• 検索結果がありません。

痙直型脳性まひによる軽度肢体不自由者の長期トレーニングに関する研究 : その有効性と問題点

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "痙直型脳性まひによる軽度肢体不自由者の長期トレーニングに関する研究 : その有効性と問題点"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

痘直型脳性まひによる軽度肢体不自由者の長期トレーニングに関する研究

ー そ の 有 効 性 と 問 題 点

-Research on the long-term training of the slight crippled due to spastic cerebral palsy - From the viewpoint of the validity and problem

-井 上 貴 江 ぺ 松 下 亮 * ぺ 松 原 圭 一 * ぺ 和 田 規 孝 付 * 本 , 田 中 弘 之 * * * * 本

Takae INOUE * ,Ryou MATSUSHITA ** ,Keiichi MATSUBARA *** , Noritaka WADA **** ,Hiroyuki TANAKA *****

*鳴門教育大学研究生

(1989

年度修了生) * Naruto University of Education Research Student *キ鳴門教育大学大学院

2

0

0

6

年度修了生 * * Ehime Prefectural Police **松山工業高校 * * *Matsuyama Technical High School **牢ネ鳴門教育大学大学院 * * * * Graduate School, Naruto University of Education *****鳴門教育大学生活・健康系(保健体育)教育講座

* * * Facu1ty of Hea1th and Living Sciences, Naruto University of Education

鳴門教育大学学校教育学部

〒772-8502 鳴門市鳴門町高島字中島748

Naruto University of Education

748Nak司jima,Takashima, Naruto-cho, Naruto-shi, Tokushima772-8502, Japan

平 成19 (2007)年11月9日受理 (Received on November9,2007) キーワード:痘直型脳性麻庫,股関節,長期筋力トレーニング,等速性運動 Keywords : spastic cerebral palsy, hip joint, long-term muscle training, isokinetic exercise

I はじめに

身体障害者に対してリハビリテーションが行なわれる 時,医学的判断(診断)から彼らの障害の状況をそれぞ れに考慮し,日常生活の状況も考慮しながらリハビリ テーションのプログラムが組まれるのが一般的である。 健常者が骨折や脱きゅうなどの外傷の治療の一貫として 機能回復のリハビリテーションを行なう場合とは異なり, 障害者のリハビリテーションの場合は「機能回復」だけ で は な く 障 害 の 重 度 化 の 予 防J, I体力の維持Jなど, いろんな意味合いを含んでおり,それは彼らの障害の状 況や時間的経過によっても様々に変化する。これらのこ とを含め,井上ら1)2)によって障害者に対するリハビリ テーションの「継続の重要性」がたびたび指摘されてき た。しかしながら,特に成人に達した身体障害者の場合 には,さらに日常生活の状況が多様化していることが想 像され,短期間のリハビリテーションを行なうことさえ ますます困難になっているのが現状であろう。 脳性まひによる肢体不自由者においては,幼少時に適 切なリハビリテーションがほどこされていた場合であっ ても,成人に達して加齢にともなって「二次障害」を訴 える者が多いが,これはその障害の特性に加えて,彼ら の日常生活の状況の多様化も大きな要因であろうと思わ れる。 佐藤・落合3)は「脳性まひでは動きの障害から,動く ことが少なくなり,その結果,関節拘縮,筋廃用萎縮, 心肺機能低下,易疲労性等が発生し,さらに動きが障害 されるという悪循環が形成されやすい。このような悪循 環が起こらないように,必要に応じて維持的訓練ができ, また二次障害の治療ができるような 成人脳性まひ者の 健康管理体制の確立が望まれる」と述べている。 これらのことから 脳性まひによる肢体不自由者の成 -15

(2)

