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地形因子による土壌の物理性の算定-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報告第48巻 第2号153∼163,1996

地形因子による土壌の物理性の算定

川北道子・山田宣長

ESTIMATION OF SOIL PHYSICAL PROPERTIES

BASED ON THE TOPOGRAPHYCAL FACTORS

MichikoKAWAKITA and NoriyoshiYAMADA

In this paper,authors studied on the application of some topographycaldata to estimate physicalproperties of soil

Twelve soilsamples differinglntOpOgraphycalfactors were taken from newly−reClaimedlandin the farm of Kagawa university

With multiple regression analysIS,uSlng16factors ofsoiJphysicaZpropertiesascriterionvariables and7factors of topographyas predictor variables,following results areobtained

(1)Silt,pH,SpeCific gravityand some factorsconcernedwith soilmoisturecanbeestimatedby 3 factors of topography

(2)Factors concerned with the water and air permeability can be estimated by5factorsof topography

(3)As for the other factors of soilphysicalproperties except above mentioned(1)and(2).T factors of topographyare necessaryto estimate them slgnificantly

(4)In case of cultivatedland,a factor concerned withland・−uSeClassificationshould beadded to estimate the physicalproperties of soil

(5)When the parent materialof soildiffers from originalone(Masa),multiple regression equations should be established foreach parent materialsofsoil

(6)The multiple regression equation obtainedinthis paper maybe conformed to about50%of soils taken from mountainous and hilly reglOnSin Kagawa prefecture

キーワード:地形,土壌の物理性,盈回帰分析 緒 農地の土壌を耕転したり,土地に対して土木施工を行うような場合,−・番問題となるのは現地の 土の物理・工学的性質である しかしながら,土の物理・工学性に関する調査・研究は比較的局所的なものが多く,その場その 場に応じた調査がその都度要求されているのが現状である また,土壌図やそれに伴う土地利用図は,全国的規模での調査・研究がはぼ完成しているにもか かわらず,物理・工学的な調査項目に乏しいたあ実用面において大きな制約がある −・方,土の物理・工学性に関する調査・研究は室内実験によって行われることが多いので,現地 への適用性が問題となるたとえば透水係数が10▼3(cm/s)以上であれば,−・般には排水良好な土

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壊と考えられているが,実際の農地では地形や土地利用形態の影響によって排水不良となっている 場合が少なくないまた畑地と隣接する水田の土壌をサンプリングした場合,両者の物理的性質が 実験上ほ同一・となる場合が多くみられる これらのギャップを埋める上において,地形図,地質図,土壌囲などによって得られる情報の中 に物理・工学的要素を加えれば,非常に実用性が高いものになるものと考えられる ここでは主として地形および土地利用形態が主張の物理性に及ぼす影響を検討し,農地のより高 度かつ合理的な利用方法についての農業土木学的指針を得ることを目的として研究を進める

地形と土壌との一般的関係

地形と土壌との関係について,土壌地理学の成書(1)によれば以下のように要約できる 土壌生成因子としての地形(起伏,r・elief)は,次の3つの面で土壌の生成に影響している ① 局地気候・徽気象を左右し,その結果土壌の水分や温度に影響を与える ② 母材の透水性とともに雨水の透水性に影響を与え,士層内の排水に関与している ③ 表面排水によって土壌成分を移動させ,土壌浸食(水食)に影響を与える (1)起伏による土壌水分への影響 起伏は降水の地表及び土壌中での挙動を左右し,土襲生成に影響している わが国の国有林土壌調査でほ,山地の褐色森林土を尾根筋の「乾性」,斜面中腹の「適潤性」,谷 筋の「湿性」などの6つの型に区分し,物理性との関連項目としては土壌水分のほかに粒度や構造 にも違いがあることが知られているとくに土壌の侵食および堆積については,凸型斜面,凹型斜 面,等斉斜面で著しく異なる (2)起伏の区分 土壌生成因子としての起伏ほ,①斜面の傾斜,②起伏畳,③徴地形の形態などにより区分され る (む 斜面の傾斜

