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「東洋大学オリンピック・パラリンピック特別プロジェクト研究」について 利用統計を見る

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「東洋大学オリンピック・パラリンピック特別プロ

ジェクト研究」について

著者

川口 英夫

著者別名

KAWAGUCHI Hideo

雑誌名

工業技術

42

ページ

19-21

発行年

2020-02

URL

http://doi.org/10.34428/00011446

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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られ、この障害された血管に水分や塩分を補給しただけで は、細胞障害の回復は難しいと考えられる。 図6、暑熱ストレスに弱い生体内の組織と細胞 そこで我々は、熱中症を根本的に予防することを目標に、 40℃での環境下でも形状変化・死滅しない血管内皮細胞 を誘導できる化合物の探索研究を実施し、その結果、熱に よる血管内皮細胞の細胞死を防ぐ事ができる、化合物を2 種類発見した(日本国内特許が成立)。いずれの化合物も 柑橘系果皮由来の成分で、食品としての適応性・安全性も 確認されている成分であることから、これら成分を配合した 飲料、食品またはサプリメントなどへの製品化応用が期待さ れる、産官学連携事業を推進している(図7)。 図7、熱中症予防成分候補の広報活動と産学連携研究 これら研究は学術的な特徴を持つだけではなく、その成 果が日本酷暑の中で開催される東京オリンピックの観戦者 に対するより効果的な暑熱対策案として提案することがで き、社会的にも非常に大きな意義を有している研究プロジ ェクトと考えている。またそれが実現された場合の経済効果 は多大なものであると予想され、さらに東洋大学では、「東 洋大学 Beyond 2020」を策定し、サスティナブルに社会に 貢献できる研究を推進している。今回発見した熱中症予防 候補の化合物は、酸化ストレスによる血管保護効果や脂肪 酸代謝亢進なども期待されていることから、熱中症という一時 的または季節的なターゲットのみならず、「健康寿命延長を 目指した超高齢者社会」への貢献も期待できると考えている 4.研究ブランディング事業の広報活動 2019年2月に東洋大学工業技術研究所と生体医 工学研究センターの合同でシンポジウムを開催し、京 都府立大学大学院生命環境科学研究科の松原斎樹教授 に環境建築学的立場からの熱中症予防対策について講 演をいらした結果、学内研究者のみならず、企業・自 治体からなどから多くの参加者が集った。 また同年3月に開催された、東洋大学オリンピック・ パラリンピック連携事業研究成果メディア報告会にて、 熱中症予防サプリメントの開発と、臨床試験の概要を報 告し、学内 HP のみならず、複数の新聞記事(産経新聞、 日経産業新聞)に取り上げられた。さらに本研究プロジ ェクトを学内外に発信する目的で、本学公式 HP に本ブ ラ ン デ ィ ン グ 研 究 事 業 の 記 事 を 掲 載 す る と と も に Facebook を開設し、情報発信を行っている。 URL: https://www.facebook.com/toyoresearchbranding.1/ 5.おわりに 生体医工学研究センターでは、得られた研究成果を 活用し、社会実装することで、Society5.0 が提唱する 社会的課題である健康な長寿社会の実現や小子高齢化 に伴って増加する社会コストの削減を目指している。 さらに、持続可能な開発目標 SDGs の一つである全ての 人に健康と福祉を届けることを目標に、産官学連携活 動を通じて社会が抱える課題の解決に向けて、研究開 発活動を継続していきたいと考えている。

Strictly Confidential. Copyright: Toyo Univ. All rights reserved.

