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Fruit & Tea Times No.3

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(1)

農研機構 果樹茶業研究部⾨ニュース

No.1

最新の研究成果をわかりやすく楽しく解説

⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*

No.3

巻頭⾔ コラボを考えよう

企画管理部⻑ 髙梨 祐明

特集記事

ー果樹のスター品種誕⽣秘話ー

「シャインマスカット」

ブドウは⾒かけによらぬもの

ブドウ・カキ育種ユニット⻑

佐藤 明彦

渋⽪がむきやすいニホングリ品種

「ぽろたん」・「ぽろすけ」はこうして⽣まれた!

ナシ・クリ育種ユニット⻑

斎藤 寿広

Kacha TIPS

リンゴのみつ⼊りは、本当にあま〜い蜜が⼊っているのですか?

隔⽉刊

(2)

コラ

考え

よう

お茶とくだもの︒

実は案外に相性が

良い︒

たなレシピ

で︑健

康の増進と消費拡⼤をめざそう︒

髙梨

祐明

髙梨 祐明 企画管理部⻑ 害⾍の⽣態や防除技術の研究からスタートしました。 その後、リンゴ栽培で使う農薬を⼀気に半分にする研 究を、岩⼿県のリンゴ農家と⼀緒に⾏いました。果樹 農家の職⼈気質はよく知られるところですが、それと 真剣に向き合う農協職員や、流通、⼩売り関係のプロ の仕事も間近で拝⾒し、深く感銘を受けました。私た ち試験研究機関は、現場に役⽴つ技術開発に努めるこ とが重要だと改めて思いました。 私は 果 茶 の う ち 果 樹の 研究 に 携わってき た 者ですが ︑昨年の 4⽉か ら お 茶 の 研 究 を する⼈ 達 と ⼀ 緒に仕 事 をす るよ うにな り ︑ お茶とくだものの 接点に つ いて 考える 機 会が 増え ま し た ︒お 茶 とくだもの の 競演 としてまず 思 い付 く のは ︑ 様 々な⾹ りを楽し むフレバリー ティ︒⾹りの 強い 花の花弁や ⾹ ⾟料 を混ぜて ︑紅 茶葉に ⾹りを つけ て い るも ので すが︑⾹り担 当のパ ー トナーと してく だ も の もけっこう 頑張 っ てい ます︒ファミリ ー レストラ ンの ド リ ンクバーでは︑テ ィー バッグ を 詰めたガ ラス 壺の 並び に︑ 様々 なくだ も のの 名前 を⾒ つけ る こ と が で き ます ︒ ア ップ ルやピー チ ︑ マン ゴー などが 最 も馴染みの あ ると ころでしょう か︒ 他 に ラ イ チや チェ リー ︑マ スカットな ど を ⾒る こと もあ り ます︒ 意 外にカン キツ 系が ない と思 う か も 知 れま せん が ︑さに あらず ︒ お よ そど このド リ ンク バーにでもあるア ールグレイは︑ ベルガ モ ットというカ ンキツの ⾹りをつけたお 茶で す︒ ベルガモット アールグレイの⾹り づけに使われる。

(3)

テ ィ ーバッグの フレ バリー テ ィ には ︑正直い っ て 少 し 物⾜ り な さを感じる の で すが︑実は︑ ⽣の果実 を使 って︑意外 に も美 味し いフ レ バ リー ティ を作 るこ とができます︒以 下は テレビ番 組で 仕 ⼊ れ た ネタ の 受 け 売 りで すが︑ ク ルクルと 剥いたリ ンゴ 1個 分の ⽪を ︑ 丸 い 陶 器 製 ポ ッ トの 内側 に 収 めて︑ そ こ に 紅 茶 葉と熱湯を注い で ア ッ プルテ ィ を淹れたことがあります︒その 時はたまた ま ですが︑リンゴの ⽪が 途中で 切 れずに︑きれい に 剥け た満⾜感が⼿伝 っ たか らか も知れませんが︑これ は本当に 美味 しく て ︑ 乾 燥 した果 ⽪ で⾹ り付けしたものとは 違 う︑柔ら かく沸き上 が るような ⾹りに感 動すら覚えま した︒ちなみ に︑ ⽪が⼨断されてい ても ︑味 には 変わりがないと思います︒

