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目   

排泄ケアマネジメント相談マニュアルの特徴

1.排泄障害の基礎知識

1  1-A:正常な排尿のはたらき 1  1-B:下部尿路症状の理解 2  1-C:下部尿路症状の簡便な症状の把握 3  1-D:尿失禁について 4  1-E:尿失禁のアセスメントの考え方 5  1-F:尿失禁の程度・QOL・失禁分類のための簡便な質問票 7  1-G:正常な排尿状態とその条件 8

2.排泄ケアマネジメントに活用できる行動療法

10

 2-A:行動療法の種類

10

 2-B:高齢者機能性尿失禁に有効な行動療法

11

 2-C:排尿の意思を伝える力を獲得する排尿自覚刺激行動療法

12

 2-D:頻尿・切迫性尿失禁に有効な膀胱訓練

15

 2-E:腹圧性尿失禁と骨盤底筋体操

17

3.排泄ケアマネジメント

19

 3-A:排泄ケアマネジメントの概念

19

 3-B:排泄ケアマネジメントの目的

19

 3-C:排泄ケアマネジメントの実際

20

 3-D:行動療法をどのように取り入れるか。

23

 排泄ケアマネジメントの実際:事例紹介

25

(資料)

山形県排泄ケアマネジメント相談員養成事業参考記録用紙

29

山形県排泄ケアマネジメント相談ネットワークシステムの実際

山形県排泄ケアマネジメント相談ネットワークについて

44

 1)相談員対象者

44

 2)相談員の役割・位置づけ

44

 3)相談体制(ネットワークプロセス)

44

 4)相談員へ相談の際の留意点

45

 5)ネットワークにおける役割分担

46

 6)その他

46

 

山形県排泄ケアマネジメント相談の留意点!

50

山形県排泄ケアマネジメント相談員活動経過

51

(3)

山形県排泄ケアマネジメント相談マニュア

山形

形県

県排

排泄

泄ケ

ケア

アマ

マネ

ネジ

ジメ

メン

ント

ト相

相談

談マ

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1)

1)

の特

の特徴

特徴

 この排泄ケアマネジメント相談マニュアル(Ver.1)は、平成18年度よりスタートした山形県排 泄ケアマネジメント相談ネットワークシステムにおいて、地域包括支援センター、在宅介護支援セ ンターと山形県排泄ケアマネジメント相談員の相談活動を支援することを目的として作成しました。  排泄ケアマネジメント相談は、排泄に関わりなんらかの悩みを抱えている高齢者やご家族が、最 善の解決策を選択できるための情報提供・相談の機会をつくること、そして、地域のサービス資源 やネットワークを活用し、可能な限り、ご本人の意向に沿った、自立した尊厳ある生活が実現でき ることをめざしています(下図)。 葛本マニュアルの主な内容は、4点あります。  1.排尿障害の基礎知識を紹介しました。  2.排尿障害の改善・自立支援に有効な行動療法を紹介しました。  3.行動療法とサービス連携を活用した、排泄ケアマネジメントを紹介しました。  4.山形県排泄ケアマネジメント相談ネットワークシステムの相談方法を紹介致しました。  本マニュアルは、排泄障害という広範な課題の中で、山形県排泄ケアマネジメント相談員養成事 業で取り組んだ範囲の内容を限定して紹介しております。実際の相談システムについては、「4.山 形県排泄ケアマネジメント相談ネットワークについて」をご覧の上、ご活用下さい。  今後、ネットワーク機構が徐々に醸成され、サービス資源の情報が蓄積し、高齢者とご家族の皆 様に、情報提供と相談の機会が増え、少しでも快適で健やかな生活が実現できれば幸いです。 (山形県排泄ケアマネジメント相談員養成事業実施指導)  国立大学法人山形大学医学部看護学科 臨床看護学講座 

教 授 佐 藤 和佳子 

排泄ケアマネジメント相談ネットワークシステムの目的

最適な方法を選べる、情報提供・相談の機会を作る。

地域のサービス連携を最大限活用し、具体的解決策を検討する。

(自立した尊厳ある生活を支援)

(4)

排泄障害の基礎知

排泄

泄障

障害

害の

の基

基礎

礎知

1-A:正常な排尿のはたらき

 正常な排尿のはたらきは、尿が漏出することなく、一定量以上の尿を膀胱に貯める機能(蓄尿 機能)と、膀胱が空になるまで尿を排出する排出機能のふたつに分けられます。  この2つの機能が精巧にはたらくことで、ふだん、意識することなく美味しい食事を楽しんだ り、トイレの心配をせずに過ごすことができます。

(引用:図説下部尿路機能障害 LowerUrinary TractDysfunction ;LUTD,山口脩、嘉村康邦、宍戸啓 一著、メディカルビュー社、p8,図2、2004年)

殺ポイント1 閣 排尿のはたらきは、蓄尿・排尿の2種類です!

この2つのはたらきを基本に、排尿に関する症状を見ていきます。

(5)

1-B:下部尿路症状の理解

 排尿障害は、膀胱に尿を貯める機能が障害される蓄尿障害と、尿を排出する機能が障害される 尿排出障害の2つに分けられます。

 これらの障害から生じる様々な症状を下部尿路症状(

Lower

Ur

i

nar

y

Tr

act

Sympt

oms

:

LUTS

と言い、蓄尿症状・排尿症状に分けられます。  蓄尿症状、排尿症状、さらに国際尿禁制学会が新たに定義した排尿後症状に分けて紹介します。 ※上記の症状は、次ページの国際前立腺症状(I

PSS

)スコアにより、簡単にチェックすることが できます。

殺ポイント2 閣 排尿障害は、蓄尿障害か排出障害の2種類に分類できます。しか

し、ふたつの障害を併せ持つ場合もあります。詳しい症状を観察

しましょう。

殺ポイント3 閣 下部尿路症状の訴えがあるときは、かかりつけ医・専門医への受

診をすすめましょう!

