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目 次
第1章 記号と論理 4
1.1 記号 . . . . 4
1.2 論理 . . . . 4
第2章 集合,写像 6 2.1 集合 . . . . 6
2.2 写像 . . . . 9
2.2.1 写像と集合 . . . . 11
2.2.2 全射,単射 . . . . 13
2.2.3 同値関係. . . . 14
2.2.4 濃度 . . . . 15
2.3 逆関数 . . . . 16
2.3.1 逆関数の微分 . . . . 17
第3章 収束 19 3.1 収束の比較 . . . . 19
3.2 収束のオーダー . . . . 20
3.2.1 無限大における漸近挙動 . . . . 20
3.2.2 無限小における漸近挙動 . . . . 21
第4章 微分 22 4.1 定義 . . . . 22
4.1.1 定義に基づく計算. . . . 22
4.1.2 懸垂曲線(catenary) . . . . 24
4.2 Newton法 . . . . 26
4.3 eの存在 . . . . 27
4.3.1 単調増加. . . . 27
4.3.2 有界 . . . . 28
4.4 テイラー展開 . . . . 28
4.4.1 ガウス . . . . 29
4.4.2 双曲三角関数 . . . . 30
4.4.3 eは無理数である . . . . 30
4.5 運動方程式 . . . . 31
4.5.1 相空間 . . . . 31
4.5.2 遠心力 . . . . 31
4.5.3 位置エネルギー . . . . 32
4.5.4 運動エネルギー . . . . 33
4.6 不定積分,原始関数 . . . . 34
第5章 テイラー展開 35 5.1 平均値の定理 . . . . 35
5.2 テイラー展開の例 . . . . 37
5.2.1 ガウス . . . . 38
5.2.2 双曲三角関数 . . . . 39
5.2.3 対数関数のテイラー展開 . . . . 39
5.3 一般の2項展開 . . . . 41
5.4 逆三角関数のテイラー展開 . . . . 42
5.4.1 微分 . . . . 42
5.4.2 テイラー展開 . . . . 42
5.4.3 πの計算(マチンの公式) . . . . 42
5.5 テイラー展開の応用 . . . . 43
5.5.1 l’Hopitalの定理. . . . 44
5.6 高次元のテイラー展開 . . . . 46
5.7 収束半径. . . . 47
5.7.1 収束半径の計算 . . . . 48
5.8 級数の微積分 . . . . 50
5.9 Riemann zeta関数 . . . . 51
第6章 連続関数 55 6.1 定義 . . . . 55
6.2 連続性 . . . . 55
6.3 位相空間. . . . 55
6.4 最大値,最小値の存在 . . . . 56
6.5 中間値の定理 . . . . 56
6.6 一様連続性 . . . . 57
第7章 ε–δ法 59 7.1 上限と下限 . . . . 59
7.2 上極限,下極限 . . . . 61
7.3 収束 . . . . 61
7.4 完備性 . . . . 62
7.5 一様収束. . . . 65
7.6 級数 . . . . 67
3
7.7 2重数列 . . . . 69
7.7.1 1次元ランダムウォーク . . . . 69
7.8 Riemann zeta関数 . . . . 74
7.9 ∑∞ n=0npnの収束について . . . . 76
7.9.1 |p| ≥1の場合 . . . . 76
7.9.2 1> p≥0の場合 . . . . 77
7.9.3 0> p >−1の場合 . . . . 77
第8章 積分 78 8.1 定義 . . . . 78
8.1.1 積分の平均値の定理 . . . . 84
8.1.2 微積分の基本定理. . . . 85
8.2 有理関数の積分 . . . . 86
8.3 広義積分. . . . 88
8.4 Γ関数 . . . . 90
8.5 B関数 . . . . 91
8.5.1 e−x2の積分 . . . . 91
8.6 運動方程式 . . . . 96
8.6.1 相空間 . . . . 97
8.6.2 遠心力 . . . . 98
8.6.3 位置エネルギー . . . . 98
8.6.4 運動エネルギー . . . . 99
8.7 曲線の長さ . . . .100
第 1 章 記号と論理
1.1 記号
N 自然数全体 R 実数全体 Q 有理数全体 C 複素数全体
xが集合Aの元であることはx∈A,元でないことはx̸∈Aと表す.順序 を逆にして,A∋xとかA̸∋xなどとも表す.この場合,文章として主語と 述語の位置が変わるので,主張の意味が変わることには注意してほしい.
集合A, Bについて,AがBの部分集合であるとは A⊂B
と表す.これもB⊃Aと表してもよい.A⊂Bであることは
∀x∈Aについて,x∈B
を示すことで証明される.ここで,A=BのときにもA⊂Bと表している ことに注意してほしい.高校のときとは記号の使い方が異なる.他にも高校 のときと異なる記号に≤とか≥がある.高校では≦,≧と表していた.
記号として,A∪B, A∩Bは,高校でも習ったろうが,集合Λについて
∪
λ∈ΛAλは,その元aはどれかのλΛについて,a∈Aλをみたすものであ り,∩
λ∈ΛAλの元は,すべてのλΛについて,a∈Aλをみたすものである.