暑熱スト レス 血管 肝臓 骨格筋 (赤筋) 特 に熱に弱い組織 エネルギー蓄積 栄養素の代謝 老廃物の解毒 酸素・ 栄養素運搬 血圧、 体液量調節 持久力運動 血管、肝臓、骨格筋を、熱の障害から守る 機能成分を探索研究し、アスリートサポート 製品、高齢者・オリンピック観戦者の熱中 対策製品を開発する。

◆ 熱に弱い私たち の臓器

八朔・ 夏みかん シークワーサー ラム肉 ココナッ ツ ① 柑橘果皮成分 ② カルニチン ③ 中鎖脂肪酸 細胞代謝学と暑熱ストレス感受性遺伝子に基づく、熱中症予防成分の探索研究

Strictly Confidential. Copyright: Toyo Univ. All right reserved.

熱中 症 対策研究(熱中 症 予防成分の探索と実 用 化) 熱中症予防食品・ 飲料の開発に着手 特 許成立: 「熱中症の予防、軽減及び/又は治療の ための組成物」 出願者:東洋大学 プレス発表: ①毎日新聞WEB(3/18/2018) ②日刊ゲンダイ紙面(3/30/2018) ③産経新聞紙面(7/17/2019) ④日経産業新聞紙面(9/10/2019) 商品開発予定企業: 1)冷菓会社・・アスリート 2)製薬会社・・建設業者 3)印刷会社・・高齢者 4)東洋大オリジナル商品

「東洋大学オリンピック・パラリンピック特別プロジェクト研究」について

Olympic/Paralympic Games Project, Toyo University

川口 英夫* 1.はじめに 本研究の目的は、生体が受ける暑熱ストレスを遺伝 子・細胞レベルから動物・人間の個体まで多階層的に解 析し、その研究成果を2020 年の東京オリンピック・パ ラリンピック大会までにアスリートの暑熱対策に適用 することである。また、副産物として、2020 年以降に熱 中症対策方法を活用した地域高齢者への社会実装、さら に診断機器等を『ものづくり』として実用化し社会に貢 献することも目的とする。この目的を達成するため、① 産学連携・社会実装を目指した『具体的な対処(コーピ ング)方法の開発』、とこれを支える②基盤的生命科学 研究に基づく『暑熱によるアスリートのパフォーマンス 低下』のメカニズム解析、の両面から研究を進めている。 この①、②に対し、これまでに次の研究成果を得た。 2.オリパラ事業の成果 1) 血管保護食品の開発とそのメカニズム解析(下記 a) が①、b)が②に相当): a) 血管保護食品の開発: 血管内皮細胞における脂肪酸代謝の重要性に着目 し、暑熱ストレスによる細胞障害を抑制する機能成 分を探索した。血管内皮細胞に 40℃の暑熱ストレス を負荷し、脂肪酸代謝に関係する各種のアゴニスト 活性を有する物質(10 種類)と共に培養した。その 結果、暑熱ストレスによる細胞死を抑制する物質と して3 種類の物質 A、T、P を見出した。これらは全 て植物由来の天然成分である。上記の成果を基に、特 許を出願し、企業との秘密保持契約・共同研究契約を 進めた。 さらに、2020 年にアスリートに実際に使っていた だくために必須である『ヒト介入試験』、すなわち実 際にヒトに上記の物質を食品として摂取していただ きその効果を検証する試験を実施する準備を進めた。 本試験の実施を最短で実現して研究を加速するため、 まずは外部委託による試験を実行すべく、物質 A を 1 日 16 mg 摂取できる食品(形状はカプセル:2 個/日 を経口摂食)を作成するとともに、30 ページに及ぶ 研究計画書を作成して外部委託機関の倫理審査を受 審し認可を得た。 b) 血管内皮細胞の暑熱ストレス応答メカニズムの解 析: 血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素(NO)は、 血管平滑筋を弛緩させ、血管の拡張に働く因子の1 つである。体に暑熱ストレスが加わった際、NO は血 管を拡張させ熱を体表から放出させ、体温を下げる ため、体が受ける暑熱ストレスを軽減する作用があ る。そこで、(ⅰ)暑熱ストレスが加わった際、どの ような時間経過で NO が血管内皮細胞から分泌され るか、(ⅱ)どのようなメカニズムで、暑熱ストレス はNO の合成・分泌を高めるのか、を検討した。生体 内での血管内皮細胞の環境を模擬するため、ベンチ ャー企業と共同開発した灌流式マイクロチップ細胞 培養システムを用いて研究を進めた。その結果、(ⅰ) NO の分泌には数十分間で生ずる短期増加と数時間 の長期増加の2 種類がある、(ⅱ)前者はCa2+/CM 系、 後者は VEGF 受容体を介する系であることが分かっ た。なお、a)の血管保護物質 P は上記(ⅱ)の VEGF 受容体を介する系のシグナルを増強するという報告 があるため、a)の研究と直接関連する可能性がある。 2) ヒトの暑熱ストレス耐性の獲得とそのメカニズム解 析(下記c)が①、d)が②に相当): c) ミストサウナを用いたヒトの暑熱環境順化: 家庭用ミストサウナを用いて暑熱実験環境を構築 し、その環境下において被験者に継続的な暑熱負荷を 与え、循環調節系・体温調節系に及ぼす影響を検討し た。具体的には、温度41.1±0.4 ℃、湿度88.7±0.5 %30分間の暑熱負荷を10日間与えた。その結果、特に 額・体幹部における発汗量が増加して熱放散が促進さ ***講演会から*** *生命科学部 生命科学科 -19- 1。はじめに 2 オリパラ事業の慮景

