• 検索結果がありません。

モモジロコウモリ Myotis macrodactylus の胎児期から幼獣期における翼の成長過程-香川大学学術情報リポジトリ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "モモジロコウモリ Myotis macrodactylus の胎児期から幼獣期における翼の成長過程-香川大学学術情報リポジトリ"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

香川生物(KagaWa Seibutsu)(15、16):1291381989・

モモジロコウモリ 〟ッ0£is mαCrOdαC亡ツgαざの

胎児期から幼獣期における実の成長過程

吉 川 武 窟

〒760 高松市上福岡町714−1 玉藻中学校

Development of Ossification and Relative Growth

Of the Wingin Embr・yOS and New−born Young of

昭γのとi5 mαCrの血cとγヱαS

TakenoriYosHIKAWA,TbmalnOJunioT・Hなh School,Kam≠/tLhuoha,

乃ゐαmα£s以 制,Jqpα花

Abstract:Embryos and newNborn youngWere Studiedin the appearence of ossification

CenterS,relative grOWth(RG)ofllmeasurements against the forearmlength,and the

ratio of15measurements of new−born against those of mothers、The s匹1mens Of 20 Pregnant females and nine new−born young were collected from Manno,Nakatado

Prefectur・e,and Yashimanishi,Takamatsu,KagaWa Prefecture,Japan,from Aprilto

June1985”The ossification centers appeared either from the distalendinthe first finger

and five hind feet,Or from the proximalendin the third,fourth and fifth finger・S

The fo1lowingthree patterns were recognizedin coefficients of RG against the forearm

length at three stages of embryos and one stage Of new−born young:1)coefficients in embryos show negative grOWthinthe first stage,POSitive a1lometryln the能COnd stage

andisometryln the third stage and coefficientsin new−born youngare negative growth

in the first finger and five hind feet;2)coefficientsin embryos show fir・St negative

grOWth,then positive growth and finallyisometry,and coefficientsih young are posid

tive growthin the third,fourth and fifth fingers;3)coefficients showisometryin the

humerus,femus and tibia of embryos and young… Therefore,the fir・St finger and five hind fbet ossified from the distalend cease their growthin new−born young,Whereas

the third,fourth and fifth fingers ossified from the pr・0Ⅹimalendincr・eaSeCOntinuousely

duringembryos and new−born youngいIt follows that the third,fourth and fifth fingers

show a specific feature for chiropterian wings

ジロコウモリ 物のとis mαC′のdαeとγg㍑Sの胎児 の成長を扱った研究は今までになされていない。 本研究は,モモジロコウモリの胎児および幼 猷の前肢い後肢を用いて,外部形態の形成と骨 化状態を相対成長と比較し翼の形成過程を明ら かにする。 稿を始めるに当たり,終始適切な御指導,助 言を賜った香川大学教育学部生物学教室の金子 は じ め に 翼手類は,翼をもつことにより飛翔を手に入 れた形態上他の哺乳類には見られない特徴的な 哺乳類である。翼手類の飛翔への適応の過程を 考える際に,翼の成長・・発育を知ることは重要 な研究課題となる。日本翼手類を対象とした翼 の成長を扱った仕事はいくつか見られるが(下 泉1942;庫本1972;横山1975;前田1976),モモ

(2)

之史先生ならびに香川県教育センター主任研究 員の森井隆三先生に謹んで感謝の意を表します。 また,常に適切な助言をしていただいた生物学 教室の先生方,ならびに採集を手伝っていただ いた生物学教室の方々に謝意を表します。 材料および方法

1985年4月29日,5月19日,5月31日,6月

8日の計4回,香川県高松市屋島西町屋島洞窟 で胎児を待ったモモジロコウモリの雌15頭なら びに幼猷9頭,また,同年5月5日に香川県仲 多度郡満濃町の塩入隊道で胎児を持った雌5頭 を採集した。 採集後,幼獣についてはそれぞれの個体を冷 凍保存し,その後解凍して頭胴長,前腕長(F. A・L一・),脛骨長(Tibia L.),後足長(H.F.

