Transactions of the JSME (in Japanese)
日本機械学会論文集
ロータの軸振動解析モデルの計算精度向上のための
嵌め合い部のモデル化
長江
信顕
*1,村山
知章
*2,山地
成一
*1,後藤
知伸
*3Modeling method of a rotor with interference fitting for accuracy improvement
of lateral vibration analysis model for rotor-dynamics
Nobuaki NAGAE
*1, Tomoaki MURAYAMA
*2, Seiichi YAMAJI
*1and Tomonobu GOTO
*3*1,*2 Kawasaki Technology Co., Ltd
3-1 Kawasaki-cho, Akashi-shi, Hyogo 673-0014, Japan
*3 Department of Mechanical and Aerospace Engineering, Tottori University
4-101 Koyama-cho-minami, Tottori 680-8552, Japan
Abstract
This study will address the improvement of the analytical accuracy of a lateral vibration analysis model for rotor-dynamics. In case of predicting the lateral vibration of a rotor with disc elements fixed on the shaft by the interference fit, the accuracy of the bending stiffness of the corresponding shaft element could affect the accuracy of the predicted vibration property. This paper describes the investigation results for estimating the bending stiffness of a rotor with a sleeve fixed on it by the interference fit using the finite element analysis model which can treat the contact problem including the friction effect. The results show that the bending stiffness of a shaft element with a sleeve depends on the occurence of the relative slip on the fitting surface, and the bending stiffness is equivalent to the one of a solid shaft element that has the same outer diameter as the sleeve when the relative slip does not occur. Additionally, we have evaluated the natural frequencies of a shaft with a sleeve on it using the improved 1D finite element model and the vibration test. The approximate critical amount of the bending moment which will cause the relative slip on the fitting surface is estimated by the analysis. Comparing this amount of to the bending moment caused by gravity and unbalance force acting on the horizontal rotor, we have obtained the permissible quality factor Q in resonance for a given balance quality.
Key words : Vibration of rotating body, Modeling, Flexible rotor, Bending, Finite element method, Eigenvalue analysis, Interference fitting 1. 緒 言 ディスク要素として扱われるブレードやインペラなどが軸に嵌め合いによって取り付けられたロータの軸振動 解析を行う場合,嵌め合い部の曲げ剛性の評価方法によって,曲げモードの固有振動数と固有モードが変化する. 例えば,嵌め合わされるディスク要素が軸の曲げ剛性に全く寄与しないと考える場合は,等価な曲げ剛性を与え る軸径は軸直径に一致する.一方,嵌め合わされるディスク要素が軸の曲げ剛性に寄与すると考える場合は,等 価な曲げ剛性を与える軸径は軸直径より大きくなる. 嵌め合い部の曲げ剛性に関する既存研究として,Smalley らは,遠心圧縮機においてインペラが嵌め合わされ