Λ =Nのときには∪∞
n=1Anとか∩∞
n=1Anのように書く.
高校ではAと表すが,Aの補集合はAcと表す.
1.2 論理
「AならばBである」に対し,
BならばAである 逆 AでなければBでない 裏 BでなければAでない 対偶
とよぶ.命題が真ならば,対偶は常に真である.
1.2. 論理 5
任意(またはすべて)を表す∀,存在するを表す∃がある.
「人類は哺乳類である」の 逆: 「哺乳類ならば人間である」
裏: 「人間でないならば哺乳類でない」
対偶: 「哺乳類でないならば人間でない」
∀人,∃才能s.t. ∀他人,その人の才能>他人の才能 という命題の,否定は
∃人,∀才能について,∃他人s.t. その人の才能≤他人の才能
となる.また,対偶は,∀才能,∃他人,その人の才能≤他人の才能となるよ うな̸ ∃人
第 2 章 集合,写像
2.1 集合
集合Aは元によって定まる.
集合は中身,つまり元で記述する.x∈Aとはxが集合Aの元であること を表す.A∋xも用いる.
例 2.1 1. {2,4,6,8, . . .} 2. {n: n2 ∈N}
3. {3n+ 5m:n, m∈Z}
4. {x:x2∈Z}
5. {(x, y) :x, y∈Z, x2+y2<10}
問題 1 次の集合を元を用いて表してください.
(−1,1), (0,1], (−∞,0]
解.
(−1,1) ={x:−1< x <1}, (0,1] ={x: 0< x≤1}, (−∞,0] ={x:x≤0}
□
記号の説明
• ∅は元をまったくもたない空集合を表す.どのような集合Aについて も,∅ ⊂Aをみたすとみなす.
• A∩Bとは,x∈Aかつx∈Bをみたす点全体
• A∪Bとは,x∈Aまたはx∈Bをみたす点全体
• A\Bとは,x∈Aかつx̸∈Bをみたす点全体
2.1. 集合 7
• Acとは,x̸∈Aをみたす点全体
• A⊂Bとは∀x∈Aについて,x∈Bであること.高校と違いAがB の真部分集合でなくても,つまりA=Bでも,A ⊂B が成り立つと 考える.A⊃Bも用いる.
• A=Bとは,A⊂BかつA⊃B
• xと{x}は意味が異なる.例:∅と{∅}
• ∪
λ∈ΛAλとは,あるλ∈Λが存在して,x∈Aλとなる点x全体
例 ∪
0≤x≤1
∪
0≤y≤1−x
{(x, y)}={(x, y) :x, y≥0, x+y≥1}
• ∩
λ∈ΛAλとは,すべてのλ∈Λについて,x∈Aλとなる点x全体 問題 2 {3n+ 5m:n, m∈Z}=Z
問題 3 以下を示してください.
1. (A∩B)∪C= (A∪C)∩(B∪C) 2. (A∪B)∩C= (A∩C)∪(B∩C) 3. (A∪B)c=Ac∩Bc
4. (A∩B)c=Ac∪Bc 5. (Ac)c=A
解. ベン図は証明にはなりません.集合は図に表現できるとは限りません し,書けたとしても集合が4つあれば上の命題の拡張したものを図では容易 には証明できないことがわかるでしょう.
∀x∈(A∩B)∪C) ⇒ x∈A∩B またはx∈C
⇒ (x∈Aかつx∈B)またはx∈C
⇒ (x∈Aまたはx∈C)かつ(x∈B またはx∈C)
⇒ x∈A∪C かつx∈B∪C
⇒ x∈(A∪C)∩(B∪C)
ここで,空集合は∅がどの集合でもその部分集合となっていることを用いて
いることに注意しましょう. □
図2.1: 4つのベン図もなんとか書ける
問題 4
∪∞ n=1
[1 n,1− 1
n ]
= (0,1)
∩∞ n=1
(−1 n,1 + 1
n )
= [0,1]
閉区間の和集合や開区間の共通部分は無限個だと開区間になるか閉区間にな るかわからないという例です.
重要な集合はR,C,N,Z,Q
問題 5(Russelのparadox) 「自分自身を元としない集合の全体は集合で はない」を示してください.
解. 「自分自身を元としない集合の全体」をSで表すとScは,自分自身 を元としてもつ集合全体である.
• S∈Sとすると,Sは自分自身を元としてもたないのだから矛盾
• S̸∈Sとすると,Sは自分自身を元としてもつ集合なのだから矛盾
□ 集合A, BについてA×B={(a, b) :a∈A, b∈B}のこと.例R2=R×R など
例 2.2 A={肉料理,魚料理},B={赤ワイン,白ワイン}とすると,
A∪B = {肉料理,魚料理, 赤ワイン,白ワイン}
A×B = {(肉料理,赤ワイン),(肉料理,白ワイン),(魚料理,赤ワイン),(魚料理,白ワイン)}
2.2. 写像 9 定義 2.1
lim sup
n→∞ An =
∩∞ n=1
∩
k≥n
Ak
lim inf
n→∞ An =
∪∞ n=1
∪
k≥n
Ak
公理論的集合論というのがある.選択公理など
2.2 写像
写像f:V →W とはV の各元xに対して,f(x)∈W が対応すること 定義域V,値域W
• A⊂V に対して,f(A) ={f(x) :x∈A} ⊂W を像
• B⊂Wに対して,f−1(B) ={x∈V:f(x)∈B} ⊂V を逆像 定義域,値域が異なるときには異なる関数とみなす.
