応力・まさつ・断層の強度
地震は断層に加わる応力が断層の強度を越えたときに発生する.
・まさつ 摩擦法則 摩擦法則の温度依存性 ・応力 Mohr Circle どの断層がすべるか? 応力の連続性 断層近傍の応力場 内部応力源 ・断層の強度 SAF は弱いか? 高い間隙水圧 クラックの選択配向 SAF は強い? 地震前後の主応力軸の方向変化まさつ・応力・断層の強度
Coulomb-Mohr
の破壊基準
圧縮応力下において,断層の 強度 τ s は,断層に加わる法線応力 σ n に比例する.断層の凝着力 (法線応力の無い場合の強度 )を無視でき る場合 τ= µ s s σ n µ s は,断層の摩擦係数 間隙水圧を P とすると,面の有効法線応力 σ eff は, σ Ν –P となる. τ s = µ s σ eff = µ s ( σ Ν –P)Byerlee
の摩擦法則
室温, 岩石の種類に よらず成り立つ τ s = 0.6 σ n現実に存在するあらゆる表面はでこぼこ しているので,アスペリティ(突起)のみで 接触している. 真実接触面積 Α r ,は法線応力 σ Ν に比例 する. Α r = σ Ν / P , P: 貫入硬さ 摩擦応力 F は,接触部の溶着力 (weld) の総和となる. sを単位接触面積あたり の溶着力 (法線応力によらない )とすると , F = s Α r µ = F/ σ Ν = s σ Ν / P σ Ν = s / P µ は,断層の摩擦係数,法線応力によら ない. Αは非弾性的な過程により決定される r Æ 時間依存性を持つ
Dieterich & Kilgore(1994) アスペリティの接触面積の変化
摩擦の仕組み=アスペリティーの接触
Bowden & Tabor (1950,1964)
すべり弱化 (slip wea kening) すべりとともに摩擦力が減少する. 詳しくは,大中・松浦( 2003 )の 教 科書参照
すべり依存摩擦法則と摩擦の安定性
摩擦の安定性.
すべりによる摩擦の減少の
割合が系のスティフネスより
大きいと不安定すべりとなる.
速度
-状態依存摩擦法則
Dieterich
(1978), Ruina(1983)
定常状態 (stready-state) での摩擦力は, すべり速度による. ss µ −µ ∗= (a-b)ln (V/V*) すべり速度が大きくなると摩擦が小さくな る場合(速度弱化),不安定すべりとなる. Ruina (1983) による全体の式は, µ = µ∗ + a ln( V/ V* ) + b ln( V* θ/ L) dθ /dt = 1-V θ/ L 実験データ. B lanpied et al.(1995)両者の問題点
すべり依存摩擦法則
強度回復過程を含んでいない.
速度
速度
-状態依存摩擦法則の温度依存性
Blanpied
et al.(1995)
高温になると,
a-b
は正となり,摩
擦は速度強化となる(
wet
の場合).
応力
n : ある面の法線ベクトル σ : 応力テンソル(座標軸に直交する平面に働く応力ベクトルの 成分で定義される) t : ある面を通して働く応力ベクトル とすると, t = σ ・ n 法線応力は, σ n = [( σ ・ n) ・n]n せん断応力は, τ = t ー σ n = σ ・ n ー [( σ ・ n) ・n]nMohr Circle
任意の角度の面上での応力
θ σ σ τ θ σ σ σ σ σ 2 sin 2 2 cos 2 2 3 1 3 1 3 1 − = − + + = N σ 1 :最大圧縮応力 σ 3 : 最小圧縮応力が 加えられているとき, σ 2 を含み最大圧縮 応力となす角が θである面上の応力は,Mohr Circle
どの断層がすべるか?
