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小学校社会科概念探 求学習の創造
(5)
―主要概念 の更新 を中心 に一
社会科教育教室 /Jヽ 直
Creation Of Concept‐
Inquiry Learning of Social Studies in elementary school(5)
一
centered on the reforttl of Key‐Concept一
Naoki KoYAMA
I
は じめ に一 本 稿 の 目的 一 日本経済 は,1986年
末か ら長 い好況 を維持 した後,91年
春か ら下降局面 に転 じた。現在 (94年 7 月)は
回復基調 にあると言われているものの,な
お “平成不況 (90年代不況)"を
脱 しきれていない 状況 にある。むしろ急激 な円高 ドル安 に直面 して,立
ち直 り気味 の動向に水 を注すので はないか と 懸念 されている。 そのような中,企
業各社 は経営パ ラダイムの変更 を図 り(リス トラクチ ャ リング, リエ ンジエア リング),増
収増益体質か ら減収増益体質への転換 ■図っている。 ところで,こ
のような事態 。推移 は当然 なが ら概念探求学習の根幹 を成す主要概念構造 図 にも多 大な影響 を与 える。 その更新 を迫 らずにはおかない。バ ブル経済崩壊以後 の動向を視野 に収 めた主 要概念構造図が早急 に求 められる。 リス トラが一巡 した と言われている現段階 こそその好機 と思わ れ る。本稿 は,こ
のような問題意識か ら関連諸科学か らの本格的な分析 を待望 しつつ も,
とりあえ ず概念探求学習論 の立場か ら主要概念 の更新 を図るものである。①H
新 経 営 パ ラ ダ イ ム を模 索 す る各 界 の 動 向 平成不況下 にお ける経営者の意識変化の中で,最
も注 目したいそれ は従来か らの「川下主導の垂 直統合型経営戦略 (日本型供給方式)」 が限界 に達 した ととらえている点である。新 たな生産流通販 売 (消費廃棄 をサイクル内に取 り込む考 え方 も含 む)の
パ ラダイム 。方式 を創出しなけれ ばならな い事態 に立 ち至 った と認識 している点である。12j その結果,い
かなる経営パラダイム・ 方式 を構築 するのか とい うことは主に産業界 自身が選択す ることであ り,そ
れに積極的に関与す る科学 は政策科学 としての経済学,経
営学等である。社会認 識教育学 は直接的 に関与する立場 には無い。(社会認識教育学の主たる任務 はあるが ままの産業動向 か ら現代社会構造 をより科学的に手繰 り寄せ る授業構成原理や典型的教材教具 を明 らかにす ること にある。)し
が しなが ら,教
科内容学 (社会認識教育学 に とって関連社会諸科学の理想的 なあ り方) 研究 としての関連社会諸科学の成果 に学び,そ
の結果 を主要概念構造図に組 み替 える作業 は社会認 樹小山直樹 :小学校社会科概念探求学習の創造 (5) 識教育学 に とって常 に必要である。残念なが ら教科内容学 自体 は未だ未発達である。次善 の方策 と して構築済みの主要概念「川下主導の垂直統合型経営戦略」の更新 に関する限 りで産業界や政策科 学の最近 の指摘 を整理 してお こう。
0
1
用語整理 佐和隆光京大教授 は,著
書『尊厳 な き大国』(講談社,92年 )に
おいて「新 リベラ リズムー地球規 模での環境保全,国
際協調,持
続可能 な発展 をめざすグローバル・ ケインズ主義」 の立場か ら昨今 の方式転換論議の大筋 を次のように把握 している。 「70年代末か ら80年代半 ぼす ぎまで は,日
本式制度・慣行 ない しは日本経済 と日本社会 の『構造』 がむやみに礼賛 され る時代であつた。欧米 の経済学者や経営学者のあいだで は,地
理的には狭鯵で 天然資源 に恵 まれない 日本が,三
度 のオイルシ ョックを首尾 よ く乗 り切れたのはなぜか,
とい う素 朴な疑問か ら始 まり,日
本式制度・ 慣行 なかんず く日本式経営や 日本式産業政策 に日本 の成功 のゆ えんをた どろうとの知的関心が空前の高 まりをみせた。 ところが意外 な ことに,日
本式制度・ 慣行 への評価 は,86年
末か ら87年初頭 にかけての ころに,ま るで180度の大逆転 をとげたのである。この ころ,日
米 の貿易不均衡 はとどまるところを知 らぬ勢いで拡大 の一途 をた どっていたのだが,ア
メ リカのワシン トン筋や言論界 の一部 は,そ
の原因 を,日
本式経営の優秀性や 日本企業 の技術力 の比 較優位 にで はな く,日
本式制度・ 慣行 の不公正 さに求 めるようになった。 こうして87年の春 ごろを 境 目にして,文
化・ 思想面でのジャパ ン・ バ ッシングが始 まったのである。」 氏が言われ るところの「 日本式制度 。慣行」「 日本経済 と日本社会 の『構造』」力Sネオ 。モダン時 代の 日本型資本主義 の全体的・総括的特徴表現 とすれば,そ
の下位 に「 日本式経営」「 日本式産業政 策」 な どが位置付 き,さ
らに下位 に「終身雇用。年功序列 といった日本式企業 システム」「系列関係 に代表 される日本式企業間システム」な どが位置付 く。そのまた下位 に「 トヨタ生産方式」「 ジャス ト・ イン・ タイム方式」「 日本型供給方式」「チII下川上理論」 な どがある。 まず は,多
様 に使用 され ている用語 をこのように段階的に整理 してお きたい。 そして,本
稿で言 うところの「新経営 のパ ラ ダイム」とは生産方式 を軸 にした生産流通販売 とい う生産財 の流れに関す るパ ラダイムである。(な お,「日本型供給方式」の用語 自体 は直接的には橋本寿朗法政大学教授 〈現 :東 京大学教授〉の論文 「ネオ・ モダンな経済 と日本企業一 日本経済 の歴史的展開 と到達点―」〈『世界』91年 3月 号〉 に学 び,使
用 している。)2
産業界・ 学会か らの発言 ①盛 田昭夫氏の見解 佐和見解 を裏打 ちす る発言が,盛
田昭夫 ソニー会長発言である。氏 の論文「 日本型経営が危 ない」 (『文芸春秋』92年2月 号)で
ある。 また,平
岩経団連会長 (当時)が
唱 える「生活者 (消費者), 地域社会,外
国企業,地
球環境 と企業の共生 をはか る新三位一体論」 も同様であろう。 盛 田氏 の見解 は,「『良い ものを安 く』が欧米か ら批判 され る理 由」が「競争ルールの違 い」 にあ ることを指摘 した ものである。価格設定 のし方 を例 に とり,日
本企業 は先 に市場獲得 のための販売 価格 を設定 し,コス トや利益 を削 る方式であるのに対 して,欧
米 は逆方向の方式であ り,「整合性 の あるルールの上でフェアな競争 をしてい く」べ きであると説いてい る。 しか もそのようなルール変 更 は,シ
ェア獲得 に走 る日本企業 の現実 を踏 まえるな らば,一
企業 のみで行 なえるもので はな く,鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
2号
(1994) 231
「 日本 の経済,社
会 の シス テム全体 を変 えてい くこ と」で初 めて可 能 とこな る としてい る。(なお,盛
田論文 の波紋 は大 き く,反
対 論 も数 多 く提起 されてい るが割愛 す る。以下 の各界 の場合 も同様 であ る。)(4) ② 山口敏明氏 の見解 盛田見解 を地球環境 問題 に絡 めて発言す るのが山口敏明東 ソー社長 (経済同友会副幹事)で