例 2.3 1. f(x) =x2
• R→R
• R→R+ 全射
• R+→R 単射
• R+→R+ 全単射
2. f(x) = 1 +x+x2+· · · とg(x) = 1−1x 定義域は,fは|x|<1,gはR\{1}
問題 6 f(x) =x2において,(−1,2)の像と[1,2)の逆像を求めてください.
解. [0,4)と(−√
2,−1]∪[1,√
2) □
問題 7 f(x, y) =x2+y2を考える.このf による(0,0),(1,0),(1,1),(0,1) を頂点とする正方形Rの像と,[1,2]の逆像を求めてください.
解. f(R) = [0,2],f−1([1,2]) ={(x, y) : 1≤x2+y2≤2}(円環) □
問題 8 極座標への変換f: (x, y)7→(r, θ)を考える.(0,0),(1,0),(1,1)を頂 点とする三角形Rの像を求めてください.
解. (1,0)から(1/cosθ, θ)で(√
2, π/4)を結ぶ歪んだ長方形 □
問題 9
A= (
2 1 1 0
)
, B =
2 1 1
1 0 1
0 1 −1
1. 直線y=xのAによる像と逆像を求めてください.
2. xy平面のBによる像と(0,0,0)の逆像を求めてください.
解.
1. y=13xとy=−x
2. x= 2y+zとx=−y=−z
□
問題 10
A= (
1 1 2 1 0 1
)
, B=
2 1 0 2 1 1
1. Aによるxy平面の像,(0,0)の逆像を求めてください.
2. BによるR2の像,xy平面の逆像を求めてください.
解.
1. R2と直線x=y=−z
2. 平面2x+y−4z= 0と平面y=−x
□ f:V →W とg:W →Uがあるとき,
(g◦f)(x) =g(f(x))
により写像f◦g:V →Uを定める.これを合成写像という.また.f:V →V は変換とも言う.さらに
f(x) =x をみたす写像を恒等写像という.
2.2. 写像 11 問題 11 Rnからそれ自身への恒等写像を求めてください.
問題 12 f(x) =√
x,g(x) =x3+ 1とするとき,合成写像f◦gが定義でき るように,f とgの定義域と値域を定めてください.
解.f の定義域はR+なので,gの値域もそれにあわせなくてはならない.
そこで,gの定義域は[−1,∞)が最大のものになる.このとき,f◦gの値域 は一番小さいのが非負の実数全体だが,Rでもよい. □
2.2.1 写像と集合
f:X →Y とA1, A2⊂X,B1, B2⊂Y について 1. f(A1∩A2)⊂f(A1)∩f(A2)
2. f(A1∪A2) =f(A1)∪f(A2) 3. f−1(B1∩B2) =f−1(B1)∩f−1(B2) 4. f−1(B1∪B2) =f−1(B1)∪f−1(B2) 証明.
1.
∀y∈f(A1∩A2)について∃x∈A1∩A2s.t. f(x) =y
⇒x∈A1 andx∈A2
⇒y=f(x)∈f(A1) andy=f(x)∈f(A2)
⇒y∈f(A1)∩f(A2) 2.
∀y∈f(A1∪A2)について∃x∈A1∪A2s.t. f(x) =y
⇒x∈A1 orx∈A2
⇒y=f(x)∈f(A1) ory=f(x)∈f(A2)
⇒y∈f(A1)∪f(A2) また,
∀y∈f(A1)∪f(A2)
⇒y∈f(A1) ory∈f(A2)
⇒ ∃x∈A1or ∃x∈A2, すなわち∃x∈A1∪A2
⇒y=f(x)∈f(A1∪A2)
3.
∀x∈f−1(B1∩B2)
⇒f(x)∈B1∩B2, すなわちf(x)∈B1andf(x)∈B2
⇒x∈f−1(B1) andx∈f−1(B2)
⇒x∈f−1(B1)∩f−1(B2) また
∀x∈f−1(B1)∩f−1(B2)
⇒x∈f−1(B1) andx∈f−1(B2)
⇒f(x)∈B1 andf(x)∈B2
⇒f(x)∈B1∩B2
⇒x∈f−1(B1∩B2) 4.
