-官民一体型自立支援プログラムの確立に向けて-

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宮脇研究室

卒業論文

自立支援 自立支援 自立支援

自立支援プログラム プログラム プログラム プログラムから から から考 から 考 考 考える える える生活保護制度 える 生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度のこれから のこれから のこれから のこれから

-官民一体型自立支援プログラムの確立に向けて-

平成 24 年度 09E363 田村友紀

(2)

2

Ⅰ Ⅰ

Ⅰ Ⅰ. . . .はじめに はじめに はじめに はじめに

Ⅱ Ⅱ

Ⅱ Ⅱ. . . .私 私 私 私たちの たちの たちの生活 たちの 生活 生活 生活を を を を保障 保障 保障する 保障 する する する生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度

1.生活保護制度の概要

2.生活保護の手続き

3.生活保護制度の現状と問題点 (1)生活保護制度の現状 (2)生活保護制度の問題点

Ⅲ Ⅲ

Ⅲ Ⅲ. . . .自立支 自立支 自立支 自立支援 援 援 援プログラム プログラム プログラム プログラムから から から から考 考 考 考える える える える生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度

1.自立支援プログラムの概要

(1)自立支援プログラム (2)就労支援プログラム (3)日常生活支援プログラム (4)社会生活支援プログラム

2.北海道釧路市の実施事例から導く自立支援プログラムの成功要因 (1)北海道釧路市

(2)自立支援プログラムの成功要因

Ⅳ Ⅳ

Ⅳ Ⅳ. . . .自立支援 自立支援 自立支援 自立支援プログラム プログラム プログラム プログラムから から から から考 考 考 考える える える える生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度の 生活保護制度 の の の理想像 理想像 理想像 理想像

1.生活保護制度の理想像の提案

2.生活保護制度の理想像に変わるために必要な現在の生活保護制度の課題

Ⅴ Ⅴ

Ⅴ Ⅴ. . . .おわりに おわりに おわりに おわりに

1.各章の要約 (1)第Ⅱ章 (2)第Ⅲ章 (3)第Ⅳ章 2.結論

3.今後の展開と展望

(3)

3

Ⅰ. . . .はじめに はじめに はじめに はじめに

「年収5,000万円の超人気芸人Aの母親が生活保護を受けている。」という記事。これは、

2012年4月 12日販売の「女性セブン」に掲載されていた記事である。この超人気芸人 A とは、お笑い芸人「次長課長」の河本準一氏のことであり、この事件は、河本氏が記者会 見を開くなど、社会問題にまでなった事件である。筆者は、河本氏のファンだったことも あり、TVや新聞などでこの事件が目に留まるようになり、生活保護制度がどのような制度 であるかに次第に関心を持つようになり、調べてみることにした。

現在の生活保護制度とは、社会保障審議会福祉部会に設置された「生活保護制度の在り 方に関する専門委員会」が掲げた「利用しやすく自立しやすい制度へ」という基本理念の もと、生活困窮者の「経済的自立」、「日常生活の自立」および「社会生活の自立」の3つ の自立を支援することを目的として、2005(平成17)年度より、生活保護受給者に「自立 支援プログラム」を実施している。しかし、自立支援プログラムの現状を見ると、「経済的 自立」、「日常生活の自立」および「社会生活の自立」の3つの自立の全てを支援するもの でなければならないにも関わらず、「経済的自立」の支援が重点的に実施されるものになっ ていた。さらに、自治体毎に実施されるため、自治体によって自立支援プログラムの内容 が異なり、その成果に差が生じている。このような現状に対して、厚生労働省は、目的に 応じた実効性のある自立支援プログラムを策定することを課題に掲げているが、具体的な プログラムの提案はされておらず、課題の解決に向けた取り組みが進んでいるようには思 えない。そこで、これらの問題点を解消し、自立支援プログラムが、「経済的自立」、「日常 生活の自立」および「社会生活の自立」の3つの自立の全てを促し、また、上記のような 事件を起こさないためには、今後、自立支援プログラムはどうなるべきかを考察してみた いと思うようになった。

本稿では、まず、自立支援プログラムの実施事例を取り上げ、そこから自立支援プログ ラムの成功要因を浮き彫りにし、さらに、自立支援プログラムの成功要因を、「官」と「民」

の2つの視点から検討することで、理想の生活保護制度の必要条件を導き出す。次に、こ のような方法で導き出した現在の生活保護制度の必要条件を満たす生活保護制度を「生活 保護制度の理想像」として、この理想像と現在の生活保護制度を比較することで、現在の 生活保護制度が克服すべき課題を明らかにしていく。

以下では、「生活保護制度の理想像」を導き出し、現在の生活保護制度の課題を明らかに していくために、3つの章を設定することにした。

まず、第Ⅱ章の「私たちの生活を保障する生活保護制度」では、本稿のテーマである「生 活保護制度」の概要を、生活保護制度を支える3つの要素を用いて説明した上で、国立社 会保障・人口問題研究所および厚生労働省が公表しているデータを用いて、生活保護制度 の現状を把握することを通して、問題点を導き出し、解決策の糸口を探っていく。

次に、第Ⅲ章の「自立支援プログラムから考える生活保護制度」では、生活保護制度の

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4

問題点の解決策のひとつとして、2005(平成17)年度から実施されている「自立支援プロ グラム」を、自立支援プログラムを構成する3つのプログラムを説明することで、自立支 援プログラムの全体像を把握し、その後、自立支援プログラムの成功事例から自立支援プ ログラムの成功要因を導き出す。

最後に、第Ⅳ章の「自立支援プログラムから考える生活保護制度の理想像」では、第Ⅲ 章で導き出した自立支援プログラムの成功要因を、「官」と「民」の2つの視点から検討し、

理想の生活保護制度の必要条件を導き出すことで、その条件を満たす生活保護制度の理想 像を提案する。また、現在の生活保護制度が生活保護制度の理想像に変わるためには、現 在の生活保護制度がどのような点を克服すればよいかも、現在の生活保護制度と生活保護 の理想像を比較することで検討していく。

以上の3つの章から、本稿では、「自立支援プログラムから考える生活保護制度のこれか ら‐官民一体型自立支援プログラムの確立に向けて‐」というテーマに対する結論を導き 出していく。

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5

Ⅱ. . . .私 私 私たちの 私 たちの たちの たちの生活 生活 生活を 生活 を を を保障 保障 保障する 保障 する する する生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度

第Ⅱ章では、生活保護制度の概要および生活保護を受給するまでの流れを示すことで、

生活保護制度の全体像を明らかにし、その後、生活保護制度の現状と問題点を、国立社会 保障・人口問題研究所および厚生労働省が公表するデータを用いて導き出す。まず、第1 節では、生活保護制度を支える3つの要素を説明しながら、生活保護制度の概要を述べて いく。次に、第2節では、生活保護を受給するまでの流れを3段階に分けて説明する。最 後に、第3節では、生活保護制度の現状と問題点を、国立社会保障・人口問題研究所が公 表する2つのデータと、厚生労働省が公表するデータの3つのデータを用いて明らかにし ていく。

