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X線分析の進歩36 別刷

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X線分析の進歩 第36集(2005)抜刷

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The Discussion Group of X-Ray Analysis, The Japan Society for Analytical Chemistry

環境標準試料の蛍光 X 線分析

石井秀司,宮内宏哉,日置 正,河合 潤

X-Ray Fluorescence Analysis on Environmental Standard

Reference Materials with a Dry Battery X-Ray Generator

(2)
(3)

X線分析の進歩 36 225 Adv. X-Ray. Chem. Anal., Japan 36, pp.225-234 (2005)

乾電池小型蛍光 X 線装置による

環境標準試料の蛍光 X 線分析

石井秀司,宮内宏哉

,日置 正

,河合 潤

X-Ray Fluorescence Analysis on Environmental Standard

Reference Materials with a Dry Battery X-Ray Generator

Hideshi ISHII, Hiroya MIYAUCHI

, Tadashi HIOKI

and Jun KAWAI

Department of Materials Science and Engineering, Kyoto University

Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan

Kyoto Prefectural Comprehensive Center for Small & Medium Enterprises 134, Chudoji-Minamimachi, Shimogyo-ku, Kyoto 600-8813, Japan (Received 4 November 2004, Revised 6 December 2004, Accepted 6 December 2004)

   X-ray fluorescence analysis on environmental standard reference materials has been performed by using a dry battery X-ray fluorescence (XRF) spectrometer with the combination of a pyroelectric X-ray generator and a potable Si PIN X-ray detector. This dry battery spectrometer detected K, Ca, Ti, Mn, Fe, Zn and Pb (~ hundred ppm order). Similar analysis with a commercial energy dispersion XRF spectrometer achieved the additional detection of Cu, Br and Rb. However, the limit of the detection was similar. This difference of detected elements is mainly due to the difference between characteristic X-rays from both X-ray sources and not due to the difference of intensities of excited X-rays. Thus, the dry battery XRF spectrometer has sufficient capability for XRF analysis on environmental materials as commercial spectrometers.

[Key words] X-ray fluorescence analysis, Potable, Environmental samples, Standard

reference materials, Dry battery

 乾電池 X 線発生装置と Si PIN X 線小型検出器を組み合わせた乾電池式小型蛍光 X 線装置を用 いて,リョウブ,池底質,自動車排出粒子の 3 種の環境標準試料の元素分析を行った.市販の エネルギー分散型蛍光 X 線装置でも同様の測定を行い,分析結果を比較した.乾電池式装置で 京都大学大学院 工学研究科 材料工学専攻 京都市左京区吉田本町 〒606-8501

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は,K, Ca, Ti, Mn, Fe, Zn, Pb が検出され,市販装置ではこれに加えて Cu, Br Rb が検出された. 両測定でのこれらの試料の検出された元素濃度は 100 ppm オーダーであった.両装置での検出 元素の違いは主として,光源から発生する特性 X 線と分析対象元素の蛍光 X 線とのエネルギー 位置関係が主原因であり,強度的には乾電池式小型蛍光 X 線装置でも主成分から 100 ppm オー ダーの成分については,市販装置と同程度の分析が行えることがわかった.環境試料のその場 分析などにも,乾電池式小型 X 線は十分応用可能であることがわかった. [キーワード] 蛍光 X 線分析,ポータブル,環境試料,標準試料,乾電池

1. 序

 帯電による X 線発生を利用した小型 X 線源の研究1-4)は以前より行われており,最 近には焦電結晶の帯電を利用した乾電池駆動の小型 X 線発生装置(Amptek 社 COOL-X)が商品化されている.河合らは,この乾電池 X 線発生装置を光源とした蛍光 X 線 分析装置を作製して,金属試料などの蛍光測定やCd, Pbなどの有害元素分析の可能性 を検討した5).さらに井田らは,Al 箔中の微量の Fe の測定6)や鋼中の Cr の定量分析7) や皮革8)やガラス・セラミック9)への応用を行った.  本研究ではこの乾電池 X 線発生装置と Si PIN 検出器(Amptek 社 XR-100CR)を組 み合わせた乾電池式小型蛍光 X 線装置と市販の蛍光 X 線装置(島津 EDX-700)との 両者で,環境標準試料の元素分析結果の比較を行い,植物,土壌,大気エアロゾル物 質などの環境試料に対する応用の可能性を検討した.

