REF-P1を使った
在宅栄養ハンドブック
日本在宅医療学会理事長
城 谷 典 保
(医療法人社団鴻鵠会理事長、元東京女子医科大学教授)
経鼻ルート(胃、十二指腸、空腸) PTEG (経皮経食道胃管挿入術) PEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術) または PEG-J,PEJ, Jett-PEG 手術的空腸ろう造設ルート 第
1
章 流動食を投与するルート 2 第2
章 投与の手順 3 第3
章 チェックポイント 9 第4
章 こんな時はどうするの? 12 第5
章 よくある質問 14 「経管栄養」とは、チューブを通して直接胃や腸に栄養(流動食など)を送 りこむ方法のことです。病気や高齢で「かむことができない」「うまく飲み 込めない」など口から食事を十分にとれない時に必要な栄養を摂ってい ただく方法です。その際、チューブは鼻の穴や胃・腸にあけた小さな注 入口(胃ろう、腸ろう)などから体内に通します。 経管栄養で使う流動食(栄養剤)の多くは液体です。ただし液体のまま では、人によって胃食道逆流を起こしたり、下痢になったりする場合も あります。 そこで最近では、こうした副作用を予防するために流動食に粘度(とろ み)をつける方法が広まっています。これを「半固形化」と呼びます。 流動食を半固形化する方法はいくつかありますが、このハンドブックで は「REF-P1 (レフ・ピーワン/粘度調整食品)」という商品を使って半固形 化する際の手順や注意点を解説します。 本書がご自宅で経管栄養を安全に続けるための一助になれば幸いです。 監修 : 日本在宅医療学会理事長城 谷 典 保
(医療法人社団鴻鵠会理事長、元東京女子医科大学教授)C O N T E N T S
流動食を投与するルート
チューブが体内を通るルートにはいくつか種類があります。 下の図の点線を赤ボールペン等でなぞり、 チューブがどのように挿入されているか把握しておきましょう。 栄養補給ルート : チューブの先端位置 : 胃 ・ 小 腸 造 設 日 : 月 日 交換予定日 : ① 月 日 交換予定日 : ② 月 日 交換予定日 : ③ 月 日 チューブ製品名 : メーカー名 : チューブのサイズ : Fr. (フレンチ)第 章
1
はじめに
どのタイプか最初に確認しておきましょう。
病院から1/3~1/2 カテーテルチップ型 シリンジ 水 膿盆 はさみ 接続用チューブ 注入用 ボトル 栄養素がバランスよく含まれていて、食事 の代わりになります。医薬品扱いのもの、食 品扱いのものがあり、容器もさまざまです。 流動食と合わせることで、トロッとした半固 形化状態にします。ペクチンを水に溶かした 液状の製品です。 石けんで手を洗う。 意識や体調を確認する。 チューブの破損や抜けがないか確認する。 ※胃の内容物(残留物)も確認 ※あらかじめバッグなどに入っている クレンメを閉める。 流動食を 注入用ボトルに入れる。 流動食をつるす。 ベッドの頭側を30~90度 上げる。 滴下筒を指でゆっくり押しつぶして、滴下 筒内に1/3~1/2程度流動食を充填する。 クレンメを開け、チューブの先端まで流動食 を満たす。 クレンメを閉める。 1日の投与回数 : 朝 ・ 昼 ・ 夜 1回の投与エネルギー : kcal
/
回 1日の投与エネルギー : kcal/
日 流動食製品名 : 流動食メーカー名 :第 章
2
投与の手順
病院から用意するもの
事前の準備
流動食(栄養剤) 器 具 REF-P1 必要に応じて (投与速度を 調整する器具) クレンメ 滴下筒 (ドリップ チャンバー) (液を止めたり流し たりする開閉器具) クランプStep
1
1
1
2
2
3
3
4
4
5
5
6
6
7
7
8
8
9
9
10
10
➡P 9 チェックポイント ➡P 9 チェックポイント適切な滴下 滴下停止 接続チューブ 注入用バッグチューブ 接続チューブ 注入用バッグチューブ
Step
2