以上の考察を通して、生活保護制度の概要および生活保護の手続きの流れを示すととも に、生活保護制度の現状と問題点を浮き彫りにすることで、生活保護制度の問題点を解決 するきっかけとする。

1 1 1

1. . . .生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度の 生活保護制度 の の の概要 概要 概要 概要

本節では、生活保護制度を支える「4つの原理」、「4つの原則」および「8つの種類」

の3つの要素を説明することを通して、生活保護制度の概要を述べていく。なお、この3 つの要素を、生活保護制度の概要を説明するために用いる理由は、この3つの要素が生活 保護制度を構成する重要な要素であると考えられるためである。

本節を通して、生活保護制度を支える3つの要素を説明することで、生活保護制度の全 体像をつかんでいく。

生活保護制度とは、国が生活に困窮する全ての国民に対して、困窮に至った原因とは関 係なく、無差別平等に、日本国憲法第25条(1)に定められた「健康で文化的な最低限度の生 活」を営む権利を保障する制度である(2)。また、生活保護法(3)によると、生活保護制度と は、「資産や能力など全てを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じ て必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度 のこと」である。つまり、生活保護制度とは、国が生活に困窮する全ての国民に対して、

(1) 日本国憲法第25条とは、「全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利 を有する。国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上 および推進に努めなければならない。」である。

(2) 杉村(2008,p.84)を参照せよ。

(3) 生活保護法とは、「国が国民の健康で文化的な必要最低の生活を守るために、生活困 窮者に対して、必要な保護を行い、その自立を助長する目的の法律であり、日本国憲法 第25条に基づき、1950年に制定された法律。」である(厚生労働省HP,2012,10月 25日閲覧)。

(6)

6

健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度のことである。そして、

この制度は、「4つの原理」、「4つの原則」および「8つの種類」から構成されている(4)。 この3つの要素は、生活保護制度を構成する重要な要素であると考えられることから、以 下ではこの3つをひとつずつ説明していき、生活保護制度の全体像を明らかにしていく。

また、以下では、現に生活保護を受けている者のことを「被保護者」とし、現に生活保護 を受けているか否かに関わらず、保護を必要とする状態にある者を「要保護者」とする。

①4

①4①4

①4つのつのつのつの原理原理原理 原理

生活保護制度の4つの原理とは、「国家責任の原理」、「無差別平等の原理」、「最低生 活の保障の原理」および「保護の補足性の原理」であり、生活保護法の第1条から第4 条(5)に定められている。まず、1つ目の「国家責任の原理」とは、国が生活に困窮する 全ての国民に対して必要な保護を行い、最低限度の生活を保障し、自立を助長すること を意味している。次に、2つ目の「無差別平等の原理」とは、全ての国民が要件を満た す限り、保護を無差別平等に受けることができることを意味する。そして、3つ目の「最 低生活の保障の原理」とは、保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を 維持することができるものでなければならないことを意味している。最後に、4つ目の

「保護の補足性の原理」とは、保護は、利用し得る資産・能力その他あらゆるものを最 低限度の生活維持に活用することを要件とし、さらに扶養義務者の扶養が優先されるこ とを意味している。これら「4つの原理」は、生活保護法第5条(6)に規定されている通 り、生活保護法において最高の価値をもつものであり、他の規定は全てこれら基本原理 に基づいて解釈され、かつ運用されなければならないこととなっている。

(4) 田畑(2006,pp.23-45)を参照せよ。

(5) 生活保護制度の第1条から第4条は、以下の通りである。

生活保護法第1条とは、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、

国は生活に困窮する全ての国民に対し、その最低限度の生活を保護するとともに、その 自立を助長することを目的とする。」である。

生活保護法第2条とは、「全ての国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この 法律による保護を無差別平等に受けることができる。」である。

生活保護法第3条とは、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化 的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」である。

生活保護法第4条とは、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力 その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として 行われる。②民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に 定める扶助は、全てこの法律による保護に優先して行われるものとする。③前2項の規 定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。」で ある。

(6) 生活保護法第5条とは、「前4条に規定するところは、この法律の基本原理であって、

この法律の解釈および運用は、全てこの原理に基づいてされなければならない。」であ る。

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7

②4

②4②4

②4つのつのつのつの原則原則原則 原則

生活保護制度の4つの原則とは、「申請者保護の原則」、「基準および程度の原則」、「必 要即応の原則」および「世帯単位の原則」であり、生活保護法の第7条から第 10 条(7) に定められている。まず、1つ目の「申請者保護の原則」とは、保護は、要保護者、扶 養義務者および同居親族の申請に基づき開始し、要保護者が急迫状況にあるときは保護 の申請がなくても必要な保護を行うことができることを意味している。次に、2つ目の

「基準および程度の原則」とは、保護は、厚生労働大臣の定める基準で測定した要保護 者の需要を行う程度で、最低限度の生活の需要を満たす範囲内で行われることを意味す る。そして、3つ目の「必要即応の原則」とは、保護は、被保護者の年齢、性および健 康状態など、その個人または世帯の実際のニーズを考慮して、有効かつ適切に行うもの とすることを意味する。最後に、4つ目の「世帯単位の原則」とは、保護は、世帯単位 で行われるが、難しい場合は個人単位で保護することを意味している。これら「4つの 原則」は、本章第1節の①で説明した「4つの原理」と合わせて、生活保護制度の運営 上の原則を明記したものである。

③8

③8③8

③8つのつのつのつの種類種類種類 種類

生活保護制度の保護の種類は8つに分類することができる(8)。その8種類とそれぞれ の給付額は、次のページの表1に整理している。なお、給付額とは、被保護者が健康で 文化的な最低限度の生活を営むために必要な費用であり、被保護者または介護業者およ び医療機関などの関係機関に給付される。また、この費用は、国が4分の3、各自治体 が残りの4分の1を負担している。

(7) 生活保護法の第7条から第10条は、以下の通りである。

生活保護法第7条とは、「保護は、要保護者、その扶養義務者またはその他の同居の 親族の申請に基づいて開始するものとする。ただし、要保護者が急迫した状況にあると きは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。」である。

生活保護法第8条とは、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護 者の需要を基準とし、そのうち、その者の金銭または物品で満たすことのできない不十 分を補う程度において行うものとする。②前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世 帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活 の需要を満たす十分なものであって、かつ、これこえないものでなければならない。」

である。

生活保護法第9条とは、「保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態などその個人 または世帯の実際の必要に相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする。」であ る。

生活保護法第10条とは、「保護は、世帯を単位としてその要否および程度を定めるも のとする。ただし、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができ る。」である。

(8) 厚生労働省HP(2012,10月8日閲覧)を参照せよ。

(8)

8

(表1)生活保護の種類と給付額

種類 内容 給付額

生活扶助 衣食住その他、日用生活に必要な費用。

(食費・光熱費・被服費など)