同じ摩擦係数 µ s と間隙水圧を持つ既存の 断層面がいくつかある場合, p をとおる傾 き µ s の直線より上方に位置する断層面だ けがすべる. 間隙水圧が高くなると,いろんな角度の 断層面がすべることができる. σ 1 が大きくなるか, σ 3 が小さ くなってもすべることが可能.Mohr Circle
主軸応力の変化
σを小さくする方が, 3σ 1
を大
Mohr Circle
favorably oriented fault
同じ摩擦係数 µ s とを持つ多数の断層面が あらゆる方向に分布しているとき, µ= s tan φ= tan (2θ−π/2)= − 1/tan (2θ) を満たす θの面が最もすべりやすい. このとき, cos (2θ) や sin (2θ) を µ s で置き換 えることにより θ σ σ τ θ σ σ σ σ σ 2 sin 2 2 cos 2 2 3 1 3 1 3 1 − = − + + = N
(
)
p p − + + = − 3 2 2 1 1 σ µ µ σを
などと変形できる.
最もすべりやすい (favorably
oriented)
している面だけ
に成り立つ.
3次元の
Mohr Circle
山路
(2000)
より
法線応力は, σ n = [( σ ・ n) ・n]n せん断応力は, τ = t ー σ n = σ ・ n ー [( σ ・ n) ・n]n 成分表示すると, σ n = σ 1 n 1 2 + σ 2 n 2 2 + σ 3 n 3 2 τ = ( σ ・ n) 2 ー σ n 2 =σ 1 2 n 1 2 + σ 2 2 n 2 2 + σ 3 2 n 3 2 ー (σ 1 n 1 2 + σ 2 n 2 2 + σ 3 n 3 2 ) 2 n 1 2 + n 2 2 + n 3 2 = 0 から − − + − + − = + + − 2 3 1 2 3 1 2 2 2 2 3 1 2 3 1 2 2 2 2 σ σ σ σ σ σ σ σ σ σ σ n s NMohr Circle
(鋭角側
)
σ 1 :最大圧縮応力 σ 3 : 最小圧縮応力が 加えられているとき, σ 2 を含み最大圧縮 応力となす角が θである面上の応力は,プレート境界断層面上のすべり時間関 数(Matsu’ura & Sato, 1989)
θ σ σ τ θ σ σ σ σ σ 2 sin 2 2 cos 2 2 3 1 3 1 3 1 − = − − + = N µ σ τ φ θ σ σ τ θ σ σ σ σ σ = − = − = − − + = p N N tan 2 sin 2 2 cos 2 2 3 1 3 1 3 1 間隙水圧を P とすると,面の有効法線応 力 σ eff は, σ Ν –P となる.
応力の連続性
ある面を境にして,応力が満たすべき条件は何か? t (1) : 面に I側から働く応力ベクトル t (1I) : 面に II 側から働く応力ベクトル とすると,応力ベクトルの連続性 から (1) t =-t (1I) つまり,面に働く,せん断応力と法 線応力が等しい. 他の応力テンソルの成分は等しく なくても良い.応力の連続性2
ある面を境にして,応力が満たすべき条件は何か? 3の軸に垂直な面に関しては, σ : 応力テンソル 33 32 31 23 22 21 13 12 11 σ σ σ σ σ σ σ σ σ のうち 33 32 31 23 13 σ σ σ σ σ ・ ・ ・ ・ が等しい必要がある. 面の摩擦強度が大変小さい場合は, 33 0 0 0 0 σ ・ ・ ・ ・応力の連続性3
非常に強度の小さな断層の場合
鉛直な横ずれ断層の両 側では,水平主応力の 方位は同じ. 非常に低角な逆断層 (detachment) の両側で は,水平主応力の方位 は違っていても良い. 均質で内部応力源が無い場合.応力場と断層のすべりの向き
とする.断層すべりの向きは,断層
と主応力軸とのなす角,および主
応力の値に関係する.