ある。 「企業活動全体が,研
究開発の計画か ら始 まって,生
産,販
売,物
流,回
収,廃
棄 とい う全工程 に わたっての環境面での配慮 な り,マ
ネージメン トをしっか りさせてい くということも含 めた環境マ ネージメン ト・ システムをつ くらなければ,い
くらお題 日だけ唱 えていて もしかたがない。中●資本 主義が本 当に健全性 を保持 し続 けるためには,利
益 とか成長 だけを志向 していればいい とい うこと ではない。中●四%も
五%も
成長 しなければ経済が うま くいっている とい う感 じじゃない とい うこと がいつ まで続 けられ るのか を含 めて,環
境 と経済成長 をもう少 し掘 り下 げて,い
ろいろな角度か ら 議論や検討をす る必要が あると思っているわけです」 と。(『世界』92年 6月 号) ③稲盛和夫氏 の見解 盛田見解 に一部批判的であ り,後
に紹介する環境経済学 の一部 にも通 じる見解 として,稲
盛和夫 京セラ会長の「森 の思想」発言がある。 氏 は,「日本 の企業が海外か ら非難 されている本当の理 由は,『いい ものを安 く』売 るか らではな く,過
当競争 に基づ く集中豪雨的な輸 出や直接投資 によって海外 の市場 にもともと存在 していた企 業 を根絶や しにして しまいかねないか らである」と盛 田見解 を批半J的にとらえ,し
か し,「日本企業 は自由競争 に一定 の修正 を加 えるべ きで はなか ろうか」と述べて,「共生 と循環 の思想」「森 の思想」 を経営倫理 とすべ きであると提言 している。「森 の思想」には伊谷純一郎氏 によって紹介 された焼畑 農業 を営むアフリカ原住者 の生産思想や,梅
原猛氏 の縄文時代論,さ
らには石 田梅岩の思想が ミッ クスされているようであるが,要
は日本資本主義が「新 たに市場 を開発す るような独創性 ある商品 の開発競争」 に努 め,世
界 の資本主義 と「一種の『棲 み分 け』 を目指す」べ きであるとす る提言で ある。(日本経済新聞92年6月18日) ③ 橋本寿朗氏 の見解 橋本氏 は,K.ポ
ランニーの発想 を借 りて次のように方式転換 の必要性 を提起 している。 「社会 に『埋 め込 まれた』市場経済が,日
本で は『埋 め込 まれ る』べ き枠 を超 えて展開 したこと が問題であろう。産業廃棄物や家庭 の廃棄物 は環境 の許容限度 を超 えている。過剰 な産業主義 は社 会的損失 を産 み,そ
れ は回復不可能 な結果 をもた らしかねない。 そ して,1986∼
89年に発生 した狂 乱的地価 の高騰 は,期
待が期待 を呼ぶ,自 己実現的な投機 の結果であった と解釈で きる。J.K.ガルブ レイス も観察で きなか った社会的アンバ ランスはさらに一層著 し くなっている。過剰 な市場原理の 展開が,社
会問題 になっているのである。 そして,中
長期的に重大 な問題 は,世
界 システム との関 係では,日
米関係であるが,日
本経済 の歴史的展開 とい う点か らいえば,二
つの供給制約の可能性 であろう。一つはエネルギーであ り,も
う一つは労働力であって,1970年
代前半 に似ている。… し たがって,日
本型供給方式が普遍的に優位であるとみれば,市
場原理 の働 きを望 ましい社会的枠組 のなかに『埋 め込み』直す ことを検討 しなければな らない時 にきているように思われ るのである。」 (『世界』92年 6月 号)232
小山直樹 :小学校社会科概念探求学習の創造 (5) 氏 の『埋 め戻 し』論 は,佐
和氏が唱 える「 日本改造 のプロポーザル」 と共通 しよう。 ⑤「川鉄21世紀財団設立記念 シンポジウム・21世紀の新 しい産業パ ラダイムの構築 に向けて」 (92年5月)に
お ける議論 このシンポジウム は,中
谷巌大阪大学教授 の基調報告「日本型産業 システムの世界的位置づ け」 を受 けて,新
産業パ ラダイムの構築 を議論 した ものである。パネ リス トには中谷氏 に加 えて,経
済 評論家 の田中直毅氏,
リー ン生産方式 に詳 しいダニエル・ルースMIT(マ
サチューセ ッツエ科大学) 教授,イ
ブ・ ドーズINSEAD(仏
ビジネススクール)教
授,ナ
ロンチ ャイ 。アクラサニタイ開発研 究所理事 (タイ)が
登場 した。(報告書 は91年 8月 に同財 団か ら出版 された。) 中谷報告 はまず,「日本型産業 システム」とアメ リカ合衆国のそれ を比較 し,前
者がネッ トワーク 中心のシステムであるのに対 して,後
者 はマーケッ ト中心のシステムであ り,コ
ーディネーシ ョン やネ ッ トワークが力 を発揮す る分野,例
えば自動車産業や半導体産業で は日本 の産業が強い ことを 指摘す る。(渡辺尚京大教授 は日米欧の資本主義形態 を,日
本一生産優位型,米
一投資優位型,欧
一 販売優位型 と類型化す る。 日本経済新聞92年6月12日) 次いで,ネ
ッ トワー クは放置す ると内輪社会化するので「 シェアを非 日本企業,非
日本個人 にも 分 け与 えるような仕組みを導入」 し「非常 に強い日本 のシステムを,む
しろ長続 きさせ るというこ とが,い
まの日本 の産業 には要求 されている」 と述べ る。 このように,中
谷報告 は一種 の参入障壁 緩和論,撤
廃論の色彩が強 く,方
式転換論 としては中途半端 な論 に思われ る。 その意味で は,先
の 盛 田見解 と共通 している。 これに対 してルース氏 の見解 は厳 しい。「 日本 の企業の中で も,ベ
ス トの企業 だけがそのパ フォー マンスが優れていた とい うことです」 と言 う。例 えば トヨタ生産方式 を見て も,
トヨタ本社工場の みが理論的完成度の高いJIT生
産 を成 し遂 げているのであ り,下
請企業 はそのツケを余儀 な くされ ていることを子旨摘 してい る。 田中氏 も同様 の見解 を述べている。JITシ
ステムは極 めて「局所合理 システム」であ り,「完成 し たが故 に解体 し始 めているのが実態で はないか」 と言 う。氏 の者書 『最後 の十年・日本経済の構想』 (日本経済新聞社,92年
5月)ではさらに次のように指摘 している。「 この方式 は部分的合理化では あった ものの,
トータル・システム としては問題 を含む もの」であ り,「イ ンフラが不十分であるた めに,社
会 システムの方か ら生産 システムが反逆 を受 けることになった」 と。ルーツ氏が近未来の 産業活動 は「環境,持
続可能,産
業エ コロジー」への関心無 しには成 り立 たない と言 い,こ
れ まで の日本企業がその点で「傲慢」であつた と指摘す ることと,田
中氏が「社会」全体 の視野の もとでJITシ
ステムを判断す ることは,先
の橋本氏 の「埋 め戻 し論」 に通 じる。 ナロンチャイ氏 も日本企業 と東南アジア企業 との関係か ら厳 しい見解 を展開 している。「生産 のパ ー トナー としての海外企業への期待」を次のように披涯す る。「1960-70年
代,日
本 は東南アジアを マーケッ トとして しかみなかったわけですね。工業製品や消費者向 けの製品のマーケ ッ ト,原
料の 輸入 ソース として しかみていなかったわけです。… しか し,80年
代 に入 って,東
南 アジアを生産拠 点 とみるようにな り,進
出す るようになった。… しか し,80年
代 における発展の結果,わ
れわれ も 豊かになって きたわ けです。 シンガポールな どはニュージーラン ドよ りもずっ と豊かになってお り ます し,バ