た軸の曲げ剛性が等価となる直径を嵌め合い部の幅径比の2 次関数で与えており(Smalley, et al., 2002),Chen らは, 実験で得た周波数応答関数を参照してスリーブが嵌め合わされた中空軸の嵌め合い部のヤング率を調整して軸振 動解析モデルを高精度化する方法を示している(Chen, et al., 2010).しかし,Smalley らの方法ではインペラの形状
Received 30 March 2015
や厚さが考慮されないため適用範囲が不明であり,Chen らの方法では実験値を参照する必要があるため設計段階 で適用することができない.そこで,本研究では,接触解析と実験によって嵌め合い部の曲げ剛性を検討した. 第3 章では,嵌め合い部の曲げ剛性を,摩擦係数を解析パラメータとした解析,締め代を解析パラメータとし た解析,正負の繰り返しの曲げモーメントを与えた解析によって評価する. 第4 章では,横型ロータの場合について,嵌め合い部にすべりが生じない曲げモーメントと不釣合い量が与え られた場合に,主危険速度における共振倍率がどの程度まで許容されるかについて検討する. 第5 章では,既報の軸直径変化部の弾性変形による曲げ剛性低下を考慮した 1 次元梁の有限要素モデル(長江, 後藤,2014)と実験によって曲げモードの固有振動数を求め,嵌め合い部の曲げ剛性を評価する. 2. 主な記号 D : スリーブの外径 (m) E : ヤング率 (N/m2) G : 釣合い良さの等級 (mm/s) I : 軸の断面 2 次モーメント (m4) L : 軸の長さ (m) M : 曲げモーメント (Nm) Mg : 重力によって生じる曲げモーメント (Nm) MU : 不釣合いによって生じる曲げモーメント (Nm) Nc : 主危険速度(共振回転数) (rpm) U : 不釣合い (kgm) d : 軸径 (m) deq : 等価な曲げ剛性を与える軸径 (m) ds : スリーブの内径 (m) g : 重力加速度 (m/s2),g=9.8m/s2 l : 1/2 モデルにおけるスリーブの長さ(m) m : ロータ質量 (kg) p : 面圧 (Pa) p0 : 嵌め合いによる面圧 (Pa) Δd : 締め代 (m) Δp : 曲げモーメントによる面圧の変化分 (Pa) δ : 梁のたわみ (m) μ : 摩擦係数 ρ : 軸とスリーブの密度 (kg/m3) ν : ポアソン比 3. 接触解析による嵌め合い部の曲げ剛性の検討 軸にスリーブが嵌め合わされた構造物について,嵌め合い強さと軸の曲げ剛性の関係を,嵌め合い部の摩擦を 考慮した非線形静解析によって計算した. 長さ350mm,直径φ25.4mm の中実円形断面の軸の中央部に,軸方向長さ 25.4mm,厚さ 5.0mm のスリーブが 嵌め合いによって取り付けられている構造物を想定し,荷重と形状の対称性を考慮して,図1 の 1/2 モデルを解 q : 単位面積当たりの摩擦力 (Pa)
解析ツールとしてはABAQUS 6.12-2 を使用し,要素の種類は C3D8(8 節点 6 面体要素)とした.また,Slip tolerance の値としては解が収束する 2×10-7を用いた.軸とスリーブの材料特性値は共にヤング率 E=2.05×1011 N/m2,ポアソン比ν=0.3008 とした. 荷重条件は,左端軸中心にx 軸周りのモーメント M を与えるものとし,拘束条件は,図 1 の左端軸中心の節点 の並進自由度を拘束(ピン支持),右端の対称面の軸方向(z 方向)変位を拘束した.このモデルは,両端がピ ン支持された長さ350mm の軸の 1/2 モデルである. このモデルにおける左端と右端のy 方向の相対変位は,自由端にモーメント M を受ける片持ち梁のたわみと一 致するため,嵌め合い部の等価曲げ剛性EIeqは,図2 に示されるスリーブ軸方向端部の相対たわみ δ0-δ1を片持ち 梁のたわみの式に適用して得られる,式(1)によって求めることができる.
0 1
2 2 Ml EIeq (1) φ 25.4mm x y z 175mm 12.7mm M 5mm l δ1 δ0 x y zFig. 1 Analysis model for investigating the influence of fit on bending stiffness. The blue part is the shaft and the green part is the sleeve set on the shaft. This is the half model whose right edge has the roller support in order to increase the analytical accuracy. Bending moment is loaded at the left edge in the analysis.
Fig. 2 Deflection of shaft with a sleeve. The difference of deflection between both ends of the sleeve against the bending moment has been investigated in order to extract the equivalent bending stiffness.