基準額は、食費などの個人的費用 および光熱水費などの世帯共通費 用を含めて算出する。

※ 特 定 の 世 帯 に は 加算が あ る 。

(母子加算など)

住宅扶助 住居費および補修のために必要な費用。 定められた範囲内で実費を支給。

教育扶助 義務教育を受けるために必要な学用品費。 定められた範囲内で実費を支給。

介護扶助 介護サービスの費用。 費用は直接介護業者へ支払い。

(本人負担なし)

医療扶助 医療サービスの費用。 費用は直接医療機関へ支払い。

(本人負担なし)

出産扶助 出産費用。 定められた範囲内で実費を支給。

生業扶助 就労に必要な技能の取得などにかかる費用。 定められた範囲内で実費を支給。

葬祭扶助 葬祭費用。 定められた範囲内で実費を支給。

(出所)厚生労働省HP,

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html

(2012年10月8日閲覧)。

表1は、厚生労働省HPを参考に、生活保護制度の保護の種類とそれぞれの給付額を 整理したものである。この表は、左側の列から順に、種類、その内容および給付額を表 している。

表1の一番左側の列を上から順に見て分かるように、生活保護制度には、生活扶助、

住宅扶助、教育扶助、介護扶助、医療扶助、出産扶助、生業扶助および葬祭扶助の8つ の種類がある。本章第1節の②で説明した「必要即応の原則」に基づいて、被保護者の 年齢および健康状態といった個々の事情を考慮した上で有効かつ適切な扶助が単給(1 つの扶助だけを給付)または併給(2つ以上の扶助を給付)される。原則として、介護 扶助と医療扶助は現物給付であり、その他の扶助は金銭給付になっている。金銭給付と は、金銭の給与または貸与によって保護を行うことであり、現物給付とは、物品の給与 または貸与、医療の給付および役務の提供を、金銭給付以外の方法で保護を行うことで ある。なお、介護扶助と医療扶助の2つが現物給付である理由は、被保護者が医療や介 護以外に費消するのを防止するためであると考えられている。

以上のように、本節では、「4つの原理」、「4つの原則」および「8つの種類」の側面 から生活保護制度の全体像を明らかにしてきた。生活保護制度とは、「4つの原理」およ

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9

び「4つの原則」の考えのもと、被保護者の必要に応じて「8つの種類」が単給または併 給され、被保護者の最低限度の生活を保障し、自立を助長する制度である。では、この制 度を利用するためには、どのような手続きが必要だろうか。その手順に関して、次の「2.

生活保護の手続き」で見ていくことにする。

2 2 2

2. . . .生活保護 生活保護 生活保護の 生活保護 の の の手続 手続 手続き 手続 き き き

本節では、生活保護を受給するまでの流れを、「事前の相談」、「保護の申請」および「保 護の要否の決定」の3段階に分けて説明する。なぜこの3段階に分けて説明するかと言う と、生活保護制度を統括する厚生労働省が「生活保護の手続きの流れ」として、生活保護 を受給するまでの流れをこの3段階に分けて、公式HPで示しているからである。

本節を通して、生活保護を受給するまでの流れを説明することで、生活保護の手続きを 把握していくこととする。

①①

①第第第第1111段階段階段階:段階:::事前事前事前事前のののの相談相談相談相談

第1段階は、「事前の相談」である。

通常、生活保護を申請する前に、申請を希望する者は、自身が住んでいる地域を所轄 する福祉事務所(9)の生活保護担当者に事前の相談をする。、生活保護担当者は、生活保護 制度の説明を行ったり、生活福祉資金および障害者施策などの、他の社会保障の活用可 否を検討したりする。ただし、急迫な場合は、「事前の相談」は必要としない。

②②

②第第第第2222段階段階段階:段階:::保護保護保護保護のののの申請申請申請申請

第2段階は、「保護の申請」である。

生活保護を受給するためには、本章第1節の②で説明した「申請者保護の原則」に示 されているように、要保護者本人や要保護者の生活の事情を熟知しているとみられるそ の扶養義務者または扶養義務者以外の同居している親族が保護の申請をしなければな らない。保護の申請は、原則として書面で行わなければならず、福祉事務所などに備え 付けられた所定の用紙(申請書)に必要事項(10)を記入し、福祉事務所の窓口に提出する 方法をとる。例外として、急迫状態では、口頭による申請も認められている。原則とし

(9) 福祉事務所とは、「社会福祉法第14条に規定されている『福祉に関する事務所』を言 い、福祉6法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害 者福祉法及び知的障害者福祉法)に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を司 る第一線の社会福祉行政機関である。都道府県及び市(特別区を含む)は設置が義務付 けられており、町村は任意で設置することができる。」である(厚生労働省HP,2012, 12月27日閲覧)。

(10) 必要事項とは、「申請者の住所・氏名、世帯員それぞれの氏名・生年月日・職業・通 学先・学歴・健康状態、保護を受けたいわけ、親きょうだい・親族その他の援助者の状 況」である(東京ソーシャルワーカー 2012,p.15)。

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て、書面による申請がとられている理由は、福祉事務所が保護の決定実施事務処理、保 護申請の意思確認および申請時期を明確にして、申請時の状況を記録するためである。

③③

③第第第第3333段階段階段階:段階:::保護保護保護保護のののの要否要否要否要否ののの決定の決定決定決定

第3段階は、「保護の要否の決定」である。

申請書を受けとった福祉事務所は、生活保護法の第 24 条3項(11)にも定められている ように、申請のあった日から14日以内に保護の要否、種類、程度および方法を決定し、

そのことを書面によって申請者に通知しなければならない。しかし、要保護者の扶養義 務者の資産状況調査に時間を要するなど、特別な理由がある場合には 30 日まで延長す ることが可能である。

福祉事務所は、申請されると、はじめに、保護の要否を決定するために本章第1節の

①で説明した「保護の補足性の原理」に基づき、主に8つの調査を行う(12)。その調査方 法は、職員による窓口での面接、居宅への訪問および関係者からの聞き取りなどである。

8つの調査の内容は、下に整理している。

(aaaa)))要保護者)要保護者要保護者の要保護者のの居住地の居住地居住地 居住地

居住地は、申請にかかる要保護者に対する保護の実施責任を確認する上で必要であ る。当該実施機関において保護の申請を受理するかどうかを決めるための必須事項で ある。

(bbbb)))世帯構成)世帯構成世帯構成 世帯構成

本章第1節の②で説明した「世帯単位の原則」に基づき、法による保護を適用すべ き世帯の範囲を確定する必要がある。世帯構成の把握は、人員および続柄だけでなく、

基準生活費認定の上から性別、生年月日および健康状態など詳細に把握する必要があ り、基準生活費における各種加算、その他の生活費認定の要件となる事項の把握のた めに必要である。