産主な蓄尿症状(尿が十分に貯められない症状―頻尿が代表的です。)  昼間頻尿:日中の排尿回数が8回以上で、回数が多すぎるという訴え  夜間頻尿:夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという訴え  尿意切迫感:抑えられない強い尿意で、我慢することが困難という訴え 産主な排出症状(前立腺肥大症に見られる症状とされてきましたが、女性にも低活動膀胱等 による排出症状があることがわかってきました。)  尿勢低下:尿の勢いが弱いと言う訴え。尿線の分割・散乱という訴え  尿線途絶:尿線が排尿中に1回以上途切れるという訴え。  排尿遅延:排尿開始が困難で、排尿準備から開始までに時間がかかるという訴え  腹圧排尿:排尿の開始が困難で、尿線の維持または改善に力を要するという訴え  終末滴下:排尿の終了が延長し、尿が滴下する程度まで尿流が低下するという訴え 産排尿後症状  残尿感:排尿後に完全に膀胱が空になっていない感じがするという訴え  排尿後尿滴下:排尿直後に不随意的に尿が出てくるという訴え 排尿に関わる症状は、病気や全身状態が影響している場合があります。 また、膀胱がんなどの重大な病気や感染症が影響している場合もあります。 症状が気になるときは、医療機関に受診しましょう。

(6)

1-C:下部尿路症状の簡便な症状の把握

 下記のI

PSS

は、もともとは前立腺肥大症による症状を評価する尺度として開発されましたが、 女性の症状を図る際にも活用できると考えられています。

殺ポイント4 閣 スコア表の質問の2・4・7は蓄尿症状、質問の3・5・6は排

出症状、質問1は、排尿後症状に関する質問です。

最近1カ月のことを聞いていますので、あわてないで記入してもらってください。

国際前立腺症状(

I

PSS

)スコア

 最近一カ月の平均的な排尿状態(尿の出具合い)について、下の表の当てはまる欄に○をつ けてください。

QOL

スコア ほとんど いつも 2回に1 回以上 2回に1 回ぐらい ある 3~5回 に1回く らい 5回に1 回未満 なし 最近の排尿について 5 4 3 2 1 0 1.排尿後、尿がまだ残っている感 じがありましたか 5 4 3 2 1 0 2.排尿後2時間以内にまたトイレ に行きたくなったことがあります か 5 4 3 2 1 0 3.排尿の途中で尿が途切れること がありましたか 5 4 3 2 1 0 4.排尿を我慢するのがつらいこと がありましたか 5 4 3 2 1 0 5.尿の勢いが弱いことがありまし たか 5 4 3 2 1 0 6.排尿開始時にいきむ必要があり ましたか 5 4 3 2 1 0 7.夜寝てから朝起きるまで何回ト イレに行きましたか 0-7点:軽症、8-19点:中等症、20-35点:重症 合 計 大変不満 不満 不満 気味 満足・不満 の中間 だいたい 満足 満足 大変 満足 不  満  度 6 5 4 3 2 1 0 現在の排尿の状態が一生続く としたらどう感じますか? 0-1点:軽症、2-4点:中等症、5-6点:重症

(7)

1―D:尿失禁について

(尿失禁の定義:尿が不随意にもれるという愁訴)

 尿失禁は、様々な原因と状況があり、対応が異なります。  代表的症状・分類・原因を表1に示しました。

表1  症状から見る主な尿失禁分類

主 な 原 因 分     類 症     状 ・尿道括約筋や骨盤底筋群の筋力 低下、出産、肥満、加齢などが 関与 ・経産婦や肥満の中高年女性に多 く、男性では、前立腺摘出術後 に出現する場合がある

腹圧性尿失禁

(蓄尿障害) 腹圧がかかった 時に漏れる ・咳やくしゃみの時に漏れる ・階段昇降時や重いものを持っ た時に漏れる ・神経障害…脳卒中などの神経回 路の障害、パーキンソン病など の神経変性疾患 ・過活動膀胱…十分な量の尿がた まらないうちに膀胱が勝手に収 縮してしまう ・膀胱の炎症など ・前立腺肥大症などの尿排出障害 でみられることもある

切迫性尿失禁

(蓄尿障害) 頻尿・強い尿意 間に合わずに 漏れる ・頻尿(1回排尿量は少ない) ・強い尿意が起こり、トイレま で間に合わない ・尿道通過障害…前立腺肥大症や 前立腺がんなどによる下部尿路 閉塞 ・膀胱の収縮障害…糖尿病や手術 による神経障害など ・尿を十分に排出しきれずに、膀 胱からあふれてくる状態のため、 常に漏れる状態になる

溢流性尿失禁

(尿排出障害) 常に尿が漏れる 残尿が多い ・膀胱内の残尿が多量にあり、 膀胱からあふれるように尿が 漏れる ・尿漏れの頻度が高く、常に少 しずつ漏れている ・運動機能障害 ・認知症など ・下部尿路機能障害以外のことが 原因

機能性尿失禁

(蓄尿・排出障害以外) ADLの低下 認知機能の低下 ・排泄動作が緩慢なために尿が 漏れる ・トイレを認識できないために 尿が漏れる (尿失禁は、混合性に起きる場合もあります。)

(8)

1-E:尿失禁のアセスメントの考え方

殺ポイント5 閣 排尿(量)日誌をつけてみましょう。

排尿(量)日誌は、情報の宝庫です。

3日間のつけて頂くと、その方の日常的な排尿の働きを推定すること

ができます。

 算排尿

(量)