L.),第1指全長(1st F.L..),第3∼第5指

全長(3Id∼5thFりL..),第3へ′第5申手骨長 (3Id∼5tb M.L..)をディバイダーを用い て物さしで01mmまで計測した。 また,冷凍保存後解凍した妊娠雌から胎児を 取り出して直ちにホルマリン固定し,その後頭 胴長の代りに頂殿長を封測した以外は幼猷と同 様な部分を双眼実体顕微鏡(オリンパス製Ⅴ −Ⅳ型)にコウガク製対物実測ミクロメーター を取りつけ0い05mmまで,あるいはダイヤル式ノ ギスで0.カ1mmまでそれぞれ計測した。 また,胎児については毛のうや翼の発育状態 を双眼実体顕微鏡下で観察した。その後,胎児 および幼獣の骨格をアリザリソレッド染色法 (宮尾,1972)により染色し,骨化状態を調べた。 そして,染色された個体の上腕骨長(Humerus L.),大腿骨長(Femur L小)を双眼実体顕微 鏡につけた対物実測ミクロメーターで計測した。 結 果 本研究では,全て前腕長をそれぞれの個体の 成長の基準とした。こ.の理由は第1に非常に計 測しやすい部位であり,体の大きさを比較的よ く反映している(庫本,1972)こと,第2に今 回採集した胎児の前腕長の平均値と時間との関 係は統計的には有意ではないが(「=0“899,p b 一q 2 C 只じ 一b .q 2 二担ご ■﹁−ごここ ≡﹂一㌧り.﹂○▼⊥ 5 10 15 20 25 30 35 5′5 /柑 ∧禁r子? 5・′?i .1a,19日

Fig.1… Growth of the forear・mlengthin

embryos of物の£蓋、S mαC川血c亡〆那. >0“1,¢/−=4),前腕長の平均は時間の経過 にともなって増大した変化を示しているからで ある(Fig.1)。 1骨化中心ならびほ二骨端核の出現時間 モモジロコウモリの胎児の前腕長を1mmごと にクラス分けをし,それぞれについて前肢およ び後肢を中心に,骨化が生じているか,あるい は骨端核が出現しているかどうか調べた(Table l&2)。前肢では,鞘骨(Clavicula)が前腕 長3mmの時に骨化が開始され,次いで肩甲骨 (Scapula),上腕骨(Humerus),椀骨(R adius),尺骨(Ulna)の骨化が開始されf:。 手骨の骨化噸序は2つに分けることができる (Fig.2)。第1指は,第2指骨(Ⅰ2),第 1指骨(Il),中手骨(Mcl)の順序で骨 化がおこるが,第2へ′第5指は,中寺骨(Mc 2′一−5),第1指骨(Ilへ′Vl),第2指骨 (Ⅱ2へ一†2)の順序で骨化がおこる。そして, 上腕骨,椀骨,手骨の骨幹部の骨化は,前腕長 9mmの時に完了していた(Fig.2−C)。また, 出生直前の前腕長13mmの時に手根骨(Carpalia) の骨化が開始されはじめた。 骨瑞核(Table2)は,前腕長13mmの時に上 腕骨近位骨端核(Humerus PE),遠位■骨端核 (DE),椀骨近位骨端核(Radius PE),第1 指第2指骨近位骨端核(Ⅰ2PE)が,前腕長 14mmの時に第1中手骨近位骨端核(McIPE) が出現していた。また,今回採集された幼獣の 中で最大の前腕長29.3mmの個体の骨端核につい てみると,出生前の骨端核に加え第2′トー、一第5中 −130−

(3)

Tablel.The order of ossification centers which occur・in the thoracic

limb and pelviclimb bonesin embryosof A4)otis TTmdbctylus.

