【原 著】
専門学校の学校満足度改善のための性格的アプローチ
-専門学校版Q-Uの学校満足度尺度と主要5因子性格検査との関連性分析-
片瀬 拓弥 *
近年,文部科学省の大学制度改革で専門学校が取り上げられ注目を浴びている。その中で,学生の学級適応と いう視点から専門学校の学校満足度を改善する研究は,今まで見過ごされてきた可能性がある。本研究の目的は,
専門学校版Q-Uの学校満足度尺度と主要5因子性格検査との関連性を分析することにより,学校満足度に対する 性格特性の影響を男女別に明確化することである。さらに,この男女別の結果に基づき,学校満足度改善のため の性格的アプローチを提案することである。関連性分析の結果,男性では外向性・情緒安定性,女性では外向性・
協調性・情緒安定性が,主として学校満足度に影響していた。次に時間経過に伴う学校満足度尺度4群の変化に 対応した所属変化4群を定義した。所属変化4群と主要5因子性格検査との関連性を分析し,男女別・所属変化 4群別の性格特性を示した。これら男女別の結果を検討し,専門学校の学校満足度改善のための性格的アプロー チを提案した。
キーワード:専門学校版Q-U,主要5因子性格検査,学校満足度,学級適応,性格特性
【問題と目的】
近年,専修学校(以下,専門学校)を取り巻く教育 制度が大きく変革している。第一段階の変革として,
文部科学省(2013)は,一定の基準を満たした専門学 校に対して「職業実践専門課程」として認定する制度 を創設した。この制度の目的は,職業に必要な実践的 かつ専門的な能力を育成する専門学校の職業教育水準 の維持向上を図ることである(文部科学省,2013)。 さらに中央教育審議会(2016)は,職業教育に特化し た新しい種類の大学をつくるよう答申した。この新し い大学制度は,主として専門学校を対象としており,
2019年度の開学を目指している。大学種別が増える のは,実に1964年の短期大学の制度化以来の55年ぶ りとなる。その背景には,現在の高等教育機関への進 路選択状況がある。中央教育審議会(2016)は,大学,
短期大学,高等専門学校及び専門学校の各機関への進
学率が,大学51.5%,専門学校22.4%,短期大学5.1%,
高等専門学校(4年次)0.9%と報告している。しかし,
諸外国とは異なり,職業志向を明確にした高等教育機 関を大学体系の一部に位置づけたり,職業志向を明確 にした学士課程を創設したりする制度は,日本におい ては導入されていないと述べている。つまり,進学率 から考えると大学に次ぐ高等教育機関は,専門学校で あるという実情があるにもかかわらず,諸外国に比し て職業教育を専門的に行う高等教育機関の制度体系に 不備があると指摘している。このため,新たな大学制 度改革の主対象を専門学校としているのである。この ような状況を考えると,新たな高等教育機関として位 置づけられた専門学校に対して,これまで以上の注目 が集まると予想される。
さて,大対・大竹・松見(2007)は,子どもの学校 不適応問題が深刻化し続けている中,学校不適応に関 する研究が盛んに実施されているとしている。高等教 育機関においても学校不適応による中途休退学は,大 きな課題の一つである。ここで,専門科高校における
* 清泉女学院短期大学
研究の中に,学校満足度が学校適応に影響する要因と して重要であるという報告がある(竹綱・鎌原・小方・
高木・高梨,2009)。そこで,NII学術情報ナビゲー タ(2016)において,「学校満足」をキーワードとし て検索した結果,竹綱ら(2009)の研究を含む20件 が該当した。しかし,「専門学校,学校満足」をキー ワードとして検索した結果は,該当数1件であり,十 分な数とはいえなかった。該当した1件の研究(関・
吉山・三隅・吉田・三角・詹,1997)は,看護専門学 校の学級担当教員のリーダーシップ行動を測定する尺 度を作成し,その妥当性を検討したものである。その 結果,学級担当教員のリーダーシップ行動が,授業満 足,学級への帰属意識,学級の運営満足,学校満足な どのモラル要因に影響していることを示した。しかし,
学校満足と学級への帰属意識や学級の運営満足との関 連性は論じられていない。つまり,専門学校では,学 級担当教員により学級運営が行われているにもかかわ らず,「学生の学級適応という視点から専門学校の学 校満足度を改善する研究」は,今まで見過ごされてき た可能性がある。よって,「学生の学級適応という視 点から専門学校の学校満足度を改善する研究」につい て,NII学術情報ナビゲータ(2016)を使って調査した。
第一に検索範囲を広くするため,キーワードを「専門 学校,満足」にしたところ,334件が該当した。この 結果を調査すると,授業,実習,職業,卒業生,施設 等の満足感の研究が多く見受けられた。第二にキーワ ードを「専門学校,学級」にしたところ,74件が該 当した。しかし,この結果の多くが,専門学校ではな く高等専門学校(以下,高専)の研究,もしくは高専 教員が執筆者の研究であった。第三にキーワードを「専 門学校,学級適応」にしたところ,該当する研究はな かった。第四にキーワードを「専門学校,学級,満足」
にしたところ,4件が該当した。しかし,この結果の 全てが,専門学校ではなく高専の研究であった。先述 の「専門学校,学校満足」という検索結果が1件であ ったことも考慮すると「学生の学級適応という視点か ら専門学校の学校満足度を改善する研究」は,十分で ないことが分かる。
そこで,対象年齢と学級運営方法が「専門学校」と
類似している高専の学級適応に関する研究を事例とし て取り上げる。石丸・水野(2016)は,高専において,
高校版の「よりよい学校生活と友達づくりのためのア ンケート」(以下,高校版Q-U)の結果を学級適応感 の改善のために有効活用した。この高校版Q-U(河村・
苅間澤・粕谷・武蔵,2004)は,高校生の学級適応感 を診断するために開発された自記式質問紙である。石 丸・水野(2016)は,高校版Q-Uが高専生に対して も適用できることを論理的に示し,学級適応感を改善 するための介入方法を提示している。つまり,専門学 校と類似した高専において,適用可能だった高校版 Q-Uのような自記式質問紙を「学生の学級適応という 視点から専門学校の学校満足度を改善する研究」に対 して活用できる可能性がある。