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れ、鼓膜温・心拍数の上昇度が抑制された。したがっ て、暑熱ストレスの繰り返し負荷により暑熱環境順化 が引き起こされたことが分かった。額・体幹部の発汗 量の増加は、熱に弱い脳などの重要な臓器の機能低下 を防ぐためと考える。 d) 弱熱ストレス負荷による細胞保護効果の発現: マウスから摘出したグリア細胞およびマウス海馬 細胞由来の株化細胞HT22 に暑熱ストレスを与えた。 この時、ヒートショック・プロテインであるHSP70・ HSP105 が培養温度依存的に mRNA もタンパク量も 増えることを見出した。さらに、弱熱ストレスを与え られた際に発現するHSP70 が、その後、強熱ストレ スに晒された際に細胞保護効果を示すことを見出し た。また、下記のg) に記す通り、暑熱ストレスを負 荷したマウス個体の脳でもHSP70 の発現が増加した。 a)の血管保護物質 T もこの HSP70 の発現を誘導す ることを別途確認している。一方、血管保護物質A でHSP70 の発現が低下したため、物質 A と T では作 用機序が異なると考えられる。これは、物質A と T の併用により血管保護効果を加算的に増強できる可 能性を示唆する。 3) 大学生・高齢者を対象とした具体的な対処(コーピ ング)方法の開発(下記e)、f)ともに①に相当): e) メンタルヘルス不調のコーピング手段の開発: アスリートへの適用を念頭に、大学生 113 名を対 象としたコホート研究(追跡調査研究)により、メン タルヘルス不調のリスクが高い人に提案するコーピ ング手段の開発を目的として、生活習慣(運動習慣・ 食事習慣)および栄養摂取状況を調べた。3 年目とな った本コホート研究の結果、運動習慣・運動意識、お よびいくつかの栄養素の摂取がコーピング手段とな り得ることが示唆された。 f) 地域住民の調査実施:ベースライン調査およびラポ ールの構築: 体力レベルの向上は、生活習慣病予防や健康寿命 延伸のみならず熱中症予防にも効果があると考えら れる。そこで、運動と食事の観点から体力レベル向上 を目指した健康づくり教室を、大学近隣のM 町在住 の中・高齢者21 名を対象に実施した。教室は 2018 年 5 月 11 日~9 月 14 日の隔週金曜 9 時 30 分~11 時 30 分に開催した(全8 回)。教室の内容は、ウォーキン グ班と調理班に分かれ、ウォーキング班が約 1 時間 のウォーキングを行っている間に、調理班が参加者 全員の昼食を準備し、最後に全員で昼食を摂るとい うものである。なお、ウォーキング班と調理班は、教 室ごとにランダムに決定した。その結果、教室前後で 食習慣は変化しないものの、体力レベルのうちタイ ムアップアンドゴー(3 m 歩行)と 600 m 歩行の記録 が教室前と比較して教室後に向上することが示され た。 4) 動物個体・細胞を用いた暑熱ストレス耐性の獲得と そのメカニズム解析(下記g)~ j)は②に相当): g) 動物個体を用いた脳の暑熱ストレス耐性の獲得と そのメカニズム解析: 暑熱ストレスの認知機能への影響を検討するため、 マウスの物体識別学習への影響と脳内の遺伝子発現 への影響を調べた。60 分間の 45℃の暑熱ストレスを 負荷したマウスは、新たな記憶形成過程に不可逆的 な障害を負うことが示唆された。さらに、脳内では HSP70 の遺伝子発現が有意に増加していたが、並行 していくつかのシナプス可塑性に重要な転写因子の 遺伝子発現が増加していることが分かった。 h) 暑熱ストレス応答マイオカインの探索: 暑熱状態下における骨格筋の変化を動物個体・細 胞レベルで明らかにすることを目的とし、動物モデ ルおよび細胞レベルで、(ⅰ)適切な暑熱条件の設定、 (ⅱ)暑熱に応答した骨格筋分泌タンパク(マイオカ イン)遺伝子発現量の変動、(ⅲ)血中マイオカイン の測定を完了した。この中で、暑熱ストレス依存的に 血中濃度が変動するマイオカインを同定したため、 現在、 特許申請を準備している。 i) ストレスに強い心臓の作成: 幼若心筋は低酸素状態などのストレスに耐性があ り、成熟心筋に幼若心筋の性質をもたらすことがで きれば、ストレスに強い心臓を作ることが可能にな る と 考 え る 。 エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク 因 子 で あ る SWI/SNF 様クロマチンリモデリング複合体、特に Baf60c は心筋の幼若状態の維持に働いていると考え られている。そこで、Baf60c の心臓での発現を制御 する領域をクローニングし、Baf60c の発現が転写因 「東洋大学研究オリンピック・パラリンピック特別プロジェクト研究」について