斜面の傾斜は>400,39∼300,29∼200,19∼15d,14∼80,7∼30,<30 の7区分法

が定着しており,土地分頼基本調査(赤桐他,1985)もはぼこれに対応している ② 起伏畳 USA農務省の表示法によると, 角度(分単位) 傾斜(%)= 3438 平坦(0∼1−3%),波状(1−3∼5−8%)∴緩丘陵状(5−8∼10−16%),丘陵状(10− 16∼20−30%),急峻(20−30∼45−65%),極めて急峻(二>45−65%)となっているい ③ 徴地形の形態 田村(1974)はとくに谷頭部の徽地形を形態的・成因的に5単位に区分したそれらほ,頂部斜 面,谷壁斜面,谷頭凹地,谷頭平底,水路である.このような徴地形は表層地質によって規制さ れ,侵食・堆積や水分状況を左右することによって,土壌分布と植生分布とに深いかかわりを持っ ている。 今回の解析にあたっては,これらの一・般的関係を参考にして,より実用性の高い因子を土襲の物 理性算定のための地形因子として選定する

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川北・山田:地形因子による土壌の物理性の算定 155 図−1地形因子による土壌の物理性算定手順

研 究 方 法

(り 解析の方法 今回行った解析の手順をフローチャー†にして示すと図−1のとおりである一

図−1における土壌物理因子として,①レキ分・②粗砂分・③細砂分・④シルー分・⑤粘士分・

⑥団粒率・⑦有機物含有量・⑧仮比重・⑨通気係数・⑲透水係数・⑪pF2・⑫pF3・⑬pF4・

⑭pH・⑮自然含水比・⑲真比重の16因子を選定した

現在使用されている学術用語としては,仮比重は土の乾燥密度,真比重は土粒子の密度とすべき

であるが,混同を避けるために過去の呼称を採用した

地形因子としては,標高・深度(地表面から10cmの深さの表土,30cmの深さの心土の2点)・集

水角度・集水距離・斜面の形態・傾斜度・斜面ゐ方位の7因子を選定した・(地形因子の評価方法 ほ次章で説明する)

解析の第一便階として,地形因子(説明変数)が直接土壌の物理性(目的変数)に影響を及ぼす

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N牛

0 50 し・・= 香川大学農場 図一2 試料採取地点の位置 ものと考えられる新開地を選んだ対象地は香川大学農学部付属農場(旧傾斜地農場)で,データ は昭和48年鹿追成当時のものを用いた‖ 試料の採取地点を当時の地形図(2)上に示すと図−2のとお りであり,第一段階でのサンプリングは,そのうちのA,B,C,D各々での6ヶ所,合計24地点 から行った これらの測定値をもとにデータマトリックスを作成し∴藍回帰分析によって土壌物理因子と地形 因子との相関関係を導き,地形および土地利用形態が土壌の物理性に及ぼす影響について検討して いく」有意性の判定にあたっては,因子禰宜間では5%水準を,また墓相関係数は01%水準を有意 性の基準とし,墓相関の場合には水準が0.1%以下となるまで説明変数を増加し,重回帰式の表示 にあたっては3∼7の奇数個を選定した なお,この解析方法の採用にあたってほ,日本農業気象学会の成暫3)におけるメッシ.ユ.気候億の 作成方法を参考にし,点情報を面情報に拡張する過程の第一・段階として,100Ⅰ墟単位の極小化され たメッシュを考えた (2)地形因子の評価方法 図−1に示したフローチャートのうち,土壌物理因子については.IIS,または.TSF(地盤工学会) の規格に準拠した。.地形因子については前述した土壌地理学の成書や,沖村・瀬戸島(4)によって提 示された地形の統計量を参考にし,筆者らがそこで示された諸因子をさらに微視的に改良して以下 のような7因子の評価方法を設定した ⑰標高:試料採取地点の標高(m) ⑬深度二地表からの深さ(皿) ⑲集水角度:測点を通る等高線の上流側角度(○)(>180は谷,<180は尾根を表す)