ンコックもニュー ジー ラン ドよ りもだいぶお金持 ちになってお ります。 とい うことは, 『発展途上国』 とい う姿がずいぶん変わって しまったわ けです。…海外 の企業 に何 を期待す るのか といいます と,そ
れ は生産 のパー トナーになることなのです。… (注 ;小山一 日本企業 の)姿
勢が鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
2号
(1994) 変わ らなければいけない,出
資比率が変わっていかなければな らないわ けです。 また,企
業 の運営 の仕方,経
営の仕方 も変わっていかなけれ ばな りませんし,製
品やプロセスの開発 の研究 もしか り であ ります。… 日本 のシステムを,そのままそっ くりよそに移植す ることはで きないはずです。」と。。) ⑥寺西俊一氏 の見解 92年6月 に開催 された地球サ ミッ トをはさみ,地
球環境問題 と社会経済産業 システム との関係論 議 も盛 り上が りを見せた。『経済』(新日本 出版社)6月
号 は「地球サ ミッ トと環境問題 の原点」 を 特集 し,『経済セ ミナー』(日本評論社)6月
号 も「地球県境 の経済学」 を特集 した。 本稿で は,そ
れ ら個々の論文 の検討 に有効 な視点 を与 える寺西俊一一橋大学教授 の論文「環境経 済学 の課題 と方法」(『一橋論叢』92年4月号)を
要約,紹
介 しよう。現在認 め られ る環境経済学諸 論の類型的整理 にも役立 とう。0
氏 によれば,「1980年代の後半以降 (正確 にいえば1988年秋か ら),い
わゆる『地球環境問題』が 内外で急速 にクローズアップしてきた」と言 う。そして,「環境 と開発 に関する国連会議 (United NationsConference on Environment and Development,UNCED)」 (92. 6。
1∼
6. 12)を
契機 に環境 経済学 も注 目を集 めていると言 う。 さらに,確
か に従来の経済学 は環境問題 を必ず しも主要な研究 対象ない しは分析対象 とはして こなかったが,カ
ップ,ピ
グー,マ
ルサス,エ
ンゲルス,マ
ル クス, クネーゼ,等
々の経済学者達 は環境問題 の経済学的アプローチをして きた,と
言 う。 これ らの考 え 方 も含 めた上で,氏
は環境経済学 をまず二つに大別する。 一つ は,「すで に確立 して きた経済学 の理論的枠組 みを前提 とし,いわば応用経済学 の一分野 とし て環境経済学 を定立 しようとす るもの」である。いま一つ は,「県境問題 の現実か ら従来 までの経済 学の理論的枠組 みそのものを改めて問い直 そうとす る立場」「経済学方法論の再検討 をすすめること を通 じて環境経済学の定立 を図 ろうとす る もの」である。 次いで,これ までの経済学の諸理論 と体系の発展史 を振 り返 り,下 記の五つの理論的アプローチ・ タイプに整理す る。 タイプ1は,「物質代謝論 アプローチ」である。エ ン トロピー経済学,エ
コロジー経済学 と呼ばれ ているもの も含 まれ る。環境問題 を「人間 と自然 との間の物質代謝過程 のあ り方の問題」と把握 し, 「物質代謝機構 を担 っている社会経済 システム とそれに対応 した経済学のあ り方 自体が根本的に再 検討 され る必要がある」 とす る考 え方である。玉野井芳郎氏が代表的論者である。C7j タイプ2は
,「環境資源論アプローチ」である。現代 の躁境問題 を「“環境資源"を
め ぐる経済問 題」として把握 し,「ス トックとしての “環境資源"の
合理的利用の問題 とそこか ら生 み出され るフ ロー としての環境サー ビスの最大化 との関係 をどうす るかが重要な環境経済学上の理論 問題」 とす る考 え方である。ヘブマン,ペ
スキンが代表的論者である。 タイプ3は
,「外部不経済論 アプローチ」である。「 ピグーによる外部不経済 としての社会的費用 の理論的認識 に端 を発 し」,「今 日の経済学が公害現象や各種 の環境破壊 の問題 に取 り組 む場合 の主 流的なアプローチ」である。 さらにまた,「厚生経済学」「公共経済学」 として独 自の発展 を遂 げて きた考 え方で もある。「いわゆる『市場 の失敗』として,市
場経済が もつ固有 の欠陥 を社会が認識 し, その限 りにおいて,そ
の是正のための公共介入 を正当化す る論理 を組 み立てた」点 に注 目したい。 タイプ4は
,「社会的費用論アプローチ」である。カップに代表 されるように厚生経済学 の流れを 継 ぐ考 え方であるが,「社会的費用の発生 は私企業体制 の もとで は不可避 だ とす る政治経済学的な志 向を持 っている点で,独
自なアプローチ としての意義」が認 め られている。小山直樹 :小学校社会科概念探求学習の創造 (5) タイプ 5は,「経済体制論アプローチ」である。代表的論者に都留重人氏
,宮
本憲―氏がいる。宮 本氏 は「中間システム」論による環境保全型経済学を提唱 している。 ⑦ その他,現
実的な産業組織論的発言 2の① か ら⑥ までの諸見解 は,強
弱,濃
淡の差 はあるものの社会経済 システムや産業 システム を 環境論的背景 を視野 に含 めなが ら論 じた ものであった。 しか し,日
本 の産業 をどのように再構築す るかの関心の中にはそのような配慮 と無縁 な もの,希
薄な もの も多い。極 めて現実的,経
営戦略的な諸見解 を次 に紹介 してお こう。(このような見解 こそ が現実 を リー ドす る可能性 も大 きい と予想 され る。)C81 例 えばフォーカス戦略・特化戦略 。水平化 (リ ージ ョナル)戦
略 と呼ばれ る考 え方がそ うである。 小林裕 A・Tカ
ーニー社 (国際 コンサルテ ィング会社)副
社長 は,日
本企業の生産 リス トラクチ ャリングが垂直分業か らアジア全域 を舞台にした水平分業 に変化 しつつあることか ら,生
産戦略の 特徴 を「ハブ&ス
ポー ク型一 日本中心の垂直分業型」か ら「 ワン・ ノブ・ ゼムのチェー ン型」への 変化 ととらえ,AFTA(ASEAN自
由貿易連合)の
形成 により各国の保護貿易規制が緩和 され国別 インサイダー化 を前提 にする日本企業 の従来 の戦略が通用 しな くなって きた今 日,国
別 に独立 して 考 えるマルチ ドメスティックス戦略か ら,水
平分業 を基軸 とす るグローバルない しアジア広域 を対 象 とす る リージ ョナル戦略へのシフ ト移動が求 め られていると言 う。 確かに,生
産戦略面や産業技術 の融合 とい う側面で は「全面的な水平分業」が進行 している。家 電や 自動車生産が典型である。 しか し,経
営面か らとらえるな らば「垂直統合」の側面 を無視 で き ない。否,む
しろ垂直統合 による極大利潤 の確保 のための「水平分業」 と言えよう。 その ことを指 摘す るのが福 田伸次神戸製鋼所副社長である。氏 は「規模 の利益」(水平分業)と「連結 の利益」(垂 直統合)の
組 み合わせへ と,換
言すれば産業 システムの個別業種毎 のタテ型構成か らタテ とヨコで 関連づ けるネ ッ トワーク型構成への進化 を提言 している。(日本経済新聞,朝
日新聞) 日本国内の生産 を高付加価値製品に焦点化 (フォーカス)し ,多
角的経営か ら得意 な分野 の経営 に特化 して垂直統合 の核 とな り,規
模 の利益が生かせ る分野,比