(cccc)))収入)収入収入、収入、、稼働、稼働稼働の稼働のの状況の状況状況 状況

世帯構成員が、どのような就労、稼働を行っているか、また、その収入の状況を客 観的資料に基づいて把握する必要がある。

(dddd)))稼働能力)稼働能力稼働能力の稼働能力のの活用の活用活用 活用

稼働状況の把握とともに、世帯構成員の稼働能力の余地を認定する必要がある。

(eeee)))資産保有)資産保有資産保有の資産保有のの状況の状況状況 状況

要保護者の所有する資産が、所定の限度を超える場合は、保護の要件に該当しない

(11) 生活保護法第24条3項とは、「第1項の通知は、申請のあった日から14日以内にし なければならない。但し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要するなど特別な理由 がある場合には、これを30日まで伸ばすことができる。この場合には、同項の書面に その理由を明示しなければならない。」である。

(12) 田畑(2006,pp.96-98)を参照せよ。

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ものとして申請却下などの取り扱いがされる。その保有する農地や土地家屋などの不 動産を把握するともに、農地や事業用資産の収益価値を十分に確認して保護要否を判 断する必要がある。

(ffff)))扶養義務者)扶養義務者扶養義務者の扶養義務者のの有無の有無有無およびその有無およびそのおよびその資産およびその資産資産資産

要保護者の扶養義務者は、現に扶養を行っている者の他、絶対的扶養義務者はその 全員を、相対的扶養義務者のうちで資力のあるものは、その資産や収入を調査する。

(gggg)))他法他施策)他法他施策他法他施策の他法他施策のの適用の適用適用 適用

本章第1節の①で説明した「保護の補足性の原理」が示すように、生活保護は、要 保護者の利用し得る資産・能力・その他あらゆるものを活用した後に行われることか ら、生活保護法による保護に優先して適用される関係制度は少ない。そのため当該要 保護者に対する適用の可能性を考慮した調査が必要となる。

(hhhh)))要保護者)要保護者要保護者の要保護者のの生活歴の生活歴生活歴 生活歴

生活保護の決定実施にあたって、保護受給者の過去の社会活動の全てが把握されて いなければならないというものではないが、要保護者やその世帯の生活経験は大いに 参考になる。

次に、以上の8つの調査結果から保護の要否の決定をする。そのために、福祉事務所 では、要保護者の最低生活費を計算し、その額と要保護者の収入を比較して、要保護者 の収入が最低生活費を下回った場合は、生活保護の対象となり、保護が必要と判断され る。保護が必要となった場合の生活保護の種類と給付額に関しては、この調査結果と本 章第1節の②で説明した「基準および程度の原則」に基づいて決定される。

このように、生活保護を受給するためには、原則として、福祉事務所で「事前の相談」

を行った上で「保護の申請」を行わなければならない。その後、福祉事務所が調査を行 い、その調査結果に基づいて「保護の要否の決定」を下す。生活保護が必要と判断され た場合は、種類と程度が決められ、生活保護の支給が開始されることとなる。

以上のように、本節では、生活保護を受給するための手順を、「事前の相談」、「保護の 申請」および「保護の要否の決定」の3段階に分けて説明してきた。では、実際、生活保 護を受給している人はどのくらいいるのだろうか。最近、生活保護給付額が3兆円を突破 したなどの生活保護制度に関するニュースや新聞記事をよく目にするが、生活保護制度は、

いったいどのような現状にあり、また、どのような問題点が生じているのだろうか。次の

「3.生活保護制度の現状と問題点」では、生活保護制度の現状と問題点を明らかにして いく。

(12)

12

3 3 3

3. . . .生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度の 生活保護制度 の の の現状 現状 現状と 現状 と と問題点 と 問題点 問題点 問題点

本節では、まず、「世帯類型別の保護世帯数」、「生活保護給付額」および「ケースワー カーの配置状況および経験年数」の3つの側面から生活保護制度の現状を把握することを 通して、生活保護制度の問題点を導き出し、その後、その問題点をひとつずつ詳しく見て いき、解決策を探っていくために、「(1)生活保護制度の現状」および「(2)生活保護 制度の問題点」の2つに分けて説明する。まず、「(1)生活保護制度の現状」では、国立 社会保障・人口問題研究所が公表する「世帯類型別の保護世帯数」および「生活保護給付 額」に関するデータと、厚生労働省が公表する「福祉事務所現況調査の概要」のデータの 3つを挙げ、そのデータの調査年度の数値を比較することで、生活保護制度の現状を明ら かにするとともに、それらの現状に潜む問題点を浮き彫りにする。次に、「(2)生活保護 制度の問題点」では、「(1)生活保護制度の現状」から浮き彫りとなった問題点を検討し、

それらの問題点を解決するための糸口を探っていくことにする。

本節を通して、生活保護制度の現状と問題点を明らかにすることで、次章以降でその問 題点を解決するきっかけとしたい。

( ( (

(1 1 1 1) ) ) )生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度 生活保護制度の の の の現状 現状 現状 現状

ここでは、国立社会保障・人口問題研究所が公表している「世帯類型別の保護世帯数」

および「生活保護給付額」の2つのデータと、厚生労働省が公表している「福祉事務所 現況調査の概要」のデータを用いて、調査年度の数値を比較しながら、近年の動向を読 み取り、生活保護制度の現状を浮き彫りにしていく。なぜこの3つのデータを生活保護 制度の現状を説明するために用いたかと言うと、これら3つのデータが、生活保護制度 の実施機関である福祉事務所、被保護者および給付額を表したものであり、生活保護制 度を構成する要素に関するデータであると考えられるためである。

以下では、「①世帯類型別の保護世帯数」、「②生活保護給付額」および「③ケースワー カー配置状況および経験年数」の3つに分けて、順に各データを用いて説明する。

①①

①世帯類型別世帯類型別世帯類型別世帯類型別のののの保護世帯数保護世帯数保護世帯数 保護世帯数

生活保護制度では、本章第1節の②で説明した「世帯単位の原則」に基づき、保護の 支給が世帯単位で行われる。その世帯とは、「高齢者世帯」、「母子世帯」、「傷病世帯」、

「障害者世帯」および「その他の世帯」の5つである(13)。「その他の世帯」とは、「高齢 者世帯」、「母子世帯」、「傷病世帯」および「障害者世帯」以外の世帯のことで、具体的 には、若くて働けるが、失業などで収入などを得られない世帯のことである(14)。では、

この5つの世帯が、生活保護制度をそれぞれどのくらい利用しているのだろうか。そこ

(13) 国立社会保障・人口問題研究所HP(2012,12月27日閲覧)を参照せよ。

(14) 武田(2012,p.33)を参照せよ。

(13)

13 で、以下の図1を見てもらいたい。

(図1)世帯類型別の保護世帯数

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP,

「世帯類型別被保護世帯数および世帯保護率の年次推移」,

http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.aspl』(2012年12月27日閲覧)。

図1は、国立社会保障・人口問題研究所が毎年公表している「社会保障統計年報」の

「世帯類型別被保護世帯数および世帯保護率の年次推移」のデータを図にしたものであ る。この年報は、国立社会保障・人口問題研究所が社会保障に関する統計資料を幅広く 集め、編集した資料集であり、社会保障研究資料として刊行されている。この図は、1999