FoI′earm lengtb

2 3 4 5 6 7 8 91011121314

class (mm)

Number of specimens 1 2 0 1 2 111 4 1 3 2 1

Clavicula

一 十 + + + + + + 十 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 十 + + + + + + + + + + + + + + + + − − − + + + + + + 十 − − + + + + + + + + − + + + + + + 十 + 十 − + + + + + + + + + − − + + + + + + 十 十 − − − + 十 + + + + + − − − − − − − … + + Scapula Humerus Radius Ulna Mcl ll I2 Mc 2へノ5 Ⅱ1へ′†1 Ⅲ2ノ・−†2 Carpalia + + + + + + + + + + + + + + + + + + + 十 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + − − + + + + + + + + − − + + + + + + + + 一 十 + + + + + + + + − − + + + + + + + + − − + + + + + + + + − − + + + + + + + + − + + + + + + + + + − − − − + + + + + + Ilium Femur・ Tibia Fibula Mtl ll I2 Mt 2∼5 Ilへ′†1 12一、一†2 Ⅰ3′−†3 Tarsalia

(4)

Femur

′−去

・ribia、′ ′ \∩ −−−−−_._ 、 Radius // ′ ′

Ⅶ広

Fibula − ■ トIumeI∵Us 」軋 ー2・ Ulna ′一1−・■・− →・ヽ_ ⊂==コ

喜好

lヽ._ ‖、Vト、一霊

パ‖巨

〃r ●\ノーーー、■′−−− √■t、−■■■−−−︰− ヽt′ √い〃り りY

蕪 Ⅷ

伸Wル ′..昭.側鮎佃 TarISa)ia

′ね 誰何 ト‡umerus pE Femur DE ろ−;∴−] ′′′/ Tilっia P F−ibula r)E 一一一一一一 ′ ′ ’ribia DE ′ / Humer・us L)E Radius pf;

Fig.2.Ossification of the thoraciclimb and pelviclimbin embr・yOS Of

凡才γ0亡is mαer()dαCとγg㍑S.

a;embryo with6mmin forearmlength,b;7mmin forearm

length,C;9mmin forearmlength,d;14mmin forearm

length。

(5)

Table3Forearmlength(mm)and the

number of specimens exminedinthree

stageS(l∼Ⅱ)inembryos and one

stag・e(ⅠⅤ)of youngneW−borninMyo−

とiβ mαCr・Od∝亡γぴ8.

Table 2。The appearance of ossification

in the thor・aCiclimb and rx!lviclimb

in embryos and new−born young of

財γのと£s mαCrのdαe亡ッヱ弘S.

Forearmlength 91011121314 29・・3

cIAss (mm)

Growth stage F.A。L Number

2 3 5 1 9 ☆ ☆ ☆

0 0 0 ☆ ○

0 0 0 0 ☆ ○ ☆ ☆ ☆ 2一−4 5へ/8 9∼14 15(−29 Ⅰ ¶皿 ¶‖ Ⅳ Humerus PE DE Radius PE Mc 1 PE

Mc2へJ5 DE

I2 PE Il′・−†1PE Ⅲ2一−ヤ2 PE Ⅲ3 PE じており,前腕長9mmになると大腿骨,脛骨, 足骨の骨幹部の骨化が完了していた(Fig2−C)。 足根骨(TaISalia)については前腕長9mmの時 に骨化が開始され,前腕長14mmの時には,完成 に近い状態を示していた。(Fig..2−d)。 骨瑞核は,前腕長10mmの時に大腿骨遠位骨端 核(Femur DE)が,前腕長12mmの時に第1、一

第5中足骨遠位骨端核(Mtl∼5DE),第1勤L

第1昆止骨近位骨喘核(IIPE),第2へ+第5址 第1足止骨近位骨端核(Ⅰい−†1PE)ならびに 遠位骨端核(DE)が,前腕長14mmの時に脛骨近 位骨端核(TibiaPE),遠位骨端核(DE),俳 骨遠位骨端核(FibulaDE)が出現していた。 そして,すでに前腕長13mmの時に,第2/、第5 鋸第1址骨遠位骨喘は骨結合していた。また, 前腕長29…3mmの個体をみると,第1∼第5中居 骨遠位骨瑞,第1飽上第1址骨近僅骨端,第2′\一 第5足止第1址骨近位骨端が骨結合していた (Table2)。 2.前肢・後肢の相対成長 前肢,後肢の相対成長を調べるにあたり,骨 化状態ならびに発生状態を検討し,モモジロコ ウモリの胎児期を次の3期に分け(ト∼Ⅲ), さらに幼獣期=町)を加え,その時の個体数と前 腕長をTable3に示す。Ⅰ∼虹期の特徴はつぎ のようになる。 第Ⅰ期(軟骨期) この期の胎児は,鋪骨や 下頸骨を除いて全く骨化がみられない。発 生状の特徴としては,眼瞼は開いており, 耳介は目だたず,膜もまだ未完成である。 また,第1指ならびに後足に爪はなく,生

☆ 0 0 0 0 ●●●●

○ ☆ ☆ ☆ 0 0 0 0 Femur PE DE Tibia PE DE Fibula DE Mtl DE Mt2′・r、5 DE II PE Il′・−†】PE DE 0 0 0 ☆ 0 0 0 0 ● ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

PE;prOXimalepiphysis oflong bone..