次に,この学級適応感と性格特性の関係について述 べる。なぜなら,佐藤(2010)は,性格特性が小学生 の学級適応感に影響を与えたと報告しているからであ る。佐藤(2010)は,小学生の学級適応感を診断する
小学校版Q-U(河村・藤村・粕谷・武蔵,2004)を用
い,YG性格検査との関係を検討した。その結果,適 度の社会的外向性とリーダーシップを持った児童と,
適度な社交性と控えめな支配的性格を持った児童の双 方が学級生活に満足していたとしている。つまり,性 格特性が学級適応感に影響していることを示唆してい る。しかし,性格特性について,YG性格検査の外向 性と内向性のみを取り上げており,他の性格検査の利 用も検討すべきであるとしている。また,小平・安藤・
布施(2013)は,児童の性格特性及び学級適応感に注 目し,積極的授業参加行動に与える影響を検討した。
その結果,性格特性及び学級適応感が積極的授業参加 行動に影響することを示した。しかし,性格特性と学 級適応感との交互作用的な影響については,今後検討 する必要性があると主張している。つまり,学級適応 という視点から専門学校の学校満足度を改善する研究 を行うためには,性格特性と学級適応感との関係性を 明確化すべきである。
このような先行研究をふまえ,片瀬(2015)は,専 門学校版の「充実した学生生活を送るためのアンケー ト」(以下,専門学校版Q-U)と主要5因子性格検査(以
下,Big Five)を活用して関連性を分析した。この専 門学校版Q-Uは,学生の学級適応という視点から学 校 満 足 度 を 診 断 す る 自 記 式 質 問 紙 で あ る( 河 村,
2011)。また,Big Fiveは,村上・村上(1997)が開 発した主要5因子性格検査である。片瀬(2015)は,
専門学校版Q-Uの学校満足度尺度4群(学校生活満 足群,非承認群,侵害認知・不安定群,学校生活不満 足群)と性別に対して,Big Fiveの各性格因子を目的 変数とした2要因分散分析を行った。その結果,Big Fiveの外向性と協調性について,交互作用が有意とな り男女差が認められた。さらに勤勉性,情緒安定性,
知性について,群間の主効果が有意になったと報告し ている。しかし,各性格因子データの偏差値変換を男 女混合で行っており,男女別の影響を明確化していな い。さらに学校満足度を改善するために,どのような 性格特性を持つ学生を対象にどのような介入行動を取 れば良いかについて論じていない。
よって,本研究の目的は,専門学校版Q-Uの学校 満足度尺度とBig Fiveの関連性を分析することにより,
学校満足度に対する性格特性の影響を男女別に明確化 することである。さらに,この男女別の結果に基づき,
学校満足度を改善するために,どのような性格特性を 持つ学生を対象にどのような介入行動を取れば良いか,
性格的アプローチを提案することである。ここでいう 性格的アプローチとは,「学校満足度に関連する性格 特性を利用して,教師が学生らの状況・環境に介入す る何らかの方法や行動のこと」と定義する。
本研究は,調査データを活用して,以下の手順によ り分析する。
(1)Big Fiveの男女差及び信頼性を分析する。
(2)学校満足度尺度4群における男女差を分析する。
(3)実施時期による学校満足度尺度4群の所属変化 を男女別に分析する。
(4)学校満足度尺度とBig Fiveとの関連性について,
男女別に分析する。方法として,相関分析と判別分析 を用いる。
(5)実施時期による学校満足度尺度4群の所属変化
とBig Fiveの関係性について,男女別に分析する。方
法として,1要因分散分析を用いる。
以上,(1)~(5)の男女別の結果をふまえ,学校 満足度改善のための性格的アプローチを提案する。
【方 法】
1.調査対象
本研究の調査対象は,A専門学校に201X年度~
201X+3年度に入学した学生532名(男:153名,女:
379名)である。A専門学校は,2年制7学科構成(文 系・理系の混在)からなる総合専門学校であり,学科・
学年ごとの学級担任制により運営されている。また,
調査対象者532名のうち,全データの欠損がない433 名(男:120名,女:313名)を分析対象とした。
2.調査内容
(1)手続き
回答時には,学籍番号・氏名の記載とともに,各実 施担当者からアンケートの目的・意義・回答方法につ いて説明を行った。また,後日,各アンケートの個人 レポートを返却した。
(2)専門学校版Q-U
2010年, 専 門 学 校 版Q-Uが 開 発 さ れ た( 河 村,
2011)。この検査には,以下のアンケートが含まれて いる。
・学校満足度尺度
この尺度は,下位尺度として,承認尺度(以下,承 認尺度の素点を承認点とする),被侵害・不適応尺度(以 下,被侵害・不適応尺度の素点を被侵害点とする)の 2因子からなり,各15項目計30項目から構成されて いる。
この全30項目の回答方法として,とてもそう思う(5 点),少しそう思う(4点),どちらとも言えない(3点), あまりそう思わない(2点),全くそう思わない(1点)
の5件法で回答を求めた。
(3)Big Five
村上・村上(1997)は,欧米において妥当性研究に 定評のある5因子性格検査の日本語版を自ら開発し,
その妥当性及び信頼性を報告した。さらに多段階無作 為抽出法によって,日本国内4,100名を対象として世
代 別 の 標 準 化 を 行 っ た( 村 上・ 村 上,1999)。 こ の
Big Fiveは,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,
知性の5因子から構成される。各因子12項目の全60 項目となっており,「はい」と「いいえ」の2件法で 回答を求めた。
3.調査時期
各調査年度にA専門学校へ入学した1年生に対して,
5月に第1回専門学校版Q-Uの学校満足度尺度の調査
(以下,5月Q-U)とBig Five,さらに11月に第2回 専門学校版Q-Uの学校満足度尺度の調査(以下,11 月Q-U)を実施した。
4.分析対象者の学級構成表
Table 1にA専門学校の分析対象者について,年度
ごとの学級構成表を示す。また,5月Q-U及び11月
Table 1 A専門学校における各年度の学級構成表及びコンピュータ診断結果
年度 学級 男性 女性 計 Q-U
時期 コンピュータ
学級診断 満足群 非承認群 侵害
認知群 不満足群
201X
A 27 3 30 5月 親和的 55% 26% 6% 13%
