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γ-Aminobutyric Acid Transaminase(GABAT)アイソザイムの法医学的応用

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Academic year: 2021

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64 〔 東 女 医 大 誌 第54巻 第8号 頁

702~705

昭和59年8

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(GABAT)

アイソザイムの法医学的応用

東京女子医科大学法医学教室〔主任:阿部和枝教授〉 アキヤマ カツノリ ア ベ カ ズ エ 秋 山 勝 則 ・ 教 授 阿 部 和 枝 ( 受 付 昭 和59年5月28日〉

Medico-Legal Use of y-Aminobutyric Acid Transaminase (GABAT) Isozymes

Katsunori AKIYAMA and Kazue ABE

M.D. Department of Legal Medicine (Director: Prof. Kazue ABE)

Tokyo Women's Medical College

y-aminobutyric acid transaminase (GABAT) consists of the three di丘erentphenotypes GABA T,I

GABA T2 -1 and GABA T2 that were detected by starch gel electrophoresis and the enzyme specific staining procedures (]eremiah and Povey, 1981).

In this paper we present the data on the distribution of GABA T phenotypes using liver extracts of the total 118 unrelated individuals in the J apanese population and the GABA T isozymes investigated by using hair root extracts.

The gene frequencies of GABATl and GABAT2 in Japanese population were estimated as0.48and

0.52, respectively.

GABAT2 frequency of Japanese was significantly di丘erentfrom the frequency (GABATb0.44)of Europeans reported by Jeremiah and Povey.

It was shown that the GABAT isozymes investigated by using the extracts from five to ten hair roots have the genetic polymorphism of the GABA T phenotypes as found in the liver extracts

From the results, it was found that the GABAT isozymes which are detectable by hair roots could be applicable in the field of forensic medicine. 緒 扇 γ-aminobutyric acid transaminase (GABA T ;

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2.6.1.19)は, glutamic acidの脱カルボキ シル基反応により合成される中枢神経系の伝達抑 制物質γ-aminobutyricacid (GABA)の代謝に関 与する酵素として知られている1)2) 生体内における GABATの働きは, GABAと α-ketoglutaric acidをアミノ酸転移反応させ, succinic semialdehydeとglutamicacidを 生 成 させる酵素であり,補酵素としてpyridoxalphos -phateを必要とする3) 1981年, JeremiahとPovey4)は,主にヒト肝抽 出液を試料として,Tris/EDT A/MgClz/マ レ イ ン 酸bu妊er(pH 7.4)を用いたstarchgel電気泳動 法,およびGABAT酵素染色法により, GABAT が易動度の違いによる 3種 の 表 現 型GABAT1, GABAT2-1, GABAT2に分類されることを報告し ている また,彼らは,GABA T isozymeが常染色体上 に 対 立 遺 伝 子 と し て 存 在 す る こ と を 確 認 し た 上 で,白人種の肝抽出液60例からGABATの遺伝子 頻 度 を 検 討 し た 結 果 , GABATl二 0.56, GABAT2二 0.44であったと報告Lている. 今回,著者らは,肝試料を用いて日本人集団に おける GABATの遣伝子頻度,また,毛根鞘を用 いて法医学の分野である親子鑑定への有効性につ

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-702-いて検討を行なったので報告する. 材料と方法 1.肝試料 肝抽出液は,本学病理学教室の御好意により提 供された,疾患による形態学的な障害の少ないと 思われる肝切片約3gに等量の精製水を加えホ モジネートし, 40 C, 15, OOOG, 30分間遠心後,上 清を分離した.

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毛根鞘試料 毛根は,毛根鞘が付着しているもの5-10本を 採取した.毛根鞘は東洋櫨紙NO.3を用い12X8 m mを2つ折りにして毛根鞘を包み込み,これに 1滴の0.1%TritonX-100界 面 活 性 剤 溶 液 を 滴 下しサランラップで覆い,エアードライアイスで 瞬間的に凍結させ,使用時まで一700 Cの冷凍庫に 保存した. 3. Starch gel電気泳動法 i)GABATア イ ソ ザ イ ム の 検 出 に は , Jer -emiahとPovey4lの方法を用いた.すなわち, 0.1 M Tris, O. 01M EDT A, O. 01M MgClz, O.lM 無水マレイン酸 (pH7.4)をbridgebu任erとし, gel bu任erにはbridgebufferの5%希釈液を用 L