また,嵌め合い部の等価な曲げ剛性を与える軸径deqは,式(1)と式(2)の等価断面 2 次モーメント Ieqの定 義式から,式(3)によって与えられる. 64 4 eq eq d I (2)
4 1 0 2 32 E Ml deq (3) 式(4)のように締め代 Δd を,軸の外径 d と嵌め合わせるスリーブの内径 dsとの差とする. ddds (4) 本研究では,摩擦係数,締め代を解析パラメータとして,嵌め合い部の曲げ剛性を解析によって評価した.ま た,正負の曲げモーメントを繰り返し作用させた場合の嵌め合い部の曲げ剛性についても解析によって評価した. (1) 摩擦係数を解析パラメータとした解析 締め代Δd を 0.024mm の一定値とし,摩擦係数 μ を 0.05,0.2,0.5 の 3 通りに変化させた場合の,曲げモーメ ントM と等価直径 deqの関係を図3 に示す.同図には,軸の嵌め合い部の外径 25.4mm とスリーブの外径 35.4mm をそれぞれ赤色の破線と実線で示した.静解析では,曲げモーメントM を大きくしていくと,等価直径 deqは一 定の値になり,摩擦係数が大きいほど嵌め合い部の等価軸径が大きな値となる結果が得られた.Fig. 3 Equivalent diameter versus bending moment in case of interference Δd=0.024mm and friction coefficient μ=0.05, 0.2 and 0.5. The red solid line and dashed line indicate the equivalent diameter of solid shaft whose diameter is 35.4mm and 25.4mm, respectively. The equivalent diameter is almost independent of the bending moment, and apparently varies according to the friction coefficient.
Equivalent diam
(2) 締め代を解析パラメータとした解析 摩擦係数μ を 0.2 の一定値とし,締め代 Δd を 0.01mm,0.024mm,0.041mm の 3 通りに変化させた場合の曲げ モーメントと等価直径deqの関係を図4 に示す.静解析では,締め代によって嵌め合い部の等価軸径は殆ど変化 しないという結果が得られた. (3) 正負の繰り返し曲げモーメントを与えた解析 摩擦係数μ を 0.1,締め代 Δd を 0.01mm として,図 5 に示した±200Nmm の曲げモーメントを繰り返し負荷し, 変位の履歴を調べた. ⑫ ⑪ ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ ⑥ ⑤ ④ ③ ② ①
Fig. 4 Equivalent diameter versus bending moment in case of friction coefficient μ=0.2 and interference Δd=0.01, 0.024 and 0.041mm. The equivalent diameter slightly varies according to the friction coefficient.
Fig. 5 Alternating bending moment applied to shaft. Step 1 to 2, 4 to 6 and 8 to 10 are the process of increasing the bending moment and Step 2 to 4, 6 to 8 and 10 to 12 are the process of decreasing the bending moment.
Equivalent
d
iam
曲げモーメントと相対たわみδ0-δ1(図2 参照)の関係を図 6 に示す.同図より,1 回目のサイクルと 2 回目以 降のサイクルでみかけの曲げ剛性が変化し,ゼロ点(荷重0 での変位)にずれが生じることが分かった. 曲げモーメントと相対たわみδ0-δ1の関係が収束するステップ4 以降の直線の傾きから求めた,締め代 Δd=0.01mm,摩擦係数 μ=0.05, 0.1, 0.2 の場合の曲げモーメントと等価直径の関係を図 7 (a)に示す.また,図 7 (b) には図7 (a)の縦軸を拡大したものを示す.これらの図には,スリーブが軸と一体となったソリッドモデルの場合 の曲げモーメントと等価直径の関係についても示した.ここで,ソリッドモデルの等価軸径がスリーブの外径よ り小さな値となっているのは,大径軸部の軸方向端部において曲げに関する有効直径が小さくなり曲げ剛性が低 下するためである.摩擦係数μ=0.05, 0.1, 0.2 の場合の等価軸径は,いずれも荷重の値によってほとんど変化せず, ソリッドモデルのものとほぼ同一の35.09mm 前後(最大等価軸径の 99.12%)という値となった. 1st cycle 2nd cycle ⑥⑩ ⑤⑦ ⑨⑪ ④⑧⑫ ③ ② ①
Fig. 6 Bending moment versus relative deflection in case of interference Δd=0.01mm and friction coefficient μ=0.1 (sleeve thickness: 5.0mm). The hysteresis occurs only in the 1st cycle. Subsequently, the hysteresis does not appear; the relationship between the bending moment and the relative deflection repeats during and after the 2nd cycle.
