す ぎ ず
︑事 実 上の 利 害 関 係を 有 す る に すぎ な い た め︑ X の 権 利
・法 律 関 係 につ き 危 険 や 不安 が 現 存 する と は い え ず︑ 即 時 確 定の 利 益を 有 す る とい う こ と は でき な い と した
︒ 他方
︑ 裁 判 例⑤ の 原 判 決 たる 裁 判 例
④は
︑ 報 告 義 務の 確 認 請 求を 公 法 上 の 法律 関 係 に 関す る 確 認 の 訴え と し て 適法 と する が
︑ こ の訴 え の 利 益 は民 事 訴 訟 の確 認 の 利 益 が基 本 と
쐍2
︶
な る︒ こ の 点 に つき 裁 判 例
④は
︑ Y が 弁 護士 会 に 報 告し な かっ た こ と の直 接 の 結 果 とし て X の A・ B に 対 す る強 制 執 行 によ る 権 利 実 現が 妨 げ ら れて お り
︑ X はY に よ る 妨害 を 排除 し 権 利 救済 を 受 け る ため
︑ Y の 報告 義 務 の 確 認を 求 め る こと が で き る とし
︑ こ の よう な 場 合 に 報告 義 務 を 確認 す るこ と が
︑ 法律 上 の 紛 争 を解 決 し 当 事者 の 法 律 上 の地 位 の 不 安・ 危 険 を 除 去す る た め に必 要 か つ 適 切で あ る こ とは 明 らか で あ る とす る
︒ この よ う に
︑裁 判 例
①
⑤ が報 告 義 務 の確 認 に よ り 保護 さ れ る べき 弁 護 士
・ 依頼 者 の 法 的利 益 を 否 定 する の に 対 し︑ 裁 判例
④ は 依 頼者 の 法 的 利 益を 肯 定 す るが
︑ こ の 問 題を ど う 考 える べ き で あ ろう か
︒ まず
︑弁 護 士 会 照 会で は 個 々 の弁 護 士 に 照 会権 は 認 め ら
쐍3
︶
れず
︑弁 護 士 会 へ の照 会 申 出 権の み が 認 め られ る
︒し た がっ て
︑裁 判 例
① が弁 護 士 に よ る照 会 先 に 対す る 回 答 請 求権 の 確 認 の訴 え を 却 下 する 際
︑ 弁 護士 が 直 接 照 会先 に 回 答 を求 め る権 利 を 有 しな い こ と
︑ 弁護 士 が 照 会・ 回 答 請 求 を照 会 先 に 行う こ と を 弁 護士 会 に 求 める 権 利 を 有 さず
︑ 弁 護 士会 に 代位 し て 回 答請 求 を す る 権利 も 有 し ない こ と を 根 拠と す る の は︑ そ の 限 り で妥 当 で あ る︒ しか し
︑ 弁 護士 会 照 会 の 際に 弁 護 士
・依 頼 者 と 照 会先 の 間 で 直接 の 法 律 関 係が 成 立 し ない と し て も
︑報 告 義 務 の確 認 判決 に よ り 保護 さ れ る べ き弁 護 士
・ 依頼 者 の 法 的 利益 が 認 め られ る か 否 か は別 途 問 わ れる べ き で あ ろう
︒ こ の 点に
関 して
︑ 現 在 公刊 裁 判 例 は 裁判 例
④
⑤ のみ で あ り
︑ 学説 の 議 論 も端 緒 に つ い たば か り で
쐍4
︶
ある
︒ た だ
︑ 照会 先 の 報 告拒 絶 を不 法 行 為 とす る 依 頼 者
・弁 護 士 に よる 損 害 賠 償 請求 に お い て︑ 報 告 拒 絶 によ り 侵 害 され る 依 頼 者
・弁 護 士 の 法的 利 益が 認 め ら れる か 否 か に つき 下 級 審 裁判 例 の 蓄 積 があ り
︑ 学 説で も 議 論 の 展開 が み ら れる た め
︑ 報 告義 務 の 確 認の 利 益を 考 察 す る際 に も
︑ こ の点 の 検 討 から 示 唆 を 得 られ る と 考 えら れ る
︒ 報告 拒 絶 に 基づ く 照 会 先 の不 法 行 為 責任 が 問 わ れ た下 級 審 裁 判例 で は
︑ 一 方で
︑︵ a
︶照 会 権 限 を 有 する の は 弁 護士 会 であ り 弁 護 士に は 照 会 権 限が な い こ と︑ 報 告 が な され る こ と によ る 弁 護 士