日誌から見えること

・3日間、難しい場合は、連続して

24

時間つける のが原則。(行動療法のモニタリングに使用する 場合は、日中のみでも良い。) ・昼間と夜間の状態は別々にアセスメントを行う。 ・1回尿量をできるだけ測ってもらう。 ・おむつの場合は、ぬれたおむつの重量から、未 使用のおむつの重量を測定する。 排 尿 回 数:頻尿がないか。 尿   意:切迫症状はないか。 1回排尿量:蓄尿量はあるか。 早朝第1排尿量起床直後:    最大の蓄尿量はどのぐらいか。 排 尿 時 間:排尿間隔(排尿パターン) 起床時間・睡眠時間:    1日の生活リズムと排尿との関係    夜間の排尿状態 尿漏れの状態:    尿失禁の分類・程度・原因の推定 1日目:2時間毎に尿意を尋ね、おむつを確 認する。 2日目:尿漏れがなければ、尿意を確認しな がら、チェック時間を延長する。     尿漏れがあれば、1時間30分毎に短 縮し、尿意を確認しながらチェック する。 3日目:尿漏れがなければ、おおよその排尿 パターンを確定する。     尿漏れがあれば、1時間毎に短縮し、 尿意を確認しながらチェックする。 ・羞恥心への配慮   おむつを着用している高齢者の排尿時間 の確認は、1時間毎のチェックを限度にし ます。   関わる場合は、1人の介助者が関わるな どの配慮をしましょう。 (長期におむつを着用し、尿意が不明確な高齢者の 排尿(量)日誌の取り方

(測りかた)  細かい目盛りは不要です。  計量カップなど便利です。 尿量測定に便利な容器

(9)

●排尿チェック表の活用

 名古屋大学排泄情報センター・名古屋大学大学 院医学系研究科病態外科学講座泌尿器科学作成

(見本)日本排尿機能学会 排尿日誌作成委員会作成

ホームページ square.umin.ac.jp/nbsよりダウンロードできます。

排尿量日誌をもとに、専門医の判断に近い尿 失禁分類を推定できます。

http://www.m-haisetsu.info よりダウンロー ドすることができます。

(10)

1-F:尿失禁の程度・QOL・失禁分類のための簡便な質問票

国際尿失禁会議質問票ショートフォーム

殺ポイント6 閣 尿失禁の状態と日常生活への影響を、短時間に正確に把握するこ

とができます。

I

CI

Q

SF

(国際禁制学会質問票短縮版)

1.どのぐらいの頻度で尿がもれますか(ひとつの□をチェック) なし □=0 およそ1週間に1回、あるいはそれ以下 □=1 1週間に2-3回 □=2 およそ1日に1回 □=3 1日に数回 □=4 常に □=5 2.あなたはどれくらいの量の尿もれがあると思いますか。   (当てものを使う、使わないにかかわらず、通常はどれくらいの尿もれがありますか。)       な し □=0       少 量 □=2=1       中等量 □=4=2       多 量 □=6=3 3.全体として、あなたの毎日の生活は尿もれのためにどれくらいそこなわれていますか?   0(まったくない)から10(非常に)までの間の数字を選んで○をつけて下さい。 0   1    2   3   4   5   6   7   8   9   10    まったくない       非常に 4.どんな時に尿がもれますか?(あなたにあてはまるものすべてをチェックして下さい) なし-尿もれはない □ トイレにたどりつくまえにもれる □ せきやくしゃみの時にもれる □ 眠っている間にもれる □ 体を動かしている時や運動している時にもれる □ 排尿を終えて服を着たときにもれる □ 理由がわからずにもれる □ 常にもれている □ (質問の4を見ると、およその尿失禁を分類することができます。)

(11)

1-G:正常な排尿状態とその条件

殺ポイント7 閣 排泄動作の状況を詳しく観察しましょう!

 排泄に関わる一連の動作は、日常生活動作(ADL)の全体の自立度とほぼ一致します。  廃用症候群を防ぐためにも、排泄動作の自立の維持は重要です。  特に、歩行や移乗動作は、トイレへの移動に直結する重要な動作です。  よく観察しましょう!

殺ポイント8 閣 アセスメントの大事な姿勢

 質問票や排尿日誌は、羞恥心を考慮しお互いに客観的に状況を確認できるので大変便利です。  アセスメント方法を上手に活用し、積極的にお話を聞く姿勢が安心に繋がります。そして、そ の方にふさわしい方法を見いだしましょう。 正 常 な 条 件 正 常 な 状 態 膀胱に尿が貯まる。 貯まったことが膀胱から脊髄神経を経て大脳 に伝わる。 大脳で尿意を判断することができる。(がまん できる。) 膀胱容量の半分ほどで最初に感じる。 知覚してからしばらくは我慢できる。 あまり我慢すると寒気や鳥肌が立ったり する。睡眠中も知覚し覚醒する。 尿意を感じる トイレ・尿便器がわかる場所にある。 見える。 あるいは、視力に代わる知覚で確認できる。 判断できる。 トイレがどこにあるかわかる。 尿便器の使い方がわかる。 トイレ・便器 を認識する 移動する意思・理解力がある。 筋力があり、移動に必要な機能運動ができる。 バランスが保てる。 移動動作ができる。 心肺機能を持っている。 補助具を理解でき、適合できる。 移動の目的がわかる。 寝返り、起きあがりができる。 移乗・立位・歩行ができる。 あるいは、補助具を使うことができる。 移 動 衣類の着脱方法を認識できる。ボタンの留め・ はずしができる。 下着がおろせるよう腰あげやずらすことがで きる。 ズボン・スカートをおろしたり、まくっ たりできる。 下着をおろし、元に戻せる。 衣類の着脱 視力・判断力がある。 指の巧緻運動や必要な動作ができる。 尿・便器の位置を確認できる。 ふたを開けるなど必要な動作ができる。 尿便器の準備 蓄尿時は膀胱が弛緩し尿道が収縮、排尿時は その逆ができる。 膀胱から大脳・大脳から膀胱につながる神経 伝達が正常にはたらく。 200-500mL程度の量をスムーズに排尿 できる。 残尿がない。 意図したときに排尿できる。 排 尿 後始末の必要性・方法を理解し、実行できる。 手先が動く、見える、あるいは視力に代わる 知覚で確認できる。 後始末ができる。 尿便器を洗える。 手を洗える。 後始末

