「基礎・基本の定者を図る社会科学習の展│剃 一問題解決的な学習、教材の在り方を考える‑J
研究主題『基礎・基本の定着を図る社会科学習の展開
一問題解決的な学習、教材の在り方を考える一』
東京都教職員研修センター研修部専門研修課 町岡市立町田第六小学校 f告 研究の背景とねらい
現行学習指導要領を設定するに当たって、その基本方針を示した教育課程審議会答申には、
「ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図る。J
また、平成 14年当時の文部科学大臣は、「学習指導要領で示されている内容は最低基準であ る。Jと述べている。このことは、学習指導要領で示されている内容が、すべての児童に身に付 ける基礎・基本であることを示していると考えることができる。
高藤 教諭
とある。
以上のことから、社会科学習においても基礎・基本の確実な定着を図ることが重要である。
しかし、社会科の学習において、児童が身に付‑けるべき基礎・基本のとらえ方は、指導者に よって違いが見られるという現状がある。また、保護者の中においても、児童が身に付けた基 礎・基本が見えにくいという実態もあるQ したがって、本研究では、社会科学習における基礎・
基本を明らかにすることを研究のねらいのーっとした。
また、明らかにした基礎・基本を、児童が主体的な学習を行うことによって、獲得=すること ができる学習活動を展開する必要があると考え、次の 3点も研究のねらいとした。
児童の主体的な活動を問題解決的な学習ととらえ、単元を通じて獲得する基礎・基本と の関係を明らかにすること。
基礎・基本を明確にするための教材の分析方法を明らかにすること。
明らかになった基礎・基本の獲得を促すためにワークシートの開発を行うこと。
1 2 3
本の
基法・
導 礎指
甘 務
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の化︒元確化単明体
児 蛍 の 作 品 分 析
‑ 単 元 に お い て 身 に 付 け る 織を明らかにする♂
‑教材分析図 (単元、 1時間)、
‑都内6学 年 児 童 に ワ ー ク シ ー ト 、 発 言 に 対 す る 意 識 調 査 を 行 い 、 ワ ー ク ー ト の 要 件 に つ い て 祈u
E
百合的知書fl骨す6腕
‑ワークシートの作成内
1 社会科学習における基礎・基本
学習指導用要領や文献等より、社会科学習における基 礎・基本は、知識面、能力面、態度面の三つを身に付け ることであるということが分かった。これらの三つのう
基礎研究より E
ち、本研究では知識面に焦点を当て、基礎を事象と事象 との因果関係を説明できる「事実的知識J、基本を社会的 な見方、考え方の内容的側面の I概念的知識Jと規定し を獲得するため の思考方法、獲得する知識の構造を右の凶のように考え た。
① また、「事実的知識Jr概念的知識」
た。
fJjl;磁・基本の定着を図る社会科学習の展開 一問題解決的な学留、教材の在り方を考えるーj
本 研 究 に お け る 問 題 解 決 的 な 学 習 過 程
J . デ ユ ー イ の 問 題 解 決 学 習 、 先 行 実 践 に お け る 問 題 解 決 的 な 学 習 過 程 を 参 考 に 、 本 研 究 に 2
お け る 問 題 解 決 的 な 学 習 過 程 を 次 の よ う に 規 定 し た 。
~~に気付く。 │学習問題 l自分の考えを明らかにする。
問題の発見│調査する問題を明確にする。│ の 設 定 │ 仮説を設定する。
こ の 問 題 解 決 的 な 学 習 過 程 に 、 児 童 が 獲 得 す る 、 「 事 実 的 知 識J、「概念的知識Jを 位 置 また、
付け、構想図を作成した。
く事実的知識、療念的知機 にするための思考方法。〉
時代を象徴する4敏の写真
教 材 の 在 り 方 を 考 え る
教 材 構 造 図 、 分 析 図 の 作 成 単 元 全 体 の 教 材 構 造 、 授 業 で 使 用 す 3
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事実→事実的知隊
『これがあるとどうなるか』
事実的知際司概念由~~噂 関瞳させる。
『この但つをつなげると』
繍念的知11‑彼念的知疎 総合『全部ヴなげると』
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く機創傍目線〉
・終戦直後の人々は大変な乞舌を していた。
‑終戦直後!こ比ベて色苦がよくな ったのでは。(昭和30年ごろ}
.終戦直後に比べてかなり乞苦が よくなった。(現在)
戦後日本仏社げた く教材のねらい〉
4枚の写真から、戦後の日本の 変化をとらえ、発展の機子を予 想する。
る 主 な 教 材 に つ い て 、 そ こ か ら ど の よ う な 社 会 的 事 象 に 気 付 き 、 [ 事 実 的 知 識J、『概念的知識Jを 獲 得 し て い く の か を 明 確 に す る た め に 、 教 材 構 造 図 を
く身に仰する事実鰍醜〉
O醐初年ごろの写真
会てが側代しまったので、生音が嫌だったので1;1:ないか.