較的低賃金労働力 を期待 で きる分 野 は,極
力,ア
ジア諸国にシフ トしようとい う訳である。 ⅡI新
パ ラ ダ イ ム 今後 の産業動向をフォロー しなが ら適宜修正 を加 えていかなければな らないが,現
時点で以上 に 見 たような新経営パ ラダイムを概括的 に表現すれば「新旧タイプの水平分業 を各社 な りの選択組 み 合わせで一段 と強化す る川下主導の垂直統合型経営戦略」 と言 えよう。 すでに日本企業 (多国籍企業)の
多 くは,こ
れ までに構築 して きた資本力・ 市場支配力 'と 較優位 の立場か ら垂直統合 の要の位置 を確保 し,工
程間分業 と製品差別化分業 による国際分業一貿易関係 を強化・ 再構築 し直 し,一
層の世界大での利潤 の極大化 と超過利潤 の獲得 をめざした新戦略 に走 り 出 している。今後 はこの動 きが一層加速 され よう。(もちろん,先
述 したように “フライ ング・ギー ス"に
よる工業化 に一定程度成功 し得たアジア諸国・ 地域が 日本企業 の戦略 をその まま受認す ると は考 えられず,何
らかの修正・ 転換 を余儀 な くされることも予想 され るが。) 以上 の ことを産業学習 に引 き付 けて繰 り返 し述べてみよう。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第36巻 第
2号
(1994) 80年代後半か らバ ブル経済 の崩壊,不
況 に至 るまでの好況期 の 日本 の産業 (現行指導要領や教科 書が提示す る産業像)に
関 しては,“ナII下主導の垂直統合型経営戦略"と 規定,命
名 した旧パ ラダイ ムを適用す ることで大方の説明が可能であつた。典型的事例や教材 は,各
産業分野 におけるロジス ティックス物流情報 システムを駆使 した多品種少量混流多頻度JITな
生産流通販売 (ト ヨタ生産 シ ステムを原型 とした 日本型供給 システムによるそれ)に
求 めることがで きた。 しか しやや時期 を遅 れて,最
低 コス ト・ 最高収益 の実現 という日本型供給 システム構築当初 の狙 いに反す る過度なシス テム化 (例えば過剰 品質 のモノ作 りや超多頻度小 日配送な ど)や ,シ
ステム内部 に潜 む負の側面の 顕在化 (例えば自社 中心 システム同士の摩擦,外
部負経済 の非 内部化 による環境公害問題 の発生な ど)も
進行 し,気
がつ けば日本 の産業 は自動車産業 に見 られ るような高 コス ト体質 に陥っていた。 (対照的にアメ リカ製造業界 は立 ち直 りの気配 を見せている。 自動車産業界 も トヨタ生産 システム を原型 とする リー ン生産方式 にアメ リカ式合理主義 を加味 して低 コス トの 日本車 キラー・ ネオ ンな どを次々 に生み出 してい る。) そこで 日本 の企業各社 は,“新 旧タイプの水平分業 を各社 な りの選択組 み合わせで一段 と強化す る 川下主導の垂直統合型経営戦略"へ
の転換 を急いでいる。グローバルな リス トラ,本
格的な多国籍 企業化 を追求 し,高
利潤体制(増収増益体制→減収増益体制)を再構築 しようとい う訳である。(論 者により,日
本 中心の垂直分業一ハ ブ&ス
ポーク型か らワン・ ノブ・ ゼムのチェー ン型への転換, 国別マルチ ドメスティック戦略か ら水平分業 を基軸 とす るグローバル戦略・ リージ ョナル戦略への 転換,産
業 システムの個別業種毎 のタテ型構成か ら規模 の利益 と連結の利益 を組 み合わせ,タ
テ と ヨコで関連づけるネ ッ トワーク型構成への転換,キ
ャッチア ップ型経営か らパイオニア型経営への 転換,フ ルセ ッ ト型産業展開か らアジアネッ トワー ク型産業展開への転換,“二十一世紀の大市場 中 国"や
“アジア最後 の市場ベ トナム"に
照準 を合わせたネ ッ トワーク型への転換,な
どと表現 は多 様である。それ らの共通性 に着 目して上記 のように標準化 した。 なお,新
パ ラダイムヘの転換が負 の側面の解決 にどの程度有効であるか,さ
らには欧米 の資本主義や勢いを増す東 アジアー東北 。東 南アジアの資本主義 との車し蝶 を回避 し,日
本型資本主義 に棲 み分 けの場 を保障す るか,そ
れ は定か ではない。見解 も分かれている。) Ⅳ 新 パ ラ ダ イ ム か ら見 え る産 業 諸 相 暫定的にせ よ,新
パ ラダイムをこのように設定す ると,新
たな事実や局面が見 えて くる。以下, 産業毎 に幾つかの顕著 な事例 を紹介 してみよう。 ① 工業 日本の リーディングカ ンパニー と呼 ばれ,旧
パ ラダイムを象徴す る トヨタ自動車 も,こ
こにきて 新パ ラダイムヘの一層の傾斜,重
点移動 を語 り始 めた。豊田達郎社長 は年頭所感で「今後 はどこで 何 をつ くれば安 いか,地
球的な視野で精密 にコス ト計算 をしなければな りませんね,部
品によって は海外のほうが相 当安 い ものがあ り,そ
れ らは海外拠点で集 中生産 して 日本 に持 って くる,で
ない とコス ト的に外国メーカーに太刀打ちで きません」(朝日新聞94年 1月 5日)と明快 に戦略転換 を語 り,国
内下請部品企業 を震撼 させた とい う。 これ まで,旧
パ ラダイムの典型 中の典型 として トヨタ生産 システムに注 目して きたが,そ
れ は同 社が西三河モンロー主義 に固執 してい る限 りの ことである。低 コス ト部品の所在 に合わせた地球規小山直樹 :小学校社会科観念探求学習の創造 (5) 模での生産拠点の配置 とは,“脱西三河"を意味す る。振 り返れば
,日
本 の自動車産業 は好況時にお いて 」海外水平分業 を行 って きた。 トヨタも例外ではない。 しか し,旧
パ ラダイムを西三河地方で 完成度高 く実現 したために海外生産比率 は日産な どに比べて低かった。 ところが,急
激 な円高に道 遇 し,乾
いたタオル を絞 る と形容 されるコス ト削減努力 にも限界が見 えた今,本
格的な生産拠点海 外分散化 に踏み切 らざるを得 な くなった訳である。 ちなみに,日 本 の乗用車11社の94年海外生産計画 を見 る と,日標 台数 は前年 に比べ1割
強増 え500 万の大台に,逆
に輸 出 は1割
程度減 り410万台程度,9年
連続 の減少である。今年初 めて海外生産台 数が輸 出台数 を上回る見通 しである。トヨタの海外生産 も初 めて100万台 を超 え,首位 の 日産 を追 う。 前年比伸び率 も15%と
高い。 組 み立 て工程が 自動車産業 よ りも比較的簡単な家電産業や,付
加価値が付 けに くい部品を扱 う電 子部品産業のアジア水平分業 の中には,旧
パ ラダイム型水平分業の一層の強化が見 られる。 それ は,資
本進出・ 技術移転 の第一期以来続 く “賃金格差 を利用 したコス ト削減,国
際競争力 の 維持"を
目的にした水平分業である。 コイル生産 のス ミダ電機 の ように海外生産比率95%と,す
で に脱 日本化 したメーカー もある。 一方,同じ家電産業や電子部品産業 の中には,成
長す るアジア市場 に照準 を合わせた現地化戦略, アジア企業化戦略 を採用す る例 もある。アジアには安価 な労働力が豊富 にあるとい うのはひ と音前 のイメージであるとの認識か ら,第
二期 (技術移転 を行 い,そ
の技術 を磨 き,他
の第二国への輸 出 拠点化 をめざす段階)の
水平分業へ,さ
らには第二期 (部品 を生産 し,組
み立 て,現
地市場へ販売 する段階,日
本へ逆輸入す る段階)の