紅茶

はなか

また︑ジ ャムと 紅茶はよほど 相性が良いようで ︑⽣地に 紅茶 葉を練り込んで 焼 い たパンにリ ンゴジ ャ ム を のせて⾷ べる と ︑ ﹁うー ん ︑ こ れ は ⾷べ る ア ッ プ ルテ ィだね! ﹂ な どと悦 に⼊ っ て呟きたくな る 美味 しさ です ︒ この紅茶パ ン があ ると ︑ マ ー マ レ ー ドでも ア ンズジャムでも 同 じような楽 し み ⽅が できます ︒

煮炊き

かさ

減っ

な成分

率よ

摂れる

⽇本で は くだものを⽣で ⾷ べ ることに 圧倒的 な 価値が置 かれ てい て︑特 に 家庭 でくだ も のを お料理して⾷べるのは ︑多分 に 趣味 的な世界 になる よ うに感 じ ます︒ あ るいは⼀度 に ⾷べ 切れ ないほ ど たくさ ん ある ときの︑ 緊急避難的な保存⽅法でしょう 様々な⾹りが楽しめるフレバリーティのティーバッグ。くだものの⾹りのものが多い。

⽣の

⽪で

作っ

たア

味し

(4)

そこ で︑くだ ものの 消費を 伸ばすため に は︑家庭 料理 の ⾷材に く だも のがもっ と 使わ れるようになることが 重要 な ので はと 考 えて います ︒その 時 に ︑お茶とくだものの 相性 か︒確 か に︑旬 の く だ も の を ⽣ で⼝ にする と き に ほと ば し る 季 節感 は ︑何 ものにも 代えがたい 魅⼒ です ︒し かし ︑ く だも ので も野菜 でも ︑煮炊 き することで かさが減 り ︑⽣よりもはるかに たくさんの量 を ⾷べ ることがで き︑有効な成分を 効率 的に 摂る ことがで きる良 い⾯もあります ︒

家庭料

くだ

んで来 ま せ ん ︒もっ と ︑感性 と アイデ ア の 豊 かな⽅ 々 に︑⼀緒 に考えることを訴え続け て いこ うと思います︒ 「ぽろたん」(渋⽪が簡単にむける クリ品種)と鶏⾁のあっさり炒め 「露茜」(果⾁まで⾚いウメ品種)のジャム ⼿⽻先とごぼうのしょうがレモン味噌煮 の良さを活 か した︑新し いレシピ を提 案で きると良 いと思います︒ というお題⽬を唱 えるばかりで︑ 今のところまったく 具 体像が浮か くだものを⾷材に使った料理の例 レシピは、http://www.naro.affrc.go.jp/nifts/feature/index.html

(5)

シャ

ブド

佐藤

明彦

⽇本で主に 栽 培 さ れ て いるブ ドウ にはヨーロッパブドウとア メリ カブド ウという2 つの種類 があります ︒ ⾼級ブド ウとして 販売される ﹁ マスカッ ト・オ ブ・ア レ キサ ン ド リア ﹂は ヨ ー ロッパブド ウ ︑種なしブドウと してお馴染 み の﹁デラウェ ア ﹂

⾬が

ブドウ品

ブドウの

﹁シャインマスカット﹂

﹁⾷べたことがある﹂︑﹁店

先で⾒かけたことがある﹂という⽅も多いと思

ます

ここでは

﹁シャインマスカット﹂を育成した背景やねらい

をご紹介したいと

思い

佐藤 明彦

ブドウ・カキ研究領域 ブドウ・カキ育種ユニット⻑ ⻑年育種に取り組んでいます。⼀⾒複雑に⾒える育 種データが、意外に単純なモデル式で表されることに ⾃然の美しさを感じています。 趣味は多⾁植物の栽培、ギター、散歩です。多⾁植 物も種から育てて⾯⽩い個体が出るのを楽しんでいま す。 シャインマスカット http://www.naro.affrc.go.jp/nifts/shine-muscat/index.html に関連情報

特集

記事

ー果

樹の

スタ

ー品種

⽣秘話

(6)

