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女性差別撤廃委員会通報番号

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女 性 差 別 撤 廃 委 員 会

通報番号 1 8 / 2 0 0 8

レイプ事件の裁判におけるジェンダーに基づ く神話 や誤解に依拠した無罪判決は,法的その他の差別を なくす締約国の義務に達反するという申立が受理さ れ,通報者‑の補償 と一般的措置の実施が勧告され た事例

通 報 者 KarenTayagVertido

当 事 国 フィ リピン

通 報 目 2007年11月29日 見 解 採 択 日 2010年 716日 条 約 発 効 日 1981年 9 4日

事案の概要

1 通報者 は, ダパ オ市商工会議所事務局長 を勤 めていた フィ リピン国籍 の女性 で ある。通 報者 は,1996年3月29日,辛 で家 まで送 る と い う同会議所 会頭 の J.B.C.(また は,被告) に

よって モーテルに無理 や り連れて行 かれ, レイ プされた。

2 通報者 は,41日に被 害届 を警 察 に提 出 したが,検察官 の審査 に よ り却下 された。 こ れに対 して通報者 は不服 を申立 て,10月24日 に却下 の決定 が覆 された。事件 は11月7日に 裁判所 に登録 され,裁判所 が同 日逮捕状 を発行 した が,∫.B.C.が実 際 に逮 捕 され た の は80日 以上 あ とだ った。事件 は,1997年 か ら2005年

まで地方裁判所 レベルに留 め置かれた。裁判 で は,精 神 科 医 が通報 者 は レイ プに よるPTSD を発症 してい る と証言 したが,被告 は,性行為 は同意 の上 で あ り,通報者 とはそれ以前 も関係 が あ った と主張 した。2005年4月26日, ダパ オ市地 方裁 判所 のVirginiaHofileaa‑Europa判 事 は,最 高裁判所 の判例 に よる (a)レイ プ被

害 を訴 えるこ とは容易 だが立証 は難 しく,反証 は さ らに困難 で あ る, (b)当事 者 しか介在 し ない レイプ事件 の性格か ら原告 の主張 は慎重 に 精査すべ きで ある, (C)訴追 の証拠 はそれ 自体 で有効 であるべ きであ り,弁護側 の証拠 の弱 さ に依存すべ きでない とい う3つ の原則 に従い, 通報者 の証 言 は信頼 性 を欠 くとして,JRC.に 無罪 を言い渡 した。 また,判決 は最高裁 の 「被 害者 が逃げなか った こ とに よ りレイプの事実 を 否定す るものではない」 とす る判断 に言及 した が,本事案 においてはなぜ通報者 が逃 げなか っ たのか理解で きない と述べたほか,通報者が抵 抗 してい れば60代 の被告 が行為 を続 け るこ と は出来 なか ったはずだ として,性行為 自体 の主 張 に も疑問 を呈 した。

3 通報者 の主張 は以下 の通 りで ある。

1) 当事 国は,通報者 の非差別 の権利 を尊重, 保護,促進,充足す る法的義務 お よび司法 を 含 む公的機 関に よる差別 か ら女性 を保護す る 義務 を果 た してお らず,無罪判決 は,条約2 条 (C), (d),(f)違 反 に相 当 す る。 また, 無罪判決 は, レイプ とその被害者 に関す るジ

ェンダーに基づいた神話 と誤解 に根 ざ してお り,一般勧告19との関連 における条約1条, さらには5条 (a)に違反す る。長期 の訴訟, 通 報 者 と家 族 に 対 す る報 道 被 害,失 業, PTSD等,事件 の影響 に対す る保護 が得 られ てい ない。裁判官 は性暴力被害 に関す る理解

を欠いてい るが,教育研修 は行 われてい ない。

2) 国内手続 については,上記無罪判決 が最終 決定であ り,通報者 は上訴で きない。改正裁 判所規則65条 に規定す る特別救済手続 は, 裁判管轄権 に関す る問題 を対象 としてお り, また,刑事事件 は 「フィ リピン人民」 の名 に おい て提訴 され るた め,被 害者 は65条 申請 要件 の原告ではない。 よって,利用可能 な国 内救済手続 は完 了 してお り,他 の国際手続 に

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よる検討 も行 われてい ない。

3) 通報者 は,委 員会 に対 して,条約2条 (C), (d), (f) に関す る差別 の被 害者 と認定 す る こ とお よび以下 について当事 国に勧告す る よ う求 めてい る。通報者 が受 けた身体的,精神 的,社会的被害 に対す る金銭補償 を提供 す る こ と,当該事件 の裁判官 に よる判決 の傾 向に 関す る調査,性暴力 に関す る司法関係者 の教 育 プログラムの開発,実施,効果 の監視, レ イプ被害者 に上訴 の権利 を認 め るこ と。性暴 力関連法 の改正や レイプ被害者支援保護法執 行 のための予算配分等 の実施。女性 の人権 の 尊重,保護,促進,充足,性暴力 の捜査,訴 追,処罰 におけ る相 当の注意義務 の履行,被 害者 のた めの法律扶助制度 や救済手続 の確立, 被害者 と家族へ の適切 な保護 と支援 サ ー ビス, 法執行機 関,検察,司法 におけ る汚職へ の対 処。

4 これ に対 し,当事 国 は,無罪判決 が即 時 に最終決定 とな るこ とは事実 だが,裁判所規則 65条 に規定す る事件 の移送命令書 (certiorari)

を得 て判決 を無効 にす るこ とは可能で あ り,最 高裁 で は被害者 に よる申請 を認 めた例 もあるの で,通報者 が当該手続 を利用で きない わけで は ない と反論 した。