・人々も食べる喝のや京がお〈、恋し〈τしょうがなかっただるう.
0昭和26年ごろの写真
一
I...........̲+.・.....‑.....くとらえさせたい事実>
O昭和20年ごろの写真
・章てが腕l代しまっている。
.人句Eれている.
作成したり
盲
ワ ー ク シ ー ト の 開 発 ( 2 )
を 身 に 付 け る た め に 、 児 童 へ の 調 査 結 果 を 基 に 、 作 f概 念 的 知 識J
児 童 が [ 事 実 的 知 識J
成 の た め の 要 件 を 以 下 の よ う に 考 え 、 検 証 授 業 に お い て 作 成 し た 。
<ワ二ヲシード刊百更のた画面裏手F5
・児童がとらえる事実の種類ごとに、まとめられるようになっていることq
・獲得する事実、「事実的知識J、「概念的知識Jが、児童にとって区別がつくようになっていること0
・作業の流れが、知識を獲得する流れ(事実→「事実的知識J→「概念的知識J)になっていること。
・児童が、とらえる事実や「事実的知識jを比較したり、つなげたりして考えることができるようになって し、ることり
・「事実的知識Jと 『概念的知識Jをつなげて考えられるようになっていることり
知 識 を 構 造 化 す る た め の 活 動 の 開 発 4
児 童 が 獲 得 し た I事 実 的 知 識Jは 、 構
ゆ 一 比て問にをめ習ヴ事と学ω記また書の︑せをC連さえし
人闘 い
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の示
A較け題指 造 化 さ れ る こ と に よ っ てJ概 念 的 知 識J へ と 発 展 さ せ る こ と が で き る 。 検 証 授 業 で は 、 学 習 問 題 を 追 究 す る 活 動 と し て 新
聞 作 り を 行 い 、 そ の 作 成 に よ っ て 「 事 実 じじっから考えること.
今の自分の生活との かかわりを考えて書く ように指示した。(獲 得した「概念的知識』
を転用するための思 考を促す。)
② 的 知 識Jを 構 造 化 で き る よ う 、 意 図 的 に
学習活動を設定した。
「築礎.f,(;本の定着を図る社会科学習の展開 一問題解決的な学習、教材の在り方を考える一J
実 感 を 伴 っ て 知 識 を 獲 得 す る た め の 工 夫
歴史上の出来事を、実感を伴って理解し、「事実的知識J、「概念的知識Jの獲得を促すために、
5
地域の方からの聞き取り活動を学習過程の中に設定した。
そ し て 、 東 京 オ リ ン ピ ッ ク 開 催 当 時 の 社 会 の 様 子 に ゲストティーチャーを招き、聞き取り活動を行った。
検証授業では、終戦直後の生活の様子、
ついて、
研 究 の 成 果 と 課 題 ( 検 証 授 業 の 児 童 の 学 び を 通 し て ) N
ワークシートの工夫を行えば、「事実的知識Jr概 念 的 知 識Jの獲得につ 考え方を提示し、
1
「概念的知識J ま た 、 学 習 問 題 を 追 究 す る 段
「事実的知識」
なげることができる。(成果)【A児の学びの姿を通じて】
検証授業では、教材構造図、分析図を通して明らかとなった、
を児童が獲得するための考え方をヒントカードとして提示した。
階では、前述の要件を備えたワークシートを使い、新聞作りを行う活動(第 6、7、8時)、友達の 新聞を見て学び合う活動(第9時)を行った。
「戦後日本は、民主的な国家として出発し、国民生活が向上し、国際社
「概念的知識」
その結果、 A児は、
を獲得することができた。
1調べたことの事実だけ書く。(自分の考えは書かない。)
2 調べたことからつなげて考える。 (Aは のことである。だから のように考えられる。) 3 調べたことを比べて考える。
(AとBを比べると が同じだったから、 と考えられる。AとBを比べると が違うから、 と考えら 2
4 完走ぜことをまとめて考える。 (AとBとCの 肌 点lま だから、 と考える。AとBとCの遣う点は;;
だから と考える。 Jtj
h制成品弘主主貼附説経必;;,1正II証書幽む.Jt;;a也記磁議出量崎山ilO.).l且泌泌制崩盆念品!;1盈滋磁悩制組曲泊錦織蝉幽晶齢出始込必起草晶画曲,Wi'u前,.̲.̲,