11月 ゆるみ 48% 0% 23% 29%
B 3 6 9 5月 診断なし 70% 20% 10% 0%
11月 診断なし 56% 11% 33% 0%
CD 7 16 23 5月 親和的 69% 19% 4% 8%
11月 ゆるみ 58% 4% 23% 15%
E 3 9 12 5月 かたさ 46% 23% 8% 23%
11月 親和的 67% 8% 0% 25%
F 19 19 5月 親和的 64% 18% 0% 18%
11月 親和的 50% 14% 23% 14%
G 1 13 14 5月 親和的 86% 7% 0% 7%
11月 親和的 86% 7% 0% 7%
H 4 16 20 5月 親和的 70% 17% 0% 13%
11月 親和的 45% 30% 5% 20%
201X+1
B 11 9 20 5月 荒れはじめ 43% 13% 9% 35%
11月 荒れはじめ 30% 13% 13% 43%
CD 7 14 21 5月 荒れはじめ 59% 18% 14% 9%
11月 荒れはじめ 50% 5% 14% 32%
E 5 8 13 5月 親和的 87% 0% 0% 13%
11月 親和的 75% 0% 19% 6%
F 7 7 5月 診断なし 67% 0% 22% 11%
11月 診断なし 44% 11% 22% 22%
G 6 22 28 5月 親和的 69% 21% 7% 3%
11月 親和的 79% 10% 0% 10%
H 2 23 25 5月 荒れはじめ 52% 12% 12% 24%
11月 ゆるみ 50% 0% 19% 31%
201X+2
B 7 16 23 5月 親和的 54% 17% 11% 17%
11月 親和的 57% 20% 9% 14%
C 10 10 5月 親和的 67% 17% 8% 8%
11月 荒れはじめ 50% 17% 0% 33%
D 12 1 13 5月 荒れはじめ 47% 6% 0% 47%
11月 ゆるみ 53% 0% 18% 29%
E 3 14 17 5月 かたさ 48% 35% 4% 13%
11月 ゆるみ 43% 17% 26% 13%
F 9 9 5月 親和的 67% 8% 8% 17%
11月 親和的 67% 0% 0% 33%
G 1 12 13 5月 親和的 64% 14% 0% 23%
11月 荒れはじめ 64% 0% 5% 32%
H 12 12 5月 親和的 79% 7% 14% 0%
11月 親和的 64% 21% 7% 7%
201X+3
B 3 6 9 5月 荒れはじめ 57% 14% 14% 14%
11月 かたさ 50% 21% 7% 21%
C 1 8 9 5月 親和的 79% 7% 7% 7%
11月 親和的 79% 7% 7% 7%
D 13 6 19 5月 親和的 42% 32% 16% 11%
11月 親和的 53% 11% 16% 21%
F 12 12 5月 親和的 64% 29% 0% 7%
11月 かたさ 25% 42% 17% 17%
G 1 23 24 5月 親和的 57% 11% 14% 18%
11月 かたさ 50% 21% 14% 14%
H 3 19 22 5月 親和的 91% 4% 4% 0%
11月 親和的 70% 0% 0% 30%
n 120 313 433 5月 平均 64% 15% 7% 14%
11月 56% 11% 12% 20%
Q-U時点の学級状態について,コンピュータ診断され た結果も付記する。コンピュータ診断は,図書文化
(2016)が行っており,学級状態により,親和的学級,
かたさのある学級,ゆるみのある学級,荒れはじめの 学級の4分類に診断される(河村,2011)。
【結 果】
1.Big Five における男女差及び信頼性の分析 村上ら(1999)は,自ら開発したBig Fiveの世代別 標準化の過程において,青年期の知性の素点データに 男女差があることを報告している。そこで,A専門学
校生のBig Fiveの素点データについても,男女別の平
均値差があるのかt検定を行った。その結果をTable
2に示す。Table 2の結果を見ると,外向性と協調性
に有意な男女差があることが判明した。
また,Big Fiveの信頼性について,クロンバックの α係数を求めたところ,以下となった。
男性:外向性0.85,協調性0.66,勤勉性0.77,
情緒安定性0.85,知性0.77
女性:外向性0.88,協調性0.72,勤勉性0.79,
情緒安定性0.84,知性0.72
これらの結果から,男性の協調性に若干の信頼性低
下が見られるが,その他の因子については,概ね許容 範囲内である。
2.学校満足度尺度 4 群における男女差の分析
5月Q-U,11月Q-Uの各時点において,河村(2011) が定義した学校満足度尺度4群とそれらの群に所属す る人数のクロス集計を行い,その度数分布に男女差が あるのか分析した。学校満足度尺度4群とは,学校満 足度尺度の下位尺度である承認点と被侵害点,及び標 準化された各全国平均点との比較により,以下のよう に定義された群のことである。
(1)学校生活満足群(以下,満足群)
承認点が全国平均よりも高く,被侵害点が全国平均 よりも低い群
(2)非承認群
承認点が全国平均よりも低く,被侵害点が全国平均 よりも低い群
(3)侵害認知・不安定群(以下,侵害認知群)
承認点が全国平均よりも高く,被侵害点が全国平均 よりも高い群
(4)学校生活不満足群(以下,不満足群)
承認点が全国平均よりも低く,被侵害点が全国平均 よりも高い群
Table 3は,学校満足度尺度4群に所属する男女人
数をクロス集計したものである。また,Table 3左表は,
5月Q-Uのクロス集計表であり,Table 3右表は,11 月Q-Uのクロス集計表である。
Table 3左表(5月Q-U)について,χ2検定を行っ た と こ ろ, 男 女 差 は 有 意 と な っ た(χ2=15.6, df=3,
p<.01)。そこで,残差分析により有意差を確認すると,
Table 2 男女におけるBig Fiveの平均値の比較(t検定結果)
男性(n=120) 女性(n=313)
性格因子 平均 σ 平均 σ t値 効果量(d) 外向性 4.48 (3.50)6.13 (3.85) 4.08** 0.44 協調性 8.73 (2.33)9.50 (2.30) 3.12** 0.34 勤勉性 5.83 (3.10)6.16 (3.19) n.s.