ヨー

メリ

ヨーロッ パブドウと ア メリ カブド ウ では⾷感と ⾹りが⼤き く 異 な りま す︒ ⽣⾷ ⽤の ヨーロッパ ブ ド ウは︑ 硬 くて噛み切りや すいパリパリ した⾷ 感 を ⽰し ︑マス カ ット ⾹と い うさ わやかな ⾹りを持 つ ものと⾹りを持 た ないも のがあります︒⼀⽅ の ア メ リ カ ブ ド ウ は ︑ グ ミ キャ ンデ ィーのよ うな 噛 み 切 り に く い ⾷ 感 と ︑ フォクシー⾹ という⾹り 「シャインマスカット」 最近お店でもよく⾒かける ようになりました。 しか し︑ ヨ ー ロッパ ブ ドウと アメ リカブド ウで は⾷味が 異な るため ︑ ヨーロ ッ パブド ウ の⾷ 味を持ち︑⽇本でも栽培可 能な 品種が求められてきま した︒そ こで ︑両者の雑種︵欧⽶雑種︶ の育成 が 進めら れ ︑ ﹁巨峰﹂ など現 在 店頭で 良く⾒ か ける品 種が育成されてきましたが︑ ヨーロッパブドウの ⾷味 とは ま だ距離があります︒ はア メリ カ ブ ドウです︒ヨー ロッパブド ウ は︑⽐較的 病 害に 弱く︑降⾬ が あると果⽪ が 割れ やすい 特 徴 を 持っ ています ︒ ⼀ ⽅のアメリカブド ウは︑この逆 の特徴 を 持っています ので ︑⾬ が多い⽇本でも容易に栽 培 で き ます︒ こ の た め︑ ⽇本で は ⻑ 年 にわた っ て ⽶ 国から導 ⼊された アメ リ カ ブ ド ウ が 主に 栽 培 さ れ てきました︒

両者

の雑

られ

を持って います︒フ ォ クシー ⾹ は﹁キャ ン ベ ル ア ーリ ー﹂や ﹁巨 峰﹂ が 持 つ ︑あの ⽢ い⾹り で︑⽇ 本 ⼈には 馴 染 み深い も の です︒私 た ち は﹁ヨー ロッパブ ドウの⾁質 と マスカ ッ ト ⾹を持 ち⽇本で も 容 易 に栽 培できる品 種が できたなら︑ 新たな 需要を 掘 り 起 こ せ る に 違 い な い ﹂ と 考えました︒

アメ リカ ブ ド ウ と ヨ ー ロ ッ パ ブドウを掛け合わせても︑ヨー ロッパブド ウ と同じ⾷感やマス カット⾹をもつ⼦供はまず⽣ま れません︒やや噛み切 り にくい ⾷感や マ ス カ ッ ト ⾹ と フ ォ ク シー⾹が混ざった ⾹りを持つ ⼦ 供がほとんどです︒1 978年 にア メ リ カブ ド ウ と ヨ ー ロ ッ パ ブドウを交 配して 育成した﹁安

(7)

ブドウ交雑実⽣圃場。週に1度圃場を回って収穫します。「シャインマスカット」は、 ここから⽣まれた1本です。 交配から得ら れたブドウの 種⼦から芽が 出たところ。 本葉はすでに ブドウの葉の 形をしていま す。 芸津 21 号﹂という ブ ドウもその ような中間的な 性 質を持っ てい ました︒私た ちはこの﹁安芸津 21 号﹂ に﹁ ヨーロッパ ブ ドウを 交配す る ことで ︑ さらに ⾷ 感や ⾹りをヨーロッパブドウに近づ けようと考 え ました ︒ そして︑ 1 988年から翌年に かけて︑ ﹁安 芸津 21 号﹂とヨーロッパブ 21 21 21

(8)

⾒か

ヨー

ドウ

アメ

リカブ

交雑実⽣の果実です。育種担当の研究員が全員で吟味して優良個体を選抜します。 ﹁ シ ャインマ スカット﹂は⾒ た⽬や味はヨーロッパブドウに と て もよく似てい ます︒その⼀ ⽅で ︑栽培 の しやす さ はアメリ カブドウの ⾎ をしっか り引き継 いで お り ︑ ヨ ーロ ッ パ ブド ウ と は⼤違 い で す ︒まさに ﹁シャイ ンマ スカット﹂は ⾒かけ に よら ない品種な の です︒⻑ い時間 を かけて計画 的 に 改 良を ⾏ってき たこ と で ︑初めて⽣み 出 す こ と が で きた品種 ︒それが﹁シャイ ンマスカット﹂なのです︒ ドウや私たちが育成し た欧⽶雑 種を親と する⼦供約 6 00個体 を 作 り だ し︑ その中から 選 び抜 いた1 つ が﹁ シャ イ ン マ ス カッ ト﹂なのです︒

