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生体磁場計測を目的とした高温超伝導

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 横 澤 宏 一

学 位 論 文 題 名

生体磁場計測を目的とした高温超伝導SQUID 磁束計の      高感度化に関する研究

学位論文内容の要旨

  生体磁場 計測システムは、人間の脳や心臓がその活動に伴い発生する磁場を体表面上で 多点同時計 測するシステムである。生体から発生する磁場は極めて微弱であり、磁気セン サ にはSQUID(超伝導量子干 渉素子)磁束計が使われている。SQUIDを用いた生体磁場計 測は、@神 経細胞の活動電位の伝搬や心筋の刺激伝導など、生体の電気生理学的な活動を 実 時間で計測できること、 ◎信号源の推定が可能で、その結果をMRIや超音波診断装置 などの画像 と重ね合わせることにより、解剖学的な活動部位が推定できること、◎無侵襲 であること の特徴がある。近年、生体磁場計測による臨床医学や生理学の研究が盛んにな り、例えば 脳磁場計測による脳外科手術の術前検査や脳機能のマッピング、心臓磁場計測 による刺激 伝導系や心筋梗塞部位の推定などが行われている。

  現在普及 しつっある生体磁場計測システムのほとんどは、金属系の超伝導体で構成され るSQUIDを用いている。しかし、冷媒として液体ヘリウ ムを必要とするため、ランニン グコストが かかること、取り扱いが煩雑であること、低温槽が大型になることなど、広範 な普及を妨 げる問題点がある。一方、YBa2CU30エ等に代表される酸化物超伝導体を用い た 高温 超伝 導SQUID磁 束計 は、 液体 窒素 を冷 媒と す るこ とができる。しかし、金属系 SQUID磁東計に比べてまだ雑音が大きく、感度の向上が 主要な技術課題とされている。

本 論文は、将来型の生体磁 場計測システムの開発を目指し高温超伝導SQUIDの感度を向 上すること を目的とした実験的検討に関するものである。

  本論文は 全6章から構成される。第1章では序論として生体磁場計測システムの特徴を 述 べている。また、生体磁 場計測システム用センサとしての高温超伝導SQUID磁束計の 有 用性 と問 題点 にっ い て触 れ、 本研 究の 目的 を導 き、 本論 文の 構成 を述 べて い る。

  第2章 は 本 研 究 の 背 景 で あ り、 第1章 を補 足し て金 属系SQUID磁東 計、 高温 超伝 導 SQUID磁束計、及びこれらを用いた生体磁場計測システ ムについて、動作原理、構造の 例、研究の 現状、解決すべき技術課題等を説明している。特に多チャンネル生体磁場計測 シ ステムのセンサとして用 いられる高温超伝導SQUID磁 束計に関して、その高感度化を 実現するた めには環境雑音磁場の低減と磁東計固有雑音の低減が重要な技術課題であるこ とを述べて いる。ここで、環境雑音磁場の低減には2点間の空間差分磁場を計測するグラ ジオメータ が有効であり、生体磁場計測には磁場の方向と同一方向の空間差分を得る軸型 グラジオメ ータが望ましい。また、磁束計固有雑音を低減させるためには、検出コイルか らSQUIDへの磁東伝達効率を向上させる 必要がある。

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  第3章か ら 第5章が 研究 の内容で ある。 第3章 でfま 従来の 高温超伝 導SQUID磁束計で 構成が困難であった軸型グラジオメータを実現する磁東計方式として「直結帰還形グラジ オメータ」の提案と評価実験にっいて述べている。

  直結帰還形グラジオメータは雑音検出マグネトメータと信号検出マグネトメータからな り、雑音検出マグネトメータの帰還磁束を、その検出コイルとともに信号検出マグネ卜メ ータの検出コイルにも帰還することで信号検出マグネトメータの環境雑音磁場を除去する 方式である。両マグネ卜メータ間の接続は常伝導配線でよく、グラジオメータとしての空 間差分方向やべースライン長も任意という特長がある。また、各々のマグネトメータには 検出コ イルとSQUIDを1枚の基 板上に薄 膜一体 形成した 形状が 適してい るが、こ れは高 温超伝 導SQUID磁 東計で 最も一般 的な形状 である 。っぎに、提案した「直結帰還形グラ ジオメータ」の動作を確認するための原理実験として、金属系超伝導体で製作した検出コ イルとSQUIDから なる磁 東計を2組用い てグラ ジオメー タを構 成し、磁 気シール ドルー ム中で 計測実験 を行い、 環境雑 音磁場が1Hzで1/5 50、50Hzのピ ークで1/120に低減す る結果を得た。また、心臓磁場、脳磁場(聴性誘発反応)の計測実験により、生体磁場計測 が可能な性能を有することを確認した。本章の最後には、本方式への適用を目的とした高 温超伝導SQUID磁束計の試作にっいても述べている。