(平成11)年度から2010(平成22)年度までの世帯類型別の保護世帯数の年次推移を

表している。また、この図は、縦軸に世帯数、横軸に調査年度をとっており、1999(平

成11)年度から2010(平成22)年度までの11年間の毎年の世帯類型別の保護世帯数

を示している。棒グラフは、先ほど説明した5つの世帯のそれぞれの保護世帯数を表し ており、青色が「高齢者世帯」、赤色が「母子世帯」、緑色が「傷病世帯」、紫色が「障 害者世帯」および水色が「その他の世帯」を示している。なお、調査結果の数値を載せ ると図が見えにくくなるため、数値を省略している。この図1で、1999(平成 11)年

度から2010(平成22)年度までの11年間のデータを載せている理由は、生活保護を受

けている世帯が先ほど説明した5つの世帯に分類されたのが1999(平成 11)年度から であり、最新のデータが2010(平成22)年度のものであったためである。

(14)

14

図1の世帯類型別の保護世帯数の推移を、1999(平成 11)年度から5年度毎に見て いき、最後に最新の2010(平成 22)年度のものを見る。このように区分して見ていく 理由は、2つある。まず、1つ目は、1年度毎の結果を示すよりも、約 20 年間を5年 間毎に見る方が、継続して生活保護を受けている世帯が増えているという大きな傾向を つかむことができると考えたからである。2つ目は、1年度毎に結果を示すと、記載す るデータ量が膨大になってしまうと考えたからである。

(aaaa)))1999)199919991999((((平成平成平成平成 111111)11))年度)年度年度年度

生活保護を受けた総世帯数は、703,072世帯であり、その内訳は、「高齢者世帯」が

315,933世帯で、これは生活保護を受けている総世帯数の44.9%にあたる。「母子世帯」

が58,435世帯で8.3%、「傷病世帯」が207,742世帯で29.5%、「障害者世帯」が70,778

世帯で10.1%および「その他の世帯」が50,184世帯で7.1%となっている。

(bbbb)))2004)200420042004((((平平平平成成成 16成1616)16))年度)年度年度年度

生活保護を受けた総世帯数は、1999(平成 11)年度と比べて 294,078 世帯増加の

997,150世帯であり、その内訳は、「高齢者世帯」が149,747世帯増加の465,680世帯

で46.7%、「母子世帯」が29,043増加の87,478世帯で8.8%、「傷病世帯」が39,684 世帯増加の247,426世帯で24.8%、「障害者世帯」が31,640世帯増加の102,418世帯

で10.3%および「その他の世帯」が43,964世帯増加の94,148世帯で9.4%である。

(cccc)))2009)200920092009((((平成平成平成平成 22221111)))年度)年度年度年度

生活保護を受けた総世帯数は、2004(平成 16)年度と比べて 273,437 世帯増加の

1,270,587世帯であり、その内訳は、「高齢者世帯」が97,381世帯増加の563,061世帯

で44.3%、「母子世帯」が12,114世帯増加の99,592世帯で7.8%、「傷病世帯」が41,740 世帯増加の289,166世帯で22.8%、「障害者世帯」が44,372世帯増加の146,790世帯

で11.6%および「その他の世帯」が77,830世帯増加の171,978世帯で13.5%である。

(dddd)))2010)201020102010((((平成平成平成平成 222222)22))年度)年度年度年度

生活保護を受けた総世帯数は、前年度の2009(平成21)年度と比べて134,694世帯

増加の1,405,281世帯であり、また、1999(平成11)年度と比較してみると、総世帯

数は約2.0倍となっている。その内訳は、「高齢者世帯」が2009(平成21)年度より 40,479世帯増加の603,540世帯で 42.9%、「母子世帯」が9,202 世帯増加の108,794

世帯で7.7%、「傷病世帯」が18,984世帯増加の308,150世帯で21.9%、「障害者世帯」

が10,600世帯増加の157,390世帯で11.2%および「その他の世帯」が55,429世帯増

加の227,407世帯で16.2%である。

(15)

15 図1から分かることは、2つある。

まず、1つ目は、「年々、5つの世帯全ての保護世帯数が増えていること」である。

1999(平成11)年度と2010(平成22)年度を比べてみると、生活保護を受けている総

世帯数は、703,072世帯から1,405,281世帯と約2.0倍となっている。5つの世帯を個 別に見てみると、「高齢者世帯」は、315,933世帯から603,540世帯と約1.9倍、「母子 世帯」は、58,435世帯から108,794世帯と約1.9倍、「傷病世帯」は207,742世帯から 308,150世帯と約1.5倍、「その他の世帯」は50,184世帯から227,407世帯と約4.5倍 となっている。このことから、年々、5つの世帯全ての保護世帯数が増えており、その 中でも「その他の世帯」の増加率が最も高いと言える。

次に、2つ目は、「生活保護を受けている全世帯に占める『その他の世帯』の割合が 大きくなっていること」である。1999(平成11)年度と2010(平成22)年度を比べて みると、「高齢者世帯」は44.9%から42.9%と2.0%減少しており、「母子世帯」も8.3%

から7.7%と0.6%減少、「傷病世帯」も29.5%から21.9%と7.6%と減少している。一

方、「障害者世帯」は、10.1%から 11.2%と 1.1%増加しており、「その他の世帯」は最 も割合が大きくなっており、7.1%から16.2%と9.1%増加している。

これら2つの特徴から、次の2つの問題点が浮き彫りとなった。

まず、1つ目は、「生活保護受給者の多種多様化」である。生活保護を受給している 世帯は、5つの世帯全てで年々増加しており、何らかの問題が生じたことがきっかけで 収入がなくなり、生活保護を受給し始めたと考えられる。それぞれの世帯が抱える問題 は、全く同じものとは言えず、世帯によって異なり、また、生活保護を受給する世帯数 も5つの世帯全てで増加していることから、それぞれの世帯が抱える問題は多種多様化 していると考えられる。このことより、この問題を最初に挙げることができる。

次に、2つ目は、「稼働世帯の生活保護受給者の増加」である。「稼働世帯」とは、職 業に就き、収入を得ることができる稼ぎ手がいる世帯のことである(15)。つまり、先ほど 説明した、若くて働けるが、失業などにより収入のない世帯である「その他の世帯」の ことを指す。この「その他の世帯」の増加率が最も高く、生活保護を受けている全世帯 に占める割合も最も増えていることから、この問題がより重要視されると考えられる。

このように、ここでは、国立社会保障・人口問題研究所が公表している「世帯類型別 被保護世帯数および世帯保護率の年次推移」のデータから「生活保護受給者の多種多様 化」と「稼働世帯の生活保護受給者の増加」が問題であることが分かった。詳細な検討 は、本節の「(2)生活保護制度の問題点」で行うこととし、次の「②生活保護給付額」

では、国立社会保障・人口問題研究所が公表している「扶助別保護費の年次推移」のデ ータを見ていくことで、「多額化する医療扶助」という問題が起きていることを示す。

(15) 介護110番HP(2013,1月9日閲覧)を参照せよ。

(16)