(西村かおる監修:ケースで納得排尿ケア 病棟・外来編、UrologicalNursing 2003年夏増刊、メディ カ出版、P10、表2を一部省略して記載。)

(12)

表2  尿失禁タイプ分類と治療法(参考資料)

備   考 外科治療 薬物治療 下部尿路 リハビリテーション 尿失禁タイプ 1~3カ月で尿失禁 の程度、残尿を在評 価 薬物治療により尿失 禁が改善しないが、 残尿が50mL以上に 増加する場合、泌尿 器科専門医受診 前立腺肥大症など膀 胱出口閉塞による切 迫性尿失禁の場合 経尿道的前立腺切除 術など* 抗コリン薬 塩酸プロピベリン* 塩酸オキシブチニン* 臭化プロパンテリン 塩酸イミプラミン 塩酸フラボキセート 排尿介助*  時間排尿誘導  パターン排尿誘導  排尿習慣の再教育 膀胱訓練* 骨盤底筋訓練* 切迫性尿失禁 (残尿<50mL) 膀胱頚部支持器* も使用可能1~3カ 月で尿失禁の程度、 残尿を再評価 薬物治療により尿失 禁が改善しない場合、 泌尿器科専門医受診 経膣式膀胱頚部拳上 術* 恥骨後式膀胱頚部拳 上術* 前膣壁形成術* スリング手術* 尿道周囲コラーゲン 注入術* 人工尿道括約筋埋め 込む術* エストロゲン療法* β交感神経刺激薬 α交感神経刺激薬 排尿介助*  時間排尿誘導  パターン排尿誘導  排尿習慣の再教育 膀胱訓練* 骨盤底筋訓練* 腹圧性尿失禁 間欠導尿* 尿道カテーテル留置** 泌尿器科専門医受診 膀胱出口閉塞の場合 経尿道的前立腺切除 術など 膀胱出口閉塞の場合 α交感神経遮断薬 溢流性尿失禁 環境の整備(トイレ の表示、段差・障害 物の解消、ポーダブ ル便器、尿器の使用) 排尿介助*  時間排尿誘導  パターン排尿誘導  排尿習慣の再教育 機能性尿失禁 残尿が50mL以上認められる場合は、泌尿器科専門医 を受診させるべきである。   *:まず試みられるべき治療法である。  **:合併症が多いため、安易に行うべきでない。 泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班編集:EBM に基づく尿失禁診療ガイドライン.じほう.P34.表 2より抜粋

(13)

2.

2.

排泄ケアマネジメントに活用できる行動療

排泄

泄ケ

ケア

アマ

マネ

ネジ

ジメ

メン

ント

トに

に活

活用

用で

でき

きる

る行

行動

動療

 排尿障害の改善には、原因や状態に応じ、薬物療法・手術療法などの積極的な治療法の一方で、 適応がある場合には、行動療法によって症状を改善する方法があります。また、日頃の排尿習慣を よりよく改善するためにも有効です。しかし、いくつかの留意点も必要です。  ここでは、ケアプランにおいて身近な排尿誘導に取り入れられる、自立促進に有効な行動療法を 紹介します。

2-A:行動療法の種類

1.

ADL

の低下や認知症の低下を原因とする機能性尿失禁に有効な行動療法:排尿自覚刺激行動 療法(2-C,P12~参照)・排尿習慣化訓練 2.頻尿や切迫性尿失禁に有効な行動療法:膀胱訓練(2-D,P

15

~参照) 3.腹圧性尿失禁に有効な行動療法:骨盤底筋体操(2-E,P17~参照)

殺ポイント9 閣 行動療法の留意点

  行動療法は、尿路感染症、尿排出障害がないこと、また、排尿障害の原因や健康状態に注意 しながら進めていく必要があります。   主治医と連携を取りながら進めて行きましょう。排尿日誌など、日常のケアを通し工夫でき る部分を上手に活用しましょう。

(14)

2-B:高齢者機能性尿失禁に有効な行動療法

 高齢者の場合、

ADL

の低下や認知症による行動障害により、排泄動作の遂行を自立して行えず

尿漏れが生ずる機能性尿失禁が多く認められます。

 米国の

Agency

f

or

Heal

t

h

Car

e

Resear

ch

and

Qual

i

t

y

AHRQ

)の尿失禁ガイドライン(

1996

年)では、機能性尿失禁を有する行動療法として3つのプログラムを紹介しています。日本では、こ れらの方法を排尿誘導という言葉で包括的に用いています。

おむつ・パッドの紹介、福祉機器等の環境調

整について

 排泄障害の改善には、状況や原因によって、適切な おむつやパッドの使用や、福祉機器の使用も不可欠な 場合があります。これらについては、地域包括支援セ ンター・在宅介護支援センターや市町村窓口で情報を 得ることができます。  山形市では、昨年、排泄介護検討委員会を設置し、 排泄ケア普及・向上のためのパンフレットを作成しま した。  また、近年、画期的な高齢者排尿管理のマニュアル が作成され、有効性が検証されています。

産排尿自覚刺激行動療法(

Pr

ompt

ed

Voi

di

ng

 個別の排尿パターンを把握した対象者に対し、排尿の意思を伝え、失禁がなく排尿で きた場合に賞賛の言葉がけを行うことで、排尿を自発的に伝える能力を獲得する行動療 法、無作為比較化試験による有効性の報告が出されている。  認知機能が低下している高齢者の場合でも、対象によって改善できることが報告され ている。

産排尿習慣化訓練(

Habi

t

t

r

ai

ni

ng

 個別の排尿パターンを把握した対象者に対し、本人のパターンに沿って、繰り返し排 尿を誘導し習慣化することによって尿失禁の改善を図る行動療法。   我が国で行われている排尿誘導に最も近い方法で、介護を要する高齢者や、認知症高 齢者が入居するグループホームなどで適している。

(いわゆる定時誘導(

Schedul

e

Toi

l

et

i

ng

)について)