・依 頼 者 の 利益 は 事 実 上 の利 益 な い し反 射 的利 益 に す ぎな い こ と 等 を理 由 に
︑ 報告 拒 絶 に よ る弁 護 士
・ 依頼 者 の 法 的 利益 の 侵 害 はな い と す る 裁判 例 が
쐍5
︶
あ る︒ 他 方で
︑︵ b
︶照 会 権 限 を 有 する の は 弁 護士 会 で あ る とは い え
︑ 照会 に よ る 自 己の 法 的 利 益の 実 現 や 享 受を 求 め て いる 実 質的 な 主 体 が弁 護 士
・ 依 頼者 で あ る こと 等 を 理 由 に︑ 報 告 拒 絶が 弁 護 士
・ 依頼 者 の 法 的利 益 の 侵 害 に当 た る と する 裁 判例 が
쐍6
︶
あ る
︒ま た
︑ 学 説 でも 前 記 の︵ a︶ 説 を 採 る
쐍7
︶
立場 と︵ b
︶説 を 採 る
쐍8
︶
立 場 とが 対 立 し てい
쐍9
︶
る が
︑ こ れら の 点 を 踏ま え て︑ 以 下 考 察を 進 め て い きた い
︒ この 問 題 の 考察 の 際 に は
︑弁 護 士 会 照会 が 照 会 権 を弁 護 士 会 にの み 認 め
︑ 弁護 士 に は 照会 申 出 権 の みを 認 め
︑ 弁護 士 会を 介 し て 報告 の 結 果 を 得る こ と が でき る に す ぎ ない と す る 点を ど う 評 価 する か が 重 要で あ る
︒ 弁 護士 法 二 三 条の 二 は一 九 五 一 年の 弁 護 士 法 一部 改 正 に より 新 設 さ れ た規 定 で あ るが
︑ こ の 規 定の 沿 革 を 振り 返 る こ と で考 察 の 手 がか り を得 る こ と にし
쐍10
︶
た い
︒ 現行 弁 護 士 法が 制 定 さ れ たの は 一 九 四九 年 で あ る が︑ 同 年 の 第五 回 国 会 で の弁 護 士 法 案の 審 議 の 際
︑二 三 条 に 弁 護 士は
︑ そ の 職務 を 執 行 す るた め 必 要 な事 実 の 調 査 及び 証 拠 の し﹅う﹅
集 を 行 う こと が で き る︒ 但 し
︑ 相 手方 は
︑ 正 当の 理 由が あ る 場 合に は
︑ こ れ を拒 む こ と がで き る と の一 項 を 挿 入す る 修 正 案 が参 議 院 法 務委 員 会 に 提 出さ れ た
︒ この
提 案の 趣 旨 は
︑ 現 在 自 由 に委 さ れ て お る事 実 の 調 査及 び 証 拠 の 蒐集 と い う もの を
︑ 権 利 とし て 確 立 しよ う と い う も の であ
쐍11
︶
っ た
︒ この 修 正 案 は 参議 院 法 務 委員 会
・ 本 会 議で 可 決 さ れ︑ 衆 議 院 に 回付 さ れ た
︒こ れ に 対 し 衆議 院 で は
︑弁 護 士に こ の よ うな 権 利 ま で 認め る こ と は相 当 で は な いと し て
︑ 修正 案 に 同 意 せず 修 正 前 の原 案 を 再 議 決・ 可 決 し た︒ し かし
︑ 弁 護 士の 事 実 調 査
・証 拠 収 集 権を 立 法 化 し たい と の 要 求は 続 き
︑ 一 九五 一 年 の 第一
〇 回 国 会 で弁 護 士 法 一部 改 正案 が 審 議 され た 際
︑ 現 行の 二 三 条 の二 を 挿 入 す る修 正 案 が 参議 院 法 務 委 員会
・ 本 会 議で 可 決 さ れ
︑衆 議 院 も 回付 さ れた 修 正 案 に同 意 し 可 決 した た め
︑ 弁護 士 会 照 会 制度 が 新 設 され る に 至 っ た︒ な お
︑ 現行 弁 護 士 法 制定 時 に 提 案さ れ た弁 護 士 の 事実 調 査
・ 証 拠収 集 権 に 関す る 規 定 案 が現 行 法 二 三条 の 二 の 規 定に 変 更 さ れた の は
︑ 個 々の 弁 護 士 が直 接 相手 方 に 出 向い て 事 実 調 査・ 証 拠 収 集を な し 得 る とす れ ば
︑ 検察 官 類 似 の 権限 を 付 与 する も の で あ るし
