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金融商品取引法の改正 ~ インサイダー取引規制に係る見直しについて 1. はじめに 2013 年 4 月 16 日に 金融商品取引法等の一部を改正する法律案 が第 183 回国会に提出され 同年 6 月 12 日に成立 同月 19 日に公布されました ( 平成 25 年法律第 45 号 以下 改正法

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(1)

第21号(2013年10月発行)

<目 次>

金融商品取引法の改正 ……… 1

~インサイダー取引規制に係る見直しについて

コラム-ワンポイント会社法実務(第 17 回)

……… 8

証券代行コンサルティング部

※本ファイルは、内容を抜粋して掲載しております。

(2)

証券代行ニュース第 21 号(2013 年 10 月)

金融商品取引法の改正

~インサイダー取引規制に係る見直しについて

1.はじめに 2013 年 4 月 16 日に「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」が第 183 回国会に提 出され、同年 6 月 12 日に成立、同月 19 日に公布されました(平成 25 年法律第 45 号。以 下「改正法」といいます)。金融商品取引法(以下「金商法」といいます)の改正事項は多 岐にわたっていますが、本稿では、改正法 1 条によるインサイダー取引規制に係る見直し について取り上げるものです。 2.見直しの背景・経緯 最近のインサイダー取引事案の特徴として、会社関係者等からの情報受領者が違反行為 を行っているものが多く1、また、上場会社の公募増資に際して、引受主幹事証券会社から の情報漏洩事案も生じている状況などを踏まえ、2012 年 7 月 4 日、金融担当大臣から金融 審議会に対してインサイダー取引規制の見直しを検討することについて諮問が行われまし た。 これを受けて、金融審議会金融分科会に「インサイダー取引規制に関するワーキング・ グループ」が設置され、最近のインサイダー取引事案で明らかとなった課題への対応を検 討するとともに、近年の金融・企業実務を踏まえたインサイダー取引規制の見直しを行う ため、同年 7 月から 7 回にわたって審議が行われました。審議の結果については、同年 12 月 25 日に報告書「近年の違反事案及び金融・企業実務を踏まえたインサイダー取引規制を めぐる制度整備について」(以下「WG報告書」といいます)に取りまとめられています。 3.見直しの概要 改正法によるインサイダー取引規制に係る見直しの概要は、以下のとおりです。 ①情報伝達・取引推奨行為に対する規制の導入 ②近年の金融・企業実務を踏まえた規制の見直し ・重要事実を知っている者同士の取引の適用除外 ・公開買付者等関係者の範囲の拡大 ・公開買付け等事実の伝達を受けた者の適用除外 ③資産運用業者の「他人の計算」による違反行為に対する課徴金の引上げ ④投資法人の発行する投資証券等の取引へのインサイダー取引規制の導入 本稿では、一般の事業会社にとっても関わりがある「①情報伝達・取引推奨行為に対する 規制の導入」および「②近年の金融・企業実務を踏まえた規制の見直し」に焦点を当てて解 1 平成 24 年度(平成 24 年 6 月~平成 25 年 6 月)において、内部者取引行為に対する課徴金勧 告事案19 件のうち、違反行為者の属性が情報受領者であるものは 14 件(金商法 166 条違反 9 件、 167 条違反 5 件)で、全体の 7 割を占めています(証券取引等監視委員会事務局「金融商品取引 法における課徴金事例集~不公正取引編~」(平成25 年 8 月)8 頁)。

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証券代行ニュース第 21 号(2013 年 10 月) 2 説します。 4.情報伝達・取引推奨行為に対する規制の導入 (1)規制導入の趣旨 インサイダー取引を惹起する情報伝達行為については、インサイダー取引の教唆犯(刑 法 61 条 1 項)または幇助犯(刑法 62 条 1 項)に該当しうるものの、現行法上、特段の 規制は設けられていません。しかしながら、前記「2.見直しの背景・経緯」のとおり、 最近のインサイダー取引事案では、会社関係者等からの情報受領者が違反行為を行って いるものが多いことから、WG報告書では適切な抑止策を設ける必要性が示されました2 また、情報伝達行為を規制する場合には、未公表の重要事実の内容は伝えず、その存 在を仄めかし、または未公表の重要事実を知り得る立場にあることを示しつつ取引を推 奨するなどの潜脱的行為が行われるおそれがあるため、不正な取引推奨行為についても 適切な抑止策を設ける必要性が示されました3 (2)禁止行為の概要 会社関係者(重要事実を職務等に関し知った会社関係者であって、会社関係者でなく なった後 1 年以内のものを含む)であって重要事実を知ったものは、他人に対し、当該 重要事実の公表前に売買等をさせることにより利益を得させ、または損失の発生を回避 させる目的をもって、当該重要事実を伝達し、または当該売買等をすることを勧めては ならないとされました(改正金商法 167 条の 2 第 1 項。【図表1】参照)。また、公開買 付者等関係者であって公開買付け等事実を知ったものについても、同様の規制が設けら れることとなりました(改正金商法 167 条の 2 第 2 項)が、以下での説明は省略させて いただきます。 なお、第一次情報受領者(金商法 166 条 3 項)については、本規制の適用対象とされ ていません。 【図表1】改正金商法 167 条の 2 第 1 項(未公表の重要事実の伝達等の禁止)の構造 対 象 者 上場会社等に係る会社関係者であって、 当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知ったものは、 相 手 方 他人に対し、 状 態 当該業務等に関する重要事実について公表がされたこととなる前に、 主 観 的 要 件 (目的要件) 当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をさせることにより 当該他人に利益を得させ、または当該他人の損失の発生を回避させる目的をもって、 禁 止 行 為 当該業務等に関する重要事実を伝達し、 または当該売買等をすることを勧めてはならない。 2 WG報告書 2 頁。 3 WG報告書 2 頁。