16

②②

②生活保護給付額生活保護給付額生活保護給付額生活保護給付額

生活保護は、本章第1節の③で述べたように、被保護者の必要に応じて、「8つの種 類」が単給または併給される。その給付額の内訳は、以下の表2および表3に整理して いる。

(表2)生活保護給付額(生活扶助・住宅扶助・教育扶助・介護扶助) (単位:千円)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP,「扶助別保護費の年次推移」,

http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.aspl』(2012年12月27日閲覧)。

(表3)生活保護給付額(医療扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助) (単位:千円)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所HP,「扶助別保護費の年次推移」,

http://www.ipss.go.jp/s-info/j/seiho/seiho.aspl』(2012年12月27日閲覧)。

表2および表3は、国立社会保障・人口問題研究所が毎年公表している「社会保障統 計年報」の「扶助別保護費の年次推移」のデータを表にしたものである。この表2は、

2000(平成12)年度から2009(平成21)年度までの「8つの種類」のうち「生活扶助」、

「住宅扶助」、「教育扶助」および「介護扶助」の各給付額の年次推移を表している。ま た、表3は、2000(平成12)年度から2009(平成21)年度までの「8つの種類」のう ち「医療扶助」、「出産扶助」、「生業扶助」および「葬祭扶助」の各給付額の年次推移を 表している。表2および表3両方とも、縦軸に調査年度、横軸に保護の種類をとってお

医療扶助 出産扶助 生業扶助 葬祭扶助

2000年度 1,071,099,195 218,744 171,934 3,423,498 2001年度 1,122,908,438 214,920 188,171 3,697,152 2002年度 1,162,217,743 227,619 255,062 4,209,930 2003年度 1,236,139,923 267,382 297,422 4,417,553 2004年度 1,302,859,287 250,595 316,953 4,924,576 2005年度 1,347,045,434 222,112 6,218,998 5,328,011 2006年度 1,349,997,807 256,642 7,643,027 5,624,742 2007年度 1,307,104,330 262,558 8,158,797 6,062,582 2008年度 1,339,288,625 310,316 8,614,597 6,338,825 2009年度 1,451,474,227 428,173 11,503,479 6,716,929

生活扶助 住宅扶助 教育扶助 介護扶助

2000年度 641,003,527 200,684,532 8,348,790 14,333,250 2001年度 695,069,736 223,992,950 8,930,353 22,163,237 2002年度 760,195,683 252,144,753 9,768,178 29,119,258 2003年度 818,217,352 282,264,039 10,666,539 35,841,137 2004年度 840,128,460 307,271,220 11,335,600 41,880,243 2005年度 849,360,208 327,186,408 11,791,646 47,040,105 2006年度 863,829,575 343,867,264 11,901,606 50,214,892 2007年度 870,844,851 359,008,689 11,794,966 53,927,879 2008年度 896,469,101 381,440,562 11,845,300 56,245,925 2009年度 1,016,339,013 442,652,035 17,042,592 61,032,602

(17)

17

り、単位は千円である。2000(平成12)年度から2009(平成21)年度までのデータを 載せている理由は、保護の種類が先ほど説明した「8つの種類」に分けられたのが、2000

(平成 12)年度からであり、また、最新のデータが 2009(平成21)年度であったため

である。

表2および表3を、5年度毎に給付額の多い順に見ていき、最後に最新の2009(平成

21)年度のものを見る。なお、「(図1)世帯類型別の保護世帯数」のグラフでは、最新

のデータが 2010(平成 22)年度のものであったが、表2および表3は最新のデータが

2009(平成21)年度であったため、考察する期間にずれが生じている。しかし、このず

れは1年間しかなく、大きな傾向のずれは生じていないと考え、考察する期間のずれに よる影響は小さいと考えられるため、表2と表3では2009(平成21)年度のものを最新 のデータとして用いることとした。このように区別して見ていく理由は、1年毎の結果 を示すよりも、継続して生活保護の給付額が増えていることを示したいためである。ま た、給付額の多い順に見ていく理由は、順位付けをすることで、どの扶助が何番目に多 いかをすぐに判断することができると考えたからである。

(aaaa)))2000)20002000(2000(((平成平成平成平成 12121212))))年度年度年度年度

生活保護の給付額の総額は、1兆 9,392 億 8,347 万円である。その内訳を、給付額 の多い順に見ていくと、1番目が「医療扶助」で1兆710億9,919万5,000円、2番 目が「生活扶助」で6,410億352万7,000円、3番目が「住宅扶助」で2,006億8,453 万2,000円、以下、「介護扶助」が143億3,325万円、「教育扶助」が83億4,879万円、

「葬祭扶助」が34億2,349万8,000円、「出産扶助」が2億1,874万4,000円および

「生業扶助」が1億7,193万4,000円と続いている。

(bbbb)))2005)20052005(2005(((平成平成平成平成 17171717))))年度年度年度年度

生活保護の給付額の総額は、2000(平成12)年度と比べて6,548億4,574万円増加

の2兆 5,941 億2,921 万円である。その内訳を、給付額の多い順に見ていくと、1番

目が、2000(平成 12)年度と同様に「医療扶助」で、2000(平成 12)年度と比べて 2,759億4,623万9,000円増加の1兆3,470億4,543万4,000円となっている。2番目 が「生活扶助」で2,083億5,668万1,000円増加の8,493億6,020万8,000円、3番 目が「住宅扶助」で1,265億187万6,000円増加の3,271億8,640万8,000円、以下、

「介護扶助」が327億685万5,000円増加の470億4,010万5,000円、「教育扶助」

が34億4,285万6,000円増加の117億9,164万6,000円と続いている。以降の順は、

2000(平成12)年度と入れ替わっており、6番目に2000(平成12)年度に最も給付

額が少なかった「生業扶助」が60億4,706万4,000円増加の62億1,899万8,000円、

7番目に2000(平成12)年度で6番目に多かった「葬祭扶助」が19億451万3,000

(18)

18

円増加の53億2,801万1,000円、8番目に2000(平成12)年度で7番目に多かった

「出産扶助」が336万8,000円増加の2億2,211万2,000円と続いている。

(cccc)))2009)20092009(2009(((平成平成平成平成 21212121))))年度年度年度年度

生活保護の給付額の総額は、2005(平成17)年度と比べて4,130億5,984万円増加

の3兆71億8,905 万円である。その内訳を、給付額が多い順に見ていくと、順位は、

2005(平成 17)年度と変動しておらず、1番目が「医療扶助」で、2005(平成 17)

年度と比べて1,044億2,879万3,000円増加の1兆4,514億7,422万7,000円、2番 目が「生活扶助」で1,669億7,880万5,000円増加の1兆163億3,901万3,000円で 1兆円を突破した。3番目が「住宅扶助」で 1,154 億6,562 万 7,000 円増加の4,426 億5,203万5,000円、以下、「介護扶助」が139億9,249億7,000円増加の610億3,260 万2,000円、「教育扶助」が52億5,094万6,000円増加の170億4,259万2,000円、