7こ また, gel bu妊erには3mM,cathode bufferに は0.4mMのpyridoxalphosphateをそれぞれ加 えた. ii)肝抽出液はWhatmanN o. 3濡紙に20μlを 吸収させ,毛根鞘抽出液は室温にて解凍したもの をstarchgelの陰極側に差し込んだ. iii)泳動条件は, 9V /cm, 16時 間 低 温 室 内 (40 C)にて泳動を行なった. 4. GABAT酵素染色法 泳動後のstarchgelを2枚にスライスし,割面 に つ い てJeremiahとPovey叫による 2種 の GABAT酵素染色を行なった. A. GABAT酵素染色法① a) O. 5M Tris/HCl bu妊er(pH 7.5) ; 25ml b)γ-aminobutyric acid ; 200mg c) L-glutamic dehydrogenase (GLUD) ; 50u d) 0.1加tα-ketoglutaricacid (pH 7.5) ; 0.4 ml 一703 65 e) NAD ; 20mg f)MTT; 5mg g) PMS ; 5mg h)1.5% agar solution (560 C) ; 25ml 以上を混合し, agar平板を作成してgel面にの せ,3TC, 1時間incubate後,判定を行なった. B. GABAT酵素染色法② a) O. 5M Tris/HCl buffer (pH 7.5) ; 10ml b) succinic semialdehyde ; 0 .1m l c) glutamic acid ; 20mg d) DL-alanine ; 100mg e) glutamic pyruvic transaminase (GPT) ; 80u f)lactate dehydrogenase (LDH) ; 150u g) NADH ; 20mg 以上を混合し, Whatman NO.1

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慮紙に吸収さ せ, gel面にのせ,サランラップで覆い,3TC, 1 時間incubate後, UV lightを 用 い て 判 定 を 行 なった. 結 果 と 考 察 GABATの 活 性 は , 緒 言 で 述 べ た よ う にm VIVOにおいて, GABAとα-ketoglutaric acidか らsuccinicsemialdehyde(コノ、ク酸セミアルデヒ ド〉と glutamicacidを生成させる酵素(GABAT 酵素染色法①〕であるが, in vitroにおいては可逆 的 な 反 応 も 示 し , succinic semialdehydeと glutamic acidか らGABAとα】ketoglutaric acidを生成する (GABAT酵素染色法②). Fig. 1は, GABAT酵素染色法①を用いた肝抽 出液の泳動像である.GABA T isozymeの hom-ozygousで あ る GABATlとGABAT2は そ れ ぞ れ複数の小さなspotから成り, heterozygousで ある GABAT2-1はその複合したspotから構成さ れる dimerenzymeである.しかし,そのspotの 数は個人差も存在し,明確に判定できなかった. JeremiahとPovey4lは,ヒトの各臓器から得ら れた抽出液を用いてGABAT活性の検出を試み た結果,肝,脳,腎,H革,心筋,脊髄,空腸から は強いGABAT活性が検出され,肺,牌,骨格筋, 胎盤,赤血球,白血球からは活性が見られなかっ たと報告している.

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+ 66 2 -1 1 2 2 2 -1 Fig. 1 Electrophoretic patterns of GABAT phenotypesusing human liver extractsmigrating toward anode 2 - 1 Fig.2 One family study of GABAT phenotypes usinghair root extracts 今回,著者らは毛根鞘を試料としたGABAT

isozymeの検出を試みた結果, GABAT酵素染色

法①により検出が可能であり, GABAT isozyme

の組織特異性はなく,肝試料と同様の泳動像が得 られた.Fig.2は,家系調査の l例である.