 排尿の自立が困難な対象者に対し、一定のスケジュール(2時間から4時間間隔の範囲 内)でトイレに誘導し排泄介助を行う。 汚染したままの状態を防ぐことが目標

(15)

2-C:排尿の意思を伝える力を獲得する排尿自覚刺激行動療法

    (PromptedVoi

di

ng:PV)   

PV

の特徴

1.無作為比較化試験(

RCT

)による効果検証が報告されている。   PVは、1980年代後半より、米国のナーシングホームの高齢者を対象に、心理学者や泌尿器 科医らによって提案され、無作為比較化試験による効果の検証が多数報告されてきました。そ のため、適応基準・予測因子が検討されています。 (適応基準)   

PV

の効果が得られる対象者は、1回排尿量

200mL

程度はあること、残尿

150mL

以下として 報告されています。 しかし、日本では、体格を考慮しやや低い数値になると推測できます。 (尿失禁ガイドラインでは、残尿量は50mL以下としています。)   残尿貯留が予想される場合は、個別の状況について判断が必要ですのでかかりつけ医・専門 医に相談を勧めましょう。 (効果予測因子)   尿失禁比率(尿失禁の回数/排尿回数×100 (%)) が、およそ20%程度と報告されています。 (

Ousl

auder

,

JG.

1995

(16)

2.社会的賞賛の言葉がけを行う。   社会的賞賛とは、「よくできました。」と単純に誉めるということだけではありません。関係 性の中での感謝やねぎらいの言葉をかけることで、「教えて頂いて助かりました。」という様な 意味を込めた言葉がけを行います。   目標は、尿失禁の改善そのもの以上に、排尿の意思を教える意欲です。 3.方法が簡略化・短縮化されている。   排尿に関わる方法は、基本的にどの行動療法もご本人にも、介助者にも手間と根気を必要と します。   そのため、

PV

については、日中朝食後から6-8時間の中で継続して頂ければ、徐々に効果 が得られていることが報告されています。

殺ポイント10 閣

【PVの留意点―効果的に継続するために】

殺ポイント11 閣 PVによる改善が図りやすい高齢者

1.日中の活動時間帯に行う。 2.排尿について尋ねるときは、落ち着いた雰囲気で集中できる配慮をする。 3.尿もれの状況については、ご本人も正確に認識できるように伝える。 4.便秘がなく、食間の落ち着いている時間帯に積極的に取り組む。 1.本人・家族に改善への意欲がなんらかの形である。(なんとかトイレに行くことが できないかなど、どのような表現でも良い。) 2.座位が可能で、ある程度意思疎通の可能な、機能性尿失禁を有する虚弱または要介 護高齢者  日常生活自立判定基準 Bランク以上  認知機能については、現在明確な基準はないか、なんらかの形で本人の意向がある 程度確認できること。 3.排尿量日誌をとり、1回排尿量が150~200mLや、尿失禁率:20-30%程度の対象者 に有効とされる。

(17)

 1.生活機能の全体的な評価(P20参照)  2.排尿(量)日誌を3日間測定する。(起床から就寝まで)(P21参照)  3.排尿日誌に基づき、行動療法の適用を検討する。(

P21

参照) 1.本人の排尿パターンに沿って、尿意・排尿の意思を確認する。 2.次にパッドを確認、失禁がない場合、さらに、トイレ排尿が成功した場合、感謝や賞賛の 言葉がけをする。

(

社会的賞賛

)

3.次回の排尿予定時間を伝え、排尿の意思を介助者に伝えるように促す。 1.ケアプランの総合援助方針に基づいた目標を設定する。 2.尿失禁が改善されることによって、生活全体・QOLの視点から得られる目標を設定する。   例:排泄を自立し、積極的にリクレーションに参加できる。     (注意:トイレの自立を、生活全体の目標にしない。)

●日本の介護の強みを活かそう!

!

初期アセスメント

関わり方

目標設定

 社会的賞賛は、排泄の意思を自発的に教えて頂いたことで、人間としての感

謝や、成功を共に喜ぶ要素が含まれています。

 排泄ケアは根気を要しますが、細やかな言葉や配慮、アセスメント意識を共

有できる、日本のケアの良さを活かしましょう。

(18)

2-D:頻尿・切迫性尿失禁に有効な膀胱訓練

●膀胱訓練とは、

 膀胱の収縮が頻繁に起こり、尿意切迫・頻尿症状(排尿回数8回以上/日)を有する対象者に 対し、排尿間隔を徐々に延長し、膀胱に貯留できる尿量を徐々に増やしていく行動療法です。  しかし、頻尿症状は、過活動膀胱という膀胱自体の障害だけでなく、全身状態の影響や水分量 などいろいろな原因によって起こりますので、まず頻尿の原因を確認しましょう。

 膀胱訓練のプロセス

※尿意の緩和方法  切迫性の尿意は、いくつかの波があります。尿道を締める、気持ちをそらすなどの工夫をして、そ の波が行き過ぎるのを待つようにします。

●心因性の頻尿について

 ADLが低下している高齢者の場合は、トイレに間に合わないのではと言う、心理的な不安感か ら頻尿症状を訴える場合もあります。尿量や回数をご本人と確認しながら関わることで、頻尿感 や切迫感を緩和させていく効果があります。 茨 排尿量日誌をつけ、排尿時間・1回排尿量・排尿間隔を本人と担当者の双方で確認します。 芋 尿意を自覚してから排尿までの時間を、1週間単位をめやすとして10分から15分、20分、30 分と徐々に伸ばし、排尿間隔を徐々に延長します 鰯 時間延長については1週間単位をめやすにします。日常生活習慣等を勘案し、本人が継続し て実行可能な計画を立案します。 允 1回排尿量をチェックし、膀胱に貯留できる尿量がしだいに増加できるように努めましょう。 印 日常生活上の工夫:膀胱訓練中は、気持ちが排尿のことばかりに捕らわれないように、上手に 気分をリラックスさせ、積極的な外出など日常生活上の目標を設定し取り組むと良いでしょう。