2. 実 験

 環境標準試料として,国立環境研究所の提供する環境標準試料10)のうち,NIES No.1

リョウブ(pepperbush),NIES No.2 池底質(pond sediment),NIES No. 8 自動車排出粒

子(vehicle exaust particles)の 3 種の蛍光 X 線スペクトルを大気中で測定した.リョ ウブ,池底質は 100 mg,自動車排出粒子は 200 mg の試料を用いた.乾電池式小型蛍 光 X 線装置は Amptek 社製 COOL-X と同社の Si PIN 検出器 XR-100CR を組み合わせ

た.乾電池式小型蛍光 X 線装置と COOL-X および XR-100CR の詳細は文献5-9, 11)に記 してある.X 線源の照射方向と検出器の入射方向を約 90 度とし,COOL-X の窓∼試料 表面∼ XR-100CR の窓の距離は合わせて約 3 cm であった.試料は,ポリスチレン製 の角型試料ケースの蓋(内寸 33 mm × 33 mm, 深さ 3.5 mm)に入れて測定した.測 定時間はすべて 2000 秒で,不感時間はその 2 % 以下であった.検出器のエネルギー 分解能は約 200 eV であった.

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X線分析の進歩 36 227  市販の蛍光 X 線装置として島津社製 EDX-700 を用いた.この装置はエネルギー分散 型の蛍光 X 線装置で,空冷型 Rh 管(50 kV, 1 mA, 50 W)からの X 線をコリメータを通 して,試料表面上 10 mmφに照射する.発生した蛍光 X線は,測定時にのみ液体窒素冷 却が必要な Si(Li)半導体検出器(検出面積 10 mm2)を用いて検出する.試料は,厚さ 6 µmのマイラー膜を介して粉体・液体試料分析用の試料ケース(内径 25 mm)に入れ, 測定した.測定は Na-U の元素領域(50 kV, 100 µA)で行った.測定時間は 200 秒で, 不感時間はその25 %であった.特定元素分析のための1次フィルターは用いなかった.

3. 結果と考察

 Fig.1 にリョウブ(pepperbush)の蛍光 X 線スペクトルを示す.Fig.1a)に乾電池式 小型蛍光 X 線装置の測定結果を,Fig.1b)に市販の蛍光 X 線装置 EDX-700 での測定結 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 Ta Lγ In te ns it y ( c oun ts ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ K Kα Ta Lα Cu Kα Mn Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ Ar Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 2000 4000 Rh Lα K Kα Rb Kα Zn Kβ Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Mn Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ In te ns it y ( c oun ts ) Energy (keV) Ar Kα 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 Ta Lγ In te ns it y ( c oun ts ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ K Kα Ta Lα Cu Kα Mn Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ Ar Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 2000 4000 Rh Lα K Kα Rb Kα Zn Kβ Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Mn Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ In te ns it y ( c oun ts ) Energy (keV) Ar Kα

Fig.1 a) XRF spectrum of pepperbush measured with the potable XRF spectrometer in combination of a dry battery X-ray generator and a Si PIN detector. b) XRF spectrum of pepperbush measured by using a commercial XRF spectrometer.

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果を示す.乾電池 X 線発生装置から照射された焦電結晶(LaTaO3)からの Ta Lα, Lβ,

Lγ が 8~11 keV に,Be 窓の裏の Cu 薄膜からの Cu Kα が 8 keV に検出されている.こ

の 8 keV の散乱 X 線(Ta Lα, Cu Kα)強度は 900 counts である.また大気下での測定

により空気中の Ar(2.96 keV)も検出されている.市販の蛍光 X 線装置では,管球か らの Rh Kα(20.17 keV)とそのコンプトン散乱ピーク(19.12 keV)がそれぞれ,1400 counts, 3500 counts の強度で得られているが,比較のためにエネルギー軸の範囲を同 一にしたために図中の範囲には表示されていない.X 線源からの連続 X 線は,市販の 蛍光 X 線装置では,8 keV 以上ではほぼ平らであり,それ以下では 4 keV ぐらいまで の範囲で緩やかに減少していき,4 keV 以下で一定となっている.一方,乾電池式小 型蛍光 X 線装置では,8 keV 以下での傾向は励起 X 線の裾の部分を除けば,ほぼ同等 であるが,8 keV 以上でも緩やかに減少していく.もっとも強い試料からの蛍光 X 線 は Ca Kα で乾電池式小型蛍光 X 線装置,市販の蛍光 X 線装置のそれぞれで 800 counts と 4800 counts の強度で検出された.  リョウブ標準試料は,リョウブ葉から調製された天然物試料で,Zn, Mn, Co, Ni, Cd の含有量が他の国立環境研究所の提供している標準試料に比べて高いことが知られて いる.K(1.51 wt %), Ca(1.38 wt%), Mn(0.203 wt%)の元素は両者の測定で検出さ れた.カッコ内の数値はこれらの元素のリョウブ標準試料の含有量の保証値である. Mg(0.408 wt%)については大気中での測定のために空気での吸収で測定できていな