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会において重要な役割lを果たしてきたJとし、う
V A児の学びの姿(ワークシートの記述より)
<児童が獲得すべき l概念的知識J>
戦後日本は、民主的、平和的な国家として出発し、国民生活が 向上し、国際社会の中で重要な役割を果たすようになってきた。
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t! と議長示、 8時 の 記 述 〉 ‑ .........................11' く第台時め記述..>.........................................1
;わ事実(抜粋) I IC?事実から考えられること 111 [d事実(椋粋) I
;阪京オリンピックは、アジl..llオリンピックは人々の生活111卜日本国憲法 │ 円 I
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7
で初めて行われたオリン│聞に関係、が深かった。これを1111日本が新しく生まれ1I~ 事実から考えら1 ¥iルックで、大改造が行われ1'1きっかっけに経済が発展1111変わるための憲法。│料ること。 1 1
1元東京は、近代的な都市に11し、世界から認められたり 1111日本がどのように進国1M ‑+‑,...,. RI h ' .).,' +1 嵯わっていった。1 IIrntnE' ‑1,,,::' ~ ~ ,::. ‑h A 1‑ I 111むかを示したもの。円円本は国民が主1!
Ot. 4‑".) 1.. V'~.) 1'‑0 I 1<2事実から考えられること 1111・新しい教育制度 1 I~ 公となり、民|
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j0事実(抜粋) 1卜れまで時間をかけていた1111義務教育が小中学校11主主義の固とし│
中前日 30年を過ぎると電気│圃家事も少し楽をできるよう1111の9年。民主主義の11て、生まれ変わ│
;俳濯機、電気冷蔵席、電気1"1になって、料理を楽しむこ1111考え方を理解するよ11った。 1 I
1指拘指掃請除機などの家電製品が急│ハ│ドとができるようになつた。│川1115う教えられた。 1' ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 1
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!速に普及したo ' ‑ " ‑1 I性生活が洋風化したのでは。|川1I 1/""^'~-'''v.~O I [
ム : iゆO事実から考えられること 川│1110事実(椋粋) ̲J P事実から考えら斗1[
;p事実(抜粋) し│仏スポ一ツなどが見られるよ│川H卜サンフランシスコ講! !:tt陣るζとι。 ! 卜;
itレピの放送が始まつさの│司剛│うになり、楽しみが増えた。111同会議 I̲̲̲I .I̲... LO
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̲̲1 :F75252TMJE「|テレビのおかげコマーシヤ111 院長岳協官び|司除去作品 ~I持70年代半ばであるo
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なり、物1 1 I
ト国際連合加盟│
伝 り 、 国 際 社 会I
f i え J ~III}J~言。古品製品|ド復帰した。 I
!│<学習問題に対する考えC"‑Lnt:│全部を考えてみると日本は戦争の反省から、外国と仲良くしょh.I:L "" 1"""":" ,........L..:‑‑ ..... r:;:J 1̲1..1.. ~ / 1 LIIUII'I同入りを実現。FlJ/' ‑/ ‑c,. 7'"'?uo ̲ 1 ~
I
Iうとしていることが考えられる。人々の生活もより洋風化し'てい111 Rこの時代を文で表?と> I !