図8 にすべり範囲分布図を示す.すべりなしの領域が赤色,すべりありの領域が青色で示されている.青色の すべりありの領域では,軸上の節点とスリーブ上の節点に前ステップからの相対変位が生じる.同図における右 端断面の外周近傍の着色された部分は,解析プログラムの表示上の問題によるものであり,すべりとは無関係で ある.曲げモーメントの繰り返しに伴ってすべり範囲が小さくなり,ほぼすべての領域ですべりがなくなる状態 に収束していることが分かる. なお,図5 のステップ 1 から 3 までを 1 サイクルとした曲げモーメントが繰り返し軸に作用する場合は,2 サ イクル目以降はすべりが生じないため,図6 の③,②,③の行程を繰り返す.その場合のみかけの曲げ剛性は, 図6 のステップ 2 – 3 の傾きとステップ 4 以降の傾きがほぼ同一であるため,スリーブが軸と一体となったソリッ ドモデルとほぼ同一となる.
Fig. 7 (a) Equivalent diameter versus bending moment in case of interference Δd=0.01mm and friction coefficient μ=0.05, 0.1 and 0.2 and solid model. (b) Enlarged view. The equivalent diameters of the shaft with a sleeve whose friction coefficient μ=0.05, 0.1 and 0.2 are almost the same as the one of solid model. The equivalent diameter slightly increases with the friction coefficient, but the difference of the equivalent diameter is only less than 0.06%.
Equivalent diam eter [mm] (a) (b) Equivalent diam eter [mm]
Step 1 (M = 0 Nmm) Step 2 (M = 200 Nmm) Step 3 (M = 0 Nmm)
Step 4 (M = -200 Nmm) Step 5 (M = 0 Nmm) Step 6 (M = 200 Nmm)
Step 7 (M = 0 Nmm) Step 8 (M = -200 Nmm) Step 9 (M = 0 Nmm)
Step 10 (M = 200 Nmm) Step 11 (M = 0 Nmm) Step 12 (M = -200 Nmm)
次に,繰り返し作用する曲げモーメントを図5 の 20 倍の±4000Nmm,30 倍の±6000Nmm,100 倍の±20000Nmm と大きくしていった場合に,みかけの曲げ剛性がどのように変化するかを検討した.±4000Nmm,±6000Nmm, ±20000Nmm の曲げモーメントが作用した場合の,曲げモーメントと相対たわみ δ0-δ1(図2 参照)の関係をそれ ぞれ,図9 (a),(b),(c)に示す.同図には,2 サイクル目以降の代表勾配 M/(δ0-δ1)から求めた等価直径 deqの値を 示した.図9 (a)に示す±4000Nmm の曲げモーメントが作用した場合は,2 サイクル目以降はすべりが生じておら ず,等価軸径deqは35.09mm(最大等価軸径の 99.12%)となり,みかけの曲げ剛性は曲げモーメントが±200Nmm の場合(図6)と同一となる.±6000Nmm の曲げモーメントが作用した場合は,2 サイクル目以降でわずかなす べりが生じており,等価軸径deqは34.98mm(最大等価軸径の 98.83%)となり,みかけの曲げ剛性はすべりが生 じない場合より0.3%低下している(図 9(b)参照).±20000Nmm の曲げモーメントが作用した場合は,2 サイクル 目以降で顕著なすべりが生じており,等価軸径deqは32.95mm(最大等価軸径の 93.07%)となり,みかけの曲げ 剛性はすべりが生じない場合より6.1%低下している(図 9(c)参照).
blue: slip area
red: non-slip area
Fig. 8 Sliding area map in case of interference Δd=0.01mm and friction coefficient μ=0.1. The large slip area could be observed in Step 1, 2 and 4.