DE;distalepiphysis ofr・long bone,

☆;appearanCe Oflongbone epiphysis,

●;COmpletion of synostosis,

○;between☆and●.

手骨遠位骨端核(Mc2∼5DE),第2∼第5指

第1指骨近僅骨瑞核(≠1∼†1PE),第3云一 策5指第2指骨近位骨端核(Ⅱ2へ′†2PE), 第3指第3指骨近位骨瑞核(Ⅲ3PE)が新たに みられ,手骨根もほぼ完成していた。 後肢では腸骨(Ilium),大腿骨(FemuI), 脛骨(Tibia),麟骨(Fibula)の骨化が前腕長

5mmの時に,足骨では第1址第2址骨(Ⅰ2)

と第2∼第5勤[第3勤ヒ骨(Ⅰ3∼†3)の骨化が 前腕長6mmの時に開始された。前腕長が7mmに なると中足骨(Mt),址骨のすべてに骨化が生

(6)

Fig.3… Externalappearancein embryos of MyL)tis macrodactylus.

forearmlength,

a;embyo with 2.,11mmin

b;6..10mm forearmlength,

C;10.72mm forearmlength.

理的臍帯ヘルニアである。体表には,上唇 部の一部を除いて毛のうはない(Fig\.3−a)。 第≠期(骨化開始期) この期の胎児は,頭 蓋骨,前肢骨,後肢骨,脊椎骨の骨化が開 始されている。発生上の特徴としては,眼 瞼は閉じており,耳介は目だつようになり, 膜ができてきている。第1指ならびに後足 に爪ができ,生理的臍帯ヘルニアは整腹す

る。また,体表全体に毛のうがみられる

(Fig.3−b)。 第Ⅲ期(骨幹部骨化完了期) この期の胎児 は,上腕骨,椀骨,指骨,大腿骨,頚骨, 足骨の骨幹部の骨化が完了している。発生 上の特徴として,毛がはえはじめている (Figl3ニc)0 この4成長段階ごとに,前腕長を∬とし各部 を−γとしてγ=あ∬αを適用し,最小自乗法によ り相対成長係数αを算.出し,その値を各段階ご とに比較した。 (a)前肢の相対成長 拒全長(F・L・.)では(Fig4一肌a)∴第Ⅰ期で は第1∼第5指全長すべてが劣成長であり,そ のα値ほ弟1・4,第5,第3指全長の噸で減少し ていく。第Ⅱ斯ではすべてが著しい優成長となる。 α値はよく似ているが,第1,4指全長とそれ よりやや低い第3,5指全長に分けられる。第 Ⅱ期ではすべてがほぼ等成長になる。第Ⅳ期で は第3′}第5指全長は再びやや優成長となる傾 向をみせるが,第1指全長は著しい劣成長とな る。第3′一策5中手指骨長(3Ⅰd∼5thM..し) もほぼ同様な傾向を示している(Fig,.4一−b)。 上腕骨長(Humer・uS L)は,第Ⅷ′−Ⅳ期まで ほとんど同じα値を示し等成長を続ける(Fig. 4−C)。 (b)後肢の相対成長 脛骨長(Tibia L.)は,第Ⅰ′−Ⅲ期までほぼ 等成長でα値の変動はあまりみられない。大腿 骨長(Femur・L.)も同様に第¶∼Ⅲ期で変動は あまりみられない(Fig..4−C)。また,後足 長(H‖F∴L)は,第1期で著しい劣成長,第Ⅱ −134−

(7)

∽■GむHハニh叫む00 ぷ■⊇=UしこⅦ+hり、・︸d二二じ鑑 0 ■つ ′U O つ︼ qノ l ¶ Ⅲ Ⅳ Ⅰ ] Ⅲ Ⅳ fぎr<>utIlミ言ta首〔ヒ grOu∫tllS−ta8く†

Figい4.Relative growth coefficients of the thoracic

limb and pelviclimbin four growth stageS in embryos of MγOtis macrodactylus.