︑ 憲 法 上の 令 状主 義 に 照 らし て も 行 き 過ぎ で あ る との 批 判 を 考 慮し た 結 果 で
쐍12
︶
あ る
︒ この 沿 革 を 踏ま え
︑ 一 方 で︑ 弁 護 士 会照 会 が 個 々 の弁 護 士 に 事実 調 査
・ 証 拠収 集 の 権 限を 認 め ず
︑ 弁護 士 会 を 介す る 規律 を 採 っ てい て も
︑ 弁 護士 会 が 権 利主 体 と な る こと を 積 極 的に 意 図 し て いた わ け で はな く
︑ 個 々 の弁 護 士 の 権限 を 正面 か ら は 規定 し な い こ とに 力 点 が あっ た の で は ない か と 解 する 立 場 が 考 え
쐍13
︶
ら れ
︑ こ の立 場 か ら は
︑報 告 に 実 質的 な 法的 利 益 を 有す る の は 弁 護士
・ 依 頼 者で あ る と の 理解 が 導 か れる
︒ 他 方
︑ 弁護 士 会 照 会が 弁 護 士 会 にの み 照 会 権限 を 認め
︑ 個 々 の弁 護 士 は 照 会申 出 権 の みを 有 し
︑ 照 会先 の 報 告 義務 も 弁 護 士 会に 負 う も のと の 理 解 を 形式 的 に 徹 底す れ ば︑ 報 告 に つい て の 弁 護 士・ 依 頼 者 の利 益 は 反 射 的利 益 な い し事 実 上 の 利 益に 過 ぎ な いと の 理 解 が 導か れ る
︒ この 点 を 検 討す る と
︑ 弁 護士 法 二 三 条の 二 の 沿 革 をみ て も
︑ 弁護 士 に 職 務 執行 の た め の事 実 調 査
・ 証拠 収 集 手 段を 認 める こ と に 主眼 が 置 か れ てお り
︑ 現 行の 弁 護 士 会 照会 で も
︑ 照会 は 弁 護 士 会が 照 会 先 に報 告 を 求 め る形 で な さ れ︑ か つ弁 護 士 会 が照 会 申 出 の 適否
・照 会 の 可否 を 判 断 する と は い え
︑照 会 事 項 は弁 護 士 の 受 任事 件 に 必 要な 事 項 で あ り︑
弁 護士 会 は 個 々の 照 会 事 項 につ き 利 害 関係 を 有 し な い︒ し た が って
︑ 照 会 先 の報 告 拒 絶 によ り 不 利 益 を被 る の は 弁護 士
・依 頼 者 で あり
︑ そ れ 故
︑弁 護 士
・ 依頼 者 に は 報 告義 務 の 確 認判 決 に よ り 保護 さ れ る べき 法 的 利 益 が認 め ら れ ると 解 すべ き で あ る︒ それ で は
︑ 報告 義 務 の 確 認判 決 に よ り保 護 さ れ る べき 法 的 利 益と し て い か なる も の が 考え ら れ る の であ ろ う か
︒ま ず
︑依 頼 者 の 法的 利 益 で あ るが
︑ 依 頼 者が 提 起 し た 報告 義 務 の 確認 の 訴 え を 適法 と し
︑ 請求 も 認 容 し た唯 一 の 公 刊裁 判 例た る 裁 判 例④ は
︑ 確 認 判決 に よ り 保護 さ れ る べ き依 頼 者 の 利益 が 何 か を 明確 に 述 べ てい な い
︒ し かし
︑ 判 旨 の全 体 から み て
︑ 照会 に よ り 強制 執 行 の た めに 必 要 な 情報 を 得 て
︑ 強制 執 行 に より 実 効 的 な 権利 救 済 を 受け る 利 益 が︑ 依 頼者 の 利 益 とし て 想 定 さ れて い る と 考え ら れ る
︒ 学説 で は
︑ 強制 執 行 の 場 合の 差 押 え の対 象 た り 得 る責 任 財 産 を確 保 する 利 益 や 訴訟 の 場 合 に 事実 や 証 拠 を探 知 し て 審 理に 提 出 し 適正 な 判 断 を 受け る 利 益 を挙 げ る
쐍14
︶
も の があ る
︒ また
︑ 照 会 先の 報 告 拒 絶 に係 る 不 法 行為 責 任 に 関 する 裁 判 例 では
︑ 報 告 拒 絶に よ り 侵 害さ れ る 依 頼 者の 法 的 利 益に つ き︑ 司 法 制 度に よ る 紛 争 解決 を 適 切 に実 現 す る
쐍15
︶