The Urge Cycle

(19)

(参考資料)行動療法活用事例の改善状況

 平成15年度酒田市おむつ減らし普及事業で、ご本人とご家族の同意を得て取り組んだ介護老人保

健施設入居者10例についてのアセスメントとケアプランの成果です。

PV

を活用した関わり方で4名

の方の頻尿症状や尿失禁が改善しました。

(20)

2-E:腹圧性尿失禁と骨盤底筋体操

 女性に多い腹圧性尿失禁を改善する行動療法として、骨盤底筋体操があります。  骨盤底筋体操は、運動としての負荷も少なく、どなたでも、いつでも、どこでもできる体操で す。健康教室と兼ねて集まって頂き、ふだん話しにくい排尿に関わる悩みを話す機会にもなりま す。

●骨盤底筋体操の正しい理解

 骨盤底筋体操が有効とされる腹圧性尿失禁(P4参照)は、様々な程度やタイプがあり、全て の方に有効ではありません。できれば、専門医に受診し、腹圧性尿失禁に関する詳細な査定を受 けた上で、正しい体操方法を習得して頂くことが大変に重要です。  しかし、ごく軽症の場合は、骨盤底筋体操は改善効果があることが報告されています。また、 健康予防のひとつとしても運動方法を習得できるようにしましょう。

●骨盤底筋体操を行う際の高齢者への配慮

 骨盤底筋体操は、身体的負担は少ない体操ですが、正しい運動方法を習得し、根気強く続けて いく意欲が必要です。  体操を開始する前に留意する点として、著しい体力低下がなく、ADLの自立度が安定している かどうか確認しましょう。まずは、腹筋と背筋の運動を中心とした、姿勢を正しく保てる筋力・ 体力が重要です。  最も重要なこととして、動機を明確にして体操を開始しましょう。

●骨盤底筋体操習得の基本ステップ

 骨盤底筋体操の習得には、骨盤底筋の部位、収縮方法を正確に知覚できることが不可欠です。  知識から実技へ、順を追った練習プログラムを作成し、習得状況を確認しながら練習を進めて 行きます。  安心感を持って頂き、生活上の具体的目標を設定し、根気強く関わる姿勢を持ちましょう。

動  機   →   行  動   →   結  果

→      → 咳をすると尿がもれる 症状を改善したい 快適に過ごしたい。 正しい骨盤底筋体操を 習得し・継続する。 尿漏れが改善する。 明るく過ごせる。

(21)

●骨盤底筋体操のプログラム

 骨盤底筋体操は、尿もれを瞬間的に我慢する速筋の運動力と、最初に尿意を感じてからしばら く我慢するときの持久力を支える遅筋を強化する運動の2種類があります。原則8週間から12週 間の練習期間を要するとされますが、瞬間的に我慢する速筋の運動は、比較的早い時期から効果 がでてくる場合があります。  骨盤底筋体操

1

:尿もれを瞬間的に我慢するための速筋を鍛える運動方法  ・尿道括約筋を、「素速く締め、すぐにゆるめる」運動です。  ・「1・2、1・2、………」と、数えながら行ってみます。  ・大腿の内側や下腹部に余分な力が入らないよう、姿勢を工夫しましょう。  骨盤底筋体操2:尿意を持続して我慢するための遅筋を強化する運動  ・尿道括約筋を「一定秒数締めた後に、ゆるめる」運動です。  ・締める前に深呼吸をして十分にリラックスします。  ・尿道を臍に垂直に引き上げるように収縮させ、下腹部に力が入らないように気をつけましょう。  ・「1・2・3・4・5・6・7………」と、数えていきます。  ・持続できる秒数を確認します。  ・弛めたあとは、必ず深呼吸を行い、全身をリラックスさせましょう。

●1日の中でのプログラム設定

上記の速筋・遅筋の運動を、各々50回/1日を目安に運動します。 1回の運動回数を5-10回程度に分け、トイレに行った後やテレビを見ている時間、就寝前の 短時間など、日常生活のリズムに続けられる形で、運動を組み入れましょう! (小牧市民病院 近藤 厚生 先生 監修パンフレット)

(22)

3.

3.

排泄ケアマネジメン

排泄

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ケア

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3-A:排泄ケアマネジメントの概念

 排泄障害によって生じている生活機能への影響を包括的に分析し、高齢者の自立を支援するた めに、多職種連携により問題を解決するプロセスをいいます。 排泄障害の特徴  代表的老年症候群と言われる尿失禁・尿漏れの要因は、閉じこもりのプロセスモデルと類似し ています(下図参照)。  尿失禁の問題解決が難しい要因には、下部尿路機能障害が複雑であること、羞恥心を伴うため 関わりにくいケアであること、居宅の場合は、家族介護力の影響が大きいことが挙げられます。

3-B:排泄ケアマネジメントの目的

 排泄に関わるなんらかの悩みを抱えている高齢者や家族が、最善の解決策を選択できるための 情報提供・相談の機会をつくること、地域のサービス資源やネットワークを活用し、解決策を具 体的に検討することで、ご本人の意向に基づき、質の高い尊厳ある生活を支援することです。

(23)

3-C:排泄ケアマネジメントの実際

●排泄ケアマネジメントの流れ

 ここでのケアプランは、行動療法で通常取り組む8週間1クールを、簡略化のため6週間を1 クールとした期間を設定しています。

●排泄ケアマネジメント対象者の発見

 排泄に関する相談は、最初からはなかなか話しにくい状況です。  入所時や初回訪問時、また、適宜全体の状況について理解でき、コミュニケーションがとれる 段階で、毎日の状況を質問するようにします。  1-Cの下部尿路症状の質問票に書いて頂くことも有効です。

●初期アセスメント実施方法

 ① 情報の収集:高齢者の基本情報を把握するため、対象者の状況を包括的に収集する。   (介護支援専門員が通常活用している居宅サービス計画書を活用する。)  ② 排泄アセスメント(参考記録用紙1):排泄に関する