それへ と脱皮す る動 きである。単 に生産規模 を拡大する段階 か ら,よ
り高い投資効率 を求 め高付加価値製品を製造す る段階である。当然,国
内設計部門や製品 開発・ 研究部門の移転,現
地化 も進 んでいる。家電・ 電子部品産業 に限 らず他 の分野で も,例
えば 自動車産業で も同様 の新パ ラダイム型水平分業が増 えている。力日えて最近では,共
生型水平分業 の 芽 も生 まれている。 日本 セラ ミック (鳥取市)と
中国科学院の合弁企業 。上海尼賽拉伝感器 (防犯 装置 の赤外線セ ンサーを製造)の
場合,中
国側が光学 フィルター技術 を,日
本側がセラ ミック・ チ ップ加工技術 を持 ち寄 り,対
等 なパー トナーシップの形成 を目指 した。 その成功で 日本セラ ミック は大証二部上場 を果 た した。 日本側が基本技術や生産手法 を一方的 に提供 し日本型経営の押 し付 け と批半」されるケース もある中,相
手国の自立的工業化 にもつなが る事例で はなか ろうか。 ところで,日
本輸 出入銀行 の調査 によれば,す
でに海外 に生産拠点 を持 つ日本 の製造業各社 は96 年度計画で海外生産比率 を20%超
(92年度全業種平均 は14.8%)に
まで高める意欲 を持 っていると い う。その通 りに推移すればます ます逆輸入比率や部品現地調達比率 も高 まろう。大蔵省の貿易統 計 によれば,93年の製品輸入額 は前年比6.9%増
の1251億4千
万 ドル,製
品輸入比率 も52%と過去最 高を記録 した。半導体,音
響映像機器(テレビ,ビ
デオ),衣
類が急増 している。中で も中国か らの 製品輸入 は前年比31%増
の141億8千
万 ドル,製
品輸入 'ヒ 率69%と
,急
増 している。 一方,急
加速する海外水平分業 と対照的に,国
内で は下請企業 の倒産,大
企業の工場閉鎖・再編, すなわち “産業 の空洞化"が
進行 し,雇
用失業問題 や草 の根技術消滅問題が深刻化 している。国内 各地への工場進出 も激減 している。 日本 の産業 を覆 うこれ ら今 日的諸問題 も,実
はパ ラダイム転換 と密接不離の関係,表
裏 の関係 にあることがわか ろう。当事国の産業空洞化 を防御 しなが らいかに 技術移転 を進 めるか,こ
こに先進資本主義国共通の焦眉の課題がある。 旧パ ラダイムを前提 にした “製販同盟"の
動 きもある。花王 はこれ まで “物流 とはいかに運ぶか ではな く,い
かに運 ばないかである"と
の理念か ら “時間革命・情報深化"(販
社社員 の直行直帰型鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
2号
(1994) 237
勤務が典型)を推進 し,川
上 メーカー による川下か ら川上 までの一貫 したJIT展
開 をめざして きた。 しか し先頃,同
社 はジャスコと情報 システム型の製販 同盟 を結んだ。不況で価格体系が崩壊するな か,無
駄 のない低価格商品供給体制 の確立が製販共通 の利害であると認識 し,自
社 中心 システムを 一部崩 した訳である。味の素や丸紅 と製販 同盟 を結 んだダイエーの中内功社長 によれば,こ
のよう な新 たな関係 は “取 り引 きか ら取 り組 みへ"の変化であると言 う。価格支配権 を巡 る対立 と緊張 は, 低 コス トを合 い言葉 にした同盟へ と変わ りつつある。 ② 農水産業 旧パ ラダイム下で は,川
下主導化す る国内の農水産業 に焦点を当てて教材化 した。新パ ラダイム 下では,新
農政プラン (農家護送船 団方式か ら選別方式への転換)や
ウルグアイ 。ラウン ドの合意 内容 (コメの部分開放,コ
メ以外 の農産物 の全面関税化)に
象徴 され る今後 の農政基調 (規制緩和 領域の全面化)一
“高 まる日本 の食 の海外依存"に
も限 を向けたい。 コメは市場原理の時代 に突入 した。関税化 を待 ち望む米国コメ農家で は長粒種 か ら中粒種への品 種転換が進 んでいる。 コシヒカ リな どの銘柄米 はすでに試作段階 を脱 し,専
用の精米設備 を導入す る段階 にある。オース トラ リア も日本 の新米端境期 に出荷で きることを差別化 して同様 の準備 を進 めている。すでにコス ト面での国際競争力 を備 えた これ らの外国米産地 は,今
後 は専 ら川下ニーズ ヘの対応 (日本人 の味覚 に的 を絞 ったコメつ くり)を
急 ごう。 逆に,日
本 のコメ農家 は待 つたな しの生 き残 り時代 に入 った。低 コス ト高収益 をめざ した大規模 化や法人化が進 もう。高 コス ト体質 を改善で きずにコメか らの離脱 を余儀 な くされ る農家 も増 えよ う。アグ リビジネス も盛 んになろう。 コメ以外 の農水産物の世界で は,す
でに生鮮 デフレ (国内市場で農水産物価格が軒並み下落 し, 多 くの品 目が戦後最安値 を更新)現
象が常態化 している。安価 な輸入品の大量流入が続 いているか らである。今 回のラウン ド合意 はそれ を一段 と加速 させ よう。バ ター,脱
脂粉乳 も新 たに関税化 の 対象 とな り,牛
肉,オ
レンジな どの関税率 は軒並み引 き下 げられ る。豚 肉よ りも安 い牛肉の出現で “自由化後 も品質差か ら国産牛肉の生 き残 りが可能"と
い う棲 み分 け論 は急速 に色 あせた。今,国
内農家 は一部 の高級和牛 を除いて衰退す る一方 との危機感 を募 らせている。鳥肉 も輸入 プロイラー 肉に,豚
肉は輸入牛肉に消費 を奪 われている。 その模様 を角度 を変 えて(野菜や魚介類 も含 めて)“海外 に依存する日本 の食事情"と していま少 し見てお こう。周知の通 り,近
年,ア
ジアNIESか
らASEANへ
と輸入先 を移動 して きた 日本の食 は,現
在,中
国やベ トナムヘ と達 した。 その背後 には外貨獲得の手段 として対 日輸 出拡大 を狙 う新 興産地の事情 と,低コス トや鮮度 を求 めて次々 とシフ ト移動する日本 の国際流通業者 の思惑がある。 八栢伴中国室の鈴木三知登部長 は,十年後 には野菜 を中心 に中国が 日本 の台所 にな ろうと予想す る。 ちなみに,93年
の中国産ニ ンニ クの輸入量 は,国
内最大産地の青森県産 に迫 る勢 いである。他 に味 噌用大豆,ソ
バ粉,ア
スパ ラガス,キ
ャベ ツ,サ
トイモ,ゴ
ボウ,ウ
ナギ,焼
き鳥 串な ども多い。 変わった ところで は墓石 も伸びている。 まさに,“味Hg汁か ら墓石 まで中国産"と呼べ る状況が生 ま れつつある。ちなみに,98年
には,中
国か ら見て 日本 は最大の,日
本か ら見 て中国 は米国 に次 ぐ第 二位 の貿易相手国になった。 ベ トナムに とって日本 は総輸出額 の25%を
占める最大 の輸出相手国である。海産物 は冷凍 ものに 加 えて低 コス トの加工品が 日系企業 によって逆輸入 されている。 コ トブキのイカめ し 。カニお こわ である。野菜 に注 目す る野崎産業 は日越合弁企業の協力で 日本 の種子 を用いたキャベ ツ,タ マネギ,小山直樹 :小 学校社会科概念探求学習の創造 (5) キヌサヤな どの契約栽培
,試
験輸入 を開始 し,近
く本格輸入 に踏み切 る。 両国以外 にも,“アジアの農場化"をめざすニ ュージーラン ド(関東向けと関西向 けの二種類 のカ ボチャを輸 出),低
コス トのブラックタイガーで攻勢 をか けているイン ド,北
半球 の漁端境期 に養殖 銀サケを輸 出す るチ リ,な