(a)
(b)
(c)
Fig. 9 Bending moment versus relative deflection in case of interference Δd=0.01mm and friction coefficient μ=0.1 (sleeve thickness: 5.0mm). (a) Applied bending moment is ±4000Nmm. The hysteresis occurs only in the 1st cycle as well as
1st cycle 2nd cycle 1st cycle 2nd cycle 1st cycle 2nd cycle deq=35.09 mm deq=34.98 mm deq=32.95 mm
曲げモーメントを繰り返し負荷した場合の嵌め合い部の状態は,曲げモーメントの大きさによって異なるため, 嵌め合い部のすべりの状態を,図6,図 8 および図 9 (a)の曲げモーメントが小さい場合(2 サイクル目以降です べりが生じない場合)と図9 (c)の曲げモーメントが大きい場合(2 サイクル目以降ですべりが生じる場合)に分 けて説明する. (a) ステップ 1 曲げモーメントが作用していない軸に,軸の外径より小さい内径を持つスリーブを嵌め合わせた状態であり, スリーブの内径が拡げられるのに伴ってスリーブが軸方向に圧縮されるためすべりが生じている.単位面積当た りの摩擦力q はスリーブの縮みを緩和する方向に発生し,その大きさ|q|は式(5)で表される. p q (5) μ:摩擦係数 p:面圧 (Pa) ここで,面圧p は,軸に作用する曲げモーメントに依存する,嵌め合い部の軸の弾性変形の形状によって変化す るため,式(6)で表すことができる. p p p 0 (6) p0:嵌め合いによる面圧 (Pa) Δp:曲げモーメントによる面圧の変化分 (Pa) 軸の凸側ではΔp が負となり面圧 p がスリーブの中心(Fig.2 の右端)からスリーブ軸方向端部に向かって(Fig.2 の-z 方向に向かって)徐々に低下した分布となるのに対して,軸の凹側では Δp が正となり面圧 p が凸側と逆の 分布となる.式(5)と式(6)より,単位面積当たりの摩擦力q の大きさ|q|は式(7)で表される.
p p
q 0 (7) ステップ1 では曲げモーメントが作用していないため単位面積当たりの摩擦力q の大きさ|q|は μp0であり,スリ ーブの圧縮方向の接線力が摩擦力と平衡するまですべりが生じている.そのため,軸の嵌め合い部には|μp0|の大 きさの単位面積当たりの軸方向圧縮力が生じた状態である. (b) 曲げモーメントが小さい場合 ステップ1 からステップ 2 に至る過程では,軸の凸側(下面)において,面圧低下によって減少した最大静止 摩擦力が,曲げモーメントによる軸方向引張力とステップ1 で嵌め合い部に生じた軸方向圧縮力が解放される方 向(引張方向)の力との合力を下回るため,すべりが生じる.一方,軸の凹側(上面)においては,面圧上昇に よって増大した最大静止摩擦力が,曲げモーメントによる軸方向圧縮力とステップ1 で嵌め合い部に生じた軸方 向圧縮力が解放される方向(引張方向)の力との合力を上回るため,すべりは生じない.その結果,曲げモーメ ントと相対たわみの関係は図6 の①から②の勾配となる.ステップ 2 ではステップ 1 で軸の嵌め合い部に生じた 軸方向圧縮力が下面でのみ解放された状態となる. ステップ2 からステップ 3 に至る過程では,下面において,面圧上昇によって増大した最大静止摩擦力が,曲ステップ3 からステップ 4 に至る過程では,ステップ 1 からステップ 2 に至る過程と同様に,片側の面(上面) でのみすべりが生じる.その結果,曲げモーメントと相対たわみの関係は図6 の③から④の勾配となる.ステッ プ4 では上下面共,ステップ 1 で軸の嵌め合い部に生じた軸方向圧縮力が緩和された状態となる. ステップ4 からステップ 5 に至る過程では,ステップ 2 からステップ 3 に至る過程と同様に,上下面共にすべ りは生じない.