Olympic/Paralympic Games Project,Toyo University 川口 英夫

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れ、鼓膜温・心拍数の上昇度が抑制された。したがっ て、暑熱ストレスの繰り返し負荷により暑熱環境順化 が引き起こされたことが分かった。額・体幹部の発汗 量の増加は、熱に弱い脳などの重要な臓器の機能低下 を防ぐためと考える。 d) 弱熱ストレス負荷による細胞保護効果の発現: マウスから摘出したグリア細胞およびマウス海馬 細胞由来の株化細胞HT22 に暑熱ストレスを与えた。 この時、ヒートショック・プロテインであるHSP70・ HSP105 が培養温度依存的に mRNA もタンパク量も 増えることを見出した。さらに、弱熱ストレスを与え られた際に発現するHSP70 が、その後、強熱ストレ スに晒された際に細胞保護効果を示すことを見出し た。また、下記のg) に記す通り、暑熱ストレスを負 荷したマウス個体の脳でもHSP70 の発現が増加した。 a)の血管保護物質 T もこの HSP70 の発現を誘導す ることを別途確認している。一方、血管保護物質A でHSP70 の発現が低下したため、物質 A と T では作 用機序が異なると考えられる。これは、物質A と T の併用により血管保護効果を加算的に増強できる可 能性を示唆する。 3) 大学生・高齢者を対象とした具体的な対処(コーピ ング)方法の開発(下記e)、f)ともに①に相当): e) メンタルヘルス不調のコーピング手段の開発: アスリートへの適用を念頭に、大学生 113 名を対 象としたコホート研究(追跡調査研究)により、メン タルヘルス不調のリスクが高い人に提案するコーピ ング手段の開発を目的として、生活習慣(運動習慣・ 食事習慣)および栄養摂取状況を調べた。3 年目とな った本コホート研究の結果、運動習慣・運動意識、お よびいくつかの栄養素の摂取がコーピング手段とな り得ることが示唆された。 f) 地域住民の調査実施:ベースライン調査およびラポ ールの構築: 体力レベルの向上は、生活習慣病予防や健康寿命 延伸のみならず熱中症予防にも効果があると考えら れる。そこで、運動と食事の観点から体力レベル向上 を目指した健康づくり教室を、大学近隣のM 町在住 の中・高齢者21 名を対象に実施した。教室は 2018 年 5 月 11 日~9 月 14 日の隔週金曜 9 時 30 分~11 時 30 分に開催した(全8 回)。教室の内容は、ウォーキン グ班と調理班に分かれ、ウォーキング班が約 1 時間 のウォーキングを行っている間に、調理班が参加者 全員の昼食を準備し、最後に全員で昼食を摂るとい うものである。なお、ウォーキング班と調理班は、教 室ごとにランダムに決定した。その結果、教室前後で 食習慣は変化しないものの、体力レベルのうちタイ ムアップアンドゴー(3 m 歩行)と 600 m 歩行の記録 が教室前と比較して教室後に向上することが示され た。 