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川北・山田:地形因子による土壌の物理性の欝定 表−1 地形因子と土壌物理因子との相関係数 157 17り 標高 18“深度 19.集水 20.集水 21斜面 22.傾斜 23小 方位 (m) (cm) 角(○) 距離(m) 形(○) (%) (○) 1.レキ分(%) 0い056 0.044 0“276 0‖166 0.198 −0102 0い221 2い 粗砂分(%) 0√083 −0ノノ184 −0.332 −0.183 −0173 0‖125 0.032 3“細砂分(%) 0.175 0け070 −0.351 −0,333 −0.187 0.060 −0.029 4.シルー(%) −0.305 甘007 −0..160 −0023 −0190 −0.051 −0.、630*** 5‖ 粘土分(%) −0.075 −0.088 0.125 0.057 −0け094 0,.262 0.214 6、団粒率(%) −0‖139 −0.185 0.018 0259 0.240 0.186 0‖394 7‖ 有機物(%) −0り031 −0.053 −0い049 −0.173 −0り448* −0,436* −0一.392 8.仮比重 −0..211 0い364 0..409* 0“351 0.193 0197 0.201

9通気10 ̄2c撼 0,409* −0“016 −0.144 −0.113 0032 −0‖034 0‖586**

10透水10 ̄3c/s 0..334 0.315 −0、029 −0.088 0.066 −0.276. 0..443* 11pF2(%) −0.324 0.144 −0178 −0076 −0.174 0い002 −0.744*** 12.pF3(%) −0.307 0り208 −0.190 −0096 −0.162 0.019 −0725*** 13“pF4(%) −0い256 0165 −0.232 −0.153 −0183 0006 −0.720*** 14pH −0.399 0.141 0.147 0,111 −0。192 −0.011 −0.622** 15.自然水(%) −0。.211 0,437* −0.266 −0163 −0263 −0−√015 −0,′704*** 16‖ 真比重 0.679*** −0095 −0.455* −0475* −0.227 −0け132 0,458* 有意水準 *5% **1% ***01% ⑳集水距離:こ分水界から測点までの距離(m) ⑳斜面の形態:測点を通る斜面の地下側角度(○)(>180は凹形,<180は凸形を表す) ⑳傾斜度:測点を通る斜面の傾斜(%) ⑳斜面の方位ご測点を通る斜面の上流側からみた方位(◇),(北を0,南を180とする半円方位 角) 結果ならびに考察 (り 地形因子と土壌物理因子との相関 解析の結果得られた地形因子と土壌物理因子との関係を相関係数で示すと表−1のとおりであ る この表からわかるように,地形因子のうちでほ斜面の方位(23)が土壌の物理性と最も高い相関 を示し,シルト分(4),pF関連3因子(11,12,13),自然含水比(15)とは0.1%水準で有意な 関係をもち,通気性(9),透水性(10),pH(14),真比重(16)などとも有意な相関を示した これほ図−1からわかるように,対象地区が東西方向に大きな谷地形を形成していることとの関連 性が高いものと考える その他の地形因子も,すべて何らかの土壌物理因子と有意な相関係数を示しており,7個の地形 因子の選定が適正であったことを示している 土壌物理因子のなかでは,真比重(16)が最も多くの地形因子と関連性をもち,とくに標高(17)と は0.1%水準で有意な相関を示したこの結果は,真比重が母岩(閑雲花崗岩)の風化度と密接な関 係を有するためと考えられる