その結果,曲げモーメントと相対たわみの関係は図6 の④から⑤の勾配となる. ステップ5 からステップ 6 に至る過程では,下面において,面圧低下によって減少した最大静止摩擦力が,曲 げモーメントによる軸方向引張力を上回るため,すべりは生じない.軸の上面においては,面圧上昇によって増 大した最大静止摩擦力が,曲げモーメントによる軸方向圧縮力を上回るため,すべりは生じない.その結果,曲 げモーメントと相対たわみの関係は図6 の⑤から⑥の勾配となる.ステップ 1 からステップ 2 の過程との差異は, ステップ1 で嵌め合い部に生じた軸方向圧縮力の有無である. これ以降の過程でも,最大静止摩擦力が曲げモーメントによる軸方向引張力または圧縮力を上回るため,上下 面共にすべりが生じない.その結果,曲げモーメントと相対たわみの関係は図6 の④から⑤および⑤から⑥の勾 配とほぼ同一となる. (c) 曲げモーメントが大きい場合 引張または圧縮方向の接線力が,面圧の低下または増大に伴って低下または増大する最大静止摩擦力を常に上 回るため,上面と下面の双方ですべりが生じる.その結果,曲げモーメントと相対たわみの関係は図9 (c)の勾配 となる. 4. 回転軸に作用する曲げモーメント 本章では,水平に置かれた嵌め合い部を持つ回転軸において,嵌め合い部にすべりが生じない曲げモーメント の値と不釣合い量が与えられた場合に,主危険速度における共振倍率がどの程度まで許容されるかについて検討 する.ここでは,図1 に示した形状の,一様な軸の中央部にスリーブが嵌め合わされた回転軸を対象とする. 横型ロータの場合,回転軸には不釣合いによる曲げモーメントと重力による曲げモーメントが作用する.
両端支持された回転数ω (rad/s)で回転する長さ L の一様な軸の中央部に不釣合いU がある場合,不釣合い力Uω2
が集中荷重として軸の中央部に作用するため,軸の中央部に式(8)で与えられる最大の曲げモーメントMUが発 生する(中沢他,1973).回転数が一定の場合,不釣合いによる曲げモーメントは,回転軸には大きさと方向が一 定の曲げモーメントとして作用する. 4 2L U MU (8) また,直径d,長さ L,密度 ρ の一様な中実円形断面の軸の中央部に外径 D,長さ 2l ,密度 ρ のスリーブが嵌 め合わされた軸には,軸の自重が等分布荷重πρg d2/4 として作用し,スリーブの自重πρg (D2-d2)2l/4 が集中荷重と して軸の中央部に作用するため,軸の中央部に式(9)で与えられる最大の曲げモーメントMgが発生する(中沢他, 1973).重力による曲げモーメントは,回転軸には交番曲げモーメントとして作用する. Mg g
d2L24
D2d2
lL
32 (9) 共振点では不釣合いによる曲げモーメントMUにQ 値(共振倍率)を乗じた大きさの曲げモーメント Q MU が 作用するため,共振点での不釣合いと重力による曲げモーメントの最大値Mmax.はMmax. QMU Mg (10)
となる.
ISO 1940-1: 2003 (International Organization for Standardization, 2003)では,許容不釣合いUperと,釣合い良さの等
級G,回転角速度 Ω (rad/s),ロータ質量 m,許容偏心量 eperの関係が式(11)で定義されている. Gm Uper 1000 (11) G:釣合い良さの等級 (mm/s),G= eper Ω eper:許容偏心量 (μm) Ω:回転角速度 (rad/s),Ω=2πN/60 N:回転数 (rpm) したがって,非線形接触解析によってあらかじめ嵌め合い部にすべりが生じない曲げモーメントMmax.を求めお き(第3 章の図 9 参照),設定した釣合い良さの等級G から式(11)によって許容不釣合い Uperを求めておけば, 式(8),(9),(10)を用いて,主危険速度において許容されるQ 値を求めることができる. 