Table 4り Comparisonin size between the new−bornyOungand也emother

in〃γ0己iぶmαCrのdαCとγg㍑S・ (α/A)×(わ/β)× わ 100 100 Mother Newl・・born Measurements A β α F.A..L. 38.1 38い7 15・2 15・・9 39・9 41・1 1st F.Lい 5い7 6,・0 4・・9 4・・8 86」・0 80・・O H.F‖ L. 7.8 8い6 7“1 6・・4 91‖0 74・・4 2 7 6 5 9 6 5 7 0 7 4 9 2 2 3 2 2 2 3 8 5 2 7 5 0 7 1 6 4 8 3 2 3 2 2 2 0 2 8 7 7 1 6 5 5 9 8 0 1 1 1 1 9 3 1 0 2 1 7 4 5 9 8 9 1 1 1 6 ︵︰0 7 3 9 1 3 4 1 5 4 4 6 5 5 3 3 3 0 4 9 4 2 9 9 1 7 4 3 1 5 5 4 3 3 3 ▼L一山 T︺ ▼﹂ T] L F二F二y M M M d h h d h h γ▲ t・↑し r﹁ 一t▼ ・し 3 4 5 3 4 5 4 4 5 2 2 0 7 0 6 3 5 2 3 6 5 6 5 5 4 5 4 2 5 0 1 3 7 2 6 3 5 1 5 4 9 4 5 5 6 4 5 4 5 5 1 2 4 0 ︵×︶ l ︵八︶ 9 7 6 7 2 1 2 1 3 ︵︶U 8 1 0 0 0 0 6 8 8 9 7 3 2 1 8 8 0 3 9 2 0 2 2 7 9 8 3 6 2 1 1 4 3 1 3 7 0 0 9 8 1 2 2 6 6 1 2 6 2 1 1 4 4 1 HumeluS L Fumur L. Tibia:L. H.& Bし TailL.. EaIL. TraguS Lい o

The specimen of ais a embry

(8)