3 2 1 0 0 0 0 0 0 σ σ σ主応力を
静水圧は断層すべりに関係ないので,
− − + = 2 3 2 1 2 2 2 3 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 σ σ σ σ σ σ σ σ σ σすべりの向きは,
σ
1−σ
2σ
3−σ
2による.さらに,主応力値が定数倍
されてもすべりの向きは変わらないので,
− − 1 0 0 0 0 0 0 0 2 3 2 1 σ σ σ σ 3 1 2 1σ
σ
σ
σ
−
−
=
R
をパラメータとするこ
とが多い,
2 3 2 1 σ σ σ σ − −結局
で決まるが,
断層のすべりの向きー
Means
の図式解法ー
ステレオネットの円が断層面, Pは断層面の法線ベクトル 主応力による断層面のせん断応力は, σ 1 方向の大きさ σ 1 −σ 2 のベ ク ト ル σ 3 方向の大きさ σ 3 −σ 2 のベクト ル の断層面上の成分の和, S (1) + S (2) と なる. 例えば, S (1) = 1/2(σ 1 −σ 2 )sin 2 δ σ 2 が断層面内にある場合,つまり, σ 1, σ 3 が S,Τ 上にある場合は, S (1 ) は S (2) の が同じ向きとなり,どちらの寄与が大 きいか区別がつかなくなる.しかも, 現実の地震では, σ 2 が断層面内にあ る場合が多いと考えられる. これが,応力比 R が決まりにくい理由 である.地殻内の応力場
基準状態の応力場は? 釣り合い方程式による理論解
g z y x zz yz xz ρ σ σ σ = ∂ ∂ + ∂ ∂ + ∂ ∂ 基準状態の応力場とは,水平方向の応 力がない場合の応力場である.応力の 釣り合いから, 水平方向の応力変化がない場合, gh gdz g z h zz zz ρ ρ σ ρ σ∫
− = = = ∂ ∂ 0 , 水平方向の変位は無いので, e xx , e yy =0 応力 − 歪関係から, zz zz zz zz yy zz xx e e e e µ λ σ λ σ λ σ 2 , , + = = = zz xx σ σ 3 1 = λ=µ とすると, 水平応力は鉛直応力の 1/3 となる.地殻内の応力場
主応力の深さ変化の観測値
核燃料サイクル機構 , 1999, わが国における高レベル 放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性 -地層処分研究開発第2次取りまとめ -σ v = ρgh ~ 27h (h:km, MPa) 鉛直応力は上載岩圧となる.深さに比 例して増加する. 水平応力も深さに比例して増加し,鉛直 応力と同程度の大きさ に見える . σ v = σ h = ρgh を lithostatic な 応力状態と呼ぶ. 非常に長期間にわたる変形 (応力緩和 ) により形成されたものであり,応力源が ない場合の基準状態と考えられる (Mcgarr, 1980) . 1気圧 (1bar)=10m の水柱の圧力 =0.1MPa 100MP a = 10km の水柱の圧力応力の深さ変化
Brudy
et al.(1997)
KTB
(ドイツ)
世界で2番目に深い穴での測
定結果.
主応力の大きさは深さにほぼ
比例している
ように見える.
間隙水圧は,
hydrostatic
,水柱
圧
(10h,
h:km, MPa)に等しい.
(
)
p p − + + = − 3 2 2 1 1 σ µ µ σ σ 3 = 20h (h:km, MPa) としたとき, µ=0.6 で σ 1 を説明できるSAF
は弱い
主応力軸が断層に直交している
Zoback
周辺は強い
Beyerlee(1978)
の摩擦
則が成り立っている.