利 益︑ 遺 言 執 行者 た る 司 法 書士 の 報 告 拒絶 に 関 す る 事案 で
︑ 相 続人 た る依 頼 者 が 遺留 分 減 殺 請 求権 を 円 滑 に行 使 す る
쐍16
︶
利 益を 挙 げ る もの が あ る
︒ また
︑ 学 説 では
︑ 裁 判 を 受け る
쐍17
︶
権 利
︑照 会 によ り 回 答 を得 る
쐍18
︶
利 益 が 挙げ ら れ て いる
︒ さ ら に
︑照 会 先 の 報告 拒 絶 に よ り侵 害 さ れ る弁 護 士 の 法 的利 益 に つ き︑ 依 頼者 の た め に事 務 処 理 を 円滑 に 遂 行 する
쐍19
︶
利 益
︑ 受 任事 件 の 処 理に 必 要 な 調 査等 を 行 う
쐍20
︶
利益 を 挙 げ る 裁判 例 が あ り︑ 学 説で は
︑ 照 会に よ り 回 答 を得 る
쐍21
︶
利 益 を挙 げ る も の があ る
︒ そも そ も
︑ 弁護 士 会 照 会 は受 任 事 件 につ き 訴 訟 係 属な い し 訴 訟提 起 の 意 図 の有 無 に か かわ ら ず 利 用 可能 で あ り
︑民 事 訴訟 と 関 係 する 場 面 で も
︑訴 え 提 起 前︑ お よ び 強 制執 行 の 準 備段 階 等 の 様 々な 段 階 で の利 用 が 考 え られ
︑ さ ら に行 政 訴訟 や 刑 事 弁護 等 の た め の情 報 の 入 手に も 用 い ら
쐍22
︶
れる
︒ し た がっ て
︑ 報 告 義務 の 確 認 判決 に よ り 保 護さ れ る べ き依
頼 者の 法 的 利 益と し て
︑ 前 記の 裁 判 例
・学 説 で 挙 げ られ る も の も含 め
︑ 具 体 的事 案 に 応 じて 多 様 な も のが 想 定 さ れ︑ ま た︑ 弁 護 士 の法 的 利 益 と して
︑ 依 頼 者と 別 次 元 の もの も 想 定 され る
︒ し か し︑ 筆 者 は
︑依 頼 者
・ 弁 護士 を 問 わ ず︑ ま た具 体 的 な 事案 の 相 違 を 捨象 し て も なお 全 て の 事 案に 共 通 し
︑か つ 確 認 判 決に よ る 保 護に 値 す る 法 的利 益 と し て︑ 照 会に よ り 報 告を 得 る 利 益 を想 定 で き ると 考 え る
︒ すな わ ち
︑ まず 依 頼 者 は 弁護 士 会 照 会を 通 じ
︑ 訴 状が 適 法 な もの と され る に 足 りる よ う 被 告 を特 定 す る こと
︑ 主 張
・ 立証 に 必 要 な証 拠
・ 情 報 を入 手 す る こと
︑ 強 制 執 行の 対 象 財 産探 索 のた め の 情 報を 入 手 す る こと 等
︑ ひ いて は 司 法 制 度に よ る 紛 争解 決 や 実 効 的な 権 利 実 現等 を 目 指 し
︑行 政 訴 訟 や刑 事 訴訟 の 文 脈 では ま た 違 っ た目 的 が 想 定さ れ 得 る
︒ また
︑ 弁 護 士は 弁 護 士 会 照会 を 通 じ
︑受 任 事 件 の 処理 に 必 要 な調 査 等を 行 う こ と︑ 依 頼 者 の ため に 事 務 処理 を 円 滑 に 遂行 す る こ と︑ ひ い て は 前記 の 依 頼 者の 目 的 達 成 のた め に 代 理人 と して 助 力 す るこ と を 目 指 す︒ そ し て
︑こ こ で 挙 げ た依 頼 者
・ 弁護 士 の 目 的 達成 に つ き
︑具 体 的 な 事 案ご と に 多 様な 利 益が 想 定 さ れ︑ ま た
︑ 捉 え方 次 第 で は抽 象 度 の 高 い利 益
︵ 裁 判を 受 け る 権 利に 係 る 利 益等
︶ も 想 定 され る
︒ そ のた め
︑こ の よ う な多 様 な 利 益 を報 告 義 務 の確 認 判 決 に より 保 護 さ れる べ き 利 益 とす る と
︑ 事案 に よ っ て は要 保 護 性 に疑 問 が呈 さ れ る 可能 性 も あ る
︒し か し
︑ 依頼 者・ 弁 護 士の 様 々 な 目 的の 実 現 の ため の 共 通 の 第一 段 階 と して
︑ 個 々 の︵ 受 任