核の出現は見られず(Table2),出生時の完成 の度合いは各部の形質の中で最も低い。モモジ ロコウモリの出生後の成長について調べた前田 (1976)によれば,このグループの前腕長に対 する相対成長は,出生後10日間は等成長である が,その後60日頃まで著しい優成長を示し,ま た等成長に戻るという。したがって,第3∼第 5指は,著しい優成長期を胎児期と幼獣期にそ れぞれ1回ずつ持つということになる。 第3グループである上腕骨,大腿骨∴醍骨は 胎児期において,ほとんど等成長を示す(Fig. 4−C)。出生時にはほとんどの骨端核が見ら れ(Table 2),それ以後の成長は,上腕骨が 等成長を続けるが,大腿骨,脛骨は劣成長とな る(Fig.4−C)0清水(1946)によると,ヒ ト月bmo s8p孟e花台 の胎児期における各骨の身 長に対する相対成長は,椀骨ならびに脛骨にお いて相対成長係数の変動は若干みられるが,上 腕骨,椀骨,大腿骨,脛骨はいずれもほぼ等成 長することが示されている。また,ネコダegよぶ cαとびSの胎児期における体長に対する各骨の相 対成長を見ると(清水,1946)上腕,前腕,指, 大腿,下腿,址の長さは,いずれも直線的な成 長を示し,相対成長係数の変化は認められない。 このようにみてくると,胎児期における各部の 成長が−・様に進んでいくのが,−−・般哺乳類の特 徴であるとするならば,第3グル・−プは−・般哺 乳類型,第1,第2グループは翼芋類特有の特 殊型であると推測される。 次に,骨化開始順序について,今回の結果を 食虫類のスンクス蝕£花C乙‘g mαr£花α5(近藤,19 85)と比較してみる。スンクスにおいて,上腕 骨,椀骨,大腿骨,脛骨の骨化がほぼ同時に開 始されることや,足骨は遠位骨の骨化から開始 されるという事実は,モモジロコウモリと一致 している。しかし,手骨の骨化順序には相違が ある。スンクスでは,第1′、第5指までの骨化 順序はすべて同じで,第3指骨,第1指骨,第 2指骨の順序で骨化されるが,モモジロコウモ リの場合は,第1持と第3へ一策5拒で,骨化順 序が異なる(Tablel)。すなわち,第1指は遠 位骨側から,第3一、一第5指は近位骨側から骨化 期で著しい優成長,第Ⅲ期で等成長を示す。そ して,後肢のいずれの形質も第Ⅳ期になると著 しい劣成長となる。 3新生獣とその母獣との計測部域の比較 捕獲された幼獣の中で最小の前腕長15い2mmと 15.9mmの2頭と,その母獣(捕獲時に幼獣がし がみついていた)との計測部域の比較を行った (Table4)。新生獣の第1指全長や後足長は, 母獣の70%以上にまで達していた。それに対し て第3′−第5指の形質は,母獣の30%前後にし か達しておらず,各部の形質の中で最も低い割 合を示していた。また,その他の形質は両者の 中間の40%へノ60%にまで達していた。 考 察 モモジロコウモリの新生獣とその母獣との比 較(Table3)から,胎児から幼獣にかけての各 部の成長は,大きく3つにグルーープ分けするこ とができる。出生時の割合が母獣の70%を越え. る第1持と後足(第1グルーープ),30%前後に しか達していない第3∼第5指(第2グループ)。 そして,40%へ′50%に達している上腕骨,樗骨, 大腿骨,脛骨(第3グループ)である。そこで 上記のグループごとに,骨化状態や相対成長係 数を検討することにより,胎児期から幼獣期に かけての成長過程の特徴を明らかにしていく。 第1グループである第1指と後足は,胎児期 において劣成長,著しい優成長,等成長を示す (Fig.4−a,d)。また,出生までに骨喘核の 出現がすべての形質において見られ,出生時に はほとんどの成長過程を終らせている。内田 (1966)ほ,イエコウモリP如ざ汁eggぴSαわr・α〝兄畑 の新生獣とその母獣の大きさの割合の比較を試 みた。そして,新生獣の第1指ならびに後足の 著しい発達は,出生後すぐ行う母獣へのくくしが みつきりへの適応であると述べている。今回の 結果も同様であり,くtしがみつき”への適応と 考えられるが,この成長は胎児期の第Ⅷ期の著 しい優成長により成立つと考えられる。 第2グループである第3へ′第5指は,胎児期 において第1グループと同じ成長パターンを示 す(Fig・.4−a)。しかし,出生時には全く骨端 −136−

(9)