(4)

証券代行ニュース第 21 号(2013 年 10 月) (3)主観的要件(目的要件) 上場会社では、業務提携の交渉や投資家向け説明(IR活動)など、さまざまな場面 で情報のやりとりが行われており、情報伝達・取引推奨行為全般を規制対象とした場合 には、通常の業務・活動に支障が生じかねないことから、WG報告書では、未公表の重 要事実に基づく取引を引き起こすおそれの強い不正な情報伝達・取引推奨行為を規制対 象とするため、取引を行わせる目的等の主観的要件を設けることが適当であると結論付 けられました4 主観的要件(【図表1】参照)は、上場会社における通常の業務・活動の中で行われる 情報伝達・取引推奨行為が、改正金商法 167 条の 2 違反とならないための要件として重 要です。主観的要件を満たさない情報伝達・取引推奨行為は規制の対象ではなく、業務 上必要な社内外での情報交換や情報共有、IR活動の一環として行う自社への投資を促 すような一般的な推奨については、重要事実の公表前に売買等をさせることにより他人 に利益を得させ、または他人の損失を回避させる目的をもって行うものではないと考え られるため、基本的に規制対象にはならないものと考えられます5 (4)違反行為の抑止策(エンフォースメント) WG報告書では、情報伝達・取引推奨が行われたのみで直ちに処罰・課徴金の対象に すると本来制裁を課すべきでない通常の業務・活動に影響を与えてしまうおそれがある ことも踏まえ、不正な情報伝達・取引推奨が投資判断の要素となって実際に取引が行わ れたことを要件とすることが適当であると結論付けられました6。これを踏まえて、情報 伝達・取引推奨行為によって重要事実が公表される前に売買等が行われた場合に限って、 課徴金・刑事罰(【図表2】参照)の対象とすることとされています。 【図表2】課徴金および刑事罰の内容 課徴金 [仲介業者(証券会社等)以外の者に対する課徴金の額] 情報の伝達を受けた者または売買等をすることを勧められた者の利得相当額 の 2 分の 1(改正金商法 175 条の 2 第 1 項 3 号) 刑事罰 個 人 5 年以下の懲役もしくは 500 万円以下の罰金またはこれらの併科 (改正金商法 197 条の 2 第 14 号) 法 人 [法人の代表者や使用人等が、その法人の業務または財産に関 して違反行為を行った場合(両罰規定)] 5 億円以下の罰金(改正金商法 207 条 1 項 2 号) 4 WG報告書 3 頁。 5 金融庁「情報伝達・取引推奨規制に関するQ&A(金融商品取引法第 167 条の 2 関係)」(平成 25 年 9 月 12 日)(問 1)および(問 3)に対する(答)参照。 6 WG報告書 3 頁。

(5)

証券代行ニュース第 21 号(2013 年 10 月) 4 また、改正法においては、金商法または金商法に基づく命令に違反する行為(法令違 反行為)を行った者について、証券会社や投資家に対する注意喚起の観点から、氏名等 を公表することができる制度も新たに設けられており(改正金商法 192 条の 2)、情報伝 達・取引推奨行為に対する規制に反復して違反した者も、その対象となり得ます。 なお、売買等が行われなくとも、不正な情報伝達・取引推奨行為が行われれば、イン サイダー取引規制に違反(改正金商法 167 条の 2 違反)することとなりますので注意が 必要です。したがって、上場会社各社においては、東京証券取引所自主規制法人ほかが とりまとめた『第三回 全国上場会社 内部者取引管理アンケート 調査報告書』7や『内 部者取引防止規程事例集』8などを参考にして、自社の情報管理体制や社内規程について 改善すべき点はないか、あらためて検証することが望まれます。 7 http://www.tse.or.jp/sr/unfair/b7gje60000006baq-att/b7gje6000001xom8.pdf 8 http://www.tse.or.jp/sr/comlec/b7gje600000067le-att/comlec_naibusya.pdf

参照

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