  第4章、第5章では 磁束伝 達効率の 向上を 目的とし た、「Double‑Pickup‑Coil型磁束 計」の提案と評価実験にっいて述ぺている。第4章はその前半部分で、構造の提案と検出 コイル 及びSQUIDの形状 の検討に 関する部 分であ る。Double Pickup Coil型磁束計は高 温超伝導体の単層膜で製作が可能で再現性や歩留まりが良好な直結型磁束計の一種であり、

バイ ク リ スタ ル 基 板 上の1つ のSQUIDに 検 出コ イ ルが2つ接続 する構造 を持っ 。SQUID のインダクタンスがジョゼフソン接合を除いてすべて検出コイルとの磁気結合に寄与する ため、磁束計の実効面積が大きくなるという特長をもっている。ここで、検出コイルにつ いては常伝導金属を用いて原寸大のモデルを製作し、実効面積を指標として実験により適 切な 形 状 を求 め た 。 一方、SQUIDにっ いてはバ イクリス タルSrTi03基 板上に 成膜した YBa2Cu30x薄膜を加工して製作し、これを液体窒素中で動作させて検出コイルとの磁気結 合係数を実測した。

  第5章はDouble Pickup Coil型 磁東計 の試作と 評価実験に関する部分である。まず、

SrTi03基板上 に電極用 のAu薄膜 が積層し たYBa2CU30エ薄 膜を成 膜する方 法と、積層膜 を加工 して検出 コイルやSQUIDを 形成する 方法に ついて述 べてい る。その 後、第4章で 検討した結果に基づぃた、以下のようなDouble Pickup Coil型磁束計用デバイスの試作を 行った 。検出コ イルは10mm角のSrTi03基 板上に磁 場検出面 積27 DID12をも っワッシャ 型で形 成し、SQUIDとの 磁気結合度を上げるために低インダクタンス(6.18 nH)となっ ている 。高温超 伝導SQUIDはス卜 リップラ イン構 造をしており、バイクリスタル線に平 行な低 インダク タンス(96 pH)のス リット 状のホー ルからなっている。検出コイルとの 磁気結合係数の計算値は0.94である。っぎに、試作したデバイスを液体窒素で冷却し、駆 動回路に接続して磁束計として動作させ、既知の磁場を与えて実効面積を実測した結果、

最高水 準の0.42 IDD12の 値を得た 。これ らの結果 より、低雑音SQUID実現のためのデバ イス形状とパラメータが確定された。

  最 後 の 第6章 は 結 諭 で あ り 、 主 に 第3章 か ら 第5章 の 内 容 が 要 約 さ れ て い る 。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    栗城真也 副査    教授    山本克之 副査   教授   伊福部   達 副査    教授    狩野    猛

学 位 論 文 題 名

生体磁場計測を目的とした高温超伝導 soUID 磁束計の      高 感度化に 関する研 究

  生体磁場計測システムは、人間の脳や心臓からその活動に伴い発生する磁場を体表面上 で多点同時計測するシステムである。近年、生体磁場計測システムを用いた臨床医学や生 理学の研究が盛んになり、例えば脳磁場計測による脳外科手術の術前検査や脳機能のマッ ピ ン グ 、心 臓 磁場計 測による 刺激伝導 系や心 筋梗塞部 位の推 定などが 行われ ている。

  現在普及しつっある生体磁場計測システムのほとんどは、微弱な磁気信号を検出するセ ン サとして 金属系 の超伝導体で構成されるSQUID(超伝導量子干渉素子)を用いている。