(9)

クリ

を⼤

する

3種

ある

ご存 じない ⽅ も 多いかと思い ますが︑スーパーなどで 普通 に 売られている⽣ グリと⽢ 栗とし て売られている ク リは 違う種類 です︒前者はニホングリ︑後者 はチュウゴクグリと 呼ばれ る 種 類です︒ニホングリは 栗⽺ 羹 な どの和 菓 ⼦にも 利⽤ されて い ま す︒この 他 ︑ヨーロ ッ パ で は ヨーロッパグリという 種類が 栽 培され︑マロングラッセなどに 利⽤ されて い ます ︒ これ ら のク

ニホングリは粒

⼤きく収量

が多いなどの点で

優れています

が︑渋⽪がむけにくいことが最

⼤の⽋点でした

農研機構では

渋⽪がむきやすい画期

的なニホ

ングリ品種﹁ぽろたん﹂と﹁ぽ

ろす

を開発しま

どの

ようにして開発できたのか︑

の経緯を紹介します

渋⽪

きやす

ニホ

ぽろ

﹂ ﹁

ぽろ

斎藤

寿広

「ぽろたん」の原⽊ 2017年7⽉21⽇撮影 果樹茶業研究部⾨研究圃場 (つくば市) 「ぽろたん」 http://www.naro.affrc.go.jp/nifts/porotan/index.html に関連情報

特集

記事

ー果

樹の

スタ

ー品種

⽣秘話

(10)

⾷べ る 部分 ︶の 間にある 渋⽪の むけに く さ が ⼤きな ⽋ 点とされ てきました︒農 研 機構で は この よ う な常 識 を打 ち破 る ﹁ぽろた ん﹂と ﹁ ぽ ろ すけ﹂と いう 新品 種をそれぞれ2 006年 と 20 両品種は同じ両親 から⽣まれ た︑⼈ 間 で ⾔ え ば 兄弟 の関係に あります︒ ﹁ ぽろたん ﹂ は 1 9 91 年 ︑ ﹁ぽ ろ す け ﹂ は 2 0 04 年 に ⾏ っ た 交 配 によ り 育 成 されました ︒ ﹁ぽろた ん﹂の 交 配 を ⾏ っ た 頃 は 学 術 的 に も ﹁ニホング リ は 渋⽪がむけな い﹂とされ て いました ので ︑育 種⽬標 に ﹁渋 ⽪ がむ けやすい ﹂ という⽂ ⾔ は ありま せ んでし た ︒ リは︑それぞれ異 なる特 徴 を 持って い ま す ︒ ニホン グ リは︑ 他のクリと ⽐ 較 して果実が⼤き く収量が多 い などの ⻑所を持っ てい ますが ︑ ⻤⽪︵果 実を 包ん でいる 茶 ⾊ の硬 い⽪ ︶と果⾁︵

ニホ

リは

⽪が

常識

﹁ぽろたん﹂も︑ もと もとは ﹁渋⽪がむけやすい﹂品種を ⽬指して育成したものでは な く︑果実品質の向上を⽬的と し た も の で し た ︒ 当 時 は ︑ ﹁これ以上クリの品種改良を 続けても︑インパクトのある 品種は育成できないので は な いか﹂といった声もしばしば 聞かれるようになり︑品種改 良の中⽌も取りざたされてい 1 6 年 に 公 表 し ま し た ︒ こ の 2 品 種 は ︑ 純 粋 な ニ ホ ン グ リ で す が 渋 ⽪ が む け や す い の で す ︒ こ こ で は 両 品 種 の 育 成 に ⾄ る 経 緯 を ご 紹 介 し ま す ︒ 「ぽろたん」

(11)

ました ︒ そ こ で ︑ ハー ド ル は 極 めて⾼ い も の の︑国産 ク リ の 消 費拡⼤に貢 献 できる ﹁渋⽪ がむ けやす い ﹂品 種 の 育 成 に重点 的 に 取り 取り 組 む こ と にしま し た︒