流動食を投与する前に、まずREF-P1を使います。 REF-P1には容器によって2つのタイプがあります。 お使いのREF-P1のタイプに合わせて注入しましょう。 袋の中身をいったんシリン ジに移してから注入します。 REF-P1を開封 し、シリンジで吸 い上げる。 チューブの接続 口にシリンジの 先 端をしっかり 差し込む。 チューブの接続 口に手を添えな がら、REF-P1を 注入する。 シリンジを外す。 チューブの洗浄 チューブにシリンジで水(20ml)を 注入し、チューブを洗浄する。 容器先端のスパウトを直接チュ ーブに差し込んで注入します。 透明キャップを『カ チッ』と音がするま で回した後、さらに 回転しながらキャッ プを取り外す。 容器の上部にスパ ウト先端部があるこ とを確認する。 チューブの接続口に REF-P1のスパウト 口をしっかりと差し 込む。 REF-P1を逆さにし て、チューブの接続 口に手を添えながら 注入する。 袋をつぶしたまま 外す。 REF-P1 注入後、チューブを洗浄したら、すぐに流動食を投与します。 声をかけ投与開始を伝 える。 流動食側のチューブと接 続チューブとをつなぐ。 クレンメをゆっくりと緩め て滴下する。 異常がないか様子を見る。 決められた時間内に投 与を完了してください。 あなたの投与時間は 分以内です。 ●お医者様へ● チューブ先端の留置が 胃の場合は60分以内、 小腸(十二指腸・空腸)の 場合は30分以内で完了 するよう、ご説明をお願 いします。 流動食を投与し終わったら、水を通してチューブを洗浄します。 投与終了後もしばらくは同じ姿勢で安静を保ちましょう。 クレンメを閉める。 チューブを外す。 チューブにシリンジで水 (2 0 m l)を注 入し、チュ ーブを洗浄する。 栓がある場合は栓を閉める。 ●水分補給は流動食の 投与30分以上前に行 ってください。 ●薬の投与がある場合、 流動食と一緒に投与し ないでください。 体の痛みや吐き気がない か尋ねる。 後片付け・器具の洗浄を 行う。 終了後もしばらく同じ姿 勢を保つ。REF-P1の注入
パウチタイプの場合 スパウト付きタイプの場合 注 意 注 意2
2
2
2
3
3
3
3
4
4
4
4
5
5
2
2
2
2
3
3
4
4
4
4
5
5
1
1
1
1
1
1
1
1
Step
3
流動食の投与
Step
4
チューブの洗浄・後片付け
フタをまわし て開けます 接続部分が濡れて いると抜けやすく なってしまいます しっかり押し込 んで接続します 逆さにします 袋をツブしたま まはずします 液が戻ってこな いように注意し てください3
3
➡P10 チェックポイント ➡P 9 チェックポイント ➡P12 トラブル対応 スパウト ➡P 7 投与スケジュール ➡P11 チェックポイント1日の合計エネルギー : kcal
1日の合計水分量 : ml
時
時
時
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
ml
kcal
kcal
kcal
朝
水分含有量
水分含有量
水分含有量
昼
夜
一日の投与スケジュール
REF-P1
チューブ洗浄
薬投与
チューブ洗浄
水分量合計
流動食
追加水
(必要な場合)kcal
エネルギー合計
投与した流動食が逆流する危険性を減らすために、 投与する時と投与後しばらくの間、姿勢は30~90度 の楽な角度を保って下さい。 姿勢により床ずれの危険性がある方は担当医師又は 看護師の指示に従ってください。 胃内に流動食が残っている状態で投与すると、 逆流の危険性が高くなります。 流動食が残っていないか、シリンジ等で吸い出 してみて下さい。 詳しくは担当医師又は看護師から説明をお聞きください。 残留が見られる場合には投与を控え、60分ほど様子を見ましょう。 お腹にガスがたまっていたら、 チューブを開放してガスを抜いてください。 時間やタイミングを守らないと、流動食の逆流などの危険性もあります。 以下のポイントに注意して投与しましょう。 ● 水分補給はREF-P1投与の30分以上前に行う。 理由 : 30分あれば十分水が胃から排出され、 REF-P1の効果を妨げないため。(腸の場合も同様) ● REF-P1投与後すぐに流動食の投与を開始する。 理由 : REF-P1が胃から排出されてしまう前に流動食を投与しないと、 胃内で半固形化しないため。(腸の場合も同様) ● 決められた時間内に流動食の投与を完了する。 