「生業扶助」が52億8,448億1,000円増加の115億347万9,000円、「葬祭扶助」が 13億8,891万8,000円増加の67億1,692万9,000円および「出産扶助」が2億606

万1,000円増加の4億2,817万3,000円と続いている。

表2および表3から分かることは、3つある。

まず、1つ目は、「年々、生活保護給付額が増加していること」である。2000(平成

12)年度と2009(平成21)年度を比較してみると、生活保護給付額の総額が、1兆9,392

億8,347万円から3兆71億8,905万円と約1.6倍となっている。「8つの種類」を個別

に見てみても、種類によっては多少減少している年度もあるが、「8つの種類」全てが 増加傾向にある。「8つの種類」を個別に見てみると、「生活扶助」は、6,410億352万 7,000円から1兆163億3,901万3,000円と約1.6倍、「住宅扶助」は、2,006億8,453 万2,000円から4,426億5,203万5,000円と約2.2倍、「教育扶助」が83億4,879万か ら170億4,259万2,000円と約2.0倍、「介護扶助」が143億3,325万から610億3,260 万2,000円と約4.3倍、「医療扶助」が1兆710億9,919万5,000円から1兆4,514億 7,422万7,000円と約1.4倍、「出産扶助」が2億1,874万4,000円から4億2,817万3,000 円と約2.0倍、「生業扶助」は1億7,193万4,000円から115億347万9,000円と約67 倍および「葬祭扶助」は34億2,349万から67億1,692万9,000円と約2.0倍となって いる。

次に、2つ目は、「『生業扶助』の増加率が他の扶助に比べて異常に高いこと」である。

「生業扶助」は2000(平成12)年度と2009(平成21)年度と比較すると、約67倍も 増えている。

最後に、3つ目は、「生活保護給付額のうち、『医療扶助』が最も高いこと」である。

「医療扶助」はどの年度を通しても給付額が最も高く、2009(平成 21)年度では、1

兆4,514億7,422万7,000円と生活保護給付額の約2分の1を占めている。

(19)

19

これら3つの特徴から、1つの問題点が浮き彫りとなった。その問題点とは、「多額 化する医療扶助」である。生活保護給付額は、「8つの種類」全てで増加傾向にあるが、

その中でも2009(平成21)年度の時点で、「医療扶助」が生活保護給付額の約2分の1 を占めており、また、「医療扶助」の適正化が求められていることからも(16)、この問題 を挙げることができる。

このように、ここでは、国立社会保障・人口問題研究所が公表している「扶助別保護 費の年次推移」のデータから「多額化する医療扶助」が問題であることが分かった。詳 細な検討は、本節の「(2)生活保護制度の問題点」で行うこととし、次の「③ケース ワーカー配置状況および経験年数」では、厚生労働省が公表している「福祉事務所現況 調査の概要」からケースワーカーの配置状況および経験年数を見ていくこととする。な お、補足となるが、「生業扶助」に関しては、増加率が最も高いものの、給付額が他の 扶助と比較してもまだ低いので、「医療扶助」のように適正化を求められてはいないが、

本節の「(2)生活保護制度の問題点」でポイントとなる扶助であるので、注意しても らいたい。

③③

③ケースワーカーケースワーカーケースワーカーケースワーカーのののの配置状況配置状況配置状況配置状況およびおよびおよびおよび経験年数経験年数経験年数経験年数

ここでは、厚生労働省が公表している「福祉事務所現況調査の概要」から、ケースワ ーカーの配置状況および経験年数を見ていく。この2つの側面から、生活保護制度の現 状を見ていく理由は、ケースワーカーが配置されている福祉事務所で、ケースワーカの 人手不足および経験・専門性不足が生じていることを示したいと考えたためである。

まず、ケースワーカーの配置状況を見ていく。生活保護制度を実施する行政機関は、

福祉事務所であり、社会福祉法(17)の第15条(18)に定められているように、福祉事務所に はケースワーカーを配置しなければならない。ケースワーカーとは、簡単に言うと、生 活保護の決定および実施を行う者のことである。具体的には、生活保護の申請に来た者 の相談に乗ったり、家庭訪問および収入の調査をしたりすることで、保護の要否の判定 を行い、保護決定後は、被保護者に対して、地域の民生委員(19)の協力のもと、自立に向

(16) 例えば、生活保護レセプト管理システムの電子化や後発医薬品の利用促進などがあ る(厚生労働省HP,2013,1月24日閲覧)。詳細は、第Ⅱ章第3節の(2)で説明す る。

(17) 社会福祉法とは、「社会福祉事業が公正・適正に行われることを目的とする法律。

1915年公布の社会福祉事業法を2000年に改正。」である(新村 2008,p.1295)。

(18) 社会福祉法第15条とは、「福祉に関する事務所には、長および少なくとも次の所員 を置かなければならない。ただし、所の長がその職務の遂行に支障がない場合において、

自ら現業事務の指導監督を行うときは、第一号の所員を置くことを要しない。一 指導 監督を行う所員 二 現業を行う所員 三 事務を行う所員」である。ここでは、第二 号の現業を行う所員がケースワーカーにあたる。

(19) 民生委員とは、「社会福祉の増進のために、地域住民の生活状況の把握、生活困窮者

(20)

20

けた指導・助言を行う者のことである。つまり、本章第2節で説明した生活保護の手続 きを行うことは、ケースワーカーの役割のひとつであると言える。福祉事務所に配置さ れるケースワーカーの人数は、社会福祉法第 16 条(20)に定められているように、市部で は、被保護世帯80世帯につき1人、郡部では、被保護世帯数65世帯につき1人を標準 数として配置しなければならない。なお、市部とは、市(指定都市(21)と中核市(22)を含む)、 特別区(23)および町村のことであり、一方、郡部とは、都道府県のことである。ケースワ ーカーの配置状況は、以下のページの表4に整理している。

(表4)ケースワーカーの配置状況

区分 福祉事務所数(か所) 配置標準数(人) 配置人員(人) 充足率(%)

2004年 1,226 12,743 11,372 89.2

総数 2009年 1,242 15,560 13,881 89.2

2004年 321 1,765 1,911 108.3

郡部 2009年 226 1,237 1,246 100.7

2004年 905 10,978 9,416 86.2

市部 2009年 1,016 14,323 12,635 88.2

(出所)厚生労働省HP,「2009(平成21)年 福祉事務所現況調査の概要」,

『http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/75-16.html』(2013年1月7日閲覧)。

の保護・指導、福祉事務所が行う業務への協力などを職務とする者。厚生労働大臣の委 嘱により、市町村・特別区におかれる。児童委員を兼任。方面委員の後身。」である(新 村 2008,p.2724)。

(20) 社会福祉法第16条とは、「所員の定数は、条例で定める。ただし、現業を行う所員 は、各事務所につき、それぞれ次の各号に掲げる数を標準数として定めるものとする。