い.微量成分のうち,Fe(205 ppm)については,Fe Kα(6.4 keV)が Mn Kβ(6.5

keV)と重なるために,市販の蛍光 X 線装置では Fe Kβ(7.06 keV)から同定した.乾 電池式小型蛍光 X 線装置では Fe Kβ(7.06 keV)の位置には,連続 X 線の裾がかかり, ピークが検出限界以上では検出できない.そこで,Mn Kα(5.9 keV)と 6.4 keV の ピーク(Fe Kα, Mn Kβ)のピーク強度比を Ca Kα と Ca Kβ の強度比と比較した.Ca Kα ピークに対する K Kβ の寄与を考えても,Mn Kα に比べて 6.4 keV のピーク強度 は大きなことがわかる.これより 6.4 keV のピークには Mn Kβ 以外に Fe Kα の寄与 があることがわかる.  Zn(340 ppm), Rb(75 ppm), Cu(12 ppm)は市販の蛍光 X 線装置でのみ検出され た.乾電池式小型蛍光 X 線装置では,Cu Kα が散乱 X 線と重なるのに加えて,Zn Kα についても,Cu Kα, Ta Lα と Cu Kβ, Ta Lβ の中間に位置するために,微量の Zn では Fig.1a)のように励起 X 線に対して肩ピークとなり,判別が難しいためである.Rb は 光源の Rh Kα により,Rb Kα が効率よく励起されているためである.乾電池式小型 蛍光 X 線装置ではこの領域の励起は連続 X 線でしか行えないために Rb は検出できな い.Co(23 ppm),Ni(8.7 ppm),Cd(6.7 ppm)などは両者ともこの条件下では検

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X線分析の進歩 36 229

出できなかった.検出元素の違いは主として,発生 X 線の強度の違いというよりは, むしろ光源から発生する特性X線と分析対象元素の蛍光X線とのエネルギー位置関係 が主原因である.

 Fig.2 に池底質(pond sediment)の蛍光 X 線スペクトルを示す.a),b)は,それぞ

れ,乾電池式小型蛍光 X 線装置と市販の蛍光 X 線装置の結果である.リョウブの分析 と同様に,乾電池 X 線発生装置から照射された Ta L が 8~11 keV に,Cu Kα が 8 keV が試料で散乱されて検出されている.この 8 keV の散乱 X 線(Ta Lα, Cu Kα)強度は

700 counts である.市販の蛍光 X 線装置では,X 線源からの Rh Kα(20.17 keV)とそ

のコンプトン散乱ピーク(19.12 keV)がそれぞれ,2100 counts, 2700 counts の強度で

得られている.もっとも強い試料からの蛍光 X 線は Fe Kα で乾電池式小型蛍光 X 線 装置,市販の蛍光 X 線装置のそれぞれで 7000 counts と 80000 counts の強度で検出さ れた.また大気下での測定により空気中の Ar(2.96 keV)も検出されている 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 1500 Ti Kα Fe Kβ Ta Lγ In te n si ty ( c o u n ts ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ K Kα Ta Lα Cu Kα Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ar Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 5000 10000 Pb Lα Fe Kα SUM In te n si ty ( c ount s) Energy (keV) Ti Kα Rh Lα K Kα Rb Kα Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ti Kβ Ar Kα 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 1500 Ti Kα Fe Kβ Ta Lγ In te n si ty ( c o u n ts ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ K Kα Ta Lα Cu Kα Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ar Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 5000 10000 Pb Lα Fe Kα SUM In te n si ty ( c ount s) Energy (keV) Ti Kα Rh Lα K Kα Rb Kα Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ti Kβ Ar Kα

Fig.2 XRF spectra of pond sediment measured with (a) the dry battery XRF spectrometer and (b) a commercial XRF spectrometer.