例えば,図1 の 1/2 モデルで軸端に作用する曲げモーメントを取り除いた両端支持の 1/1 モデルにおいて,長 さL=350mm の軸と外径 D=35.4mm,長さ 2l=25.4mm のスリーブの密度 ρ を共に 7800kg/m3,ヤング率E を 205GPa, ポアソン比ν を 0.3 として,スリーブ嵌め合い部にすべりが生じない場合の主危険速度(共振回転数)Ncを,ス リーブを軸と一体として軸直径変化部の曲げ剛性低下を考慮した1 次元梁モデル(長江,後藤,2014)で求める と,約24,820rpm となる.釣合い良さの等級として G1(G=1mm/s)と G2.5(G=2.5mm/s)を想定すると,ロータ 質量m=1.4779kg,主危険速度 Nc =24,820rpm の場合のそれぞれの釣合い良さの等級における許容不釣合いUperは, 式(11)から,0.569gmm と 1.421gmm となる.主危険速度において不釣合いによって軸の中央部に作用する曲 げモーメントMUは,式(8)より,G1,G2.5 の場合でそれぞれ 336Nmm,840Nmm となる.また,重力によっ て回転軸の中央部に作用する曲げモーメントMgは,式(9)より,674Nmm となる.よって,式(10)から,ス リーブ嵌め合い部にすべりが生じない曲げモーメント4000Nmm を最大の曲げモーメントMmax.とし,不釣合いが 釣合い良さの等級G1 と G2.5 の上限値とした場合の,主危険速度 24,820rpm において許容されるQ 値として,そ れぞれ,約9.9 と約 4.0 が得られる. 5. 実験による嵌め合い部の曲げ剛性の評価 スリーブを嵌め合わせた軸において,嵌め合い部に過大な曲げモーメントが作用しない限り,スリーブ嵌め合 い部にはすべりが生じないため,曲げ剛性が等価となる嵌め合い部の軸径はスリーブ外径にほぼ一致すると考え られる.そこで,スリーブを嵌め合わせた図10 (a)の軸において嵌め合い強さを締りばめとした場合について, 衝撃加振試験を実施して自由支持状態の軸の曲げモードの固有振動数を求め,図10 (b)に示したソリッド軸の 1 次元梁の有限要素モデル(以下,1D FEM モデルと表記)で軸直径変化部断面の弾性変形を考慮した場合(長江, 後藤,2014)の固有振動数と比較して,嵌め合い部の等価曲げ剛性を評価した.実験で用いた軸とスリーブは,締 め代Δd が 7~41μm となる,h6/R7(許容精度:軸径 -13~0μm, 穴径 -41~-20μm)のしまりばめとした.
(a) Saft with a sleeve (b) Solid shaft 図10 (a)は, ・全長 350mm ・小径部外径 φ20mm ・大径部の位置と外径 左端から57.3mm~82.7mm:φ25.4mm,162.3mm~187.7mm:φ25.4mm の中実軸の中央の大径部に5mm 厚,軸方向長さ 25.4 mm のスリーブを嵌め合わせた軸の 1D FEM モデルである. 図10 (b)は, ・全長 350mm ・小径部外径 φ20mm ・大径部の位置と外径 左端から57.3mm~82.7mm:φ25.4mm,162.3mm~187.7mm:φ35.4mm の中実軸の1D FEM モデルである. 実験は,図10 (a)の軸において嵌め合い強さを締りばめとした場合についてのみ実施した.図 11 は衝撃加振試 験の状況を示したものである.軸受台に置かれた軸を水平方向に衝撃加振したときの加振力と軸端の振動加速度 応答から得られる周波数応答関数を,周波数領域法が適用された実験モード解析ソフトウェアを用いて極-留数 モデルに曲線適合して不減衰固有振動数を求めた. Pedestal Test Piece Impulse Hammer Sponge Accelerometer Excitation Point Response Point x y z Sleeve
Fig. 10 1D FEM models of shaft with a sleeve and solid shaft. In these models, the elasticity of stepped section is considered in order to increase the analytical accuracy using the previously proposed method (Nagae and Goto, 2014).