また,JeremiahとPovey4lは,舞踏病患者死体 から得られた脳抽出液と非舞踏病患者死体の脳抽 出液を用いて GABAT活性と GABAT isozyme

について比較検討を行なった結果,両者の聞に何 ら相異は認められなかったと報告している. しかし,今日,生体内に数多く存在する酵素が, 「何故, isozymeを有するのか」とL、う疑問につい て明確な解答はなされていない.おそらく,

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人類 が発生した時点では,いかなる酵素もはじめは電 気泳動的に 1種類のパターンであったものが, ウ イノレス性疾患,風土病,あるいは突然変異等の影 響を受け,変化し,自然淘汰の末にisozymeが形 Table 1 Distribution of liver GABA T phenotypes andgene frequenciesin ]apanesepopulation x'=O.002 d.f. = 1 p>O.95 GABAT'=O.48 GABAT'=O.52 成されたのではないだろうか引」という推測が存 在するのみである.また,

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生体は決して無駄をし ない」という生物経済学の立場に立ってGABAT isozymeを 考 え る と , 長 い 人 類 の 歴 史 の 中 で GABATのisozymeが,何らかの原因,あるいは 何らかの目的のために形成されたと推測した場 合,一概に舞踏病との関係を断ち切ることはでき ず,舞踏病と GABAT isozymeとの関係は今後の 研究課題であると思われる.

Table 1に日本人における肝GABAT isozyme

の各表現型の分布と遺伝子頻度を示した.観察値 か ら 得 ら れ た 遺 伝 子 頻 度 はGABAT'=0.48, GABAT2=0.52であった.カイ 2乗検定を行なっ たところが=0.002となり,有意の差は認められ ず,今回観察された比率がノ、ーディワインベルグ の原理からみた任意交配集団から期待されると比 率と一致することが認められた.

また,日本人におけるGABATisozymeの遺伝 子 頻 度GABAT2二 0.52は, JeremiahとPovey4l に よ っ て 報 告 さ れ た 白 人 種 の 遺 伝 子 頻 度 GABAPニ0.44より若干高値を示し,人種差の存 在することが推定された. 今回,著者らは,肝および毛根鞘を試料とした GABA T isozymeの検討を行なった.毛根鞘を試 料としたGABATの泳動像からは肝試料と同様

にGABAT',GABAT2-1, GABAT2が観察され, また,遺伝子頻度の偏りが少ないことより,法医 学の分野である親子鑑定に有用性があると思われ る. 結 語 γ-aminobutyric acid transaminase CGABA T) は,JeremiahとPovey(1981)のstarchgel電気 泳 動 法,お よ びGABAT酵素染色法により,

GABAT', GABAT2-1, GABAT2の3種の表現型

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-に分類されることが報告された. 今回,著者らは, 118例の肝抽出液を用いた日本 人におけるGABAT isozymeの分布と,毛根鞘を 試料としたGABAT isozymeの検討を行なった ので報告する. 日 本 人 に お け る GABATlとGABAT2の そ れ ぞれの遺伝子頻度は0.48と0.52であり, Jeremiah とPoveyに よ る 白 人 種 の 遺 伝 子 頻 度 CGABAr=0.56, GABAT2ニ0.44)とは若干の 差異が認められた. また,毛根鞘抽出液を用いた GABAT isozyme の検討を行なった結果, 5 -10本の毛根を用いる ことにより,肝抽出液と同様のGABATの泳動像 が確認された. 以上のことから,毛根鞘を用いたGABATiso -zymeの検出は,法医学の分野である親子鑑定に 705 67 有効性があると思われる. 文 献 1)Krnjevie, K. and S_ Schwartz: 1s y -aminobutyric acid an inhibitory transmitter? Nature, Lond 2111372-1374 (1966) 2) Roberts, E. and K. Kuriyarna: Biochemical -physiological correlations in studies of the γ -aminobutyric acid system. Brain Res 8 1-8 (1968) 3)松田友宏 生化学実験講座11.アミノ酸代謝と生 体アミン(下).第l版東京化学同人東京(1977) 881-905

4) Jererniah, S. and S. Povey: The biochemical genetics of human y引 ninobutyricacid tran

-saminase. Ann Hum Genet 45231-236 (1981)

5) King, M.C. and A.C. Wilson: Evolution at two levels in human and chimpanzees. Science 188 107 -116 (1975)

Table  1 に日本人における肝 GABAT i s o z yme  の各表現型の分布と遺伝子頻度を示した .観察値 か ら 得 ら れ た 遺 伝 子 頻 度 は GABAT '= 0

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