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表−2 新開地における重回帰分析結果 また,シルトを除く粒度関連4因子(1,2,3,5)と団粒率(6)は,いずれの地形因子と も有意な相関関係を持たず,重回帰式による算定が必要条件となることがわかる (2)重回帰分析結果 新開地を対象にした垂回帰分析結果ほ表−2に示すとおりである.表中の数値は有効数字3桁を 原則としたが,小数点以下3桁までにそれが得られない場合には,小数点以下4桁目を四捨五入し ているまた添字の数字は表−1のものと−・致している. この表からわかるように,シルト分(4),pF関連3因子(11,12,13),pH(14),自然含水比 (15),真比重(16)はいずれも説明変数(地形因子)3個で十分有意な重回帰式が得られ,地形と の関連性が高い因子とみなすことができる 透過性関連2因子(9,10)は説明変数5個で,また粒度に関連する4因子(シルトを除く:二 1,2,3,5)と,構造に関連する2因子(仮比重を除く::6,7)は説明変数7個で,それぞ れ十分有意な重回帰式が得られるが,仮比重(8)のみはやや低い(1%)有意水準にとどまっ た. このように,花崗岩質の母岩をもつ新関傾斜地の場合には,ほとんどの土壌物理因子は地形因子 による数量的算定の可能性があることがわかる. (二3)応用例土層の改良目標の適合性判定 表−2の重回帰式の一・般的な応用としては,地形因子の数値を代入した土壌物理因子の算定が考 えられるが,逆に土壌物理因子が設定された場合の地形因子の変動範囲も算.定できるり 農業土木への応用例として,農地造成・土層改良分野を取り上げてみると,現在,普通畑の土層 の改良目標としては,表−3のような土壌物理的数値が設定されている(3−そのうち透水性の改良 目標に真一2の恥10を適用して,深度(18)=10cm,集水距離(20)=100m∴方位(23)=900 の

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川北仰山田:地形因子による土襲の物理性の算定 表−3 普通畑の土屈の改良目標 159 項 目 目 標 土壌物理因子への換算数値 土性 SL∼LiC 砂<85%,粘土<45%,シルト<45% 間際率 30∼80% 仮比重18∼0∴5

pF 188

10′)30% pF2 11∼33% pFl“8∼3‖0 10∼15% pF3 21∼48% 透水性 20∼50mm/day以上 透水係数二>2.3×10 ̄4cm/s 石礫 5%以下(容積比) 9%以下(質量比) 80 100 20 40 傾斜(%) 図−3 土屈改良目標への応用例 とき,透水係数(10)>023×10 ̄3cm/sとなるような標高(17)と傾斜(22)との関係式ほ, YlO=0445Ⅹ17−0265Ⅹ2Z>023 Ⅹ.7をY軸,Ⅹ22をⅩ軸としてこの関係を図示すると図−3のようになる 図中の斜線で示したように,たとえば標高90mの地点では,傾斜が50%以下であれば,士層の改 良目標に適合した023×10 ̄3cm/s以上の透水係数が得られる (4)既耕地への適用性

表−2に示した重回帰分析結果を,図−1の隣接既耕地(Eの8地点:造成後15年)に適用し

た.その結果は表−4に示すとおりである適用性の判定はx2(カイ2乗)検定により,表中にお ける○は5%水準で実測度数分布と理論度数分布に適合性が認められる場合を,△は適合性は低い が度数分布に重複部分がある場合を,×ほ重複部分がなく全く適合性がない場合を,それぞれ示し ている この表からわかるように,pF関連3因子以外は適用性が低く∴拉度関連因子(1∼5),透過性 関連因子(9,10),およびpH(14)は実測度数分布と理論度数分布に重複部分がなく,適用が不

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表−4 既耕地への適用性 項 月 適用性 適 用 結 果 粉塵 〉〈 とくにレキ分が大幅に異なるい 度数分布に差があり適用不可 構造性 △∼○ 予測が過大い 度数分布に差を生じるものもあり適用困難 透過性 × 予測が過小い 度数分布に差があり適用不可 pfl ○∼△ 予測がやや過大となるが度数分布に差がなく,適用可