4) 動物個体・細胞を用いた暑熱ストレス耐性の獲得と そのメカニズム解析(下記g)~ j)は②に相当): g) 動物個体を用いた脳の暑熱ストレス耐性の獲得と そのメカニズム解析: 暑熱ストレスの認知機能への影響を検討するため、 マウスの物体識別学習への影響と脳内の遺伝子発現 への影響を調べた。60 分間の 45℃の暑熱ストレスを 負荷したマウスは、新たな記憶形成過程に不可逆的 な障害を負うことが示唆された。さらに、脳内では HSP70 の遺伝子発現が有意に増加していたが、並行 していくつかのシナプス可塑性に重要な転写因子の 遺伝子発現が増加していることが分かった。 h) 暑熱ストレス応答マイオカインの探索: 暑熱状態下における骨格筋の変化を動物個体・細 胞レベルで明らかにすることを目的とし、動物モデ ルおよび細胞レベルで、(ⅰ)適切な暑熱条件の設定、 (ⅱ)暑熱に応答した骨格筋分泌タンパク(マイオカ イン)遺伝子発現量の変動、(ⅲ)血中マイオカイン の測定を完了した。この中で、暑熱ストレス依存的に 血中濃度が変動するマイオカインを同定したため、 現在、 特許申請を準備している。 i) ストレスに強い心臓の作成: 幼若心筋は低酸素状態などのストレスに耐性があ り、成熟心筋に幼若心筋の性質をもたらすことがで きれば、ストレスに強い心臓を作ることが可能にな る と 考 え る 。 エ ピ ジ ェ ネ テ ィ ッ ク 因 子 で あ る SWI/SNF 様クロマチンリモデリング複合体、特に Baf60c は心筋の幼若状態の維持に働いていると考え られている。そこで、Baf60c の心臓での発現を制御 する領域をクローニングし、Baf60c の発現が転写因Sall4 によって抑制されること、また、変異型 Sall4 によってSall4 の機能が打ち消されることを生体と培 養細胞を用いて明らかにした。 j) 精神的ストレス(緊張・恐怖)による自律神経系へ の影響: 競技中の体温の変化は、骨格筋の運動によって起 こる物理的かつ局所的な熱産生にとどまらず、精神 的緊張からもたらされるストレス性の体温上昇を含 んでおり、このストレス性体温上昇の脳内メカニズ ムの解明は、競技中のパフォーマンスの向上のため 重要なテーマである。そこで、競技者が感じると思わ れる二つの精神的ストレス(周囲からのプレッシャ ーがもたらす精神的緊張、および「失敗するかもしれ ない」という恐怖)の脳内メカニズムを検討した。動 物実験により、精神的緊張は体温や生体リズムを司 る視床下部・背内側野に分布するニューロンの活動 を増加させることが分かった。一方、恐怖ストレスは、 視床下部より脳内では下位に位置する防衛反応のも う一つの中枢である中脳中心灰白質の活動を増加さ せることが分かった。 3.おわりに 今年度は研究分担者が個別に進めてきた研究につい て、相互の関連性が明らかになってきたため、その観点 からいくつかの研究成果をまとめて報告した。これらの 成果を総括すると、ほぼ予定通りの成果を得たと考える。 次年度以降、ヒトを対象とした介入試験の実施を始め、 着実に成果を積み上げたい。 <論文リスト>