しかし、冷媒として液体ヘリウムを必要とするため、ランニングコストがかかること、取 り扱いが煩雑であること、低温槽が大型になることが生体磁場計測システムの普及を妨げ る要因であった。一方、YI3 a2CU30エ等に代表される酸化物超伝導体を用いた高温超伝導 SQUID磁束計は、液体窒素を冷媒とすることができ、上述の問題点が解決できる。しかし、

高 温 超 伝導SQUID磁 束計 は 金 属 系SQUID磁 束 計に 比 べ てま だ 感 度が 低く 、感度 の向上 が 主要な技 術課題 とされて いる。 低減すべ き雑音 には環境 磁場雑音 とSQUID磁束計の固 有 雑 音 があ る 。本論 文は、こ の2つ の雑音 を低減し て高温 超伝導SQUIDの感 度を向上 す ることを目的とした実験的検討に関するものである。本論文の主な成果は、以下にまとめ られる。

(1)環境磁場雑音の低減

  環 境磁場 雑音の低 減には、2点間の空間差分磁場を計測するグラジオメータを用いるこ と が有効で あり、 生体磁場システムにはべースライン(差分をとる2点間の距離)が30mm 以上の軸型グラジオメー夕(磁場の方向と同一方向の空間差分を得るグラジオメー夕)が適 し ている。 そこで 、従来の 高温超 伝導SQUID磁束計 で構成が 困難で あった軸型グラジオ メ一夕を実現する磁束計方式として「直結帰還型グラジオメー夕」を提案している。これ は雑音検出用と信号用のニつのマグネトメータからなり、雑音検出マグネトメータの帰還 磁束を、その検出コイルとともに信号検出マグネトメータの検出コイルにも帰還すること     ‑ 88―

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で信号検 出マグネトメータの環境磁場雑音を除去するものである。各々のマグネトメ一夕 に は、 その 検出 コ イル とSQUIDを1枚 の基板上に薄膜一体形成した形状が適しており、

これは高 温超伝導SQUID磁束計で実現 できるものである。さらに、「直結帰還型グラジ オメー夕 」の動作を確認するために、金属系のNb/Al0エ/Nb SQUIDで1チャンネル直結帰 還型グラジオメータを試作し、駆動回路を含めた固有雑音4.5 UDo//‑Hzのマグネトメ一夕 2個を使用して磁気シールドルーム内 で作動させ、1Hzで1/5 50、50Hzのピークで1/120 の環境磁 場雑音の低減効果を観測した。さらに、構成したグラジオメータを用いて心臓磁 場、脳磁場(聴性誘発反応)を計測し、生体磁場計測が可能な性能を有することを確認してい る。

(2)磁束計固有雑音の低減

  検出コ イルからSQUIDへの磁束伝達 効率を向上させ、磁束計の実効面積を大きくする こ とで 固有 雑音 が 低減 できることか ら、バイクリスタル基板上の1つのSQUIDに検出コ イルが2っ接続する「Double Pickup Coil磁束計」を提案してしヽる。その原理に基づき、

磁束計の 実効面積を指標として、検出コイルの形状について常伝導金属を用いたスケール モデル実 験により検討し、最適な形状を決定した。また、バイクリスタルSrTi03基板上に 形成したYBa2CU30エ膜を加工して、ストリップ線状の超伝導膜とバイクリスタル線に平行 なスリッ ト状のホールからなる高温超伝導SQUIDを製作し、これを液体窒素中で動作さ せている 。以上の実験で得られた知見に基づいて「Double Pickup Coil磁束計」デバイス を試作し、既知の磁場を与えて実効面積を実測した結果、最高水準値である0.42D1II12の大 きな面積 が得られ、本磁束計の有効性を確認した。また、この磁束計では、検出コイルと SQUIDが基板上で対称的に配置できるため周辺の磁場の歪が等方的である特長を有し、そ のため(1)で検討した直結帰還型グラジオメータを構成するのに適した構造であることを指 摘している。

  以上を 要するに、著者は生体磁場計測を目的とした高温超伝導SQUID磁束計の重要課 題である高感度化に関して研究を行い、新方式の提案により有効な知見を得たものであり、

生体工学に寄与するところ大なるものがある。

  よって 著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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