∀x∈f−1(B1∪B2)
⇒f(x)∈B1∪B2, すなわちf(x)∈B1or f(x)∈B2
⇒f(x)∈B1∪B2
⇒x∈f−1(B1∪B2)
また
∀x∈f−1(B1)∪f−1(B2)
⇒f(x)∈B1 orf(x)∈B2
⇒f(x)∈B1∪B2
⇒x∈f−1(B1∪B2)
f(A1∩A2)⊃f(A1)∩f(A2)が必ずしも成り立たないのは,∀y∈f(A1)∩f(A2) ならば,y∈f(A1)からは∃x1∈A1s.t. y=f(x1)が示せ,同様に,y∈f(A2) からは∃x2 ∈A2 s.t. y =f(x2)が示せるが,x1 =x2が成り立つとは限ら ないことからである.写像が単射であれば,f(x1) = f(x2)であるのだか ら,x1 = x2が成り立ち,x1 = x2 ∈ A1∩A2 も成り立つ.したがって,
y=f(x1) =f(x2)∈f(A1∩A2)が示され,f(A1∩A2)⊃f(A1)∩f(A2)も 成り立つ,このことから,単射であればf(A1∩A2) =f(A1)∩f(A2)も成立
することがわかる. □
2.2. 写像 13
2.2.2 全射,単射
• 1対1(単射): f(x) =f(x′)ならば,x=x′をみたす.
• 1対1(単射): ∀y∈f(V)について,f−1({y})は1点
• 上への写像(全射): f(V) =W
問題 13 次の関数を全単射にする定義域,値域を定めてください.
sinx, cosx, tanx, ex
解.
sinx: [−π 2,π
2]→[−1,1]
cosx: [0, π]→[−1,1]
tanx: (−π 2,π
2)→(−∞,∞) ex:R→(0,∞)
これらには逆関数を考えることができて,それぞれ,arcsinx,arccosx,arctanx,logx
である. □
問題 14 次の集合の間の全単射を作ってください.
• [0,1]→[−2,2],
• (0,1]→[−2,2),
• (0,1]→[1,∞),
• N→Q,
• N→Z,
• [0,1]→(0,1],
• S2\{0} →R2
問題 15 f:X →Y が全単射ならば,その逆関数f−1:Y →X も全単射で あることを示してください.
集合V, W について,ある1to1,ontoな写像が存在するとき,#V = #W と 定める.{1,2, . . . , n}と1to1,ontoな写像が存在するとき,その集合の元の 数はn個である.Nと同じ元の数をもつ集合の元の個数は可算無限,[0,1]と 同じ元の数をもつ集合を連続無限という.
全単射によって保たれる不変量が集合X の濃度#X である.このために は,集合の濃度が等しいということが同値関係をみたしていることを示さな ければならない.
2.2.3 同値関係
a∼bが同値関係であるとは 1. a∼a
2. a∼b =⇒b∼a 3. a∼b, b∼c=⇒a∼c X上に同値関係があるとき,
{y∈X:y∼x} をxの同値類と呼ぶ.X =∪
λ∈ΛAλ と同値類の和集合に表すことができる.
ここで
1. x, y∈Aλならば,x∼y
2. x∈Aλかつy∈Aµでλ̸=µならばx̸∼y
各Aλから1つ元xλ∈Aλをとりだすとき,それを代表元とよぶ.
問題 16 Rの上の同値関係をx∼yとはx−y∈Zと定めるとき,これが同 値関係になることを示してください.また,各同値類から1つずつ代表元を とりだすとき,[0,1)が選べることを示してください.
集合の濃度が同値関係であることを示すには
1. #X = #Xは,X →Xとして,恒等写像をとればよい.
2. #X = #Y ならば#Y = #Xを示すには,f:X → Y が全単射なら ば,f−1が存在して,全単射であることを示せばよい
3. #X = #Y かつ#Y = #Zならば,#X = #Zであることを示すには,
f:X →Y,g:Y →Zが全単射ならば,合成写像g◦f:X →Zが全 単射であることを示せばよい
2.2. 写像 15
2.2.4 濃度
集合Xの冪集合とはXの部分集合全体のことである.これを2Xで表す.
2X は,2X の集合Aに対して,定義関数1Aをかんがえることより.写像 X → {0,1}全体と等しい.
まず,もっとも簡単なNと2Nが異なることを示そう.もし,∃f:N→2N ならば,言い換えれば2Nの元を並べることができたならば,
1 → x11x12· · · 2 → x21x22· · ·
... → ... とするとき,yi1yi2· · · を
yij=
xij ifi̸=j
1 i=j andxij= 0 0 i=j andxij= 1 とおく.そこで,新しい列を
y1y2· · ·=y11y22· · ·
とおくと,この列はxi1xi2· · · とはi番目で異なるので,どのxi1xi2· · · とも等 しくないが,仮定によれば,xi1xi2· · · 全体は0,1の無限列全体のはずだから矛 盾である.この論法を対角線を選んだことからCantorの対角線論法とよぶ.
