大きく進展した反物質研究 ︱反水素原子の大量生成・操作に成功

Loading.... (view fulltext now)

全文

(1)

10

最近の研究成果トピックス

2.

 137億年前のビッグバンでは、物質と同じだけ 反物質が生成されたと考えられています。その反 物質の性質が、我々の周りにある物質と全く同じ か違うか、違うとすればどう違うか、が本研究の 主 要 課 題 で す。 物 理 学 の 最 も 基 本 的 な 対 称 性

(CPT対称性)を、我々の住む宇宙が保ってい るのか、保っていないのか、についての研究であ るとも言えます。さらに、反物質が、なぜ我々の 住む宇宙には存在しないかについても何か分かる かもしれません。

 反物質の性質を調べるには、先ず地上には存在 しない反物質を作り出さねばなりません。そのた め、反物質の代表格である反水素原子を生成・操 作できる装置の開発を相補的な2つの視点から進 め、昨年末、相次いで実験に成功しました。一つ は、図1に示した、反水素を蓄積できる磁気瓶の 開発で、極低温(0.5K以下)に冷却した反水素原 子を38個、0.2秒以上、閉じ込めることができま した。もう一つは、効率よく反水素ビームを生成 することのできる、新しい原理に基づく反水素合 成器の開発(図2参照)で、冷反水素の大量合成 が実現されました。この2つの研究成果は、世界 各国で大きく取り上げられ、例えば、英国物理学

会が運営するニュース誌、Physics  Worldにおい て、Breakthrough of the Year (2010)の第一位 であるとの評価を受けました。

 今回の成果により、反水素は物理学の研究対象 として、はじめてその俎上に乗ることになります。

これは、我々が住む宇宙の最も基本的な対称性を 精密分光法によりテストしようというもので、

我々は、「自然のささやきを聞く」アプローチと 呼んでいます。このような自然へのソフトなアプ ローチが、様々な研究分野に拡がることを期待し ています。

 既に、マイクロ波分光の準備は整っています。

来年度早々、分光実験を開始するとともに、順次、

分光精度を向上させ、CPT対称性テストを厳密 化する予定です。さらに、反物質(反水素)と物 質(地球)の重力相互作用研究を進めます。

平成10−14年度 創成的基礎研究費 「超低速反 陽子ビームの生成と原子衝突」(「反陽子を用いた 反物質科学」研究リーダー:小牧研一郎)

平成19−23年度 特別推進研究 「反水素原子と 反水素イオンによる反物質科学の展開」

【研究の背景】

【研究の成果】

【今後の展望】

【関連する科研費】

独立行政法人理化学研究所 基幹研究所 上席研究員

山崎 泰規

大きく進展した反物質研究 ︱反水素原子の大量生成・操作に成功

理 工 系

反陽子

真空隔壁 ミラーコイル

八重極コイル

反陽子消滅検出器

多重円筒電極

陽電子

図2  反水素ビーム生成用カスプトラップの中心部。左下から反陽子と陽 電子を導入し、多重円筒電極内で合成した反水素は右上に引き出さ れる。

▲図1  磁気瓶の概念図。ミラーコイル、八重極コイルからなり、反陽子は左か ら、陽電子は右から入射され、磁気瓶中央で反水素が合成される。

超伝導コイル

反陽子 陽電子

反水素

多重円筒電極

CW3̲A2093D08̲トピックス-2.indd   10

CW3̲A2093D08̲トピックス-2.indd   10 2011/03/16   13:55:352011/03/16   13:55:35

プロセスシアン

プロセスシアンプロセスマゼンタプロセスマゼンタプロセスイエロープロセスイエロープロセスブラックプロセスブラック

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 :