1. Sakamoto A, Kato K, Hasegawa T, Ikeda S, An agonistic antibody to EphA2 exhibits antitumor effects on human melanoma cells. Anticancer

Res, 38, 3273 (2018)

2. Narita Y, Tsutiya A, Nakano Y, Ashitomi M, Sato K, Hosono K, Kaneko T, Chen RD, Lee JR, Tseng YC, Hwang PP, Ohtani-Kaneko R, Androgen induced cellular proliferation, neurogenesis, and generation of GnRH3 neurons in the brain of mature female Mozambique tilapia, Sci

Rep, Nov 15; 8(1): 16855 (2018) doi: 10.1038/s41598-018-35303-9

3. Iketani M, Sekimoto K, Igarashi T, Takahashi M, Komatsu M, Sakane I, Takahashi H, Kawaguchi H, Ohtani-Kaneko R, Ohsawa I, Administration of hydrogen-rich water prevents vascular aging of the aorta in LDL receptor-deficient mice, Sci Rep, Nov 14; 8(1): 16822 (2018) doi: 10.1038/s41598-018-35239-0

4. Yasuda H*, Kojima N*, Hanamura K, Yamazaki H, Sakimura K, Shirao T, Drebrin isoforms critically regulate NMDAR- and mGluR-dependent LTD induction, Frontiers in Cellular Neurosci, 12:330 (2018) *equally contributed as a first author

5. Bohn T, Rapp S, Luther N, Klein M, Bruehl T-J, Kojima N et al., Tumor immunoevasion via acidosis dependent induction of regulatory tumor-associated macrophages, Nature Immunol, 19:1319-1329 (2018) 6. Hanamura K, Kamata Y, Yamazaki H, Kojima N, Shirao T, Isoform-dependent regulation of drebrin dynamics in dendritic spines, Neurosci, 379:67-76 (2018)

7. Ishiuchi Y, Sato H, Komatsu N, Kawaguchi H, Matsuwaki T, Yamanouchi K, Nishihara M, Nedachi T 、 Identification of CCL5/RANTES as a novel contraction-reducible myokine in mouse skeletal muscle、Cytokine, 108:17-23 (2018)

8. Katano W, Moriyama Y, Takeuchi JK, Koshiba-Takeuchi K, Cardiac septation in heart development and evolution, Dev Growth Differ, 61(1), 114-123 (2019)

9. Hori Y, Tanimoto Y, Takahashi S, Furukawa T, Koshiba-Takeuchi K, Takeuchi JK, Important cardiac transcription factor genes are accompanied by bidirectional long non-coding RNAs, BMC Genomics, 19(1):967 (2018)

10. Moriyama Y, Koshiba-Takeuchi K, Significance of whole-genome duplications on the emergence of evolutionary novelties, Brief Funct

Genomics, 17(5):329-338 (2018)

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「東洋大学研究オリンピック・パラリンピック特別プロジェクト研究」について Olympic/Paralympic Games Project,Toyo University

川口 英夫

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