(8)

 検出された元素のうち,両方の装置で検出された元素は,Fe(6.53 wt%),K(0.68 wt %),Ca(0.81 wt%),Ti(0.64 wt% 参照値), Mn(770 ppm 参照値)であった.Cu

Kα, Zn Kα, Pb Lα(10.5 keV), Rb Kα は市販の蛍光 X 線装置でのみ検出された.Cu (210 ppm)と Zn (343 ppm)についてはリョウブと同じ理由である.Pb(105 ppm) Lα は光源の Rh K により,効率よく励起された.一方,Rh L(2.70 keV, 2.84 keV)で も Pb Mα(2.35 keV)を励起可能だが,こちらは検出されていない.これは,M 線の 励起確率がL線と比べて小さいことに起因している.乾電池式小型蛍光 X 線装置の場 合,Pb Lα(10.5 keV)の位置には励起源の Ta Lγ(10.9 keV)が重なるために微量成 分での検出は難しい.また主成分である Si(21 wt% 参照値)について,Si Kα(1.74 keV)の位置にピークはあるものの,両者とも検出限界程度もしくはそれ以下の強度 のピークしか得られなかった.これは大気中測定のために,Si Kα が空気の吸収によ り減衰したためである.Al(10.6 wt %)については空気中での吸収により Al Kαピー クは観測できなかった.  Fig.3 は自動車排出粒子の蛍光 X 線スペクトルである.乾電池式小型蛍光 X 線装置 での 8 keV の散乱 X 線は 800 counts であり,市販の蛍光 X 線装置での Rh Kα(20.17

keV)とそのコンプトン散乱ピーク(19.12 keV)がそれぞれ,1700 counts, 4700 counts

の強度で得られた.試料からのもっとも強い蛍光 X 線は Fe Kαで乾電池式小型蛍光X

線装置,市販の蛍光 X 線装置のそれぞれで 1200 counts と 15000 counts の強度で検出 された.

 Fe 以外に,Zn(0.101 wt%), Ca(0.53 %),Ti, S が検出された.K(0.115 wt%)に

ついてもピークが観測された.特に Zn については,散乱 X 線の間に Zn Kα が明瞭な

ピークとして検出された.Pb(219 ppm),Mn Kα,Cu Kα(67 ppm),Br Kα(56 ppm

参照値)については,市販の蛍光 X 線装置でのみ検出できた.Mn Kα については乾

電池式小型蛍光X線装置でも対応する箇所にピークが観測されたが,検出限界以下の

強度しかない.Br Kα(11.9 keV),Pb Lα(10.6 keV),Pb Lβ(12.6 keV)については,

前述のように光源の特性X線の差に起因している.Pbについては,Pb Mα (2.35 keV) と S Kα(2.31 keV)が近いために,自動車排出物のように両者の混在が仮定できる系 では,現状のエネルギー分解能(∼ 200 eV)の検出器ではその分離は難しい.この点 については市販の蛍光 X 線装置でも同様である.市販の蛍光 X 線装置では Pb Lα,β か ら Pb の存在は簡単に判明するが,S の存在については,定量的な見積もりが必要な場 合がある.今回の測定では,池底質(Fig.2)での Pb Lα および Pb Mα の強度比は約 3 となっているのに対して,自動車排出粒子では Pb Lα と 2.3 keV のピークの強度比 は約 1/2 となって強度が逆転している.これは 2.3 keV のピークの大部分が S Kα ピー