どの動向 も見逃せない。最近 目立つ もの幾つか を挙 げて もこの有 り様 で ある。当然,国
内農水産業界 は生産体制 の抜本的見直 しを迫 られ,生
産性が高い一部 の大規模生産 者 しか生 き残 れない状況が生 まれている。産業空洞化 は農水産業 にも確実 に及び始 めている。 ③ 伝統工業・地場産業 旧パ ラダイムにおいては,伝
統工業 は多品種少量生産時代 の先 に予想 され る芸術的一品手づ くり 時代 の工業 ととらえている。 それに変更 はない。 このタイプの伝統工業 は,ニ
ーズに見合 う規模で 今後 も持続的に発展 しよう。 しか し,日
本全国や海外 を市場 にす る地場産業(約400産地 と言われる地場産業 の中で,あ
る程度 の歴史や伝統 を有す るものを伝統工業・ 在来工業 と呼ぶ。南部 の鋳物,会
津若松漆器,足
利 の絹・ 人絹織物,燕
の金属洋食器,輪
島漆器,丹
後 ち りめん,府
中家具,今
治のタオル,有
田磁器 な ども 地場産業であ り,そ
の中の一部が伝統工業 と呼ばれている。)の多 くは危機的状況 にある。特産品的 消費財 を生産 するためにアジア途上国の低価格製品 と競合せ ざるを得ないか らである。 日本 の親企 業 もアジア水平分業 を行 い,逆
輸入比率 を高 めているか らである。(燕の金属洋食器 の場合 も中国製 中間半製品 に押 されて出荷高3割
減 に追 い込 まれている。) 丹後 ち りめん と今治タオルの現状 を見 てみ よう。丹後 ち りめんの場合,和
服離れ に加 えて中国な どか らの安 い輸入品 (93年の外国産和装用絹織物 の輸入量 は300万反超)に圧倒 されてい る。丹後織 物工業組合 によれば,73年
の生産量996万反が93年 には241反に,業
者 も5400社 か ら1300社 に減少 し た。最近1年
間で休止 した機械 は7200台増,約
400社が倒産や廃業追い込 まれた。安 い原料で生産 し 国際競争力 を増大 させているアジア途上国 とは対照的に,生
糸一元輸入制度 に縛 られてコス ト削減 も限界 を超 えた。まさに瀕死 の状態である。(通産省 は多国間繊維取 り決めMFAに
もとづ く輸入数 量制限を発動す る準備 に入 った,
と報 じられているが。) これ まで,高
級品に特化 し不況や輸入品の攻勢 に強い とされてきた今治のタオル も方向転換 を強 い られている。アジア途上国の追撃 (汎用製品で得 た利益で中高機能製品製造設備 を導入)が
予想 以上 に早 く,特
化・ 棲み分 けが崩れ始 めてい る。資本力のある一部 のメーカー は相次 いで中国に生 産拠点 を移 し,日
本向け高級品の本格生産 を開始する。 それで もなお, 5年
後 に生 き残れ るのは今 治産地約300社強の うちわずか数十社 と予想 されている。不況 に資金難や後継者不足が加 わ り廃業 を 選ぶケース も目立つ。 地場産業 に限 らず産業全体 に言 えるが,ア
ジア途上国の追撃 をかわ し国内生産 を維持す るために は,絶
え間無い製品の高度化や新素材・ 新生産技術 の開発が不可欠 になろう。 ④ 運輸業・ 通信業 二十世紀 はモノに付加価値をつける時代であった。二十一世紀は情報に付力H価値 をつける時代 に なろう。 日本のリーディング産業 も “大量生産 。組み立て型最終財"産
業から “最終財の支援・統 合型"産
業 (最終財の生産や利用を支援 し,統
合する財 を提供する産業)に
その座 を譲 ろう。そこ で注目を集めているのが通信産業 (電子情報通信産業)で
ある。アジアとの水平分業,棲
み分けに も適 した産業であり,2010年 には市場規模123兆円,雇
用吸収力240万人に達すると期待 されている。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
2号
(1994) 239
政府が規制緩和 を急 ぎ,育
成 を画す理由 もここにある。 このような動向 も晩み,旧
主要概念構造図にもとづ く教材化 を試みたので紹介 しよう。教材解釈 は「高度情報化社会 における情報通信サー ビス (気象情報サー ビス)は ,多
品種少量・ 変種変量サ ービスによる高付加価値化が求 め られるので,川
下需要即応型 。川下需要開発型 になる」 とい うも のである。授業展開 は,ス
ーパーや コンビニの日配商品(豆腐や牛乳)の
発注数 と売れ数が,一
見, 奇妙 にも一致す る事実 を示 し,な
ぜ と問いかけ,背
後 に顧客毎 に加工 した「単品 。品群売れ行 き予 測システムサー ビス」(今回の典型的教材 はウェザーニ ューズ社 の気象情報サー ビス)があることを 探求す るとい う展開である。 これ までの通信学習の中には,例
えば放送局 を取 り上 げて放送局 自体 (記述的知識)や
工夫 。努力 の理解 に終始す るもの も見 られたが,上
記 の教材化で は通信産業 をサ ービス産業 ととらえている。 運輸学習の場合 も同様である。宅配便 を扱 えば直 ちに運輸学習が成立す る訳ではない。宅配便 は ヤマ ト運輸 の社訓(運送行為 は委託者 の意思の延長 と知 るべ し)が 端的に語 っているように,顧
客・ 荷主の意思 を先取 りし,モ
ノ と情報 の一元的管理 システムによる多頻度小 日混載JIT物
流サー ビス を商品化 した ものである。 この局面 を切 り出さなければ宅配便業・ 運輸産業 を とらえた ことにはな るまい。運輸産業・ 通信産業共 に顧客需要創造型サー ビス産業である点 を再確認 したい。 このような視点 に立てば,今
後 も多彩 な教材が期待 で きる。宅配便 に関 して は,引
き続 き商品開 発アイディアのユニークさ (94年1月 の郵便料金の値上 げ も,価
格差解消効果 に終わ らせず,雑
誌 やカタログ輸送 の需要 を狙 う新商品の開発 に結び付 けようとしている)に
注 目したい。市場 の成熟 が言われ る中で大手各社 ともに輸送個数 を堅実 に伸 ばす理 由の一つである。放送・通信 に関 して は, 折 しも気象情報 の自由化 に伴 い気象予報士が誕生す る時期である。テレビ各局 の気象情幸艮番組 も, 今後 は諸外国並みに同業他社 との差別化 を競 い合 う多彩 な画面 になろう。CATV双
方向サー ビスを 入 り口にしたマルチメディア通信構想(NTTは
米国の情報 スーパーハイウエー構想 に対抗 して2010 年 までに光 ファイバーによるネ ッ トワークを家庭 にまで張 り巡 らし脱電話化 をめざす,東
京都 は臨 海副都心で96年度か ら大規模実験 を予定,杉
並ケープルテレビも対応周波数帯域 の拡大 を予定)も
動 き始 めた。伝送方式 を巡 る “ハイビジョン騒動"の
記憶 も新 しい。曲折 はあろうが実現すれば社 会生活や経済 の し くみ も大 きく変わ る。個人向け情報サー ビスが家庭 に入 り込 み,ホ
ームバ ンキン グ,テ
レビシ ョッピング,遠
隔医療サー ビス,ビ
デオ・ オ ン・ デマ ン ドな ども可能 になる。家庭情 報化時代の到来である。日本のマルチメディア市場 を有望視 したテレビショッピング米国最大手HSN
社 は,住
友商事や米国のCATV最
大手TCI社
と提携 して 日本での事業化 にむけて早 くも動 き出 し ている。伊藤忠商事や東芝,三
井物産 も同様 の動 きを見せている。近未来社会予測型教材 の開発 も 可能であろう。V