[1る。技術も戦後の方が発達している。日本は外国に追いつこう111 Iこの時代は、今までと全く違う平和的│
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lとして人々もその影響で今までと違った生活をしていた。 111 1(国際的)な国を目指した。 I
③
東京オリンピックに向けて、日本はどのようにロ
展したのだろう。
I基礎・基本の定着を図る社会科学習の展開 一問題解決的な学習、教材の在り方を考えるーJ
身 近 な 人 々 か ら の 聞 き 取 り 活 動 は 、 実 感 を 伴 う 理 解 を 促 し 、 「 概 念 的 知 識Jの 獲 得 に つ な げ 2
ることができる。(成果)【A児の学びの姿を通して】
獲得した「事実的知識J
仁 コ
獲得した『概念的知識 J~コ.."A児の学びの姿(記述より) 教室が焼けたため、
の階段などを利用し
ことu ~
物が少なかった けれど、工夫して 生活していた。
「 戦 後 直 後 の 人 々 は 、 様 々 な 工 夫 を し て 生 終 戦 直 後 の 生 活 に つ い て の 調 べ 学 習 で 、
活 し て い たJと い う 「 概 念 的 知 識 」 を 獲 得 し て い た が 、 「 様 々 な 困 難 な 中Jと い う 「 概 念 的 知 識J A児 は 、 次 の 時 間 に 行 っ た 、 地 域 の 方 か ら の 聞 き 取 り を
A児は、
しカミし、
の 獲 得 は 十 分 で は な か っ た 。
f概 念 的 知 識 」 を 獲 得 し て 行 う こ と に よ っ て 、 「 様 々 な 困 難 な 状 況 の 中 、 生 活 し て い た 」 と い う
いた。このA児 の 学 び の 姿 か ら 、 実 感 を 伴 っ て 理 解 す る こ と が で き る 学 習 活 動 を 設 定 し 、 「 概 念 の 獲 得 を 促 す こ と が 重 要 で あ る こ と が 分 か つ た 。
的 知 識j
児 童 が 学 習 問 題 を 常 に 意 識 し て 調 べ 学 習 が 行 え る よ う 教 師 の 働 き か け を 工 夫 す る 必 要 が あ 3
る。(課題)【B児の学びの姿を通して】
.."s児 の 第6、7、8時 の 学 び の 姿
いをきっ
えで
に答が題のと問分こ習自つ︒苧てもた
学習問題の答え (新聞の記述) 調べた三つを見 たら、みんな平 等、平和な日本 を目指している こ と が 分 か っ たじこの三つか ら戦後日本は大 きく変わったこ とが分かったの 0日 本 国 憲 法 に つ い
ての考え
日本は、戦争をしな い 平 和 な 国 を 目 指 し た。
0新 し い 教 育 制 度 に ついての考え 義 務 教 育 の 期 間 が 長
くなり、みんながし っ か り と 教 育 を 受 け ら れ る よ う に な っ た。
0農 地 改 革 に つ い て た く さ ん の 農 家 の 人の考え たちが、自分の土地を もてるようになったじ . (調べた事実は)
戦 前 と 比 べ て 、 日 本 を ど の よ う に 変 えたのか。
教 師 の 助 言
ザQdb
いを てえ
れ考
作り の
りベ分似
岡山
一色
びJ円い山児学川島なのそ厚手重しゴ苦児は吋が︿実十と事
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学習問題を意識して学習を進巧 ているとはいえない。
な考
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・勺 ノ Lf
﹂
よたj y
のしかt ︐ r ︑o
昌一 ど指 る たは
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調日国え ベ本をら 日本国懲法は、新しい日本の在り方を
示して、次のような特色をもってい る。
1主権は、国民にあること。
2国民の基本的人権を尊重することの 3平和主義をつらぬき、戦争をしな い、戦力をもたない、としている。
そ このように、 B児 の 学 び の 姿 か ら 、 学 習 問 題 に 対 し て 、 児 童 自 身 が 、 細 か い 思 考 過 程 を 経 て 、 自 分 の 答 え を 導 き 出 す 助 言 を 行 う 必 要 が あ る こ と を 学 ぶ こ と が で き た 。 学 習 問 題 を 追 究 し 、 の答えを導き出すことは、「事実的知識」、「概念的知識Jを 確 実 な 獲 得 を 促 す た め に 重 要 で あ る 。 児 童 の 思 考 を 学 習 問 題 へ 導 く た め の 補 助 的 な 助 言 等 を 今 後 も 考 え 、 実 践 し て い き た い 。
④