-(伸展/屈曲)のアイソキネティック・テストを行ない, 継続したトレーニングがどの動きで適しているか7)8)9) を検討した。そしてこの 4つの動きの中で,股関節の動 作が比較的安定していた(障害の症状が軽い)こと,中 でも股関節(外転/内転)は被験者が最も適度なトレー ニングの感覚を感じていたこと肌1)を根拠にトレーニン グ部位を股関節(外転/内転)と決定した。それから試 験的に左右両股関節の CYBEX770によるアイソキネ ティック・トレーニング肌3)と日常生活時のフリーウエ イトによる筋力トレーニングを数日間継続的に行って, 被験者の身体および障害に影響がないことを確認した。 その上で改めてアイソキネティック・トレーニングと日 常生活時の筋力トレーニングを開始し,定期的にアイソ キネティック・テストを実施した。 評価項目ー最大トルクでは,図1に一例を示したが,左 右両股関節の外転及び内転のすべてにおいて,角速度の 問で有意差 (pく0.0001)が認められた。また,最大トル ク比でも左右両股関節外転と内転のすべてにおいて角速 一 ←2005年年年年6 月1月1 月月 ト明叩 --22000044 6 1 ー ー

x

--

2003fi: 1

l

f

f

2

4

1

4

12

-

-

e

-

2005年6月 一日-2004年11月 一 令-2004年6月 一×ー2003年11月 10

2

4

16

1

4

2

2

20 18 16 ( 2 Z )

九 州 ム ヱ

υ

2

2

20 18 ( E Z )

h m

υ 帆酬咽 人に達してからの継続的なリハビリテーションがとても 重要である4)5) 6)といえるが しかし一方で継続的なリ ハビリテーションが可能だ、ったとしても, リハビリテー ションのプログラムが熟慮されたものでなければ,継続 することで,かえって訓練自体が過度になり,彼らの身 体(障害)に悪い影響を与えかねないということも想像 できる。 本研究では車いすや松葉杖を使用していない自力歩行 可能な痘直型脳性まひによる軽度下肢不自由者を対象と して,彼らに筋力トレーニングを行ない,時系列でその 変化を調べ,長期に継続してトレーニングを行なうこと の有効性はどこにあるか また継続することで起こる問 題点を探ることを目的とする。 被験者 スポーツ等の運動経験のない痘直型脳性まひによる軽 度下肢不自由者・女性 1名。 2 トレーニング処方 1 ) トレーニングの種類 トレーニングは CYBEX770によるアイソキネティッ ク・トレーニングと 日常生活時におけるダンベルもし くはアンクルウエイトによる筋力トレーニングとした。

2

)

日常生活時の各トレーニング動作 CYBEX770によるアイソキネティック・トレーニング 時と同じ動作を行い, トレーニング部位の負荷は,ダン ベルの重量およびアンクルウエイトの重量で調整を行 なった。

3

)

トレーニングの強度と時間 予備実験として CYBEX770による股関節運動におけ るアイソキネティック・テストを実施した。アイソキネ ティック・テストの角速度は600 ,1200 , 1800 とした。 この結果に基づき ,CYBEX770による股関節の外転,内 転による筋力トレーニング時の角速度は 120度とし,回 数は 10回とした。 4) トレーニングの頻度は 一週あたり 3回とした。 5) トレーニングの期間は 2003年11月から開始し 2005年6月まで継続して行なった。 トレーニング効果の評価 CYBEX770に よ る 股 関 節 運 動 に お け る ア イ ソ キ ネ ティック・テストを 2003年11月, 2004年6月, 2004 年11月, 2005年6月に実施した。筋力の評価項目は最 大トルク,最大仕事量,平均パワー,総仕事量であった。 法 方

E

3 12 10 60 120 180

角速度(度/秒)

左股関節外転(上図)及び内転(下図)における最大 トルクの推移 図1 -16 -結果と考察 トレーニング部位の決定にあたっては,まず予備実験 として被験者に CYBEX770による膝関節(伸展/屈曲), 足関節(底屈/背屈に股関節(外転/内転),股関節 皿

(3)