これをちょっと拡張すると,可算無限と連続無限が等しくないことが示せ る.注意しなければならないことは[0,1]の元を2進展開して,小数点以下を 書くとき,011111· · · と1000· · · は同じ点を表すことである,そこで,[0,1]
の点を10進展開することにする.上と同様に,[0,1]の元が並べられたとす ると
1 → x11x12· · · 2 → x21x22· · ·
... → ...
i̸=jのときにはyji =xijとおいて,i=jのところでは,xijおよび0でも9 でもない数を選ぶことで,y1iy2i· · · を作り,再び,対角線をとることで
y11y22· · ·
は,上の中に現れてこないことがわかり.矛盾である.
これを一般化すると
定理 2.1(Cantorの対角線論法) 集合Xの濃度は2Xの濃度より小さい.
証明. 濃度が等しいとしよう.f:X →2Xを全単射としよう.2Xの元と はXの部分集合に対応するから,
Y ={x∈X:x̸∈f(x)}
とおくと,f(x) =Y となる元x∈Xは存在しない.もし,存在したとしたら,
1. x∈Y とする.x∈Y =f(x)となるので,Y の定義に矛盾する 2. x̸∈Y とする.x̸∈Y =f(x)だが,x̸∈f(x)ならば,x∈Y でなけれ
ばならず,矛盾である.
どっちにしろ,矛盾である. □
この定理により,無限に順序関係ができる,ℵ0で可算無限,ℵ1で連続無限,
一般に,ℵiの集合の部分集合全体の集合の元の数をℵi+1とすると,無限に 無限大が大きくなる.
可算無限と連続無限の間に別の無限大があるか,という問題を思いつくが,
これには壮大な結論が待ち受けている.
ゲーデルの不完全性定理(G¨odel)とよばれるもので,クルト・ゲーデルが 1931年に発表したものだが,私の理解の範囲を越えている.ともあれ,上の 問題,「可算無限と連続無限の間に別の無限大があるか」の答えは「どっちで もいい」ということらしい.
2.3 逆関数
f:X →Y が1 to 1かつontoならば,逆関数f−1:Y →X が存在する.
問題 17 次のf: R → Rが逆写像をもつような定義域と値域を求めてくだ さい.
x2, ex, sinx, cosx, tanx 後ろの3つをarcsinx,arccosx,arctanxという.
問題 18
arcsinx+ arccosx=π 2 を示してください.
定理 2.2 X, Y ⊂Rが区間のとき,f が連続関数ならば,f は単調関数でな ければならない.このとき,f−1も連続関数になる.
2.3. 逆関数 17 証明. x1< x0< x2が存在して,[x1, x0]で単調増加,[x0, x2]で単調減 少とする.f(x1) =f(x2)だと1 to 1ではないので,f(x1)< f(x2)とする.
任意のy ∈(f(x1), f(x2)について,中間値の定理より,x1< z1< x0, x0<
z2< x2が存在して,f(z1) =f(z2) =yとなる.これは1 to 1に反する.
f−1が不連続とする.yn →f(a)でf(yn)> a+εをみたすものが存在す るとする.xn =f(yn)とおくと,部分列を選んでxn →x0≥a+εとする.
f の連続性より,f(x0) =f(a),これは1 to 1に反する. □
問題 19
f(x) = 2x3−3x2−12x+ 1 の逆関数の定義域と値域を定めてください.
解. (−∞,−1],(−1,2],(2,∞)を定義域,(−∞,8],[−19,8),(−19,∞) を値域にすれば全単射になるので逆関数を作れる. □
2.3.1 逆関数の微分
定理 2.3 f が微分可能でf′(a)̸= 0ならば,b=f(a)で (f−1)′(b) = 1
f′(a) = 1 f′(f−1(b))
証明. 雑な証明:f−1(x) =yならば,x=f(y)なので,合成関数の微分 より1 =f′(y)dxdy
まともな証明:f は微分可能なので,∀ε >0について∃h0>0 s.t. |h| ≤h0
なら
f′(a)−f(a+h)−f(a) h
< ε
そこで,b+η=f(a+h)とηを選ぶと,
f−1(b+η)−f−1(b)
η = a+h−a
f(a+h)−f(a) = 1 f′(a) +θε
η→0ととると,証明終わり □
例 2.4 • arcsinx: [−1,1]→[−π2,π2]
• arccosx: [−1,1]→[0, π]
• arctanx: (−∞,∞)→(−π2,π2)
直角三角形ABC(Cを直角,AB= 1)を考えて,x=BCとすると,∠ABC=
arccosx,∠BAC= arcsinxなので
arcsinx+ arccosx=π 2 逆関数の微分
y= arcsinx⇒siny=x⇒cosydy
dx = 1⇒ dy
dx = 1
√1−x2 y= arccosx⇒cosy=x⇒ −sinydy
dx = 1⇒ dy
dx =− 1
√1−x2 y= arctanx⇒tanx=y⇒⇒ 1
cos2y dy
dx = 1⇒ dy dx = 1
1 +x2 例 2.5 ex: (−∞,∞)→(0,∞)の逆関数はlogx: (0,∞)→(−∞,∞)なので
y= logx⇒ey=x⇒eydy
dx = 1⇒ dy dx = 1
x
19
第 3 章 収束
3.1 収束の比較
定理 3.1 1. a < bならば,xb
xa →0 (x→ ∞) 2. a >1ならば,xaxb →0 (x→ ∞)
3. an!n →0 (n→ ∞) 4. a >0ならば,logx
xa →0 (x→ ∞) 5. |r|<1ならば,limn→∞nkrn = 0 6. limx→∞xke−x= 0
証明.