渋⽪

簡単

調べ

を発

も﹁渋 ⽪ が む け や すい ﹂クリを ⾒つ け出さなけ れ ば な り ま せ ん ︒ その ためには︑膨⼤ な 数 の クリ につ い て 渋 ⽪ の む け や すさ を評 価す る⽅ 法 が 必須で す ︒ 渋⽪ をむくために はクリを加熱す る 必要がありますが︑当初は業務 ⽤の 栗焼 き釜 を ⽤ い て おり ︵写 真上︶ ︑ ⾮常に 時 間 と ⼿間がか かって い た の で ︑ 何かもっ と良 い⽅法 は な い も の かと 思案して いました︒そんな ある ⽇︑当 時 の研 究担当 者 が 集 まっ た ⾷ 事 会 で︑油 で 揚 げ たクリが出さ れま した︒そのクリはニホングリ で したが︑渋⽪がむけやすくなっ てい たため︑﹁ も しか したらこ 1種類ずつ栗焼き釜で焼いて渋⽪の むけやすさを確認していた。 油揚げ法の開発が「ぽろたん」誕⽣の鍵! れは評価に使えるかも しれない︒ や ってみよ う﹂と全 員 で 盛り上が りました︒ そ の後検討 した結果︑ 家庭 ⽤のフ ライヤーを使って⾼温 の油に2分漬けるだけ という︑従 来 の数⼗倍 の効率で評 価 できる⽅ 法を開発 できました︵ 写真下 ︶ ︒ こ の⽅法 を ⽤ いてた くさんのク リ に つ いて 渋⽪のむ けやす さ を 評 価 した と こ ろ ︑当 時早⽣ の 有 望 なクリ と して 全国 で試 作を開始 したば か りの ﹁ぽ ろたん﹂ が と てもむ け やす いこ とがわかりました︒﹁ニホング リは渋⽪がむけな い﹂ と い う 常 識を覆 す ⼤発 ⾒ でした ︒ この⽬標を達成 する には ︑﹁渋 ⽪ が むけない﹂ とされてい るニ ホングリの 中か ら ︑多少 な りと

(12)

写真 渋⽪がむけやすい「ぽろたん」「ぽろすけ」とむけにくい「丹沢」 渋⽪ がむけやす い ニ ホ ングリ として ﹁ ぽ ろ たん﹂ を 発⾒ しま したが︑渋⽪がむけやすいクリ を皆 さ ん に 広 くお届 け す る ため には ﹁ぽ ろたん ﹂ とは収穫期が 異な る品種 な ど︑も っ と 多 く の 渋⽪がむけやすい品種 を育成す る必要 が あ り ます ︒そ こで ︑ ﹁ぽろたん﹂の持って いる﹁渋 ⽪がむけやすい﹂性質 は果たし て遺伝するのか︑といった 点に ついて 確 認 する ため に ︑﹁ぽろ たん﹂ を ⽣ ん だ 組合せや ﹁ぽろ たん﹂ を 親に使った 組合 せに よ る交配 を ⾏ い ︑そ れら の 交配 で 得られ た ⼦ 供 達 につ い て 調査 を ⾏いました ︒ その結果 ︑ ﹁ 渋⽪ がむけやす い ﹂性質 は ⼀つ の 遺 伝⼦で 決ま り ︑﹁ 渋⽪ がむ けや すい ﹂遺伝⼦を両親 から引き継 いで ⼆ つ 揃 った時に 渋⽪がむけ やすくな る こ と が 分か り ま し た ︒ ニホン グ リの 中に は ︑﹁ぽろた ん﹂以 外 にも ﹁渋⽪ がむ けやす い﹂遺 伝 ⼦ を 持っ て い る品種 は ありますが ︑ いず れも 遺 伝 ⼦ を ⼀つ しか持 っ てい ない ため︑ ﹁ニホングリは 渋⽪がむけな い﹂と 考 え ら れて いた ので す ︒ そして ︑ この調査 に⽤ いた ﹁ぽ ろたん ﹂ を⽣んだ 組合 せの中か ら︑﹁渋⽪ が むけやす い﹂ク リ の 第 2弾 と な る ﹁ ぽ ろ すけ ﹂が 誕⽣し ま し た ︒︵ 写真 上 ︑ 9 ⾴ 写真下 ︶

渋⽪

伝の

解明

ぽろ

誕⽣

(13)