理由 : 胃内投与は60分以内、小腸内投与は30分以内に完了しないと、 REF-P1が排出されてしまい、半固形化しないため。 ● チューブの洗浄やお薬の投与用の水は20ml程度にする。 理由 : 量が多いと、流動食の粘度が下がり、逆流しやすくなるため。 ● 流動食は、開封前は室温で保管する。(冷蔵する必要はありません。) ● 使用する際は常温で投与する。(加温する必要はありません。) ● 流動食を投与用ボトルに移し替える場合は、衛生的に取り扱う。 ● 開封後は使い切る。 ● 流動食を水でうすめて投与しない。 ● 決められたもの以外を流動食に混ぜない。
第 章
3
チェックポイント
体 位 : 角 度 : 度 投与後姿勢を保つ時間 : 胃残留物確認方法 : 減圧方法 : 流動食投与時間 : 分 病院から 病院から投与時・投与後の姿勢
投与前に胃の内容物を確認
投与について
流動食の取扱い
注 意 ● 決められた投与速度で流動食を投与する。 ● おなかが張ったり胃内に残留がある時は、 投与を控えて60分ほど様子を見る。 ● 胃内に残留がないのにおなかが張る時は ガス抜きを行う。 ● 必ず上体を起こした姿勢(30~90度)で投 与する。 投与後も60分程度はその姿勢を保持する。 お薬は温湯に溶かすなどして投与します。 投与のタイミングや溶かし方は、お薬の種類によって異なります。 詳しくは担当医師又は看護師から説明をお聞き下さい。 ❶カップに入れた約55℃の温湯20mlの中に 1回分の薬を入れてかき混ぜ、10分間自然 放置します。 ❷10分後には錠剤やカプセル剤は溶けているので、 その懸濁液をよく混ぜてシリンジに吸い取り経管 投与します。 お薬の用法・用量については、担当医師または看護師にご相談ください。 お薬の種類 経管栄養を行っている際には予期せぬトラブルが起こることもあります。 トラブルが起こらないように予防を心がけましょう。 予防を行っても改善しない場合は担当医師にご相談ください。 おなかが張ったり、吐き気がある場合、 投与中に嘔吐した場合はすぐに流動食の投与を中止します。 経管栄養を行っている時によく見られる症状です。 服用している薬の副作用で起こる場合もあります。 脱水症状を引き起こす場合があるので十分な水分投与を心がけましょう。 ● REF-P1を毎食時に投与する。 ● 決められた投与量を守る。 ● 投与容器を清潔に保つ(1回ごとに洗浄を行う)。
第 章
4
こんな時はどうするの?
お薬について
トラブルが起こった際の対応について
下 痢
吐 き 気 、嘔 吐
お 薬 の 溶 か し 方 例 参考 予防方法の一例 予防方法の一例 薬を溶かす温湯の量 : ml 薬投与タイミング : 病院から● クレンメを一度全開にして、流動食 が流れる事を確認してからもう一 度投与速度を調整する。 ● 胃内がガスで充満している場合は ガス抜きを行う。 ● シリンジで少量(20ml程度)の水を チューブに通して洗浄する。 REF-P1は流動食中のカルシウムイオンと反応して流動食を半固形化させます。 多くの流動食と反応することが確認できていますが、一部のカルシウムイオンが 少ない流動食とは反応しません。ただし、そのような場合でも、少量の牛乳を加え ることで反応することもあります。詳しくは担当医師にご確認ください。 すぐに粘度がついてしまい、流動食がボトルなどから滴下しなくなります。 シリンジで投入する事は可能ですが、細いチューブの場合、押し出すのに強い 力が必要ですので、特別な指示がない限り避けてください。 シリンジで少量(20ml程度)の水をチューブに通して洗浄 してください。 どうしても汚れが取れない時は、担当医師にご相談ください。 半固形化することで、流動食の胃や腸からの逆流が予防でき、また短時間での 投与も可能となります。その結果、患者さんご自身や看護・介護される方の拘束 時間を短縮することができます。また、流動食のろう孔(穴)からの漏れ、下痢を 低減するなどの効果も確認され、学会などで発表されています。 原料であるペクチン由来のオリ(沈殿物)です。 品質・効果への影響はありません。よく振ってご使用ください。 ペクチンは天然物なので、オリ(沈殿物)の量も一定ではありません。 保管は室温でお願いします。