情緒安定性 5.02 (3.51)5.45 (3.39) n.s.
知性 3.91 (2.95)3.56 (2.65) n.s.
**p<.01
Table 3 学校満足度尺度4群におけるクロス集計表(左表:5月Q-U,右表:11月Q-U) 実施時期:5月Q-U
所属群 男性 女性 計
満足群 n 59 212 271
比率 49.2 % 67.7 % 62.6 %
残差 -3.57 *** 3.57 ***
非承認群 n 21 46 67 比率 17.5% 14.7% 15.5%
残差 0.72 -0.72
侵害認知群 n 12 20 32 比率 10.0% 6.4% 7.4%
残差 1.29 -1.29
不満足群 n 28 35 63 比率 23.3% 11.2% 14.5% 残差 3.21 ** -3.21 **
計 120 313 433
検定:x(2 3)=15.6,p<.01
残差:調整済み標準化残差,*p<.05,**p<.01,***p<.001
実施時期:11月Q-U
所属群 男性 女性 計
満足群 n 59 193 252
比率 49.2 % 61.7 % 58.2 %
残差 -2.36 * 2.36 *
非承認群 n 8 39 47
比率 6.7% 12.5% 10.9%
残差 -1.73 1.73
侵害認知群 n 19 30 49 比率 15.8% 9.6% 11.3%
残差 1.84 -1.84
不満足群 n 34 51 85 比率 28.3% 16.3% 19.6% 残差 2.82 ** -2.82 **
計 120 313 433
検定:x(2 3)=14.4,p<.01
5月Q-Uでは,満足群において,女性の方が男性より
も多く(p<.01),不満足群において,女性の方が男性
よりも少ない(p<.01)。また,非承認群と侵害認知群 では男女差は認められないという結果になった。
また,Table 3右表(11月Q-U)について,χ2検定 を 行 っ た と こ ろ, 男 女 差 は 有 意 と な っ た(χ2=14.4, df=3, p<.01)。そこで,残差分析により有意差を確認 すると,11月Q-Uでも,満足群において,女性の方 が男性よりも有意に多く(p<.05),不満足群において,
女性の方が男性よりも有意に少ない(p<.01)。また,
非承認群と侵害認知群では男女差は認められないとい う結果になった。
3.実施時期による学校満足度尺度 4 群の所属変化の 分析
Table 4は,実施時期による学校満足度尺度4群の
所属変化に関する男性のクロス集計表であり,Table 5は,女性のクロス集計表である。両表とも「満足群 とその他群(非承認群,侵害認知群,不満足群を加え た群)」の分布の偏りに焦点を当てて分析を行った。
なぜなら,特に満足群への変化に着目することと,χ2 検定の妥当性を確保するためである。
Table 4について,χ2検定を行ったところ,所属群
差は有意となった。そこで残差分析により有意差を確 認すると,男性では,5月Q-Uで満足群であった者は,
11月Q-Uで満足群になった者が多く(p<.001),その 他群になった者は少ない(p<.001)。5月Q-Uでその 他群であった者は,11月Q-Uで満足群になった者は 少なく(p<.001),その他群になった者が多い(p<.001)。
次にTable 5について,χ2乗検定を行ったところ,
所属群差は有意となった。そこで残差分析により有意 差を確認すると,女性では,5月Q-Uで満足群であっ た者は,11月Q-Uで満足群になった者が多く(p<.001), その他群になった者は少ない(p<.001)。5月Q-Uで その他群であった者は,11月Q-Uで満足群になった 者 は 少 な く(p<.001), そ の 他 群 に な っ た 者 が 多 い
(p<.001)。
よって,男女とも「その他群から満足群へと変化」
した者は少なかった。さらに,11月Q-Uにおいて男 性の満足群が49.2%(59/120),女性の満足群が61.7
%(193/313)に留まった。
4.学校満足度尺度(5 月 Q-U)と Big Five との関連 性分析
学校満足度尺度(5月Q-U)とBig Fiveとの相関行 列をTable 6に示す。Table 6のハイフン記号を境にし
Table 4 所属群の変化に関するクロス集計表(男性)
11月Q-U
実施時期 所属群 満足群 その他群 計
5月Q-U 満足群 n 44 15 59
比率 74.6% 24.6% 49.2%
残差 5.48 *** -5.48 ***
その他群 n 15 46 61
比率 25.4% 75.4% 50.8%
残差 -5.48 *** 5.48 ***
計 59 61 120
検定:x(1)2 =30.0,p<.001
残差:調整済み標準化残差,***p<.001
Table 5 所属群の変化に関するクロス集計表(女性)
11月Q-U
実施時期 所属群 満足群 その他群 計
5月Q-U 満足群 n 168 44 212
比率 87.0% 36.7% 67.7%
残差 9.27 *** -9.27 ***
その他群 n 25 76 101
比率 13.0% 63.3% 32.3%
残差 -9.27 *** 9.27 ***
計 193 120 313 検定:x(1)2 =85.9,p<.001
残差:調整済み標準化残差,***p<.001 Table 6 学校満足度尺度(5月Q-U)とBig Fiveとの相関行列 データ名 外向性 協調性 勤勉性 情緒
安定性 知性 承認点 被侵害点
外向性 - 0.29** 0.26** 0.32** 0.57** -0.23**
協調性 0.26* - 0.35** 0.20** 0.45** -0.29**
勤勉性 0.21* - 0.35**
情緒安定性 0.29** 0.26** - 0.23** 0.25** -0.28**
知性 0.29** 0.32** - 0.29**
承認点 0.51** 0.33** 0.22* 0.27** 0.34** - -0.44**
被侵害点 -0.43** -0.37** -0.56** -
左下三角:男性(n=120),右上三角:女性(n=313),*p<.05,**p<.01 無相関(相関係数が絶対値0.2未満)は空白とした