1. xxab =xb−a 2. k > bととって
ax=exloga =
∑∞ n=0
(xloga)n
n! ≥xk(loga)k k!
これより
xb
ax ≤xb−k k!
(loga)k →0 (x→ ∞) 3. n0> aととる.
a n
a
(n−1)· · · a n0
a
n0−1· · ·a
| {z 1}
有界
≤ ( a
n0
)n−n0
×定数→0
4. xa =euととる(u=alogx).
logx xa = u
aeu →0 例:lognn →0
(logx−xa)′= 1
x−xa−1=1−xa x
は
x 0 · · · 1 · · ·
f′ + 0 −
f −∞ ↗ −1 ↘ によっても示せる.
5. an=nk|r|nとおくと,
an+1
an =
(n+ 1 n
)k
|r| 十分大きなn0が存在して,n≥n0ならば,(n+1
n
)k
|r|<√
|r|<1 と なるので,n0以降は単調減少かつ下に有界(an≥0).したがって,極 限が存在する.an ≤C√
|r|nをみたす定数Cが存在するので,極限は 0に等しい.
6. 上の5でx=n, r= 1/eで示せるが,
f(x) =xke−x
とおくと,f′(k) = 0なのでf(k)≤kke−k.したがって 0< xke−x=xk+1e−k1
x≤(k+ 1)k+11 x により,x→ ∞で挟み撃ちで求めることもできる.
□
3.2 収束のオーダー
3.2.1 無限大における漸近挙動
f(n)に対して
nlim→∞
g(n) f(n)= 0
のとき,g(n)はf(n)のスモールオーダーであるといい,o(f(n))で表し,f(n)g(n) が有界にとどまるとき,ラージオーダーであるといい,O(f(n))で表す.
これをLandauの記法という.一般にはnk などと比較することが多く,
O(nk), o(nk)などと書く.とくにO(1)であることは有界であること,o(1)で あるとは0に収束することを意味する.
3.2. 収束のオーダー 21
3.2.2 無限小における漸近挙動
無限大と同様に,g(x)がO(xk)であるとは,g(x)xk がx→0のときに有界に とどまることを表し,o(xk)であるとはlimx→0g(x)xk = 0であることを表す.
例 3.1 x以下の素数の数は π(x) =
∫ x 2
dt
logt +O(√ xlogx) であることが,リーマン予想が正しいければ導かれる.
第 4 章 微分
4.1 定義
関数f のxにおける微分の定義は
f(x+h)−f(x) h
の極限が存在するときに,その値をf′(x)とか dxdf(x)と表すのです.f の微 分が存在して連続ならC1級,さらにf′が微分できて連続ならばC2級など といいます.多変数の場合,他の変数を定数だと思って微分するのを偏微分 と言います.例えば
∂f
∂x(x, y) = lim
h→0
f(x+h, y)−f(x, y) h
です.2変数ならば,∂f∂xと ∂f∂y が1回の偏微分,これらをさらに偏微分した
∂2f
∂x2 = ∂
∂x
∂f
∂x
∂2f
∂x∂y = ∂
∂x
∂f
∂y
∂2f
∂y∂x = ∂
∂y
∂f
∂x
∂2f
∂2y = ∂
∂y
∂f
∂y
などを2回の偏微分と言います.k回の偏微分がすべて存在して連続なとき Ck級と言います.
定義なんか知らなくてもよいと思う人はいるでしょうが,実際の問題を考 えるときには定義に基づいて考えるのです.
4.1.1 定義に基づく計算
(cosx)′ = lim
h→0
cos(x+h)−cosx h
= lim
h→0−sin(x+h
2)sinh/2 h/2
= −sinx
4.1. 定義 23
(sinx)′ = lim
h→0
sin(x+h)−sinx h
= lim
h→0cos(x+h
2)sinh/2 h/2
= cosx ここで
hlim→0
sinh h = 1 であることは
hcosh≤sinh≤h
から導かれる.左側は三角形の面積とtanhの比較,右側は弧度法の定義に よる.注意しなければいけないのは,πは単位円の外周の長さの半分と定義 されていることです.このとき,上の左側の不等式を導くのに用いた「単位 円の面積はπに等しい」ことは証明しなければいけないことです.これはア ルキメデスにより紀元前に証明されました.これについてはπに関するノー トを参照してください.