軸の支持方法は,軸直角水平方向のみの運動を許容するために軸が水平方向にスポンジで弾性支持される構造 とし,摩擦の影響を低減するために軸と軸受台の接触面にはグリスを塗布した(図12 参照). 実験による図10 (a)のしまりばめスリーブ付き軸の嵌め合い部の曲げ剛性の評価に併せて,図 10 (b)のソリッド 軸の曲げモードの固有振動数が,図10 (a)の軸においてスリーブの嵌め合い強さをすきまばめとした軸の曲げモ ードの固有振動数と,明確に識別できることを確認するために,解析による検討を行った.ここで,すきまばめ のスリーブ付き軸の1D FEM Model は,スリーブの軸方向の中央に位置する節点で,曲げ剛性に影響を与えない スリーブが軸に結合されたモデルとした. 表1 は,図 10 (b)のソリッド軸の 1D FEM Model (軸中央の大径部の曲げ剛性の等価軸径deq=35.4mm)と図 10 (a)のすきまばめのスリーブ付き軸の 1D FEM Model (嵌め合い部の曲げ剛性の等価軸径deq=25.4mm)の 4 次ま での曲げモードの固有振動数の解析値としまりばめのスリーブ付き軸の実験値を比較したものである.ここで, 1D FEM Model は軸直径変化部の小径軸側に設けた要素の曲げ剛性を弱めることによって軸直径変化部の曲げ剛 性低下を考慮した1 次元モデルである(長江,後藤,2014).ソリッド軸については,十分に高い精度で固有振動 数を計算できることが確認されているため,ここでは1D FEM Model を用いた.この場合,表 1 中に示すように 大径部の等価軸径deqは解析に用いた要素の直径と同一の値となる.なお,3 次元ソリッドモデルを用いて評価を 行った場合,図7 に示した結果のように,要素直径と等価軸径は異なる. Unit: Hz Mode Analytical value of 1D FEM Model of solid shaft, deq=35.4mm
Analytical value of 1D FEM Model of shaft with a sleeve
on it by clearance fit,
deq=25.4mm (difference)
Measured value of shaft with a sleeve set on it by interference fit (difference) 1 731.99 724.34 (-1.05%) 731.84 (-0.02%) 2 2036.1 2038.2 (0.10%) 2035.1 (-0.05%) 3 3812.8 3753.9 (-1.54%) 3797.4 (-0.40%) 4 6160.2 6174.5 (0.23%) 6160.2 (0.00%) すきまばめのスリーブ付き軸の1 次と 3 次モードの固有振動数の解析値は,ソリッド軸の値と比べて 1%以上 Spring (Sponge) Grease Shaft (Test piece) Pedestal
Fig. 12 Support method of the shaft. The shaft is supported by springs made of sponge in the horizontal direction in order to restrict vertical motion and to excite only horizontal vibration.
Table 1 Comaprison of analytical natural frequencies. The measured natural frequencies of shaft with a sleeve set on it by interference fit are almost the same as the analytical one of 1D FEM Model of solid shaft.
上述した,解析によるすきまばめのスリーブ付き軸との比較で確認されたモード次数による顕著な差異も認めら れない.よって,しまりばめのスリーブ付き軸の嵌め合い部の曲げ剛性は,スリーブ外径と同一径のソリッド軸 とほぼ同一と扱って良いと言える. 6. 結 言 嵌め合いによって軸の曲げ剛性がどの程度増大するかを把握するため,スリーブの嵌め合い部の摩擦を考慮し た非線形静解析と,スリーブをしまりばめで嵌め合わせた軸について自由支持状態の曲げモードの固有振動数計 測を実施した.解析の結果,曲げ剛性が等価となる軸径は,曲げモーメントが小さくて嵌め合い部にすべりが生 じない場合はほぼスリーブ外径に一致し,曲げモーメントが大きくてすべりが生じる場合はスリーブ外径より小 さくなることが確認された.実験では,嵌め合い部にすべりが生じない場合は,スリーブをしまりばめで嵌め合 わせた軸の曲げモードの固有振動数は,スリーブ外径と同一径のソリッドな軸の固有振動数とほぼ一致すること を確認した. また,横型ロータにおいて,不釣合いと重力によって作用する曲げモーメントの大きさを検討し,その曲げモ ーメントとあらかじめ解析によって得られた嵌め合い部のすべりが発生する曲げモーメントから,釣合い良さの 等級に対する共振倍率の許容値が得られることを示した. 文 献
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