た左下三角の部分表結果から,男性の承認点は,Big Fiveの5因子全てに有意な正の相関がある。特に外向 性においては,中程度の相関がある。また,男性の被 侵害点は,外向性・情緒安定性に有意な負の相関があ る。特に外向性においては,中程度の相関がある。一
方,Table 6のハイフン記号を境にした右上三角の部
分表結果から,女性の承認点は,勤勉性を除く,全て の因子に有意な正の相関がある。特に外向性・協調性 においては,中程度の相関がある。また,女性の被侵 害点は,外向性・協調性・情緒安定性に有意な負の相 関がある。
ここで,さらに学校満足度尺度4群の満足群と不満 足群を分ける性格特性の影響を明確化するため,満足 群と不満足群のみを対象とする分析を行った。すなわ ち,満足群を「1」,不満足群を「0」とした目的変数 に対し,Big Fiveの素点データを説明変数とした男女 別 の 判 別 分 析( 全 変 数 法 ) を 行 っ た。 そ の 結 果 を
Table 7に示す。この判別結果を見ると男女ともに相
関比0.5以上,判別的中率75%以上であることから,
予測判断基準として十分な指標となっている(統計分 析研究所,2016)。Table 7によれば,男性の標準化判 別係数では,外向性・情緒安定性が統計的に有意とな っている。また,女性の標準化判別係数では,外向性・
協調性・情緒安定性が統計的に有意である。
また,この判別状況を5月Q-Uプロットから確認 するため,男性の外向性・情緒安定性が共に標本平均 値よりも高い群(以下,m性格因子上位群)と外向性・
情緒安定性が共に標本平均値よりも低い群(m性格因 子下位群)の5月Q-U プロットをFigure 1に示す。
図中の中央付近にある縦横線は,全国平均値線を示し ている。さらに,その平均値線を境に右上は満足群,
右下は非承認群,左上は侵害認知群,左下は不満足群 を示している。同様に女性の外向性・協調性・情緒安 定性の全てが標本平均値よりも高い群(f性格因子上 位群)と外向性・協調性・情緒安定性の全てが標本平 均値よりも低い群(f性格因子下位群)の5月Q-U プ ロットをFigure 2に示す。Figure 1及びFigure 2が示 す通り,性格因子上位群は,満足群に所属する確率が 高く(男性75.0%,女性82.7%)。一方,性格因子下 位群は,不満足群に入る確率が高くなかった(男性 48.5%,女性31.9%)。
承 認 点
被侵害点 性格因子上位群 性格因子下位群
月 のプロット 男性 Figure 1
承 認 点
被侵害点 性格因子上位群 性格因子下位群
月 のプロット 女性 Figure 2
Table 7 満足群と不満足群の判別分析結果
男性(n=87) 女性(n=247) 性格因子 標準化判別係数 標準化判別係数
外向性 0.74** 0.50**
協調性 0.12 0.70**
勤勉性 0.08 0.07
情緒安定性 0.47* 0.26†
知性 -0.04 -0.09
相関比 0.56 0.50 判別的中率 77.0% 80.2%
†p<.10, *p<.05, **p<.01
5.実施時期による学校満足度尺度 4 群の所属変化と Big Five との分散分析
5月Q-Uから11月Q-Uの学校満足度尺度4群の変 化状況を比較し,以下のように「所属変化4群」を定 義する。
(A)満足不動群
5月Q-Uと11月Q-Uの所属群が,両方とも満足 群内であった者。
(B)改善群
5月Q-Uから11月Q-U の所属群が変化し,非承 認群・侵害認知群・不満足群のいずれかから満足 群に変化した者,また,不満足群から非承認群・
侵害認知群へ変化した者。
(C)悪化群
5月Q-Uから11月Q-U の所属群が変化し,満足
群から非承認群・侵害認知群・不満足群のいずれ かに変化した者,また,非承認群・侵害認知群か ら不満足群へ変化した者。
(D)その他不動群
5月Q-Uと11月Q-U の所属群が,両方とも満足 群以外の同じ群内であった者。つまり,非承認群 は非承認群,侵害認知群は侵害認知群,不満足群 は不満足群であった者。
ただし,学校満足度尺度4群の非承認群と侵害認知 群が入れ変わった者については,上記4群のいずれに も該当しないとし,分析対象から除外した。その結果,
分析対象者は男性118名,女性309名となった。
この「所属変化4群」に対してBig Fiveの各性格因 子を目的変数とした1要因分散分析を男女別に行った。
この分析では,結果解釈の容易性を考慮し,各性格因 子の素点を男女別に偏差値変換(T得点)してから分
析した。Table 8に分散分析結果を示す。
Table 8上表の結果から,男性は,外向性と情緒安
定性において,群間の有意差が示された。また,女性 は,知性を除く4因子において,群間の有意差が示さ れた。そこで,Tukey-Kramer法による多重比較を行っ た結果,男性は,外向性と情緒安定性において,満足 不動群がその他不動群よりも高かった。外向性におい ては,改善群・悪化群ともにその他不動群よりも高い。
一方,Table 8下表の結果から,女性は,知性を除く
4因子において,満足不動群がその他不動群よりも高 いという結果になった。外向性・協調性・情緒安定性 の3因子においては,満足不動群が改善群よりも高い。
外向性・協調性の2因子においては,満足不動群が悪 化群よりも高い。さらに協調性においては,悪化群が その他不動群よりも高いという結果になった。この結
Table 8 所属変化4群におけるBig Fiveの偏差値(T得点)の1要因分散分析(上表:男性,下表:女性)
性別 性格因子
所属変化群名
F値 多重比較
A満足不動群 B改善群 C悪化群 Dその他不動群 平均 σ 平均 σ 平均 σ 平均 σ
男性 外向性 54.2(8.6) 51.9(9.4) 49.9(10.2) 42.6(8.2) 10.81** A>D**,B>D**,C>D*
協調性 52.1(9.4) 50.4(9.6) 47.3(9.4) 49.2(11.3) 1.29
勤勉性 52.3(10.8) 46.7(8.6) 51.3(9.6) 47.8(9.0) 2.19
情緒安定性 52.9(9.3) 50.5(10.5) 51.3(10.0) 45.0(8.9) 4.46** A>D**