おわ りに 川下主導の垂直統合型経営戦略に替わる新パラダイムを「新旧タイプの水平分業を各社な りの選 択組合わせで一段 と強化する川下主導の垂直統合型経営戦略」 と規定 した。 これが新主要概念構造 図作成のための基本的視点である。 次の研究課題 は主要概念構造図の更新である。それにもとづ く典型的教材教具の開発,授
業過程 の構成 (教授書試案作成)で
ある。別稿 に譲 りたい。小山直樹 :小学校社会科概念探求学習の創造 (5) く注 〉 1. 日本経済新聞94年7月 4日付の景気動向研究班記事「景気底入れ,円高の試練」 は,足元の景気はミクロ,マク ロのどちらか ら見ても回復への素地が整いつつあるとして
,①
国内総生産の六割弱 を占める個人消費が昨年後半 か ら回復 し,景気 を押 し上げ始めている,②在庫調整が最終段階を迎えている,③米国やアジアの景気が拡大 し, 欧州の景気にも底入れの兆 しが見 える,このため円高にもかかわ らず液晶表示装置などの輸出が伸びている,④
公共事業や住宅建設が景気を下支 えしている,の四点を挙 げている。同時に,生産設備の過剰感が残 り設備投資 の減少が足かせ とな り回復テンポは緩やかにならざるを得ず,加
えて急激な円高問題に直面 していると懸念を表 明している。ちなみに,5円
の円高で電機業界が600億円,自 動車業界が500億円,鉄鋼業界が115億円の利益を失 うと言 う。 産業実態を科学的に分析する関連社会諸科学が“大人のための社会科学研究"“教師自身のための学問研究 とし ての教材研究"と とらえると,それ らを子 ども向けに解説 した “子 どものための社会科学研究入門"が
構想で き る。(社会科学科論が典型である。) 通常 はここまでが教科内容学の守備範囲である。 しか し,教
科教育学 としての教科内容研究・教材研究 はいま 一段 と深化 した “子 どもが行 う源社会科学研究"で
なければならない。 “入門"が
“精神のバケツ理論"にもとづ くのに対 して “サーチライ ト理論"にもとづ く。 日本型供給方式が行 き詰 まっていることは,日本型供給方式の産みの親 とも言える トヨタ自動車lklの動向を見 れば一目瞭然である。多品種少量,変
種変量のフル・ ライン生産 は,販売台数拡大 に伴 う量的拡大時においては 高収益をもた らすが,販売台数減少基調にあっては売るだけ損になる。高コス トをいかに改善するか,「乾いたタ オルをまだ絞 る」 と形容 される無駄の排除に挑んでいるのが現状である。 日刊工業新聞93.6.29は トヨタの「特別
VA(価
値分析)/VE(価
値工学)活
動」「緊急VA/VE活
動」 を紹介 し,1000億 円の製造 コス ト削減が「 これまで とは違 った切 り口Jによる無駄の排除であると言 う。 しかし
,急
激な円高や海外工場生産能力増強に伴い 田原工場第ニ ラインの停止など,従来の合理化手法だけでは対応 しきれない状況が生 まれている。一層の リス ト ラを余儀な くされているのである。 川中流通業や川下販売業 も同様である。多品種少量混載JIT物流 は環境破壊のみならず交通渋滞によるコス ト 高一無駄 を産み出している。販売店 も死 に筋商品のワF除・売れ筋商品陳列に留 まらずアイテム自体の削減に努め ている。(ヤマ ト運輸 は93年6月29日の取締役会で小倉昌男取締役相談役を代表権 を持つ会長に,都築幹彦会長 を 取締役相談役に入れ替 える人事 を決めた。 表向きの理由とは別に「大企業病」対策―都築氏の引責処遇 とも報 じられている。(日経新聞93.6.30〉 そのこ とを明確にしたのは小倉会長の弁である。く日経新聞93.824〉 「社風刷新三カ年計画を作っても,一線の社員 は 知 らん顔だ。…管理組織 を くぐり抜けることに腐心する者が現れたことを問題視 している。」と述べている。ちな みに,同社では全額出資子会社のヤマ トホームサー ビス とフー ドシステムズを93年9月1日付 けで合併 した。合 併 により宅配および引っ越 しの付帯事業 としての物品販売 く既に, トイレットペーパーなどの引っ越 し関連 日用 品 と石鹸 。そば・文具などの挨拶品 と,宅配ラーメンなどの食品販売が同規模 に成長 している〉を一層強化 して, 「引っ越 しらくらくパ ックJの差別化にもつなげようとしている。本社ス リム化による新規事業の強化,大企業 病の克服である。 本稿では,教
科内容学 としての関連社会諸科学が未発達であるために,それ自体 をも内部に取 り込むことを余 儀な くされている。論点 はズレるが,教
員養成学部 ,大 学院を担当するいわゆる教科専門教官はすべか らく教科 内容学教授能力が求められよう。 盛田提言に対する経営者の反応 は様々である。第30回関西財界セ ミナーでの反応を参照されたい。(毎日新聞92. 2.14) 日本型供給方式 は「徹底的な無駄の排除」「)‖下最終工程への同期化 。同調化」を推進 してきた。それは企業・ 組織 自己中心型 システム内での効率化を確保するものであって,システム外への無駄や非効率 は考慮 されない。 そのため,社 会全体か ら見れば,地球規模で見れば大量の無駄や浪費,非効率 を産んでいる。NHKス
ペシャル「新 日本人の条件」はそうした事実の一面を映像化 している。(921 3)多品種少量生産方式 と言えども,大量生産・ 2.6.
7.
鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第
2号
(1994) 241
大量消費・大量浪費なのである。内部不経済・外部不経済・社会的不経済・地球環境への負荷 を等閑視で きない。 小西国義岡山大学教授 によれば,「地球環境問題」
(GLOBAL ENVIRONMENTAL PROBLEM)と
いう考え 方は,72年のス トックホルム国連人間環境会議で登場 し(人間環境問題),70年 代後半か らの公害反対運動への巻 き返 しを経て,80年代後半に「国境 を越 えて広がった」環境問題 という意味を強めて今 日に至った考 え方 と言 う。 その具体的問題状況 は3タ イプに分かれると言う。 ①地域的な環境汚染,環
境破壊が地球規模にまで広がったもの (酸性雨,海洋汚染,森
林の減少,砂
漠化,野 生生物種の減少,有害廃棄物の越境移動,放射能汚染),②発生源 はどこにもあ り,そ の上地域環境 としては問題 化 しないのに,地球環境全体 を破壊 して全人類 に深刻な悪影響を及ぼすもの(オゾン層破壊),③それより原因が 複雑な もの (地球温暖化問題)で
ある。小西氏 は,これ らの問題の解決は「かなりの部分が,いまの社会体制の ままであっても,先に述べたような運動による政治 。経済の徹底的な民主化,民主的な規制 によって解決できる ように思われます」 と言 う。(日本科学者会議『日本 の科学者』92.3月 号) 祖田修京都大学教授 は「経済学の危機」「新パラダイムヘの転換」に言及 し,ジョーン・ロビンソンの「経済理 論の第二の危機」講演,ローマクラブの「成長の限界」,玉野井芳郎氏のエコロジー経済学・エン トロピー経済学 論,カール・ポランニーの「経済埋め戻 し」提言等を検討 した上で,「経済的価値」に「生態環境的価値」 と「生 活価値」を導入 した農業経済学 を提言 している。(「新 しい農業経済学を求めて」『農業 と経済』92.3月 号) 工藤秀明千葉大学助教授の見解 は示唆に富む。それ は,先