︶事 件 に つ き必 要 な 事 項 に関 す る 弁 護士 会 照 会 に 係る 報 告 を 照会 先 よ り 得 るこ と が 考 えら れ
︑ し か も︑ こ の 報 告を 得 る利 益 は 報 告義 務 の 確 認 判決 に よ る 保護 に 値 す る 具体 性 を 備 えた 法 的 利 益 であ る と 考 えら れ る
︒ 故 に筆 者 は
︑ 照会 先 の報 告 拒 絶 によ り 危 険
・ 不安 に さ ら され る
︑ 依 頼 者・ 弁 護 士 が自 ら の
︵ 受 任︶ 事 件 に 必要 な 照 会 事 項に 関 す る 報告 を 得る 利 益 の 保護 の た め
︑ 報告 義 務 の 確認 の 訴 え に つき 即 時 確 定の 利 益 が 認 めら れ る べ きで あ る と 考 える
︒
第 三 節 手 段 選 択 の適 否 確認 の 利 益 が認 め ら れ る には
︑他 の 法 的手 段 で は なく 確 認 の 訴 えを 選 択 し たこ と が 適 切 であ る こ と も必 要 と さ れ る︒ この 点 に つ き裁 判 例
① は
︑照 会 先 Y の回 答 拒 絶 に より 弁 護 士 Zの 受 任 事 件 の処 理 に つ き何 ら か の 具 体的 損 害 を 被る こ とが あ っ た とし て も
︑ Z はY に 対 し 損害 賠 償 請 求 等の 方 法 に より 救 済 を 求 める べ き で ある と し て
︑ 回答 請 求 権 の確 認 の利 益 を 否 定す る
︒ ま た 裁判 例
⑤ は
︑照 会 先 Y の 報告 拒 絶 に より 依 頼 者 X の権 利 等 に つき 危 険
・ 不 安が 生 じ た とい う ので あ れ ば
︑そ の 除 去 の ため に は
︑ Yの 報 告 義 務 の確 認 の 訴 えに よ る よ り も︑ 報 告 拒 絶が 違 法 で あ るこ と を 理 由と す る損 害 賠 償 請求 等 に よ る 方が よ り 有 効か つ 適 切 で ある と し て
︑報 告 義 務 の 確認 の 利 益 を否 定 す る
︒ なお 裁 判 例
②③ は
︑報 告 拒 絶 の違 法 確 認 の 訴え が 民 事 訴訟 と し て 適 法か 否 か を 傍論 で 判 断 し てお り
︑ そ こで は
︑ 報 告 拒絶 が 違 法 であ る こと を 理 由 とす る 損 害 賠 償請 求 に よ るこ と 以 上 に 確認 の 訴 え によ る こ と が 紛争 解 決 に とっ て 有 効 な いし 適 切 で ある と いえ な い か ら︑ こ の 訴 え は民 事 訴 訟 とし て も 確 認 の利 益 が な いと す る
︒ この よ う に
︑報 告 義 務 の 確認 の 利 益 を否 定 す る 裁 判例 は 一 様 に︑ 損 害 賠 償 請求 の 方 が 報告 義 務 の 確 認の 訴 え よ りも 弁 護士
・ 依 頼 者の 法 的 利 益 につ い て の 危険
・ 不 安 の 除去 や 紛 争 解決 に と っ て 有効
・ 適 切 であ る と し て
︑確 認 の 訴 えの 選 択を 不 適 切 であ る と す る が︑ こ の 点 をど う 考 え る べき で あ ろ うか
︒ そも そ も
︑ 確認 の 訴 え に よる こ と の 適否 が 確 認 の 利益 の 判 断 要素 と な る の は︑ 確 認 の 訴え 以 外 に よ り適 切 な 紛 争解 決 手段 が 存 在 する 場 合 に は その 手 段 に よる べ き で あ り︑ 確 認 の 訴え は そ れ 以 外に 適 切 な 紛争 解 決 手 段 が存 在 し な い場 合 にの み 補 充 的に 認 め ら れ るべ き で あ るこ と を 根 拠 と
쐍23
︶
す る が
︑ その 前 提 と し て︑ 確 認 の 訴え と そ れ 以 外の 紛 争 解 決手 段 との 目 的 の 共通 性 が 要 求 され る と 考 えら れ る
︒ し かし
︑ 報 告 義務 の 確 認 請 求と 報 告 拒 絶を 理 由 と す る損 害 賠 償 請求