5 これに対 し,通報者 は,65条 の手続 が仮 に利用 で きた として も,判決 の不備 については 適用 されない。当該手続利用 のための高額 な弁 護士費用 を考 えれば,選択議定書4条 1項 にい う 「利用可能」 あるい は 「効果的」 な救済 とは い えず,当該規定 に よ り刑事事件 の被害者 の訴

えが認 め られた例 はない と主張 した。

受理許容性に関する検討

1 本通報 が他 の国際的手続 に よ り検討 され てい ない こ と,通報者 は裁判所規則65条 の手 続 を利用 で きない こ と,通報者 に よる条約2条 (C), (d), (f) お よび5(a)違 反 の主 張 が 十 分 に 立 証 され て い る こ とか ら,委 員 会 は 2009年728日に当通報 は受理可能 で あ る と

宣言 した。

2 これ に対 し当事 国は,特別手続 は刑事事 件 において も利用可能で あ り,無罪判決 を無効

とす る可能性 がある と主張 した。

委員会の見解

委 員会 は, ダパ オ市地方裁判所 における無罪 判決 が レイプお よびその被害者 に関す るジェン ダーに基づ く神話 と誤解 に依拠 してい る とい う 通報者 の主張 を検討 し, これが条約2条 (C),

(f),5条 (a)に基づ く通報者 の権利 の侵 害 と 法的 プロセスにおけ る差別 を終 了 させ る とい う 締約 国の義務違反 に相当す るか香 かについて決 定す る。委 員会 は,事実 の認定 お よび被告 の刑 事責任 について当事 国の国内機関 に代 わ って決 定 す る もので は ない。 また,2条 (d)に関す る違反 の有無 については,本事案 との関連性が 低い と思 われ るため扱 わない。

1) 条 約 にお い て,救 済 を受 け る権 利 は2条 (C)に含 まれてい る と考 えられ,性暴力事件 の効果的 な救済 には公正,不偏,迅速 な対応 が必要である。

2) 締約 国は,司法判断 に も条約上 の義務 を負 う.一般勧告19に鑑 み,本事 案 におい て, ジェンダー ・ステ レオタイプをな くすための 条約 2条 (f) と5条 (a)に基づ く当事 国の 相当の注意義務 は,司法的取扱い におけるジ ェンダー ・セ ンシテ ィビテ ィの レベルに よ り 判断 され る。

3) 本事案 の判決で適用 された レイ プ事件 に関 す る一般原則 には, ジェンダー ・バ イアスが 反映 されてい る。委 員会 は,法 お よび実行 に おいて,女性が抵抗 しない場合 には同意が存 在す る とい う仮定 を用い るべ きでない と考 え

る。

4) 男女 のセ クシュア リテ ィについて,加害者 の信頼性 を支持す るようなステ レオタイプが 散見 され る。

5) フィ リピンの改正刑法 においては,合意 の 欠如 が レイプの主要因 と定義 されてい ない。

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神奈川 ロージャーナル 第4

一 般 勧 告19のパ ラ グ ラ フ24(b)は, ジ ェ ンダーに基づ く暴力 に関す る法 がすべ て の女 性 に対 して適切 な保護 を与 えるこ とを求 めて い る。

6)通報者 は,長期 にわた る裁判 と判決 で用い られた ステ レオ タイ プ とジ ェ ンダーに基づ く 神話 に よる二次被害 に よって道徳 的,社会的 被 害, さらには失業 に よる金銭 的被 害 を受 け てい る。

7)委 員会 は,当事 国が条約 1条 お よび一般勧 告19と と も に 解 釈 す べ き2条 (C), (f),5条 (a)にお け る義務 を充 足 して お ら ず, よって通報者 の権利 を侵害 してい る とい

う見解 を有 す る もので あ り,当事 国 に対 して 以下 を勧告 す る。

(a)通報者 について

通報者 の権利 の侵害 の重大 さに見 あ う適 切 な補償 を提供 す るこ と。

(b)一般

レイ プ事件 に関す る裁判 が不 当 な遅滞 な く行 われ る よ う効果 的 な措置 を とるこ と。

性犯罪事件 の司法手続 が不偏 ,公正 で あ り, ジ ェ ンダーに よる偏見 や ステ レオ タイ プの 影響 を受 けない よ う,広範 な措置 に よ り確 保 す るこ と。

当事 国 は,6ヶ月以 内 に本見解 お よび勧

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告 に関 して とられた措置 の情報 を含 む回答 を書面 で提 出す るこ と。 また,本見解 お よ び勧告 を公表,翻訳 し,広 く配布す るこ と。

*Hayashi(林)委 員に よる同意意見

当事 国の司法的伝統 におけ る推定無罪 の原則 や被告 の二重 の危 険 に対 す る権利等 の尊重 は, 多 くの男女 に よって勝 ち取 られて きた もので あ り,女性 の人権 に関 して も重要 な原則 で あ る。

よって,被告 の刑事責任 について判 断す るこ と は委 員会 の任務 で はな く,通報者 に よるジェ ン ダーに基づ く神話 や ステ レオ タイ プが なければ 被告 は有罪 とな っていたで あ ろ うとい う主張 お よび委 員会 は法執行機 関,検察,司法 にお け る 汚職 の問題 を取 り上 げ るべ きで あ る とい う主張 には賛成 しない。

しか し,本事案 におい て,裁判 が実質 的 に遅 延 し,判決理 由がい わゆ る レイ プ神話 に影響 さ れてい る とい うこ とには同意す る。 また,金銭 的補償 に関す る勧告 について は,裁判 の不 当 な 遅延 と判決 が通報者 に被害 を与 える可能性 のあ

る理 由に依拠 してい るこ とに基づ くもので あ り, 無罪判 決や通報者 の経済 的損失 に対す る もので はない と理解 す る。

(担 当 :近江美保)

参照

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