知性 51.3(9.6) 49.6(10.2) 50.1(9.9) 48.8(10.8) 0.42
n 44 19 23 32 計118 自由度(3,117)
人数比率 37.3% 16.1% 19.5% 27.1%
女性 外向性 53.6(9.0) 44.6(9.4) 46.6(8.8) 45.7(10.3) 18.65** A>B**,A>C**,A>D**
協調性 53.5(9.4) 45.3(9.3) 48.0(9.0) 43.3(8.6) 20.55** A>B**,A>C**,A>D**,C>D*
勤勉性 51.3(10.0) 49.8(8.9) 49.5(10.1) 46.2(9.5) 3.45* A>D**
情緒安定性 52.4(9.6) 46.4(8.0) 49.2(10.6) 45.2(9.5) 9.23** A>B**,A>D**
知性 51.1(9.5) 49.0(9.9) 49.4(10.7) 48.1(10.6) 1.47
n 168 32 61 48 計309 自由度(3,308)
人数比率 54.4% 10.4% 19.7% 15.5%
**p<.01,*p<.05
果の解釈容易性を高めるため,Figure 3及びFigure 4 において,Table 8の偏差値(T得点)の平均値を使 った男女別・所属変化4群別の性格特性図を示す。
【考 察】
以下に分析結果をまとめながら,考察を加える。
(1)A専門学校生のBig Fiveの素点データの平均値 について,男女差があるのかt検定を行った。その結果,
外向性・協調性において,女性の方が男性よりも有意 に高いことが判明した。
なぜ,このような結果になったのか考察する。塗師
(2003),辻(1998)は,Big Fiveの性差に関して,
女性の方が男性よりも外向性が高いと報告している。
また,辻(1998)は,協調,共感,他者尊重等の協調 性に関連した性格因子において,女性の方が男性より も高いと報告している。しかし,塗師(2003)は,性 格因子の平均値で男女に有意差が見られるにもかかわ らず,男女別の因子パターンにほとんど違いは見られ ないとしている。つまり,Big Fiveの各性格因子につ いて,男女別の因子パターンの安定性は確保されてい るが,性格因子の平均値を利用する際は,男女差を考 慮する必要があると考える。本研究においても,外向 性・協調性の平均値で男女に有意差が見られることか ら,各性格因子データを偏差値変換する際は,男女別 にした方が妥当であると考える。
(2)学校満足度尺度4群における男女差を分析した。
その結果,5月Q-Uと11月Q-Uの双方において,女 性の方が男性よりも満足群に属する人数が有意に多く,
さらに女性の方が男性よりも不満足群に属する人数が 有意に少なかった。つまり,A専門学校では,女性の 方が男性よりも学校満足度が高いといえる。
なぜ,このような結果になったのか考察する。石丸・
水野(2016)の高専生を対象とした報告においても,
女性の被侵害点が男性よりも有意に低く,女性の学級 適応感の方が高い傾向にある。男女比率から考えると 石丸・水野(2016)の研究では,女性の方が男性より 人数が少ないが,本研究では,女性の人数の方が多い。
よって,男女比率の不均衡から生じた傾向とはいえな いかもしれない。女性の学校満足度が高い要因として,
(1)の結果である外向性・協調性において,女性の 方が男性よりも有意に高いことが影響している可能性 がある。この点は,今後の研究でさらに追及していく 必要があろう。
(3)実施時期による学校満足度尺度4群の所属変化 を分析した。その結果,男女とも「その他群から満 足群へと変化」した者は少なかった。さらに,11月 Q-Uにおいて男性の満足群が49.2%,女性の満足群が
61.7%に留まった。
なぜ,このような結果になったのか考察する。松崎
(2010)は,満足群の出現率について,しっかりとし た学校経営目標に基づいた学級経営に影響されると報 告している。また,南澤(2015)も,全校体制で学級 再生に取り組んだ結果,学級集団の所属群を改善方向
満足不動群 改善群 悪化群 その他不動群 偏
差 値 得 点
外向性 協調性 勤勉性 情緒安定性 知性
Figure 4 所属変化群別の性格特性(女性)
満足不動群 改善群 悪化群 その他不動群 偏
差 値 得 点
外向性 協調性 勤勉性 情緒安定性 知性
Figure 3 所属変化群別の性格特性(男性)
へ変化させることができたと報告している。しかし,
A専門学校では,学校経営目標として,5月Q-Uの結 果を十分に活用できなかったと考えられる。その背景 として,A専門学校の学科構成が7学科の多岐にわた り,文系・理系が混在していることが挙げられる。つ まり,各学科目標・学級経営において,学校組織とし て共通活動に取り組み難い事情があった。逆に,この 状況を考えると学生には学校組織からの強い統制圧力 はかかっておらず,各担任の学級経営方針,自然に醸 し出される学校風土,学生自らが持つ性格特性等に影 響されやすい状況にあったとも考えられる。
(4)学校満足度尺度(5月Q-U)とBig Fiveとの相 関分析を行った。その結果,男性の承認点は,Big Fiveの5因子全てに有意な正の相関があり,被侵害 点は,外向性・情緒安定性に有意な負の相関があった。
一方,女性の承認点は,勤勉性を除く,全ての因子に 有意な正の相関があり,被侵害点は,外向性・協調性・
情緒安定性に有意な負の相関があった。さらに,学校 満足度尺度4群(5月Q-U)の満足群と不満足群につ いて,Big Fiveの各性格因子を説明変数とした判別分 析を行った。その結果,男性では,外向性・情緒安定 性の標準化判別係数が有意となり,女性では,外向性・
協調性・情緒安定性の標準化判別係数が有意となった。
なぜ,このような結果になったのか,主として承認 点に含まれる承認欲求,及び被侵害点に含まれる孤立 欲求と性格特性の関係性について考察する。荻野・斉 藤(1996)は,男子大学生を対象にYG性格検査と欲 求行動調査を行い,各性格特性の高得点者と低得点者 に分けて,欲求行動との関連性を分析した。その結果,
