類義動詞の史的研究 -「おく」「すえる」を中心に-

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− 183 − 類義動詞の史的研究一「おくJ

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すえる」を中心に一 教科・領域教育専攻 言語系コース(国語) 岡 田 陸 人 1.研究の目的 本研究は、類義動詞であると考えられる、「お く」と「すえる」の意味・用法の史的研究を行 うものである。 現代語における「おくJと「すえるjは、近い 意味の言葉として用いられる。例えば 「教室の 隅に材朋を置く」と「教室の隅に本棚を据える」 は近い意味であるとしづ印象を受ける。しかし 「おくJよりも「すえる」の方が、より強く固 定する印象も受ける。また、違う言葉である以 上、何かしらの意味の違いがあることが考えら れる。それを文学作品の用例ぞ明代語での用例 を採集、検証することで、この「おく」と「す えるJの違いを明らかにするべく本研究を行う。 また時代ごとに用例を採集、考察する際には、 上代時代、中古甘寺代、中世時代、近世時代とい う大まかな歴史に分類して考察を行う。 2.論文の構成 第一章現代語における「おくJ1"すえる J

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設 ける」の意味 第二章 「おく(置く)Jの意味・用法の変化 第三章 「すう(据う)Jの意味・用法の変化 3.論文の概要 第一章では、まず、「おくJ

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すえるJ

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設ける」 の現代語における意味を考察する。それぞれの 語を比較しながら検証することで、類義動詞で あるそれぞれの意味の違いを見つける。その際 指導教員 原卓志 に、対象物が具象物であるか、抽象物であるか、 また同じ対象物に対して「おくJrすえるJr設 ける」を用いる場合、どの様な違いが生まれる か等を、検証し考察する。 第二章では、古典語における 「おく(置く)J の意味や用法を、考察する。歴史的文学作品は、 上代時代は『万葉集』、中古時代からは、『竹取 物語~ ~,伊勢物語~ ~大和物語Jl ~平中物語~ ~土 佐日記Jl~崎蛤日言叫『源氏物語』、中世時代は『宇 治拾遺物語Jl~平家物語~~義経剖『御伽草子』、 近世時代は『近松門左衛門集』を中心にして、 用例を採集した。これらの文学作品の用例から、 ます明象物の用例を採集し、どのような対象物 が、用いられているかを採集する。その際に、 複合動詞的用法も合わせて採集する。それを基 に、「おく(置く)Jの意味を考察してして。ま た、その付近の文脈からどのような意味が適し ているかを合わせて検証してし1く。さらにその 用例数を集計することで、その時代には、どの ような意味が中心として「おく(置く)Jが用い られているかを検証する。この結果、「おく」に は大きく二つの意味が考えられ、「対象物を(手 を使って)位置づける。J という意味と、 「対象 物をそのままの状態にする。放置する。」とし1う 意味で、あった。例えば、「ご飯を食卓に置く」の ようなものは前者の意味になり、「妹を家におい てくるJのようなものは後者の意味になる。さ らに複合動詞的用法の場合、多くが後者の意味

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− 184 − になると考えられ、「みおくJや「書きおく」等 がこれにあたる。 第三章では古典語における「すう(据う)Jの 意味や用法を、考察する。歴史的文学作品は、 上代時代は『万葉集』、中古時代からは、『竹取 物語,~ W伊勢物語~ w大和物語~,

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土佐日言国『晴 蛤日言叫『源氏物語』、中世日制吃は『宇治拾遺物 語~ w平家物語~ w義経記~

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御伽草子』、近世時 代は『近松門左衛門集』を中心にして、用例を 採集した。これらの文学作品の用例から、まず 対象物の用例を採集し、どのような対象物が、 用いられているかを採集する。その際に、複合 動詞的用法も合わせて採集する。それを基に、 「すう(据う )Jの意味を考察してして。また、 その付近の文脈からどのような意味が適してい るかを合わせて検証してして。さらにその用例 の対象、据える場所、大まかな意味をまとめ、 イ吏用方法を表に示すことで、その時代には、ど のような意味が中心として「すう(据う )Jが用 いられているかを検証する。この結果「すう(据 う)Jは、「対象を作法などの決まりに従って、 ある場所に位置させる」、というその意味を基本 的な意味とし、そこから、「対象物をしっかりと 固定するjと意味が解釈できる用例がかくにん できた。例えば「神酒を据うJでは、「対象を作 法などの決まりに従って、ある場所に位置させ る」の意味であるが、「闘を据う」では基本的な 意味から派生し「対象物をしっかりと固定する」 の意味に解釈できる。また「引き据う」は「固 定する」意味からさらに派生し動かないよう に押さえつけるJとしづ意味だと考えられる。 4.今後の課題 本研究では、時間の制約上「設ける」の古典 語「設く」や「構える」の古典語「構うJにつ いてまとめることができなかった。これも近い 意味を持つ言葉で、あると考えられるため、今後 はその用例についても、同じように現代語にお ける意味の確認と、古典語における意味、また その変遷について、研究を行し、たいと考える。 特に 「設けJは古典語の「設けの君」とし、った、 古典特有の用法があるように、少なからず官味 の変遷があると考えられるため、古典語の「設 く」がどのように変遷して現代語の 「設けるJ の意味に近くなっていくのかを研究する必要が ある。 また今回の古典語の用例採集は、全備句に用 例数が少ないため、古典語における「おく(置 く)Jと「すう(据う)Jの意味が、正しし吃断 言することができない。特に、上代と近世の文 学作品の取り上げた作品数自体が少なく、その 結果用例数がかなり少なくなってしまった。今 後の研究を進め

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いくためには、各時代の用例 採集を行う作品数を増やし、より性格な意味や 用法、またその変化について研究を行っていき たいと考える。 また特に古典用法においてだが、自身の解 釈と他者の解釈が異なる可能性も考えられる。 今後はアンケート調査なども行い、客在舶句な視 点を持ちながら、それぞれの語の持つ意味につ いて検証していきたい。 今回の研究では、上代、中古、中世、近世の 意珠を大きな意味としてまとめることがで、きた ため、今後はその意味から派生したと考えられ る意味や用法を細分化し、より正確に語の持つ 意味を確認することが必要である。その際に、 近い意味を持っと考えられる語が出てきた場合、 その語についても用例を採集し、その語の持つ 意味を確認しながら研究を行う。そうすること で、その語の特性を見つける事ができるのでは ないかと考える。

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