参考のために 三角関数の和積の公式
cos(a+b) = cosacosb−sinasinb cos(a−b) = cosacosb+ sinasinb sin(a+b) = sinacosb+ cosasinb sin(a−b) = sinacosb−cosasinb これより
cosacosb = cos(a+b) + cos(a−b) 2
sinasinb = cos(a−b)−cos(a+b) 2
sinacosb = sin(a+b) + sin(a−b) 2
cosasinb = sin(a+b)−sin(a−b) 2
eの微分
(ex)′ =exlim
h→0
eh−1 h =ex であることの証明:
e= lim
n→∞
( 1 + 1
n )n
から
eh= lim
n→∞
( 1 +h
n )n
したがって
eh−1 = lim
n→∞
( n
∑
k=0 nCk
(h n
)k
−1 )
= lim
n→∞
∑n k=1
nCk
(h n
)k
= h+ lim
n→∞
∑n k=2
nCk
(h n
)k
より,右辺第2項が0(h)であることを示せばよい.
1 h
∑n k=2
nCk
(h n
)k =
∑n k=2
nCk
(hk−1 nk
)
≤ |h|
∑n k=2
nCk
( 1 nk
)
≤ |h|
∑n k=0
nCk ( 1
nk )
= |h| (
1 + 1 n
)n
≤ |h|e
4.1.2 懸垂曲線 (catenary)
天井からつり下げた紐の作る曲線で,アーチにも使われています.一見す ると,放物線に見えますが,放物線ではありません.この曲線を導いてみま しょう.微分の定義を用います.最下点からの長さsをパラメータにして考 えてみます.パラメータがsからs+ ∆sの部分を考えましょう.紐の密度 をρとすると,この部分にはρ∆gの下向きの力と,その部分の左端に接線に そっての張力,右端の接線にそっての張力の3つの力が働いていますが,こ れらは釣り合っているはずです.水平方向の力は,左端と右端の水平方向の 力だけですから,これらは等しくなければなりません.これをTとしましょ う.パラメータsのところの接線の傾きをθ(s)とおくと,左端では下向きに Ttanθ(s))の力,右端では上向きにTtanθ(s+ ∆)の力が働いています.こ れと重力がバランスがとれているのですから
Ttanθ(s+ ∆)−Ttanθ(s) =ρ∆g が成り立ちます.微分の定義にしたがえば,この式は
T d
dstanθ(s) =ρg
4.1. 定義 25 を得ます.この微分方程式は容易に解けてC= ρgT とおくと
tanθ(s) =Cs または θ(s) = arctanCs
になります.s= 0のときに最下点としましたから,積分定数は0に等しい のです.
これを(x, y)で表してみましょう.最下点を(0,0)としましょう.
x(s) =
∫ s 0
cosθ(t)dt y(s) =
∫ s 0
sinθ(t)dt
tanθ(t) =Ctより変数変換すると,dθ=Ccos2θ dtなので,
x(s) =
∫ s 0
cosθ1 C
dθ cos2θ
= 1
C
∫ z(s) 0
dz
1−z2 (z= sinθ)
= 1
2C(log(1 +z(s))−log(1−z(s))) ここで
z(s) = sin(θ(s)) =√
1−cos2θ(s)
=
√
1− 1
1 + tan2θ(s)
=
√
1− 1
1 +C2s2
= Cs
√1 +C2s2 を代入して
x(s) = 1 2Clog
(
Cs+√
1 +C2s2
−Cs+√
1 +C2s2 )
さらに,sinhy= ey−2e−y であるから x= sinh(log(x+√
1 +x2)) であるので
sinhCx(s) =Cs
を得ます.一方,
y(s) =
∫ θ 0
sinθ1 C
dθ cos2θ
= 1
C ( 1
cosθ −1 )
= 1
C (√
1 +C2s2−1 )
= 1
C(
√
1 + sinh2(Cx(s))−1)
= 1
C(cosh(Cx(s))−1) つまり,
y= 1
C(coshx−1) が懸垂曲線であることがわかりました.
exをテイラー展開すると coshx = ex+e−x
2
= 1
2(1 +x+x2
2 · · ·+ 1−x+x2 2 − · · ·)
= 1 + x2 2 +· · · であるから,
y= 1
C(1 +C2x2
2 +· · · −1) = C
2x2+· · · となり,放物線に近いことがわかります.
4.2 Newton 法
関数f(x)の解を近似する方法である.MathematicaではFindRoot[f,{x,x0}] という命令として組み込まれている.初期値x0から出発し,徐々に解に近づ く方法である.x0におけるfの接線を考えると
y=f′(x0)(x−x0) +f(x0)
なので,そのx軸と交わる交点をx1とおく,この走査を続けて得た数列{xn}
の極限がf(x) = 0の解になるという方法である.実際,
xn+1=xn− f(xn) f′(xn) をみたす.数列がx∗に収束すれば
x∗=x∗− f(x∗) f′(x∗)
4.3. eの存在 27 であるから,f(x∗) = 0をみたすことになる(f′(x∗)̸= 0ならば).作用素
T x=x− f(x) f′(x)
が縮小写像であることをみれば,Tの不動点の存在を示すことができる.そ のために
T′x = 1−f′(x)2−f(x)f′′(x) f′(x)2
= f(x)f′′(x) f′(x)2
であるので,f がC2関数であり,|f′(x)|> δ >0ならば,十分にf(x)を小 さくとれば,|T′|<1になるので,縮小写像になることが示せる.