ADL

・生活環境・ポータブルトイレ の使用状況・認知・排尿状態・排便状態、尿失禁の対処、おむつの使用状況、排泄ケアで 困っていること(記述式)について査定する。  ③ 転倒アセスメント:過去の転倒歴、起立性低血圧の有無、姿勢保持力・握力等について査 定する。

(24)

 ④ 排尿日誌(参考記録用紙2):高齢者の排尿パターンや機能を極力詳細に把握するため、朝 食後から夕食時まで(午前8-5時)の排尿時間、失禁の有無、尿意の有無、可能な場合は 排尿量について、3日間排尿日誌を記載する。在宅で困難な場合は、介護支援専門員が、 ショートステイ滞在時など関係サービスの協力を得て行う。排尿日誌をもとに、排尿回数に 対する失禁比率、尿意発現率を算出する。  ⑤ 残尿測定:尿失禁比率が効率の高齢者については、主治医の指示に基づき、残尿貯留の有 無を確認することが望ましいでしょう。   高齢者の場合は、男女問わず排出障害が認められる事例や、脳血管障害の後遺症等により、 中枢性の障害による閉塞症状がある場合、介護を要し、臥床時間の長い高齢者の場合は、残 尿が貯留傾向にあるなどの状況が考えられる。   現在、簡便な残尿測定器が開発されている。(P22 写真参照)  ⑥ 一般検尿:重篤な尿路感染症について確認する。  ⑦ 認知機能テスト(参考記録用紙3):プログラム実施前後の認知機能の変化を確認する。

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:MMSE など

●ケアプラン立案について

(参考記録用紙5)  上記の測定項目をもとに、排尿機能の問題の有無、環境・認知機能、介護者の状況等を包括的 に捉え、評価を集約し総合的に総合援助方針を導き出します。  長期目標:総合援助方針に照らして、排泄の自立に関する具体的達成目標を設定する。  短期目標:長期目標を達成するための、段階的な目標を設定する。 産ケアプラン実施 → モニタリング(参考記録用紙6・7)  ケアプランを実施し、2週間ごと、または、3週間毎等、計画に応じて適宜中間評価を行う。  評価結果に基づき、計画修正、フィードバックを行う。

(25)

(参考資料)

(26)

3-D.行動療法をどのように取り入れるか。

 排泄を自身で自立して過ごせるかどうかは、とりわけ高齢者にとって、地域

や家族の中で社会的に存在できるかどうかということと、同じ意味を内包して

います。

 「社会的賞賛」を心がけた言葉がけによる行動療法は、生きる意欲への励まし

と動機づけを行い、目標を達成できたときに、ご本人だけでなく、介護する側

もケアの喜びが湧き、相互に共鳴しあう中で賞賛が生まれてくる、自然な心を

生かしたものと考えます。

 しかし、排泄の自立は、日常の中で継続的に続けられる生活行為そのものです。

 「老い」という巨大なエネルギーに直面しながら行動療法を続けることは、誰

にとっても大変難しい課題であり、だからこそ、自立することの喜びはかけが

えのないものと感じます。

 排泄ケアマネジメントは、サービス連携を工夫しながら、ご本人の健康状態、

総合的な自立度、認知機能、社会参加状況を最善の状況に整えることを目標に

しています。

 行動療法は、具体的なケアプランを展開する際に、有効性が裏づけられている、

根拠に基づいたひとつの方法論として、ご活用頂きたいと思います。

(27)

 文  献 

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(28)

排泄ケアマネジメントの実際:事例紹介

 雑

通所施設を利用することによって失禁が改善したケース(在宅事例)

 雑

医療との連携で、失禁が改善したケース(施設事例)

(29)

1.ケアプラン立案前の排尿に関する問題

・動作が緩慢なため、移動や脱衣の時に衣服やトイレ周辺を汚してしまうこと を気にして、尿意があるのにオムツに排尿している。 ・オムツにかかる費用負担が大きい。

2.ケアプラン立案理由

・尿意があり、動作は緩慢ではあるが、更衣・移動動作は自立しているため、 排泄環境の整備やトイレ誘導でオムツ使用枚数を減らすことができる。

3.初期アセスメント概要

(排尿日誌,排泄アセスメント等介護支援専門員の意見)

【排尿機能】尿意は確実 尿失禁比率 100% 【動作】移動に時間がかかり、間に 合わず漏れてしまい、周囲 を汚してしまう。 【認知機能】MMSE:22 点

4.総合援助方針と評価

<方針>

排泄の成功体験を増やすことで 自信をつけ、本人の生活を意欲的 にしていく。

<評価>

排泄の成功体験、歩行が安定してきたことで自信がつき、デイケアでの活動参加 意欲が向上した。

5.長期目標と評価

<方針>

尿もれの回数を減らし、オムツ代を削減していく。

ADL が向上し、軽介助で排尿できるようになる。

<評価>

失禁回数の減少により、オムツ使用枚数が 1/3 に減少した。また、体力・筋力が ついてきたため、軽介助で排泄できるようになった。 時刻 尿意 排尿量 尿もれ 有○ 無× ml 有○ 無× 5:00 ○ 100 ○ 10:00 ○ 140 ○ 11:30 ○ 150 ○ 13:30 ○ 300 ○ 16:00 ○ 180 ○ 17:00 ○ 130 ○ 21:00 ○ 170 ○

氏名 A 様 年齢( 85 )歳 性別: 女

要介護( 1 )度 移動動作( 杖歩行 ) 障害老人生活動作自立度 ( A1 ) 尿意 ( 有 ) 痴呆性老人日常生活自立度( Ⅰ ) 失禁 ( 有 )

排尿日誌

通所施設を利用することによって失禁が改善したケース(在宅事例)

(30)