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X線分析の進歩 36 231 クによるためだと考えられ,自動車排出粒子標準試料にはSが存在することがわかる. さらに,Pb L 線については,Pb Lα,β の強度は Pb Lβ の方が強い(1:1.1)ことが実験 的に知られている.測定されたスペクトルでは,Pb Lα の強度の方が大きく,Pb Lα とエネルギーがほぼ等しい As Kα(10.5 keV)が重なっていると考えられる.また乾 電池式小型蛍光 X 線装置の場合も,S が混在する場合には励起 X 線が散乱されて検出 される影響を小さくするような配置等により,Zn のように Pb Lα, β 線の検出が可能 になると考えられる.  以上の環境標準試料についての分析結果を Table 1~3 にまとめた.市販の蛍光 X 線 装置による He 雰囲気下での定量分析結果および各試料の保証値・参照値(*)につい ても同時に記した.この定量分析では装置の簡易分析プログラムをそのまま用い,標 準試料等による補正は行っていない.乾電池式小型蛍光 X 線装置では,確かに市販の 蛍光X線装置で検出できた元素の一部が検出できていなかった.ただしこれは主とし 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 Fe Kβ Zn Kα Ta Lγ In tens ity ( c o unt s ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ Ar Kα Ta Lα Cu Kα Fe Kα Ti Kα Ca Kα Ca Kβ S Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 5000 10000 15000 Pb Lβ Ti Kα Br Kα S Kα Rh Lα Pb Lα As Kα Zn Kβ Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ Inte n sit y ( co u n ts ) Energy (keV) Ar Kα 0 2 4 6 8 10 12 14 0 500 1000 Fe Kβ Zn Kα Ta Lγ In tens ity ( c o unt s ) Energy (keV) Ta Lβ Cu Kβ Ar Kα Ta Lα Cu Kα Fe Kα Ti Kα Ca Kα Ca Kβ S Kα a) b) 0 2 4 6 8 10 12 14 0 5000 10000 15000 Pb Lβ Ti Kα Br Kα S Kα Rh Lα Pb Lα As Kα Zn Kβ Zn Kα Cu Kα Fe Kβ Fe Kα Mn Kα Ca Kα Ca Kβ Inte n sit y ( co u n ts ) Energy (keV) Ar Kα

Fig.3 XRF spectra of vehicle exhaust particles measured with (a) the dry battery XRF spectrometer and (b) a commercial XRF spectrometer.

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て,発生 X 線の強度の違いというよりは,むしろ発生 X 線と分析対象元素の蛍光 X 線 とのエネルギー位置関係が主原因であるといえる.Rb, Br などの元素は連続 X 線でし か励起できずに乾電池式小型蛍光X線装置では検出できていないが,例えば市販の蛍

Elements Dry Battery XRF Commercial XRF (air) XRF Measurements (He) Certified Values (ref. 10)

K ○ ○ 1.51 (wt%) 1.38 (wt%) Ca ○ ○ 1.0 (wt%) 1.51 (wt%) Mn ○ ○ 0.25 (wt%) 0.2 (wt%) S × × 0.075 (wt%) − Si × × 390 (ppm) − Fe ○ ○ 310 (ppm) 205 (ppm) Zn × ○ 320 (ppm) 340 (ppm) Cu × ○ 110 (ppm) 12 (ppm) Rb × ○ 44 (ppm) 75 (ppm) Sr × ○ 31 (ppm) 36 (ppm)

Table 1 Summary of dry battery and commercial XRF measurements for pepperbush and the abundance of elements.

Elements Dry Battery XRF

Commercial XRF (air) XRF Measurements (He) Certified Values (ref. 10) (*Reference Values) Si △ △ 6.0 (wt%) 21* (wt%) Fe ○ ○ 6.6 (wt%) 6.5 (wt%) Al × × 3.7 (wt%) 10.3 (wt%) Ca ○ ○ 0.84 (wt%) 0.81 (wt%) K ○ ○ 0.66 (wt%) 0.68 (wt%) Ti ○ ○ 0.59 (wt%) 0.64*(wt%) S × × 0.3 (wt%) − Mn ○ ○ 980 (ppm) 770* (ppm) V × × 500 (ppm) 250* (ppm) Zn × ○ 470 (ppm) 343 (ppm) Sc × ○ 250 (ppm) 28* (ppm) Cu × ○ − 210 (ppm) Pb × ○ − 105 (ppm) Zr × × 90 (ppm) − Rb × ○ − 45* (ppm)

Table 2     Summary of dry battery and commercial XRF measurements for pond sediment and the abundance of elements.

(11)