pH

× 予測が過大.度数分布に差があり適用不可 其比重 △ 予測がやや過小となり,有意性判定の水準が低い 表−5 土地利用区分と土壌の物理性との相関係数 因 子 相関係数 因 子 相関係数 1.レキ分 Ⅰ・=一0..682** 9.通気係数 2い 粗砂分 r=−0.107 10L.透水係数 Ⅰ・=−0‖450 3小 細砂分 工・= 0.208 11pF2 r= 0.694** 4い シルト分 r= 0.613* 12‖ pF3 Ⅰ・= 0.630* 5.粘土分 Ⅰ・= 0.350 13“pF4 r= 0538* 6.団粒率 r= 0.213 14‖ pH IJ=−0.396 7.有機物 Ⅰ・= 0412 15.自然水分 Ⅰ・=0.252 8仮比重 r=−0681** 16‖ 其比重 可能である.このうち粒度ではレキ分(1)の値がとくに大幅な差を生じたので,造成後に除レキ が行われたものと仮定し,レキを除いて算定すると適用性は上昇し,△となった −・般的傾向としては,データの外挿によって数値を算定した場合に適用性が小さくなる傾向がみ られたが,最も重要なのは,新たな因子の導入によって適用性を高めることではないかと考えた そこで土地利用形態を因子として導入して適用性の向上を試みた,.その内容は以下のとおりであ る ①地形因子の中に「土地利用区分」を加える,数量的には新開地(裸地)を0,自然植生を1, 果樹園を2,普通畑を3,水田を4とする ②斜面の方位が近似している既耕地Eと新開地Cのデータを用いて,因子油.23の斜面の方位を土 地利用区分に置換して重回帰分析を行う.ただし田子Nα9通気係数と馳15自然含水比は欠測のため 除外する これらのうち,①の土地利用区分のような分類因子を地形因子として導入した場合,0∼4の数 量的根拠があいまいであるが,ここでは人為的要素が大きくなるほど数億が大きくなるように設定 した ①,②の処理を行った結果を,土地利用の影響の有意性判定として相関係数で示すと表−5のと おりである この表からわかるように,土壌物理14国子中6因子は土地利用区分と有意な相関をもち,その他 の8因子も重回帰分析結果に影響を及ぼしうる相関を示しているしたがって衰−2を修正した重 回帰式が算定可■能となった,.その結果を表−6に示す 表一6を義一2と対比すればわかるように,レキ分(1),有焼物畳(7),仮比重(8)の3因

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川北・山田:地形因子による土壌の物理性の算定 表−6 既耕地に.おける重回帰式 161 表−7 地質系統別適用性 地質系統 面横(k釦 割合(%) 試料数 適用性 適用性の内容 花崗岩顆 450 31−6 10 ○ 偏差がやや大きい 和泉層群 315 22‖0 7 △ 砂質土の−・部適合 土庄層群 5 04 0 試料なし 讃岐層群 90 6.5 12 × 適用性なし 三豊層群 20 1、5 3 △ 砂質土の−・部適合

洪積層 175

12、0 2 × 地形因子が不十分

沖積層 370

26..0 5 × 地形因子が不十分 子は説明変数が減少し,土地利用区分によって変化しやすい土壌物理因子であるとみられる.これ らの3因子はり経験的にみても土地利用形態による逢いが認められるように思える これに対してシルト分(4),透水係数(10),pH(14),真比重(16)は逆に説明変数が増加し ており,土地利用区分の影響を受けにくいことがわかる (5)母材が異なる土壌への適用性 表−2および義一6で得られた重回帰式を,香川県下における母材が異なる土壌に適用した場合 の,土壌の物理性算定の可能性を検討した 算定ほ農地工学研究室保管の香川県の土のデータベース(未公開)および農学部学術報告中に公 開されたデータ、6789から重複部分を除いた39種類に対して行った.その際の地形因子は香川県によ