Zoback et al.(200?)San Andreas
断層だけが弱い,
Horizontal deformation velocities in
southern California with respect to
the North American Plate
Crustal Deformation Working Group 1
弱くするメカニズム 1
断層帯内の高い間隙水圧
over pressure
(Rice,1992;Beyerlee,1992)
(Hardebeck & Hauksson,1999) より弱くするメカニズム
2
クラックの選択配向
Yamamoto(2000)
Yamamoto et al. (2001) 3 1 3 1σ
σ
σ
σ
+
−
=
r
野島断層周辺において変 形率変化法で得られた応 力測定結果のまとめ最大 主圧縮応力軸は断層に直 交している. 断層に近づくほど rの値が 小さくなる.し 単位面積の断層面における真実接触面積は Α r = σ Ν / P ( P: 貫入硬さ) 摩擦応力は, F = s Α r (s :単位接触面積あたり の溶着力) µ = F/ σ Ν = s/p となる. 断層面の形状に大きなスケールの不均質性が あり,単位面積の断層面上で, Α a のみが巨視 的に見て接触しているとき, Αaにかかる法線応力 σ Ν a= σ Ν /Α a は 1 /Α a 倍 となる.しかし, 真実接触面積は Α r = (σ Ν a / P) Α a = σ Ν / P とな り,変わらない.これは,巨視的に見て接触し ている面積が Α a倍となるためである.,結局 µ も同じとなる. 摩擦係数は,断層の巨視的な接触面積によら ない
し すきまを断層ガウジが埋めており,それが, 法線応力は支えるが,せん断応力を支えない 場合, Αaにかかる法線応力 σ Ν a= σ Ν そのままで, 真実接触面積は Α r = (σ Ν a / P) Α a = (σ Ν /P) Α a となり, µ は Α a倍と小さくなる. 断層ガウジが,法線応力を支える場合は,摩 擦係数は,断層の巨視的な接触面積に比例 する. クラックが断層面の走向と鉛直方向に選択 配向している場合,鉛直方向の強度は大き いが,せん断には非常に弱くなる (Yamamoto, 2000 ).
SAF
は強い
Scholz(2000)
左上のモデルから計算された せん断応力と摩擦係数の関係. SAF の摩擦係数は小さくなら ない. 地震のメカニズム解から推定さ れた断層近傍における最大主 圧縮応力軸と断層のなす角.Hardebeck
& Hauksson
(1999)
SAF
は強い
Scholz(2000)
(
)
()
t xx ss xx xy 3 3cot
cot
σ
σ
ψ
σ
σ
ψ
τ
−
≠
−
=
(
)
p p t xx − + + = − 3 2 2 1 σ µ µ σ 断層より十分遠方 では最大主圧縮応 力軸は断層に直交 している. µ=0.6 が成り立って いる. 断層近傍では下部延長のローディン グによりせん断応力が加わる.断層に加わるせん断応力
と,
rおよび最大主圧縮応
力軸と断層のなす角との
関係.
rは断層面上,およ
び周辺の値を計算.
3 1 3 1σ
σ
σ
σ
+
−
=
r
断層から離れたところで
を
0.6,0.4,0.2
と変え
σ 1て
の大きさを変化させてい
る,
rが大きいと,断層周辺で応
力比
rが
0.6
より大きくなって
しまう.
San Andreas
断層以外の断層も弱い
Landers
地震前後の応力場の時間変化
Hardebeck &
H
auksson
(200?)
断層に対して低角だった
P
軸はより低角に,
高角だった
P
軸はより高角に変化
地震前後の応力変化
+ ∆ ∆ − = 22 21 12 11 22 21 12 11 2 0 0 2 ' ' ' ' σ σ σ σ τ τ σ σ σ σ地震後の応力場=地震による応力変化+地震前の応力場
地震前後の主応力軸の方向変化の
模式図
地震前後の主応力軸の方向変化の
模式図
内部応力源
断層近傍の応力場
断層近傍の応力場は相似である. ここで示した結果は,クラック理論にお ける亀裂先端の応力集中 ((a/r) 1/2 に比 例 )とは違 う . Okada(1982) のプログラムを用いた空洞のまわりの変形
北海道大学岩盤力学研究室の HP http://r ock.eng.hokudai.ac.jp/japanese.html より 空洞 0.5 1 0.5 1 0 x y 変形前 変位 ベクトル u 変形後 変位量 :u/{(a σv )/(4G)} 0 3.0 円形断面空洞周囲のθ= 0 上のσθの分布。 初期地圧は σ v = 2 σ h1 を仮定Hardebeck & H auksson (1999) 横ずれ型プレート境界における地震間と 地震時の変形 (Scholz,2002)