みとめられた項目について ほとんどは角速度間でみと められたものであるがトレーニング開始以降,数値が上 昇する傾向が見られた項目は 最大トルクの右股関節外 転および、内転,右股関節外転及び内転,最大トルク比の 右股関節外転,最大トルク発揮角度の左股関節外転,最 大仕事量の右股関節外転,最大仕事量比の右股関節外転, 平均パワーの左股関節内転 平均パワー比の左股関節内 転,総仕事量の右股関節外転であった。しかし項目の中 には数値が下降しているのではなく, トレーニング開始 当初からほとんど変化していない項目もあり,さらなる トレーニングの継続によって上昇も期待できるであろう。 以上のことから数値の傾向として安定性に欠ける部分 もみとめられるものの 脳性まひによる軽度下肢不自由 者に対する 1年8ヶ月にわたっての継続した股関節の筋 力トレーニングは何らかの効果があると考えられる。し かしながら,今後トレーニングを継続し,さらにその効 果を高めるにあたっては トレーニングする側の障害者 の体調等を随時留意するとともにトレーニング内容を常 度の間で有意差 (p<O.OOOI)が認められた。 評価項目-最大仕事量では,図2に一例を示したが, 左右両股関節の外転及び内転のすべてにおいて,角速度 の問で有意差 (p<O.OOO1)が認められた。また,最大仕 事量比でも左右両股関節外転と内転のすべてにおいて角 速度の問で有意差 (p<O.OOOl)が認められた。 評価項目一平均パワーでは,図3に一例を示したが, 左右両股関節の外転及び内転のすべてにおいて,角速度 の間で有意差 (pく

0

.

0

0

0

1)が認められた。また,平均パ ワー比でも左右両股関節外転と内転のすべてにおいて角 速度の問で有意差 (pく

0

.

0

0

0

1)が認められた。 評価項目-総仕事量では,図 4に一例を示したが,左 右両股関節の外転及び内転のすべてにおいて,角速度の 間で有意差 (pく

0

.

0

0

0

1)が認められた。また,総仕事量 比でも左右両股関節外転と内転のすべてにおいて角速度 の問で有意差 (p<O.OOO1)が認められた。 トレーニングの期間中 それにともなう痛みや過度の 疲労などの被験者からの申告は特になかった。有意差の

-e-

2

0

0

5

6

月 一日

2

0

0

4

1

1

-

2

0

0

4

6

月 ーー

x

-

-

2

0

0

3

1

1

1

4

8 6

1

2

1

0

(﹀﹀)

-b

v

¥

安俳

同 月 同 月 月 1 月 1 p n V 4 E ・ 戸 H U 4 E ・ 年年年年 F h d a 品 aaa ・ n 毛 U i l t ・ n u n u n u n u n u n u n u n u n J ι n t n , ι n L

+ 手

1

2

1

0

4 8 6

(

)

K

/ --ぷ〉

--

¥ ゲ -- ¥ ¥ 宅 4 - 、町 ノ ー ー ー ー ー ー ー ー ー〆、

h 、ご~

-e-

2

0

0

5

年年年年

6

1

月月

1

月月 一ー日令

-

-

2

2

0

0

0

0

4

4

6

1

-

x

-

-

2

0

0

3

iF

1

4

1

4

8 6

1

2

1

0

( ﹀ ﹀

)

l

b

て 宮 川 町

-e-

2

0

0

5

6

月 一日

2

0

0

4

1

1

-

2

0

0

4

6

月 一

x

-

-

2

0

0

3

1

1

2

1

2

6

4

1

0

8

(

)

K

4

6

0

1

2

0

1

8

0

角速度(度/秒)

左股関節外転(上図)及び内転(下図)における平均 パワーの推移 図3 -17

-6

0

1

2

0

1

8

0

角速度(度/秒)

左股関節外転(上図)及び内転(下図)における最大 仕事量の推移

2

図2

(4)