承認欲求行動では,社会的外向性の高得点群の方が有 意に高く,抑うつ・神経質性の高得点群の方が有意に 低くなったとしている。また,孤立欲求行動では,社 会的外向性の高得点群の方が有意に低く,抑うつ・神 経質性の高得点群の方が有意に高いとしている。この 荻野・斉藤(1996)の結果は,本研究の男性の結果と ある程度整合している。つまり,「性格特性が承認点 と被侵害点に影響を及ぼし,その結果,学校満足度に も影響を及ぼした可能性がある」ということである。
一方,荻野・斉藤(1996)は,女性の結果を提示して
おらず,本研究の女性に関する考察は行えていない。
この点は,今後の課題である。
上記のような男女別の結果に基づき,学校満足度と 性格特性の関連性を利用した性格的アプローチを提案 する。具体的には,男性では外向性・情緒安定性の高 い学生,女性では外向性・協調性・情緒安定性の高い 学生を集めることにより,比較的に学校満足度が高い 集団(学級・グループ等)を形成したい時に利用でき る可能性がある。しかし,専門学校の場合,職業興味 により学科を構成している都合上,意図的にこのよう な学級集団を編成することは難しい。ただ,学科ごと に学級集団の性別構成が偏ること,性格が類似した学 生が自然と集まることは考えられるため,学科による 学校満足度の差異が発生する可能性はある。よって,
専門学校の学級編成への利用は,現実的には難しいか もしれないが,グループ編成には利用可能と考える。
グループ編成に際し,学級全体の学校満足度改善のた めに性格特性のバランスを取ったグループ編成の方が 良いのか,それとも性格特性を偏らせたグループ編成 の方が良いのかは今後の課題である。
また,この性格的アプローチが他校種においても利 用可能と仮定すれば,学級編成時の性格特性バランス を取ることが大切であると考える。つまり,基礎学力・
友人関係だけでなく,積極的に性格特性バランスも考 慮した学級編成が必要かもしれない。そうしないと学 級ごとの学校満足度のアンバランスが生まれる可能性 がある。さらには,担任経験の浅い教師が受け持つ学 級の場合,少し多めに上記のような性格特性を持つ児 童・生徒を配分することにより,教師の精神的負荷や ストレス等を軽減できるかもしれない。
(5)所属変化4群に対してBig Fiveの各性格因子を 目的変数とした1要因分散分析を男女別に行った。そ の結果,男性は,外向性と情緒安定性において,群間 の有意差が示された。また,女性は,知性を除く4因 子において,群間の有意差が示された。多重比較の結 果,男性は,外向性・情緒安定性において,満足不動 群がその他不動群よりも高かった。一方,女性は,外 向性・協調性・勤勉性・情緒安定性において,満足不 動群がその他不動群よりも高いという結果になった。
なぜ,このような結果になったのか,考察(4)で 述べた「性格特性が学校満足度に影響を及ぼした可能 性がある」として考える。そして,特に満足不動群と その他不動群について,性格因子の差が有意であった ことに着目する。一般に性格特性は,時間が経っても それほど大きく変化せず,継時的安定性を示すと考え られている(辻,1998)。また,山岸・田中・中島・
水野(2008)は,YG性格検査の安定性と変動性につ いて,約10年後の縦断的研究を行った。その結果,
全体的に青年期から成人期にかけて10年以上経って もある程度の相関があり,特に外向性は平均値の変化 もなく,相関も非常に高いため,変わりにくい性格特 性であるとしている。よって,本研究の調査時期(5月,
11月)の差が6ヶ月であることを考えるとその間に 学生の性格特性が大きく変わるとは考えにくい。つま り,性格特性が学校満足度に影響を及ぼしたとすれば,
6ヶ月という時間経過があっても,その影響が安定的 であったと考えても矛盾しない。そして,特に満足不 動群とその他不動群について,性格因子の差が有意で あったことを考慮すれば,この両群に対する性格特性 の影響が比較的大きかったのではなかろうか。
さて,ここでTable 8の結果を見ると,男女とも改 善群と悪化群について,Big Fiveの全性格因子に有意 差は存在していない。つまり,この両群は,統計的に 相違ない性格特性を持っているといえる。しかし,
Figure 3及びFigure 4を詳細に見ると男性の改善群と 悪化群の性格特性は,外向性・協調性・勤勉性の高低 の組み合わせに特徴がある。一方,女性の改善群と悪 化群の性格特性は,外向性・協調性・情緒安定性の高 低の組み合わせに特徴がある。
上記のような男女別の結果に基づき,以下のような 性格的アプローチを提案する。すなわち,教師は,予 め男女別・所属変化4群別の性格特性を把握しておく ことにより,学校満足度改善のための介入方法を取れ る可能性がある。例えば,「担任教師は,満足不動群 のような性格特性を持つ学生を学級活動の中心としな がら,所属群を変化させやすい改善群と悪化群のよう な性格特性を持つ学生が積極参加可能なグループ活動 を実践する。その活動では,男性の場合,外向性・協
調性・勤勉性の高低の組み合わせ,女性の場合,外向 性・協調性・情緒安定性の高低の組み合わせに配慮し たグループづくりを行う。一方,その他不動群のよう な性格特性を持つ学生に対しては,その他不動群の性 格特性で最も低い性格因子(男性:外向性,女性:協 調性)に留意しながら,担任教師が中心となって個別 支援を行う」という方法である。しかし,この方法は,
あくまで抽象的な例としての提案であり,具体的な実 践方法は,今後の研究に委ねられる。
最後に,これらは,あくまでA専門学校のみの分 析結果から考察したものである。すなわち,これらの 結果だけを用いて専門学校全般に対する一般化の議論 は早計である。今後,様々な専門学校で同様の研究が なされ,もしくは他校種でも同様の結果が得られるの か検証する必要がある。
【謝 辞】
本稿は,日本教育心理学会第57回全国大会(片瀬 2015)において発表した内容をもとに,追加の分析と 考察をおこなったものである。また,本研究にご協力 頂きましたA専門学校の先生及び学生の皆様,ご指 導頂きました六浦光一先生に感謝申し上げます。
【引用文献】
中央教育審議会(2016).個人の能力と可能性を開花 させ,全員参加による課題解決社会を実現するた めの教育の多様化と質保証の在り方について(答 申),193,17.