一 都道府県の設置する事務所にあっては、生活保護法の適用を受ける被保護世帯の数 が390以下であるときは、6とし、被保護世帯の数が65を増すごとに、これに1を加 えた数 二 市の設置する事業所にあっては、被保護世帯の数が240以下であるときは、

3とし、被保護世帯が80を増す毎に、これに1を加えた数 三 町村の設置する事務 所にあっては、被保護世帯の数が160以下であるときは、2とし、被保護世帯数が80 を増す毎に、これに1を加えた数」である。

(21) 指定都市とは、「政令指定都市に同じ。政令指定都市とは、「人口50万人以上の市 で、特に政令で指定されたもの。区を設けることができるなど、普通の市と異なる取扱 いを受ける。現在、大阪・名古屋・京都・横浜・神戸・北九州・札幌・川崎・福岡・広 島・仙台・千葉・さいたま・静岡・堺・新潟・浜松の17市の指定都市。」である(新村 2008,p.1258およびp.1557)。

現在は、上記の17市に加えて、相模原・岡山・熊本が政令指定都市となっている(総

務省HP,2013,1月22日閲覧)。

(22) 中核市とは、「人口30万人以上の市で、特に政令指定都市よりは小さいが、比較的 大きい都市として、事務権限が移譲される。」である(新村 2008,p.1812)。

例えば、旭川・宇都宮・金沢・奈良・下関・高松・高知・鹿児島などがある(総務省

HP,2013,1月22日閲覧)。

(23) 特別区とは、「東京都の区。特別地方公共団体のひとつで、原則として、市に準じた 取扱いを受ける。区議会を置く。」である(新村 2008,p.2007)。

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表4は、厚生労働省が5年に1回公表している「福祉事務所現況調査の概要」の「ケ ースワーカーの配置状況」のデータを表にしたものである。この調査は、社会福祉法に 基づき設置されている福祉に関する事務所(福祉事務所)について、その組織および活 動の現況を把握することにより、福祉事務所の運営指導などに関する基礎資料を得るこ とを目的として、毎年 10 月1日現在の状況が調査されている。毎年、調査が行われて いるが、公表が5年に1回のため、ここでは、最新のデータである2009(平成 21)年 のものを用いる。この表は、2004(平成16)年と2009(平成21)年のケースワーカー の配置状況を表している。今回、この2つの期間を選んだ理由は2つある。まず、1つ 目は、厚生労働省が公表している最新のデータに記載されていたのが、この期間のみで あったためである。次に、2つ目は、この2年間のデータを比較することで、ケースワ ーカーの人手不足の傾向が現在も続いていることを示したいからである。この表は、縦 軸に、上から順に、区分として総数、郡部および市部をとっており、それぞれ2004(平

成16)年および2009(平成21)年のデータを載せており、横軸には、左から順に福祉

事務所数、配置標準数、配置人員および充足率をとっている。なお、配置標準数とは、

福祉事務所に配置されるべきケースワーカーの数であり、配置人員は、実際に配置され ているケースワーカーの数である。また、充足率とは、配置人員を配置標準数で割って 求めたものであり、配置標準数に対する配置状況を表している。

表4を、2004(平成16)年と2009(平成21)年に分けて見ていく。このように区分 して見ていく理由は、ケースワーカーの人手不足が数年にわたって続いていることを示 したかったからである。

(aaaa)))2004)200420042004((((平成平成平成平成 161616)16))年)年年年

福祉事務所の総数は1,226か所であり、その内訳は、郡部が321 か所、市部が905 か所である。ケースワーカーの配置標準数の総数は12,743人であり、また、配置人員

の総数は11,372人であることから、充足率は89.2%である。郡部では、配置標準数は

1,765人に対して、配置人員は1,911人であり、充足率は108.3%である。一方、市部

では、配置標準数は10,978人に対して、配置人員は9,461人であり、充足率は86.2%

となっている。

(bbbb)))2009)200920092009((((平成平成平成平成 212121)21))年)年年年

福祉事務所の総数は2004(平成16)年と比べて16か所増加の1,242か所であり、

その内訳は、郡部が95か所減少の226か所、市部が111か所増加の1,016か所となっ ている。ケースワーカーの配置標準数の総数は、2004(平成16)年と比べて2,817人

増加の15,560人であり、また、配置人員は2,509人増加の13,881 人となり、充足率

は、2004(平成16)年と同様の89.2%となった。郡部では、2004(平成16)年と比 べると、配置標準数は528人減少の1,765人に対して、配置人員が665人減少の1,246

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人となり、充足率は 100.7%となっている。市部では、配置標準数は 3,345 人増加の

14,323人に対して、配置人員は3,174人増加の12,635 人であり、充足率は88.2%と

なっている。

この表4から分かることは、「総数のデータを見てみると、充足率が100%に満たず、

2004(平成16)年は1,371人、2009(平成21)年は1,679人、ケースワーカーが不足

していること」である。特に市部では、2004(平成16)年時点で、郡部の146人過剰 に対して、1,517人不足、さらに、2009(平成21)年時点では、郡部の9人過剰に対し て、1,688 人不足と顕著にその傾向が見られる。充足率とは、先ほど説明したように、

配置標準数に対する配置状況である。充足率が100%を切るということは、調査日であ る毎年 10 月1日時点で、実際に配置されているケースワーカーの人数が配置標準数に 達していない、つまり、ケースワーカーが不足していることを示している。また、ケー スワーカーの不足人数を、福祉事務所1か所あたりで換算してみると、2004(平成16)

年時点で、総数では1.12人、市部では1.68人不足しており、さらに、2009(平成21)

年時点の数値を見ても、総数では1.35人、市部では1.66人不足している。このことか らも、特に市部では、顕著にその傾向と言える。

次に、ケースワーカーの経験年数の現況は、以下のページの表5の通りである。

(表5)ケースワーカーの経験年数 (単位:人)

区分 1年未満 1年以上 3年未満

3年以上

5年未満 5年以上 合計

総数 3,526 5,262 2,880 2,213 13,881

郡部 269 481 212 284 1,246

市部 3,257 4,781 2,668 1,929 12,635

(出所)厚生労働省HP,「2009(平成21)年 福祉事務所現況調査の概要」,

『http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/75-16.html』(2013年1月7日閲覧)。

表5は、表4と同様に厚生労働省が公表している「福祉事務所現況調査の概要」のデ ータを表に整理したものであり、2009(平成 21)年現在のケースワーカーの経験年数 を表している。この表は、縦軸に、上から順に、総数、郡部および市部のデータを表し ており、横軸は、経験年数を、左から順に1年未満、1年以上3年未満、3年以上5年 未満および5年以上として示している。

表5を見てみると、2009(平成21)現在のケースワーカーの総数は、13,881人であ り、その内訳は、経験年数1年未満が 3,526 人で総数の25.4%、1年以上3年未満が、

5,262人の37.9%、3年以上5年未満が2,880人の20.8%、5年以上が2,213人の5.9%

となっている。郡部および市部に分けて見てみると、まず、郡部では、ケースワーカー

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