レーニングを長期継続するために最も重要なことであり, そのことがトレーニングを長期継続の有効性を高めてい くことにもつながると考える。 (1) 井上貴江・佐々木弘幸・清水安希子・田中弘之:痘 直型脳性麻痘による軽度肢体不自由者の筋力トレーニ ングに関する研究,鳴門教育大学実技教育研究,第15 巻, 47 -50, 2005. (2) 井上貴江・佐々木弘幸・清水安希子・田中弘之:痘 直型脳性麻療による軽度肢体不自由者の筋力トレーニ ングに関する研究(第 2報) -継続に向けての課題一, 鳴 門 教 育 大 学 実 技 教 育 研 究 第16巻, 41-44, 2006. (3) 佐藤一望・落合達宏:二次障害の予防と治療, Medical Rehabilitation. No.35. 70 -77. 2003. (4) 五味重春:脳性麻痘(第 2版) -リハビリテーショ ン医学全書15- 医歯薬出版, 1989. (5) 松尾 隆:脳性麻痩と機能訓練-運動障害の本質と 訓 練 の 実 際 - (改訂第2版),南江堂, 2002. (6) 竹川徹・股祥沫・安保雅博・宮野佐年:変形性膝関 節症に対するセラバンドを用いた運動療法の効果-膝 伸展・屈曲同時訓練についての検討 ,体力科学, 52 巻, 3号, 305 -312, 2003. (7) 広川俊二:距離・時間因子情報による脳性麻庫児の 歩行分析,医用電子と生体工学, 25巻, 2号, 17-24. 1987. (8) 土屋邦喜・佐竹孝行・太田剛・池遷修二:大型三次 元床反力計を用いた歩行の解析-脳性麻痘治療におけ る適用に関して一,整形外科と災害外科, 38巻, 4号, 1801 -1805, 1990. (9) 小塚直樹・橋本伸也・宮本重範・小神博・横井裕一 郎 ・ 仙 石 泰 仁 ・ 三 島 与 志 正 : 痘 直 性 脳 性 麻 痩 児 の crouching gaitとその定量化に関する研究,理学療法学, 19巻, 4号, 371-375, 1992. (10) 昇地勝人:姿勢と脚ラテラリティーの相互関係,リ ハビリテーション心理学研究, 12巻, 39-46, 1983. (11) 江原義弘:異常歩行をどうみるか, J.Clin. Rehab., 299 -304. Vo1.5. No.3. 1996. (12) 浅海岩生:CYBEXを使用した痘性筋の評価,第3 回中国ブロック理学療法士学会学会誌, 49-51,1989. (13) 平岡浩一・秋山稔・渡部政幸・新町景充・川上司: CYBEX6000を用いた痘性評価の検者内信頼性および、 妥当性の検討, P Tジャーナル, Vo1.30, No.229-132. 1996. (14) 菅原憲一・内田成男・椿原彰男:脳卒中片麻痘患者 の麻痩側筋出力特性に関する研究, P Tジャーナル, Vo1.29, No,.1 64 -66, 1995. 参考・引用文献

V

-一9日--22000054年年年年16月1月1 月月 一-。×--2200004361

1

1

j

j

&ニーーー・・ーーー

i - t ?

60

5

0

30 20

4

0

(

)

10 60 120 180

角速度(度/秒)

左股関節外転(上図)及び内転(下図)における総仕 事量の推移 同 月 同 月 月 1 月 1 n h v 唱t R 0 4 1 年年年年 r o a 斗 a 斗 q u ム n u n u n u n u n u n u n u n u n J ι n t n J ﹄ n f ﹄ @ 目 。 × ﹃ 一 一 一 60

5

0

30 20

4

0

︿

)

図4 に精査することが重要14)である。

ま と め

脳性まひによる軽度下肢不自由者に対して1年8ヶ月 にわたって左右両股関節のCYBEX770によるアイソキ ネティック・トレーニングと日常生活時のフリーウエイ トによる筋力トレーニングを行なった。その間,被験者 はトレーニングにともなう痛みや過度の疲労を訴えるこ とはなく, トレーニング内容を精査することで,比較的 長期間であってもトレーニングの継続が可能になること が示唆された。結果として不安定な要素はまだ残るが, さらにトレーニングを継続することで「維持的訓練」の 意味合いを含み,不安定要素の解消が期待される。今後 の問題点としては トレーニングの長期化によって起こ る経時的変化の停滞が憂慮されるところではあるが,本 研究ではあくまでもトレーニングの「長期継続」に主眼 をおきたい。 トレーニングする側の障害者の体調等を常 に考慮しながらトレーニング内容を精査することがト 町 -18

参照

関連したドキュメント

ところで、ドイツでは、目的が明確に定められている制度的場面において、接触の開始

前章 / 節からの流れで、計算可能な関数のもつ性質を抽象的に捉えることから始めよう。話を 単純にするために、以下では次のような型のプログラム を考える。 は部分関数 (

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

(自分で感じられ得る[もの])という用例は注目に値する(脚注 24 ).接頭辞の sam は「正しい」と

LF/HF の変化である。本研究で はキャンプの日数が経過するほど 快眠度指数が上昇し、1日目と4 日目を比較すると 9.3 点の差があ った。

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

優越的地位の濫用は︑契約の不完備性に関する問題であり︑契約の不完備性が情報の不完全性によると考えれば︑

は,医師による生命に対する犯罪が問題である。医師の職責から派生する このような関係は,それ自体としては