X線分析の進歩 36 233 光 X 線装置で測定した自動車排出粒子(Fig.3)の Rb Kα, Br Kα の強度については, Ti Kα と同等の大きさであり,Ti Kα については両者で検出できている.蛍光 X 線の 励起確率を無視すれば,乾電池式小型蛍光X線装置でも同様の信号強度の蛍光X線は 十分に検出可能だと考えられる.以上より,強度的には市販の蛍光 X 線装置並の分析 を環境試料に対して行うことは,乾電池式小型蛍光 X 線装置でも十分可能であり,特 に励起源からの散乱X線を十分減らすことができればさらに応用範囲は広がるといえ る.今回のリョウブ試料では,6.7 ppm の Cd が両者で検出できなかったが,Cd の存 在量が多い場合には Cd Lα(3.1 keV)のように Rh L では励起できない蛍光 X 線に対 しては,乾電池式小型蛍光 X 線装置での分析5)の方が可能性は大きいと言える.逆に 市販装置には Zr フィルターが装備されているので Zr フィルターを用いれば Cd K 線 を検出可能となる.特に,乾電池式小型蛍光 X 線装置の利点,乾電池駆動,ポータブ ル性を活かすことにより,実験室での測定だけではなく,環境試料のその場分析に加 えて,それに付随した系,リョウブに対しては土壌などの同時分析もその場で可能と なりうる.

Table 3     Summary of dry battery and commercial XRF measurements for vehicle exhaust particles and the abundance of elements.

Elements Dry Battery XRF Commercial XRF (air) XRF Measurements (He)

Certified Values (ref. 10) (*Reference Values) S ○ ○ 0.60 (wt%) − Ca ○ ○ 0.52 (wt%) 0.53 (wt%) Fe ○ ○ 0.51 (wt%) − Si × × 0.18 (wt%) − Zn ○ ○ 0.15 (wt%) 0.104 (wt%) K ○ ○ 0.10 (wt%) 0.115 (wt%) P × ○ 340 (ppm) 510* (ppm) Ti ○ ○ 420 (ppm) − Al × ○ 380 (ppm) 3300 (ppm) Sc × ○ 220 (ppm) 0.55* (ppm) Pb × ○ 250 (ppm) 219 (ppm) Cu × ○ 150 (ppm) 67 (ppm) Mn △ ○ 130 (ppm) − Sr × ○ 95 (ppm) 89 (ppm) Br × ○ 110 (ppm) 56* (ppm) As × × − −

(12)

4. 

 結 論

 乾電池 X 線発生装置と Si PIN X 線小型検出器を組み合わせた乾電池式小型蛍光 X 線装置を用いて,リョウブ,池底質,自動車排出粒子の 3 種の環境標準試料の元素分 布を調べた.市販のエネルギー分散型の蛍光 X 線装置でも同様の測定を行い,分析結 果を比較した.乾電池式小型蛍光 X 線装置では,K, Ca, Ti, Mn, Fe, Zn, Pb が検出され, 市販の蛍光 X 線装置ではこれに加えて Cu, Br, Rb が検出された.両測定でのこれらの 試料の検出された元素濃度は100 ppm オーダーであった.両装置での検出元素の違い は主として,光源から発生する特性X線と分析対象元素の蛍光X線とのエネルギー位 置関係が主原因であり,強度的には乾電池式小型蛍光 X 線装置でも,遷移金属を中心 に主成分から100 ppm オーダーの成分については,市販装置と同程度の分析が行える ことがわかった.乾電池駆動の利点を活かすことにより,環境試料のその場分析など にも,乾電池式小型 X 線は十分応用可能であると言える. 謝 辞  本研究の一部は文部科学省の科学研究費補助金(15750064)により行われた. 参校文献

1) M. Terasawa: J. Phys. Soc. Jpn., 25, 1199 (1968).

2) 河合 潤 , 稲田伸哉 , 前田邦子: X 線分析の進歩,29, 203 (1998). 3) J. D. Brownridge: Nature, 352, 287 (1992).

4) J. D. Brownridge, S. Raboy: J. Appl. Phys., 86, 640 (1999).

5) 河合 潤 , 山田 隆 , 藤村 一: 分析化学(Bunseki Kagaku), 53, 183 (2004). 6) 井田博之 , 河合 潤: X 線分析の進歩,35, 81 (2004).

7) H. Ida, J. Kawai: Anal. Bioanal. Chem., 379, 735 (2004). 8) 井田博之 , 河合 潤: 分析化学(Bunseki Kagaku), 53, 753 (2004). 9) H. Ida, J. Kawai: Anal. Sci., 20, 1211 (2004).

10) http://web3.nies.go.jp/labo/crm/ 2004 年 11 月アクセス . 11) H. Ida, J. Kawai: X-ray Spectrom., in press (2005).

Table 1 Summary of dry battery and commercial XRF measurements for pepperbush and the abundance of elements.
Table 3         Summary of dry battery and commercial XRF measurements for vehicle exhaust particles and the abundance of elements.

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