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る土地分類基本調査(10)を利用して計測した,その結果を地質系統別に示すと表−7のとおりであ る 表−7における適用性の判定は,表−4に準じて(○,△,×で)行った この表からわかるように,花崗岩類の風化物を母材とする土壌に対する適用性は認められるが, その他の土壌については,−部の砂質土壌を除いて表−2,6の重回帰式における算定結果は適用 が困難であったしたがって実際の算定にあたっては,重回帰式ほ各母材ごとに求めることが望ま しいものと考えられる ただし,平地を形成し地形因子の影響が小さい沖積層および洪横層を除くと,花崗岩棋が占める 面積は香川県下の約50%となるので,山地,丘陵地の半分は本論文の重回帰式が適用できる可能性 があることがわかる

あ と が き

地形が土壌(の物理性)に及ぼす影響に関する従来の研究においてほ,主として定性的な記述が なされ,農業土木の技術者が利用する際の実用性に乏しいのが実情である本論文ではこのギヤッ プを填めることを試み,ある程度の成果を得たが,それに伴っていくつかの問題点も見出された 最大の問題点はデータの信頼性であるたとえば実験や実測の数値の有効数字は個々のデータご とに異なり,3桁未満となる場合もしはしばみられた.これはメッシュ.の大きさにも関連し,メッ シュが小さいぼど数量的データの信頼性は高まるが,それに伴って汎用性が低下するという欠点が ある また,重回帰式の適用に際しても,モデル地区のデータに内挿できる場合には比較的有意性が高 いが,外挿の場合には誤差が大きく,大規模なモデル地区の選定が重要であることを実感した 今後,地形因子による土壌の物理性算定の信頼性を高めるためには,これらの問題点に留意する 必要があり,たとえば数量化Ⅰ類による解析が実用的でほ/ないかと考える なお,本研究は川北の卒業論文を主体とし,それに山田が若干の補足を加えたものである 摘 要 香川大学農学部付属農場内新開地の,地形国子の異なる12ヶ所から試料を採取し,16個 の土壌物理因子を目的変数,7個の地形因子を説明変数とした重回帰分析を行った その 結果以下の事柄が判明した (1)シル†分,PH,其比重および水分に関する諸因子は地形因子3個で算定が可儲であ る (2)透過性に関する2因子は地形因子5個で算定が可能である (3)その他の土壌物理因子の算定には7個の地形田子が必要である 極)既耕地に適用する場合には,土地利用区分を因子に加える必要がある (5)土壌の母材が異なる場合,算定に用いる重回帰式は母材ごとに求める必要がある (6)香川県下の山地・丘陵地の約50%は,本論文の重回帰式による土壊の物理性算定の 可能性がある

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川北・・山田:地形因子による土壌の物理性の算定 163

引 用 文 献

(1)松井健:土壌地理学序説pp173−184築地古 館,東京(1988) (2)国土地理院:1:5,000国士基本図 Ⅳ一FF25 国土地理院仁東涼(1971) (3)松本茂:メッシュ気候倍の概要農業気象学会 編著,新しい農業気象・環境の科学pp35−42 養賢堂,東京(1994) 極)沖村孝,顔戸島政博:地盤工学者のための地形 ・地質情報の活用法入門 5地形解析への利 用土と基礎43−11,pp67−71(1995) (5)農林水産省構造改善局:土地改良事業計画設新 基準 計画・土層改良 p24.農業土木学会,東 京(1984) (6)斎藤実他:香川県の土の物理¶工学性に関する 研究(Ⅰ) 香大農学報,59,pp203−209 (1976) (7)斎藤実他:香川県の士の物:哩・工学性に関する 研究(Ⅰ)香大農学報,60,pp129−134 (1977) (8)山田宣良,横瀬広司:香川県の土の物理・工学 性に関する研究(Ⅲ)香大農学報,83,pP,63叫 70(1988) (9)横瀬広司,山田富良:造岩鉱物の組成・組織が 残析土の理工学性に及ぼす影響一 番大農学報, 85,pp159−167(1989) ㈹ 高桑札他:香川県土地分猥基本調査総括報告 書 香川県(1977) (1996年5月31日受理)

参照

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[A] Olga Azenhas, The admissible interval for the invariant factors of a product of matrices, Linear and Multilinear Algebra 46 (1999), no.