4.3 e の存在
「有界単調数列は収束する」を前提とする.
4.3.1 単調増加
( 1 + 1
n )n
=
∑n k=0
nCk 1 nk 一方
n+ 1−r
n+ 1 −n−r
n = r
n(n+ 1) >0 を用いると,縦の各項が右の方が大きいので
n+1Ck
1
(n+ 1)k−nCk
1 nk =
[(n+ 1)
(n+ 1)· · ·(n+ 1−k) (n+ 1) −n
n· · ·(n−k) n
] 1 k! >0 したがって
( 1 + 1
n+ 1 )n+1
− (
1 + 1 n
)n
=
∑n k=0
(
n+1Ck 1
(n+ 1)k −nCk 1 nk
)
+ 1
(n+ 1)n+1
≥ 0 これはJensenの不等式: 凸な関数fについて
∑n i=1
λif(xi)≤f(
∑n i=1
λixi) (λi≥0,
∑n i=1
λi = 1) を,f(x) = logxとx1=· · ·=xn−1=a,xn=bに適用すると
√n
an−1b≤ 1
n(a(n−1) +b)
を得る.一方で,示すべき式は ( n
n−1 )n−1
≤
(n+ 1 n
)n
であるから
(∗) = ( n2
n2−1 )n−1
n n+ 1
を考える.これにJensen(または相加相乗平均)を適用すれば n2
n2−1 + n n+ 1 =n であるから,
(∗)≤1 を得て,証明を終わる.
4.3.2 有界
nCk
1 nk = n
n (n−1)
n · · ·(n−k+ 1) n
1 k! ≤ 1
k! ≤ 1 2k−1 したがって (
1 + 1 n
)n
≤1 +
∑n k=1
1 2k−1 = 3
途中をみると (
1 + 1 n
)n
≤
∑n k=0
1 k!
を用いているが,実は極限が一致して
∑∞ k=0
1 k! =e がexのテイラー展開から示される.
4.4 テイラー展開
ex=
n∑−1 k=0
xk k! +eθx
n! xn 収束半径は
an+1 an
= 1
n+ 1 →0 より,無限大
4.4. テイラー展開 29
4.4.1 ガウス
eiθ = cosθ+isinθ cosx = 1−x2
2 +x4 4! +· · · sinx = x−x3
3! +x5 5! +· · · 剰余項は,|sinx|,|cosx| ≤1より
|Rn(x)| ≤ 1 n!|x|n したがって,収束半径は無限大
ちなみに
(sinx)(n)=
sinx n= 4k cosx n= 4k+ 1
−sinx n= 4k+ 2
−cosx n= 4k+ 3
(cosx)(n)
cosx n= 4k
−sinx n= 4k+ 1
−cosx n= 4k+ 2 sinx n= 4k+ 3 三角関数のテイラー展開は,高校で習う(sinx)′ = cosxと(cosx)′ =−sinx と平均値の定理からだけで導くことができます.面倒を避けるためにx >0 としましょう.まず,平均値の定理より,ある0< c < xが存在して,
sinx=xcosc をみたします.cosc≤1ですから,
sinx≤x が示せます.それを用いると,cos 0 = 1ですから
cosx = 1 +
∫ x 0
(cost)′dt= 1−
∫ x 0
sint dt
≥ 1−
∫ x 0
t dt= 1−x2 2 さらに,
sinx =
∫ x 0
cost dt
≥
∫ x 0
(1−t2 2)dt
= x−x3 3!
もっと,続けて
cosx = 1−
∫ x 0
sint dt
≤ 1−
∫ x 0
(t−t3 3!)dt
= 1−x2 2 +x4
4!
を得ます.ここまでで
x−x3
3! ≤sinx≤x 1−x2
2 ≤cosx≤1−x2 2 +x4
4!
が得られます. これを繰り返せば三角関数のテイラー展開が得られるという わけです.それだけではなく,上と下からの評価を得ていることから,真の 値の誤差も得ることができています.この評価はxが正の値であればどこで も成り立つことを示しました.そして,大小の評価の差は xn!n ですから,こ れは0に収束します.すなわち,この無限級数は収束することがわかるので,
収束半径が無限大であることも導かれることになります.
4.4.2 双曲三角関数
cosx=eix+e−ix
2 , sinx= eix−e−ix 2i より
coshx=ex+e−x
2 , sinhx=ex−e−x
2 , tanhx= ex−e−x ex+e−x cosh2x−sinh2x= 1が成り立つ.
4.4.3 e は無理数である
証明. eを有理数e= pqとする.e <3であり,かつ(1+16)6= 2.52· · ·>52 であるのでq > eである.
e= 1 + 1 +1
2 +· · ·+ 1
q!+ eθ
(q+ 1)! (0< θ <1) 両辺にq!をかけるとq!eは自然数になるので, eθ
q+1も整数である.一方 0< eθ
q+ 1 < e
q+ 1 < q q+ 1 <1
と矛盾する. □