が開始される。 このように考えてくると,翼芋類の特徴であ る前肢の著しい発達は,骨化の過程に非常に密 接な関係があるように思われる。そこで,これ まで前腕長に対する相対成長によって各グルー・ プの特徴をみてきたが,前腕長は時間と対応し て成長を続けることより(Fig.1),今回の相 対成長の結果を絶対成長的変化の−・端として考 えていくこと.にする。 これらの絶対成長と骨化順序との関係を各グ ループごとにまとめると,第1グループの形質 (第1指,後足)は,遠位骨から骨化が開始さ れ,出生時にはほとんど完成していた。それに 対し,第2グループの形質(第3∼第5指)は, 近付指から骨化が開始され,出生後も大きさが 著しく増大していった。また,第3グループの 形質(上腕骨,大腿骨,脛骨)は,同時に骨化 が開始され,出生後もー様に増大していった。 したがって,はやく成長が止まる形質ほど,遠 位骨の骨化がはやくおこるのに対して,出生後 も大きさが著しく増大する形質ほど,遠位骨の 骨化がおそくなっていると.いうことになる。遠 位骨の骨化の完成がそ・の形質の大きさの完成を 意味すると仮定すると,遠位骨の骨化を遅らせ ることがその形質の長大化をもたらすことにな る。こう考えてくると,第3へノ第5指の近位骨 からの骨化が,長い指を持つようになった翼芋 類の大きな特徴であると言える。 また,もうひとつの問題は,胎児期において 翼芋類の特徴が−・度に表われているのが,第二 期であるということである。これは,骨化の過 程と個体発生の過程が密接につながって−いるこ とを示すものと考えられる。すなわち,骨化が 各部で開始されてから,骨幹部の骨化が終了す るまでの間が,その種の特徴をつくりだすこと のできる可能性を持つ時期だと考えられないだ ろうか。この間龍に関しては,今後の研究に期 待したいところである。 要 約 1985年4月29日∼同年6月8日までの計5回, 香川県仲多度郡満濃町塩入随道および高松市屋 畠西町の洞窟で,モモジロコウモリの妊娠雌20 頭および幼獣9頭を捕持した。妊娠雌より取り 出した20個体の胎児と9頭の幼獣を用いて,骨 化の状態,前腕長に対する11の部域の相対成長, 新生獣とその母獣との20個所の計測部域の比較 について調べた。 骨化中心の出現は,第1指と後足は遠位骨側 から,第3′、第5指は近位骨側からおこること がわかった。また,前腕長に対する相対成長係 数の変動から,成長のパターンを3つに分ける ことができた。第1指と後足は胎児期において 劣成長,優成長,等成長を示し,出生後は劣成 長を示した。第3∼第5指は胎児期において劣 成長,優成長,等成長を示し,出生後は優成長 を示した。上腕骨,大腿骨,脛骨は,胎児期か ら幼獣期にかけて等成長をつづけた。 これらのことから,翼手類の特徴である指の 長大化は,骨化が開始されてから骨幹部の骨化 が終了するまでの間に行われること,また,そ れは指の骨化順序とも密接な関連があることが 推測できる。 文 献 井上稔・織田銑一・・島村和位・亀山義郎..1弧う. 発生および発生異常..織田銑−・・鬼頭純三・ 大田克明・磯村源蔵(編),スンクス一笑験 動物としての食虫目トガリネズミ科動物の生 物学:140−154…学会出版センター,東京.. 庫本正.1972..秋吉台産コウモリ類の生態およ び系統動物学的研究.秋吉台科学博物館報

(8):7−119.

前田菖四雄‖1976…モモジロコウモリ〟ッのfis TnaCrOdactylus(Temminck,1840)の成長と 発育・1・外部形態と繁殖習性.成長,15(3) :29−40 宮尾嶽雄・・1972…標本の作製法..宮尾嶽雄(編), 日本哺乳類雑記.第1集:二128−132,信州哺 乳類研究会,松本. 清水三雄,.1946..人間の相対成長に関する研究い 北隆館,東京. 内田照章.1966.日本の哺乳類(5)翼宇目イ エコウモリ属い 哺乳類科学(11):5−23..

(10)

横山恵一・・内田照章・白石哲.1975,.翼手類の 前肢の相対成長,翼構成骨の骨成長,翼荷重お

飛翔適応に関する翼の機能形態学的研究..ト よび巽の縦横比・動物学雑誌 84:233−247

参照

関連したドキュメント

Keywords: Convex order ; Fréchet distribution ; Median ; Mittag-Leffler distribution ; Mittag- Leffler function ; Stable distribution ; Stochastic order.. AMS MSC 2010: Primary 60E05

Inside this class, we identify a new subclass of Liouvillian integrable systems, under suitable conditions such Liouvillian integrable systems can have at most one limit cycle, and

Greenberg and G.Stevens, p-adic L-functions and p-adic periods of modular forms, Invent.. Greenberg and G.Stevens, On the conjecture of Mazur, Tate and

The proof uses a set up of Seiberg Witten theory that replaces generic metrics by the construction of a localised Euler class of an infinite dimensional bundle with a Fredholm

Using the batch Markovian arrival process, the formulas for the average number of losses in a finite time interval and the stationary loss ratio are shown.. In addition,

Because of the bijection Inv: ˜ S n I → P n−1 (Theorem 4.4) we can pull the Young lattice back to ˜ S n I and obtain a third partial order, in addition to weak order and Bruhat

We want to provide a representation-theoretic interpretation of this result via the theory of abelian ideals of Borel subalgebras..

Is it possible to obtain similar results as in [COP] and in the present paper concerning John disks that are not necessarily