斎藤 寿広

品種育成研究領域 ナ シ ・ ク リ 育 種 ユ ニ ッ ト ⻑ ⽣産者、消費者をはじめ、皆さん から「イイネ」がもらえるような、 ニホンナシとクリの品種開発を⽬指 して、 これからも精進いたします。

さい

﹁ぽろすけ﹂は﹁ ぽろたん﹂ より 1 週 間 程 度早 く 収穫 できま すの で ︑ ﹁ぽ ろ た ん﹂と組 み合 わせて栽培すること で 渋⽪がむ けやす い 果 実 の供 給期間 を広げ ることができます︵左図上︶︒ また ク リ が 結 実す るに は 他 品 種 の花粉の受 粉 が必要ですが ︑ ﹁ぽろたん﹂と﹁ ぽろす け ﹂ は お互いに 受 粉 可能 なので ︑ 両 品 種を 栽 培 した園地 から は渋⽪ が むけや す い果実だけを 収 穫 す る ことがで きます︵左図 下︶︒ ﹁ぽろたん﹂と﹁ ぽろす け ﹂ が 今後のクリ産業に 少 し でも お役 に⽴つことを切に願って い ます︒

「ぽろすけ」と「ぽろたん」の収穫期

品 種

8⽉

9⽉

ぽろすけ

ぽろたん

収穫果実は

全て

渋⽪がむきやすい

(14)

⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*⌒*

した︒する と両者に差はなかっ たの です ︒ つま り ︑ み つ ⼊ り リ ンゴの秘 密は︑⽢さで はなく ⾹ りの⾼さ に あ ったので す︒みつ ⼊りした部分は 細 胞と細胞の隙 間が⽔分で 満 たされて いるため 酸素が不 ⾜気味となり ︑⾹りに 関係する成分の代謝が変わる ︵嫌気呼吸 ) こと で︑み つ ⼊り リンゴ特有の⾹りが⽣ まれます︒ みつ ⼊り は ︑ ⾒ た ⽬を 蜜 の よ う に装わせるだけでなく︑ 華や かな ⾹りを醸 し だ す こ と で ︑リ ンゴのおいしさをバージョン アップさせていたのです︒ リン ゴ の み つ は 収 穫 直 前 に なって初め て ⼊ る もの なので 樹 上で完 熟 した 証にもなります︒ これもまた︑み つ ⼊りリンゴが 好まれる 理由と 考 えら れます︒ ﹁ふじ﹂や﹁紅 ⽟ ﹂ ︑ ﹁北⽃﹂ などにはみつが ⼊ りますが ︑ ﹁王林﹂や﹁ジ ョ ナゴ ールド﹂ には⼊ り ま せ ん ︒ 品種 の特性 と ⾔えます ︒これはこれ で ⼗ 分に おいしいリンゴです︒ 編集後 今回の 特集は ︑農研機構 イチ オシの果樹 ニ ュー フ ェ ー ス の 紹 介︒これ から農研機 構 の顔に なっ て い く 品 種 だと ⾃負してい ます︒新し い 品 種 を 作るために 親とし て 利 ⽤ する 品種の選 定や ︑ たくさん の 品 種候 補 の中 か ら ﹁これ は ﹂というものを 選び 出 す﹁ ⽬ ﹂ が 重 要 で す︒ 最近 は果 樹でも ゲ ノム 情報 など の 先端 的 な研究 成 果 を 品種育成 に 役⽴ て られる時代に な っ てきまし た︒ 現在 ゲノム 情報 は どんど ん 蓄積 されて い ま す ので︑ こ れを 今話 題 の AI で処理 し て新品種育成 に 応⽤すれば ︑ ⼈ 間 が 思 いつ かな い奇抜 で 斬新で 優れ た新 品 種 が 作出され る か もしれ ま せん︒ ︵具 体 的 にどんな フ ル ーツ かは 分から り ませ んが︶ ︒ 意外 にそ んな未来はすぐ 近く に 来 て い る かもし れ ません︒ ︵ア ダ ム UU ︶

【質問】

リンゴのみつ⼊りは、本当に⽢〜い蜜

が⼊っているのですか?