のタイプ 1に 重なる立場か らの見解である。 氏の論文「『地球環境問題』 ともう一つの経済学の復権・ 序説」(千葉大学経済学会『千葉大学経済研究』第6 巻第 1号,91年6月)を見て行 こう。(なお,この論文 はマルチネス・ア リエ著『エコロジー経済学』(HB」 出版 局,91年〉に氏が寄せた「解説Jを加筆 。拡大 したものである。) 論文の結論を先取 りすれば次の通 りである。“地球環境問題 を宇宙史・地球史的な座標軸で捉 えるならば,市場 と工業生産の論理 はもはや全一的・ 自律的な社会形成原理には成 り得ず,早晩,地球環境経済学・ 地球問題経済 学。「 もう一つの経済学群」。「第二の経済学」が明 らかにする新社会形成 システム と交替 しなければならないであ ろう" と。 氏が このような見解に立ち至 るまでの手続 きを見ていこう。氏の論文 はまず,T・
クーンの言葉の引用から始 まる。「根本的に新 しいパラダイムを創造する者 は,ほとんどつねに,非常に若い者か,あ るいはパラダイムの変 革が行われる分野 にとってまった くの新参者であるか,そのどちらかである」 と。(T・クーンは,科
学史の分析 か ら科学的理論の歴史的発展を科学革命 と通常科学からとらえ,新
しいパラダイムーー定の科学的集団の中で共 通 にいだかれている学問の基本型―の提供 は一人ないし一人以上の偉大な天才が出現 してなされると言う。『科学 革命の構造』みすず書房,71年) 次いで,現実世界 は「地球問題 としての『地球環境問題』」に見舞われていると言 う。すなわち世間で論 じられ ている「地球環境問題」(海洋汚染問題,オゾン層破壊問題,熱帯森林消滅問題,地球温暖化問題,野
生生物種絶 滅問題,砂漠化問題,酸
性雨問題,放
射能汚染問題,有
害廃棄物越境問題等)とは,「人間にとっての地球規模の 環境問題」 ととらえられがちであるが,実は「地球そのものの地球史的な問題,つまり地球問題 とこそ呼ぶべ き であるか もしれない」 と言 う。 確かに,産業革命以降に「 自然の経済 と人間の経済の包摂関係が倒錯Jし 始め,「商業の発達 とともに市場の論 理が共同体内に浸透 し,ついにこれを解体 してみずから支配的な社会形成の原理 とな り,その上 に資本主義的工 業が生態系外か ら大量導入するエネルギー資源を動力 として固有の社会経済を実現」して きた。 しかも,「時間的 にいえば高々200年ないし100年,よ り厳密にはここ数十年のこと」である。「産業化経済の最近のグローバルな展 開が顕在化させた諸問題 は,まさにこの地球史,生態系史,人類史の発展そのものを否定 し破壊 しているのだ」 との氏の問題意識が読み取れる。 では,この産業化経済の展開に最 も密接に関連する社会科学である経済学 は,歴
史的にどのような地点に立っ ているのか,氏 の関心 はここへ と向か う。そして氏 は,「二つの経済学派の転換期 と生成期」とする整理を試みる。 わが国の経済学界では長 らく近代経済学 とマルクス経済学の二学派の並立状況が認 められて きた。 ところが, 1970年前後 を境にしてこのような状況 に「地殻的な変動」が起 き始めたと言 う。眼を米国経済学会に転 じれば, 71年には正統派経済学に対 して「異端」的であるJKガ
ルブレイスが経済学会会長に選出され,同年の記念講演 で Jロ ビンソンが「経済学の危機Jを提起 したことに象徴 されるように,近代経済学内部で地殻変動が開始 され た と言 う。小山直樹 :小学校社会科概念探求学習の創造 (5) 一方,「『批判的経済学』たることを任 じている『マルクス経済学』」とても決 して安泰であったという訳ではな い と言う。「高度経済成長そのものによって危機を迎えていた」 と言 う。 そして,「そこで共通 に問題 とされていること」 とは,「本来,人文―社会科学である経済学が,自然科学 と模 範 としてのその手法 を導入 して市場的・ 工業的合理性 を中心 とした自己完結的世界 を構築することによって,人 間 と社会の倫理的・文化的 。歴史的にきわめて多様な諸次元・ 諸相 を捨象 し,同時に本来の自然諸科学の固有の 法則性,必然性 をも捨象。無視する傾向」であ り,「経済学帝国主義」を強 くしていることであると言 う。その結 果 としての負の影響の最たるもの
,根
源的なものが地球環境問題であると言 うのである。 マルクス経済学は,この問題 を「資本制的蓄積 に伴 う貧困化 として,つまり資本充用上の節約による環境対策 費の欠如か ら発生する『社会的損失』 として,資本主義経済の運動法則 と関連 させて捉 え,体
制そのものの変革 の必然性 を証するもの」 と位置付 けて きたが,解
決に貢献出来ていないと言 う。 また,近
代経済学 は,「『市場の 失敗』 と見なし,社会的効率を下げ資源配分を不適正にする『社会的費用』 と考 えて,企
業利潤 と消費者効用を 最大にしかつ公的支出を最小にする形で F公的介入』を行 うための『費用便益分析』や『課徴金制度』等を提起 して きた」が,これまた貢献出来ていない と言 う。 工藤氏 は,以上の指摘の上で二大経済学派 (正統的経済学)の生成期について「端緒 は同時に原理である」 と の問題意識か ら振 り返 る。すなわち,1770年 前後の古典派経済学の誕生か ら,約100年後の二大経済学派の新生, さらに100年後の転換期 という資本主義的産業化の年月を「 コンドラチェフ波 と重ねて,イ ギ リス産業革命か ら19 世紀前半期 までの軽工業化段階, ドイツなど新興工業国に比重が移った19世紀後半の重 (化学)工
業化段階,20 世紀の合衆国を中心 とする重化学工業を基礎 とした量産化段階」の三段階区分である。 そして,「客観的生産手段の物的・ エネルギー的側面」に注目して,三段階の特徴を次のように類型化 (解説) し,図表化する。 主要産業の生産手段を形成する資源(工
藤論文P.103より) 段 階 生産手段 産業革命以前 軽工業化 (19C前 半) 重 (化学)工業化 (19C後 半) 量産化 (20C) 道具・ 機 械 内 内・* * *(ベルトヨンベア化) 原材料 内(羊毛 な ど) 内(木綿 な ど) *(鉄,石炭など) *(鉄,石
油 な ど) 動 力 ・ 燃 料 内(水力,馬力,薪な ど) *(石炭 な ど) *(石炭 な ど) *(石炭 な ど) 生 態 系 へ の依 存 度 5 0 0 生態系か らの乖離度 0 5 産業化の諸段階で,各生産手段の形づ くる資源が,生態系の内部か ら得 られるものか外部か ら得 られるものかの 分類。 産業革命以前は「(道具・機械,原
材料,動力・燃料の)三項 目のすべてが生態系内の物質・ エネルギーに重 き をお くものであった」のに対 して,軽
工業化段階は「道具・機械類が鉄製化し,また水力などがなお広範 に利用 されているとはいえ,主要な動力・ 燃料 も蒸気機関一石炭 に変化 して,生態系外の物質 。エネルギーヘの依存度 が高 まった といえるが,しか し主要産業である紡績・ 織布産業の原材料 は依然 として木綿な どの農業生産物であ り生態系内産物である」。 ところが,重 (化学)工
業段階においては「機械や動力・燃料のみならず,主要産業の原材料 も鉄や石炭 をは じめ とする生態系外の地下資源に,いわば全面的に依存 し,生態系内産物への依存度 は大 きく低下」 した。 軽工業化段階は主要原料が自然生態系内の生物的産物であ り,生態系の更新 。再生能力の種格か ら解放 され得 ないために「資本主義の市場的・工業的な合理性 と機動性,いわゆる『資本の論理』」 も「制約 と規定」 を受 けざ るを得ず,「資本の論理」は「 自然の論理」と二元的に並存せざるを得ない段階 と言 える。 しか し,重
(化学)工 業化段階は主要原料が自然生態系外の非生物的産物 とな り,理論上 は「資源の希少性」 を想定 しなが らも行為事鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 36巻 第