6.短期目標・サービス内容と評価

〈開始~2週目〉

目標: 排泄パターンを確認。 排泄環境の整備。 内容: ショートステイを利用し、手すり 付ポータブルトイレを使用する。 ポータブルトイレでの排泄の意 識付け。 評価: 他人に介助を頼むのが嫌で、ポータブルトイ レでの排泄には乗り気ではない。 おむつに排泄することに慣れてしまってい る。

〈2週目~4週目〉

目標: 排泄自立の意識付け。 ADL 向上。 内容: ショートステイで定時に排泄の 声がけし、ポータブルトイレで排 泄が成功したときには賞賛する。 下肢筋力向上のため、移動はシル バーカーを利用。 評価: 声をかけたときには出なくても、尿意のある ときに教えてくれて、成功するようになって きた。 シルバーカー利用で歩行が安定してきた。

〈4週目~6週目〉

目標: 排泄の成功体験を増やし、自信をつけていく。 オムツ代の削減。 内容: デイケアで排泄の声がけを行い、 トイレで排泄が成功したときに は賞賛する。 下肢筋力向上のため、移動はシル バーカーを利用。 評価: 失禁回数が減少し、毎日約 10 枚使用していた オムツが、2~3枚ですむようになった。 体力、筋力がついてきたため、軽介助で排泄 できるようになった。

7.ケアプラン実施成果総括

尿失禁比率は、初期アセスメントから 6 週間で 100%→50%に減少した。 尿失禁はまだあるが、おむつの使用枚数が減少し、歩行の安定性も増したこと で本人の意欲が出てきた。 ショートステイやデイケアでかかわったことで改善がみられ、本人にも意欲が 出てきた。

8.今後のケアプラン

今後もショートステイやデイケアを活用しながら、自宅でもポータブルトイレ に排泄できるように働きかけていく。

(31)

1.ケアプラン立案前の排尿に関する問題

・右大腿部頚部骨折後、歩行が困難になり、現在自力歩行・立位保持は不可。 移動介助にてポータブルトイレ使用しており、50~60%の割合で尿失禁がみ られる。尿意は曖昧で、尿意の自覚の割合は40~50%程度である。

2.ケアプラン立案理由

・本人が「オムツをはずしたい」という希望を持っている。

3.初期アセスメント概要

(排尿日誌,排泄アセスメント等介護支援専門員の意見)

【排尿機能】尿意は曖昧である。 頻尿(排尿回数:日中 9 回) 尿失禁比率 55% 【動作】自力歩行・立位保持は不可の ため、ポータブルトイレまでの 移動に介助を要する 【認知機能】MMSE:14 点

4.総合援助方針と評価

<方針>

トイレにこだわらず、施設での生活 を穏やかに送ることができる

<評価>

6週間のケアプラン展開による改善がないため、 泌尿器科専門医を受診したところ膀胱炎と診断された。 治療によって頻尿症状がなくなり、落ち着いて生活できるようになった。

5.長期目標と評価

<方針>

尿意を自覚し、排泄の成功を増やすことで、日中のおむつ使用枚数を減少させる。 ADL を向上させ、本人の生活を意欲的にしていく。

<評価>

尿意を自覚し、失禁回数が減少することでオムツ使用枚数が 1/3 に減少した。 下肢筋力が向上し軽介助となったことで、ADL 訓練に意欲がみられるようになった。 時刻 尿意 排尿量 尿もれ 有○ 無× ml 有○ 無× 6:00 ○ 150 ○ 8:30 ○ 80 ○ 10:00 × 120 ○ 12:00 ○ 100 × 13:30 ○ 150 × 15:00 × 100 ○ 17:00 ○ 100 × 18:30 × 130 ○ 20:00 ○ 150 ×

氏名 B 様 年齢( 80 )歳 性別: 女

要介護( 4 )度 移動動作( 車椅子 ) 障害老人生活動作自立度 ( B2 ) 尿意 ( 有 ) 痴呆性老人日常生活自立度( Ⅱa ) 失禁 ( 有 )

排尿日誌

医療との連携で、失禁が改善したケース(施設事例)

(32)

6.短期目標・サービス内容と評価

〈開始~2週目〉

目標: 尿意を伝えることができる。 排泄時、座位姿勢の安定 内容: 排泄介助の際、尿意を確認する。 手摺付ポータブルトイレの使用 評価: 尿意を自覚し、職員に伝える割合が徐々に増 えてきている。失禁比率は改善せず。

〈2週目~4週目〉

目標: 尿意があるときは早めに伝え、ポータブルトイレで排泄できる。 下肢筋力の向上。 内容: 尿意を訴えた時に、ポータブルト イレでの排泄が成功したときに は賞賛する。 下肢筋力向上のため、立ち上がり の訓練を行う。 評価: 尿意は確実に自覚するようになり、尿意のあ るときに教えてくれるのだが、すでに失禁し ていることが多く、失禁比率は改善しない。

〈4週目~6週目〉

目標: 尿意を感じてから、トイレに移るまで我慢することができる。 内容: 尿意を訴えた時は、早めに誘導 し、ポータブルトイレでの排泄が 成功したときには賞賛する。 評価: 依然として 40%は尿失禁がみられる。立ち上 がりの安定がみられるようになり以前より失 禁回数が減ったことで、本人は意欲的になっ ている。

7.ケアプラン実施成果総括

尿意は確実に知覚するようになったが、尿を我慢することができず失禁してし まうことが多い。 尿失禁比率は、初期アセスメントから 6 週間で 55%→40%に減少したものの、 頻尿・尿意切迫感がみられるため、

泌尿器科専門医への受診

を検討する。 泌尿器科専門医を受診した結果、

「膀胱炎」

の診断を受けた。 膀胱炎の治療を行ったことによって、頻尿がなくなった。 さらに 6 週間ケアプランを継続することで、最終的に尿失禁比率は 40%→10% まで減少した。

8.今後のケアプラン

立ち上がり動作の安定を目指し、訓練の継続によってADL を向上させ、本人 の生活を意欲的にしていく。

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