石丸裕士・水野治久(2016).Q-Uを用いた高等専門 学校生の学校生活意欲が学級満足度に及ぼす影響 学級経営心理学研究,5,9-18.
片瀬拓弥(2015).学級満足度に対する性格因子の影 響度推定:Q-UとBig Fiveを活用して(人格,ポ スター発表H) 日本教育心理学会総会発表論文 集,57,685.
河村茂雄・藤村一夫・粕谷貴志・武蔵由佳(2004). Q-Uによる学級経営スーパーバイズ・ガイド(小
学校編) 図書文化
河村茂雄・苅間澤勇人・粕谷貴志・武蔵由佳(2004). Q-Uによる学級経営スーパーバイズ・ガイド(高 等学校編) 図書文化
河村茂雄(編著)(2011).専門学校の先生のための
hyper-QUガイド 図書文化
小平英志・安藤史高・布施光代(2013).児童の積極 的授業参加に関する研究(16):児童の性格特性 と学級適応感の影響(教授・学習,ポスター発表)
日本教育心理学会総会発表論文集,55,305. 松崎学(2010).人間関係と学力を両立させた教育実
践:STEP導入の試み:第6回日本教育カウンセリ
ング学会自主シンポジウム報告 山形大学教職・
教育実践研究,5,55-97.
南澤博(2015).全校体制で取り組んだ学級再生の実 践 : Q-Uの承認得点の推移による分析(学校心理 学,ポスター発表E) 日本教育心理学会総会発 表論文集,57,436
文部科学省(2013).「職業実践専門課程」の創設につ いて<http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/
senshuu/1339272.htm 2016年12月29日>
村上宣寛・村上千恵子(1997).主要5因子性格検査 の尺度構成 性格心理学研究,6,29-39. 村上宣寛・村上千恵子(1999).主要5因子性格検査
の世代別標準化 性格心理学研究,8,32-42. NII学術情報ナビゲータ(2016).国立情報学研究所(日
本の論文をさがす)
<http://ci.nii.ac.jp/ 2016年12月29日>
塗師斌(2003).性格特性のBig Fiveの性差と因子パ ターン(人格,ポスター発表E) 日本教育心理 学会総会発表論文集,45,470.
大対香奈子・大竹恵子・松見淳子(2007).学校適応 アセスメントのための三水準モデル構築の試み 教育心理学研究,55,135-151.
荻野七重・斉藤勇(1996).社会的・心理的欲求と性 格特性との関係:YG性格検査の性格特性と欲求・
行動・欲求-行動間ギャップの関係について(人 文・社会科学篇) 白梅学園短期大学紀要,32, 81-101.
佐藤博晴(2010).性格要因が小学校の学級集団形成 及び英語活動に与える影響-Q-Uを活用したパ イロット・スタディ- 東北英語教育学会研究紀 要,30,15-28.
関文恭・吉山尚裕・三隅二不二・吉田道雄・三角恵美 子・詹惠晶(1997).看護専門学校におけるクラ ス担当教員のリーダーシップ:行動測定尺度の作 成とその妥当性 九州大学医療技術短期大学部紀 要,24,25-32.
竹綱誠一郎・鎌原雅彦・小方涼子・高木尋子・高梨実
(2009).高校生の学校適応に関する縦断的研究:
重要な他者との関係と学校雰囲気の影響 人文
(学習院大学),8,111-118.
統計分析研究所(2016).多変量解析の手法別解説(判 別分析:分析精度)
<https://istat.co.jp/ta_commentary/discriminant_
analysis 2016年12月29日>
図書文化(2016).教育・心理検査(hyper-QU)
<http://www.toshobunka.co.jp/examination/hyper-qu.
php 2016年12月29日>
辻平治郎(編著)(1998).5因子性格検査の理論と実 際 北大路書房
山岸明子・田中純夫・中島宣行・水野基樹(2008). YG性格検査の安定性と変動性:約10年後の縦断 的研究(平成19年度学長特別共同プロジェクト 研究報告書) 順天堂医学,54,527-528.
(2016年10月24日受稿,2017年1月4日受理)
Personality Approach for Improving School Satisfaction of Vocational Schools : Relevance Analysis between Big Five and the School Satisfaction Scale of Vocational School
Version Q-U
Takuya Katase(Seisen Jogakuin College)
In recent years, vocational schools have been taken up by the Ministry of Education university system reform, and attention is gaining attention. Among them, research that improves school satisfaction of vocational schools from student's class adjustment point of view may have been overlooked until now. The purpose of this study is to clarify the influence of personality traits on school satisfaction by gender analyzing the relevance between school satisfaction scale of vocational school version Q-U and Big Five. Then, based on the results by gender, it is to propose personality approaches to improve school satisfaction. As a result of analyzing the relevance, man's Extraversion, Emotional Stability, women's Extraversion, Agreeableness, Emotional Stability mainly affected school satisfaction. Then, I defined change 4 groups against time changing of school satisfaction 4 groups. As a result of analyzing the relevance between Big Five and change 4 groups, it showed personality traits about the gender and change 4 groups. I examined these results by gender, and proposed personality approaches to improving school satisfaction of vocational schools.
Keywords: vocational school version Q-U, Big Five, school satisfaction, class adjustment, personality traits