物とお

の質問コーナー)

回答

回答、企画連携室 吉岡 博⼈ みつ⼊りしたリンゴ は ⾒た ⽬にも お いしそうです が︑本 当に蜜 が ⼊ってい るわ けで は ありま せ ん ︒ みつ⼊り は︑果 実 の 細胞 に 吸 収され な か っ た ⽔分や 糖 分 が 細胞 と細 胞の隙 間 ( 細胞間 隙 ︶にた ま って⽔ 浸状 になった もので︑こ の 部 分が特に⽢い わけではありま せん︒ 中央農業 研 究 センターの ⽥中福代さんたちは︑⾹料会 社 で 訓練を受 け た 検査員 の 皆 さんに ︑ み つ の⼊った リンゴ と⼊ っていないリンゴを⾷ べ ⽐べて も ら い まし た︒ まず︑ ⾹りを⽐較すると ︑み つ⼊り リンゴ の ⽅ が フル ー テ ィーや フ ロ ーラ ル︑ ス イ ーテ ィ ー な どと表現される 華 やかな⾹り が⾼ い こ と を 突 き ⽌め また︒ 次に⿐ を ノ ー ズク リッ プで つ まんで ⾹ り の 影響 を排 除し て ︑ 味そ のも のを較べても ら い ま AI

(15)

お知らせ

Fruit & Tea Times No.3

果樹茶業研究部⾨ニュース第3号 (平成 29年 8⽉1⽇ 発⾏)

編集・発⾏:国⽴研究開発法⼈ 農業・⾷品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部⾨ 事 務 局:企画管理部 企画連携室 TEL 029‐838 ‐6447

■ 公開セミナー「果樹の新品種育成と新たな育種技術の開発状況」

近年、育種年限の⻑い果樹においても、ゲノミックセレクションなどの次世代育種技術を活⽤した スマート育種の実⽤化に向けた取り組みが進められています。公設研究機関、⼤学、国⽴研究開発法 ⼈の果樹研究者を中⼼に毎年開催してきました「果樹バイテク研究会」では、これらの状況を踏まえ、 果樹の新品種育成と新たな育種技術の開発状況についての公開セミナーを開催することになりました。 ⾏政、普及組織、⽣産者、⽣産者団体、種苗業者、⺠間企業、果樹のバイテク研究や育種に興味のあ る⽅等にも参加していただき、これらの取組についてご理解を深めていただければ幸いです。全国か ら幅広い分野の皆様の参加をお待ちしています。 ⽇ 時 平成29年11⽉7⽇(⽕) 13:00〜15:00 (当⽇の15:30〜17:30に同会場で「バイテク研究会」のポスターセッションが開催されますが、こちらは⾮公開です。) 会 場 松⼭市内 主 催 国⽴研究開発法⼈農業・⾷品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部⾨ 愛媛県農林⽔産研究所果樹研究センター プログラム 1. 果樹の新品種育成とDNAマーカー開発 1. 愛媛県におけるカンキツオリジナル品種の育成とブランド戦略 岡本 充智 (愛媛県農林⽔産研究所果樹研究センターみかん研究所) 2. ゲノム科学でみかんに含まれる健康に良い成分を増やす−β−クリプトキサンチン− 藤井 浩 (農研機構果樹茶業研究部⾨) 3. リンゴのカラムナー樹形を探る−省⼒樹形のメカニズムと育種利⽤− 岡⽥ 和⾺(農研機構果樹茶業研究部⾨) 2. 植物の新たな育種技術 1. 植物のゲノム編集技術の最前線(仮題) 刑部 祐⾥⼦(徳島⼤学⽣物資源産業部) お問合せ・参加申込み 詳しくは、農研機構果樹茶業研究部⾨ 企画管理部企画連携室 果樹連携調整役 和⽥雅⼈kikaku‐fruit05@naro.affrc.go.jp 029‐838‐6451まで。

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ʻ凜夏ʼ(りんか)は地球温暖化に対応し、暖地でも安定⽣産できる早⽣のナ シ品種です。幸⽔と同時期に収穫できます。 http://www.naro.affrc.go.jp/patent/breed/0400/0415/049528.html

参照

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今回の調査に限って言うと、日本手話、手話言語学基礎・専門、手話言語条例、手話 通訳士 養成プ ログ ラム 、合理 的配慮 とし ての 手話通 訳、こ れら

(独)土木研究所寒地土木研究所 ○正 員 角間 恒 (Ko Kakuma) (独)土木研究所寒地土木研究所 正 員 岡田慎哉 (Shinya Okada) 宮地エンジニアリング(株) 正 員

本稿 は昭和56年度文部省科学研究費 ・奨励